JP2009155270A - 医療器具用消毒液用補充剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機過酸を含有する消毒液を用いて医療器具を消毒する際に、該消毒液中の有機過酸濃度を長期間有効濃度に維持させる手段の提供。
【解決手段】たとえば下記化合物等の有機過酸プレカーサーを含有する、有機過酸を含有する医療器具用消毒液用の補充剤。
Figure 2009155270

【選択図】なし

Description

本発明は医療器具用消毒液用補充剤に関する。より詳しくは有機過酸を含有する医療器具用消毒液に用いられる補充剤であって、該医療器具用消毒液における有機過酸の濃度を有効濃度に長期間保持させるための補充剤に関する。本発明はまた、前記補充剤を含むキットおよび、前記補充剤を用いた医療器具の消毒方法、及び該方法に用いられるキットに関するものである。
内視鏡等の医療用機器の化学系殺菌消毒には、幅広い微生物を死滅させる作用を有し、かつ短時間で作用するものとして、グルタルアルデヒド、オルトフタルアルデヒド、または過酢酸を有効成分とした製剤が使用されている。これらの製剤を使った消毒液の有効濃度は例えばグルタルアルデヒドでは2質量%以上、過酢酸では0.2質量%以上の濃度が内視鏡機器の消毒用途のガイドラインとして知られている。
グルタルアルデヒドには、芽胞に対する殺菌作用が弱いという問題やアレルギーの原因となるという問題がある。またオルトフタルアルデヒドについてもアレルギーの原因を懸念する点が医療現場で指摘されるようになっている。一方、過酢酸製剤(特許文献1)は、芽胞に対する殺菌作用を有し、アレルギーの問題がないだけでなく、最終的には水と酸素に分解するため環境汚染の問題も無い。問題となる過酢酸の刺激性や臭いについても、消毒剤として使用される実用液(一般に0.2〜0.35%の過酢酸濃度)では比較的弱い。従って過酢酸製剤は近年好ましく用いられている。
消毒用製剤は比較的高価であること、さらに実際の医療現場では器具および機器の消毒を行う頻度が高いことから、一度調製された消毒液は繰り返し使用されるのが一般的である。ただし、消毒液は有効成分濃度が使用回数や経過時間に応じて低下するため、医療現場では有効成分の濃度管理や、効力を失った消毒液を廃却し新しく調製するなどの維持管理が日常的に要求される。例えば過酢酸製剤では、過酢酸自体が時間経過と共に有効成分が化学的に分解するほか、繰り返し使用されることで被消毒器具に付着している洗浄水やその成分が混入して過酢酸濃度が次第に低下するなどの劣化要因がある。
内視鏡等の医療用機器の消毒に用いる場合の過酢酸製剤の繰り返し使用可能な期間は従来1〜7日程度とされている。例えば、英国で市販されているNu−Cidex(Johnson & Johnson Medical Inc.)は、過酢酸濃厚液、安定化剤、及び緩衝化剤からなり、使用時に安定化剤及び緩衝化剤で過酢酸濃厚液を希釈して0.35質量%の過酢酸最終濃度となるように調製するが、希釈して得られる水性組成物の使用期限は1〜3日とされている。日本において市販されているアセサイド(サラヤ株式会社製)は6%過酢酸溶液を含む第1剤と緩衝剤などを含む第2剤からなり、使用時に両剤を混合して水で希釈することにより0.3質量%の過酢酸最終濃度で用いるものであり、使用期限は調製後7日間とされている。一方、オルトフタルアルデヒド系消毒液は14日間が使用期限とされており、過酢酸製剤においてもより長期間使用可能とする手段が望まれる。
消毒液を複数回使用した後、初期濃度よりも高い濃度の消毒液を添加することで有効成分濃度を上昇させる方法が知られている(特許文献2)。しかしながら、このような方法であっても有効成分の高濃度(具体的には消毒液初期濃度の4〜50倍)の補充溶液を取り扱うことの安全管理の側面からは必ずしも望ましくない。さらに、高濃度の補充液自体も長期的(1年程度)には劣化が進むため、補充液の保存の観点からも望ましい方法とはいえない。
過酢酸製剤としては過酢酸、酢酸、および過酸化水素を平衡状態で含む過酢酸溶液が従来用いられてきた。一方、この過酢酸溶液の代替手段として、有機過酸プレカーサーを用いた有機過酸発生方法が知られている(特許文献3、4、5)。これらの手段によれば、従来の過酢酸平衡混合物を用いることなく過酢酸溶液を得ることができるが、液の有効性は数〜数十時間のオーダーであり過酢酸が時間経過と共に分解して有効濃度が低下する問題に対しては解決には至ってない。これら公知の方法においても消毒液を実用的に有用な濃度で一定期間保持するための手段については検討が及んでいなかった。
WO00/22931号公報 特開2004−154166号公報 特開2007−197416号公報 特開2004−315519号公報 特表平7−505438号公報
本発明は有機過酸を含有する消毒液を用いて医療器具を消毒する際に、該消毒液中の有機過酸濃度を長期間有効濃度に維持させる手段を提供することを課題とする。
本発明者らは消毒液の有効成分濃度を長期間有効濃度に保持するための方法を鋭意検討した結果、有機過酸プレカーサーを消毒液に補充することが有効であることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記を提供するものである。
[1]有機過酸を含有する医療器具用消毒液用の、有機過酸プレカーサーを含有する補充剤。
[2]過酸化水素を含有する水溶液である[1]に記載の補充剤。
[3]前記医療器具用消毒液が過酸化水素を含有する[1]又は[2]に記載の補充剤。
[4]前記有機過酸プレカーサーが下記一般式I〜IIIで表される化合物からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の補充剤。
Figure 2009155270
(一般式I、IIおよびIIIにおいて、R1、R2、R4はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基を表し、LはNと共に環構造を形成した原子団であり、R3は置換基を表し、R5は脂肪族基または芳香族基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に1〜6の整数を表す。)
[5]前記有機過酸プレカーサーが一般式Iで表される化合物であって、前記医療器具用消毒液がpH3〜5である[4]に記載の補充剤。
[6]前記有機過酸が過酢酸であり、かつ前記有機過酸プレカーサーが過酢酸プレカーサーである[1]〜[5]のいずれか一項に記載の補充剤。
[7]医療器具が内視鏡である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の補充剤。
[8]有機過酸を含有する水溶液と[1]〜[7]のいずれか一項に記載の補充剤とを含む医療器具の消毒用キット。
[9]有機過酸、該有機過酸に対応する有機酸、及び過酸化水素を含む水溶液と、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の補充剤とを含む医療器具の消毒用キット。
[10]有機過酸を含有する水溶液と[1]〜[7]のいずれか一項に記載の補充剤及び過酸化水素を含む水溶液とを含む医療器具の消毒用キット。
[11]緩衝剤、腐食防止剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、安定化剤、再付着防止剤、及び界面活性剤からなる群から選択される1種以上を含む添加物を含む[8]〜[10]のいずれか一項に記載のキット。
[12]有機過酸を含有する消毒液と医療器具とを接触させる工程を含む医療器具の消毒方法であって、
前記工程前に、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の補充剤を前記消毒液に添加する工程を含む消毒方法。
[13]前記消毒液が、前記の又は別の医療器具と1回以上接触させた後の消毒液である[12]に記載の消毒方法。
[14]前記の添加工程の前に前記消毒液の有機過酸濃度を測定する工程を含む[12]又は[13]に記載の消毒方法。
[15]有機過酸を含有する消毒液を用いた消毒システムであって、該消毒システムは補充剤を該消毒液に加えることにより有機過酸を有効濃度に保持する補充プロセスを有し、さらに該補充剤は有機過酸プレカーサーを含有する消毒システム。
[16]消毒液を構成する第一、第二、及び第三の組成物を独立に有し、
第一の組成物は有機過酸を含有し、第二の組成物は有機過酸を含有せず緩衝剤および腐食防止剤を含有し、かつ第三の組成物は有機過酸プレカーサーを含む補充剤を含有する[15]に記載の消毒システム。
[17]少なくとも8日間以上の間、消毒液を交換することなく消毒用途に使用されることを特徴とする[15]又は[16]に記載の消毒システム。
本発明により、有機過酸を含有する消毒液を用いて医療器具を消毒する際に、該有機過酸の有効濃度を長期間保持させることのできる補充剤が提供される。この補充剤を用いることによって、消毒液は長期間複数回繰り返して使用することができ、その消毒液の有効性は長期間保たれる。
本明細書において用いられる「消毒」という用語には、「洗浄」、「殺菌」、及び「滅菌」などの意味が含まれる。
本明細書において消毒液(消毒液組成物と呼ぶこともある)とは、被消毒機器または器具の消毒を目的として使用されるものを意味する。本発明において消毒液は有機過酸を含む。消毒液はさらに、該有機過酸に対応する有機酸、及び過酸化水素水を含む水溶液であることが好ましい。
被消毒機器である医療器具としては特に限定されないが、例えばレンズ装着の装置類、内視鏡類、メスやカテーテルなどの外科手術用器具、産科・泌尿器科用器具、麻酔装置類、人工呼吸装置類、人工透析装置類、歯科用器具またはその補助的器具、注射筒、体温計、プラスチック器具などが挙げられる。このうち、特に内視鏡が好ましい。
本明細書において「補充」とは、消毒液の調製後に添加することを意味し、「補充剤」とは、消毒液の調製後に添加される剤を意味する。
本明細書において有機過酸とは広義には有機酸の過カルボン酸化合物を指し、有機酸は例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸等の脂肪族モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の水酸基を有するヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。本発明において好ましい有機過酸は炭素数1〜8の飽和または不飽和の脂肪族モノまたはジカルボン酸の過カルボン酸化合物が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜8の飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸の過カルボン酸化合物が挙げられ、さらに詳しくは炭素数1〜3の脂肪族モノカルボン酸の過カルボン酸化合物が挙げられ、最も好ましくは過酢酸が挙げられる。
本明細書において、該有機過酸に対応する有機酸とは、該有機過酸のペルオキシカルボキシル基がカルボキシル基である化合物を意味する。本発明で用いられる消毒液は「第一の試薬」及び「第二の試薬」を混合することにより得られた液であってもよい。第一の試薬は有機過酸を1.5〜12質量%、より好ましくは4〜10質量%を含めばよい。また、第一の試薬は該有機過酸に対応する有機酸、及び過酸化水素水を含有していてもよい。第二の試薬は有機過酸、該有機過酸に対応する有機酸、又は過酸化水素水を含有しないことが好ましく、緩衝剤、腐食防止剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、安定化剤、再付着防止剤、及び界面活性剤からなる群から選択される1種以上を含む。「第一の試薬」及び「第二の試薬」については後述する。
医療用器具の消毒のために好ましい、消毒液における有機過酸の濃度は使用する有機過酸により異なるが、好ましくは0.1〜1.0質量%であり、より好ましくは0.2〜0.5質量%である。したがって、本発明方法は、消毒液が使用や時間の経過等によりこの濃度範囲より少ない有機過酸を含有することとなったとき、またはこの濃度範囲より少ない有機過酸を含有することとなる直前に行われることが好ましい。
補充剤は少なくとも有機過酸プレカーサーを含有する。有機過酸プレカーサーとは消毒液中または補充剤中で有機過酸を生成しうる化合物である。より詳しくは有機過酸プレカーサーとは消毒液中または補充剤中で過酸化水素と反応し有機過酸を生成しうる化合物である。
補充剤は、少なくとも有機過酸プレカーサーを含んでいれば固体でも液体でもよく、また単一の化合物であっても、複数の化合物から成る混合物であってもよい。
補充剤の例としては、有機過酸を含有せず常温常圧で液体または固体の有機過酸プレカーサーを含む剤、有機過酸プレカーサーおよび他の成分(過酸過水素、pH調節剤等)を含む組成物などが挙げられる。
補充剤の補充によって消毒液を一定期間交換することなく使用することができ、その期間は少なくとも8日間以上、好ましくは10〜30日間とすることが可能である。
有機過酸プレカーサーとして好ましくは前記一般式I〜IIIで表される化合物が例として挙げられる。
一般式I、IIおよびIIIにおいて、R1、R2、およびR4は炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基を表す。炭素数1〜20(C1−C20)のアルキル基としては、例えば直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基を用いることができ、好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を用いることができる。また、炭素数6〜30(C6−C30)のアリール基としては、単環性又は縮合多環性の炭化水素芳香族基を用いることができるが、例えば、フェニル基又はナフチル基などを挙げることができ、好ましくはフェニル基を挙げることができる。ここでC1−C20のアルキル基、およびC6−C30のアリール基が置換基を有する場合には、置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されない。
1、R2、およびR4としては、C1−C10の無置換アルキル基又はC2−C10のアルコキシ置換アルキル基(アルコキシ置換アルキル基であって総炭素数が2個から10個)が好ましく、C1−C5の無置換アルキル基又はC2−C5のアルコキシ置換アルキル基(アルコキシ置換アルキル基であって総炭素数が2個から5個)がより好ましく、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基がさらに好ましく、メチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基が特に好ましい。R1、R2、およびR4として最も好ましくはメチル基であるが、これに限定されることはない。
一般式IにおいてLはNと共に環構造を形成するための原子団であり、原子団としては飽和へテロ環または不飽和へテロ環であり、かつアシル部を離脱しうる構造であれば特に限定されるものではない。Lが形成するヘテロ環構造としてはイミダゾール、スクシンイミド、ヒダントイン、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ピロリドン、ピリドンが挙げられ、これらのうち好ましくはイミダゾール、スクシンイミド、ヒダントイン、トリアゾール、ベンゾトリアゾールであり、さらに好ましくはイミダゾール、スクシンイミド、ヒダントイン、トリアゾール、ベンゾトリアゾールであり、最も好ましくはイミダゾール、スクシンイミド、ヒダントインである。
一般式IIにおいてR3は置換基を表し、好ましくは脂肪族基または芳香族基であり各々置換基を有していてもよい。ただし一般式IIの化合物が適度な親水性を有することが好ましい点からはR3は過度に大きい構造は好ましくなく、その大きさは一般式IIの分子量として100〜900、より好ましくは150〜600程度であり、最も好ましくは200〜400である。mは整数であり、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。置換基の例としては、置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、2−アミノエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基が挙げられる。これらの置換基はさらに他の置換基を有していてもよい。
一般式IIIにおけるエステル部が少なくとも1つ以上有していればR5は如何なる構造でもよく、具体的にはR5は脂肪族基または芳香族基を表す。R5は置換基を有していてよく、置換基は特に限定されない。R5が脂肪族基の場合、C1〜C20のアルキルが挙げられ、好ましくはC2〜C10、最も好ましくはC3〜C6であり、各々直鎖または分岐に限定されない。また、R5が芳香族基の場合にはベンゼン環が好ましく、該ベンゼン環はカルボキシル基等の水溶性基、並びにエステル基等の電子吸引性の置換基を有していることが好ましい。nは整数であり、R5が脂肪族基の場合nは好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、最も好ましくは2〜3である。また、R5が芳香族基の場合、nは1〜6が好ましく、1〜3がより好ましい。
以下に一般式I〜IIIで表される化合物例を示すが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
Figure 2009155270
一般式I〜IIIで表される有機過酸プレカーサーの使用量は、消毒液の有機過酸濃度を必要量増加させることができれば特に限定されるものではなく、具体的には消毒液中の有機過酸の消失速度と補充頻度を考慮し必要最小限の使用量を設定することが望ましい。例えば消毒液中の有機過酸の濃度低下の半減期を10日とした場合、補充頻度は10日間に2〜10回程度かつ10日間の有機過酸プレカーサーの補充モル量の総計は消失した有機過酸モル量の0.3〜5倍、好ましくは0.8〜3倍、最も好ましくは1〜2倍である。
本発明の好ましい1つの態様においては、消毒液が過酸化水素を含有する(第一の方式と呼ぶ)。第一の方式においては有機過酸プレカーサーは消毒液中の過酸化水素により有機過酸を生成する。第一の方式においては、有機過酸プレカーサーは前記に記載の消毒液組成物の条件の下で有機過酸を生成しうる十分な反応性を有していることが好ましい。この観点においては上記の例示化合物のうち、例えば一般式Iで表される化合物を用いることが好ましい。
一般式Iで表される化合物については、有機過酸を効率的に生成するために中性〜弱アル
カリ条件で使用される方法が公知であるが、本発明者らの研究によって、消毒液中pH3〜5の酸性条件において有機過酸を生成し、消毒液中の有機過酸濃度を補う目的を満足することが見出された。従来の有機過酸プレカーサーを利用する方法では、比較的短時間に消毒液を得るために数分〜数十分程度で有機過酸が得られる比較的速い反応を要求してきたが、一方、本発明においては、数時間以上の遅い反応によって有機過酸を生成する有機過酸プレカーサーも消毒液中の有機過酸濃度を補う目的で好ましく利用することができる。
本発明において好ましい1つの態様においては、前記補充剤が有機過酸プレカーサーを含む試薬と過酸化水素を含む水溶液とを混合して調製される。(第二の方式)。第二の方式によれば、補充剤内において有機過酸プレカーサーと過酸化水素との反応による有機過酸の発生を効率的に行う条件や補充を行う間隔等を好適に設定することができる。第二の方式で用いる有機過酸プレカーサーは一般式I〜IIIで表されるいずれの化合物でもよいが、好ましくは一般式II又はIIIで表される化合物が低コストで入手し易いことから好ましい。また、第二の方式とする際には、上記混合時には、温度を20〜60℃の範囲で制御する、反応触媒としてアルカリまたはアミン等を加える、又は生成した有機過酸の分解を抑制するための安定化剤または酸を加えPHを3〜7に調整することも好ましい。これらの条件を組み合わせ、上記混合時から数分〜数時間程経過させて補充剤とすればよい。
前記の第二の方式において使用する過酸化水素は、有機過酸プレカーサー1モルあたり0.2〜10当量であることが好ましく、0.5〜6当量であることがさらに好ましく、1〜4当量が最も好ましい。過酸化水素源としては、過酸化水素水のほか、水に溶解して過酸化水素を生じる無機過酸塩又は有機過酸化物などを用いることができ、より好ましくは過酸化水素水又は無機過酸塩を用いることができる。無機過酸塩は特に限定されないが、例えば過炭酸塩又は過ホウ酸塩が好ましく、その中でも過炭酸塩が好ましく用いられる。
上記の補充剤及び消毒液、又は上記の補充剤、ならびに消毒液調製のための「第一の試薬」及び「第二の試薬」は、医療器具の消毒用キットとして提供することができる。
第一の試薬として好ましい1つの態様は、1.5〜12質量%の過酢酸溶液が挙げられ、より好ましくは4〜10質量%の過酢酸溶液である。第一の試薬は通常さらに過酸化水素、酢酸を含み、過酢酸、過酸化水素、及び酢酸を平衡状態で含む水溶液である。第一の試薬は20℃におけるpHが1〜5、好ましくは1〜3であり、必要に応じてキレート剤、pH調節剤、溶剤等を含有していてもよい。また、第一の試薬は他の公知の過酢酸発生方法によっても得ることができ、例えば特開平2007−197416号公報に記載の方法等により発生させた有機過酸が挙げられ、その他の公知の有機過酸溶液も必要に応じて用いることができる。
第二の試薬は緩衝剤、腐食防止剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、安定化剤、再付着防止剤、及び界面活性剤からなる群から選択される1種以上を含む。好ましくは、緩衝剤および腐食防止剤を少なくとも含む。第二の試薬のpH(20℃)は5〜10、好ましくは7〜9であり、必要に応じて他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は緩衝剤および腐食防止剤の他に、可溶化剤が挙げられるがこれらに限定されることはない。
緩衝剤とはpH緩衝能を有する無機・有機の酸もしくは塩、およびpH調節に必要な酸およびアルカリの成分を指す。例えば、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、グルタル酸、若しくはアジピン酸等の有機酸又はその塩、リン酸若しくは硫酸等の無機酸又はその塩、あるいは水酸化アンモニウム若しくは水酸化アルカリ金属等の塩基を用いることができる。これらのうち本発明において好ましく用いられる緩衝剤はクエン酸、酢酸の有機酸又はその塩、リン酸若しくは硫酸等の無機酸又はその塩であり、さらに好ましくはリン酸の無機酸又はその塩である。緩衝剤の濃度は特に限定されないが、第二の試薬中20質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましく、消毒液組成物中2質量%以下が好ましく1質量%以下が特に好ましい。
pH調整剤としては、環境に適合するような酸、例えば、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、グルタル酸、又はアジピン酸等の有機酸及びその塩、リン酸、硫酸等の無機酸及びその塩、水酸化アンモニウム又は水酸化アルカリ金属等の塩基を用いることができる。もっとも本発明で用いることができるpH調整剤はこれらに限定されない。特に限定されないが第二の試薬中のpH調節剤の濃度は、0.01〜1.0質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。
腐食防止剤としては、殺菌すべき医療機器の材質に適したものを選択すればよく、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、低級アルキルベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、低級アルキルヒドロキシベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、低級アルキルカルボキシベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、低級アルキルベンズイミダゾール、ヒドロキシベンズイミダゾール、低級アルキルヒドロキシベンズイミダゾール、カルボキシベンズイミダゾール、低級アルキルカルボキシベンズイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、低級アルキルメルカプトベンゾチアゾール、ヒドロキシメルカプトベンゾチアゾール、低級アルキルヒドロキシメルカプトベンゾチアゾール、カルボキシメルカプトベンゾチアゾール、低級アルキルカルボキシメルカプトベンゾチアゾール、グルコン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸ブチル、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ソルビトール、エリスリトール、リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸テトラナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、クロム酸塩、又はホウ酸塩、あるいはこれらから選択される2種以上の物質の組み合わせなどを挙げることができるが、これらに限定されない。本明細書において、「低級アルキル」という用語は、1個から6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味する。
銅、黄銅、青銅、又は多金属系を含む機器等を殺菌処理するために本発明の方法が用いられる場合には、1,2,3-ベンゾトリアゾール、低級アルキルベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、低級アルキルヒドロキシベンゾトリアゾール、モリブデン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、クロム酸塩、又はホウ酸塩、あるいはこれらの任意の組み合わせである腐食防止剤が好ましく用いられる。1,2,3-ベンゾトリアゾール、モリブデン酸ナトリウム、又は亜硝酸ナトリウム、あるいはそれらの組み合わせを含む腐食防止剤が特に好ましく用いられる。炭素鋼及び/又はステンレス鋼を含む機器等を殺菌処理するために本発明の組成物を使用する場合には、例えば、安息香酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、及びモリブデン酸ナトリウムなどを含む腐食防止剤が好ましく用いられる。炭素鋼及び/又はステンレス鋼を含む機器等を殺菌処理するために本発明の組成物を使用する場合には、例えば、硝酸ナトリウム及び/又はモリブデン酸ナトリウムを含む腐食防止剤が好ましく用いられる。本発明の消毒液組成物に含まれる腐食防止剤の総量は特に限定されない。
腐食防止剤が本発明の消毒液組成物に難溶である場合には、さらにアルキレングリコールのなどの可溶化剤を含んでもよい。本明細書において、「アルキレングリコール」という用語は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジアルキレングリコール(例えばジエチレングリコールなど)、又はトリアルキレングリコール(例えばトリエチレングリコールなど)、あるいは対応するそれらのモノ-及びジアルキルエーテルなどのグリコール類をいう。アルキルエーテルは1個から6個の炭素原子を有する低級アルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、又はプロピルエーテルなど)である。特に好ましくは、可溶化剤としてプロピレングリコールを含み、またこのプロピレングリコールは第二の試薬に腐食防止剤の同等の濃度で含まれていることが好ましい。同等の濃度とは例えば、第二に試薬中に約1質量%で含まれる1,2,3-ベンゾトリアゾールに対してプロピレングリコールは0.2〜2倍含まれていることが好ましい。
金属イオン封鎖剤とは、金属イオンを封鎖(キレート)する作用を行う成分を意味し、これらの成分がカルシウム及びマグネシウムのキレート化能力を有する場合でも、鉄、マンガン、及び銅のような重金属イオンとより選択的に結合する成分を意味する。重金属イオン封鎖剤は本発明の消毒液組成物の総質量に対して0.001質量%〜5質量%、好ましくは0.005質量%〜2質量%、さらに好ましくは0.01質量%〜1質量%、最も好ましくは0.02質量%〜0.5質量%の割合で使用することができる。第二の試薬への添加に適した重金属イオン封鎖剤として、例えば、有機ホスホン酸塩、例えば、アミノアルキレンポリ(アルキレンホスホン酸塩)、アルカリ金属エタン1−ヒドロキシジホスホン酸塩、及びニトリロトリメチレンホスホン酸塩などが挙げられる。上記の中で好ましいのは、アミノトリ(メチレンホスホン酸塩)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸塩)、エチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸塩)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸塩)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、及びヒドロキシ−エチレン1,1二ホスホン酸塩であり、最も好ましくはヒドロキシ−エチレン1,1二ホスホン酸塩である。
第二の試薬に使用する好ましい他の金属イオン封鎖剤としては、ニトリロ三酢酸及びポリアミノカルボン酸、例えばエチレンジアミノ四酢酸、エチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、エチレンジアミン二グルタル酸、2−ヒドロキシプロピレンジアミン二コハク酸、又はこれらいずれかの塩が挙げられる。特に好ましいのはエチレンジアミン−N,N'−二コハク酸(EDDS)又はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、若しくは置換アンモニウム塩、あるいはこれらの混合物である。
安定化剤としては公知の安定化剤を用いればよく、例えば、リン酸塩、8-ヒドロキシキノリン、スズ酸、スルホレン、スルホラン、スルホキシド、スルホン、又はスルホン酸などが挙げられる。このうち、リン酸塩は好ましい安定化剤である。好ましくは、消毒液組成物の総質量に対して約0.001質量%から約0.01質量%のリン酸塩を添加することができる。上記リン酸塩は、例えば、オルトリン酸ナトリウム塩、オルトリン酸カリウム塩、ピロリン酸ナトリウム塩、ピロリン酸カリウム塩、ポリリン酸ナトリウム塩、ポリリン酸カリウム塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
界面活性剤としては、酸性条件化においてペルオキシカルボン酸及び過酸化水素の存在下で酸化及び分解に対して安定な界面活性剤を使用することができ、好ましくは、酸化され易い界面活性剤は避けるべきである。適切な界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、両性、又はカチオン性の界面活性剤から選択することができる。第二の試薬への添加に好ましい界面活性剤として、例えば非イオン性界面活性剤が挙げられ、具体的には、ポリエチレン/ポリプロピレンブロックポリマー型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレンエーテル型界面活性剤、及びポリオキシエチレンソルビタン型界面活性剤等が挙げられるが。本発明の消毒液組成物に添加することができる界面活性剤はこれらに限定されることはない。第二の試薬中の界面活性剤の濃度は、0.001質量%〜5.0質量%であればよく、特に0.01質量%〜1.0質量%が好ましい。
再付着防止剤としては、内視鏡から脱離した汚れ等を液中に懸濁した状態に保つ機能を有するものを使用することができる。例えば、有機性の水溶性コロイド(例えば、デンプン、ゼラチン、若しくはデンプンなどのエーテルカルボン酸又はエーテルスルホン酸の塩、セルロース、セルロースエーテル、若しくはセルロースのエーテルカルボン酸又はエーテルスルホン酸の塩、あるいはセルロース又はデンプンの酸性硫酸エステルの塩)などを用いることができる。酸性基を含む水溶性ポリアミドも好ましく用いることができる。さらに上記以外のデンプン誘導体、例えばアルデヒドデンプンも使用することができる。もっとも、添加することができる再付着防止剤はこれらの例示に限定されることはない。再付着防止剤としては、再付着防止剤として例示された上記の化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。再付着防止剤の濃度は第二の試薬の総質量に対して5質量%以下が好ましく、特に2質量%以下が好ましい。
有機過酸を含有する消毒液と医療器具とを接触させる工程を含む医療器具の消毒方法において、前記工程前に、本発明の補充剤を前記消毒液に添加することによって、消毒液中の有機過酸濃度を長期間有効濃度に維持した消毒方法の実施が可能である。
消毒液と医療器具とを接触させる方法は特に限定されないが、医療器具を消毒液に浸漬させることにより、両者を接触させて消毒する方法が好ましい。該浸漬においては消毒液を攪拌してもよく、医療器具を振とうしてもよく、自動洗浄機を用いてもよい。また、該浸漬前又は該浸漬後に医療器具の水洗等の工程を含めてもよく、浸漬の後に医療器具を滅菌ガーゼ等で拭う又はドライヤー等により乾燥させる工程等を含めてもよい。該浸漬時間は1分以上15分以下であればよく、3分以上12分以下が好ましく、4分以上6分以下がより好ましい。
本発明の補充剤は、消毒液と医療器具との接触前に、前記消毒液に添加すればよい。消毒液が複数回の使用や時間の経過によって有効成分濃度が低下したものである場合でも、補充剤の添加によって有効成分濃度を増加させて医療器具の消毒を行うことができる。本明細書において「接触前」というとき、該消毒液の調製時から該接触の時までのいずれかのときを意味し、特に該接触の直前のみを意味するものではない。該消毒液の調製時から該接触の時までにおいて、上記の添加は1回でもよく、2回以上であってもよい。
補充剤は消毒液中の有効成分濃度を所定の範囲を保つことを目的として消毒液に添加される。従って、該添加は消毒液の有効成分濃度が低下した場合(例えば有機過酸が過酢酸の場合で消毒液中の過酢酸濃度が0.2質量%より低い濃度になった場合)や、消毒液の調製後所定の時間経過した場合又は所定の回数使用した場合に行われればよい。
補充剤の添加は消毒液の有効成分濃度を所定の範囲に保持するために行われるものであるため、該消毒液の調製時から上記の添加のいずれかのときにおいて、該消毒液の有機過酸濃度が測定されることも好ましい。
有機過酸濃度の測定方法は特に限定はない。例えば、過酢酸濃度は後述の実施例に記載の方法で測定することができ、過酢酸以外の有機過酸の濃度についても過酢酸濃度の測定方法に準じた方法で測定することができる。
本発明の方法は、補充剤又は補充剤と過酸化水素を含む水溶液とを保持及び添加する手段を備えた消毒装置を用いて行われてもよい。また、該装置は消毒液を保持及び添加する手段、又は消毒液を調製する手段(具体的には第一の試薬および第二の試薬それぞれ保持する手段及び両者を混合する手段)を備えていてもよい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例1.
以下の方法に従い消毒液の調製および安定性を評価して比較用データを得た。
(第一の試薬)6.5%の過酢酸、8%の過酸化水素、32%の酢酸、および水から成る平衡混合物(日本パーオキサイド社製、オキシペール060)を使用した。
(第二の試薬)下記表1に示す組成物にイオン交換水を加えて1Lとして調製した。調製された液は、pH8.7、比重1.07、電導度5.4であった。
Figure 2009155270
第一の試薬750mlおよび第二の試薬750mlを混合し、さらにイオン交換水を加えて15Lの消毒液を調製した。この消毒液1Lを高密度ポリエチレン製容器(容量2L)に入れ、25℃55%RHで保存した(サンプルA)。
次に、上記の消毒液の別の2Lを用意し(サンプルB)、これをサンプルAと同条件で保存した。ただし、サンプルBは下記表2の保存日数の時点でN−アセチルイミダゾール(和光純薬試薬)を添加した。
Figure 2009155270
上記の消毒液(サンプルB)への1日当り平均添加量はN−アセチルイミダゾール2.3ミリモル/Lであった。
以上のサンプルAおよびサンプルBについて、調液直後から上記日数において間隔で過酢酸濃度を定量した。定量方法としては以下に示す方法を用いた。
(消毒液の過酢酸濃度定量方法)
200mlのコニカルビーカーに消毒液をマイクロピペッターで1ml採取し、10w/v%(w/v%は溶液100ml当たりの質量(g)を表す)硫酸20mlを加えた。これにフェロイン指示薬を1〜2滴添加し、1/10N硫酸セリウム標準液で滴定し、赤色から淡青色になったところを終点(Aml)とした。次に、別の200mlのコニカルビーカーに消毒液をマイクロピペッターで1ml採取し、10w/v%硫酸20ml、10w/v%ヨウ化カリウム溶液10ml、5w/v%モリブデン酸アンモニウム溶液1〜2滴を加え、これに1/10Nチオ硫酸ナトリウム標準液で淡黄色になるまで滴定し、1w/v%デンプン溶液を約1ml加えて暗青色が消えたところを終点(Bml)とした。過酢酸の濃度は以下式により求めた。
過酢酸(mol/L)=( B×f2 −A×f1 )×0.05
ここで、f1は1/10N硫酸セリウム標準液のファクター、f2は1/10Nチオ硫酸ナトリウム標準液のファクターを表す。
サンプルAおよびBの17日間の経時における過酢酸の定量結果を図1に示す。過酢酸プレカーサーを補充しない比較例は過酢酸の濃度が低下したが、過酢酸プレカーサーとしてN−アセチルイミダゾールを添加した例においては過酢酸プレカーサーを添加した3日目以降の過酢酸濃度の低下が軽減された。なお、医療器具消毒用途における過酢酸濃度の下限0.2w/v%(0.026mol/L)を基準とすると、過酢酸プレカーサーを添加した本発明の例においてはその1.2〜1.4倍程度の濃度を維持しているが、比較例では14日以降に基準を下回った。
例2
例1で調製した消毒液の別の2Lを例1と同様の条件で保存した(サンプルC)。サンプルCは下記表3の保存日数の時点で補充用組成物を添加した。
Figure 2009155270
ここで補充用組成物としては、35%過酸化水素水4.6ml、トリアセチン2.1g、イオン交換水17.2mlを混合し、続けて炭酸ナトリウムを加えてPH9.0〜9.5とした後、20分後にクエン酸を加えてPHを4.0に調製して得た組成物を使用した。上記の添加量によれば、消毒液(サンプルC)への補充剤の1日当り平均添加量はトリアセチン基準で2.0mmol/Lであった。
また、上記の補充用組成物は使用する当日に調液し、その過酢酸濃度は例1に記載の方法により定量した結果、0.39〜0.43mol/L(3.0〜3.3w/v%)の範囲にあった。
サンプルCの17日間の経時における過酢酸の定量結果を図2に示す。図2から分かるように補充組成物を添加した例においては過酢酸濃度の低下は軽微であった。
サンプルA(比較例)およびサンプルB(本発明)の過酢酸濃度の変化を示すグラフである。 サンプルCの過酢酸濃度の変化を示すグラフである。

Claims (17)

  1. 有機過酸を含有する医療器具用消毒液用の、有機過酸プレカーサーを含有する補充剤。
  2. 過酸化水素を含有する水溶液である請求項1に記載の補充剤。
  3. 前記医療器具用消毒液が過酸化水素を含有する請求項1又は2に記載の補充剤。
  4. 前記有機過酸プレカーサーが下記一般式I〜IIIで表される化合物からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の補充剤。
    Figure 2009155270
    (一般式I、IIおよびIIIにおいて、R1、R2、R4はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基を表し、LはNと共に環構造を形成した原子団であり、R3は置換基を表し、R5は脂肪族基または芳香族基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に1〜6の整数を表す。)
  5. 前記有機過酸プレカーサーが一般式Iで表される化合物であって、前記医療器具用消毒液がpH3〜5である請求項4に記載の補充剤。
  6. 前記有機過酸が過酢酸であり、かつ前記有機過酸プレカーサーが過酢酸プレカーサーである請求項1〜5のいずれか一項に記載の補充剤。
  7. 医療器具が内視鏡である請求項1〜6のいずれか一項に記載の補充剤。
  8. 有機過酸を含有する水溶液と請求項1〜7のいずれか一項に記載の補充剤とを含む医療器具の消毒用キット。
  9. 有機過酸、該有機過酸に対応する有機酸、及び過酸化水素を含む水溶液と、請求項1〜7のいずれか一項に記載の補充剤とを含む医療器具の消毒用キット。
  10. 有機過酸を含有する水溶液と請求項1〜7のいずれか一項に記載の補充剤及び過酸化水素を含む水溶液とを含む医療器具の消毒用キット。
  11. 緩衝剤、腐食防止剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、安定化剤、再付着防止剤、及び界面活性剤からなる群から選択される1種以上を含む添加物を含む請求項8〜10のいずれか一項に記載のキット。
  12. 有機過酸を含有する消毒液と医療器具とを接触させる工程を含む医療器具の消毒方法であって、
    前記工程前に、請求項1〜7のいずれか一項に記載の補充剤を前記消毒液に添加する工程を含む消毒方法。
  13. 前記消毒液が、前記の又は別の医療器具と1回以上接触させた後の消毒液である請求項12に記載の消毒方法。
  14. 前記の添加工程の前に前記消毒液の有機過酸濃度を測定する工程を含む請求項12又は13に記載の消毒方法。
  15. 有機過酸を含有する消毒液を用いた消毒システムであって、該消毒システムは補充剤を該消毒液に加えることにより有機過酸を有効濃度に保持する補充プロセスを有し、さらに該補充剤は有機過酸プレカーサーを含有する消毒システム。
  16. 消毒液を構成する第一、第二、及び第三の組成物を独立に有し、
    第一の組成物は有機過酸を含有し、第二の組成物は有機過酸を含有せず緩衝剤および腐食防止剤を含有し、かつ第三の組成物は有機過酸プレカーサーを含む補充剤を含有する請求項15に記載の消毒システム。
  17. 少なくとも8日間以上の間、消毒液を交換することなく消毒用途に使用されることを特徴とする請求項15又は16に記載の消毒システム。
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