JP2009179065A - Frp構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】一体化された構造体が優れた強度特性を発揮でき、とくに接合界面部分で高い層間強度を保持できるとともに、大型のFRP構造体でもオートクレーブなどの設備を使わず安価にかつ容易に成形できるようにしたFRP構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一つ以上のプリキュアした繊維強化複合材の一部に接着剤を配置する接着剤配置工程と、高靭性化粒子を少なくとも前記接着剤との接合面側に分散付与した強化繊維基材を前記接着剤の層と接して配置する強化繊維基材配置工程と、繊維強化複合材の一部あるいは全部と強化繊維基材の全部を密閉媒体で覆って内部を減圧する密閉減圧工程と、密閉媒体内部を加熱する加熱工程と、密閉媒体内に樹脂を注入して硬化させる樹脂注入硬化工程を含むことを特徴とするFRP構造体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両、船舶、航空機、あるいは建築部材など種々の分野に用いられるFRP(繊維強化プラスチック)構造体の製造方法に関し、特に2つ以上の別々に形成された部分を一体成形して比較的複雑な最終形状としたい場合に好適なFRP構造体の製造方法に関する。
複数のFRP部品からなるFRP構造体の製造においては、各部品をリベットなどを用いて機械的に結合する方法が広く用いられているが、この方法には、製造コスト面と重量面から多くの問題がある。一方、各部品を接着により接合する方法では、とくに接着面での層間強度が十分ではなく、また広い接着面での適用には品質確保と製造コストに問題がある。そこで、FRP部品をインサートした成形による接合が開発されている。
特許文献1では、FRP部品と接着剤を用いてコボンド成形することにより良好な接合状態が得られるとしているが、接合部分の層間強度が十分ではなく、層間強度向上のために2つの硬化前のFRP部品間にステッチを施すことを提示している。ステッチは、層間強度向上は果たすものの、厚み方向に繊維を挿入することになるから、面内方向での強化繊維の切断や樹脂溜まり部分の発生、あるいは強化繊維含有率の低下といった問題を残すことになる。
特許文献2では、2つのドライな強化繊維基材を一体にして樹脂注入することを開示しているが、樹脂注入により2つの基材ともに厚みの変化が生じ、成形体の仕上がり寸法が保証できない。また、大型パネルなどではシワや局所変形などの問題が生じる。
特許文献3では、強化繊維織物と半硬化したプリプレグを一体化し、樹脂注入して成形し、オートクレーブ内で加熱して加圧することにより強度の向上を実現するようにしている。しかし、オートクレーブ利用による製造コストの問題と、成形しようとするFRP構造体の大きさが制限されるため、大型の構造体の成形が困難であるという問題がある。
特許文献4では、ドライプリフォームと熱硬化性樹脂フィルムとを2つのFRP部品の間に挿入して密閉・加熱して樹脂注入することにより接合するようにしている。この方法では、オートクレーブを使用せずに低コストで2つのFRP部品を接合できる。しかし、樹脂未含浸部分が界面に形成されてしまうと、FRP部品間の接合強度は著しく低下するという問題がある。
米国特許第4,786,343号公報 米国特許公開第2003/0019567号公報 特許第3320051号公報 特開2003−011231号公報
そこで本発明の課題は、一体化された構造体が優れた強度特性を発揮でき、とくに接合界面部分で高い層間強度を保持できるとともに、大型のFRP構造体でもオートクレーブなどの設備を使わず安価で、高い寸法精度を有し、かつ容易に成形できるようにしたFRP構造体の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係るFRP構造体の製造方法は、少なくとも一つ以上のプリキュアした繊維強化複合材の一部に接着剤を配置する接着剤配置工程と、高靭性化粒子を少なくとも前記接着剤との接合面側に分散付与した強化繊維基材を前記接着剤の層と接して配置する強化繊維基材配置工程と、前記繊維強化複合材の一部あるいは全部と前記強化繊維基材の全部を密閉媒体で覆って内部を減圧する密閉減圧工程と、前記密閉媒体内部を加熱する加熱工程と、前記密閉媒体内に樹脂を注入して硬化させる樹脂注入硬化工程を含むことを特徴とする方法からなる。
このFRP構造体の製造方法においては、一体化される部材の一方にプリキュアした繊維強化複合材、つまり、既に形状が実質的に固定された繊維強化複合材が用いられるので、他方の部材である強化繊維基材に樹脂を含浸させる際に、強化繊維基材自体の寸法変化、さらには成形体全体としての寸法変化も抑えられ、所定の成形体仕上がり寸法が確保される。両部材の接合一体化には、間に接着剤が配置されるが、この接着剤をプリキュアした繊維強化複合材となじみやすい成分を有する接着剤とすることにより、まず、接着剤層と繊維強化複合材との強固な接合が達成される。さらに、接着剤が繊維強化複合材のプリキュアする温度と同じ温度域で硬化するタイプであれば、なお強固な接合が得られる。そして接着剤層を介して接合すべき強化繊維基材の少なくとも接着剤との接合面側に高靭性化粒子を分散付与しておくことにより、高靭性化粒子による強化繊維間接着作用により強化繊維基材の形態を所定の形態に維持できるとともに、接合界面で注入樹脂に対し均一な樹脂流路を形成する役目を果たすことにより樹脂未含浸部の発生を抑えて接着剤層と樹脂含浸された強化繊維基材との強固な接合状態を達成できる。また、成形後のFRP構造体に対しては、たとえば衝撃を受けた時に、損傷抑制の役目(クラックストッパーの役目)も果たし、成形されたFRP構造体に優れた力学特性をもたらす、いわゆる層間強化効果もあり、高靭性化できる効果がある。その結果、プリキュアした繊維強化複合材と樹脂含浸された強化繊維基材とは、接着剤層を介して極めて強固に接合、一体化されることになる。
このようなFRP構造体の製造方法においては、上記プリキュアした繊維強化複合材が、接着剤を配置する部分の表面粗さが20μm以下になるよう成形されていることが好ましい。20μmを越える表面粗さでは、均一な厚みの接着剤層を形成しにくくなり、上記の強固な接合、一体化が困難になるおそれがある。とくに接着剤を接着フィルムの形態で配置する場合には、接着フィルムに多かれ少なかれ腰があるので、繊維強化複合材の表面粗さを小さく抑えておくことが好ましい。
また、上記接着剤配置工程において、該接着剤を配置した繊維強化複合材を加熱、冷却して接着剤を養生するステップを含んでいることが好ましい。つまり、これによって接着剤をプリキュアした繊維強化複合材側に対してなじませることが可能になり、まず、接着剤層と繊維強化複合材との強固な接合を達成できる。
また、上記接着剤としては、上記密閉媒体内に注入される樹脂と同系の樹脂を含むことが好ましい。注入樹脂がエポキシ系樹脂からなる場合には、同系の樹脂としてもエポキシ系樹脂を用いればよい。また、上記接着剤としては、上記密閉媒体内に注入される樹脂がプリキュアする温度域と同じ温度域で硬化反応することが好ましい。すなわち、硬化反応が同じ温度域で起きれば、接着剤と繊維強化基材に注入された樹脂は同時に3次元架橋構造の形成が進み、互いの界面部分において絡み合った構造の形成が可能になり、強固な接合を達成できる。
また、上記高靭性化粒子は、たとえば上記強化繊維基材に対し2〜20重量%の範囲内で強化繊維基材の少なくとも片面に分散付与されていることが好ましい。さらに好ましくは、6〜18重量%の範囲内で強化繊維基材の少なくとも片面に分散付与されていることが好ましい。さらに好ましくは、8〜15重量%の範囲内で強化繊維基材の少なくとも片面に分散付与されていることが好ましい。この高靭性化粒子は、本質的に強化繊維基材に対しマトリックス樹脂を構成するものではなく、強化繊維基材を配置する際にその形態を所定形態に保持したり、マトリックス樹脂注入含浸の際に未含浸部が生じないように均一な樹脂流路を形成するためのものであるから、多くなりすぎるとマトリックス樹脂の含浸量が少なくなりすぎるとともに高強化繊維体積含有率を達成しにくくなり複合材料として所望の力学特性を発揮しにくくなるおそれがあり、少なくなりすぎると上記のような所定形態の保持や均一な樹脂流路形成の効果が薄れる。この効果を奏するためには、上記のような範囲が適切である。
また、上記高靭性化粒子は、上記のような効果を効率よく奏するために、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物からなることが好ましい。また、この高靭性化粒子としては、上記接着剤層と混じり合ってこの界面での強固な接合を助長できるものが望ましいことから、接着剤となじみやすい成分を含有していることが好ましく、一方で、強化繊維基材に含浸されるマトリックス樹脂ともなじみやすい成分を含有していることが望まれる。
また、分散付与される高靭性化粒子の粒子経としては、強化繊維基材の所定形態の保持、均一な樹脂流路形成の面から、1〜500μmの範囲にあることが好ましい。強化繊維基材があらかじめプリフォームの形態に形成されている場合には、形態保持機能よりも樹脂流路形成機能が必要となることから、若干大き目の高靭性化粒子でよく、たとえば10〜500μmの範囲にあることが好ましい。
上記強化繊維基材の形態としては特に限定しないが、比較的複雑な形状の構造体を成形する場合には、織物の形態とすることが好ましく、とくに強化繊維織物が所定枚数積層された形態が好ましい。このような強化繊維基材は、容易に二次元または三次元構造に形成することが可能であり、それによって比較的複雑な最終目標形状のFRP構造体が容易に製造される。
また、上記強化繊維基材は、そのままの形態で配置することもできるし、加圧および/または加熱により所定形状に賦形されたプリフォームにあらかじめ形成して配置することもできる。プリフォームの形態としておくことにより、配置や樹脂含浸の際に一層良好に所定形態に保持することが可能になる。
上記密閉媒体としては、たとえば可撓性バッグ基材(たとえばバギング用フィルム)を使用することもできるし、下型および上型を含む成形型から構成することもできる。プリキュアした繊維強化複合材の一部あるいは全部と強化繊維基材の全部を、内部を減圧してしょていの真空度とすることができるように密閉媒体で覆えばよい。オートクレーブ等を用いる必要がなく、とくに可撓性バッグ基材を使用する場合には容易に所定箇所を覆うことができるから、大型の構造体であっても比較的複雑な形状の構造体であっても容易にかつ安価に成形することが可能になる。
本発明に係るFRP構造体の製造方法によれば、プリキュアした繊維強化複合材側と高靭性化粒子を分散付与した強化繊維基材側とが接着剤層を介し高い層間強度をもって強固に接合され、全体として優れた強度を有する一体化されたFRP構造体を製造できる。また、比較的大型の、あるいは複雑な形状を有するFRP構造体であっても、オートクレーブなどの設備を使わずに安価に、かつ高い寸法精度をもって、容易に成形できるようになる。
本発明の一実施態様に係るFRP構造体の製造方法を示す概略構成図である。 本発明の別の実施態様に係るFRP構造体の製造方法を示す概略構成図である。 本発明に係るFRP構造体の製造方法が適用可能なFRP構造体の一例を示す斜視図である。 本発明のさらに別の実施態様に係るFRP構造体の製造方法を示す概略構成図である。 本発明のさらに別の実施態様に係るFRP構造体の製造方法を示す概略構成図である。 本発明のさらに別の実施態様に係るFRP構造体の製造方法を示す概略構成図である。
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係るFRP構造体の製造方法を示している。図1において、1は下型治具を示しており、下型治具1上に、プリキュアした平板状の繊維強化複合材20が配置される。この繊維強化複合材20の一部に、本実施態様では繊維強化複合材20の上面の中央部に、接着剤が、接着フィルム21の形態で配置される。この接着フィルム21の上面に、接着フィルム21と接するように、高靱性化粒子が少なくとも下面に(つまり、少なくとも接着剤との接合面に)分散付与された、平板状の実質的に二次元形態に形成された強化繊維基材22が配置される。
本実施態様では、上記のように配置された繊維強化複合材20と強化繊維基材22の上面側に、樹脂透過可能な離型シート3が被せられ、その上を覆うように樹脂拡散媒体4が配置される。樹脂拡散媒体4は網状や縦横に溝を形成することにより樹脂注入の際の樹脂流路を形成するシート状あるいは板状部材からなる。繊維強化複合材20の上面側と強化繊維基材22の全部が、密閉媒体である可撓性バッグ基材としてのバギングフィルム6で覆われ、周囲がシール材5を介してシールされて、バギングフィルム6内が密閉される。密閉された内部が、真空バルブB1が開かれ、吸引ポート7a、トラップ10を通して真空ポンプ11により吸引されることにより、所定の真空度に減圧される。そして、密閉された内部が所定温度に加熱されるとともに、注入バルブA1が開かれ、樹脂タンク9から樹脂注入ポート8aを介して、密閉された内部に強化繊維基材22へのマトリックス樹脂が注入され、加熱硬化される。なお、上記接着フィルム21の配置工程においては、該接着フィルム21を配置した繊維強化複合材20を加熱、冷却して接着剤を予備調整、養生するステップ、つまり、接着剤のステージングステップを含んでいることが好ましい。これによって接着剤をプリキュアした繊維強化複合材20側に対してなじませることが可能になり、一体成形に先立って、まず、接着剤層と繊維強化複合材20との強固な接合を達成できる。
上記強化繊維基材22は、複数の強化繊維基材を所定枚数積層した形態に構成できる。本発明における強化繊維基材は、たとえば、連続した強化繊維糸条が、お互いに並行するように引き揃えられ、少なくとも一方向に配列して強化繊維糸条群を形成している形態に構成できる。必要に応じて強化繊維糸条の方向が、二方向、更には複数方向に配列していてもよい。すなわち、一方向性基材、二方向性基材、多方向性基材のいずれであってもよい。これらは、強化繊維基材の組織形態は、例えば、織組織(つまり、織物)、編組織(たて編、よこ編)または不織組織のシートであってもよいし、それらの組み合わせでもよい。これらの中でも、優れた軽量化効果および極めて高い力学特性が要求される航空機の一次構造部材等に適用できる様な複合材料を得るためには、強化繊維糸条が一方向にのみ配列している一方向性基材であるのが好ましい。
また、本発明に係るFRP構造体における強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維(例えば、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、フェノール繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維等)、金属繊維またはセラミック繊維、これらの組み合わせ等を使用できる。とくに炭素繊維は、比強度および比弾性率に優れ、耐吸水性に優れるので、航空機構造材や自動車に用いられるFRP構造体の強化繊維として好ましく用いられる。
また、本発明に係るFRP構造体において、繊維強化複合材20や強化繊維基材22のマトリックス樹脂には、熱可塑性、熱硬化性のいずれも使用することができるが、その成形性、力学特性の面から熱硬化性樹脂であるのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、フェノール、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、シアネートエステル、ビスマレイミド、ベンゾオキサジン、アクリルから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。更にエラストマー、ゴム、硬化剤、硬化促進剤、触媒等を添加したものも使用することができる。
また、本発明に係るFRP構造体において、強化繊維基材22に分散付与される高靱性化粒子として、その樹脂材料の主成分、すなわち樹脂材料中で50重量%を超える成分(好ましくは60〜100重量%)は、前述の成形後の層間強化効果を高く発現できる熱可塑性樹脂であることが好ましい。必要に応じて、樹脂材料に少量の粘着付与剤、可塑剤等を副成分として配合し、0〜150℃(より好ましくは30〜100℃)のガラス転移温度にするとよい。かかる副成分(つまり、2成分以上からなる場合の副成分)としては、マトリックス樹脂と同様または類似のものであると、マトリックス樹脂との接着性、相溶性に優れる利点がある。上記のような熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびフェノキシから選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。中でもポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテルおよびポリエーテルスルフォンから選ばれる少なくとも1種の化合物がとりわけ好ましい。このような高靱性化粒子を、強化繊維基材22の少なくとも片面に分散付与しておくことで、前述の如く、樹脂含浸前および樹脂含浸時の強化繊維基材22の形態保持効果、樹脂注入時の樹脂流路形成効果、接合界面における層間強化効果を奏することができ、結果的、得られるFRP構造体に優れた力学特性を付与できる。
図2は、別の実施態様に係るFRP構造体の製造方法を示している。本実施態様においては、図1に示した態様に比べ、高靱性化粒子が分散付与された強化繊維基材22の上に高靱性化粒子が付与されていない強化繊維基材23を重ねて配置し、樹脂注入する成形法を示している。その他の構成は、図1に示した態様と実質的に同じである。高靱性化粒子の分散付与は、とくに接着層部分における層間強化に効果を発揮できるから、とくにこの部分に強度向上効果を発揮させたい場合には、他の部分への付与を省略できる。
図3は、別の実施態様に係るFRP構造体を示しており、FRP製板状パネル部材31をI型断面形状のFRP製補強材32で補強したFRP構造体の例を示している。このようなFRP構造体は、たとえば図4に示すような方法で製造できる。図4に示すFRP構造体の製造方法においては、下型治具1上に、プリキュアした平板状の繊維強化複合材20が配置され、繊維強化複合材20の上面の中央部に、接着フィルム21が配置される。この接着フィルム21の上面に、接着フィルム21と接するように、高靱性化粒子が少なくとも下面に分散付与され、強化繊維基材が加圧や加熱によりI型断面形状に賦形された、三次元形態に形成されたプリフォーム24が配置される。プリフォーム24のI型断面の両側に上型治具2a、2bが挿入、配置され、繊維強化複合材20とプリフォーム24の上面側に離型シート3が被せられ、その上を覆うように樹脂拡散媒体4が配置される。繊維強化複合材20の上面側とプリフォーム24の全部が、バギングフィルム6で覆われ、周囲がシール材5を介してシールされて、バギングフィルム6内が密閉される。密閉された内部が、真空バルブB1、B2が開かれ、吸引ポート7a、7b、トラップ10を通して真空ポンプ11により吸引されることにより、所定の真空度に減圧される。そして、密閉された内部が所定温度に加熱されるとともに、注入バルブA1、A2が開かれ、樹脂タンク9から樹脂注入ポート8a、8bを介して、密閉された内部にプリフォーム24を形成している強化繊維基材内へマトリックス樹脂が注入され、加熱硬化される。本実施態様においても、接着フィルム21を予備調整、養生するステップ、つまり、接着剤のステージングステップを含んでいることが好ましい。
図5は、さらに別の実施態様に係るFRP構造体の製造方法を示している。図5に示す方法においては、図4に示した方法に比べ、プリフォーム24を上型治具2a、2bとともに、上面側に配置した上型治具2c、2dを用いて固定、密閉し、各型間の境界部に、吸引ポート7c、樹脂注入ポート8c、8dを設けてある。
図6は、さらに別の実施態様に係るFRP構造体の製造方法を示している。図6に示す方法においては、図4に示した方法に比べ、プリフォーム24を断面C型に賦形し、上型治具2bを挿入して固定するとともに、全体をバギングフィルム6で密閉している。
実施例1
図1に示した方法により、平面形状が300mm四方の正方形の板状FRP構造体を成形した。つまり、上記の大きさのプリキュアした繊維強化複合材(硬化済みパネル)上に、接着剤層を介して上記の大きさの強化繊維基材を配置し、図1に示した方法により成形した。繊維強化複合材と強化繊維基材には、炭素繊維(CF)(東レ(株)製T800S)の一方向織物を使用し、マトリックス樹脂にはエポキシ樹脂を使用した。また、接着剤としては、Cytee社製のFM300−2M(エポキシ系接着剤)を使用した。成形条件は表1に示す通りである。供試体1としては、接着剤のステージングなし、供試体2としては、接着剤のステージングを80℃×30分の条件でバギングフィルムで密閉して真空にした内部で行った。せん断強度試験を行った結果を表1に示すように、供試体1では1.7kgf/mm2 のせん断強さ、供試体2では1.6kgf/mm2 のせん断強さが得られ、共に、炭素繊維(CF)層間で破壊した。通常の硬化済みパネル同士の接着剤を介した接合で得られるせん断強さは1.2kgf/mm2 程度であり、その場合には接着界面で破壊する。したがって、供試体1、供試体2ともに、大幅にせん断強度が向上されていることが分かる。また、繊維強化複合材と強化繊維基材との接合界面ではなく、CF層間で破壊したことから、十分な層間強度があることが確認された。さらに、顕微鏡で断面を観察した結果、供試体1では接着層に若干のボイドが散在していることが確認されたが、供試体2では全くボイドは存在しなかった。このことから、接着剤のステージングを行うことにより、接着剤層とプリキュアした繊維強化複合材をなじませることができ、より望ましい接合を行えることが確認された。
Figure 2009179065
実施例2
図5に示した方法により、東レ(株)製炭素繊維T800Sの一方向織物にPESとエポキシからなる高靭性化樹脂粒子を分散した強化繊維基材を真空RTM(レジントランスファーモールディング)成形法でエポキシ樹脂を注入して成形、プリキュアした平板(厚み5.75mm、長さ700mm、幅200mm)を配置した。この平板の成形では、接着剤貼り付け部分に対して、樹脂注入に際し、穴径1mm、ピッチ10mmで小孔を多数配置したアルミニウム薄板を樹脂拡散メディアと強化繊維基材の間に配置して樹脂を含浸し、表面の凹凸を20μm以内となる平滑面を形成しておいた。
東レ(株)製炭素繊維T800Sの一方向織物にPESとエポキシからなる高靭性化樹脂粒子を分散した強化繊維基材を切断し、疑似等方性配向になるよう積層し、断面が100mm×50mmで長さが700mm、各隅が径5mmのR加工した直方体マンドレルにしわが生じないように3つの面に沿わせて賦形し、バギングフィルムで密閉して真空引きした後、60℃で1時間加熱してC型プリフォームを形成した。2つのC型プリフォームを互いに背中合わせにし、東レ(株)製炭素繊維T800Sの一方向織物を間に詰めて、最後に同じ高靭性化粒子を分散した東レ(株)製炭素繊維T800Sの一方向織物を0度/+45度/90度/―45度/0度に積層した100mm×700mmの積層体を重ねて、再びバギングフィルムで密閉して真空引きし、60℃で1時間加熱して、I型プリフォームを賦形した。
プリキュアした平板の平滑面部分に、Cytee社製のFM300を55mm幅で全長700mmにわたって配置し、バギングフィルムで密閉して内部を真空にした後、オーブンで80℃に加熱して30分間維持し、室温まで冷却して、接着剤フィルムをプリキュアした平板になじませた。
平板とI型プリフォームを下型治具の上に配置し、分割された上型治具でI型プリフォームを密閉し、真空引きして60℃まで昇温した後、エポキシ樹脂を注入して硬化した。樹脂注入完了後、130℃に昇温して2時間放置し、プリフォーム部分をプリキュアした。冷却した後、上型治具を分解して取り外し、一体化されたFRP構造体を下型治具から取り出した。このFRP構造体を180℃に昇温したオーブンに入れて2時間放置し、後硬化させ目標とするFRP構造体を完成させた。
FRP構造体の完成後、長さ方向に25mmづつ、均等間隔の5つのセクションで切断して、それぞれのI断面部材と平板が一体化した切断片(奥行き25mm)を、専用把持治具を備えた引っ張り試験機に据え付け、上面フランジと下面平板を引っ張るプルオフテストを実施した。その結果、結合部分の強度は14kgf/mm2 以上の強度を示し、破壊面としては、接着層ではなく、I型部分の内部で強化繊維層を何層にもまたがった破面が形成されていた。したがって、FRP部品同士の接合部分での強度低下という課題を解決できたことが確認された。
本発明に係るFRP構造体の製造方法は、あらゆる分野のFRP構造体の製造に適用でき、とくに比較的大型のものや比較的複雑な形状を有するものの成形に用いて好適なものであり、車両、船舶、航空機用の構造部材や、建築部材などをFRPで構成する場合、その製造に用いて最適な方法である。
1 下型治具
2 a、2b、2c、2d 上型治具
3 離型シート
4 樹脂拡散媒体
5 シール材
6 密閉媒体である可撓性バッグ基材としてのバギングフィルム
7a、7b、7c 吸引ポート
8a、8b、8c、8d 樹脂注入ポート
9 樹脂タンク
10 トラップ
11 真空ポンプ
20 プリキュアした繊維強化複合材
21 接着フィルム
22 高靭性化粒子が分散付与された強化繊維基材
23 強化繊維基材
24 高靭性化粒子が付与された強化繊維基材のプリフォーム
31 FRP製板状パネル部材
32 FRP製補強材
A1、A2、B1、B2 バルブ

Claims (14)

  1. 少なくとも一つ以上のプリキュアした繊維強化複合材の一部に接着剤を配置する接着剤配置工程と、高靭性化粒子を少なくとも前記接着剤との接合面側に分散付与した強化繊維基材を前記接着剤の層と接して配置する強化繊維基材配置工程と、前記繊維強化複合材の一部あるいは全部と前記強化繊維基材の全部を密閉媒体で覆って内部を減圧する密閉減圧工程と、前記密閉媒体内部を加熱する加熱工程と、前記密閉媒体内に樹脂を注入して硬化させる樹脂注入硬化工程を含むことを特徴とするFRP構造体の製造方法。
  2. 前記プリキュアした繊維強化複合材が、接着剤を配置する部分の表面粗さが20μm以下になるよう成形される、請求項1に記載のFRP構造体の製造方法。
  3. 前記接着剤配置工程において、該接着剤を配置した繊維強化複合材を加熱、冷却して接着剤を養生する、請求項1または2に記載のFRP構造体の製造方法。
  4. 前記接着剤が、前記密閉媒体内に注入される樹脂と同系の樹脂を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
  5. 前記同系の樹脂がエポキシ系樹脂からなる、請求項4に記載のFRP構造体の製造方法。
  6. 前記接着剤が、前記密閉媒体内に注入される樹脂のプリキュア温度と同じ温度域において硬化することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
  7. 前記高靭性化粒子が、前記強化繊維基材に対し2〜20重量%の範囲内で強化繊維基材の少なくとも片面に分散付与されている、請求項1〜6のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
  8. 前記高靭性化粒子が、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる、請求項1〜7のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
  9. 前記分散付与される高靭性化粒子の粒子経が1〜500μmの範囲にある、請求項1〜8のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
  10. 前記強化繊維基材が織物からなる、請求項1〜9のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
  11. 前記強化繊維基材が二次元または三次元構造に形成されている、請求項1〜10のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
  12. 前記強化繊維基材が、加圧および/または加熱により所定形状に賦形されたプリフォームに形成されている、請求項1〜11のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
  13. 前記密閉媒体が可撓性バッグ基材からなる、請求項1〜12のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
  14. 前記密閉媒体が下型および上型を含む成形型からなる、請求項1〜12のいずれかに記載のFRP構造体の製造方法。
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