JP2009161335A - エレベーター用シーブ - Google Patents

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Abstract

【課題】ロープ被覆樹脂材が特殊あるいは限定的とならないようなシーブ溝の表面性状を持ち、ロープとシーブ間のトラクション特性を長期的に安定させることのできるエレベーター用シーブの提供。
【解決手段】縦弾性係数Er、およびポアソン比νrの樹脂被覆ロープ2を、シーブ溝部1bに縦弾性係数がEs、ポアソン比がνsであるメッキ層1cを施工したシーブ1で、ロープ張力Tをもって駆動させるエレベータにおいて、樹脂被覆ロープ2とシーブ1の接触面に潤滑油が存在する状態で、両者間に必要な摩擦係数を維持する最低接触面圧をplmt、かつ両者の接触面が清浄状態で、ロープ外層樹脂の摩耗量を許容値以下に抑える最大押込み量をδlmtとした場合、シーブ溝部1bにメッキ表面突起数が1mm2当たりN個で、突起先端の半径もしくは半径に相当する長さがrで、表面あらさRaが、(Ra)min≦Ra≦(Ra)maxであるメッキ層1cを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、表面が樹脂等高分子材料で覆われた主索を駆動するエレベーター用シーブに関する。
樹脂で覆われたロープあるいはベルトを主索に用いた場合、シーブにおける駆動力伝達面は樹脂材と金属材またはそれ相当材の直接接触になるため、摺動面には両者の凝着により大きな摩擦力が生まれる。摩擦力は駆動力伝達には不可欠であるが、摺動による摩耗、特に樹脂の摩耗に関しては促進する働きがある。このため、これら摩擦と摩耗の相反する関係に対して、摺動面における摩擦係数を摩擦と摩耗の両面から適正に設定する必要がある。
エレベーターの駆動システムの場合、ロープと接触する巻上機のシーブ溝面を適度に粗し、その後、フッ素化合物を含んだニッケル−りん金属間化合物を無電解メッキして摩擦と摩耗の両立を図っている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この場合の表面性状では、シーブ溝面においてエレベーターの使用環境下で最も摩擦が低下する油濁時の摩擦係数をいかに低下させないかに力点を置き過ぎているため、樹脂の摩耗に対しては、樹脂自体の耐摩耗性に負うところが大変大きくなっている。すなわち、耐摩耗性の非常に高い特定の樹脂材にのみ適用できる極めて限定的な条件のうえで成り立っている。一般的な機械的特性をもつ現状の樹脂では、使用初期段階では成立するが、その後、エレベーターの稼働時間に伴って摩擦係数の上昇と摩耗量の急激な増加が見られ、長期的に安定なトラクションを得るには至っていない。
また、エレベーターの使用環境下で油濁状態になることを想定せず、樹脂の摩耗をいかに低減するかの一点でシーブ溝面の表面性状を設定したものもある(例えば、特許文献2参照)。
特願2006−116285号 特表2003−512269号
しかし、長期的に安定したトラクション特性を持つシーブを得るには次のような課題がある。すなわち、シーブ溝の表面には、ロープを被覆する樹脂材の機械的特性が一般的であっても、摩擦と摩耗特性が特殊仕様の樹脂材の場合と比較して大きく変化しない表面性状の設定が必要である。特にエレベーターの駆動システムの場合、ロープとシーブの接触面に潤滑油が付着する環境が想定されるが、この場合、摩擦係数は最も低下するため、油濁環境下での摩擦係数を所定の値以上に確保することが絶対必要条件となる。このため、潤滑油が付着しても摩擦係数を大幅に下げないことを目的として、シーブ溝面には所定の表面あらさが施されているが、一方で、シーブ溝面の表面あらさ、すなわち凹凸の大きさはロープの外層樹脂の摩耗速度を律速するので、耐摩耗性に非常に優れた特殊な樹脂材を用いずに摩耗速度を抑えるには、シーブ溝面の凹凸を小さくする必要がある。
そこで、この小さな凹凸を用いても油濁時の摩擦係数が大幅に下がらないメカニズムが必要となる。これには、従来のようなシーブ溝面の凹凸がロープの外層樹脂を引っ掻くことで摩擦力を生むしくみではなく、両者の接触面から付着した潤滑油を排除することで摩擦係数を上げるメカニズムの構築が必要と考える。したがって、樹脂の摩耗速度を可能な限り抑えること、かつ接触面から潤滑油を排除することの両方を実現するという大きな課題が存在する。
本発明の目的は、ロープを被覆する樹脂材が極めて特殊的あるいは限定的とならないようなシーブ溝の表面性状を持ち、かつロープとシーブにおけるトラクション特性を長期的に安定させることのできるエレベーター用シーブを提供するにある。
本発明は上記目的を達成するため、請求項1では、縦弾性係数がEr(N/mm2)、およびポアソン比がνrの樹脂を被覆した直径d(mm)のロープを、ロープ溝に縦弾性係数がEs(N/mm2)、およびポアソン比がνsであるメッキを施工した直径D(mm)のシーブで、ロープ張力T(N)をもって駆動させるエレベーターにおいて、上記ロープとシーブの接触面に潤滑油が存在する状態で、両者間に必要とされる摩擦係数を維持する最低接触面圧をplmt(N/mm2)、かつ両者の接触面が清浄状態で、上記ロープの外層樹脂の摩耗量を許容値以下に抑える最大押込み量をδlmt(mm)とした場合、当該シーブのロープ溝面に施工するメッキの表面の突起数が1mm2当たりN個で、かつその突起先端の半径もしくは半径に相当する長さがr(mm)で、さらにこれらの突起群で形成される表面あらさRaが、
(Ra)min≦Ra≦(Ra)max (mm)
ただし、
Figure 2009161335
:最小の表面あらさ(Ra)minを実現するメッキ層1c
の凸部先端の半径
:最小の表面あらさ(Ra)minを実現するメッキ層1c
の単位接触面積当たりの突起個数
δ:最大の表面あらさ(Ra)maxを実現するメッキ層1c
の凸部先端の半径
δ:最大の表面あらさ(Ra)maxを実現するメッキ層1c
の単位接触面積当たりの突起個数
w:メッキ層1cの凸部一つにかかる荷重
E:接触面における等価縦弾性係数
であるメッキ層を有することを特徴とする。
上記構成とすることにより、シーブ溝表面の凸部における荷重と曲率半径は、接触面における面圧と凸部の押込み量を同時に規定することになるので、油濁時の摩擦係数の低下を防ぐ接触面の高面圧化と、樹脂の摩耗量を低減する凸部の低押込み化の間で最適化を行えば、潤滑油が付着しても摩擦係数を大幅に下げない低摩耗性のシーブ溝表面性状を得ることが可能となる。
本発明によれば、ロープあるいはベルトの被覆体には特殊な樹脂に限らず一般的な樹脂を用いることが可能となり、いずれの樹脂においても摺動に対する摩擦係数が安定的で、かつ樹脂に対して低摩耗なシーブを提供することができる。
以下本発明のエレベーター用シーブの実施形態を図に基き説明する。
図1は本発明の一実施例を示すシーブの全体構成図、図2はシーブメッキ層とロープ外層被覆樹脂の接触面を表わす図、図3はシーブメッキ層とロープ外層被覆樹脂の接触面を表わす拡大図、図4はシーブメッキ層表面のあらさ形状を表わす図、図5突起半径と突起個数から導かれる表面あらさの等高線図、図6は回転式摩耗試験機の概略図、図7は回転式摩耗試験におけるロードセル荷重の時間変化を表わす図、図8は突起半径と突起個数から導かれる接触面圧の等高線図、図9は突起半径と突起個数から導かれる押込み量の等高線図、図10は接触面圧と押込み量の限界線図、図11は仕様を満たすシーブメッキ層の表面あらさの範囲を表わす図である。
図1において、シーブ1は、少なくとも駆動軸を連結するボス部1aとロープにトラクションを伝達する溝部1bからなっている。シーブ溝部1bの表面にはメッキ層1cが施工され、メッキ層1cは表面あらさRaと厚さtを有している。このメッキ層1cは少なくともシーブ溝部1bの表面に施工されていればよく、メッキ方法によってはボス部1aの内径面を除いた全面に施工されていても構わない。
シーブ溝部1bと樹脂被覆ロープ2の接触面近傍を拡大して図示すると、図2のようになる。ここでは、本発明の実施の一例として、縦弾性係数がEs、ポアソン比がνsであるメッキ層1cと、それぞれがErおよびνrである外層樹脂の樹脂被覆ロープ2について図示した。一般に、外層樹脂材の縦弾性係数Erは、メッキ層1cの縦弾性係数Esに比べて、
Er<<Es
であるので、接触面における両者の変形能を比較すると、外層樹脂の表面あらさはあまり両者間の接触状態には影響をおよぼさず、メッキ層1cの表面あらさRaが支配的となる。したがって、シーブ溝部1bと樹脂被覆ロープ2の接触面には、メッキ層1cの凹凸によって接触部と非接触部が生まれ、この凸部の食い込みが摩擦力を大きくしている。
メッキ層1cの表面あらさRaについては、模式的に以下のように考える。図3には、図2における樹脂被覆ロープ2の外層樹脂とメッキ層1cの接触部をさらに拡大して示すが、この場合、接触の状態を外層樹脂の変形によって二つに分けることができる。すなわち、図3aに示すように、外層樹脂がメッキ層1cの微小な凹凸には倣って変形し、図3のスケールレベルでは両者の間に隙間が生じない場合、図3bに示すように、外層樹脂がメッキ層1cの微小な凹凸にも倣いきれず、図3のスケールレベルでも両者の間に隙間が存在する場合の二つである。図3aの場合、メッキ層1cの表面あらさRaは、図2のスケールレベルにおける凹凸寸法に相当する。一方、図3bの場合、図2のスケールレベルにおける凹凸はうねり成分とし、メッキ層1cの表面あらさRaは、うねり上に存在する図3のスケールレベルにおける凹凸寸法に相当する。
したがって、メッキ層1cの表面あらさRaを樹脂被覆ロープ2の外層樹脂によって規定する場合、凹凸部における両者間の隙間の有無が外層樹脂材の縦弾性係数Erによってどのスケールレベルになるのかを明確にしなければならない。これは、メッキ層1cの凸部の押込み量δがこの凸部先端の半径をrとすると、ヘルツの接触式から、
Figure 2009161335
ここで、δ:メッキ層1cの凸部の押込み量
r:メッキ層1cの凸部先端の半径
w:メッキ層1cの凸部一つにかかる荷重
T:ロープ張力
d:樹脂被覆ロープ2の直径
D:シーブ1の直径
N:メッキ層1cの単位接触面積当たりの突起個数
E:接触面における等価縦弾性係数
Es、νs:メッキ層1cの縦弾性係数およびポアソン比
Er、νr:外層樹脂材の縦弾性係数およびポアソン比
となり、式(1)から得られる凸部の押込み量δと凸部の高さの関係から知ることができる。そしてこの結果から、外層樹脂材の縦弾性係数Erに対応した測定区間Lが決定する。上記図3aの場合、メッキ層1cの有効表面あらさRaは図2のLに対応した部分、図3bの場合、有効表面あらさRaは図3のLに対応した部分となる。
メッキ層1cの突起数Nは、上述の表面あらさRaを測定する有効区間Lにおける凸部の個数から推定し、測定区間L内の個数をこの領域における外層樹脂とメッキ層1cの見かけの接触面積で割って単位接触面積当たりの個数で表わす。
実際のメッキ層1cの凸部は、各種メッキの方法によって多少差異はあるが、凸部先端の形態が大方図4a、図4bに示すような球面もしくはそれ相当の形状をしている。この形状においては、メッキ層1cの凸部における突起半径rと突起個数Nの関係に、図4bに示すような幾何学上、次式で表わされる限界線が存在する。すなわち、
Figure 2009161335
ここで、N:メッキ層1cの単位接触面積当たりの突起個数
r:メッキ層1cの凸部先端の半径
である。
このような凸部先端の形態を考えると、実際は上記図3aのように外層樹脂が凹凸に倣って変形する場合が多く、この凹凸が有効表面あらさRaとはならない。メッキする前にシーブ溝部1bを粗して得られた母材の凹凸が有効表面あらさRaとなる。一方、外層樹脂材の縦弾性係数Erが大きい場合等、図3bのように外層樹脂が凹凸に倣って変形しない場合には、この凹凸が有効表面あらさRaとなる。ここで、前者の場合はシーブ溝部1bの母材の凹凸が有効表面あらさRaとなるため、メッキ施工後に表面あらさが大きく変化しないように、メッキ層1cの施工厚さには注意が必要である。通常、幾何学的に考えて、施工厚さは母材の表面あらさRa分までに抑えることが望ましい。
以上のことから、例えば縦弾性係数等、外層樹脂材の機械的特性値が変われば、外層樹脂とメッキ層1cの接触状態が変化するため、それぞれの外層樹脂に合わせたメッキ層1cの表面あらさRaを決定しなければならないことがわかる。これには、表面あらさRaの大きさをシーブ溝部1bにおける母材の凹凸から得るのか、あるいはメッキ施工によって得るのか、の選択も含まれる。
そこで、メッキ層1cの表面あらさRaを決定する方法として、以下に一例を示す。図5に、図4に示した凹凸形状の表面あらさRaを凸部先端の突起半径rと突起個数Nの関係から求め、等高線図化したグラフを示す。突起半径rと突起個数Nから表面あらさRaを求める式は、以下のとおりである。すなわち、
Figure 2009161335
ここで、Ra:表面あらさ
r:突起半径
N:突起個数
である。ここで、式(3)に代入できる突起半径rと突起個数Nは、前述のように幾何学上成立しない式(2)で表わされる限界線があるため、あらゆる組み合わせとはならない。そのため、表面あらさRaにも図5中に点線で示した限界線が存在する。図5の表面あらさRaに関する等高線図を用いれば、凸部先端の突起半径rと突起個数Nから任意の表面あらさRaを得ることができる。
次に、エレベーターの駆動システムの場合を例にして、シーブ1と樹脂被覆ロープ2のトラクション特性に必要なメッキ層1cの表面あらさRaを決定するため、油濁時の摩擦特性と外層樹脂の摩耗量を因子とした最適設計を行った。そのために必要な摩擦・摩耗特性の把握を目的として、以下の試験を実施した。縦弾性係数Esおよびポアソン比νsのメッキ層1cが施工され、表面あらさRaを有するシーブ1と、それぞれがErおよびνrである外層樹脂の樹脂被覆ロープ2を用いて、図6に示す回転式摩耗試験から両者間に生じる摩擦特性と樹脂被覆ロープ2の外層樹脂の摩耗量を測定した。回転式摩耗試験は、架台5上で回転するシーブ1に一端をおもり3で、他端をロードセル4で固定した樹脂被覆ロープ2を掛けて行った。図7には、ロードセル4にかかる荷重の時間変化を模式的に示す。シーブ1のメッキ層1cと樹脂被覆ロープ2の外層樹脂との間の摩擦係数μは、おもり3の質量とロードセル4にかかる荷重を次式に代入することによって得られる。すなわち、
Figure 2009161335
ここで、μ:メッキ層1cと外層樹脂の間の摩擦係数
θ:シーブ1における樹脂被覆ロープ2の巻き角
:おもり3の質量
:ロードセル4にかかる荷重
試験は、様々な表面あらさRaを有するシーブ1と様々な縦弾性係数Erを有する外層樹脂で被覆した樹脂被覆ロープ2を組み合わせて行い、接触面に潤滑油が付着した場合の摩擦係数μと、清浄時における外層樹脂の摩耗量を測定した。そして、組み合わせによる測定結果の相違を比較検討した。
接触面に潤滑油が付着した場合の摩擦係数μは清浄時の場合に比べて低下するが、低下幅を抑えるには接触面から潤滑油を排除することが必要である。それには、メッキ層1cの有効凸部先端の近傍における接触面圧pを高めることである。図8には、凸部先端の突起半径rと突起個数Nの関係からメッキ層1cの有効凸部先端に発生する接触面圧pを、等面圧分布の形式で示した。凸部先端に発生する接触面圧pは、次に示すヘルツの接触式から算出した。すなわち、
Figure 2009161335
ここで、p:メッキ層1cの凸部先端に発生する接触面圧
r:メッキ層1cの凸部先端の半径
w:メッキ層1cの凸部一つにかかる荷重
T:ロープ張力
d:樹脂被覆ロープ2の直径
D:シーブ1の直径
N:メッキ層1cの単位接触面積当たりの突起個数
E:接触面における等価縦弾性係数
Es、νs:メッキ層1cの縦弾性係数およびポアソン比
Er、νr:外層樹脂材の縦弾性係数およびポアソン比
である。
図8からわかるように、メッキ層1cの有効凸部における突起半径rと突起個数Nを規定することによって、発生する接触面圧pを制御することができる。
一方、清浄時における外層樹脂の摩耗量を低減するには、メッキ層1cの有効凸部の外層樹脂への押込み量δを小さくすることが必要である。この押込み量δを小さくするには、式(1)からわかるように、外層樹脂材の縦弾性係数Erを大きくすればよいが、外層樹脂材の縦弾性係数Erを変えずに押込み量δを制御するには、上記と同様にメッキ層1cの有効凸部における突起半径rと突起個数Nを規定することで可能となる。図9には、凸部先端の突起半径rと突起個数Nの関係からメッキ層1cの有効凸部の押込み量δを、等押込み量分布の形式で示した。図9からわかるように、メッキ層1cの有効凸部における突起半径rと突起個数Nを規定することによって、外層樹脂への押込み量δを制御することができる。
以上のように、図8および図9からメッキ層1cの有効凸部における突起半径rと突起個数Nを規定すれば、凸部に発生する接触面圧pと外層樹脂への押込み量δを同時に制御することが可能になる。
そこで、エレベーターの駆動システムに求められる条件の一例から、メッキ層1cの表面あらさRaの採り得る範囲を求める。例えば、
仕様1:油濁環境下での摩擦係数μが0.21以上であること
仕様2:外層樹脂の摩耗量を0.5mm以下にすること
を仕様とした場合、先に述べた様々な組み合わせの回転式摩耗試験結果から、仕様1において必要な最低接触面圧plmtと、仕様2において実現するための最大許容押込み量δlmtが求められる。
この場合、最低接触面圧plmtは、
lmt=3.2 (MPa)
であり、最大許容押込み量δlmtは、
δlmt=28 (μm)
である。
したがって、図10に示すハッチング領域がこの場合の仕様を満足する突起半径rと突起個数Nの範囲となる。これを図5に示した表面あらさRaの等高線図に重ね合わせると、図11のようになる。図11によると、この仕様の場合、エレベーターの駆動システムが長期間安定的に成り立つには、メッキ層1cの表面あらさRaが、
0.9≦Ra≦5.0 (μm)
の範囲にあることが必要であることがわかる。
最後に、上記以外の仕様に対して、メッキ層1cの表面あらさRaが採り得る範囲を考える。図5に示すように、メッキ層1cの凸部先端の突起半径rと突起個数Nの関係から等高線図化した表面あらさRaの分布を見ると、同じ突起個数Nにおいては、突起半径rが小さいほど表面あらさRaは大きくなる。したがって、上記(2)の外層樹脂の許容摩耗量から求めた最大許容押込み量δlmtの限界線が採り得る最大の表面あらさ(Ra)maxは、この限界線と式(2)で表わされる線と表面あらさRaを表わす線の三重点の値となる。すなわち、式(3)に式(2)および式(1)を代入して得られる値、
Figure 2009161335
ここで、(Ra)max:最大許容押込み量δlmtの限界線が採り得る
表面あらさの最大値
δ:最大の表面あらさ(Ra)maxを実現するメッキ層1c
の凸部先端の半径
δ:最大の表面あらさ(Ra)maxを実現するメッキ層1c
の単位接触面積当たりの突起個数
δlmt:外層樹脂の許容摩耗量から求めた最大許容押込み量
w:メッキ層1cの凸部一つにかかる荷重
T:ロープ張力
d:樹脂被覆ロープ2の直径
D:シーブ1の直径
E:接触面における等価縦弾性係数
Es、νs:メッキ層1cの縦弾性係数およびポアソン比
Er、νr:外層樹脂材の縦弾性係数およびポアソン比
が採り得る最大の表面あらさ(Ra)maxとなる。一方、同じ突起半径rにおいては、突起個数Nが大きいほど表面あらさRaは小さくなるので、上記仕様1の油濁環境下での許容摩擦係数μから求めた最低必要接触面圧plmtの限界線が採り得る最小の表面あらさ(Ra)minは、この限界線と式(2)で表わされる線と表面あらさRaを表わす線の三重点の値となる。すなわち、式(6)のrδとNδをrとNに置き換えた次式、
Figure 2009161335
ここで、(Ra)min:最低必要接触面圧plmtの限界線が採り得る
表面あらさの最小値
:最小の表面あらさ(Ra)minを実現するメッキ層1c
の凸部先端の半径
:最小の表面あらさ(Ra)minを実現するメッキ層1c
の単位接触面積当たりの突起個数
lmt:油濁環境下での許容摩擦係数μから求めた最低必要接触
面圧
w:メッキ層1cの凸部一つにかかる荷重
T:ロープ張力
d:樹脂被覆ロープ2の直径
D:シーブ1の直径
E:接触面における等価縦弾性係数
Es、νs:メッキ層1cの縦弾性係数およびポアソン比
Er、νr:外層樹脂材の縦弾性係数およびポアソン比
が採り得る最小の表面あらさ(Ra)minとなる。
本発明の一実施例を示すシーブの全体構成図である。 シーブメッキ層とロープ外層被覆樹脂の接触面を表わす図である。 シーブメッキ層とロープ外層被覆樹脂の接触面を表わす拡大図である。 シーブメッキ層表面のあらさ形状を表わす図である。 突起半径と突起個数から導かれる表面あらさの等高線図である。 回転式摩耗試験機の概略図である。 回転式摩耗試験におけるロードセル荷重の時間変化を表わす図である。 突起半径と突起個数から導かれる接触面圧の等高線図である。 突起半径と突起個数から導かれる押込み量の等高線図である。 接触面圧と押込み量の限界線図である。 仕様を満たすシーブメッキ層の表面あらさの範囲を表わす図である。
符号の説明
1 シーブ
1a シーブボス部
1b シーブ溝部
1c メッキ層
2 樹脂被覆ロープ
3 おもり
4 ロードセル
5 架台

Claims (2)

  1. 縦弾性係数がEr(N/mm2)、およびポアソン比がνrの樹脂を被覆した直径d(mm)のロープを、ロープ溝に縦弾性係数がEs(N/mm2)、およびポアソン比がνsであるメッキを施工した直径D(mm)のシーブで、ロープ張力T(N)をもって駆動させるエレベーターにおいて、
    上記ロープとシーブの接触面に潤滑油が存在する状態で、両者間に必要とされる摩擦係数を維持する最低接触面圧をplmt(N/mm2)、かつ両者の接触面が清浄状態で、上記ロープの外層樹脂の摩耗量を許容値以下に抑える最大押込み量をδlmt(mm)とした場合、当該シーブのロープ溝面に施工するメッキの表面の突起数が1mm2当たりN個で、かつその突起先端の半径もしくは半径に相当する長さがr(mm)で、さらにこれらの突起群で形成される表面あらさRaが、
    (Ra)min≦Ra≦(Ra)max (mm)
    ただし、
    Figure 2009161335
    :最小の表面あらさ(Ra)minを実現するメッキ層1c
    の凸部先端の半径
    :最小の表面あらさ(Ra)minを実現するメッキ層1c
    の単位接触面積当たりの突起個数
    δ:最大の表面あらさ(Ra)maxを実現するメッキ層1c
    の凸部先端の半径
    δ:最大の表面あらさ(Ra)maxを実現するメッキ層1c
    の単位接触面積当たりの突起個数
    w:メッキ層1cの凸部一つにかかる荷重
    E:接触面における等価縦弾性係数
    であるメッキ層を有することを特徴としたエレベーター用シーブ。
  2. 前記表面あらさRaを、 0.9≦Ra≦5.0 (μm)としたことを特徴とする請求項1記載のエレベーター用シーブ。
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