JP2009176528A - 非水電解質二次電池及びその製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質とする非水電解質二次電池の充放電サイクル特性および高温保存特性を向上させる。
【解決手段】 一定の比表面積(S)を有するリチウムニッケル複合酸化物に対し水洗処理を施し、水洗後の比表面積(S´)が0.5〜3.0m2/gであり、かつ水洗前後の比表面積の割合(S´/S)が1.5〜4.0であるリチウムニッケル複合酸化物を作製し、これを正極活物質とすると共に、非水電解質にホウフッ化リチウム(LiBF4)およびtert−アミルベンゼン(TAB)を添加することを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関し、より詳しくは電池膨れ防止およびサイクル特性の改良に関する。
今日、携帯電話、ノートパソコン等の移動情報端末の高性能化および小型軽量化が急速に進展している。これらの端末の移動電源として、高エネルギー密度および高容量を有するリチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が広く利用されている。
非水電解質二次電池は、従来、活物質としてリチウムコバルト複合酸化物が広く使われていたが、近年、高容量とできることから、リチウムニッケル複合酸化物が注目されている。しかし、リチウムニッケル複合酸化物は、その合成時にアルカリ成分や副反応物が残留するという問題がある。この残留物は、電池が高温になった時に分解されガスを発生するため、電池膨張の原因となる。
他方、この残留物は、合成時にアルカリ成分の使用量を少なくすることにより、減らすことができるが、このようにすると、合成反応が未成熟になるため、得られたリチウムに気得る複合酸化物の熱的安定性が悪くなると共に、活物質のインピーダンスを増加させ放電性能を低下させる等、望ましくない結果を生じる、
そこで、合成時に生じたアルカリ等の残留物を水洗により除去する方法が採用されている。しかし、リチウムニッケル複合酸化物を水洗すると、残留物に起因するガス発生やインピーダンスが増加といった問題はある程度解消するが、粒子表面の残留物が除去される結果、比表面積が増加するとともに、残留物の除去により活性サイトが剥き出しになるため、当該部分における電気化学反応性が過大になるという現象が生じる。この現象は、サイクル特性や高温保存特性などに好ましくない影響を及ぼす。また、過充電時の安全性に問題を生じる。
ところで、リチウムコバルト複合酸化物を用いた非水電解質二次電池に関する技術としては、特許文献1,2がある。
特開2003−7345号公報(要約) 特開2005−190690号公報(0010-0011)
特許文献1には、リチウムニッケル複合酸化物の比表面積は0.1〜10m2/gであり、電池表面積S(cm2)と電池容量C(mAh)との比である表面積容量比S/Cが0.05〜5である、リチウム二次電池が記載されている。
特許文献2には、非水電解液にビニレンカーボネート(VC)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)およびtert−アミルベンゼン(TAB)等を添加し正極表面に被膜を形成する技術が記載されている。
上記のように、リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質とする非水電解質二次電池においては、リチウムニッケル複合酸化物に残留するアルカリ等が電池性能を低下させる原因になる。他方、この反応残留物を水洗により除去した場合、過剰に電気化学反応する活性サイトが露出するため、電解質成分の分解が起こり、安全性の低下、サイクル特性や高温保存特性低下などの問題が生じるが、上記特許文献1の技術はこの問題を解決できていない。
本発明は、高容量であるリチウムニッケル複合酸化物の利点を十分に発揮させつつ、リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質とする非水電解質二次電池における上記問題点を解消することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、洗浄処理済みリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として含む正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池の製造方法であって、比表面積(S)が0.2〜1.0m2/gであるリチウムニッケル複合酸化物を水洗し、水洗後の比表面積(S´)が0.5〜3.0m2/gで、かつ水洗前後での比表面積の割合(S´/S)が1.5〜4.0であるリチウムニッケル複合酸化物を作製する活物質水洗処理工程と、前記非水電解質に対しホウフッ化リチウム(LiBF4)とtert−アミルベンゼン(TAB)とを添加する非水電解質調製工程と、備えることを特徴とする非水電解質二次電池用の製造方法である。
一般に、水洗により、リチウムニッケル複合酸化物粒子表面に付着した残留物は除去される。また、水洗により、その比表面積が増加する。比表面積が増加する理由については、次のように考えられる。リチウムニッケル複合酸化物は金属塩を原料として合成されるが、この際、合成目的物質であるリチウムニッケル複合酸化物と共に未反応原料や副反応物、例えば炭酸リチウム、水酸化リチウムなどの反応残留物が生成される。これらの反応残留物は、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面に付着している。このような粒子を水洗すると、反応残留物が水中に除去され細孔が露出する。このため、リチウムニッケル複合酸化物の全体としての比表面積が増大する。
上記構成においては、水洗によるリチウムニッケル複合酸化物粒子の表面状態を、比表面積を指標として、適正に規制する。そして比表面積を一定範囲に規定したリチウムニッケル複合酸化物粒子を正極活物質として用い、かつ非水電解質にホウフッ化リチウムおよびtert−アミルベンゼンを添加する。ホウフッ化リチウムおよびtert−アミルベンゼンは、電解質と活物質との反応性を抑制し、電気化学反応が円滑に行えるようにする。
詳しくは、比表面積Sが0.2〜1.0m2/gのリチウムニッケル複合酸化物粒子を対象にして水洗し、水洗後の比表面積(S´)が0.5〜3.0m2/gであり、かつ水洗前後の比表面積の割合(S´/S)が1.5〜4.0になるように水洗処理を行う。このようにして水洗処理した水洗処理済みリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質とし、ホウフッ化リチウム(LiBF4)とtert−アミルベンゼン(TAB)とを添加した非水電解質を用いて電池を構成する。この構成であると、反応残留物の悪作用を除去できると共に、洗浄処理で露出した活性サイトにおける過剰反応を抑制できる。よって、電池容量が大きく、サイクル特性や高温保存特性(ガス発生量が少ない特性)に優れた非水電解質二次電池が得られる。
ここで、上記構成では、比表面積Sが0.2〜1.0m2/gであるリチウムニッケル複合酸化物に対して、水洗処理後の比表面積(S´)を0.5〜3.0m2/gとし、且つ水洗前後の比表面積の割合(S´/S)が1.5〜4.0となるように、水洗処理を行うが、この要件を充足する水洗処理条件は、試行錯誤的に決定することができ、水洗処理条件を一度決定すれば、合成条件が同一のリチウムニッケル複合酸化物については同様の条件で行えばよい。水洗処理条件とは、水温、水洗時間、攪拌程度、乾燥条件、処理水のpHなどをいう。
なお、水洗前の比表面積を0.2m2/g未満とすると、活物質と電解液との反応面積が減少し、十分なレート特性が得られないため使用できない。一方、1.0m2/gを超える場合、活物質と電解液の反応性が高くなりすぎるため、高温保存特性が低下するため、好ましくない。
また、水洗後の比表面積が、0.5m2/g未満とすると、後述の添加剤との反応が不十分となり、十分な効果が得られない。一方、3.0m2/gを超える場合は反応が過剰となり、形成される保護膜が厚くなり過ぎ、円滑な充放電反応が阻害されたり、保護膜自身が分解するなどの好ましくない現象が起こる。
さらに、S´/S<1.5であると、反応残留物の除去が不十分であるため、水洗処理の効果が得られない一方、S´/S>4.0であると、活物質の反応性が過剰になるため、ホウフッ化リチウム(LiBF4)およびtert−アミルベンゼン(TAB)により形成される保護膜が厚くなり過ぎる。このため、円滑な充放電反応が阻害されたり、保護膜自身が分解するなどの好ましくない現象が起こる。
上記本発明構成において、前記ホウフッ化リチウム(LiBF4)の添加量は、前記非水電解質の質量に対し0.10〜0.15質量%である、とすることができる。
ホウフッ化リチウム(LiBF4)の添加量が、0.10質量%未満であると、保護膜の形成が不十分になるため、十分な効果得られなくなり、0.15質量%を超えると、形成される保護膜が厚くなり過ぎ、円滑な充放電反応が阻害されたり、保護膜自身が分解するなどの好ましくない現象が起こるため、0.10〜0.15質量%が好ましい。
また、上記本発明構成において、前記tert−アミルベンゼンの添加量は、前記非水電解質の質量に対し1.0〜5.0質量%である、とすることができる。
tert−アミルベンゼンの添加量が、0.10質量%未満であると、保護膜の形成が不十分になるため、十分な効果得られなくなり、5.0質量%を超えると、形成される保護膜が厚くなり過ぎ、円滑な充放電反応が阻害されたり、保護膜自身が分解するなどの好ましくない現象が起こるため、1.0〜5.0質量%が好ましい。
また、上記本発明構成において、前記活物質水洗処理工程は、比表面積(S)が0.2〜1.0m2/gであるリチウムニッケル複合酸化物を水洗した後、脱気しつつ150℃〜250℃の温度で乾燥して、水洗後の比表面積(S´)が0.5〜3.0m2/gで、かつ水洗前後での比表面積の割合(S´/S)が1.5〜4.0であるリチウムニッケル複合酸化物を作製する工程である、とすることができる。
リチウムニッケル複合酸化物の水洗は、リチウムニッケル複合酸化物の表面構造を変化させる処理である。よって、必要な水洗の後、速やかにリチウムニッケル複合酸化物粒子の表面を乾燥させ、表面状態を好適に維持する必要があるが、リチウムニッケル複合酸化物を水洗した後、脱気しつつ150℃〜250℃の温度で乾燥する上記構成であると、粒子表面を好適な状態に改質できる。
非水電解質二次電池にかかる本発明は、正極活物質を有する正極と、負極と、非水溶媒と電解質塩とを含有する非水電解質と、を備える非水電解質二次電池において、前記正極活物質は、比表面積が0.5〜3.0m2/gのリチウムニッケル複合酸化物を含み、前記非水電解質には、ホウフッ化リチウムとtert−アミルベンゼンが添加されていることを特徴とする。
この構成であると、電池膨張が少なく、高容量でサイクル特性や高温保存特性に優れた非水電解質二次電池となる。
非水電解質二次電池にかかる上記構成においては、前記ホウフッ化リチウムが、前記非水電解質の質量に対し0.10〜0.15質量%添加された構成とすることができる。また、前記tert−アミルベンゼンは、前記非水電解質の質量に対し1.0〜5.0質量%添加された構成とすることができる。これらの作用効果については、上記非水電解質二次電池の製造方法におけると同様である。
本発明によれば、正極活物質であるリチウムニッケル複合化合物の合成時に生成される副反応物などの残留物に起因する熱的安定性の低下などの悪影響を水洗処理で除去し、かつ残留物の除去により新たに発生する充放電サイクル特性の低下などの悪影響を、電解質に所定の添加剤を添加することにより防止する。よって、本発明によると、高容量でサイクル特性や高温保存特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
実施例に基づいて、本発明を実施するための最良の形態を第1実施例群と第2実施例群とに分けて説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
[第1実施例群]
第1実施例群は、LiBF4の添加量を0.5質量%、TABの添加量を2.0質量%に固定した上で、水洗前の比表面積および水洗後の比表面積を様々に変えて、高温保存特性(電池膨れ率)及びサイクル特性との関係を調べた。
(実施例1)
<正極の作製>
まず、正極活物質の成分の1つであるリチウムニッケル複合酸化物を次のようにして作製した。ニッケル(Ni)と、コバルト(Co)と、アルミニウム(Al)の各硫酸塩を用いて共沈物を作製し、ニッケル源としてのニッケルアルミニウム水酸化物を調製した。これにリチウム源としての水酸化リチウムを添加し、700℃で焼成してリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.052)を得た。このリチウムニッケル複合酸化物に含まれる元素量は、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析)により分析した。その比表面積(S)を測定すると、0.35m2/gであった。比表面積は、BET法で測定した。
次に、リチウムニッケル複合酸化物の水洗処理工程を以下のように行った。上記のリチウムニッケル複合酸化物を25℃の水中に分散し、約10分攪拌した後、脱気しつつ200℃で乾燥して水洗処理済リチウムニッケル複合酸化物を得た。このリチウムニッケル複合酸化物の比表面積(S´)は、0.60m2/gであった。
続いて、分散媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)に、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを溶解させ、さらに上記の水洗処理済リチウムニッケル複合酸化物(正極活物質)と、導電剤としての炭素とを加えた。混合比は、活物質:炭素:ポリフッ化ビニリデン=94:3:3とした。その後、この混合物を混練し、正極スラリーを調製した。このスラリーを集電体としてのアルミニウム箔上に塗布し、その後、圧延ローラーを用いて圧延し、短辺の長さが36.5mmの正極を作製した。
ここで、水洗処理工程における水温、攪拌時間、乾燥温度は上記に限られない。水温は通常、10℃〜30℃とし、攪拌時間は5〜30分とする。また、乾燥温度は通常、100℃〜280℃程度とし、好ましくは150℃〜250℃とする。150℃未満であると、乾燥時間が長くなり、リチウムニッケル複合酸化物が酸化変性する危険性が増し、250℃であると分解の恐れが生じるからである。なお、脱気は発生する水蒸気を取り除くために行うものである。酸化防止の点からは、真空脱気がより好ましい。
<負極の作製>
負極活物質としての人造黒鉛と、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とを水に分散させ、さらに増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を添加してスラリーを調製した。各物質の配合比は、黒鉛:SBR:CMC=95:3:2(乾燥質量比)となるように調節した。このスラリーを集電体としての銅箔上に塗布し、乾燥および圧延して短辺の長さ37.5mmの負極を作製した。
黒鉛の電位はリチウム基準で0.1Vである。また、正極および負極の活物質充填量は、設計基準となる正極活物質の電位において、正極と負極との充電容量比(負極充電容量/正極充電容量)が1.1となるように調整した。
<非水電解質の作製>
エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)との混合物である非水電解質溶媒(25℃における体積%比 EC:MEC:DEC=20:50:30)を電解液として調製した。この溶媒にLiPF6を1.0mol/Lとなるように溶解した後、LiBF4を0.5質量%、TABを2.0質量%添加して非水電解質とした。
<電池の作製>
正極極板と負極極板との間にセパレータを介在させ、捲回して電極体とした。セパレータは、ポリエチレン製微多孔膜を使用した。この電極体を金属製角形外装缶に収納した後、上記で作製した電解液を注液し、角形リチウムイオン二次電池(5mm×34mm×43mm、理論容量900mAhの非水電解質二次電池を完成させた。
<充放電サイクル特性の評価>
25℃において、1It(900mAh)の定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで上記で作製した電池を充電した。さらに、4.2Vの定電圧で電流値が1/50Itになるまで充電した後、1.0Itの定電流で、電圧が設定電圧になるまで放電することより、電池の放電容量を測定した。この充放電を繰り返すことにより、各サイクル時の放電容量を求め、以下の計算式に基づいて、容量残存率(%)をサイクル特性値として求めた。
容量残存率(%)=(300サイクル後の放電容量/初期容量)×100
<高温保存特性の評価>
上記の電池を充電状態で85℃において3時間保存し、保存前後の電池の厚さを測定し、以下の計算式により電池膨れ率を求めた。
電池膨れ率=(電池厚み増加量/初期の電池厚み)×100
(実施例2)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗後の比表面積S´を1.05m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例3)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗後の比表面積S´を1.40m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例4)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.41m2/g、そして水洗後の比表面積S´を0.85m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例5)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.41m2/g、そして水洗後の比表面積S´を1.20m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例6)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.41m2/g、そして水洗後の比表面積S´を1.56m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例7)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.55m2/g、そして水洗後の比表面積S´を0.83m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例8)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.55m2/g、そして水洗後の比表面積S´を1.38m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例9)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.55m2/g、そして水洗後の比表面積S´を1.87m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例10)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.55m2/g、そして水洗後の比表面積S´を2.20m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例11)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.69m2/g、そして水洗後の比表面積S´を1.17m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例12)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.69m2/g、そして水洗後の比表面積S´を2.00m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例13)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積Sを0.69m2/g、そして水洗後の比表面積S´を2.62m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例1)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗後の比表面積S´を0.49m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例2)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗後の比表面積S´を1.80m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例3)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積を0.41m2/g、そして水洗後の比表面積S´を0.53m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例4)
リチウムニッケル複合酸化物の水洗前の比表面積を0.41m2/g、そして水洗後の比表面積S´を1.92m2/gとした以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例5)
比表面積が0.55m2/gのリチウムニッケル複合化合物を水洗せずに、正極活物質として使った以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例6)
比表面積が0.79m2/gのリチウムニッケル複合化合物を水洗せずに、正極活物質として使った以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例7)
リチウムニッケル複合酸化物の代わりに、比表面積が0.30m2/gのリチウムコバルト複合化合物を水洗せずに、正極活物質として使った以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例8)
リチウムニッケル複合酸化物の代わりに、水洗前の比表面積が0.30m2/g、そして水洗後の比表面積S´が0.31m2/gのリチウムコバルト複合化合物を正極活物質として使った以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
以上の実施例1〜13および比較例1〜8のデータを表1にまとめた。
表1より、電池膨れ率は、水洗後の比表面積の増加に伴って減少していることが示された。これは、水洗によりリチウムニッケル複合化合物の反応残留物が除去されてガス発生が抑えられたためであると考えられる。この傾向は、本発明のS´/Sの範囲を超える比較例2および比較例4についてもいえることであった。
しかし、300サイクル後の容量維持率(サイクル特性)は、概ねS´/Sが1.5〜4.0の範囲で良好であり、この範囲の前後では低下した。
特に、実施例12と比較例4とを比べてみると、水洗後の比表面積の値があまり異ならないにもかかわらず(実施例12:2.00、比較例4:1.92)、そのサイクル特性は実施例12でかなり改善されていた(実施例12:83、比較例4:70)。このことから、サイクル特性は、水洗後の比表面積の値よりも、水洗前後の比表面積の割合が大きく影響していることがわかる。
また、水洗ありの実施例7と水洗なしの比較例6との比較では、結果的に同程度の比表面積(実施例7:0.83、比較例6:0.79)のリチウムニッケル複合化合物を正極活物質としているのもかかわらず、実施例7の方が電池膨れおよびサイクル特性が共に改善されていた。このことにより、水洗処理工程は、リチウムニッケル複合化合物の比表面積を増加させるが、同時にリチウムニッケル複合化合物の表面状態を、好適な保護膜を形成し得る状態に変化させる作用があると考えられる。
比較例7および8から、リチウムコバルト複合化合物では、水洗後もほとんど比表面積が上昇せず、サイクル特性等の変化も小さかった。これは、LiCoO2では、水洗による比表面積の増大が殆どないこと、及び活性サイトの露出がないことを意味すると考えられる。
[第2実施例群]
第2実施例群では、水洗前の比表面積および水洗後の比表面積を一定にした上で、実施例6を参照としてLiBF4およびTABの添加量を変化させ、高温保存特性(電池膨れ率)及びサイクル特性との関係を調べた。
(実施例14)
LiBF4を0.1質量%とした以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例15)
LiBF4を1.0質量%とした以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例16)
LiBF4を1.5質量%とした以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例9)
LiBF4およびTABを添加しなかったこと以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例10)
LiBF4を全く添加しなかったこと以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例17)
TABを1.0質量%とした以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例18)
TABを3.0質量%とした以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例19)
TABを4.0質量%とした以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(実施例20)
TABを5.0質量%とした以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
(比較例11)
TABを全く添加しなかったこと以外は、実施例6と同様にして電池を作製し、電池特性を調べた。
以上の実施例6、14〜20、比較例9〜11のデータを表2にまとめた。
表2より、LiBF4およびTABが共存することにより、サイクル特性(300サイクル後の容量維持率)が改善されていることがわかった。LiBF4は、全く添加しないとサイクル特性が良くなかったが、逆に1.5質量%まで添加すると電池膨れ率およびサイクル特性ともに劣化する傾向にあった。TABも、全く添加しないとサイクル特性が良くなかったが、添加することで改善された。さらに、TABを1.0〜3.0質量%添加することで電池膨れ防止の効果が認められた。
(追加事項)
本発明の二次電池の非水電解質で用いられる電解質塩については、特に制限されない。例えば、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO33、LiC(C25SO23、LiAsF6、LiClO4、Li210Cl10、Li212Cl12など、およびこれらの混合物を用いることができる。
本発明の二次電池の非水電解質溶媒については、特に制限されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2−シクロヘキシルカーボネート、シクロペンタノン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、およびこれらの混合物を用いることができる。
なお、本明細書においては、ホウフッ化リチウム(LiBF4)およびtert−アミルベンゼン(TAB)を、非水溶媒および電解質塩以外の添加剤として扱っている。
本発明で使用する負極活物質としては、実施例で使用した人造黒鉛に限られず、リチウムを吸蔵・放出することが可能な炭素材料やその他の材料を用いることができる。
また、本発明で使用されるセパレータは、公知の材質が使用でき、特に限定されない。
また、本発明は非水電解質二次電池の正極活物質に特徴を有するものであり、角形電池、筒形電池またはボタン形電池等、電池の形状および用途などは限定されない。
本発明によれば、正極活物質としてリチウムニッケル複合酸化物を使用した非水電解質二次電池のガス発生量を低減することができると共に、サイクル特性を顕著に向上させることができる。つまり、本発明によると、リチウムニッケル複合酸化物の欠点を補いつつ、高容量であるリチウムニッケル複合酸化物の利点を十分に発揮させることができる。よって、その産業上の利用可能性は大きい。

Claims (7)

  1. 洗浄処理済みリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として含む正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池の製造方法であって、
    比表面積(S)が0.2〜1.0m2/gであるリチウムニッケル複合酸化物を水洗し、水洗後の比表面積(S´)が0.5〜3.0m2/gで、かつ水洗前後での比表面積の割合(S´/S)が1.5〜4.0であるリチウムニッケル複合酸化物を作製する活物質水洗処理工程と、
    前記非水電解質に対しホウフッ化リチウムとtert−アミルベンゼンとを添加する非水電解質調製工程と、備える、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
  2. 前記ホウフッ化リチウム(LiBF4)の添加量は、前記非水電解質の質量に対し0.10〜0.15質量%である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記tert−アミルベンゼンの添加量は、前記非水電解質の質量に対し1.0〜5.0質量%である、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記活物質水洗処理工程は、比表面積(S)が0.2〜1.0m2/gであるリチウムニッケル複合酸化物を水洗した後、脱気しつつ150℃〜250℃の温度で乾燥して、水洗後の比表面積(S´)が0.5〜3.0m2/gで、かつ水洗前後での比表面積の割合(S´/S)が1.5〜4.0であるリチウムニッケル複合酸化物を作製する工程である、
    ことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の非水電解質二次電池の製造方法。
  5. 正極活物質を有する正極と、負極と、非水溶媒と電解質塩とを含有する非水電解質と、を備える非水電解質二次電池において、
    前記正極活物質は、比表面積(S)が0.2〜1.0m2/gであるリチウムニッケル複合酸化物を水洗し、水洗後の比表面積(S´)が0.5〜3.0m2/gで、かつ水洗前後での比表面積の割合(S´/S)が1.5〜4.0であるリチウムニッケル複合酸化物を含み、
    前記非水電解質には、ホウフッ化リチウムとtert−アミルベンゼンが添加されている、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池。
  6. 前記ホウフッ化リチウムは、前記非水電解質の質量に対し0.10〜0.15質量%添加されている、
    ことを特徴とする請求項4に記載の非水電解質二次電池。
  7. 前記tert−アミルベンゼンは、前記非水電解質の質量に対し1.0〜5.0質量%添加されている、
    ことを特徴とする請求項5または6に記載の非水電解質二次電池。
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