JP2009166454A - 積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録テープ - Google Patents

積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録テープ Download PDF

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Abstract

【課題】常温保管後および蒸着工程時のオリゴマーの析出を抑制し、蒸着磁気記録媒体用ベースとして用いた際の磁気テープ特性が良好な積層フィルムを提供することにある。
【解決手段】一方の最外面を構成するポリエステル層Aと、他方の最外面を構成しかつ少なくとも2種類の粒子を含有するポリエステル層Bとを少なくとも含む積層構造を有し、前記ポリエステル層Bが、
(1)含有される粒子のうち最も平均粒径の小さな粒子を粒子αとしたとき、粒子αの含有量が0.4〜1質量%である。
(2)含有される粒子のうち最も平均粒径の大きな粒子を粒子βとしたとき、粒子βの含有量が0.01〜0.3質量%である。
(3)オリゴマーの含有量が1質量%以下である。
(4)オリゴマー中の環状3量体の占める割合が20〜70質量%である。
(5)Mgの含有量が100〜400ppm(質量基準)である。
上記の(1)〜(5)を満足している構成とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、磁気記録媒体用に好適な積層ポリエステルフィルム、特にデジタルビデオカセットテープ用、データストレージテープ用等のデジタルデータを記録する強磁性金属薄膜型磁気記録媒体を高品質に生産性良く製造するために好適な積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録テープに関する。
磁気記録媒体は、ベース上に金属薄膜を蒸着加工して磁性層を設けた蒸着型と塗布加工して磁性層を設けた塗布型に大別される。
民生用デジタルビデオカセット(以下、DVCという)テープでは、ベースフィルム片面側に強磁性金属薄膜を蒸着形成させるが、膜厚が100〜300nmと薄く、ベースフィルムの表面特性が磁気テープ特性(電磁変換特性、ドロップアウト等)に大きく影響する。特に近年では、記録密度向上のため蒸着膜厚の薄膜化が進められており、従来にも増してベースフィルム表面平滑性が強く望まれている。その一方、ベースフィルムの製膜および蒸着加工時の搬送性、あるいはフィルムロール製品への巻き取り性という観点からは表面が粗い方が好ましい。
近年、急速なDVC普及により市場の価格低下要求が強まっており、1回の蒸着操作でより多量のデジタルビデオテープが製造できるように、テープ加工速度の増速化による蒸着加工効率の向上が検討されている。しかし、増速化した場合、蒸着加工効率を保つためには蒸着加工温度を上げる必要があるが、その分ベースフィルムが受ける熱負荷は大きくなり、ベース材料であるポリエステルの熱分解物が冷却キャンや工程ロールに付着し、これが冷却効率の低下を引き起こしたり、蒸着磁性層に転写することによって磁気テープ特性が低下しやすくなる等、加工工程上の問題が起こりやすい。また、ポリエステル中には低分子量物が内在しているが、長期保管時にこの低分子量物が析出し、フィルムロールの状態で蒸着加工面側に転写、あるいは工程ロールを通して蒸着磁性層に転写することによってテープ特性が低下しやすい。低温保管とすることでこの問題は避けられるが、保管コストの増大、加工前に低温から常温へ移行する時の水分付着により蒸着時に工程ロールに貼り付きやすくなる等の問題がある。
上記の問題解決を図るべく、以下(1)〜(3)に示すようなベースフィルムが提案されている。
(1)磁性層が設けられる表面Aの側に位置するポリエステル層Aと、バックコート層が設けられる表面Bの側に位置するポリエステル層Bとを備えた金属薄膜型磁気記録媒体用積層ポリエステルフィルムであって、前記ポリエステル層Aが、環状3量体の含有量が0.7質量%以下かつ固有粘度が0.4〜0.65であるポリエステルAを含み、表面Aの面粗さRaが0.5〜4nmであり、表面Bの面粗さが5〜20nmである金属薄膜型磁気記録媒体用ポリエステルフィルム(例えば特許文献1)。
(2)ポリエステルからなる積層フィルムであって、最外層(B層)のポリエステルオリゴマー含有量が0.7質量%以下、末端カルボキシル濃度が30eq/10g以上、70eq/10g以下、かつ該B層が平均粒径50〜1000nmで表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子を含有する積層フィルム(例えば特許文献2)。
(3)少なくとも2層のポリエステル層を有する積層フィルムであって、一方の表面を構成するポリエステル層Aの中心線平均表面粗さRaと、他方の表面を構成するポリエステル層Bの中心線平均表面粗さRaとの比率Ra/Raが0.05〜0.7であり、ポリエステル層Bの環状化合物の含有量が0.8質量%以下であり、かつポリエステル層Bとポリエステル層Aの固有粘度の差が0.1未満である積層ポリエステルフィルム(例えば特許文献3)。
上記(1)〜(3)のようなベースフィルムは熱分解物や低分子量物の析出、転写を抑制せしめる点については有効であるが、固有粘度、カルボキシル末端基濃度などの制約により、使用するポリマーの価格が上がり、結果として、ベースフィルムのコストアップに繋がってしまう。また上記(1)〜(3)で使用されているポリマーは表面の結晶化度が上昇しており、溶融製膜を行う場合、溶融に要する時間が増大し、結果としてオリゴマーの析出しやすい状態になってしまうことがある。
従来のベースフィルムでは以上の諸問題を抱えることにより、市場の要求を満たすことができなかった。
特開2006―347004号公報 特開2007−8034号公報 特開2007−105973号公報
本発明の目的は、上記のような問題点を解決し、蒸着磁気記録媒体用ベースとして用いた際の磁気テープ特性が良好な積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録テープを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明は、一方の最外面を構成するポリエステル層A(以下、A層と略す)と、他方の最外面を構成しかつ少なくとも2種類の粒子を含有するポリエステル層B(以下、B層と略す)とを少なくとも含む積層構成を有し、前記B層が、以下の(1)〜(5)を満足している積層ポリエステルフィルムであることを特徴とする。
(1)含有される粒子のうち最も平均粒径の小さな粒子を粒子αとしたとき、粒子αの含有量が0.4〜1質量%である。
(2)含有される粒子のうち最も平均粒径の大きな粒子を粒子βとしたとき、粒子βの含有量が0.01〜0.3質量%である。
(3)オリゴマーの含有量が1質量%以下である。
(4)オリゴマー中の環状3量体の占める割合が20〜70質量%である。
(5)Mgの含有量が100〜400ppm(質量基準 以下省略する)である。
本発明によれば、以下に説明するとおり、常温保管後もオリゴマー析出個数が少なく、磁気テープ高速加工時に冷却キャンや搬送ロールの汚れが少なく、かつ加工後の磁気テープの特性に優れた(電磁変換特性が良好で、ドロップアウトが少ない)積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルをポリマーとして含んでいる。好ましくは、このポリエステルの含有量は全体の70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらには90質量%以上であることが最も好ましい。
本発明において、ポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得られるポリマーである。さらに、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等を用いることができ、またジオールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等を用いることができる。このようなポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等を使用することができる。
もちろん、これらのポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであってもよく、コポリエステルの共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分を用いることもできる。
本発明においては、ポリエチレンテレフタレートが強度、耐熱性、耐水性および耐薬品性等に優れているため、特に好ましく用いられる。
また、上記ポリエステルの固有粘度は特に限定されないが、25℃のオルソクロロフェノール中で測定したときに0.4〜0.8が好ましく、より好ましくは0.5〜0.75、さらには0.55〜0.7の範囲内であるものが、好適に使用できる。
また、得られるポリエステルの色調や耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を添加してもよい。
さらに、本発明の目的を阻害しない範囲内で、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤、耐光剤、耐候剤、充填剤、核剤、分散剤、カップリング剤等の添加剤を含有しても差支えない。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、一方の最外面を構成するA層と、他方の最外面を構成しかつ少なくとも2種類の粒子を含有するB層とを少なくとも含む積層構成を有し、前記B層は、以下の(1)〜(5)を満足している積層ポリエステルフィルムであることを特徴としている。
(1)含有される粒子のうち最も平均粒径の小さな粒子を粒子αとしたとき、粒子αの含有量が0.4〜1質量%である。
(2)含有される粒子のうち最も平均粒径の大きな粒子を粒子βとしたとき、粒子βの含有量が0.01〜0.3質量%である。
(3)オリゴマーの含有量が1質量%以下である。
(4)オリゴマー中の環状3量体の占める割合が20〜70質量%である。
(5)Mgの含有量が100〜400ppmである。
本発明においてB層中には最も平均粒径の小さな粒子である粒子αと最も平均粒径の大きな粒子である粒子βとを含有しているが、粒子αの含有量と粒子βの含有量は各々0.4〜2.0質量%、0.01〜0.3質量%であり、好ましくは0.42〜1.5質量%、0.02〜0.2質量%、より好ましく0.42〜1.0質量%、0.03〜0.1質量%である。
また含有される粒子αの平均粒子径dαが150nm以上400nm未満であり、粒子βの平均粒子径dβが400nm以上1,200nm未満であり、粒子αと粒子βの平均粒子径dαとdβの差(dβ−dα)が300〜1,000nmであり、B層表面の粒子βに由来する突起個数Nβが300〜4,000個/mmであることが好ましい。平均粒子径および含有量がいずれも上記範囲の下限未満の場合、B層の外側表面が平滑すぎてロール内エア排除が阻害され、蒸着加工時の巻出状態が不安定になってテープ生産性および磁気テープ特性が低下しやすい。またフィルムやテープ搬送性が低下し、ハンドリング性が低下しやすい。一方、平均粒子径および含有量がいずれも上記範囲の上限を超える場合には、逆に粗くなりすぎて、磁性層を蒸着加工後にロール状で放置した際にB層の外側表面形状が磁性層面側に転写、表面うねり状となって磁気テープ特性が低下しやすい。
含有される粒子は粒子α、粒子βに限定されるものではなく、粒子αの平均粒子径dαと平均粒子径dβの間の平均粒子径dγを持つ粒子γを含有していても支障はない。
本発明の積層ポリエステルフィルムはB層中のオリゴマーの含有量は1質量%以下であるが、好ましい範囲としては0.2〜0.9質量%、さらに好ましくは0.2〜0.8質量%である。オリゴマーの含有量が1質量%より高い場合常温保管時にB層よりオリゴマーが析出し磁性面に転写、、あるいは蒸着工程時、冷却キャンや工程ロールが汚れやすくなり、磁気テープ特性が低下しやすくなる。またオリゴマーの含有量が0.2質量%未満の場合、使用するポリマーの純度を高めるための工程が複雑になるばかりでなく、固有粘度が大幅に増加してしまい積層フィルムを製造する際、他層との固有粘度差が大きくなりフィルム製造時に破れやすくなる。またオリゴマー中における環状3量体の占める割合は20〜70質量%であることが好ましい。環状3量体の含有量が20質量%より小さい場合、積層フィルムを製造する際、他層との固有粘度差が大きくなりフィルム製造時に破れやすくなる。また70質量%を超えるとオリゴマーの析出抑制効果が薄れ、蒸着工程時冷却キャンや工程ロールが汚れやすくなり、磁気テープ特性が低下しやすくなる。
本発明においてB層中におけるMgの含有量は100〜400ppmであり、好ましくは150〜350ppm、より好ましくは200〜300ppmである。
Mgの含有量が上記範囲の下限未満だった場合、蒸着工程時における冷却キャンとの密着性が悪くなり、冷却不足とオリゴマーの析出による磁気テープの特性低下、あるいはフィルム搬送時に搬送不良による作業性の低下などが起こりやすくなる。Mgの含有量が上記範囲の上限を超える場合には、Mgが凝集しやすくなり粗大突起となって磁性層形成面側の表面粗さRaが7nmを超えてしまい、磁気テープ特性低下が起こりやすくなる。
このため本発明においては上記したようにB層中におけるMgの含有量を適切にコントロールすることによって磁性層形成面の表面粗さを保ちつつ、蒸着工程における冷却キャンとの密着性向上による冷却不足の改善、すなわちオリゴマー析出の抑制、さらにはフィルムの搬送不良の抑制が可能となる。
A層/B層の厚み比率は、B層を基準として2/1〜30/1が好ましく、より好ましくは3/1〜25/1である。厚み比率がこの範囲から外れた場合には、フィルム・テープ搬送性、磁気テープ特性が低下しやすく、またコストの点で不利となりやすい。
本発明の積層ポリエステルフィルムの全厚みは、特に限定されないが、通常3〜20μm、より好ましくは4〜12μm、さらには4〜10μmの範囲にあることが、製膜性、寸法安定性、実用面での取扱性などの点で好ましい。また、B層の厚みの好ましい範囲は130〜1,400nm、さらには150〜1,200nmがより好ましい。130nm未満の場合、特に粒子が含まれていると、粒子が脱落しやすくなり、脱落した粒子がA層側に転写して磁気テープ特性が低下しやすい。一方、1,400nmを超える場合には、B層の表面が粗くなりすぎて、磁性層を蒸着加工後にロール状で放置した際にB層の外側表面形状が磁性層面側に転写、表面うねり状となって磁気テープ特性が低下しやすい。
本発明の積層ポリエステルフィルムの長さ(巻長さ)は、磁気テープの生産性、歩留まりから30,000m以上100,000m以下であることが好ましい。30,000m未満の場合、磁気テープ生産性の低下が起こりやすく歩留まりも低下、100,000mを超えると冷却キャンや工程ロールを汚しやすくなり、磁気テープ特性の低下が起こりやすく磁気テープの生産性、歩留まりも低下、結果としてフィルムの製造コストが上がりがちとなる。
粒子として使用される粒子の好ましい例としては、無機系ではシリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ−アルミナ複合体(アルミナシリカ)など、有機系では、架橋ポリスチレン、ポリアクリル、架橋ジビニルベンゼン、シリコーンの単独重合体もしくは共重合体などを用いることができる。上記のうちでは、磁性層を蒸着加工後にロール状で放置した際の磁性層面側への影響の点で有機系粒子が好ましく、架橋ポリスチレン、シリコーンが特に好ましいものである。
本発明においてA層における中心線表面平均粗さRaとB層における中心線表面平均粗さRaの範囲は各々0.7〜7nm、2〜20nmであり、好ましくは1〜5nm、3〜18nmである。なおRaとRaについては、後述の被覆層がフィルム表面に積層されている場合は、被覆層の表面を測定した値を意味する。RaとRaの値が上記範囲より外れた場合、フィルム・テープの搬送性、磁気テープの特性が低下しやすい。
またRaとRaとの比Ra/Raは0.05〜0.7であることが好ましい。一方の面を相対的に平滑な磁性層加工面とし、反対面を相対的に粗い走行面とすることで、製膜・加工時のフィルム搬送性、加工後の磁気テープ特性とテープ搬送性を両立せしめることが可能となる。比率Ra/Raが上記範囲外の場合にはフィルム・テープ搬送性、および磁気テープ特性が低下しやすい。
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、走行面側としてのB層には粒子を含有せしめることが好ましいが、磁性層加工面側のA層中には実質的に粒子を含有していないことが好ましく、同時にA層の外側表面に粒子を含有した被覆層Cを設けることが、フィルム間でのブロッキング防止効果と磁気テープ特性とを両立できるため好ましい態様である。この場合、粒子を含有した被覆層Cを設けることは、A層の中心線平均表面粗さRaと、反対面側のB層の中心線平均表面粗さRaとの比率Ra/Raを0.05〜0.7とし、また、前述のとおりA層の中心線平均表面粗さRaを0.7〜7nmとするのに有効な手段となる。
該粒子としては、平均粒子径3〜100nmさらには5〜70nmが好ましく、フィルム表面における存在密度としては5×10〜5×10個/mmさらには1×10〜1×10個/mmが好ましい。平均粒径が3nmより小さい場合にはブロッキング防止効果が低下したり、あるいは粒子同士の凝集が生じやすくなって、粒子の脱落や必要以上の粗大突起の形成を引き起こすことがあり、100nmより大きい場合には磁気テープ特性が低下しやすい。また、存在密度については5×10個/mm未満では、粒子同士の間隔が広くなりすぎて実質的なブロッキング防止効果が薄れやすく、一方、5×10個/mmより多い場合には、凝集によって粒子の脱落や必要以上の大きさの突起形成を引き起こしやすい。また、被覆層Cの厚みは2〜20nm、さらには4〜15nmであることが好ましい。厚みが2nm未満であると、粒子が脱落しやすくなり、冷却キャンや工程中の搬送ロールに付着し、これが冷却効率の低下を引き起こしたり、蒸着磁性層に転写することによって磁気テープ特性が低下しやすくなる。また、フィルム・テープ搬送性も低下しやすい。一方、厚みが20nmを超える場合、磁性層加工面側であるA層の表面粗さが大きくなり、磁気テープ特性が低下しやすくなる。
被覆層C中に使用される粒子としては、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、シリコーン、ポリエポキシ、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン/プロピレン、架橋ジビニルベンゼン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸アミド、アクリル−スチレン、スチレン−ブタジエンなどの単独または共重合体、あるいはこれらの各種変成体などの有機系粒子、炭酸カルシウム、球形シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ等の無機系粒子、あるいは上記無機系粒子を核として、有機高分子で被覆した複合粒子が使用できるが、これらに限定されない。有機系粒子としては末端基がエポキシ、アミン、カルボン酸、水酸基等で変成された自己架橋性のものも好ましい。また、粒子の球形比が1.0〜1.3であることが好ましい。
被膜層C中にバインダーとして使用する樹脂としては、水溶性高分子及び/又は水分散性高分子から構成されていることが好ましい。被覆層Cに用いられる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、トラガントゴム、アラビアゴム、カゼイン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエステルエーテル共重合体、水溶性ポリエステル共重合体等が使用できる。また、水分散性高分子のエマルジョンとしては、ポリメタクリル酸メチルエマルジョン、ポリアクリル酸エステルエマルジョン等が使用できる。なかでも、セルロース誘導体と水溶性ポリエステル共重合体の高分子ブレンド体が特に好ましい。水溶性ポリエステル共重合体としては、ジカルボン酸成分とグリコール成分が重縮合したポリエステルであって、例えばスルホン酸基を有するジカルボン酸成分のような機能性酸成分を全カルボン酸成分の5モル%以上共重合せしめること、及び/又は、グリコール成分としてポリアルキレンエーテルグリコール成分を2〜70質量%共重合せしめることによって水溶性を付与したものが好ましいが、これらに限定されるものではない。スルホン酸基を有するジカルボン酸としては、好ましくは5−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸などや、それらの金属塩、ホスホニウム塩などが使用でき、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が特に好ましい。5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合せしめる際の他のジカルボン酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸などが好ましく、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコールなどが好ましい。セルロース誘導体はポリエステル分解物が析出することを防ぐために寄与し、水溶性ポリエステル共重合体はセルロース誘導体とポリエステルフィルム表面との接着性を増大させるために寄与する。なお、水溶性ポリエステル共重合体のガラス転移点は40℃以上、さらには50℃以上であることが好ましい。フィルム製膜工程、あるいは磁性層加工工程ともにフィルムは熱を受けるため、ガラス転移点が40℃未満の樹脂を用いた場合には被覆層Cによってフィルムが工程内の搬送ロールに貼り付きやすく、かえってシワ発生などの原因になることがある。
さらに本発明においては、被覆層C中にシリコーンを含有せしめることが好ましいが、シリコーンとしては、ポリジメチルシロキサン等のシロキサン結合を分子骨格にもつ有機ケイ素化合物が共有結合で多数つながった重合体が使用できる。シリコーンにより被覆層C表面の易滑性が向上し、冷却キャン、搬送ロールによる耐削れ性が確保され、同時にフィルム搬送性も向上する。またフィルムをロール状に巻き取ったときフィルム間でのブロッキングが防止される。なお、フッ素系化合物を易滑剤として用いてもよい。
また本発明においては、B層の外側表面に被覆層Dを設けることも好ましい。これにより、磁気テープ高速加工時に冷却キャンや搬送ロールの汚れをより少なくでき、さらに磁気テープ特性やフィルム間でのブロッキング防止効果が期待できる。被覆層Dを構成する成分としては、例えば、被覆層C中に使用するバインダー樹脂を適用することが好ましい。
本発明における、被覆層C、被覆層Dの形成方法は、被覆層C、被覆層D形成塗液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥して設ける方法が好ましい。被覆層C、被覆層D形成塗液の塗布方法としては、例えば、リバース(ロール)コート、グラビアコート、ナイフコート、エアーナイフコート、ロールコート、ブレードコート、ビードコート、回転スクリーンコート、スロットオリフィスコート、ロッドコート、バーコート、ダイコート、スプレーコート、カーテンコート、ダイスロットコート、チャンプレックスコート、ブラシコート、ツーコート、メータリングブレード式のサイズプレスコート、ビルブレードコート、ショートドウェルコート、ゲートロールコート、グラビアリバースコート、エクストルージョンコート、押出コートなどの方法を用いることができる。
また被覆層C、被覆層D形成塗液の塗布工程としては、ポリエステルフィルムの製膜工程内で塗布する方法(インラインコート)、製膜後のフィルム上に塗布、乾燥する方法(オフラインコート)のいずれの方法であってもよいが、均一塗布、薄膜塗布および経済性等の点で、インラインコートがより優れた方法である。さらに、インラインコートでは、ポリエステルフィルムを例に挙げれば、ポリエステルフィルムの配向、結晶化が完了する以前に塗布を行うことが好ましく、例えば逐次二軸延伸製膜工程では、縦延伸後のフィルムに塗布し、横延伸、熱固定を経る間に、被覆層とフィルム本体との密着向上を得る方法が一般的である。また、コート前のフィルムには塗布性改良を目的として、予めその表面にコロナ放電処理、プラズマ処理などの前処理を施しておくことも可能である。
また該被覆層C、被覆層D形成塗液の液媒体は水系、溶剤系あるいは両者混合系のいずれの液媒体でもよいが、インラインコート法による場合には、取扱性や防爆などの安全性の点で水系または水を主体とした両者混合系の液媒体が好ましく用いられる。また、塗液には、フィルムへの濡れ性を向上させるために界面活性剤(アニオン型、ノニオン型)を添加してもよい。
次に本発明のポリエステルフィルムに使用されるポリエステル原料、およびポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
本発明で用いられるポリエステル原料は、通常用いられる種々のエステル化反応、エステル交換反応およびそれに引き続く重縮合反応により製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートは、通常テレフタル酸またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを、エステル化またはエステル交換せしめ、しかる後減圧下に重縮合せしめる方法で製造できる。ここで、触媒などとして、例えば、Mn、Mg、Ca、Ti、Ge、Sb、Coなどの元素を含む化合物やリン化合物を使用することができる。また、安定剤、顔料、染料、核剤、充填剤などを使用してもよい。
かくして得られたポリエステルを、シートカット法、ストランドカット法などにより粒子状(チップ形状)に成形する。チップの形状は任意でよいが、あまりに小さすぎて微粉末状となったものは熱処理工程やその後の成形工程(特に押出工程)でのトラブルの原因となる。また形状が大きい場合には、環状化合物を減少させる意味では特に問題にはならないが、操作性の点からは問題が生じやすい。これらの観点から、ポリエステルチップの大きさは、等価球直径で1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは2mm〜20mmである。なお、ここで等価球直径とはポリエステルチップと同じ体積を有する球の直径である。
本発明において、B層中のオリゴマーの含有量を1質量%以下とするためには、以下の手法を用いることが好ましい。すなわち、上記の方法で得られたポリエステルチップを、水分量が1,000ppm(質量基準)以下、酸素濃度が1,000ppm(質量基準)以下である不活性ガス雰囲気中であって、かつ実質的に不活性ガス非流通下に、その融点ないしその融点より80℃低い範囲の温度で加熱処理したものをB層に使用することが好ましい。
上記において、雰囲気中の水分量が1,000ppmを超えると環状化合物は減少するものの、同時にポリエステルが加水分解し、得られるポリエステル中全体のオリゴマー量は上昇しやすい。より好ましい水分量は500ppm以下であり、最も好ましくは400ppm以下である。一方、好ましい水分量の下限は1ppmである。なぜならば、水分量が1ppm未満の場合には、不活性ガスの純度を高めるために工程が複雑になるばかりでなく、環状化合物の減少速度が低下する傾向にある。また、酸素濃度が1,000ppmを超える場合には、ポリエステルの劣化が生じやすい。より好ましい酸素濃度は500ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。
加熱処理温度は、使用するポリエステルの融点ないし融点より80℃低い範囲までの温度が好ましく、通常のポリエチレンテレフタレートについては、好ましくは190℃以上260℃以下、特に好ましくは200℃以上250℃以下である。熱処理温度が190℃より低い場合には環状化合物の減少速度が小さくなる傾向にあり、260℃を超える場合には、ポリマーが溶解し、加熱処理を行っても環状化合物が減少しにくくなる。
熱処理の時間は通常2時間以上60時間以下が好ましく、より好ましくは3時間以上40時間以下である。2時間未満の場合には環状化合物の減少効果が小さく、また60時間より長い場合には環状化合物の減少速度が小さくなり、逆に熱劣化などの問題が大きくなってくる。
本発明でいう不活性ガスはポリエステルに対して不活性なものであればよく、例えば窒素、ヘリウム、炭酸ガスなどを挙げることができるが、経済性から窒素が好ましく用いられる。
また、本発明においては、加熱処理槽内を前記の不活性ガスによって加圧状態にしてポリエステルを加熱処理することが好ましい。加熱処理時の圧力は105〜510kPa、より好ましくは110〜205kPaである。槽内の圧力が105kPa未満の場合は槽内のポリエステル粒子の移動にともない、大気中の酸素および水分が混入し固有粘度の低下を引きおこしたり、酸化分解や加水分解をひきおこしやすくなる。また510kPaを超えると設備的に高価となりコスト競争力が低下しやすい。
本発明に使用する加熱処理装置としては、ポリエステルを均一に加熱できるものが好ましい。具体的には静置式乾燥機、回転式乾燥機、流動式乾燥機や種々の攪拌翼を有する乾燥機などを用いることができる。
また、本発明においては加熱処理を実施する前にポリエステルの水分は適度に除去しておくことが好ましい。さらには、加熱処理時にポリエステルチップ同士の融着を防止するため、予めポリマーを一部結晶化させておくことがより好ましい。
次にポリエステルフィルムの製造方法の一例を説明する。
磁性層加工面側のA層形成のため、乾燥したポリエステルのチップを押出機Aに供給し、走行面側のB層形成のためポリエステルのチップと粒子α(平均粒子径dαが150nm以上400nm未満)を0.4〜2.0質量%、粒子β(平均粒子径dβが400nm以上1,200nm未満)を0.01〜0.3質量%混合したものを押出機Bに供給し、溶融してTダイ複合口金内に導入して口金内でA層/B層の2層に積層されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとする。A層/B層の厚み比率はB層を基準にして2/1〜30/1が好ましい。
この溶融積層シートを、表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸積層フィルムを作製する。該未延伸積層フィルムを70〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に2〜5倍延伸し、20〜30℃のロール群で冷却する。
続いて長手方向に延伸した積層ポリエステルフィルム表面にそのまま、あるいは必要に応じてコロナ放電処理を施した後、被覆層形成塗液を塗布する。このときA層側に被覆層C、B層側には被覆層Dが設けられるように塗布する。この被覆層形成塗液を塗布された積層ポリエステルフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き90〜150℃に加熱した雰囲気中で長手方向に垂直な方向(横方向)に2〜5倍に延伸する。
延伸倍率は、縦、横それぞれ2〜5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は6〜20倍であることが好ましい。面積倍率が6倍未満であると得られるフィルム強度が不十分となり、逆に面積倍率が20倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
このようにして得られた二軸延伸積層ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて150〜230℃で1〜30秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取ることにより、本発明の積層ポリエステルフィルムを得ることができる。なお、上記熱処理工程中では、必要に応じて横方向あるいは縦方向に1〜12%の弛緩処理(リラックス)を施してもよい。また、二軸延伸は上述の逐次延伸の他に同時二軸延伸でもよく、同時二軸延伸の場合のインラインコートは、溶融シートをドラム上に密着冷却固化した未延伸フィルム表面に必要に応じてコロナ放電処理を施した後、被覆層形成塗液を塗布し、延伸すればよい。また二軸延伸後に縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。
本発明で得られた積層ポリエステルフィルムは、特に蒸着磁気記録媒体とした場合の特性が良好であり、該用途のベース基材として好適に使用することができるが、塗布型磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体などの各種記録媒体用のベース記材としても好適に利用可能である。
本発明の実施例で用いた評価方法、評価基準は以下のとおりである。
(1)ポリマーの固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。フィルムについてはA層、B層から削り出した試料を用いた。
(2)ポリエステル層中の粒子の平均粒径、含有量
積層フィルムの小片を樹脂または氷で固定し、ミクロトームを用いてフィルム長手方向に平行に切断した超薄切片を作製する。次に、フィルム断面をTEMを用いて倍率1万〜10万倍で観察し、任意に場所を変えて少なくとも100個の粒子の等価円相当径を測定し、その平均値を算出して求めた。凝集粒子の場合は凝集体について少なくとも100個の粒子の等価円相当径を測定し、その平均値から求めた。
粒子の含有量は、ポリエステルは溶解し、粒子は溶解させない溶媒(オルソクロロフェノールを使用。その他、例えば、メタクロロフェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、またはこれらの混合溶媒なども使用可能。)を選択し、粒子をポリエステルから遠心分離して質量を測定して算出した。なお、粒子の質量の全体質量に対する比率(質量%)をもって粒子含有量とした。
(3)被覆層C中の粒子の粒径、存在密度
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてフィルムの被覆層C積層面を任意の箇所について被覆層C中の粒子の平均粒子径に応じて以下の倍率で撮影したSEM写真から、任意に選んだ計100個の微細粒子について粒子ごとに最大径と最小径を測定し、個々の粒子の粒径を最大径と最小径の平均として求めた。さらに、それら測定対象とした粒子の粒径の平均値を算出して平均粒径とした。また、存在密度については被覆層C中の粒子の平均粒子径に応じて以下の倍率で任意の箇所を5枚撮影したSEM写真から、1枚当たりの粒子の個数を数え、写真5枚での平均値から単位面積当たりの粒子数を算出して存在密度とした。
(平均粒子径)
25nm以上:30万倍
15nm以上25nm未満:50万倍
15nm未満:100万倍
(存在密度)
25nm以上:1万倍
15nm以上25nm未満:3万倍
8nm以上15nm未満:5万倍
8nm未満:10万倍
(4)被覆層C、被覆層Dの厚み
積層フィルムの小片を樹脂または氷で固定し、ミクロトームを用いてフィルム長手方向に平行に切断した超薄切片を作製した。この超薄切片を、TEMにより厚みに応じて以下の倍率で観察し、被覆層C、被覆層Dの厚みの厚みを求めた。なお、両厚みの測定は任意に場所を変えて計10箇所の平均値から求めた。
(被覆層C、被覆層Dの厚み)
10nm以上:100万倍
5nm以上10nm未満:200万倍
5nm未満:500万倍
(5)フィルム表面粗さ(Ra)
卓上プローブ顕微鏡“ナノピクス”の測定ヘッドNPX100[NPX1MAP001]およびコントローラNanopics1000[NPX1EBP001](いずれもセイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて測定し、任意の箇所で測定した5点の平均値をRaとした。なお、測定面積は、磁性層加工面(A層)側は40μm角、走行面(B層)側は100μm角とした。その他の測定条件は次のとおりである。スキャン速度:380sec/FRAME、スキャン回数:512本、振幅度合い:磁性層加工面(A層)側はLLモード、走行面(B層)側はHHモード。
(6)ポリエステル層中のオリゴマーの定量
前処理としてB層から削り出した試料20mgを有機溶媒に解かし、溶解後、下記の測定条件によって、環状3量体、線状オリゴマーを測定を行う。測定にて得られた線状オリゴマーと環状3量体の定量値を合算し、B層中に含まれるオリゴマーの全体量とした。さらに環状3量体の定量値からオリゴマー全体中に含まれる環状3量体の割合を求めた。使用する有機溶媒は特に限定されるものではなく、ポリエステルを溶解する事が出来るものであるのならば使用することができる(例えばオルトクロロフェノール)。
(環状3量体)
装置:島津製 LC−10ADvp
カラム:ODSカラム
カラム温度:40℃
移動相:メタノール・水混合溶液
流量:1.3ml/min
注入量:15μl
検出器:UV=240nm
(線状オリゴマー)
装置:島津製 LC−10ADvp
カラム:ODSカラム
カラム温度:40℃
移動相:0.1%リン酸水溶液・アセトニトリル混合溶液(グラジエント溶離)
流量:1.5ml/min
注入量:30μl
検出器:UV=242nm
(7)オリゴマー析出特性(オリゴマー個数)
フィルムロールを乾燥剤を入れてアルミ蒸着フィルム内に梱包した後、恒温恒湿機内で温度25℃、相対湿度20%以下で10日間、および6ヶ月間保管した後のオリゴマー個数をカウントした。保管前、保管後の各フィルムロールからサンプルを切出し、その磁性層加工面(A層)側表面をSEMで5,000倍に拡大観察し、保管後の表面のみに析出した長径0.1μm以上の異物をオリゴマーと見なし、任意に5枚撮影した写真から1枚ずつ析出したオリゴマーの個数をカウントし、写真5枚の平均値から、1mm当たりの個数に換算してオリゴマー個数とした。
(8)Mg含有量
フィルムB層中のMg含有量はフィルム100mgを秤量し濃硫酸にて灰化後、原子吸光(AA630−13型(島津製作所))を用いて測定した。
(9)ロール、冷却キャン汚れ
温度25℃、相対湿度20%以下で10日間、および6ヶ月間保管したフィルムロールを用い、フィルムの表面へ強磁性金属薄膜を真空蒸着する際のロール、冷却キャンの汚れ状態を下記基準で判定し、この汚れ状況から、フィルムからのポリエステル低分子量や分解物の析出の多寡を判断した。◎および○の場合が工程上およびテープ特性上問題ないものである。
この真空蒸着工程において、ベースフィルムの巻長(ロール、冷却キャンの汚れ判定までに通過したフィルムの長さ)は50,000m、フィルム走行速度は110m/分、冷却キャンの温度はマイナス25度に設定し、コバルト−酸素薄膜を110nmの膜厚で形成させた。
全く汚れなし ・・・◎
手で拭いて汚れが解る ・・・○
手で拭かなくともうっすらと汚れているのが解る ・・・△
明らかに白色に汚れているのが解る ・・・×
(10)蒸着工程時のフィルム搬送状態
蒸着工程におけるフィルムの搬送状態を巻き取り側のロール端面にて確認、巻き取られたフィルム端部を結んだ曲線の平均値の直線を引き、該直線から凹部と凸部それぞれの最大値、最大凹部と最大凸部の差をPV値とし、下記の基準にて判定を行った。◎および○の場合が作業工程上問題ないものである。
0<PV≦1mm・・・◎
1<PV<2mm・・・○
2≦PV<3mm・・・△
3mm≦PV ・・・×
(11)テープ特性
市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーのLPモードを用いて静かな室内で録画、再生し、ドロップアウト個数を求めることにより行った。ドロップアウト個数の測定は、25℃で10日間、および6ヶ月間保管したフィルムロールを用い、後述の方法で作製したDVCテープを市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーで録画し、1分間の再生をして画面に現れたブロック状のモザイク個数を数えることによって行った。テープ製造後、150回繰返し走行後のドロップアウト(DO)個数を測定した。DO個数の少ないものほど良好である。
次に実施例に基づき、本発明を説明する。
(実施例1)
(1)ポリエステル原料の製造
原料としてテレフタル酸ジメチルを100質量部、エチレングリコールを64質量部計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。原料を仕込んだ後、装置内温度を150℃に加熱して内容物を溶解し撹拌した。次いで、撹拌しながら触媒として酢酸マグネシウム四水塩を0.06質量部、三酸化アンチモンを0.03質量部計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。
触媒を仕込んだ後、反応内容物の温度を150℃から235℃まで3時間かけて昇温してエステル交換反応を進め、生成するメタノールを反応装置から留出させた。
エステル交換反応が終了し、メタノールが留出しなくなった時点でトリメチルリン酸0.023質量部を添加した。
添加10分後にエステル交換反応装置内の反応生成物を重合反応装置へ移行した。
重合装置内容物を撹拌しながら、その温度を120分かけて235℃から290℃まで昇温し、同時に120分かけて反応装置内の圧力を常圧から150Pa以下まで減圧した。
重合装置の撹拌トルクが所定の値に達した後、重合装置の撹拌を停止し、重合装置内に窒素ガスを送りこんで常圧に戻した。
重合装置底部のバルブを開け、装置内を窒素ガスで加圧しながらポリエステル樹脂をストランド状に押し出した。ストランドは水槽で冷却固化させカッターに導き、直径約5mm長さ約7mmの円柱状のポリエチレンテレフタレート(以降、PETという)のチップ(A1)とした。このPETチップの等価球直径は6.4mm、固有粘度は0.63、オリゴマーの含有量は1.25質量%、うち環状3量体の含有量は87.2質量%であった。
得られたPETチップA1を150℃で減圧下に乾燥し、ついで窒素ガスで系内1.20kg/cmの微加圧状態にした。反応系内の酸素濃度は50ppm(質量基準)、水分濃度は10ppm(質量基準)であった。該圧力で系内を保持し(非流通)、温度220℃で24時間熱処理を実施しPETチップB1を得た。得られたPETチップの固有粘度は0.66、オリゴマーの含有量は0.54質量%、うち環状3量体の割合は61.1質量%であった。
(2)ポリエステルフィルムの製造方法
A層を形成するため、上記(1)の方法で製造したPETチップA1を180℃で3時間乾燥した後、押出機Aに供給し、常法により285℃で溶融してTダイ複合口金に導入した。
一方、B層を形成するため、上記(1)の方法で製造したPETチップB1をベースに、さらに不活性粒子αとして平均粒子径300nmの架橋シリコーン粒子を0.80質量%、不活性粒子βとして平均粒径1,000nmのシリカ粒子を0.02質量%、Mg分として250ppmを含有させたチップ原料を180℃で3時間減圧乾燥した後に、押出機Bに供給し、常法により285℃で溶融して同様にTダイ複合口金に導入した。なお、架橋シリコーン、シリカの製造および添加方法は以下の通りである。
(架橋シリコーンの製造方法)
特公平3−30620号公報の実施例を参考に製造した。
具体的には、平均組成式
CH=CH(CHSiO[(CHSiO]m・Si(CHCH=CH
(式中m=35)で示されるビニル基を両末端に有するジメチルポリシロキサン100質量部に平均組成式
(CHSiO[(CH)HSiO]OSi(CH
で示されるメチルハイドロジエンポリシロキサン5質量部と、上記ポリシロキサン全量に対して白金として10ppm(質量基準)に相当する量の塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液と3−メチル−1−ブチン−3−オール0.1質量部を添加し混合したものをスプレードライヤ中に2流体ノズルを用いて噴霧させ、硬化させて架橋シリコーン粒子を得た。このとき、スプレードライヤの熱風の入り口温度は230℃とした。架橋シリコーンは、サイクロン、およびバグフィルターで捕集し、このうちバグフィルタ捕集物(平均粒子径300nm)を用いた。
(シリカの製造方法)
「新実験化学講座」18界面とコロイド(1977年10月20日丸善株式会社発行)の第330〜331頁に記載の技術を参考に製造した。
具体的には、ケイ酸ナトリウムの3.5質量%水溶液(SiO換算)をH型イオン交換樹脂で脱塩し、これに1.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した。この水溶液の一部を分取し、攪拌しながら100℃で10分間加熱後、90℃で保持した。次いで、この水溶液に脱塩してpH=9に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、攪拌しながら徐々に加えて反応を行い、220nmのシリカ粒子を含む水分散液を得た。この水溶液の一部を再度分取し、攪拌しながら100℃で10分間加熱後、90℃で保持した。次いで、この水溶液に脱塩してpH=9に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、攪拌しながら徐々に加えて反応を行い、平均粒子径1,000nmのシリカを含む水分散液を得た。
(架橋シリコーン、シリカの添加方法)
得られた架橋シリコーンをエチレングリコール中に分散せしめて10質量%のエチレングリコールスラリーとした。
一方、得られたシリカの水溶液にエチレングリコールを添加し、100℃に加熱することで水を留出させ、シリカの1質量%エチレングリコールスラリーとした。
(1)のポリエステル原料の製造において、エステル交換反応が終了し、トリメチルリン酸を添加した5分後に、架橋シリコーンを10質量%含有したエチレングリコールスラリーを8質量部、シリカを1質量%含有したエチレングリコールスラリーを2質量部添加した。
次いで、該口金内でA層/B層=8/1の厚み比に積層されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとした。そして、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれた冷却ドラム上にB層が該ドラム側に来るよう静電荷法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。続いて、該未延伸積層フィルムを常法に従い105℃に加熱されたロール群を用いて縦方向(以降、MDという。)に3.0倍延伸し、25℃のロール群で冷却して一軸延伸フィルムとした。さらに続いて該一軸延伸フィルムのA層、B層側表面に下記組成の被覆層C、D形成塗液(水溶液)を各々ウェット塗布厚み5.0μm、2.7μmとなるようメタリングバーを用いたバーコート方式にて塗布した。
[被覆層C形成塗液]
水溶性ポリエステル 0.31質量%
メチルセルロース 0.10質量%
平均粒子径10nmのコロイダルシリカ 0.02質量%
[被覆層D形成塗液]
水溶性ポリエステル 0.23質量%
メチルセルロース 0.17質量%
シランカップリング剤 0.02質量%
各組成物の製造方法は以下の通りである。
(水溶性ポリエステル)
酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸=34/8/8(モル%)
グリコール成分:エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/ジエチレングリコール=40/7/3(モル%)
上記酸成分とグリコール成分を用い、エステル交換反応によって得た、側鎖にカルボン酸基を有さないポリエステルである。
(メチルセルロース)
セルロース(パルプ)を水酸化ナトリウムで処理した後、酸化エチレンと反応させて水溶性セルロースエーテル化したものである(セルロースのグルコース環単位当たり、メトキシル基で置換された水酸基の平均個数1.5)。
(シランカップリング剤)
(1)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE903)
(2)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM403)
上記(1)/(2)を質量比75/25で混合せしめた混合体である。
(平均粒子径10nmのコロイダルシリカ)
「新実験化学講座」18界面とコロイド(1977年10月20日丸善株式会社発行)の第330〜331頁に記載の技術を参考に製造した。
具体的には、ケイ酸ナトリウムの3.5質量%水溶液(SiO換算)をH型イオン交換樹脂で脱塩し、これに1.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整し、攪拌しながら90℃で5分間加熱して反応を行い、平均粒子径10nmのコロイダルシリカを含む水分散液を得た。
この被覆層C、D形成塗液を塗布された一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の予熱ゾーンに導き105℃で予熱・乾燥後、引き続き連続的に110℃の加熱ゾーンで横方向(以降、TDという)に3.8倍延伸した。さらに引き続いてテンター内の熱処理ゾーンで210℃の熱処理を施して結晶配向を完了させ、均一に徐冷後に巻き取り、積層フィルムの総厚み6.3μm、このうちB層の厚み820nm、被覆層Cの厚み5.9nm、被覆層Dの厚み3nmの構成としたポリエステルフィルムを得た。さらに、スリッターで620mm幅にスリットし、50,000m長さのフィルムロール状物とした。
得られたフィルムのB層中のオリゴマー含有量は0.55質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は60質量%であった。
該ポリエステルフィルムのA層側に真空蒸着法によりコバルトを蒸着させ、膜厚110nmの強磁性金属薄膜層を形成させた。次にスパッタリング法によりダイヤモンド状カーボン膜を10nmの厚みで形成させ、さらにフッ素系潤滑剤層を6nmの厚みで設けた。続いて、B層上にカーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を400nmの厚さで設け、スリッターにより6.35mmの幅にスリットし、蒸着磁気記録媒体(DVCテープ)を作製した。
得られたPETフィルムの特性は表1、表2に示したとおりオリゴマー個数が少なく、蒸着工程でのロール、冷却キャンの汚れも少なく、フィルムの搬送性も良好であった。またDVCテープの特性は表2に示したとおり、DO個数が保管6ヶ月経過後も0個であり、磁気テープ特性とも非常に良好であった。すなわち、蒸着磁気録媒体としての特性、並びに蒸着磁気記録媒体への加工性が極めて良好であった。
(実施例2)
ポリエステル原料の製造において、PETチップB1に粒子αを0.52質量%、粒子βを0.01質量%、Mg分として256ppmを含有させたPETチップB2を得た。B2を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.59質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は58質量%)。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。
(実施例3)
ポリエステル原料の製造において、PETチップB1に粒子αを1.79質量%、粒子βを0.28質量%、Mg分として254ppmを含有させたPETチップB3を得た。B3を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.53質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は61質量%)。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。
(実施例4)
ポリエステル原料の製造において、熱処理時間を12時間としたPETチップB4を作成し、これをベースに粒子αを0.81質量%、粒子βを0.02質量%、Mg分として252ppmを含有させたPETチップB5を得た。B5用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.71質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は27質量%)。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。
(実施例5)
ポリエステル原料の製造において、熱処理時間を48時間としたPETチップB6を作成し、これをベースに粒子αを0.81質量%、粒子βを0.02質量%、Mg分として256ppmを含有させたPETチップB7を得た。B7用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.33質量であり、このうち環状3量体のしめる割合は70質量%)。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。
(実施例6)
ポリエステル原料の製造において、PETチップB1に粒子αを0.83質量%、粒子βを0.02質量%、Mg分として125ppmを含有させたPETチップB8を得た。B8を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.55質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は62質量%)。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。
(実施例7)
ポリエステル原料の製造において、PETチップB1に粒子αを0.81質量%、粒子βを0.02質量%、Mg分として350ppmを含有させたPETチップB9を得た。B9を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.58質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は60質量%)。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。
(実施例8)
ポリエステル原料の製造において、PETチップB1に粒子αを0.80質量%、粒子βを0.02質量%、Mg分として250ppmを含有させたPETチップB10を得た。B10を用いて実施例1と同様にしてフィルムを製造し、フィルムの巻長を34,000mとした。(B層中のオリゴマー含有量は0.55質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は59質量%)。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。
(実施例9)
実施例8と同様の原料を使いて同様にフィルムを製造した後、フィルムの巻長を100,000mとした。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。
(実施例10)
実施例8と同様の原料を使いて同様にフィルムを製造した後、フィルムの巻長を120,000mとした。得られたフィルムを使用した蒸着工程では搬送性は良好なものの、冷却キャンが100,000mを超えたあたりから徐々に汚れ始め、磁気テープ特性(DO個数)においても劣る結果となった。
(比較例1)
ポリエステル原料の製造において、PETチップB1に粒子αを0.35質量%、粒子β0.004質量%、Mg分として251ppmを含有させたPETチップB11を得た。B11を用いて実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.61質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は57質量%)。得られたフィルムを使用して蒸着工程を行ったところ、フィルムの搬送状態が悪く、フィルムの破れなどが発生し作業効率が大幅に低下した。
(比較例2)
ポリエステル原料の製造において、PETチップB1に粒子αを2.11質量%、粒子βを0.35質量%、Mg分として254ppmを含有させたPETチップB12を得た。B12を用いて実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.51質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は64質量%)。得られたフィルムを使用した蒸着工程は良好なものの、磁気テープ特性(DO個数)に劣っており、蒸着磁気録媒体としての特性に劣るものであった。
(比較例3)
ポリエステル原料の製造において、熱処理時間を1時間とし空気中の水分量を1500ppmとしたPETチップB13を作成し、これをベースに粒子αを0.81質量%、粒子βを0.02質量%、Mg分として256ppmを含有させたPETチップB14を得た。B14を用いて実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は1.10質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は15質量%)。得られたフィルムを使用して蒸着工程を行ったところ、冷却キャンに汚れが生じ、6ヶ月保管後使用したものについてはキャンの汚れのため冷却不足が発生。その結果フィルムの破れなどが発生し作業効率が大幅に低下した。また磁気テープ特性(DO個数)についても6ヶ月後のものについては大きく劣る結果となり、蒸着磁気録媒体としての特性に劣るものであった。
(比較例4)
ポリエステル原料の製造において、熱処理時間を72時間としたPETチップB15を作成し、これをベースに粒子αを0.82質量%、粒子βを0.02質量%、Mg分として249ppmを含有させたPETチップB16を得た。B16を用いて実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.15質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は80質量%)。フィルム製造のさい、他層との固有粘度の差が大きくフィルムの破れが多く発生し、フィルム製造における作業効率が大きく低下した。また得られたフィルムを使用して蒸着工程を行ったところ、工程は良好なものの、ポリマー劣化物が原因と思われる粗大突起のため磁気テープ特性(DO個数)に劣っており、蒸着磁気録媒体としての特性に劣るものであった。
(比較例5)
ポリエステル原料の製造において、PETチップB1に粒子αを0.79質量%、粒子βを0.02質量%、Mg分として65ppmを含有させたPETチップB17を得た。B17を用いて実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.55質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は60質量%)。得られたフィルムを使用して蒸着工程を行ったところ、冷却キャンに汚れが生じ、6ヶ月保管後使用したものについてはキャンの汚れのため冷却不足が発生。またフィルムの搬送性についても悪く、結果としてフィルムの破れなどによって作業性が大幅に低下した。磁気テープ特性(DO個数)についても劣る結果となり、蒸着磁気録媒体としての特性に劣るものであった。
(比較例6)
ポリエステル原料の製造において、PETチップB1に粒子αを0.80質量%、粒子βを0.02質量%、Mg分として500ppmを含有させたPETチップB18を得た。B18を用いて実施例1と同様にしてフィルムを製造した(B層中のオリゴマー含有量は0.61質量%であり、このうち環状3量体のしめる割合は58質量%)。得られたフィルムを使用した蒸着工程は良好なものの、Mgの凝集のため磁気テープ特性(DO個数)が大きく劣っており、蒸着磁気録媒体としての特性に劣るものであった。
Figure 2009166454
Figure 2009166454
本発明の積層ポリエステルフィルムは、特に蒸着磁気記録媒体とした場合の特性が良好であり、該用途のベース基材として好適に使用することができる。また、蒸着磁気記録媒体だけでなく、塗布型磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体などの各種記録媒体用のベース記材としても好適に利用可能であるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。

Claims (3)

  1. 一方の最外面を構成するポリエステル層Aと、他方の最外面を構成しかつ少なくとも2種類の粒子を含有するポリエステル層Bとを少なくとも含む積層構成を有し、前記ポリエステル層Bが、以下の(1)〜(5)を満足している積層ポリエステルフィルム。
    (1)含有される粒子のうち最も平均粒径の小さな粒子を粒子αとしたとき、粒子αの含有量が0.4〜1質量%である。
    (2)含有される粒子のうち最も平均粒径の大きな粒子を粒子βとしたとき、粒子βの含有量が0.01〜0.3質量%である。
    (3)オリゴマーの含有量が1質量%以下である。
    (4)オリゴマー中の環状3量体の占める割合が20〜70質量%である。
    (5)Mgの含有量が100〜400ppm(質量基準)である。
  2. 巻長さが30,000m以上100,000m以下である、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
  3. 請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルムのポリエステル層A側の外表面上に強磁性金属薄膜が設けられてなる磁気記録テープ。
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