JP2009176511A - リチウムイオン二次電池の充放電方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の充放電方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、充放電時のリチウムイオン二次電池における負極層の剥離、滑落等の発生を抑え、サイクル特性を劣化させないような充放電方法と、サイクル特性を高くするための、使用前のリチウムイオン二次電池の初期調整方法とを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、上記負極層および上記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の充放電方法であって、充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を割れ解析方法によって解析し、解析結果に基づいて充電深度の範囲を100%未満に規定して、その範囲内で充放電を行うことを特徴とするリチウムイオン二次電池の充放電方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、負極層の割れの発生を防ぎ、サイクル特性を劣化させないようなリチウムイオン二次電池の充放電方法および使用前のリチウムイオン二次電池の初期調整方法に関する。
パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等の小型化に伴い、情報関連機器、通信機器の分野では、これらの機器に用いる電源として、高エネルギー密度であるという理由から、リチウムイオン二次電池が実用化され広く普及するに至っている。また一方で、自動車の分野においても、環境問題、資源問題から電気自動車の開発が急がれており、この電気自動車用の電源としても、リチウムイオン二次電池が検討されている。
従来、リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質として、グラファイト等の炭素材料が広く用いられているが、炭素材料は一般的にLi吸蔵量が少ないため、炭素材料に比べてLi吸蔵量が多いSnやSn合金等が注目を浴びている(例えば特許文献1)。
しかしながら、このようなリチウムイオン二次電池において充放電を行うと、例えば図5に示すような負極集電体5と負極層6とからなる従来の負極体7(図5(a))では、負極層7中の、Li(リチウム)と合金化する合金化活物質が、Li(リチウム)を吸蔵放出する際に膨張、収縮して、負極層6中に割れが発生する(図5(b))。この状態で、さらに充放電を繰り返し行うと、合金化活物質の急激な膨張収縮に耐え切れず、負極層6中の割れが伝播するなどして、負極層6が剥離、滑落してしまう(図5(c))。このため、導電性が欠落して充放電できなくなり、サイクル特性が低くなってしまう。したがって、このような問題を改善して、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることが必要とされている。
この問題に対して、例えば特許文献2では、二次電池の組み立て後の初期充電において、一度に満充電状態まで充電せず、定電流での充放電を繰り返し充電容量を徐々に上げていく方法が開示されている。これによれば、初期充電サイクルにおいて、電極活物質の急な構造変化が抑制され、緩やかに構造変化が起こるため、負極層の割れの発生を抑制することができる。しかしながら、上記の方法を用いても、負極層の割れを完全に抑えることはできなかった。
特開平8−78021号公報 特開2000−106219号公報 特開平11−204147号公報 特開2000−253586号公報 特開平9−007641号公報 特開平7−085892号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、充放電時のリチウムイオン二次電池における負極層の剥離、滑落等の発生を抑え、サイクル特性を劣化させないような充放電方法と、サイクル特性の高いリチウムイオン二次電池とするための、使用前のリチウムイオン二次電池の初期調整方法と、これを用いたリチウムイオン二次電池の製造方法とを提供することを主目的とする。
本発明者は、上記課題につき鋭意研究を進め、リチウムイオン二次電池の初期充放電時において、充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を調べた結果、満充電状態からの初回の放電時、すなわちリチウムイオンの脱離時に大きな割れを生じることを見出し、またその後も放電時には割れは継続して発生していることを見出した。
そこで、満充電容量で充放電を行わず、充電深度(Stage of Charge)(以下、SOCと記載する。)範囲を100%未満に規定して、実験を行った結果、その範囲内で充放電を行えば、割れの発生を抑制することができることが明らかになった。
また、初期充電において、充放電を繰り返す際、解析した負極層の割れの発生頻度に合わせて徐々に充電状態を上げて充電を行うことで、負極層の体積変化が緩やかになり、割れの発生をさらに抑制できることが明らかになった。本発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、上記負極層および上記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の充放電方法であって、充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を割れ解析方法によって解析し、解析結果に基づいてSOCの範囲を100%未満に規定して、その範囲内で充放電を行うことを特徴とするリチウムイオン二次電池の充放電方法を提供する。
本発明によれば、解析結果に基づいてSOCの範囲を100%未満に規定して充放電を行うことによって負極層の割れによるサイクル特性の劣化を抑制することができる。
また、上記発明においては、上記割れ解析方法が割れによるアコースティックエミッションを検出する方法であることが好ましい。割れの発生を正確に解析することが可能であり、また容易に解析を行うことができるからである。
上記発明においては、上記SOCが80%以下であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、割れの発生頻度を効果的に抑制することができるからである。
また、本発明は、負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、上記負極層および上記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の初期充電時に複数回充放電を行うリチウムイオン二次電池の初期調整方法であって、上記初期充電における充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を割れ解析方法によって解析し、解析した負極層の割れの発生頻度に合わせて、徐々にSOCを上げながら、最終到達充電容量まで充放電を複数回繰り返すことを特徴とするリチウムイオン二次電池の初期調整方法を提供する。
本発明によれば、上述した方法により初期調整することで、負極層の割れが少ない状態で初期調整を行うことができ、調整後のリチウムイオン二次電池の状態を良好なものとすることができる。
また、上記発明においては、上記解析手段が割れによるアコースティックエミッションを検出する方法であることが好ましい。割れの発生を正確に検出することが可能であり、また容易に検出することができるからである。
上記発明においては、上記最終到達充電容量のSOCが100%未満であることが好ましい。満充電状態まで充電を行わないことで、サイクル特性をより高いものとすることができる。
本発明は、負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、上記負極層および上記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、上述したリチウムイオン二次電池の初期調整方法を用いて、組み立て後のリチウムイオン二次電池の初期調整を行う初期調整工程を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記初期調整工程を行うことにより、負極層の割れが起こりにくくなり、長寿命なリチウムイオン二次電池を製造することができる。
本発明は、解析結果に基づいてSOC範囲を規定して、その範囲内で充放電を行うことでサイクル特性の高いリチウムイオン二次電池とすることができるといった効果を奏する。
本発明は、負極層の割れの発生を抑制するための充放電方法、使用前のリチウムイオン二次電池の初期調整方法、および、リチウムイオン二次電池の製造方法に関するものである。以下、それぞれについて説明する。
A.リチウムイオン二次電池の充放電方法
まず、本発明のリチウムイオン二次電池の充放電方法について説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池の充放電方法は、負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、上記負極層および上記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の充放電方法であって、充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を割れ解析方法によって解析し、解析結果に基づいてSOCの範囲を100%未満に規定して、その範囲内で充放電を行うことを特徴とする充放電方法である。
図1は、充放電時に負極層の割れの発生頻度をアコースティックエミッション(以下、AEと記載する。)信号を用いて測定した図である。実線aは電圧の変化を、実線bはAE信号強度を示している。ここで、図1は満充電容量まで充電を行ったものである。図1に例示するように、AE信号の強度は初回放電時において最も大きい。
このことから、負極層の割れは満充電状態からの放電時に起こりやすいことが分かる。
これに対し、図2は充電容量のSOCを60%に規定して充放電を行った場合の負極層の割れの発生頻度をAE信号を用いて測定した図である。図2に例示するように、初回放電時において、AE信号の強度は図1の場合に比べて小さい。
このことから、充電容量のSOCを100%未満で規定すれば、放電時の負極層の割れを抑制することが可能となることが分かる。
本発明によれば、SOCを100%未満で充放電を行うことにより、負極層の割れの発生を抑え、割れによって起こる負極層の剥離、滑落等が起こりにくくなるため、サイクル特性の劣化が少ないリチウムイオン二次電池の充放電方法とすることができる。
また、充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を割れ解析方法によって解析し、解析結果に基づいて上記SOCの範囲を規定するため、リチウムイオン二次電池の負極層に用いられる元素の種類、形状、負極層の厚み等にあわせて、SOCの範囲を適宜調整でき、負極層の割れの少ない方法とすることができる。
充電容量に対する割れの発生頻度を解析する割れ解析方法としては、充電容量に対する割れの発生頻度が解析できれば特に限定されない。具体的には、割れによるAEを検出する方法であってもよいし、割れによる負極層の厚みを測定する方法であってもよい。本発明においては、割れによるAEを検出する方法がより好ましい。AEを検出することで、割れの発生がいつ起こるのか正確かつ容易に把握することが可能となるからである。
ここで、AEとは、材料等の亀裂や破壊に伴って発生する弾性波ある。充電容量に対する割れの発生頻度を測定する方法としては、AEセンサー(AE−901、共振周波数140kHz)をリチウム二次電池の負極側に取り付け、サブミング間隔20sで弾性波を検出する方法が挙げられる。
上記SOCの範囲としては、100%未満であれば、特に限定されないが、80%以下であることが好ましく、中でも40%〜80%の範囲内、中でも50%〜60%の範囲内が好ましい。上記範囲内であることにより、長時間使用することができ、かつ、充放電サイクル特性の劣化をおさえることができるからである。また、上記範囲に満たない場合は、十分な容量を得ることができないからである。
ここで、SOCとは満充電容量に対する充電容量の割合(%)のことをいう。
このような本発明のリチウムイオン二次電池の充放電方法は、リチウムと合金可能な元素からなる負極層を有するリチウムイオン二次電池に用いられる方法である。以下に、本発明を用いることができるリチウムイオン二次電池について説明する。
(リチウムイオン二次電池)
本発明に用いられるリチウムイオン二次電池は、負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、上記負極層および上記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するものである。
本発明に用いられるリチウムイオン二次電池について図面を用いて説明する。図3は、本発明のリチウムイオン二次電池の一例を示す概略断面図である。図3に示されるリチウムイオン二次電池1は、正極集電体2、および正極集電体2上に形成された正極活物質を含有する正極層3を有する正極体4と、負極集電体5、および負極集電体5上に形成された負極活物質を含有する負極層6を有する負極体7と、正極層3および負極層6の間に配置されたセパレータ8と、正極活物質および負極活物質の間でリチウムイオンを伝導させる非水電解液(図示せず)と、を有するものである。
以下、本発明に用いられるリチウムイオン二次電池について、構成ごとに説明する。
(i)負極体
本発明に用いられるリチウムイオン二次電池の負極体は、負極集電体および負極層を有するものである。以下、それぞれに分けて説明する。
a.負極層
本発明に用いられるリチウムイオン二次電池の負極層は、リチウムと合金可能な元素からなるものである。
上記元素としては、リチウムイオンと合金可能なものであれば特に限定されるものではなく、金属リチウム、ケイ素、錫、アルミニウム等、もしくはこれらの合金等が挙げられる。本発明においては特に、錫が好ましい。
上記負極層の膜厚としては、特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池の用途により適宜調整されるものであるが、0.1μm〜5μmの範囲内、中でも0.5μm〜3μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、負極層を割れの発生しにくいものとすることができるからである。
b.負極集電体
本発明に用いられるリチウムイオン二次電池の負極集電体は、負極層の集電を行う機能を有するものである。
上記負極集電体の材料としては、例えば銅、SUS、ニッケル等を挙げることができ、中でも銅が好ましい。また、負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状等を挙げることができ、中でも箔状が好ましい。
c.負極体の形成方法
本発明の負極体の形成方法としては、一般的な負極体の形成方法と同様の方法を用いることができる。具体的には、負極集電体上に電気メッキ法、真空蒸着法、スパッタリング法等の手段により負極層を形成する方法等が用いられる。
(ii)正極体
本発明に用いられる正極体は、正極集電体および正極層を有するものである。
以下それぞれについて説明する。
a.正極層
上記正極体に使用される正極層は、リチウムを吸蔵、放出することのできる正極活物質を含有するものである。
このような正極活物質としては、例えばLiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO等を挙げることができる。
また、上記正極層は、さらに導電剤および結着剤(バインダ)を含有していてもよい。
結着剤としては、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができる。
また、導電剤としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックなどを挙げることができる。
b.正極集電体
上記正極集電体とは、上記正極層の集電を行うものである。上記正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム、SUS、ニッケル、鉄およびチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウムおよびSUSが好ましい。さらに、上記正極集電体は、緻密金属集電体であっても良く、多孔質金属集電体であっても良い。
c.正極体の形成方法
上記正極体の形成方法としては、特に限定されるものではなく、一般的な正極体の形成方法と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず正極活物質、結着材および溶媒等を含有する正極層形成用ペーストを作製し、次に正極層形成用ペーストを正極集電体上に塗布し、乾燥する方法等を挙げることができる。なお、この際、正極層の電極密度を向上させるために、正極層のプレスを行っても良い。
(iii)セパレータ
次に、本発明に用いられるセパレータについて説明する。本発明に用いられるセパレータは、上述したように異なる極性を持つ電極の間に設置され、後述する電解質を保持する機能を有するものである。
上記セパレータの材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロースおよびポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でもポリプロピレンが好ましい。また、上記セパレータは、単層構造であっても良く、複層構造であっても良い。複層構造のセパレータとしては、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ、PP/PE/PPの3層構造のセパレータ等を挙げることができる。さらに、本発明においては、上記セパレータが、多孔膜、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等であっても良い。中でも多孔膜が好ましい。
(iv)非水電解液
本発明においては、上述した電極体中の電極および集電体内、さらにセパレータ内に、通常、リチウム塩を含有する非水電解液を有する。
上記非水電解液は、通常、リチウム塩および非水溶媒を有する。上記リチウム塩としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではないが、例えばLiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSOおよびLiClO等を挙げることができる。一方、上記非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。本発明においては、これらの非水溶媒を一種のみ用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。また、上記非水電解液として、常温溶融塩を用いることもできる。
(v)その他
本発明に用いられるリチウムイオン二次電池は、例えば積層した場合等には、通常、図2で例示されるようなリチウムイオン二次電池を電池ケースに挿入し、その周囲を封口して作製される。上記電池ケースとしては、一般的には、金属製のものが用いられ、例えばステンレス製のもの等が挙げられる。また、本発明に用いられる電池ケースの形状としては、上述したセパレータ、正極層、負極層等を収納できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等を挙げることができる。
また、このようなリチウムイオン電池の用途としては、例えば自動車等に用いられる。
B.リチウムイオン二次電池の初期調整方法
次に、本発明のリチウムイオン二次電池の初期調整方法について説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池の初期調整方法は、負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、上記負極層および上記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の初期充電時に複数回充放電を行うリチウムイオン二次電池の初期調整方法であって、上記初期充電における充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を割れ解析方法によって解析し、解析した負極層の割れの発生頻度に合わせて、徐々にSOCを上げながら、最終到達充電容量まで充放電を複数回繰り返すことを特徴とする初期調整方法である。
本発明は、組み立て後出荷前のリチウムイオン二次電池に用いられる方法である。本発明によれば、初期充電時に上記のようなリチウムイオン二次電池の初期調整方法を行うことにより、その後の使用においても負極層の割れが少なく、長寿命なリチウムイオン二次電池とすることができる。
また、上記初期充電における充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を割れ解析方法によって解析し、解析した負極層の割れの発生頻度に合わせて、徐々にSOCが上がるように充放電を複数回繰り返すことにより、負極層に用いられる元素の種類、形状、負極層の厚み等に合わせて、初期調整時の充放電の時間、電流密度、SOCの上げ方等を適宜調節することができ、初期調整による負極層の割れを抑えられるので、初期調整後のリチウムイオン二次電池の状態を良好なものとすることができる。
ここで、「初期充電」とは、組み立て後出荷前のリチウムイオン二次電池に対して、最終到達充電容量まで行う初めての充電のことをいうものである。また本発明においては、「初期充電」は、充放電を繰り返しながら徐々にSOCを上げて充電を行うものとする。
また、「初期調整」とは、組み立て後、出荷前のリチウムイオン二次電池に対して行うものであり、負極層の割れの発生を抑制することで、その後の使用においても負極層の割れを発生しにくくするための調整のことをいうものである。
初期充電における充電量に対する割れの発生頻度を解析する方法としては、割れがいつ生じるかが分かるのであれば特に限定されるものではない。具体的には、割れのとき発生するAEを検出する方法を用いてもよいし、割れによる負極層の厚みの変化を測定する方法を用いてもよい。本発明においては、AEを検出する方法を用いることが好ましい。これにより、割れの発生がいつ起こるのか正確かつ容易に把握することが可能となるからである。
具体的な測定方法としては、「A.リチウムイオン二次電池の充放電方法」の項で記載したAEを検出する方法と同様であるため、ここでの記載は省略する。
本発明において、初期調整を行うリチウムイオン二次電池の初回のSOCとしては、リチウムイオン二次電池の形状や用いられる材料によって適宜調整されるものではあるが、40%〜100%の範囲内、中でも50%〜90%の範囲内、特に60%〜80%の範囲内であることが好ましい。
また、初期調整の最後、すなわち最終到達充電容量のSOCとしては、100%未満であることが好ましい。具体的には、80%以下、中でも40%〜80%の範囲内、特に50%〜60%の範囲内が好ましい。上記範囲内であることで、放電時の割れの発生を防ぐことができる。
本発明において、上記初期充電は、通常定電流で充放電を行うことによって行われる。
このような初期充電における最終到達充電容量に達するまでに行う充放電の回数としては、負極層の割れの発生を抑えながら徐々にSOCを上げられるものであれば特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池の形状や用いられる材料によって適宜調整されるものではある。具体的には、1回の充電と1回の放電とを1サイクルとすると、1サイクル〜20サイクルの範囲内、中でも3サイクル〜10サイクルの範囲内、特に5サイクル〜7サイクルの範囲内であることが好ましい。上記範囲に満たない場合、充電による負極層の体積変化が大きく割れを発生しやすいからであり、上記範囲を超える場合、最終到達充電容量に到達するまでに時間がかかりすぎ、工程が煩雑なものとなるからである。
また、1サイクル毎のSOCの上げ方としては、負極層の割れの発生を抑えながら徐々にSOCを上げられるものであれば特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池の形状や用いられる材料によって適宜調整されるものではある。具体的には、1サイクル前のSOCを基準(100%)として、5%〜100%の範囲内、中でも10%〜30%の範囲内、特に15%〜20%の範囲内で上げることが好ましい。上記範囲に満たない場合、最終到達充電容量に到達するまでに時間がかかりすぎ、工程が煩雑なものとなるからであり、上記範囲を超える場合、充電による体積の変化が急なものになり、負極に割れが生じやすくなるからである。
本発明において、初期充電時の充電および放電を行う際の電流密度としては、0.01mA/cm〜1mA/cmの範囲内が好ましく、中でも0.05mA/cm〜0.5mA/cmの範囲内が好ましく、特に0.1mA/cm〜0.3mA/cmの範囲内が好ましい。
また、本発明のリチウムイオン二次電池の初期調整方法に要する時間としては、用いられるリチウムイオン二次電池の種類によって適宜調整されるものである。
本発明において、初期調整されるリチウムイオン二次電池としては、組み立てられた後、出荷前のものである。詳しくは、「A.リチウムイオン二次電池の充放電方法」の項で説明したものと同様であるので、ここでの記載は省略する。
本発明においては、上述した「A.リチウムイオン二次電池の充放電方法」とともに用いられることがより好ましい。リチウムイオン二次電池のサイクル特性の劣化をさらに抑制して、より長寿命なものにすることができるからである。
C.リチウムイオン二次電池の製造方法
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、上記負極層および上記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、上述したリチウムイオン二次電池の初期調整方法を用いて、組み立て後のリチウムイオン二次電池の初期調整を行う初期調整工程を有することを特徴とする製造方法である。
本発明によれば、上述した初期調整工程を有することによって、負極層を割れの発生が少なく耐久性の高いものにすることができ、寿命の長いリチウムイオン二次電池とすることができる。以下、それぞれについて説明する。
1.初期調整工程
本工程は、上述したリチウムイオン二次電池の初期調整方法を用いて、組み立て後のリチウムイオン二次電池の初期調整を行う工程である。
本工程で用いられるリチウムイオン二次電池の初期調整方法については、「B.リチウムイオン二次電池の初期調整方法」の項で詳しく説明したので、ここでの説明は省略する。
また、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法により製造されたリチウムイオン二次電池は、本工程により初期調整を行った後に最終製品となり、市場へ出荷されるものである。
2.その他の工程
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、上述した初期調整工程の前に、通常、リチウムイオン二次電池を組み立てる工程を有する。この工程については、一般的なリチウムイオン二次電池の製造方法において行われる工程と同様である。具体的には、不活性雰囲気下において、まず正極体、負極体およびセパレータを電池ケースに収納する工程、次にその電池ケースに有機電解質を添加する工程、最後に電池ケースを密封する工程等を挙げることができる。これらの工程は、通常リチウムイオン二次電池の製造方法で行われているものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法により製造されるリチウムイオン二次電池については、「A.リチウムイオン二次電池の充放電方法」の項で説明したものと同様であるのでここでの記載は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(電極体の形成)
厚さ10μmの銅箔上に厚さ2μmの錫めっき膜を成膜し、電極体とした。また、対極としてはリチウム金属を用いた。電極のサイズとしては、電極体はφ16mm、対極はφ19mmに打ち抜いたものを使用した。
(電池の形成)
上記電極体、上記対極、およびCR2032型コインセル(電池ケース)を用いて電池を形成した。なお、セパレータには、ポリプロピレン(PP)製多孔質膜を用いた。電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、およびエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比率3:3:4で混合した混合溶媒に、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1mol/Lで溶解したものを用いた。
(電池評価方法)
得られた電池の充電容量に対する負極層の割れの発生頻度をAE信号を検出することにより解析した。解析結果からSOC=80%とした。
次に、充放電電流密度0.1mA/cmで充電状態をSOC=80%まで充電させた。この後、電池電圧1.5Vまで放電してLiを脱離し、さらに同じ電流密度でSOC=80%まで充電させた。この充放電サイクルを20サイクル繰り返し、初回放電容量と20サイクル目の放電容量の比率から容量維持率を評価した。
結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様の電池を用いて、図4に示すように初期調整として、充放電を繰り返しながら充電状態を徐々に上げながら充電を行った。このとき、充電状態はAE信号による負極層の割れの発生状況に合わせて上げた。ここで、初期調整を行う際の最終到達充電容量はSOC=100%とした。
上記のように初期調整をおこなった電池で、充放電サイクル(0.01V〜1.5V)を20サイクル繰り返し、初回放電容量と20サイクル目の放電容量の比率から容量維持率を評価した。
結果を表1に示す。
[比較例1]
初期調整を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして容量維持率を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2009176511
(結果)
実施例1のようにSOC=80%として充放電を繰り返した場合は、比較例1のようにSOC=100%として充放電を繰り返した場合に比べ、容量維持率を高くすることができた。
また、実施例2のように初期調整を行った場合も、初期調整を行わない場合に比べて容量維持率を高くすることができた。
負極層の割れの発生頻度と充放電の関係を示すグラフである。 負極層の割れの発生頻度と充放電の関係を示すグラフである。 本発明を用いることができるリチウムイオン二次電池の一例を示す概略断面図である。 本発明のリチウムイオン二次電池の初期調整方法についての図である。 従来の負極層の割れについて説明する図である。
符号の説明
1 … リチウムイオン二次電池
2 … 正極集電体
3 … 正極層
4 … 正極体
5 … 負極集電体
6 … 負極層
7 … 負極体
8 … セパレータ

Claims (7)

  1. 負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、前記負極層および前記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の充放電方法であって、
    充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を割れ解析方法によって解析し、解析結果に基づいて充電深度の範囲を100%未満に規定して、その範囲内で充放電を行うことを特徴とするリチウムイオン二次電池の充放電方法。
  2. 前記割れ解析方法が割れによるアコースティックエミッションを検出する方法であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の充放電方法。
  3. 前記充電深度が80%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の充放電方法。
  4. 負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、前記負極層および前記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の初期充電時に複数回充放電を行うリチウムイオン二次電池の初期調整方法であって、
    前記初期充電における充電容量に対する負極層の割れの発生頻度を割れ解析方法によって解析し、解析した負極層の割れの発生頻度に合わせて、徐々に充電深度を上げながら、最終到達充電容量まで充放電を複数回繰り返すことを特徴とするリチウムイオン二次電池の初期調整方法。
  5. 前記割れ解析方法が割れによるアコースティックエミッションを検出する方法であることを特徴とする請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の初期調整方法。
  6. 前記最終到達充電容量の充電深度が100%未満であることを特徴とする請求項4から請求項5のいずれかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池の初期調整方法。
  7. 負極集電体およびリチウムと合金可能な元素からなる負極層を有する負極体と、正極集電体および正極層を有する正極体と、前記負極層および前記正極層の間に配置されたセパレータと、リチウム塩を含有する非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池の初期調整方法を用いて、組み立て後のリチウムイオン二次電池の初期調整を行う初期調整工程を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
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