JP5717145B2 - チェーン式無段変速機用プーリ - Google Patents
チェーン式無段変速機用プーリ Download PDFInfo
- Publication number
- JP5717145B2 JP5717145B2 JP2012120812A JP2012120812A JP5717145B2 JP 5717145 B2 JP5717145 B2 JP 5717145B2 JP 2012120812 A JP2012120812 A JP 2012120812A JP 2012120812 A JP2012120812 A JP 2012120812A JP 5717145 B2 JP5717145 B2 JP 5717145B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- pulley
- sheave surface
- continuously variable
- oil groove
- type continuously
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Description
しかし、ベルトとして、多数のリンクプレートをピンにより連結する金属チェーンを用いるチェーン式無段変速機の場合、個々の接触面積が小さいピン端面に油溝を形成することができず、プーリシーブ面に形成した油溝と凸部のみにより、全ての部品要求機能を管理する必要がある。
このチェーン式無段変速機において、前記入力プーリのプーリシーブ面と前記出力プーリのプーリシーブ面に、潤滑油をプーリ周方向に排出する油溝と、前記金属チェーンのリンクプレートを連結するピンのピン端面と接触する凸部と、を同心環状に交互に形成する。
前記油溝と前記凸部によるシーブ表面粗さ形状の管理パラメータとして、前記油溝の油溝面積を評価する油溝面積パラメータと、前記凸部の凸部面積を評価する接触面積パラメータと、を用いる。
前記入力プーリと前記出力プーリの径方向断面によるシーブ表面初期粗さ形状を、使用によりシーブ面摩耗が進行したとしても、前記油溝面積パラメータの値がすべり限界以上の値であるという条件と、前記接触面積パラメータの値が焼付き限界以上の値であるという条件と、が共に成立する部品機能成立範囲に設定した。
ここで、シーブ表面粗さ形状の管理パラメータとして用いられる油溝面積パラメータは、油溝面積が大で潤滑油排出機能が高いほど潤滑油膜を薄く抑えられるというように、部品要求機能としての油膜形成防止機能の評価尺度になる。
一方、シーブ表面粗さ形状の管理パラメータとして用いられる接触面積パラメータは、凸部面積が大(平坦)で摩耗が小さいほどピン端面との金属間結合による焼付き(凝着)が抑えられるというように、部品要求機能としての摩耗抑制機能の評価尺度になる。
このように、入力プーリと出力プーリのシーブ表面粗さ形状を管理するとき、部品要求機能に着目した油溝面積パラメータと接触面積パラメータを用いることで、管理負担の軽減を図りながら、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に設定することができる。
そして、摩耗を考慮した初期範囲は、部品使用により摩耗が進行したとしても部品機能成立範囲内から外れることがないように設定される。なお、シーブ面摩耗は、使用初期に初期摩耗として急速に進行するものの、初期摩耗を経過した耐久後は、摩耗進行が抑えられたままで推移する。このため、シーブ表面初期粗さ形状を、使用によるシーブ表面の摩耗にかかわらず、2つの部品要求機能を同時に満足する形状に管理することができる。
図1は、チェーン式無段変速機の一例を示し、図2は、金属チェーンの一部斜視図を示し、図3は、シーブ表面粗さ形状の概略図を示す。以下、図1〜図3に基づき、シーブ表面粗さ形状管理の適用対象となるチェーン式無段変速機の構成を説明する。
このチェーン式無段変速機CVTに用いられる固定プーリと可動プーリによるプライマリプーリ1のプーリシーブ面11,12(図1(b))と、固定プーリと可動プーリによるセカンダリプーリ2のプーリシーブ面21,22(図1(c))と、が実施例1のシーブ表面粗さ形状管理の適用対象となる。
図4〜図13は、チェーン式無段変速機CVTのシーブ表面粗さ形状の管理範囲を導く手順を示す各関係特性図である。以下、図4〜図13に基づき、シーブ表面粗さ形状管理構成を説明する。
そして、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2の径方向断面によるシーブ表面粗さ形状を、“油膜形成防止パラメータ”による評価値がすべり限界を超えないという条件と、“摩耗抑制パラメータ”による評価値が焼付き限界を下回らないという条件と、が共に成立する範囲に設定したものである。
以下、実施例1で用いた具体的な2つの管理パラメータ(油溝面積パラメータRvk、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDIN)の選定と、選定したパラメータによる成立範囲の設定について説明する。
前記“油膜形成防止パラメータ”としては、油溝41の油溝面積を評価する油溝面積パラメータを用い、この油溝面積パラメータを、突出谷部深さRvkとしている。
そして、シーブ表面粗さ形状を、図4に示すように、“油溝面積パラメータRvk”の値がすべり限界値0.33以上であるという油膜形成防止条件が成立する範囲に設定している。ここで、すべり限界値0.33は、油膜の形成を抑えてトルク伝達機能を満足する摩擦係数μとして設定した基準値により決める。
Rk コア部のレベル差 :コア部の上側レベルと下側レベルの差
Rpk 突出山部高さ :コア部の上にある突出山部の平均高さ
Rvk 突出谷部深さ :コア部の下にある突出谷部の平均深さ
Mr1 コア部の負荷長さ率:突出山部とコア部の分離線と負荷曲線の交点の負荷長さ率
Mr2 コア部の負荷長さ率:突出谷部とコア部の分離線と負荷曲線の交点の負荷長さ率
である。なお、摩耗により粗さ曲線が変化すると、これに伴いプラトー曲線(等価直線)が変化する。このため、コア部のレベル差Rkが変化し、突出谷部深さRvkも変化することになる。
前記“摩耗抑制パラメータ”としては、凸部42の凸部面積を評価する接触面積パラメータを用い、この接触面積パラメータを、粗さ曲線要素平均長さRsmを溝傾斜角Delqにより除算したものを、さらに最大高さ粗さRzDINにより除算した(Rsm/Delq)/RzDINとしている。
そして、“接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDIN”の初期値が、図7に示すように、0.94未満であると焼き付きが発生するため、シーブ表面粗さ形状の焼付き限界値を0.94としている。ここで、油溝面積パラメータRvkの摩耗による変化量ΔRvkは、図7に示すように、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINの初期値が小さいほど(凸部面積小)大きくなり、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINの初期値が大きいほど(凸部面積大)小さくなるという関係にある。
Rsm=(1/m)ΣXsi
の式にて計算される。
Delq=√(1/lr)∫[dZ(x)/dx]2dx
の式にて計算される。
RzDIN=(1/n)ΣZi
の式にて計算される。なお、最大高さZiの最大値は、Rmax・DINである。
上記のように、チェーン式無段変速機CVTの部品要求機能を満足するためには、図11のハッチングに示すように、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2の径方向断面によるシーブ表面粗さ形状を、油溝面積パラメータRvkの値がすべり限界以上の値(0.33以上の値)であるという条件と、接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINの値が焼付き限界以上の値(0.94以上の値)であるという条件と、が共に成立する範囲に設定する必要がある。
すなわち、摩耗を考慮した初期範囲は、図12の矢印に示すように、部品使用により摩耗が進行したとしても部品機能成立範囲内から外れることがないように設定される。なお、シーブ面摩耗は、使用初期に初期摩耗として急速に進行するものの、初期摩耗を経過した耐久後は、摩耗進行が抑えられたままで推移する。
シーブ表面初期硬さは、図13に示すように、815HV(HV:ビッカース硬さ)以上に設定した。これは、図12に示すように、耐久後の油溝面積パラメータRvkとして、すべり限界値0.33以上が必要であることによる。そして、シーブ表面初期硬さを確保するため、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2は、金属チェーン3のピン端面32a,32bと接触するプーリシーブ面11,12,21,22に対し、浸炭焼き入れと焼き戻しによる熱処理とショットピーニング処理を施した。
図14は、チェーン式無段変速機用プーリの工程ブロック図であり、図15は、フィルムラッピング加工処理を示す基本説明図であり、図16は、各工程でのフィルムグリッドサイズ・オシレーション・フィルム移送・主軸回転数を示す工程表図である。以下、図14〜図16に基づき、チェーン式無段変速機用プーリの加工処理工程を説明する。なお、以下の加工処理工程の説明において、4つのプーリシーブ面11,12,21,22のうち、プーリシーブ面12を代表例として説明する。
前記第一工程は、プーリシーブ面12に表面硬さを施すマイクロショット加工処理工程7(前処理工程)の後、プライマリプーリ1のシーブ表面粗さのバラツキを平準化する工程である。
この第一工程は、グリッドサイズが粗粒度の砥粒を付着させた第1ラッピングフィルム91の砥粒面91aを、プーリシーブ面12に押し付け、第1ラッピングフィルム91をオシレーションしながらフィルム移送させて施工する。
すなわち、第一工程では、フィルムグリッドサイズが粗粒度というようにグリッドサイズを第三工程に比べて大きくしているため、グリッド単位の研削面積が大きくなり、表面の除去量を多くすることができる。そして、オシレーション有りとしているため、プーリシーブ面12の径方向に高速で砥粒が往復運動し、砥粒のシーブ表面への接触が分散され、均一な表面を得ることができる。さらに、フィルム移送有りとしているため、シーブ表面に対し常に新しい研削面を与えることができ、加工抵抗が増加し、研削性がアップし、安定した研削ができる。加えて、主軸回転数が定常回転数というように主軸回転数を第三工程に比べて遅くしているため、動摩擦係数が増加し、加工抵抗が増加することで、表面の除去量を多くすることができる。
すなわち、第一工程-2は、フィルム移送無しとしているため、第1ラッピングフィルム91に砥粒の目詰まりが発生し、加工抵抗の低下となり、研削性が悪化する。しかし、第一工程の最終段階で短時間だけスパークアウトを入れて研削量を下げていくと、バラツキの大きな部分だけを研削し、既にバラツキが小さくなっている部分の研削が抑えられることで、表面粗さのバラツキ低減に効果がある。
前記第二工程は、シーブ表面に形成された溝の深さ度合いを評価する表面粗さパラメータを、所定の目標値となるように施工する工程である。具体的には、シーブ表面粗さのパラメータの一つである油溝面積パラメータRvkが、すべり限界値0.33≦Rvkという範囲になるように施工する。
この第二工程は、第1ラッピングフィルム91のオシレーションを禁止し、第1ラッピングフィルム91の砥粒面を、プーリシーブ面12に押し付け、第1ラッピングフィルム91をフィルム移送させてシーブ面に溝を施工する。
すなわち、第二工程では、フィルムグリッドサイズが粗粒度というようにグリッドサイズを第三工程に比べて大きくしているため、グリッド単位の研削面積が大きくなり、表面に深い凹凸(溝)を作ることができる。そして、オシレーションを禁止しているため、砥粒のシーブ面への接触が固定され、加工抵抗が増加し、シーブ表面に深い凹凸(溝)を作ることができる。さらに、フィルム移送有りとしているため、シーブ表面に対し常に新しい研削面を与えることができ、加工抵抗が増加し、研削性がアップする。加えて、主軸回転数が定常回転数というように主軸回転数を第三工程に比べて遅くしているため、動摩擦係数が増加し、加工抵抗が増加することで、シーブ表面に深い凹凸(溝)を作ることができる。
前記第三工程は、シーブ表面に形成された凹凸による平坦度合いを評価する表面粗さパラメータを、所定の目標値となるように施工する工程である。具体的には、シーブ表面粗さのパラメータの他の一つである接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINが、焼付き限界値0.94≦(Rsm/Delq)/RzDINという範囲となるように施工する。
この第三工程は、第一工程と第二工程の砥粒(グリッドサイズが粗粒度)よりも細かい砥粒(グリッドサイズが細密粒度)を付着させた第2ラッピングフィルム92の砥粒面92aを、プーリシーブ面12に押し付け、第2ラッピングフィルム92をオシレーションしながらフィルム移送させてシーブ表面に平坦面を施工する。
すなわち、第三工程では、フィルムグリッドサイズが細密粒度というようにグリッドサイズを第一工程と第二工程に比べて小さくしているため、グリッド単位の研削面積が小さくなり、表面の除去量を少なくすることができると共に表面粗さを良くすることができる。そして、オシレーション有りとしているため、プーリシーブ面12の径方向に高速で砥粒が往復運動し、砥粒のシーブ表面への接触が分散され、均一な表面を得ることができる。さらに、フィルム移送有りとしているため、シーブ表面に対し常に新しい研削面を与えることができ、加工抵抗が増加し、研削性がアップし、安定した研削ができる。加えて、主軸回転数が高速回転数というように主軸回転数を第一工程や第二工程に比べて主軸回転数を高くしているため、動摩擦係数が低減し、加工抵抗が減少する。よって、細かい砥粒との相乗作用により、微細な加工が可能となり、シーブ表面の凸部先端に、均一で、且つ、平坦な面を作ることができる。
上記のように、フィルムラッピング加工処理工程8では、第一工程において、前処理工程によるプーリのシーブ表面粗さのバラツキが平準化(安定化)される。次の第二工程において、所望の摩擦係数μを確保するように油溜まりのための溝が形成される。次の第三工程において、耐摩耗性を確保するようにプーリのシーブ表面がならされる。
つまり、フィルムラッピング加工処理工程8を、バラツキ平準化機能を持つ第一工程と、溝加工による摩擦係数管理機能を持つ第二工程と、平坦加工による耐摩耗性管理機能を持つ第三工程と、に分ける構成を採用している。したがって、粗さバラツキを平準化する第一工程により、続いて施工される第二工程と第三工程での表面粗さ管理パラメータが成立範囲内に入る歩留まりが良くなる。そして、第二工程と第三工程により、摩擦係数と耐摩耗性がそれぞれ分けて精度良く管理される。
プーリシーブ面の表面粗さ管理は、大量に生産されるプーリ製品からサンプリングによりピックアップしたプーリ製品のシーブ面表面粗さのプロファイルを測定し、測定値が適正範囲にあれば、工程仕様を変更することなく、フィルムラッピング加工処理を継続する。一方、測定値が適正範囲からずれると、ずれ方向が油溝面積パラメータRvkである場合は第二工程を調整し、ずれ方向が接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINである場合には第三工程を調整し、ずれ方向が両方である場合には、第二工程と第三工程を調整する。この調整代としては、工程所要時間やフィルムグリッドサイズや主軸回転数等により行う。
この結果、プーリシーブ面の表面粗さのプロファイルが、摩擦係数と耐摩耗性を確保するプロファイルとなるように安定的に加工される。
まず、ベルト式無段変速機のベルトとプーリの組合せについて述べる。
ベルト側には、エレメントのプーリ接触面にフランク溝を設け、プーリ側には、潤滑皮膜を形成するための平坦部と油排出させるための溝部を形成している。これにより、トルク伝達性能を担保するための油排出凹部と油膜形成のための凸部を設定している(特許第4323357号公報参照)。
チェーン側のピン部は、構造的に排出用溝凹部が無い。プーリ側には、ベルト式無段変速機と同様に潤滑皮膜を形成するための平坦部と油排出させるための溝部を形成している。
このように、車両用の変速機として用いられるチェーン式無段変速機において、トルク伝達容量を増すということは、ピンとプーリ間の接触部が高面圧・高温となるということ、そして、トルク変動に応じた安定した動摩擦係数を得るということ、が重要なポイントとなる。
ここで、摩擦係数変動要因としては、接触面相互の粗さと潤滑油の表面皮膜形成による粘度により、トルク伝達膜を形成しつつ微細溝が余剰な潤滑油を適宜排出する作用が円滑に行われないときに生じるということは、従前公開済み先行技術(特許第4323357号公報)により知られている。
・金属チェーンのピン端面は、排出溝を設けられない。このため、設けられない排出溝に代替する排出能力をプーリ側に設ける必要がある。
この際、排出能力をプーリ側に設け過ぎると油膜形成を行う平坦部に油を形成しにくくなるので排出能力の上限を考慮しなければならない。
・使用経過によるプーリの摩擦係数の経時変化、表面摩耗による排出能力低下を考慮する必要がある。
・表面摩耗を促進する入力トルク増大を抑制する微細溝と耐摩耗性の硬度を考慮しなければならず、硬度保障する必要がある。
上記のように、プーリ側で潤滑油排出機能と摩耗抑制機能の両方を担うとき、各機能に対応するシーブ表面粗さ形状の管理パラメータの設定が重要である。以下、これを反映する管理パラメータの設定作用を説明する。
すなわち、油溝面積は、図3に示すように、油溝面積が大きくなると油溝断面積Sが大きくなるというように、
油溝面積∝S∝突出谷部面積A2 …(1)
という関係にある。そして、突出谷部面積A2は、図5から明らかなように、
A2∝Rvk …(2)
という関係にある。
したがって、(1),(2)式により、油溝断面積Sは、
油溝面積∝Rvk …(3)
となる。
以上のように、油溝41の油溝面積を評価する油溝面積パラメータは、(3)式から油溝面積パラメータRvkと設定できる。
すなわち、凸部面積は、図3に示すように、凸部面積が大きくなると凸部長さlが大きくなるというように、
凸部面積∝l …(4)
という関係にある。
(a) 凸部面積大の理想形状は、凸部長さl=溝間長さLの長方形である。つまり、粗さ曲線要素平均長さRsmが一定の場合、図3に示すように、溝角θ(≒溝傾斜角Delq)が小さいほど凸部長さlが大きくなるというように、
l∝Rsm/Delq …(5)
という関係にある。
(b) Rsm、Delqが同じである形状の場合、図3に示すように、山高さt(∝RzDIN)が小さいものほど凸部長さlが大きくなるというように、
l∝1/RzDIN …(6)
という関係にある。
したがって、(4),(5),(6)式により、凸部面積は、
凸部面積∝(Rsm/Delq)/RzDIN …(7)
となる。
以上のように、凸部42の凸部面積を評価する接触面積パラメータは、(7)式から接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINと設定できる。
プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2のシーブ表面粗さ形状を管理するとき、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に設定する必要がある。以下、これを反映するシーブ表面粗さ形状管理作用を説明する。
この場合、図6に示すように、初期油膜厚さが境界潤滑領域の狙いの範囲に存在するように管理される。その後、使用により摩耗が進行したとしても、図6に示すように、部品性能(摩擦係数μの基準値)を確保することが可能な油膜厚さの範囲内に収まるように管理されることになる。
したがって、プーリシーブ表面の初期粗さ形状を、使用により摩耗が進行したとしても、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に設定することができる。
したがって、シーブ表面初期硬さとして、耐久後の油溝面積パラメータRvkの条件を満足する初期硬さとしたことで、耐久後であってもすべり限界以上の表面粗さを確保することができる。
実施例1のチェーン式無段変速機用プーリにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
前記入力プーリ(プライマリプーリ1)のプーリシーブ面11,12と前記出力プーリ(セカンダリプーリ2)のプーリシーブ面21,22に、潤滑油をプーリ周方向に排出する油溝41と、前記金属チェーン3のリンクプレート31を連結するピン32,32のピン端面32a,32bと接触する凸部42と、を同心環状に交互に形成し、
前記油溝41と前記凸部42によるシーブ表面粗さ形状の管理パラメータとして、前記油溝41からの潤滑油排出による油膜形成防止機能を評価する油膜形成防止パラメータと、前記ピン端面32a,32bと接触する前記凸部42の摩耗抑制機能を評価する摩耗抑制パラメータと、を用い、
前記入力プーリ(プライマリプーリ1)と前記出力プーリ(セカンダリプーリ2)の径方向断面によるシーブ表面粗さ形状を、前記油膜形成防止パラメータによる評価値がすべり限界を超えないという条件と、前記摩耗抑制パラメータによる評価値が焼付き限界を下回らないという条件と、が共に成立する範囲に設定した。
このため、入力プーリ(プライマリプーリ1)と出力プーリ(セカンダリプーリ2)のシーブ表面粗さ形状を管理するとき、管理負担の軽減を図りながら、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に設定することができる。
前記摩耗抑制パラメータとして、前記凸部42の凸部面積を評価する接触面積パラメータを用い、
前記入力プーリ(プライマリプーリ1)と前記出力プーリ(セカンダリプーリ2)の径方向断面によるシーブ表面粗さ形状を、前記油溝面積パラメータの値がすべり限界以上の値であるという条件と、前記接触面積パラメータの値が焼付き限界以上の値であるという条件と、が共に成立する範囲に設定した。
このため、(1)の効果に加え、油溝41の油溝面積を評価する油溝面積パラメータと、凸部42の凸部面積を評価する接触面積パラメータを用いることで、シーブ表面粗さ形状を、油膜形成防止と摩耗抑制という2つの部品要求機能を同時に満足する粗さ形状に管理することができる。
前記油溝面積パラメータを、前記突出谷部深さRvkとし、
前記接触面積パラメータを、前記粗さ曲線要素平均長さRsmを前記溝傾斜角Delqにより除算したものを、前記最大高さ粗さRzDINにより除算した(Rsm/Delq)/RzDINとし、
前記シーブ表面粗さ形状を、前記油溝面積パラメータRvkの値がすべり限界値0.33以上であるという油膜形成防止条件と、前記接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINの値が焼付き限界値0.94以上であるという摩耗抑制条件と、が共に成立する範囲に設定した。
このため、(2)の効果に加え、管理パラメータとして、潤滑油排出機能をあらわす油溝面積パラメータRvkと、摩耗抑制機能をあらわす接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINと、を用いることで、シーブ表面粗さ形状を、2つの部品要求機能を同時に満足する形状に管理することができる。
このため、(3)の効果に加え、シーブ表面初期粗さ形状を、使用によるシーブ表面の摩耗にかかわらず、2つの部品要求機能を同時に満足する形状に管理することができる。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、シーブ表面初期硬さの設定によりプーリ使用によるシーブ表面の摩耗促進を抑えることで、耐久後であってもすべり限界以上の表面粗さを確保することができる。
前記油溝41は、第1ラッピングフィルム91の砥粒面91aを前記プーリシーブ面11,12,21,22に押し付け、前記第1ラッピングフィルム91をフィルム移送のみさせて施工し、
前記凸部42は、前記第1ラッピングフィルム91の砥粒よりも細かい砥粒を付着させた第2ラッピングフィルム92の砥粒面92aを前記プーリシーブ面11,12,21,22に押し付け、前記第2ラッピングフィルム92をオシレーションしながらフィルム移送させて施工する。
このため、(1)〜(5)の効果に加え、摩擦係数と耐摩耗性を確保する表面粗さのプロファイルへ変貌させる加工を、シーブ表面粗さ形状のパラメータ管理とリンクする異なるフィルムラッピング処理により施工することで、確実かつ安定的に所望のシーブ表面粗さ形状を得ることができる。
1 プライマリプーリ(入力プーリ)
11,12 プーリシーブ面
2 セカンダリプーリ(出力プーリ)
21,22 プーリシーブ面
3 金属チェーン
31 リンクプレート
32 ピン
32a,32b ピン端面
41 溝部
42 凸部
4 浸炭焼き入れ工程
5 仕上げ旋盤加工処理工程
6 研削加工処理工程
7 マイクロショット加工処理工程
8 フィルムラッピング加工処理工程
9 ラッピングフィルム
9a 砥粒面
91 第1ラッピングフィルム
91a 砥粒面
92 第2ラッピングフィルム
92a 砥粒面
Claims (4)
- 入力プーリのプーリシーブ面と出力プーリのプーリシーブ面に金属チェーンを掛け渡して変速するチェーン式無段変速機において、
前記入力プーリのプーリシーブ面と前記出力プーリのプーリシーブ面に、潤滑油をプーリ周方向に排出する油溝と、前記金属チェーンのリンクプレートを連結するピンのピン端面と接触する凸部と、を同心環状に交互に形成し、
前記油溝と前記凸部によるシーブ表面粗さ形状の管理パラメータとして、前記油溝の油溝面積を評価する油溝面積パラメータと、前記凸部の凸部面積を評価する接触面積パラメータと、を用い、
前記入力プーリと前記出力プーリの径方向断面によるシーブ表面初期粗さ形状を、使用によりシーブ面摩耗が進行したとしても、前記油溝面積パラメータの値がすべり限界以上の値であるという条件と、前記接触面積パラメータの値が焼付き限界以上の値であるという条件と、が共に成立する部品機能成立範囲に設定した
ことを特徴とするチェーン式無段変速機用プーリ。 - 請求項1に記載されたチェーン式無段変速機用プーリにおいて、
基準長さを整数倍した評価長さでの粗さ曲線のうちコア部の下にある突出谷部の平均深さである突出谷部深さをRvkとし、基準長さにおける粗さ曲線に含まれる1周期分の凹凸が生じている長さを平均した粗さ曲線要素平均長さをRsmとし、基準長さでの粗さ曲線の二乗平均平方根傾斜による溝傾斜角をDelqとし、基準長さを整数倍した評価長さにおいて基準長さ毎の最大高さの平均値を最大高さ粗さRzDINとしたとき、
前記油溝面積パラメータを、前記突出谷部深さRvkとし、
前記接触面積パラメータを、前記粗さ曲線要素平均長さRsmを前記溝傾斜角Delqにより除算したものを、前記最大高さ粗さRzDINにより除算した(Rsm/Delq)/RzDINとし、
前記シーブ表面の摩耗を考慮した前記シーブ表面初期粗さ形状を、前記溝深さパラメータRvkが、すべり限界値0.33≦Rvkという範囲と、前記接触面積パラメータ(Rsm/Delq)/RzDINが、焼付き限界値0.94≦(Rsm/Delq)/RzDINという範囲と、(Rsm/Delq)/RzDIN≧(-Rvk+1.2149)/0.676という両パラメータRvk,(Rsm/Delq)/RzDINの関係範囲と、が共に成立する共通範囲に設定した
ことを特徴とするチェーン式無段変速機用プーリ。 - 請求項1又は請求項2に記載されたチェーン式無段変速機用プーリにおいて、
前記入力プーリと前記出力プーリは、前記金属チェーンのピン端面と接触するプーリシーブ面に対し浸炭焼き入れと焼き戻しによる熱処理とショットピーニング処理を施すことで、シーブ表面初期硬さを、815HV(HV:ビッカース硬さ)以上に設定した
ことを特徴とするチェーン式無段変速機用プーリ。 - 請求項1から3までの何れか1項に記載されたチェーン式無段変速機用プーリにおいて、
前記入力プーリと前記出力プーリは、砥粒を付着させたラッピングフィルムの砥粒面を、前記金属チェーンのピン端面と接触するプーリシーブ面に押し付けるラッピング処理により、前記油溝と前記凸部を形成するもので、
前記油溝は、第1ラッピングフィルムの砥粒面を前記プーリシーブ面に押し付け、前記第1ラッピングフィルムをフィルム移送のみさせて施工し、
前記凸部は、前記第1ラッピングフィルムの砥粒よりも細かい砥粒を付着させた第2ラッピングフィルムの砥粒面を前記プーリシーブ面に押し付け、前記第2ラッピングフィルムをオシレーションしながらフィルム移送させて施工する
ことを特徴とするチェーン式無段変速機用プーリ。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012120812A JP5717145B2 (ja) | 2012-05-28 | 2012-05-28 | チェーン式無段変速機用プーリ |
CN201310202566.8A CN103453114B (zh) | 2012-05-28 | 2013-05-28 | 链式无级变速器用滑轮 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012120812A JP5717145B2 (ja) | 2012-05-28 | 2012-05-28 | チェーン式無段変速機用プーリ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013245782A JP2013245782A (ja) | 2013-12-09 |
JP5717145B2 true JP5717145B2 (ja) | 2015-05-13 |
Family
ID=49735811
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012120812A Active JP5717145B2 (ja) | 2012-05-28 | 2012-05-28 | チェーン式無段変速機用プーリ |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5717145B2 (ja) |
CN (1) | CN103453114B (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6584054B2 (ja) * | 2014-03-28 | 2019-10-02 | 住友重機械工業株式会社 | 偏心揺動型減速装置 |
JP6109128B2 (ja) * | 2014-09-26 | 2017-04-05 | ジヤトコ株式会社 | シーブ面の加工方法 |
CN111095920A (zh) | 2017-09-04 | 2020-05-01 | 梶田大树 | 多视点影像观看系统及照相机系统 |
CN114193083B (zh) * | 2020-09-17 | 2023-05-09 | 宝山钢铁股份有限公司 | 一种适用于内外齿零件旋压成形工艺的旋轮制备方法 |
CN116004965A (zh) * | 2022-12-30 | 2023-04-25 | 亚太轻合金(南通)科技有限公司 | 一种热处理炉 |
Family Cites Families (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2973666B2 (ja) * | 1991-12-03 | 1999-11-08 | トヨタ自動車株式会社 | 車両用ベルト式無段変速機 |
CN1748099A (zh) * | 2003-02-10 | 2006-03-15 | Ntn株式会社 | 牵引驱动式无级变速器 |
CA2567698C (en) * | 2004-05-27 | 2012-03-06 | Nitta Corporation | Belt device for driving elevator |
JP2006097776A (ja) * | 2004-09-29 | 2006-04-13 | Jtekt Corp | 可変径プーリおよびこれを用いた無段変速機 |
JP4797769B2 (ja) * | 2006-04-20 | 2011-10-19 | 株式会社日立製作所 | エレベータ及びエレベータ用シーブ |
JP2008039177A (ja) * | 2006-07-12 | 2008-02-21 | Yamaha Motor Co Ltd | ベルト式無段変速機、鞍乗型車両、およびベルト式無段変速機のシーブの製造方法 |
JP4491020B2 (ja) * | 2008-01-09 | 2010-06-30 | 株式会社日立製作所 | エレベーター用シーブ |
JP2011137492A (ja) * | 2009-12-28 | 2011-07-14 | Honda Motor Co Ltd | ベルト式無段変速機用プーリーの製造方法 |
US9714700B2 (en) * | 2010-10-07 | 2017-07-25 | GM Global Technology Operations LLC | CVT pulley with engineered surface |
-
2012
- 2012-05-28 JP JP2012120812A patent/JP5717145B2/ja active Active
-
2013
- 2013-05-28 CN CN201310202566.8A patent/CN103453114B/zh active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2013245782A (ja) | 2013-12-09 |
CN103453114A (zh) | 2013-12-18 |
CN103453114B (zh) | 2016-08-17 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5717145B2 (ja) | チェーン式無段変速機用プーリ | |
US7958635B2 (en) | Process for producing a pulley for a continuously variable belt drive transmission | |
KR101088587B1 (ko) | 벨트식 무단 변속기 | |
US9714700B2 (en) | CVT pulley with engineered surface | |
KR20090117987A (ko) | 무단 변속기용 벨트 | |
JP4732701B2 (ja) | プーリ及び湿式ベルト式無段変速機 | |
WO2014098175A1 (ja) | 油圧アクチュエータ装置 | |
JP4956027B2 (ja) | ベルト式cvt用プーリー | |
KR20170063756A (ko) | 기어 톱니 크라우닝 장치 | |
WO2008050378A1 (fr) | Engrenage et module d'entraînement d'engrenage | |
JP5717142B2 (ja) | プーリシーブ面加工方法及びプーリシーブ面加工用ラッピング装置 | |
JP5942227B2 (ja) | 油圧アクチュエータ装置の製造方法 | |
JP2013024292A (ja) | 伝動ベルト | |
US20080229581A1 (en) | Continuously variable transmission and manufacturing method for continuously variable transmission | |
US10876615B2 (en) | Pulley for continuously variable transmission and method of producing pulley for continuously variable transmission | |
JPH05231443A (ja) | 湿式多板クラッチ | |
JP7398282B2 (ja) | ベルト式無段変速機及びその製造方法 | |
JP2016205514A (ja) | サイレントチェーン、ブッシュチェーンおよびローラチェーン | |
JP5818807B2 (ja) | 凸面状のプーリシーブを備えたトランスミッションのための駆動ベルト | |
JPS60109661A (ja) | ベルト駆動式無段変速機用ディスク | |
JP5876759B2 (ja) | 歯面疲労損傷寿命に優れた歯車 | |
JP2004132457A (ja) | 摺動部材 | |
JP5938549B2 (ja) | 摺動部材及びその製造方法 | |
JP2015505353A (ja) | ベルト−プーリ式無段変速機 | |
JPS61116147A (ja) | ベルト式無段変速機用ベルトブロツク |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20140211 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20140619 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20140708 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140905 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20150310 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20150311 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Ref document number: 5717145 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |