JP2009173527A - 水硬性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】初期水和発熱を抑制したセメントを用いた水硬性組成物の初期流動性、流動保持性を改善し、作業性を向上する。
【解決手段】一般式(1)で表される特定の単量体1と一般式(2)で表される特定の単量体2とを含む単量体と一般式(3)で表される特定の単量体3とを重合して得られる共重合体と、初期水和が抑制されたセメントとを含有する水硬性組成物であって、前記共重合体の構成単量体中、単量体1、単量体2、単量体3の含有率及び単量体2/単量体3(重量比)が、それぞれ特定範囲にある水硬性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、水硬性組成物に関する。
コンクリート等の水硬性組成物に対して、流動性を付与するためにナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系等の混和剤(高性能減水剤等)が用いられている。減水剤等の混和剤については、水硬性組成物に対する流動性の付与、流動性の保持性(流動保持性)、硬化遅延の防止など、種々の性能が求められ、ポリカルボン酸系混和剤についてもこうした観点から改善が提案されている。
一方、近年、コンクリートの高強度化・高耐久化が進み、水/セメント比が低くなる傾向にある。水/セメント比が低くなると、水和発熱による温度ひび割れの危険性が高くなる為、初期水和発熱を抑制したセメントを使用する事で回避されている。具体的には高炉セメントや低熱ポルトランドセメント、更には中庸熱ポルトランドセメントが使用される。
特許文献1には、炭素数2〜3のオキシアルキレン基25〜300モルを有するエチレン性不飽和単量体単位とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単位とを構造単位として有する共重合体からなるコンクリート混和剤を、高性能減水剤と併用することが開示されている。また、特許文献2には、ポリオキシアルキレン基を有するエチレン系単量体、不飽和有機酸系単量体及びアルカリ性水溶液中において加水分解されうる単量体の3元共重合体からなるセメント混和剤、特許文献3にはポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、モノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及び不飽和結合を有するカルボン酸系単量体の共重合体からなるセメント混和剤がスランプ保持性の向上や作業性の改善に優れる事が開示されている。
一方、特許文献4には、特定のモノヒドロキシ化合物を所定割合でグラフト反応させたグラフト共重合体からなるコンクリート用流動性低下防止剤が開示されている。このコンクリート用流動性低下防止剤は、セメントとして中庸熱ポルトランドセメントや高炉スラグセメントを用いた場合であっても、調製したコンクリートのスランプロスを防止できるとされている。
特開平10−81549号公報 特開2005−330129号公報 特開2003−286057号公報 特開2003−34565号公報
初期水和発熱を抑えたセメントには、初期水和に関わる3CaO・SiO2(C3S)や3CaO・Al23(C3A)の量が少なくなっている為、水和層に取り込まれる分散剤量が少なくなる。結果として、少ない添加量の分散剤で分散できる傾向にあるが、残存分散剤が少なくなる為、流動保持性については悪化する傾向にある。この点、前記特許文献1〜3には、初期水和発熱を抑制したセメントを用いた場合のこのような問題を解決する手段について具体的な言及はされていない。また、前記特許文献4のコンクリート用流動性低下防止剤も、その効果は十分とは言い難い。
特許文献1では、比較的長いアルキレンオキシド鎖のものを好適としている為、初期流動性が高くなり、高炉セメントなどを用いた場合は十分な流動保持性が得られにくくなる。また、特許文献2では、初期流動性と流動保持性の両立を目指しているが、初期水和発熱を抑制したセメントを用いた場合に好適な態様は示していない。また、特許文献3では、カルボン酸ユニットの導入量が多く、エステル系ユニットが少ないため、普通ポルトランドセメントにおいても流動保持性が不十分であった。
本発明の課題は、水和発熱によるひび割れの回避に好適な初期水和発熱を抑制したセメントを用いた水硬性組成物について、初期流動性と流動保持性を向上させて作業性の良好な水硬性組成物を提供することである。
本発明は、一般式(1)で表される単量体1と一般式(2)で表される単量体2と一般式(3)で表される単量体3とを重合して得られる共重合体と、初期水和が抑制されたセメントとを含有する水硬性組成物であって、
前記共重合体の構成単量体中、単量体1の含有率が25〜85重量%であり、単量体2の含有率が10〜70重量%であり、単量体3の含有率が5〜20重量%であり、単量体2/単量体3(重量比)で1超である水硬性組成物に関する。
Figure 2009173527
〔式中、R1〜R3は、それぞれ水素原子又はメチル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、20〜50の数を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、qは0〜2の整数、pは0又は1を表す。〕
Figure 2009173527
〔式中、R5は、炭素数1〜4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基である。〕
Figure 2009173527
〔式中、R6〜R8は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の整数を表す。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基を表す。〕
本発明によれば、初期水和が抑制されたセメントを用いた水硬性組成物の初期流動性と流動保持性を向上させことができ、温度ひび割れを抑制できる作業性の良好な水硬性組成物が提供される。
<初期水和が抑制されたセメント>
本発明で用いる初期水和が抑制されたセメントは、水和反応により硬化する物性を有する粉体(水硬性粉体)の一種であり、初期水和発熱抑制の観点から、3CaO・SiO2や3CaO・Al23の含有量が少ないものである。具体的には、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントや、シリカセメント、フライアッシュセメント、高炉セメントなどの混合セメントが挙げられる。またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。好ましくは、高炉セメント、中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントからなる群より選ばれる1種以上であり、作業性の観点では高炉セメントが特に好ましい。本発明では、初期水和が抑制されたセメント以外の水硬性粉体を併用してもよいが、用いる全水硬性粉体中、初期水和が抑制されたセメントの含有量は、水和発熱による温度ひび割れ抑制の観点から、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、100重量%が更に好ましい。
<単量体1>
単量体1は、ポリアルキレングリコールモノエステル系単量体及びポリアルキレングリコールアルキルエーテル系単量体等の不飽和ポリアルキレングリコール系単量体であり、単量体1において、一般式(1)中のAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が挙げられ、中でもオキシエチレン基が好ましい。nはAOの平均付加モル数であり、20〜50の数を表し、初期水和が抑制されたセメントに対する初期流動性・流動保持性の汎用性の観点から、好ましくは20〜40、より好ましくは20〜30、更に好ましくは21〜28、更により好ましくは22〜25である。R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、流動保持性の観点から好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
単量体1としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステル化物や、アクリル酸又はメタクリル酸へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシドの付加物、前記片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アルケニルアルコールとのエーテル化物、及びアルケニルアルコールへの炭素数2〜4のアルキレンオキシドの付加物等を用いることができる。具体的には、ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ω−メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、3−メチル−3−ブテン−1−オールのポリオキシエチレンモノアリルエーテル等を挙げることができる。流動保持性の観点から、片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステル化物が好ましく、好ましくはω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールモノアクリレートが挙げられ、ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートがより好ましい。
<単量体2>
単量体2は、アクリル酸エステル系単量体であり、構造上、アクリル酸とR5−OHで表されるアルコール化合物のエステルとして捉えることができ、R5は、炭素数1〜4、好ましくは2〜3のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基である。ヘテロ原子は酸素原子、窒素原子等である。
本発明では、単量体2の少なくとも一部として、一般式(2)で表される単量体のうち特定の単量体を用いる事が好ましい。すなわち、単量体2の少なくとも一部として、一般式(2)中のR5が、一般式(2)中のR5に対応するR5−OHのlogP値と、単量体2の分子量Mwとが、[R5−OHのlogP値/単量体(2)の分子量Mw]<−0.009となる化合物(以下、単量体2−1という)を用いることが好ましい。また、単量体2−1以外、即ち単量体2のうち[R5−OHのlogP値/単量体(2)の分子量Mw]≧−0.009となる化合物を、単量体2−2という。このような関係を満たすR5−OHとしてエチレングリコール(logP値:−1.369)、グリセリン(logP値:−1.538)等が挙げられる。単量体2−1の比率は、水硬性粉末の種類に対する汎用性、更には流動保持性及び粘性の観点から、単量体2中で30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましく、実質100モル%が更により好ましい。
単量体2−1としては、流動性保持の観点から2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。また、単量体2−2としては、メチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート等が挙げられる。単量体2−1及び単量体2−2は、それぞれ二種以上の単量体を用いてもよい。
<単量体3>
単量体3は、一般式(4)において、R6〜R8は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよい。その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の整数を表す。R1は水素原子が好ましく、R2はメチル基が好ましい。R3は水素原子又は(CH2)sCOOM7が好ましい。
1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基である。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属が好ましい。アルカリ土類金属の「1/2原子」とは、2価であるうちの1価がM1、M2に用いられることを表す。
具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はこれらの無水物もしくは塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはエステルが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味である(以下同様)。
<共重合体>
本発明に用いられる共重合体においては、単量体2を導入することで、水硬性組成物への添加初期から経時に渡り水硬性組成物の流動性を維持できる。これは、水硬性組成物への添加前には単量体2はアクリル酸のエステル構造を有するため、添加後に経時的にエステル結合の加水分解が進行し、カルボン酸型又はカルボン酸塩型になり、前記共重合体が水硬性粉体表面に徐々に吸着し、水硬性粉体の分散を維持することにより、水硬性粉体の水和による粘度上昇を相殺していると推察される。類似する構造であっても、アクリル酸より加水分解しにくいメタクリル酸のエステルやそのアルキレンオキサイド付加物では単量体2のような効果は得られない。また、単量体3を導入する事で、初期に所定の吸着量を示し、初期流動性を示す事ができる。その際、単量体3の含有量(重量%)と単量体2の含有量(重量%)の量的関係は流動性や流動保持性に影響するため、本発明では、後述の特定の重量比で両者を用いる。
また、単量体2−1については、単量体2−1の分子量及び単量体2−1の置換基R5と水酸基OHにより構成されるR5−OHで表される化合物のlogP(水/オクタノール分配係数)(以下、logPは特記しない限り当該化合物のlogPをいう)と、水硬性粉体の分散性の発現速度とに、相関があることを見出した。すなわち、アクリル酸のエステル置換基によって加水分解性が異なり、加水分解性は、水分子のエステルへの求核とアルコールの脱離のステップがあり、それぞれ立体障害の大きさとアルコールの脱離のしやすさが寄与すると考えられた。単量体の分子量が大きい(立体障害が大きい)ほど加水分解率が小さくなり、エステルを構成するアルコール化合物の加水分解基の親水性(logP)の値が小さいほど加水分解率が大きくなる。そこで、logPをアクリル酸エステルの分子量Mwで規格化し、導入した基の効率性(カルボキシル基の生成率)の指標とした。したがって、logP/分子量Mwの値が小さいほど、単量体2−1の加水分解性が大きい。本発明ではこの値が−0.009以下であり、−0.010以下がより好ましく、−0.011以下が更に好ましい。logPは、CS Chem Draw Ultra(Ver.8.0)(頒布元 ケンブリッジソフト)のソフトウエアを用いてClogP値として得ることができ、例えばWindows(登録商標) XPの稼動するパーソナルコンピュータで前記ソフトウエアを実行できる。
従来は、ポリカルボン酸系重合体のAO平均付加モル数がある程度大きくないと立体反発による流動性の寄与がなく、加水分解による吸着基の増加では、経時での流動性保持効果が小さいと考えられていた(特許文献2、段落0010)。しかし、本発明者は共重合体の構造と流動性や保持性能とを詳細に検討した結果、立体反発ユニット(AO平均付加ユニット)、経時において吸着基となり得る特定のユニット(加水分解ユニット)及び初期の吸着ユニット(カルボン酸ユニット)のバランスを調整することで、初期流動性と流動保持性に優れる共重合体が得られるという知見を得た。更に、この共重合体を、初期水和発熱を抑制したセメントを含む水硬性組成物に使用する事で、温度ひび割れの発生を低減した作業性(施工性)良好な水硬性組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明の共重合体は、該共重合体の構成単量体中、単量体1の含有率が25〜85重量%であり、単量体2の含有率が10〜70重量%であり、単量体3の含有率が5〜20重量%である。また、共重合体の構成単量体中、単量体2/単量体3(重量比)が1超である。更に、共重合体の構成単量体中、単量体1、単量体2及び単量体3の合計含有率は90重量%以上が好ましい。この含有率は、共重合体の重合の際の単量体の仕込み時の含有率であってもよい。単量体1の含有率が25重量%未満では初期流動性及び流動保持性が低下し、85重量%を超えても吸着性が低くなる為、初期流動性・流動保持性が低下する。単量体2の含有率が10重量%未満又は単量体3の比率が20重量%を超えると流動保持性が低下する。
単量体1の含有率は、流動性及び流動保持性の観点から、共重合体の構成単量体中、好ましくは28〜78重量%であり、より好ましくは35〜70重量%であり、更に好ましくは50〜70重量%である。また、単量体2の含有率は、流動保持性及びセメント汎用性の観点から、共重合体の構成単量体中、好ましくは15〜65重量%であり、より好ましくは18〜50重量%、更に好ましくは18〜40重量%である。また、単量体3の含有率は、初期流動性の観点から、共重合体の構成単量体中、好ましくは7〜18重量%であり、より好ましくは8〜16重量%、更に好ましくは10〜15重量%である。これらの含有率は、共重合体の重合の際に用いる全単量体中の含有率であってもよい。
本発明の共重合体は、nの異なる単量体1を2種以上併用することができる。その際は上記単量体1の比率は、nの異なる単量体1の平均値(モル分率による)をnとする(以下同様)。
共重合体の全構成単量体中の単量体1と単量体2及び単量体3の合計は、流動保持性の観点から90重量%以上、更に95重量%以上、より更に98重量%以上が好ましい。
また、構成単量体中の単量体2と単量体3の合計含有率は、流動保持性の観点から好ましくは22〜72重量%であり、更に好ましくは30〜65重量%である。
また、流動性及び流動保持性の観点から、共重合体の構成単量体中の重量比、単量体2/単量体3は1超であり、好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上である。
単量体1、単量体2及び単量体3の重量比(単量体1/単量体2/単量体3)は流動保持性の観点から、25〜85/10〜70/5〜20、好ましくは28〜78/15〜60/5〜15、より好ましくは35〜75/20〜50/8〜15、更に好ましくは40〜70/25〜40/10〜15である。
また本発明の共重合体は、単量体1〜3と共重合可能な単量体4を共重合しても良い。単量体4は、初期流動性や流動保持性能を抑制する観点から、共重合体の全構成単量体中好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは2.5重量%以下、更に好ましくは1.0重量%以下である。
なお、単量体4としては、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸エステル、ポリアルキレレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル、を挙げることができ、またこれらの何れか1種以上のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩や無水マレイン酸などの酸無水物であっても良い。
その他の単量体4として、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、これら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩や、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などの強酸の酸基又はそれらの中和基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体を例えば共重合体の分子量の調整等のために共重合してもよい。これらの強酸の酸基は水硬性組成物中で安定な塩として存在しセメント等の水硬性粉体への吸着基としては機能しない。
本発明における共重合体は公知の方法で製造することができる。例えば、特開昭62−119147号公報、特開昭62−78137号公報等に記載された溶液重合法が挙げられる。即ち、適当な溶媒中で、上記単量体1及び単量体2を上記の割合で組み合わせて重合させることにより製造される。すなわち、共重合体の重合の際に用いる全単量体中、単量体1の比率を25〜85重量%、単量体2の比率を10〜70重量%、単量体3の比率を5〜20重量%として重合させる。
溶液重合法において用いる溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。取り扱いと反応設備から考慮すると、水及びメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
水系の重合開始剤としては、過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が使用される。水系以外の溶剤を用いる溶液重合にはベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物等が用いられる。
連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、特に一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’又はSO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
本発明に係る共重合体の製造方法の一例を示す。反応容器に所定量の水を仕込み、窒素等の不活性気体で雰囲気を置換し昇温する。予め単量体1、単量体2、単量体3、連鎖移動剤を水に混合溶解したものと、重合開始剤を水に溶解したものとを用意し、0.5〜5時間かけて反応容器に滴下する。その際、各単量体、連鎖移動剤及び重合開始剤を別々に滴下してもよく、また、単量体の混合溶液を予め反応容器に仕込み、重合開始剤のみを滴下することも可能である。すなわち、連鎖移動剤、重合開始剤、その他の添加剤は、単量体溶液とは別に添加剤溶液として添加しても良いし、単量体溶液に配合して添加してもよいが、重合の安定性の観点からは、単量体溶液とは別に添加剤溶液として反応系に供給することが好ましい。また、好ましくは所定時間の熟成を行う。なお、重合開始剤は、全量
を単量体と同時に滴下しても良いし、分割して添加しても良いが、分割して添加することが未反応単量体の低減の点では好ましい。例えば、最終的に使用する重合開始剤の全量中、1/2〜2/3の重合開始剤を単量体と同時に添加し、残部を単量体滴下終了後1〜2時間熟成した後、添加することが好ましい。また、残部を単量体滴下終了後添加し、1〜2時間熟成することもできる。必要に応じ、熟成終了後に更にアルカリ剤(水酸化ナトリウム等)で中和し、本発明に係る共重合体を得る。
また、本発明に係る共重合体は、単量体1を含有する液Aと、単量体2を含有する液Bと、単量体3を含有する液Cとを反応系に導入して共重合反応に用いることもでき、液A、液B及び液Cはそれぞれ別々に反応系に導入することができる。また、反応系に導入される液A、液B及び液Cの全量のそれぞれ90重量%以上を並行して反応系に導入することが好ましい。液A、液B及び液Cの反応系への導入方法として、具体的には滴下及び噴霧が挙げられ、液A、液B及び液Cの粘度の観点から滴下が好ましい。液Aは凝固点の観点から水を含む溶液とすることが好ましく、液Bは加水分解の観点から水を含まない溶液とすることが好ましい。液Aのノズル(導入口)と液Bのノズル(導入口)と液Cのノズル(導入口)の距離は任意に設定できる。また、滴下は気中及び液中いずれも可能であるが、液を全て導入する観点から気中滴下が好ましい。ノズル径は液滴の表面積を大きくする点及び溶解性の点から小さい方が好ましい。このように液Aと液Bと液Cとを別々に反応系に導入することで、単量体2の水との接触機会を少なくし加水分解が抑制される。また、反応系に導入される液A、液B及び液Cの全量のそれぞれ90重量%以上を並行して反応系に導入することで、各単量体がランダムに導入された共重合体が得られる。液A、液B及び液Cの合計量の90重量%以上とは、言い換えると、反応系に単独で導入される液A、液B及び液Cの量が、反応系に導入される液A、液B及び液Cの全量のそれぞれ10重量%以下であることである。
また、本発明に係る共重合体の製造にあたっては、材料、温度及び配合に対する汎用性の観点から、重合中に単量体1、単量体2、単量体3の共重合モル比を一回以上変化させて、重合させることが好ましい。
本発明における共重合体の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレングリコール換算)は、流動保持性の観点から、5000〜200000の範囲が好ましく、10000〜150000がより好ましく、15000〜100000が更に好ましく、20000〜80000が好ましく、25000〜60000がより更に好ましく、30000〜50000がより更に好ましい。
本発明に係る共重合体は、本発明の水硬性組成物を製造する際に、水溶液として用いることができる。
本発明の水硬性組成物は、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基及びそれらの中和基から選ばれる少なくとも1種を有する重合体A(以下、重合体Aという)とを含有しても良い。一般に、重合体Aは、上記本発明に係る共重合体以外の重合体であり、水硬性組成物用の混和剤(分散剤等)として知られている重合体である。本発明では、本発明に係る共重合体と重合体Aとを含有する水溶液として用いることができる。
重合体Aのうち、カルボン酸基又はその中和基を有するものとしては、オキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基とカルボン酸を有する重合体である。例えば、特開平7−223852号公報に示される炭素数2〜3のオキシアルキレン基110〜300モルを導入したポリアルキレングリコールモノエステル系単量体とアクリル酸系重合体、特表2004−519406号公報の重合体A、Bに示されるような重合体や、特開2004−210587号公報や特開2004−210589号公報に記載されているアミド系マクロモノマーを含むような重合体、特開2003−128738号公報や特開2006−525219号公報に記載されているポリエチレンイミンを含有する重合体が挙げられる。
カルボン酸基又はその中和基を有する重合体Aの市販品としては、(1)BASFポゾリス(株)のレオビルドSP8LS/8LSR、SP8LS、SP8LSR、SP8N、SP8S、SP8R、SP8SE/8RE、SP8SE、SP8RE、SP8SBシリーズ(Sタイプ、Mタイプ、Lタイプ、LLタイプ)、SP8HE、SP8HR、SP8SV/8RV、SP8RV、SP8HU、SP9N、SP9R、SP9HS、レオビルド8000シリーズ、(2)日本シーカ(株)のシーカメント1100NT、シーカメント1100NTR、シーカメント2300、(3)(株)フローリックのフローリックSF500S(500SB)、フローリックSF500H、フローリックSF500R(500RB)、(4)竹本油脂(株)のチューポールHP-8、HP-11、HP-8R、HP-11R、SSP-104、NV-G1、NV-G5、(5)(株)日本触媒のアクアロックFC600S、アクアロックFC900、(6)日本油脂(株)のマリアリムAKM、マリアリムEKMなどが挙げられるが、この限りではない。
また、重合体Aのうち、リン酸基又はその中和基を有するものとしては、ポリオキシアルキレン基とリン酸基を有する重合体である。例えば、特開2006−052381号公報記載の重合体が挙げられる。具体的には、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を平均3〜200モル導入したポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルと、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
重合体Aのうち、スルホン酸基又はその中和基を有するものとしては、ナフタレン系重合体(例えばマイテイ150:花王(株)製)、メラミン系重合体(例えばマイテイ150V−2:花王(株)製)、アミノスルホン酸系重合体(例えばパリックFP:藤沢化学(株)製)が挙げられる。
本発明に係る共重合体と重合体Aの重量比率(本発明に係る共重合体/重合体A(固形分換算))は、流動性と流動保持性の観点から5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましく、15/85〜85/15が更に好ましく、20/80〜80/20がより更に好ましい。
また、本発明の水硬性組成物には、重合体A以外に、例えば高性能減水剤、AE剤、AE減水剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、防水剤、防泡剤や珪砂、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等の公知の添加剤(材)を配合することができる。
<水硬性組成物>
本発明の水硬性組成物は、上記本発明に係る共重合体と、初期水和が抑制されたセメントと、水とを含有する。重合体Aを用いる場合、本発明に係る共重合体と重合体Aは、予め混合して用いても良いし、別々に用いても良い。
水硬性粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。本発明の水硬性組成物は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
特に、生コンクリートの製造現場においては、中庸熱ポルトランドセメント、高炉セメントなどの初期水和が抑制されたセメントを用いたコンクリートを日常出荷している為、その流動性や流動保持性などの作業性を確保する事は重要なことである。
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記されることがある。〕が好ましくは60重量%以下、より好ましくは58〜15重量%、更に好ましくは57〜18重量%、更に好ましくは56〜20重量%、より更に好ましくは55〜23重量%であることができる。
水硬性組成物において、本発明に係る共重合体は、水硬性粉体100重量部に対して0.002〜5重量部、更に0.01〜4重量部、更に0.02〜2重量部の比率(固形分換算)で添加されることが好ましい。重合体Aは、水硬性粉体100重量部に対して0.01〜8重量部、更に0.02〜4重量部の比率(固形分換算)で添加されることが好ましい。
<製造例>
製造例1
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水126.1gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23、水分35.3%、純度93.6%)165.6gとメタクリル酸16.0gと3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)1.72gとを混合溶解した単量体溶液とヒドロキシエチルアクリレート(表中HEAと表記する)43.3g、過硫酸アンモニウム水溶液(I)〔過硫酸アンモニウム(和光純薬工業株式会社、試薬)2.66gを水45gに溶解したもの〕の3者を、同時に滴下を開始し、それぞれ1.5時間かけて滴下した後、過硫酸アンモニウム水溶液(II)〔過硫酸アンモニウム0.44gを水15gに溶解したもの〕を0.5時間かけて滴下した。その後、80℃で1時間熟成した。熟成終了後に20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、本発明品1の共重合体の水溶液を得た。なお、ヒドロキシエチルアクリレートは、一般式(2)で、R5がヒドロキシエチル基の化合物(分子量116.1)であり、R5−OHで表される化合物のlogP値が−1.369の分子量116.1の化合物である。よって、ヒドロキシエチルアクリレートは、[logP値/単量体(2)の分子量Mw]は−1.369/116.1=−0.0118である。
なお、ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートは、特許第3874917号記載の方法に準じて、エステル化反応により合成し、未反応物として残留するメタクリル酸を留去により、1重量%未満にしたものを用いた。
具体的には、メタクリル酸とポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルを、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸、重合禁止剤としてハイドロキノンを用いてエステル化反応させた後、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いて酸触媒を失活させ、真空蒸留法により未反応のメタクリル酸を留去した。
製造例9
攪拌機付きガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均25モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル185.8gとイオン交換水100.0gを仕込み、65℃まで昇温した。そこに2%過酸化水素水溶液42.7gを滴下した。滴下後、アクリル酸29.5gとイオン交換水16.0gを混合した水溶液、およびヒドロキシエチルアクリレート(表中HEAと表記する)80.1gをそれぞれ3.0時間かけて滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社、試薬)2.67g、L−アスコルビン酸1.11g、イオン交換水71.7gを混合溶解した水溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃を1時間維持し反応を終了した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、本発明品9の共重合体の水溶液を得た。
製造例2〜8及び比較製造例1〜6
表1の単量体及び比率で製造例1と同様に本発明品2〜8及び比較製造例1〜6の共重合体の水溶液を得た。
比較製造例7
表1の単量体及び比率で製造例9と同様に比較品7の共重合体の水溶液を得た。
得られた共重合体を以下の実施例及び比較例に用いた。
Figure 2009173527
表中の記号は以下の意味である。なお、単量体の重量%は、共重合体の構成単量体中の重量%である。
・ME−PEG:ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、カッコ内の数値は、エチレンオキサイドの平均付加モル数である。
・IPN:3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル、カッコ内の数値は、エチレンオキサイドの平均付加モル数である。
・HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート(エチレングリコールlogP:−1.369、logP/Mw:−1.369/116.1=−0.0118、和光純薬工業株式会社、試薬)
コンクリートの断熱温度上昇は、Q(t)=Qmax(1−e-γt)の式で表され、単位セメント量ごとのQmaxの数値が知られている(「コンクリート便覧(第2版)」日本コンクリート工学協会編、技報堂出版株式会社、1996年2月発行)。なお、下表において、普通は普通ポルトランドセメント、高炉は高炉セメント、中庸熱は中庸熱ポルトランドセメントである。
Figure 2009173527

これらのQmaxの温度からも、普通ポルトランドセメントに比べ、高炉セメント及び中庸熱ポルトランドセメントの方が断熱温度上昇を抑制している、すなわち初期水和が抑制されていることが分かる。
実施例1(ペースト試験)
<ペースト配合>
Figure 2009173527
W:上水道水
C:高炉セメント(B種)(太平洋セメント(株)製)
500ml容器に、配合1に従い、セメント及び表1の共重合体(対セメント100重量部に対し0.08重量部)を含む水を投入し、ハンドミキサー(低速63rpm程度)で2分間混練し、ペーストを得た。
<初期流動性及び流動保持性の評価>
得られたペーストを円筒状コーン(φ50mm×51mm)に充填し、垂直に引き上げた時の広がり(最も長い直径の長さとそれと垂直方向の長さの平均値)をペーストフローとして測定した。測定は、混練終了直後(0分後)、混練終了120分後に行い、フロー値の経時変化を測定した。流動保持性の指標として、120分後のフロー値/0分後のフロー値×100(%)を流動保持率として算出した。混練終了直後のフロー値を初期流動性とした。共重合体を添加しない場合の初期流動性は100mmであった。
Figure 2009173527
この評価では、初期流動性140mm以上で且つ流動保持率は80%以上であれば、水硬性組成物として作業性良好であると判断できる。
表3の結果から以下のような考察が得られる。
カルボン酸系単量体の含有率が高くなるほど初期流動性が向上する傾向にある。カルボン酸系単量体(単量体3)の含有率が0及び2.5重量%である比較例1−2及び1−3については初期流動性が140mm未満であり、好ましくない。カルボン酸系単量体(単量体3)の含有率が5重量%の実施例1−3では初期流動性が140mmを超え、10重量%(実施例1−1、1−4)、15重量%(実施例1−2、1−5)では更に初期流動性が高くなった。単量体1のAO平均付加モル数nについては、nが9、12、17であるものが初期流動性が低くなり(比較例1−4〜1−6)、nが23、45であるものが良好である事が分かる(実施例1−1、1−6)。また、単量体1の含有率が、共重合体の構成単量体中、50〜70重量%のものは、同じAO平均付加モル数n、単量体組成の場合で対比すると、初期流動性及び流動保持性の両方において、より良好となる事が分かる(実施例1−1、1−2と実施例1−7、1−8)。
一方で、流動保持率については、単量体2の含有率の低下と共に低下する傾向にあるが、単量体2の含有率が単量体3の含有率を上回っている範囲では(実施例1−1〜1−6)、流動保持率が80%以上となり、好ましい。しかし、比較例1−1のように単量体2の含有率が単量体3の含有率を下回ると流動保持率が80%以下となり好ましくない。比較例1−1は単量体3の含有率が20重量%であり、初期流動性はよいものの、流動保持性の点で著しく劣るものである。単量体の種類を変えても、単量体2の含有率が単量体3の含有率を上回る実施例1−9は流動保持率が80%以上となり良好な結果が得られるが、単量体2の含有率が単量体3の含有率を下回る比較例1−7では流動保持率が80%以下となり好ましくない。

Claims (6)

  1. 一般式(1)で表される単量体1と一般式(2)で表される単量体2と一般式(3)で表される単量体3とを重合して得られる共重合体と、初期水和が抑制されたセメントとを含有する水硬性組成物であって、
    前記共重合体の構成単量体中、単量体1の含有率が25〜85重量%であり、単量体2の含有率が10〜70重量%であり、単量体3の含有率が5〜20重量%であり、単量体2/単量体3(重量比)で1超である水硬性組成物。
    Figure 2009173527

    〔式中、R1〜R3は、それぞれ水素原子又はメチル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、20〜50の数を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、qは0〜2の整数、pは0又は1を表す。〕
    Figure 2009173527

    〔式中、R5は、炭素数1〜4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基である。〕
    Figure 2009173527

    〔式中、R6〜R8は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の整数を表す。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基を表す。〕
  2. 初期水和が抑制されたセメントが、高炉セメント、中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントからなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載の水硬性組成物。
  3. 初期水和が抑制されたセメントの含有量が、水硬性組成物の水硬性粉体中、70重量%以上である請求項1又は2記載の水硬性組成物。
  4. 単量体2の少なくとも一部が、[一般式(2)中のR5に対応するアルコール化合物R5−OHのlogP値/単量体2の分子量Mw]<−0.009の関係を満たす請求項1〜3何れか記載の水硬性組成物。
  5. [一般式(2)中のR5に対応するアルコール化合物R5−OHのlogP値/単量体2の分子量Mw]<−0.009の関係を満たす単量体の比率が、単量体2中で30モル%以上である請求項1〜4何れか記載の水硬性組成物。
  6. 一般式(2)のR5が、ヒドロキシエチル基又はグリセロール基である請求項1〜5何れか記載の水硬性組成物。
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