JP2009180292A - フロントフォーク用アウタチューブ - Google Patents

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Abstract

【課題】 FRPパイプを用いたフロントフォーク用アウタチューブにおいて、長手方向の曲げ剛性を長手位置で簡易に変化させること。
【解決手段】 ブレイダー装置を用いてブレイディング処理されてなるFRPパイプ製本体部20を有してなるフロントフォーク用アウタチューブ11であって、前記FRPパイプ30が、パイプ中心軸に対する組角度が±θ度で互いに交絡する組糸31、32を組合せ、ブレイディング処理期間中の組糸31、32の組角度±θ度の値を変化させ、FRPパイプ30の長手方向の曲げ剛性を長手位置で変化させてなるもの。
【選択図】 図3

Description

本発明は繊維強化プラスチック(以下、FRPという)パイプを用いたフロントフォーク用アウタチューブに関する。
自動二輪車の倒立型フロントフォークでは、車体側アウタチューブに車軸側インナチューブを摺動自在に挿入しており、アウタチューブの径がインナチューブの径よりも大きいため、アウタチューブの剛性がインナチューブの剛性より大きい。
特許文献1に記載のアウタチューブは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)層と軽合金層の複合体からなり、CFRP層の厚さを車体取付部側に比して遊端側の方が薄くなるように構成している。これにより、アウタチューブの車体取付部近傍部分の剛性を十分高くしながら、アウタチューブのインナチューブを挿入支持する遊端側の剛性を低くしてしなり易くし、走行中の路面変動に対するフロントフォークの追従性の向上を図っている。
実開平3-26845
特許文献1に記載のフロントフォーク用アウタチューブはCFRP層の厚さを長手方向で変化させてその長手方向の曲げ剛性を長手位置で変化させるものである。しかしながら、CFRP層の厚さの調整は、CFRP材のプリプレグシート(樹脂を含浸した繊維シート)の積層数の調整によるものであり、複雑で高コストになる。
本発明の課題は、FRPパイプを用いたフロントフォーク用アウタチューブにおいて、長手方向の曲げ剛性を長手位置で簡易に変化させることにある。
請求項1の発明は、ブレイダー装置を用いてブレイディング処理されてなるFRPパイプ製本体部を有してなるフロントフォーク用アウタチューブであって、前記FRPパイプが、パイプ中心軸に対する組角度が±θ度で互いに交絡する組糸を組合せ、ブレイディング処理期間中の組糸の組角度±θ度の値を変化させ、FRPパイプの長手方向の曲げ剛性を長手位置で変化させてなるようにしたものである。
請求項2の発明は、車体側アウタチューブに車軸側インナチューブを摺動自在に挿入した倒立型フロントフォークにおいて、前記アウタチューブがブレイダー装置を用いてブレイディング処理されてなるFRPパイプ製本体部を有して構成され、前記FRPパイプが、パイプ中心軸に対する組角度が±θ度で互いに交絡する組糸を組合せ、ブレイディング処理期間中の組糸の組角度±θ度の値を変化させ、FRPパイプの長手方向の曲げ剛性を長手位置で変化させてなるようにしたものである。
(請求項1)
(a)フロントフォーク用アウタチューブを構成するFRPパイプが、パイプ中心軸に対する組角度が±θ度で互いに交絡する組糸を組合せ、ブレイディング処理期間中の組糸の組角度±θ度の値を変化させ、FRPパイプの長手方向の曲げ剛性を長手位置で任意に変化させる。ブレイディング処理期間中の組糸の組角度±θ度の値を変化させるだけの簡易な手法により低コストで、アウタチューブの長手方向の曲げ剛性を長手位置で変化させることができる。
(請求項2)
(b)倒立型フロントフォークにおいて、上述(a)のアウタチューブを用いることができる。これにより、アウタチューブの車体取付部近傍部分の剛性を十分高くしながら、アウタチューブのインナチューブを挿入支持する下端部(遊端)側の剛性を低くしてしなり易くし、走行中の路面変動に対するフロントフォークの追従性の向上を図ることができる。
図1はフロントフォークを示し、(A)は模式側面図、(B)は模式正面図、図2はアウタチューブを示す断面図、図3はFRPパイプの組紐組織体を示す模式斜視図、図4はFRPパイプの組紐組織体を示し、(A)は高剛性組織体を示す模式平面図、(B)は中剛性組織体を示す模式平面図、(C)は低剛性組織体を示す模式平面図である。
図1に示す左右の倒立型フロントフォーク10は、車体側アウタチューブ11に車軸側インナチューブ12を摺動自在に挿入し、減衰機構を内蔵している。左右のアウタチューブ11は上車体取付ブラケット13と下車体取付ブラケット14で連結され、上車体取付ブラケット13と下車体取付ブラケット14をつなぐ不図示のハンドル回転軸が車体フレームのヘッドパイプに枢支され、上車体取付ブラケット13にはバーハンドル15が固定されている。左右のインナチューブ12の下端部に設けた車軸ブラケット16は、車輪17の車軸を枢支している。
アウタチューブ11は、図2に示す如く、FRPパイプ製本体部20を有し、本体部20の上端部に上車体取付ブラケット13が結合される上カラー21を嵌着し、本体部20の中間部に下車体取付ブラケット14が結合される下カラー22を嵌着し、本体部20の下端部にインナチューブ12を挿入支持するためのシールケース23を嵌着して備える。上カラー21、下カラー22、シールケース23は例えばアルミ合金等の金属にて構成される。本体部20の内周部には、本体部20の真円度を確保し、インナチューブ12の摺動性を向上するためのアルミ合金、鉄等の金属薄肉管24が嵌合されている。本発明において金属薄肉管24を備えることは必須でない。本体部20に嵌合された金属薄肉管24は上下のカラー21、22の内周段差部に衝合して抜け止めされる。
インナチューブ12は、アルミ合金、鉄等の金属パイプ、又はFRPパイプにて構成できる。
以下、アウタチューブ11の構成について詳述する。
アウタチューブ11は、下車体取付ブラケット14(下カラー22)に支持される車体取付部近傍部分の剛性を高く、インナチューブ12を挿入支持する下端部(遊端)では走行中の路面変動に対するフロントフォーク10の追従性を向上するために剛性を低く、しなり易くする必要がある。従って、アウタチューブ11は、長手方向の曲げ剛性を長手位置で簡易に変化させるため、FRPパイプ製本体部20を以下の如くに構成している。
アウタチューブ11のFRPパイプ製本体部20を構成するFRPパイプ30は、例えば特許3760994に記載のブレイダー装置を用いてブレイディング(組紐)処理されてなるFRPブレイディング組紐組織体30Aからなる。FRPパイプ30を製造するには、予め樹脂が含浸された糸(強化繊維)をブレイダー装置にセットし、ブレイディングによって組紐組織体30を製織するブレイディング工程と、組紐組織体30Aのまわりに連続的に熱収縮テープを巻き付けるラッピング工程を含むものからなる。
(1)ブレイディング工程(図3、図4)
ブレイダー装置により、FRPパイプ30となるFRPブレイディング組紐組織体30Aを製織するには、図3に示す如く、パイプ中心軸に対する組角度が±θ度で互いに交絡する組糸31、32と、パイプ中心軸に対する角度が0度の縦糸33とをマンドレルのまわりで組合せるブレイディング処理により、一層の組物層を構成する。組紐組織体30Aは、少なくとも一層の組物層からなり、通常は複数層の組物層を積層して組成される。
本実施例の組紐組織体30Aは、マンドレルのまわりにおける上述したブレイディング処理期間中の組糸31、32の組角度±θ度の値を、組紐組織体30Aの長手方向に沿って図4(A)、(B)、(C)のθa、θb、θcのいずれかに連続的に変化させる。図4(A)のθaで製織された組紐組織体30Aの長手方向の曲げ剛性は高くなり、図4(B)のθbで製織された組紐組織体30Aの長手方向の曲げ剛性は中程度になり、図4(C)のθcで製織された組紐組織体30Aの長手方向の曲げ剛性は低くなる。組紐組織体30Aを構成する組糸31、32の組角度±θ度を組紐組織体30Aの長手方向に沿って連続的に変化させることで、組紐組織体30AひいてはFRPパイプ30の長手方向の曲げ剛性を長手位置で任意に変化させることができる。
尚、FRPパイプ30(組紐組織体30A)を構成する組糸31、32、縦糸33の糸は、前述の如く、予め樹脂が含浸された糸からなる。このとき、糸の種類はカーボンファイバー(CF)、グラスファイバー(GF)、アラミドファイバー(AF)、その他の高分子繊維、金属糸等なんでも良い。また、樹脂はエポキシ系、イミド系の他、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を問わず何でも良い。
(2)ラッピング工程
上述(1)により組紐組織体30Aを製織しながら、組紐組織体30Aのまわりに連続的に熱収縮テープを巻き付けてFRPパイプ30を得る。このラッピングによって、樹脂が適度にブローして適度の樹脂含有率を得ることができ、これにより、材料自体の機械的特性が向上する。
(3)アウタチューブ製作工程
上述(2)のFRPパイプ30を前述のFRPパイプ製本体部20とし、本体部20に上カラー21、下カラー22、シールケース23、金属薄肉管24を組付けてアウタチューブ11とする。
アウタチューブ11を構成するFRPパイプ製本体部20(FRPパイプ30)は、図2に示す如く、下車体取付ブラケット14(下カラー22)に支持される車体取付部近傍部分20Aを構成する組紐組織体30Aが、組糸31、32の組角度を前述図4(A)のθaとする高剛性組織体からなるものとする。また、インナチューブ12を挿入支持する下端部(遊端)20Bを構成する組紐組織体30Aは、組糸31、32の組角度を前述図4(C)のθcとする低剛性組織体からなるものとする。また、上車体取付ブラケット13(上カラー21)と下車体取付ブラケット14(下カラー22)に支持される部分に挟まれる中間部20Cを構成する組紐組織体30Aは、車種、必要とされる操縦安定性の程度等に応ずる適宜の剛性組織体、例えば組糸31、32の組角度を前述図4(B)のθbとする中剛性組織体、又は前述図4(C)のθcとする低剛性組織体からなるものとする。
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)フロントフォーク用アウタチューブ11を構成するFRPパイプ30が、パイプ中心軸に対する組角度が±θ度で互いに交絡する組糸31、32を組合せ、ブレイディング処理期間中の組糸31、32の組角度±θ度の値を変化させ、FRPパイプ30の長手方向の曲げ剛性を長手位置で任意に変化させる。ブレイディング処理期間中の組糸31、32の組角度±θ度の値を変化させるだけの簡易な手法により低コストで、アウタチューブ11の長手方向の曲げ剛性を長手位置で変化させることができる。
(b)倒立型フロントフォーク10において、上述(a)のアウタチューブ11を用いることができる。これにより、アウタチューブ11の車体取付部近傍部分の剛性を十分高くしながら、アウタチューブ11のインナチューブ12を挿入支持する下端部(遊端)側の剛性を低くしてしなり易くし、走行中の路面変動に対するフロントフォーク10の追従性の向上を図ることができる。
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明のFRPパイプ30(組紐組織体30A)にあっては、組糸31、32を用いることは必須であるものの、縦糸33を用いることは必須としない。
また、本発明のアウタチューブは、本発明によって長手方向の特定部分に得られる高剛性部分又は低剛性部分を所望の長手位置に配置して用いることができる。
図1はフロントフォークを示し、(A)は模式側面図、(B)は模式正面図である。 図2はアウタチューブを示す断面図である。 図3はFRPパイプの組紐組織体を示す模式斜視図である。 図4はFRPパイプの組紐組織体を示し、(A)は高剛性組織体を示す模式平面図、(B)は中剛性組織体を示す模式平面図、(C)は低剛性組織体を示す模式平面図である。
符号の説明
10 倒立型フロントフォーク
11 アウタチューブ
12 インナチューブ
20 FRPパイプ製本体部
30 FRPパイプ
30A FRPブレイディング組紐組織体
31、32 組糸
33 縦糸
θ 組角度

Claims (2)

  1. ブレイダー装置を用いてブレイディング処理されてなるFRPパイプ製本体部を有してなるフロントフォーク用アウタチューブであって、
    前記FRPパイプが、パイプ中心軸に対する組角度が±θ度で互いに交絡する組糸を組合せ、ブレイディング処理期間中の組糸の組角度±θ度の値を変化させ、FRPパイプの長手方向の曲げ剛性を長手位置で変化させてなることを特徴とするフロントフォーク用アウタチューブ。
  2. 車体側アウタチューブに車軸側インナチューブを摺動自在に挿入した倒立型フロントフォークにおいて、
    前記アウタチューブがブレイダー装置を用いてブレイディング処理されてなるFRPパイプ製本体部を有して構成され、
    前記FRPパイプが、パイプ中心軸に対する組角度が±θ度で互いに交絡する組糸を組合せ、ブレイディング処理期間中の組糸の組角度±θ度の値を変化させ、FRPパイプの長手方向の曲げ剛性を長手位置で変化させてなることを特徴とする倒立型フロントフォーク。
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