JP2009166713A - 建設機械のタンク - Google Patents

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Yasumitsu Fujii
靖充 藤井
Kenji Kawamoto
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Abstract

【課題】ビーディング加工による補剛・補強効果を高め、他の補強手段を追加せずにタンク側面の必要な剛性と強度を確保する。
【解決手段】コの字形の二枚の板材25,26を、互いのつなぎ目に外向きに突出する耳部27が形成される状態で直方体状に組み合わせ、かつ、耳部27で溶接することによってタンク本体28を構成する。このタンク本体28には、左、前、後の各タンク側面28c,28e,28fに、外向きに突出する凸面としての第1ビーディング部とこの第1ビーディング部からさらに外向きに突出する凸面としての第2ビーディングとから成る二段凸面状の補強部29を設けた。
【選択図】図2

Description

本発明は油圧ショベル等の建設機械に設置されるタンク(燃料タンクまたは作動油タンク)に関するものである。
油圧ショベルを例にとって背景技術を説明する。
油圧ショベルは、図11に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が縦軸(旋回中心)Oまわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2のベースとなるアッパーフレーム3上に、キャビン4を含む各種設備が搭載されるとともに、同フレーム3の前部に作業アタッチメント5が装着されて構成される。
なお、この明細書においてはキャビン4の位置を左側前部とし、これを基準としてアッパーフレーム3及びタンク各側面についての「左右」及び「前後」の方向性をいうものとする。
図12にアッパーフレーム構造を示す。
アッパーフレーム3は底板6を備え、車幅(左右)方向の中間部においてこの底板6上に前後方向のほぼ全長に亘る左右一対の縦板(縦リブ等と称される場合もある)7,8が溶接によって取付けられている。
縦板7,8は、全体として側面視ほぼ三角形の垂直板状に形成され、その頂点部に図11中の作業アタッチメント8の基端部が取付けられる。
これら底板6と両縦板7,8とによってアッパーフレーム3の主骨格が構成されると同時に、両縦板7,8間にセンターセクションAが構成される。
また、両縦板7,8の左右の外側面に複数の梁材が取付けられることにより、センターセクションAの左側にキャビン4が搭載される左サイドデッキB、右側に右サイドデッキCが構成される。
一方、アッパーフレーム3の前後方向ほぼ中間部に、センターセクションA及び両サイドデッキB,Cをそれぞれ前後に仕切る形で底板6上に左右方向に延びる中間、左側、右側の各仕切板9,10,11が取付けられている。
各仕切板9〜11によって仕切られたアッパーフレーム後部において、中央にエンジン12、右側に油圧ポンプ13、左側にラジエータ14及び冷却ファン15が設置される。
また、右仕切板11で仕切られた右サイドデッキCの前部エリアには作動油タンク16及び燃料タンク17がタンクブラケット18,19,20を介して設置される。
この作動油、燃料両タンク16,17は、基本的に同じ構成を備えている。
すなわち、図13〜図15に示すようにこの両タンク16,17の本体24は、コの字形の二枚の板材21,22を、互いのつなぎ目に外向きに庇状に突出する耳部23が形成される状態で直方体状に組み合わせ、かつ、耳部23で溶接(図15中、Wはこの溶接部分である)することによって天、底、左、右、前、後の各側面24a〜24fを備えた箱として構成される。
そして、このタンク本体24に必要な付属部品(作動油タンク16における配管接続部、燃料タンク17におけるフィラーネック等)が取付けられてタンク16,17が組立てられる。
しかし、このようなタンク構成では、内圧によってタンク本体24の各側面(以下、単にタンク側面という場合がある)の変形やこれに伴う割れ、クラックの発生が生じ易く、寿命が短いという問題があった。
そこで特許文献1,2に示されるように、タンク側面に外向きの凸面または内向きの凹面をビーディング加工して補剛・補強する技術が提案されている。
実開平6−222111号公報 実開平7−25304号公報
ビーディング加工による補剛・補強効果は、一般的にビーディングが深いほど高いことが知られている。
しかし、公知技術では、いずれも一段プレスにより一段の凸面または凹面を加工するだけであるため、加工できる深さに制限があり、補剛・補強効果に限界があった。
このため、ビーディング加工に加えて板厚をアップしたり補強部材を追加したりして不足分を補っているのが実状であり、必要な面剛性と強度を確保するにはコストアップと重量増加を余儀なくされていた。
そこで本発明は、ビーディング加工による補剛・補強効果を高め、他の補強手段を追加せずにタンク側面の必要な剛性と強度を確保することができる建設機械のタンクを提供するものである。
請求項1の発明は、タンク本体の側面に、ビーディング加工により、外向きに突出する凸面または内向きに突出する凹面としての第1ビーディング部と、この第1ビーディング部からさらに同ビーディング部と同方向に突出する凸面または凹面としての第2ビーディング部とから成る補強部を設けたものである。
請求項2の発明は、複数枚の板材を、互いのつなぎ目に外向きに突出する耳部が形成される状態で直方体状に組み合わせ、かつ、上記耳部で溶接することによってタンク本体を形成する建設機械のタンクにおいて、上記タンク本体の各側面のうち、上記耳部の突出方向の側面に、外向きに突出する凸面としての第1ビーディング部と、この第1ビーディング部からさらに外向きに突出する凸面としての第2ビーディング部とから成る補強部を、上記第2ビーディング部が上記耳部よりも外側に突出しないことを条件として設けたものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、第1及び第2両ビーディング部をそれぞれ四角形の凸面または凹面として形成したものである。
本発明によると、タンク側面に、外向きの凸面または内向きの凹面としての第1ビーディング部と、この第1ビーディング部から同ビーディングと同方向に突出する凸面または凹面としての第2ビーディング部とから成る二段ビーディング構成の補強部を設けたから、補強部のトータルのビーディング深さを深くすることができる。
これにより、公知技術と比較して、ビーディングによるタンク側面の補剛・補強効果を飛躍的に高め、ビーディング以外の補強手段(板厚の増加や補強部材の追加等)を加えるまでもなく、タンク側面の必要な剛性と強度を確保して、内圧によるタンク側面の変形や割れ、クラック発生を抑え、タンク寿命を改善することができる。
この場合、とくに請求項3の発明のように第1及び第2両ビーディング部をそれぞれ四角形の凸面または凹面として形成すれば、直線溝状やX状の凸面として形成した場合と比べてタンク側面の補剛・補強効果(変形や割れ、クラック発生の抑制効果)が顕著となり、高い寿命改善効果が得られることが発明者によって実証された。
また、本発明によると、二段ビーディングによる深い凸面を外向きに形成することにより、タンクの実質容量を大きく増加させることができる。
一方、請求項2の発明によると、複数枚の板材を、互いのつなぎ目に外向きに突出する耳部が形成される状態で直方体状に組み合わせ、かつ、上記耳部で溶接することによってタンク本体を形成するタンクにおいて、タンク本体の各側面のうち、耳部の突出方向の側面に、二段凸面構成の補強部を、第2ビーディング部が耳部よりも外側に突出しないことを条件として設けたから、タンク側面が他の物と干渉する等の理由で位置制限を受ける場合(実施形態で詳しく説明する)に、補強部付きのタンク側面(耳部の突出方向の側面)が位置制限を受ける面となるようにタンク本体を組立てることにより、位置制限を守りながら、タンクの補剛・補強及び容量増加の効果を生かすことができる。
第1実施形態(図1〜図6参照)
図1,2はタンク本体28を後方から見た斜視図である。
このタンク本体28は、図13〜図15に示す従来のタンク本体24と同様に、コの字形の二枚の板材25,26を、一方の板材25が他方の板材26の端縁よりも外側に庇状に突出して溶接用の耳部27が形成される状態で組み合わせ、かつ、耳部27で溶接(図3,4中、Wはこの溶接部分である)することにより、天面28a、底面28b、左側面28c、右側面28d、前側面28e、後側面28fを備えた直方体の箱として構成されている。
このタンク本体28の各側面28a〜28fのうち、左、前、後の各側面28c,28e,28fに、ビーディング加工によって補強部29…が形成されている。
この補強部29は、図3,4(図3は水平断面図、図4は図3の前側部分の拡大図である)にも示すように、各側面28c〜28fの広い範囲で外向きに突出する四角形の凸面としての第1ビーディング部30と、この第1ビーディング30の内側で同ビーディング部30からさらに外向きに突出する四角形の凸面としての第2ビーディング部31から成る二段凸面状に形成されている。
図5(a)(b)はこの補強部29の加工法を簡単に示すもので、タンク組立前(通常は板材25,26をコの字形に曲げ加工する前)の段階で、補強部29に対応する雄型(下型)32と雌型(上型)32を持ったプレス機33で板材21,22プレス加工することにより、二段ビーディング構成の補強部29を一工程で形成することができる。
このように、二段ビーディング加工によって補強部29を形成することにより、補強部29のトータルのビーディング深さ(図4中の寸法A)を深くし、図13〜図15に示すビーディング加工無しの従来技術、及び一段ビーディングのみを施す公知技術と比較して、タンク側面の面剛性を飛躍的に高めることができる。
この点の効果を確かめるために発明者が行った解析結果について説明する。
解析は、図6(イ)〜(ニ)に示す同じ板厚、同じ構成の四種類のタンク本体(以下、イタイプ、ロタイプ…という)について補強構造のみを変えて行った。(イ)は本発明の実施形態である、左、前、後の三面に四角形の二段凸面としての補強部29を設けたもの、(ロ)は同じ三面に一段ビーディングによって四角形の凸面としての補強部35を設けたもの、(ハ)は一段ビーディングによってX形の凸面としての補強部36を設けたたもの、(ニ)はビーディング(補強部)無しのものをそれぞれ示す。なお、イ〜ハ各タイプについてビーディング深さは同じとした。
これら各タンク本体について、底面側を拘束した状態で内圧68.9kPaを負荷した場合に左、前、後の各側面に生じる最大変形量(mm)を解析により求めた。その結果を表1に示す。
Figure 2009166713
上表の通り、最悪の二タイプ(ビーディング無し)で26.2、9.0,9.0であったのに対し、イタイプ(実施形態)では、6.0、3.7,3.6の最良値が得られ、高い補剛・補強効果が確認された。
そして、この解析結果を元に寿命(タンク各側面にクラックや割れが最初に生じるまでの時間)を推測すると、公知技術であるロタイプに対して寿命を最大で3.2倍まで向上させることができる。
また、同じ二段凸面であっても、実施形態の四角形の二段凸面とすると、溝状やX状の二段凸面とした場合と比べてタンク側面の補剛・補強効果(変形や割れ、クラック発生の抑制効果)が顕著となり、より高い寿命改善効果が得られることが発明者の解析によって実証された。
さらに、このタンク本体28の構成によると、上記補強効果に加えて、二段ビーディングによって補強部29を深くできることにより、タンク容量を大きく増加させることができる。
ところで、補強部29は、補強効果の点ではビーディング加工が可能な範囲で深く形成するのが望ましい。反面、この実施形態のように補強部29を外向きの二段凸面としてビーディング加工する場合に、深くし過ぎると、この補強部29が、近接して設置される他の構造物と干渉する等の弊害が生じる場合がある。
詳述すると、実施形態のタンク本体28の構成を図12に示す油圧ショベルの作動油燃料両タンク16,17の本体に適用した場合、両タンク16,17が前後に近接して配置されることから、この相近接するタンク側面(動油タンク16の前側面28eと燃料タンク17の後側面28f)の補強部29,29同士が干渉するおそれがある。また、作動油タンク16の後側面28fの補強部29が右仕切板11と干渉し、燃料タンク17の前側面28eの補強部29がアッパーフレーム3の前端からはみ出るおそれがある。
そこでこの実施形態では、位置制限を受ける前後両側面28e,28fが耳部27の突出方向の面となるようにタンク本体28が組立てられ、かつ、図4に示すように、補強部29の最大突出寸法(第2ビーディング部31のタンク本体側面からの突出寸法)をA、耳部27の突出寸法をBとしてA≦B、つまり、第2ビーディング部31が耳部27よりも突出しないという条件下で補強部29が最大限に深く加工されている。
こうすれば、タンク設置時に補強部29と近接する相手方との干渉を回避し、あるいは補強部29が制限位置からはみ出ることを防止することができる。すなわち、位置制限を守りながら、タンクの補剛・補強及び容量増加の効果を生かすことができる。
なお、左側面28cは位置制限としてはとくに受けないため、補強部29を加工可能な範囲で深く形成してもよいが、加工効率等の点で同じプレス機により前、後両側面28e,28fと同じ深さに加工するのが望ましい。
他の実施形態(図7〜図10参照)
第1実施形態との相違点のみを説明する。
図7,8に示すように、左、前、後の各側面28c,28e,28fに、第1実施形態とは逆に内向きに突出する二段凹面としての補強部29…を形成してもよい(第2実施形態)。
また、一つのタンク本体28に外向き凸面としての補強部29と内向き凹面としての補強部29の双方を分けて設けてもよい。その例として図9に示す第3実施形態では、左側面28cに二段凹面としての補強部29、前後両側面28e,28fに二段凸面としての補強部29をそれぞれ形成している。
この両実施形態によっても、第1実施形態とほぼ同等の補剛・補強効果を得ることができる。
また、内向きの凹面としての補強部29を設ける場合は、この補強部付きの側面については他の物との干渉回避等の位置制限を受けないことから、補強部29を加工上可能な範囲で深く加工することができる。このため、補剛・補強効果の点で好ましいものとなる。
一方、一つのタンク側面に凸面もしくは凹面、またはこれらを組み合わせた複数の補強部29を左右または上下に間隔を置いて設けてもよい。その例として図10に示す第4実施形態では前側面28eに二つの凹面としての補強部29,29を左右に間隔を置いて設けている。
なお、油圧ショベルでは、通常、図12に示すように、作動油、燃料両タンク16,17の右側面が外部に臨む意匠面となり、天、底面28a,28bは付属部品が取付けられる。そこで上記各実施形態では、タンク本体28の天、底面28a,28bと右側面28dの三面については補強部29を設けずに平坦面として残す構成をとったが、これら各側面についても可能であれば補強部29を設けてもよい。
また、上記実施形態では、二枚のコの字形の板材25,26を組み合わせてタンク本体28を構成する場合のみについて説明したが、本発明は他のタンク本体構成をとる場合、たとえば一枚のコの字形の板材と三枚の平板材を組み合わせてタンク本体28を構成する場合や、六枚の四角形の平板材を組み合わせてタンク本体28を構成する場合にも上記同様に適用することができる。
さらに、補強部29の凸面または凹面形状は、上記実施形態の四角形が望ましいが、他の形状(三角形や五角形以上の多角形、円形等)としてもよい。
本発明の第1実施形態にかかるタンク本体の組立前の斜視図である。 同タンク本体の組立斜視図である。 同タンク本体の水平断面図である。 図3の一部拡大図である。 (a)(b)はタンク本体の補強部の加工法を説明するための図である。 (イ)〜(ニ)は実施形態のものを含めて補剛・補強効果を解析するための対象とした複数種類のタンク本体の概略斜視図である。 本発明の第2実施形態にかかるタンク本体の図3相当図である。 同図4相当図である。 本発明の第3実施形態にかかるタンク本体の図3相当図である。 本発明の第4実施形態にかかるタンク本体の図4相当図である。 油圧ショベルの概略側面図である。 油圧ショベルのアッパーフレームの概略平面図である。 従来のタンク本体の組立前の斜視図である。 同組立状態の斜視図である。 図14のXV−XV拡大断面図である。
符号の説明
25,26 タンク本体を構成するコの字形の板材
27 耳部
W 溶接部分
28 タンク本体
28a〜28f タンク本体の各側面
29 補強部
30 補強部の第1ビーディング部
31 補強部の第2ビーディング部

Claims (3)

  1. タンク本体の側面に、ビーディング加工により、外向きに突出する凸面または内向きに突出する凹面としての第1ビーディング部と、この第1ビーディング部からさらに同ビーディング部と同方向に突出する凸面または凹面としての第2ビーディング部とから成る補強部を設けたことを特徴とする建設機械のタンク。
  2. 複数枚の板材を、互いのつなぎ目に外向きに突出する耳部が形成される状態で直方体状に組み合わせ、かつ、上記耳部で溶接することによってタンク本体を形成する建設機械のタンクにおいて、上記タンク本体の各側面のうち、上記耳部の突出方向の側面に、外向きに突出する凸面としての第1ビーディング部と、この第1ビーディング部からさらに外向きに突出する凸面としての第2ビーディング部とから成る補強部を、上記第2ビーディング部が上記耳部よりも外側に突出しないことを条件として設けたことを特徴とする建設機械のタンク。
  3. 第1及び第2両ビーディング部をそれぞれ四角形の凸面または凹面として形成したことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械のタンク。
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