JP2007008851A - 殺菌補助剤 - Google Patents

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Masayuki Kawakami
雅之 川上
Kazuya Takeuchi
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Abstract

【課題】抵抗性の強い芽胞の短時間での殺菌のために有用な殺菌補助剤、該殺菌補助剤を含むキット、及び該殺菌補助剤を用いた殺菌方法の提供。
【解決手段】有機ホスホン酸化合物等のキレート化剤を含む殺菌補助剤、及び該殺菌補助剤とペルオキシカルボン酸を含む水性組成物とを含むキット、並びに医療用機器の殺菌方法であって、
(1)医療用機器を該殺菌補助剤で処理する工程;及び
(2)上記(1)の工程の後に医療用機器を殺菌剤で処理する工程
を含む殺菌方法。
【選択図】なし

Description

本発明は殺菌補助剤に関する。より具体的には、本発明は内視鏡等の医療用機器の殺菌の際の使用に適した殺菌補助剤に関する。
内視鏡等の医療用機器は、使い捨てにできず、患者に直接接触することから、より安全な殺菌を施して次の診療等に用いる必要がある。しかし、特に規模の小さい病院では1つの機器を短時間で使い回すことが多い。そのため、医療用機器の殺菌に用いる組成物としては、幅広い微生物を死滅させる作用を有し、かつ短時間で医療用機器を殺菌できる組成物が望まれている。また、安全性の観点から、該組成物中の化合物等の量は可能な限り少ないことが望まれる。
従来、内視鏡等の医療用機器の洗浄及び殺菌用組成物としては、市販品として、グルタルアルデヒドやo−フタルアルデヒド等のアルデヒドを有効成分とする組成物が知られている。しかし、これらアルデヒド化合物を主成分とする組成物については、変異原性や毒性が強いことに加え、芽胞の様な抵抗性の強い菌に対する殺菌作用が弱いことが知られている。
細菌は周囲の環境がその細菌の生育に不利な状況になると死滅していくのが一般的であるが、ある種の細菌は乾燥、高温などの環境条件が悪くなると芽胞とよばれる耐久器官を作り生き延びることが知られている。この芽胞を形成する菌としては、好気性細菌のBacillus属,嫌気性細菌のClostridium属などのグラム陽性の比較的大きい桿菌が知られている。芽胞形成菌であっても栄養バランスが取れていて分裂増殖している時(栄養型)には,芽胞を形成しない場合が多く、バランスが崩れた時に菌体内に芽胞を生じる。
芽胞は物理的及び化学的刺激に対して強い抵抗性を示すことが知られているが、この理由は、芽胞の水分の少ない濃厚な原形質と核が厚い殻で覆れているためであると推定されている。また、芽胞に含まれる水分の60-70%は結合水の形態で自由水をもたない脱水状態になっており、芽胞の重量の5-12%をジピコリン酸が占め、このジピコリン酸が大量のCaをキレートした状態で保持している。
また、芽胞は、代謝が行われていない休止状態にあるため増殖などの生物活性が殆ど見られず、細菌胞子や内生胞子と呼ばれることがあり、数年ないし数十年にわたって休眠した芽胞も再生能力を有することが知られている。従って、医学、食品工業等の分野では、芽胞を完全に死滅させることが滅菌の基準の一つとなっている。また、特に、病院及び養護施設等で用いられる医療器具や備品は、内部感染防止等の観点から十分な殺菌洗浄処理を行う必要がある。
このような殺菌洗浄処理を行うための殺菌剤等としては、グルタルアルデヒドや過酢酸が知られている。例えば内視鏡の殺菌洗浄でグルタルアルデヒドや過酢酸を用いた殺菌洗浄処理が行われる場合、第4級アンモニウム塩系殺菌剤、アルコール、酸性水、又は両性界面活性剤等を用いた一次消毒、及び酵素製剤や中性洗剤等を用いた洗浄工程の後、グルタルアルデヒドや過酢酸による滅菌処理が行われ、その後必要に応じてオートクレーブ消毒、乾熱滅菌が行われている。
芽胞に対する抗菌活性の高い組成物として、特開2001−72518号公報(特許文献1)に無機過酸化物とテトラアセチルエチレンジアミンとアルカリ金属とを組み合わせた組成物が知られており、この組成物から発生した過酢酸が、芽胞を殺滅させる。しかし、該組成物が芽胞に対し抗菌活性を示すまでには30分必要であり、内視鏡用自動洗浄機での一般的な消毒工程時間5〜20分より長い。
一方、国際公開WO00/22931号公報(特許文献2)には、過酢酸自身が5〜10分の接触時間で芽胞に対する抗菌活性を示すことが開示されている。しかし、芽胞に対してさらに強い抗菌活性を示す殺菌剤等による、より短時間での殺菌処理方法が望まれている。
特開2001−72518号公報 国際公開WO00/22931号公報
本発明は抵抗性の強い芽胞などの殺菌が短時間の処理によって可能な手段を提供することを課題とする。より詳しくは、殺菌の効果を増加させる殺菌補助剤、該殺菌補助剤を含むキット、及び該殺菌補助剤を用いた殺菌方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行い、その結果、殺菌剤による処理に、キレート化剤による処理を組み合わせることで強い殺菌作用を示すことを見出した。本発明はこれらの知見を基に完成されたものである。
すなわち、本発明はキレート化剤を含む殺菌補助剤を提供するものである。
本発明の好ましい態様によれば、殺菌の前処理に用いられる上記の殺菌補助剤が提供され、本発明の別の好ましい態様によれば、キレート化剤が有機ホスホン酸化合物もしくはその塩;アミノアルキレンポリ(アルキレンホスホン酸)及びその塩、エタン1−ヒドロキシジホスホン酸及びその塩、ならびにニトリロトリメチレンホスホン酸からなる群から選択される1又は2種以上のキレート化剤;又は有機カルボン酸化合物またはその塩、又はニトリロ三酢酸及びポリアミノカルボン酸からなる群から選択される1又は2種以上のキレート剤である上記いずれかの殺菌補助剤が提供される。
本発明の別の観点からは、殺菌用キットであって、上記いずれかの殺菌補助剤とペルオキシカルボン酸を含む水性組成物とを含むキット、並びに殺菌用キットであって、上記いずれかの殺菌補助剤、ペルオキシカルボン酸に対応するカルボン酸を含む水性組成物、及び過酸化水素を含む水性組成物を含むキット
が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、ペルオキシカルボン酸が過酢酸である上記のいずれかのキット、及び上記ペルオキシカルボン酸が一般式(I):
Figure 2007008851
(式中、R1は置換もしくは無置換のC1−C10のアルキル基(但し置換基としてOH基を有する置換基は除く)、又は置換もしくは無置換のC6−C10のアリール基を示し、Lは置換もしくは無置換のC2−C12の2価の連結基を示し、R1とLは結合して環を形成してもよい)で表されるペルオキシカルボン酸である上記いずれかのキット;LがCHR11−L12(式中、R11は水素原子又はC1〜C4の置換もしくは無置換のアルキル基を示し、L12は置換又は無置換のC1−C11の2価の連結基を示す)で表される該キット;L12が置換又は無置換のC1−C4の2価の連結基である該キット。;L12が置換又は無置換のメチレン基である上記のキット;R1が置換又は無置換のC1−C3のアルキル基である上記いずれかのキット;R1がメチル基またはエチル基であり、かつR11が水素原子である上記いずれかのキットが提供される。
本発明のさらに好ましい態様によれば、医療用機器の殺菌補助剤である上記いずれかの殺菌補助剤;医療用機器が内視鏡である該殺菌補助剤;医療用機器の殺菌用キットである上記いずれかのキット;及び医療用機器が内視鏡である該キットが提供される。
本発明のさらに別の観点からは、医療用機器の殺菌方法であって、
(1)医療用機器を上記いずれかの殺菌補助剤で処理する工程;及び
(2)上記(1)の工程の後に医療用機器を殺菌剤で処理する工程
を含む殺菌方法、及び医療用機器が内視鏡である該方法が提供される。
本発明により、短時間の処理による抵抗性の強い芽胞などの殺菌のために有用な殺菌補助剤、該殺菌補助剤を含むキット、及び該殺菌補助剤を用いた殺菌方法が提供される。
本明細書において「殺菌補助剤」という用語は、殺菌剤による処理などの他の殺菌処理と組み合わせて使用する剤を意味し、通常、それ自体に殺菌作用はないが、殺菌の効果を増加させる剤を意味する。
また、本明細書において用いられる「殺菌」という用語には、「洗浄」、「消毒」、「抗菌」及び「滅菌」などの意味が含まれる。
キレート化剤とは、特定の金属イオンに対し複数の配位座を取り得る化合物を意味し、この様な化合物が金属イオンに対し配位した錯体をキレート錯体と呼ぶ。キレート錯体はキレート化剤が複数の配位座を持つ配位子であるため、キレート効果により、キレート錯体でない錯体と比較して安定である。
本発明の殺菌補助剤におけるキレート化剤としては、金属イオンに配位可能であるキレート化剤であれば特に限定されないが、有機ホスホン酸又はその塩が挙げられる。例えば、アミノアルキレンポリ(アルキレンホスホン酸)及びその塩、エタン1−ヒドロキシジホスホン酸及びその塩、ニトリロトリメチレンホスホン酸及びその塩が挙げられる。上記種類の中で好ましいのは、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸塩)ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)及びヒドロキシ−エチレン1,1−ジホスホン酸塩である。
上記の塩としては、特に限定はされないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又はこれらの置換アンモニウム塩、もしくはこれらの混合物などが挙げられる。
さらに、本発明の殺菌補助剤におけるキレート化剤としては、有機カルボン酸又はその塩が挙げられる。該有機カルボン酸又はその塩としては、例えばニトリロ三酢酸及びエチレンジアミノ四酢酸、エチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、エチレンジアミン二グルタル酸、2−ヒドロキシプロピレンジアミン二コハク酸などのポリアミノカルボン酸、ならびにこれらの塩が挙げられる。これらのうち特に好ましいキレート化剤としてはエチレンジアミン−N,N'−二コハク酸(EDDS)又はその塩が挙げられる。さらに上記有機カルボン酸としては、例えば、2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸又はグリセリルイミノ二酢酸のようなイミノ二酢酸誘導体、イミノ二酢酸−N−2−ヒドロキシプロピルスルホン酸及びアスパラギン酸N−カルボキシメチルN−2−ヒドロキシプロピル−3−スルホン酸、並びにβ−アラニン−N,N'−二酢酸、アスパラギン酸−N,N'−二酢酸、アスパラギン酸−N−モノ酢酸、及びイミノ二コハク酸が挙げられる。二ピコリン酸及び2−ホスホノブタン−1,2,4−三カルボン酸も好適である。さらに、グリシンアミド−N,N'−二コハク酸(GADS)、エチレンジアミン−N,N'−二グルタル酸(EDDG)及び2−ヒドロキシプロピレンジアミン−N,N'−二コハク酸(HPDDS)もまた好適である。
上記の塩としては、特に限定はされないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又はこれらの置換アンモニウム塩、もしくはこれらの混合物などが挙げられる。
本発明の殺菌補助剤は上述のキレート化剤のみからなっていてもよく、上記のキレート化剤のほかに1又は2以上の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、腐食防止剤、pH調整剤、安定化剤、界面活性剤、及び再付着防止剤などを挙げることができる。
本発明の殺菌補助剤は水などの溶媒等に溶解し、溶液状態で使用されることが好ましい。該溶液において、キレート化剤は水性組成物の総質量に対して0.005質量%〜20質量%、好ましくは0.1質量%〜10質量%であればよい。
本発明の殺菌補助剤による処理及び殺菌処理の順序は特に限定されない。例えば、本発明の殺菌補助剤による処理及び殺菌処理は同時に行われてもよく、例えば本発明の殺菌補助剤及び殺菌剤が混合されていてもよいが、本発明の殺菌補助剤による処理は殺菌処理の前に行われる、すなわち殺菌の前処理のために用いられることが好ましい。例えば、内視鏡の殺菌でグルタルアルデヒドや過酢酸を用いた殺菌洗浄処理が行われる場合、一次消毒又は洗浄工程で本発明の殺菌補助剤による処理が行われるのが好ましい。
本発明の殺菌補助剤を用いた処理方法は特に限定されないが、例えば医療用機器の殺菌を行う場合、該機器を本発明の殺菌補助剤を含む溶液に浸漬させることにより、両者を接触させて処理する方法が好ましい。該浸漬においては溶液を攪拌してもよく、医療用機器を振とうしてもよく、自動洗浄機を用いてもよい。また、該浸漬前又は該浸漬後に該医療用機器の水洗等の工程を含めてもよく、浸漬の後に該医療用機器を滅菌ガーゼ等で拭う又はドライヤー等により乾燥させる工程等を含めてもよい。該浸漬時間は15秒〜30分の範囲であることが好ましく、30秒〜10分の範囲であることがより好ましい。
さらに本発明の殺菌補助剤を含む溶液への浸漬のあと殺菌処理を行う場合には殺菌補助剤を除去せずに、そのまま殺菌剤を加えてもよい。また、本発明の殺菌補助剤及び殺菌剤を混合した溶液に医療用機器を浸漬させてもよい。
本発明の殺菌補助剤と組み合わせて行う殺菌処理は特に限定されないが、殺菌剤による処理であることが好ましい。本発明の殺菌補助剤と組み合わせる殺菌剤としては特に限定はされないが、ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物であることが好ましく、該ペルオキシカルボン酸として好ましくは、過酢酸又は下記一般式(I):
一般式(I):
Figure 2007008851
(式中、R1は置換もしくは無置換のC1−C10のアルキル基(但し置換基としてOH基を有する置換基は除く)、又は置換もしくは無置換のC6−C10のアリール基を示し、Lは置換もしくは無置換のC2−C12の2価の連結基を示し、R1とLは結合して環を形成してもよい)で表されるペルオキシカルボン酸が挙げられる。
一般式(I)において、R1で示される無置換のC1−C10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、2−エチルヘキシル基などを挙げることができる。R1で示されるC1−C10のアルキル基は置換基を有していてもよいが、置換基としてOH基を有する置換基(水酸基、カルボキシ基、ヒドロペルオキシ基、及びヒドロペルオキシカルボニル基など)は除く。R1で示されるC1−C10のアルキル基は置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルスルホニル基などを挙げることができる。
1で示されるC6−C10の無置換のアリール基としてはフェニル基を挙げることができる。R1で示されるC6−C10の無置換のアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、スルホニル基、水酸基、カルボキシル基などを挙げることができる。
1としては、C1〜C4の置換若しくは無置換のアルキル基が好ましく、C1〜C4の無置換のアルキル基がより好ましい。R1が示すC1−C4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、又はtert−ブチル基などを挙げることができる。R1として、最も好ましくはメチル基、エチル基であるが、これらに限定されない。
一般式(I)において、Lは置換もしくは無置換の炭素数2−12の2価の連結基を表す。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルコキシ置換アルキル基、カルボキシル基などを挙げることができる。また、連結基中に例えば酸素原子、窒素原子などの炭素以外の分子を含んでもよい。
一般式(I)において、LはCHR11−L12(で表される連結基であることが好ましい。すなわち、一般式(I)で表されるペルオキシカルボン酸のなかで、下記一般式(I―1):
Figure 2007008851
(式中、R11は水素原子又はC1〜C4の置換もしくは無置換のアルキル基を示し、L12は置換又は無置換のC1−C11の2価の連結基を示す)で表されるペルオキシカルボン酸が好ましい。
このとき、L12としては置換または無置換のC1−C4の2価の連結基が好ましく、置換または無置換のメチレン基がより好ましく、メチレン基又はメチル基置換メチレン基(CH(CH3))がさらに好ましく、メチレン基が最も好ましい。
12で表される連結基が置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルコキシ置換アルキル基、カルボキシル基などを挙げることができる。また、連結基中に炭素以外の分子を含んでもよく、例えば酸素原子、窒素原子を挙げることができる。
また、一般式(I)で表されるペルオキシカルボン酸のなかで、一般式(II)又は(III):
Figure 2007008851
(式中、R2、R3、R4、及びR5は各々独立に水素、C1−C4アルキル基、C1−C4のアルコキシ基又はC1−C4アルコキシ置換C1−C4アルキル基を示し、L2は置換もしくは無置換のC1−C9アルキレン基、又は置換もしくは無置換のC6−C9アリーレン基を示し、L1は置換もしくは無置換のC1−C10の2価の連結基を示す)で表されるペルオキシカルボン酸もまた好ましい。
一般式(II)又は(III)で表されるペルオキシカルボン酸としてさらに好ましくは、L1がCHR12−L13(R12は水素原子又はC1〜C4の置換もしくは無置換のアルキル基を示し、L13は置換もしくは無置換のC1−C9の2価の連結基を示す)であるペルオキシカルボン酸;R2、R3、R4、及びR5が各々独立に水素、C1−C4のアルキル基、又はC1−C4アルコキシ置換C1−C4アルキル基であり、L2がC1−C2の無置換のアルキレン基であるペルオキシカルボン酸;R2、R3、R4及びR5が水素であるペルオキシカルボン酸が挙げられる。
さらに、一般式(I)で表されるペルオキシカルボン酸のなかで、一般式(IV)又は(V):
Figure 2007008851
(式中、R2、R3、R4、及びR5は各々独立に水素、C1−C4のアルキル基、C1−C4のアルコキシ基、又はC1−C4アルコキシ置換C1−C4アルキル基を示し、L2は置換もしくは無置換のC1〜C9のアルキレン基、又は置換もしくは無置換のC6〜C9のアリーレン基を示す)で表されるペルオキシカルボン酸もまた好ましい。
一般式(IV)又は(V)で表されるペルオキシカルボン酸としてさらに好ましくは、R2、R3、R4及びR5は各々独立に水素、C1−C4のアルキル基、又はC1−C4アルコキシ置換C1−C4アルキル基であり、L2が無置換のC1−C3のアルキレン基であるペルオキシカルボン酸;R2が水素であるペルオキシカルボン酸;R2、R3、及びR4が水素であるペルオキシカルボン酸;R5がメチル基であるペルオキシカルボン酸;L2がメチレン基であるペルオキシカルボン酸;R2、R3、R4、及びR5が水素であるペルオキシカルボン酸;L2がメチレン基である該ペルオキシカルボン酸;R4がC1−C4アルコキシ置換メチル基であるペルオキシカルボン酸;R5がメチル基であるペルオキシカルボン酸が挙げられる。
ペルオキシカルボン酸は、置換基の種類により、1個又は2個の不斉炭素を有する場合がある。1個又は2個の不斉炭素に基づく光学的に純粋な任意の光学異性体、上記の光学異性体の任意の混合物、ラセミ体、2個の不斉炭素に基づくジアステレオ異性体、上記ジアステレオ異性体の任意の混合物などのいずれを含む殺菌剤も好ましく用いることができる。更に、ペルオキシカルボン酸は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質を含む殺菌剤も好ましく用いることができる。
ペルオキシカルボン酸の具体例を以下に示すが、下記に限定されることはない。
Figure 2007008851
Figure 2007008851
Figure 2007008851
Figure 2007008851
Figure 2007008851
Figure 2007008851
Figure 2007008851
ペルオキシカルボン酸は、Organic peroxides, vol.I, pp 313-474(Daniel Swern, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1970)などに記載されている公知のペルオキシカルボン酸の合成方法に準じて合成することができる。具体的には、例えばカルボン酸と過酸化水素との反応により合成することができる。また、カルボン酸と過酸化水素との反応においては、反応の触媒として強酸を用いることが効果的である。この強酸としては、硫酸、リン酸などを用いることができるが、スルホン酸基を有する強酸性イオン交換樹脂や、ナフィオンなどの固体酸触媒を用いることもできる。
上記ペルオキシカルボン酸の合成で用いられるカルボン酸としては、市販のカルボン酸を用いることができるが、適宜公知の方法により合成したカルボン酸を用いることもできる。例えば3−アルコキシプロピオン酸は、J.Am.Chem.Soc., 70,1004(1948)に記載されている様にβ−プロピオラクトンとアルコールとの反応や、J.Am.Chem.Soc., 69,2967(1947),77,754(1955)に記載されている様に、アクリル酸エステルとアルコキサイドとの反応で得られる3−アルコキシプロピオン酸エステルの加水分解によって合成することが可能である。
また、3位よりカルボニル基から遠い位置がアルコキシ置換されたカルボン酸はJ.Org.Chem., 59,2253(1994)に記載されている様にβ〜δ−ラクトンとアルコールとの反応により合成することが可能である。
ペルオキシカルボン酸は1種を用いてもよく又は2種以上を混合して用いてもよい。ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物中のペルオキシカルボン酸の濃度は0.1 mmol/l以上2000 mmol/l以下であり、好ましくは1mmol/l以上200 mmol/l以下であり、更に好ましくは40 mmol/l以上120 mmol/l以下であればよい。
ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物は、上述のペルオキシカルボン酸のほかに、該ペルオキシカルボン酸に対応するカルボン酸及び/又は過酸化水素を含んでいてもよい。本明細書において、ペルオキシカルボン酸に対応するカルボン酸とは、該ペルオキシカルボン酸のペルオキシカルボキシル基がカルボキシル基である化合物を意味する。この場合、水性組成物中のペルオキシカルボン酸に対応するカルボン酸の濃度は0.1mmol/l以上 2000mmol/l以下であり、好ましくは1mmol/l以上 200mmol/l以下であり、更に好ましくは 40mmol/l以上200mmol/l以下であればよい。また、過酸化水素の濃度は3mmol/l以上 6000mmol/l以下であり、好ましくは10mmol/l以上 1000mmol/l以下であり、更に好ましくは 30mmol/l以上600mmol/l以下であればよい。
ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物を含む水性組成物はペルオキシカルボン酸の濃度が1mmol/l以上200 mmol/l以下であり、過酸化水素の濃度が10mmol/l以上1000 mmol/l以下であることが好ましい。
ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物は、例えば使用の際に、ペルオキシカルボン酸等の各成分が上述の濃度になるように水性組成物を調製すればよい。過酸化水素とカルボン酸よりペルオキシカルボン酸が生成することは、古くから知られている。この反応は、カルボン酸、過酸化水素、ペルオキシカルボン酸、および水との平衡反応として進行し、過酸化水素もしくはカルボン酸の濃度を高くするほど高濃度のペルオキシカルボン酸が生成する。例えば、90質量%の過酸化水素を、過酸化水素の1.5倍モルの酢酸と混合すると、過酢酸45質量%、酢酸35質量%、過酸化水素6質量%、水14質量%の平衡混合液が得られる(kirk-Othmer Encyclopedia of chem.Tech. Inst, Suppl. P662(1957))。
したがって、ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物は、ペルオキシカルボン酸に対応するカルボン酸を含む水性組成物と、過酸化水素を含む水性組成物と含むキットとして提供し、使用に際し混合し使用することもでき、必要に応じて混合物を水で希釈後に使用することもできる。また、ペルオキシカルボン酸及び下記添加物を乾燥形態で提供し、使用に際して水性溶媒に溶解することもできる。
ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物は、上記の有効成分のほかに1又は2以上の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例としては、腐食防止剤、可溶化剤、pH調整剤、安定化剤、界面活性剤、及び再付着防止剤等が挙げられる。
腐食防止剤としては、殺菌される医療機器の材質に適した剤を選択すればよく、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾールと、低級アルキルベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、低級アルキルヒドロキシベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、低級アルキルカルボキシベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、低級アルキルベンズイミダゾール、ヒドロキシベンズイミダゾール、低級アルキルヒドロキシベンズイミダゾール、カルボキシベンズイミダゾール、低級アルキルカルボキシベンズイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、低級アルキルメルカプトベンゾチアゾール、ヒドロキシメルカプトベンゾチアゾール、低級アルキルヒドロキシメルカプトベンゾチアゾール、カルボキシメルカプトベンゾチアゾール、低級アルキルカルボキシメルカプトベンゾチアゾール、グルコン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸ブチル、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ソルビトール、エリスリトール、リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸テトラナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、クロム酸塩、及びホウ酸塩から選択される1種又は2種以上の化合物とを組み合わせた剤等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において、「低級アルキル」という用語は、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を意味する。
銅、黄銅、青銅、又は多金属系を含む機器等を処理する場合には、1,2,3-ベンゾトリアゾール及び1種又はそれ以上の低級アルキルベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、低級アルキルヒドロキシベンゾトリアゾール、モリブデン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、クロム酸塩、ホウ酸塩、及びこれらの混合物である腐食防止剤が好ましく用いられる。1,2,3-ベンゾトリアゾール、モリブデン酸ナトリウム、及び亜硝酸ナトリウムを含む腐食防止剤が特に好ましく用いられる。炭素鋼及びステンレス鋼を含む機器等を処理する場合には、例えば、安息香酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、及びモリブデン酸ナトリウムなどを含む腐食防止剤が好ましく用いられる。炭素鋼及び/又はステンレス鋼を含む機器等を処理する場合には、例えば、硝酸ナトリウム及び/又はモリブデン酸ナトリウムを含む腐食防止剤が好ましく用いられる。ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物中に存在する腐食防止剤の総量は、組成物の総質量に対して、典型的には、0.1質量%から約30質量%である。1,2,3-ベンゾトリアゾールの量は、好ましくは0.1質量%から約3.0質量%であり、より好ましくは0.5質量%から約2.0質量%である。
腐食防止剤が例えば、ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物に難溶である場合には、該組成物はさらにアルキレングリコールのなどの可溶化剤を含んでもよい。本明細書において、「アルキレングリコール」という用語は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール)、トリアルキレングリコール(例えば、トリエチレングリコール)、ならびに対応するそれらのモノ-及びジアルキルエーテルなどのグリコールをいう。ここでこのアルキルエーテルは、1個から6個の炭素原子を有する低級アルキルエーテル(例えば、メチル、エチル、又はプロピルエーテル)である。特に好ましくは、上記の水性組成物は可溶化剤としてプロピレングリコールを含み、またこのプロピレングリコールはペルオキシカルボン酸を含む水性組成物中に腐食防止剤の約3倍から10倍の濃度で含まれていることが好ましい。例えば、ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物中に約1質量%で含まれる1,2,3-ベンゾトリアゾールに対してプロピレングリコールが上記の水性組成物中に約3.5質量%から6.5質量%で含まれていることが好ましい。
pH調整剤としては、ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物に適合しかつ環境に適合するような酸、例えば、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、グルタル酸、又はアジピン酸等の有機酸及びその塩、リン酸、硫酸等の無機酸及びその塩、水酸化アンモニウム又は水酸化アルカリ金属等の塩基を用いることができる。もっとも本発明で用いることができるpH調整剤はこれらに限定されない。ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物のpH調整剤の濃度は組成物の総質量に対して、20質量%以下が好ましく、特に0.1質量%〜10質量%が好ましい。
安定化剤としては公知の安定化剤を用いればよく、リン酸塩、8-ヒドロキシキノリン、スズ酸、スルホレン、スルホラン、スルホキシド、スルホン、スルホン酸などが挙げられる。ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物において、リン酸塩が好ましい安定化剤である。好ましくは、ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物は総質量に対して約0.001質量%から約0.5質量%のリン酸塩を含む。上記リン酸塩は、オルトリン酸ナトリウム塩、オルトリン酸カリウム塩、ピロリン酸ナトリウム塩、ピロリン酸カリウム塩、ポリリン酸ナトリウム塩、ポリリン酸カリウム塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
またペルオキシカルボン酸を含む水性組成物は任意に総質量に対して約30質量%までの界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、酸性水性媒体中でペルオキシカルボン酸、過酸化水素の存在下で酸化及び分解に対して安定な界面活性剤を使用することができ、好ましくは、酸化され易い界面活性剤は避ける。適切な界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、両性、又はカチオン性の界面活性剤から選択することができる。
ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物に添加するのに好ましい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が挙げられ、具体的には、ポリエチレン/ポリプロピレンブロックポリマー型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレンエーテル型界面活性剤、及びポリオキシエチレンソルビタン型界面活性剤等が挙げられるが。ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物に添加される界面活性剤はこれらに限定されない。
再付着防止剤としては、医療用機器から脱離した汚れ等を液中に懸濁した状態に保つ機能を有するものを使用することができる。例えば、有機性の水溶性コロイド(例えば、デンプン、ゼラチン、デンプンのエーテルカルボン酸又はエーテルスルホン酸の塩、セルロース、セルロースエーテル、セルロースのエーテルカルボン酸もしくはエーテルスルホン酸の塩、又はセルロースもしくはデンプンの酸性硫酸エステルの塩)などを用いることができる。酸性基を含む水溶性ポリアミドも好ましく用いることができる。さらに上記以外のデンプン誘導体、例えばアルデヒドデンプンも使用することができる。もっとも、ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物に添加される再付着防止剤はこれらの例示に限定されない。
再付着防止剤としては、再付着防止剤として例示された上記の化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。ペルオキシカルボン酸を含む水性組成物中の再付着防止剤の濃度は、組成物の総質量に対して5質量%以下が好ましく、特に2質量%以下が好ましい。
殺菌剤による処理方法は特に限定されないが、例えば医療用機器の殺菌をペルオキシカルボン酸を含む水性組成物を用いて行う場合、医療用機器を該水性組成物に浸漬させることにより、両者を接触させて殺菌する方法が好ましい。該浸漬においては水性組成物を攪拌してもよく、医療用機器を振とうしてもよく、自動洗浄機を用いてもよい。また、該浸漬前又は該浸漬後に該医療用機器の水洗等の工程を含めてもよく、浸漬の後に該医療用機器を滅菌ガーゼ等で拭う又はドライヤー等により乾燥させる工程等を含めてもよい。処理時間は用いる殺菌剤によって異なるが、本発明の殺菌補助剤による前処理後に殺菌を行う場合は通常15秒〜30分である。また、上記のペルオキシカルボン酸を含む水性組成物を用いる場合、上記の浸漬を15秒程度以上5分以下行うことによって充分な殺菌が可能であるため、通常の医療診断で医療用機器が用いられる時間内で殺菌操作を終了させることができる。
本発明の殺菌補助剤を用いた殺菌により、特に高い抵抗性を有する細菌である芽胞、例えばBacillus subtilisも短時間で死滅させることが可能である。本発明の殺菌補助剤の用途は特に限定されないが、生物へ投与する工程を含まない用途であることが好ましく、機器又は器具の殺菌の際に用いられることが好ましい。さらに、本発明の殺菌補助剤は繰り返し使用することを前提とした医療用機器の処理に適しており、特に短時間での殺菌を要する歯科機器や医療外科用機器、例えば、内視鏡の殺菌に適している。
いかなる理論に拘泥するものではないが、芽胞はCaをジピコリン酸がキレートした形で大量に保持しその強固な形態を維持しているため、本発明の殺菌補助剤中のキレート化剤がCaを芽胞内から取り除くことによって芽胞の強固な形態が崩壊し、本発明の殺菌補助剤によって殺菌効果が増加していると考えられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(例1)抗菌活性評価
芽胞に対する抗菌活性を評価した。
厚生労働省通知 衛乳第10号(平成8年1月29日)の芽胞原液調製法を参考にBacillus subtilis IFO3134の芽胞を調製した。具体的にはBacillus subtilis IFO3134をNutient Agar(Difco)上で1週間、37℃で培養し、約90 %の芽胞形成率を確認した。この菌を消毒又は滅菌水3 mLに懸濁し、振とうしながら(160 rpm)、65℃で30分間加熱処理し栄養型を死滅させた。これを遠心分離(3000 rpm)した後、上清を捨て消毒又は滅菌水3 mLを加え芽胞原液とした。この芽胞原液を1.1×109 cfu/mLになる様に調整し、以下の抗微生物活性評価に供した。
抗菌活性評価は坂上らの方法(J. Antibact. Antifung. Agents.、26巻、605〜601ページ、1998年)に従って実施した。
0.2μmのフィルター濾過を行った8.7 wt/v%(400mmol/l)ヒドロキシ−エチレン1,1−ジホスホン酸水溶液225μLに前記方法により調製した芽胞懸濁液25μLを加え25℃で5分間反応させた(混合後菌濃度:1.1×108 cfu/mL)。同様に水225μLに前記方法により調製した芽胞懸濁液25μLを加え25℃で5分間反応させた。
これらの水溶液に400 mmol/lの過酢酸又は化合物1のペルオキシカルボン酸を含む水溶液12.5μL添加し15秒〜5分間反応させた(混合後濃度;40 mmol/l)。この水溶液から25μLをサンプリングし、0.1Nチオ硫酸ナトリウム、1%カタラーゼの混合水溶液225μLに添加しペルオキシカルボン酸及び過酸化水素を不活性化した。この不活性化した水溶液20μLを2 mLのSCDLP培地(日水製薬)に加え160 rpm、37℃で48時間培養し菌の生育の有無を調べた。一方、同じ不活性化した水溶液100μL をSCDLP寒天培地(日水製薬、25 mL/シャーレ)にまき、37℃で48時間培養後にコロニーの形成を目視で観察した。)
Figure 2007008851
尚、表中+は液体培養での菌体増殖又は寒天培養でのコロニー形成が認められた事、−は液体培養での菌体増殖又は寒天培養でのコロニー形成が認められない場合を示す。
表1の結果より、本発明の殺菌補助剤とペルオキシカルボン酸を含む水性組成物を組み合わせた処理により、ペルオキシカルボン酸含む水性組成物単独の処理に比べて強い殺菌作用を示し、短時間での殺菌が可能なことがわかった。
尚、本発明の殺菌補助剤のみでは、芽胞に対し殺菌作用を示さないことは別途確認した。

Claims (21)

  1. キレート化剤を含む殺菌補助剤。
  2. 殺菌の前処理に用いられる請求項1に記載の殺菌補助剤。
  3. キレート化剤が有機ホスホン酸化合物またはその塩である請求項1又は2に記載の殺菌補助剤。
  4. キレート化剤がアミノアルキレンポリ(アルキレンホスホン酸)及びその塩、エタン1−ヒドロキシジホスホン酸及びその塩、ならびにニトリロトリメチレンホスホン酸からなる群から選択される1又は2種以上のキレート化剤である請求項1又は2に記載の殺菌補助剤。
  5. キレート化剤が有機カルボン酸化合物またはその塩である請求項1又は2に記載の殺菌補助剤。
  6. キレート化剤がニトリロ三酢酸及びポリアミノカルボン酸からなる群から選択される1又は2種以上のキレート剤である請求項1又は2に記載の殺菌補助剤。
  7. 殺菌用キットであって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の殺菌補助剤とペルオキシカルボン酸を含む水性組成物とを含むキット。
  8. 殺菌用キットであって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の殺菌補助剤、ペルオキシカルボン酸に対応するカルボン酸を含む水性組成物、及び過酸化水素を含む水性組成物を含むキット。
  9. ペルオキシカルボン酸が過酢酸である請求項7又は8に記載のキット。
  10. ペルオキシカルボン酸が一般式(I):
    Figure 2007008851
    (式中、R1は置換もしくは無置換のC1−C10のアルキル基(但し置換基としてOH基を有する置換基は除く)、又は置換もしくは無置換のC6−C10のアリール基を示し、Lは置換もしくは無置換のC2−C12の2価の連結基を示し、R1とLは結合して環を形成してもよい)で表されるペルオキシカルボン酸である請求項7又は8に記載のキット。
  11. LがCHR11−L12(式中、R11は水素原子又はC1〜C4の置換もしくは無置換のアルキル基を示し、L12は置換又は無置換のC1−C11の2価の連結基を示す)で表される請求項10に記載のキット。
  12. 12が置換又は無置換のC1−C4の2価の連結基である請求項11に記載のキット。
  13. 12が置換又は無置換のメチレン基である請求項11に記載のキット。
  14. 1が置換又は無置換のC1−C3のアルキル基である請求項10〜13に記載のキット。
  15. 1がメチル基またはエチル基であり、かつR11が水素原子である請求項11〜13に記載のキット。
  16. 医療用機器の殺菌補助剤である請求項1〜6のいずれか一項に記載の殺菌補助剤。
  17. 医療用機器が内視鏡である請求項16に記載の殺菌補助剤。
  18. 医療用機器の殺菌用キットである請求項7〜15のいずれか一項に記載のキット。
  19. 医療用機器が内視鏡である請求項18に記載のキット。
  20. 医療用機器の殺菌方法であって、
    (1)医療用機器を請求項1〜6のいずれか一項に記載の殺菌補助剤で処理する工程;及び
    (2)上記(1)の工程の後に医療用機器を殺菌剤で処理する工程
    を含む殺菌方法。
  21. 医療用機器が内視鏡である請求項20に記載の方法。
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