JP4558934B2 - 抗菌剤 - Google Patents
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Description
本発明は、抗菌剤、洗剤、洗濯助剤、使い捨てシーツ、使い捨てシーツセット、抗菌剤の製造方法、および、抗菌処理方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、住居、病院、公共施設、工業製品、工業廃棄物、家庭用品等の被処理物に対して殺菌(滅菌)、消臭、防かび、除菌等の抗菌処理を行うために用いられる抗菌剤およびその製造方法、抗菌剤を用いて上記の被処理物を処理する抗菌処理方法、例えば衣類、寝具、医療用等の繊維製品やその他各種製品の洗浄に用いる洗剤および洗濯助剤、上記繊維製品等の被処理物を処理する抗菌処理方法、並びに、特に寝たきり患者用のベッドに用いるのに好適な使い捨てシーツおよび使い捨てシーツセットに関するものである。
背景技術
近年、MRSA(Methicillin−Resistant Staphylococcus Aureus;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)等の病院内感染や公共施設における病原性大腸菌「O−157」等の感染が大きな社会問題となっており、その防止対策が強く望まれている。また、マンション等の気密性の高い住居が増加したため、特に浴室のような湿度の高い場所における防かびの要望も高くなっている。
従来、病院内感染防止のための殺菌や住居内での殺菌には、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤や、塩化ベンザルコニウムなどの4級アンモニウム塩等が用いられることが多かった。
特に、塩素系殺菌剤は、真菌類や、結核菌を除く細菌類に対して殺菌効果があり、殺菌スペクトルが広いという特性がありウイルス等も不活性化できること、即効性があること、耐性菌が発生しないこと、殺菌だけではなく臭気成分を同時に酸化分解できること、分解後は安全な食塩あるいは尿素などになること等、優れた性質を有しており、最も一般的に使用されている殺菌剤である。
しかし、塩素系殺菌剤は、残効性がなく、処理後新たに外部から微生物が飛来した場合には、その増殖を抑制することができないという欠点があり、頻繁に処理を繰り返して行わなければならなかった。また、4級アンモニウム塩については、塩素系殺菌剤と類似の殺菌特性を有するものの、臭気成分を分解できず、日常一般的に使用する陰イオン界面活性剤と反応し、失効してしまうため、塩素系殺菌剤に比べて用途が限定されるという問題点があった。
一方、従来より、細菌や、かびに対して抗菌効果が長期間持続する抗菌剤として、亜鉛、銀、銅などの重金属のイオンを含むものが一般的に使用されている。重金属イオンは、広い殺菌スペクトルを示し、特に細菌類に対して殺菌効果が高いこと、抗菌効果が長期間持続すること、耐性菌が発生しにくいこと等の特性がある。重金属イオンの種類としては、銀イオンが、安全性の点で特に優れていることから、近年広く使用されている。
しかしながら、銀イオンは、処理直後の殺菌力および消臭力に関しては、塩素系殺菌剤などの酸化剤に比べると不十分であり、かつ、防かび性能を発現させるためには、細菌に使用する場合よりも高濃度の銀イオンを必要とする。さらに、被処理物(処理対象物)中に硫化物が共存する場合には、銀イオンが水に不溶な硫化物に変化するため、それ以降は抗菌効果が著しく低下するという問題点もあった。
そこで、発明者らは、上記従来の事情に鑑み、即効性を有する酸化剤と残効性のある銀イオンとを組み合わせることにより、広い殺菌スペクトルを示し、耐性菌が発生しにくく、安全性が高く、かつ、殺菌に対しても消臭に対しても即効性と残効性とを示し、硫化物に対しても高い抵抗性を有する抗菌剤を開発することを検討した。
発明者らの検討によれば、銀イオンは、酸化剤と組み合わせる場合、水溶液の状態で存在することが望ましい。このように銀イオンを溶液の状態に保つ方法としては、銀イオンをチオ硫酸の錯塩またはチオシアン酸の錯塩とする方法、銀イオンをアミノ酸銀とする方法などが広く知られている。しかしながら、チオ硫酸、チオシアン酸、およびアミノ酸の陰イオンは、酸化剤と混合すると、酸化剤の酸化力により分解され、その結果、有効成分である銀イオンが水酸化物として沈澱してしまう。このため、銀のチオ硫酸錯塩、銀のチオシアン酸錯塩、およびアミノ酸銀を、酸化剤と混合することはできなかった。
また、近年、抗菌(除菌および滅菌を含む)処理が施された衣類等の繊維製品やその他の各種抗菌加工製品が数多く提供されている。一般にこれらの抗菌加工製品には、固体状(粉末状)の抗菌剤が、予め繊維表面等に固定されることによって抗菌性が付与されている。上記固体状の抗菌剤としては、水に難溶な有機系抗菌剤や、抗菌性を有する銀等の金属の難溶性化合物等が用いられている。
一方、液状または水溶性の抗菌剤も実用化されている。液状または水溶性の抗菌剤としては、アルコール系、クレゾール等のフェノール系、4級アンモニウム塩系等のほか、銀等の抗菌性を有する金属とアミノ酸、チオ硫酸、チオシアン酸等との錯塩等が用いられている。
ところが、上記従来の抗菌剤によって抗菌加工された製品(繊維製品等)は、製品表面が汚れ等によって覆われると抗菌性が失われてしまう。また、抗菌剤として銀化合物を用いている場合には、銀が硫化した場合にも抗菌性が失われる。
また、上記従来の固体状の抗菌剤は、予め混練またはその他の特殊加工により、製品表面等に固定する必要がある。従って、汚れや、例えば銀の硫化によって、一旦、製品の抗菌性が失われてしまうと、その製品を再度処理して抗菌性を付与するには工業的な処理技術が必要となる。このため、上記従来の固体状の抗菌剤による抗菌処理方法では、抗菌加工製品の抗菌性を保持したり、再度処理して新たに抗菌性を付与することが家庭では容易に行えないという問題点を有している。
これに対し、上記従来の液状または水溶性の抗菌剤については、使用中の製品表面に直接塗布する等により抗菌性を付与できるというメリットがある。しかしながら、これら液状または水溶性の抗菌剤は、繊維製品の表面に塗布等しても、水洗することによりほぼ完全に溶出し、抗菌性が簡単に失われてしまうという欠点を有している。
また、アルコール系や、フェノール系の抗菌剤は、揮発性や被酸化性を有するために抗菌効果が持続しないという問題点がある。また、特にアルコール系の抗菌剤では引火性が強く、フェノール系の抗菌剤では毒性および刺激臭が強いといった安全上の問題点もある。さらに、4級アンモニウム塩系の抗菌剤は、日常的に使用される洗剤中に存在する陰イオン性界面活性剤と反応することにより、抗菌能力が簡単に失われるという欠点を有している。
さらには、銀のチオ硫酸錯塩やチオシアン酸錯塩は、錯塩中に硫化物イオン(S2−)が含まれるために、酸や、熱により分解した場合に有毒ガスを発生するとともに、有効成分である錯塩が次第に硫化銀に変化して、抗菌能力が失われるという欠点がある。
ところで、上記銀のチオ硫酸錯塩、銀のチオシアン酸錯塩、および銀のアミノ酸塩等は、次亜塩素酸ナトリウム等のアルカリ性の酸化剤が周囲に存在すると、該次亜塩素酸ナトリウム等の酸化力により分解する。このため、これらの銀の錯塩を利用した従来の銀糸抗菌剤は、次亜塩素酸ナトリウム等のアルカリ性の酸化剤を含むいわゆる塩素系漂白剤との併用が不可能であった。
また、銀のアミノ酸塩等の有機錯塩では、硫化物イオン(S2−)を含む無機錯塩に比べて、錯安定度が比較的低い。このため、保存中に周囲に存在する塩素イオンと反応して塩化銀が沈殿しやすく、その結果、抗菌性が著しく低下するという欠点を有している。また、生成した塩化銀の沈殿物は、洗剤等を保存している間に徐々に大きくなる。このような塩化銀の大きな沈殿物は溶解度が非常に低く、均一に分散されないので、製品表面に吸着する性質を有しない。従って、銀のアミノ酸塩等の有機錯塩が周囲に存在する塩素イオンと反応して生成する塩化銀の沈殿物は、抗菌性の付与にはほとんど寄与し得ない。さらに、これら有機錯塩は、無機銀塩と同様に黒化する場合があり、繊維製品等の変色を引き起こす可能性がある。
ところで、従来より、寝たきり患者用のベッドに敷くシーツとして、シーツを洗濯する手間を省くために、使い捨てシーツが用いられている。
ところが、上記従来の使い捨てシーツでは、紙や不織布等の安価な素材を用いることによって使い捨てが可能となっており、シーツを洗濯する手間は省けるものの、シーツを交換する手間を省くことはできない。上記従来の使い捨てシーツでは、シーツの取り替え時に、寝たきり患者をベッドから移動させる必要があった。それゆえ、従来の使い捨てシーツの交換は、一般に複数の介護者を必要とし、1人の介護者で行うことが非常に困難であるという問題点を有している。そのため、使い捨てシーツが汚れてすぐに交換しなければならないような場合でも、介護者が1人しかいないために、使い捨てシーツを交換できないことがあった。
そこで、1人の介護者で取り替えることができる使い捨てシーツが要望されている。
発明の開示
本発明は、上記従来の事情に鑑みなされたものであり、その第1の目的は、酸化剤と銀イオンとを共存させた抗菌剤であって、広い殺菌スペクトルを示し、耐性菌が発生しにくく、安全性が高く、硫化物に対して抵抗が高く、かつ殺菌に対しても消臭に対しても即効性と残効性とを兼ね備えた抗菌剤およびその製造方法、並びに、その抗菌剤を用いた抗菌処理方法を提供することにある。
本発明に係る第1の抗菌剤は、上記第1の目的を達成するために、銀クロロ錯塩と酸化剤とを含むことを特徴としている。
上記構成によれば、殺菌および消臭に対して即効性と残効性とを兼ね備え、広い殺菌スペクトルを示し、耐性菌が発生しにくく、安全性が高いうえ、硫化物が共存する媒体中や環境でも十分な安定性を保持し、かつ価格的にも実用的であって、消臭作用、抗菌・防かび作用に優れた抗菌剤を提供することができる。
本発明に係る第1の抗菌剤では、上記銀クロロ錯塩と上記酸化剤とが、塩化物水溶液中に含まれ、かつ、上記塩化物水溶液中における銀クロロ錯塩の濃度が、銀イオン濃度換算で0.05mg/l以上であることが好ましい。これにより、抗菌剤の抗菌作用が十分に発揮される。
上記塩化物水溶液中における銀クロロ錯塩の濃度は、銀イオン濃度換算で2.5mg/l以上であることがより好ましい。これにより、硫化物形態の硫黄を含む有機物が存在していても、優れた抗菌作用が得られる。
上記塩化物水溶液中における塩化物イオンの濃度は、0.02モル/l以上であることが好ましい。これにより、2.5mg/l以上の銀イオン濃度が実現できる。それゆえ、硫化物形態の硫黄を含む有機物が存在していても、優れた抗菌作用を得ることができる。
上記酸化剤は、次亜塩素酸塩および/または亜塩素酸塩であることが好ましい。これにより、抗菌剤の即効性をさらに向上させることができる。
また、上記第1の目的を達成するために、本発明に係る第1の抗菌剤の製造方法は、塩化物水溶液と、銀および/または銀化合物と、酸化剤とを混合することを特徴としている。
上記方法によれば、殺菌および消臭に対して即効性と残効性とを兼ね備え、広い殺菌スペクトルを示し、耐性菌が発生しにくく、安全性が高いうえ、硫化物が共存する媒体中や環境でも十分な安定性を保持し、かつ価格的にも実用的であって、消臭作用および抗菌防かび作用に優れた抗菌剤が得られる抗菌剤の製造方法を提供することができる。
さらに、上記第1の目的を達成するために、本発明に係る第1の抗菌処理方法は、酸化剤の存在下で銀クロロ錯塩を含む水溶液を使用して被処理物を処理することを特徴としている。
上記方法によれば、殺菌および消臭に対して即効性と残効性とを兼ね備え、広い殺菌スペクトルを示し、耐性菌が発生しにくく、安全性が高いうえ、硫化物が共存する媒体中や環境でも十分な安定性を保持し、かつ価格的にも実用的であって、消臭作用および抗菌防かび作用に優れた抗菌処理方法を提供することができる。
本発明の第2の目的は、保存時の濃度のままで簡便に使用することが可能であり、かつ、使用時における錆の発生や塩類の析出を生じず、即効性および洗浄能力を備えた抗菌剤および抗菌処理方法を提供することにある。
本発明に係る第2の抗菌剤は、上記第2の目的を達成するために、銀クロロ錯塩と、塩化物イオンを供給する塩化物とを含む抗菌剤であって、上記塩化物が溶解する溶媒と相溶性を有する化合物とをさらに含むことを特徴としている。上記の第2の抗菌剤は、上記塩化物が溶解する溶媒をさらに含むことが好ましい。また、上記溶媒は、水であることが好ましい。
上記の構成によれば、塩化物が溶解する溶媒と相溶性を有する化合物が、水またはその他の溶媒を捕捉することによって、抗菌剤溶液中の銀クロロ錯塩近傍における自由水または化学的および物理的に捕捉されていない溶媒を減少させることができる。これにより、銀クロロ錯塩の安定化に寄与する見かけ上の塩化物イオンの濃度を増加させることができる。従って、銀クロロ錯塩の安定化に直接必要な塩化物イオン濃度を見かけ上は確保しつつ、実際に抗菌剤溶液中に含まれる塩化物イオン濃度を少なくすることが可能となる。このため、使用時に抗菌剤溶液を希釈することなく簡便に抗菌処理を行うことができる。
上記の塩化物が溶解する溶媒と相溶性を有する化合物は、アルコールであることが好ましい。これにより、アルコールが上記水等を捕捉すると共に即効性を満足するため、抗菌剤に対して上記塩化物イオン濃度の低下と即効性の付与とを同時に行うことができる。
上記の塩化物が溶解する溶媒と相溶性を有する化合物は、界面活性剤であってもよい。これにより、界面活性剤が上記水等を捕捉すると共に洗浄能力を満足するため、抗菌剤に対して上記塩化物イオン濃度の低下と洗浄能力の付与とを同時に行うことができる。
本発明に係る第2の抗菌処理方法は、上記第2の目的を達成するために、上記第2の抗菌剤で被処理物を処理することを特徴としている。
上記の構成によれば、使用に際して、保存状態での塩化物イオンの濃度を変化させる必要がないので、簡便に抗菌処理を行うことができる。
本発明の第3の目的は、抗菌処理後に被処理物表面に白色結晶等の結晶を生じて美観や触感を損なうことがなく、かつ、被処理物が液体である場合や、例えば、微細な空隙等の複雑な表面構造を有する場合にも有効に抗菌性を発揮できる抗菌剤を提供することにある。
本発明に係る第3の抗菌剤は、上記第3の目的を達成するために、少なくとも室温において結晶核の存在下に過飽和水溶液として24時間以上存在できる性質、および、水に溶解させると分解する性質の少なくとも一方を有する塩化物と、銀クロロ錯塩とを含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、塩化物が上記性質を有することにより、抗菌剤が乾燥して塩化物が濃縮された状態においても、析出した該塩化物が結晶化せず、例えば、過飽和状態で透明な不定形の残存物として安定に存在する。このため、抗菌処理後に、被処理物表面に塩化物の白色結晶等が生じて美観や触感を損なうことがない。
上記塩化物は、ポリ塩化アルミニウムであることが好ましい。ポリ塩化アルミニウムは、水溶液中ではコロイド状の水酸化物を生成する性質を有する。該コロイド状の水酸化物は、塩化銀を吸着して水溶液中に拡散するため、抗菌性を発揮する塩化銀の微粒子を水溶液中で局在化させることができる。その結果、上記塩化物としてポリ塩化アルミニウムを用いることにより、被処理物が、例えば、汚水、廃水等の液体である場合には、塩化アンモニウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を含む従来の抗菌剤と比較して高い抗菌性を発揮する抗菌剤を提供することができる。
上記塩化物は、有機化合物であってもよい。これにより、塩化アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩化物を含む従来の抗菌剤と比較して、抗菌剤溶液の表面張力を小さくできるため、抗菌剤溶液の被処理物に対する浸透力を高めることができる。その結果、例えば、微細な空隙等の複雑な表面構造を有する被処理物に対しても、有効に抗菌性を発揮できる抗菌剤を提供することができる。
上記有機化合物としては、陽イオン界面活性剤が好ましく、塩化ベンザルコニウムが特に好ましい。これにより、抗菌剤溶液の表面張力をより小さくできるため、抗菌剤溶液の被処理物に対する浸透力をさらに高めることができる。その結果、例えば、微細な空隙等の複雑な表面構造を有する被処理物に対し、さらに有効な抗菌性を発揮できる抗菌剤を提供することができる。また、塩化ベンザルコニウムは、即効性に優れた抗菌性、すなわち、優れた殺菌力を有するため、即効性のある抗菌剤を提供することができる。
本発明の第4の目的は、例えば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤およびその製造方法を提供することにある。
本願発明者等は、液体という形態をとらずとも、安定した抗菌性を発揮できる固体状の抗菌剤およびその製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係る第4の抗菌剤は、上記第4の目的を達成するために、銀クロロ錯塩と、塩化物イオンを供給する塩化物とを含み、固体状であることを特徴としている。
上記の構成によれば、抗菌剤が固体状であるため、例えば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤を提供することができる。また、持続性のある抗菌性を有する銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための上記塩化物とにより、安定した抗菌性を有する抗菌剤を提供することができる。
本発明に係る第4の抗菌剤の製造方法は、上記第4の目的を達成するために、銀および/または銀化合物と、塩化物イオンを供給する塩化物と、水とを混合して混合物を調製する工程と、該混合物から水を除去する工程とを含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、混合物が上記塩化物を含んでいるので、該混合物から水を除去しても、銀クロロ錯塩が安定な状態で存在する。これにより、安定した抗菌性を有し、固体状の抗菌剤を製造することができる。従って、例えば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤の製造方法を提供することができる。また、混合物中に生成した銀クロロ錯塩が、持続性のある抗菌性を発揮すると共に、上記塩化物が銀クロロ錯塩を安定化させるため、安定した抗菌性を有する抗菌剤の製造方法を提供することができる。
本発明の第5の目的は、被洗浄物を変色させることなく、持続性を有する抗菌処理を簡便に行うことができる洗剤、洗濯助剤を提供すること、および、被処理物を変色させることなく、持続性を有する抗菌処理が簡便に行える抗菌処理方法を提供することにある。
本願発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を続けた。その結果、例えば繊維製品等の洗浄時に、銀クロロ錯塩を洗浄液(溶液)中に添加することにより、上記諸問題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明に係る洗剤は、上記第5の目的を達成するために、銀クロロ錯塩を含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、銀クロロ錯塩が有する抗菌能力によって、被洗浄物(被処理物)を変色させることなく、被洗浄物の抗菌処理が行える。また、洗浄液中で希釈された銀クロロ錯塩が、塩化銀の微粒子を形成して被洗浄物表面に吸着するため、持続性のある抗菌性を洗濯時に簡便に付与できる。
また、上記の構成によれば、銀クロロ錯塩が、酸や、熱に対し安定であり、例えば陰イオン性界面活性剤等の洗剤中に含まれる成分と反応せず、安定に抗菌能力を維持することができるため、洗浄と抗菌処理とを同時に行うことができる。さらには、銀クロロ錯塩の抗菌能力によって、洗剤自体の防腐を行うことができる。
なお、上記洗剤は、界面活性剤を含むことにより洗浄作用を有するものであることが好ましい。
本発明に係る洗濯助剤は、上記第5の目的を達成するために、銀クロロ錯塩を含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、例えば柔軟剤が銀クロロ錯塩を含む場合には、柔軟性を付与すると同時に、銀クロロ錯塩が有する抗菌能力によって、被洗浄物(被処理物)を変色させることなく、被洗浄物の抗菌処理が行える。また、洗浄液中で希釈された銀クロロ錯塩が、塩化銀の微粒子を形成して被洗浄物表面に吸着するため、柔軟性等を付与する際に、持続性のある抗菌性を簡便に付与できる。また、上記の構成によれば、銀クロロ錯塩が、酸や、熱に対し安定であり、例えば陰イオン性界面活性剤等の洗濯助剤中に含まれる成分と反応せず、安定に抗菌能力を維持することができるため、柔軟性等の付与と抗菌処理とを同時に行うことができる。さらには、銀クロロ錯塩の抗菌能力によって、洗濯助剤自体の防腐を行うことができる。
上記洗濯助剤は、漂白剤をさらに含むことが好ましい。銀クロロ錯塩は、洗濯助剤に含まれる漂白剤の酸化力によって、抗菌能力が失われることがない。従って、上記の構成によれば、漂白剤と抗菌剤とが併用された洗濯助剤を提供することができる。なお、漂白剤は、次亜塩素酸塩および/または亜塩素酸塩であることが好ましい。
本発明に係る第3の抗菌処理方法は、上記第5の目的を達成するために、銀クロロ錯塩を含む溶液中で被処理物を処理することを特徴としている。
上記の構成によれば、銀クロロ錯塩の抗菌能力によって、被処理物を変色させることなく、簡便に抗菌処理を行うことができる。また、処理液中で希釈された銀クロロ錯塩が、塩化銀の微粒子を形成して被処理物表面に吸着するため、被処理物の抗菌効果を簡便に持続させることができる。
上記溶液としては、界面活性剤を含む洗浄液が好適に用いられる。このような洗浄液を用いることにより、被処理物を抗菌処理すると共に洗浄することができる。
また、上記第3の抗菌処理方法は、被処理物が繊維製品である場合に、繊維製品の変色を防止できるという効果を顕著に発揮する。
本発明の第6の目的は、その上に人を寝かせたまま取り除くことが可能な使い捨てシーツ、および、寝たきり患者のベッドに用いた場合に1人の介護者で使い捨てシーツを取り替えることが可能な使い捨てシーツセットを提供することにある。
本発明に係る使い捨てシーツは、上記第6の目的を達成するために、長方形のシーツに対し、該シーツを2つに切り離し可能とする切り込みがシーツの長手方向に沿って設けられ、上記切り込みを封止するためのテープが、上記切り込みを覆うように粘着剤によって上記シーツ上に貼着されていることを特徴としている。
上記構成によれば、その上に人を寝かせたまま移動させるだけでシーツを取り除くことができる。すなわち、例えば、まず、使い捨てシーツ上に寝ている人をシーツの右側に移動させ、テープを剥がした後、シーツの左側を手で引っ張れば、シーツが切り込みで切り離されて、シーツの左側を取り除くことができる。次に、使い捨てシーツ上に寝ている人をシーツの左側を取り除いたところに移動させ、シーツの右側を手で引けば、シーツの右側を取り除くことができる。
それゆえ、上記構成では、予め使い捨てシーツの下に別のシーツを敷いておけば、その上に人を寝かせたままで交換が可能となるので、寝たきり患者(以下、単に患者と称する)のベッドに用いると、患者をベッドから移動させる必要がなくなり、一人の介護者でシーツを交換することが可能となる。
また、上記構成によれば、切り込みがテープで封止されているので、使用時に、シーツ上に寝ている人(例えば、患者)の尿や汗等が切り込みを通って下に敷いたシーツ、例えば、他の使い捨てシーツに滲みることを防止できる。
なお、本明細書において、「シーツを2つに切り離し可能とする切り込み」とは、人の手で引っ張ることによりシーツがその切り込みに沿って2つに切り離されるような切り込みを指すものとする。また、「切り込み」とは、スリット、すなわち細長い形状の隙間のみを指すものではなく、ミシン目、すなわち点線状に連らねられた孔をも含むものとする。
本発明に係る使い捨てシーツは、上記第6の目的を達成するために、2枚の長方形のシーツ部材が、その長辺が互いに接し合うように並べられ、テープが、各シーツ部材における接し合う部分を覆うように粘着剤によって各シーツ部材上に貼着されていることを特徴としている。
上記構成によれば、その上に人を寝かせたまま移動させるだけでシーツ部材を取り除くことができる。すなわち、例えば、まず、2枚のシーツ部材に跨がって寝ている人を右側のシーツ部材上に移動させ、テープを剥がせば、左側のシーツ部材を手で引いて取り除くことができる。次に、使い捨てシーツ上に寝ている人を左側のシーツ部材を取り除いたところに移動させれば、右側のシーツ部材を手で引いて取り除くことができる。
それゆえ、上記構成では、予め使い捨てシーツの下に別のシーツを敷いておけば、人を寝かせたままで交換が可能となるので、寝たきり患者のベッドに用いると、患者をベッドから移動させる必要がなくなり、一人の介護者でシーツを交換することが可能となる。
また、上記構成によれば、各シーツ部材の接し合う部分がテープで覆われているので、使用時に、シーツ上に寝ている人(例えば、患者)の尿や汗等がシーツ部材とシーツ部材との間隙を通って下に敷いたシーツ、例えば、他の使い捨てシーツに滲みることが防止できる。
上記各構成の使い捨てシーツは、抗菌・防臭剤と高分子吸水剤とをさらに含むことが好ましい。これにより、抗菌・防臭剤によって抗菌および防臭を行うことができる。また、高分子吸水剤によって尿や汗等をより確実に確実に吸収することができ、尿や汗等が使い捨てシーツを透過して下へ滲みだすことをより確実に防止できる。これらによって、清潔な環境を維持することが可能となる。
なお、「抗菌・防臭剤」とは、抗菌機能と防臭機能とを兼ね備える添加剤を指すものとする。
上記各構成の使い捨てシーツは、固体状の銀クロロ錯塩を含むことが好ましい。これにより、使い捨てシーツに対して、優れた持続性(残効性)を有する抗菌および防臭機能を付与することができる。
本発明に係る使い捨てシーツセットは、上記第6の目的を達成するために、前記各構成の使い捨てシーツのいずれかが複数枚重ねられてなることを特徴としている。
上記構成によれば、寝たきり患者のベッドに一度敷けば、その上に患者を寝かせたまま移動させるだけで使い捨てシーツの交換が可能となる。それゆえ、患者をベッドから移動させる必要がなくなり、1人の介護者で使い捨てシーツを取り替えることが可能となる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
発明を実施するための最良の形態
まず、本発明に係る第1の抗菌剤、第1の抗菌剤の製造方法、および第1の抗菌処理方法について詳細に説明する。
本発明に係る第1の抗菌剤は、銀クロロ錯塩と酸化剤とを含むものである。
なお、本発明において、「銀クロロ錯塩」とは、構造式、
で表される錯イオン構造を備えた塩を指すものとする。
上記抗菌剤は、銀クロロ錯塩と酸化剤とを含む水溶液(以下、区別する必要がある場合には、抗菌剤水溶液と称する)であってもよく、固体のクロロ錯塩と固体の酸化剤とを含む混合物であってもよい。なお、以下の説明では、主として水溶液の抗菌剤を対象として説明を行うが、固体のクロロ錯塩と固体の酸化剤との混合物についても同様の効果が期待できる。
上記抗菌剤では、銀イオンを、酸化剤と共存させるためにクロロ錯塩(銀クロロ錯塩)の形態にして安定化させている。すなわち、上記抗菌剤では、銀イオンをクロロ錯塩の形態にして安定化させたことにより、銀イオンが沈澱することなく水溶液中に酸化剤と共存することが可能となる。
銀クロロ錯塩は、高濃度の塩化物イオンを共存させることによって安定化する。それゆえ、抗菌剤は、銀クロロ錯塩および酸化剤に加えて、塩化物イオンを供給する塩化物を含むことが好ましい。したがって、抗菌剤水溶液は、塩化物水溶液中に、銀イオンをクロロ錯塩として含み、かつ、酸化剤を含有することが好ましい。
塩化物イオンを供給する塩化物としては、特に限定されることはなく、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンを対イオンとして含む塩化物(アルカリ金属の塩化物);マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオンを対イオンとして含む塩化物;炭素数12〜18の長鎖アルキル基を1つまたは2つ有する脂肪族4級アンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド等の脂肪族4級アンモニウム塩類;エチレンジアミン塩酸塩、ヘキサメチレンジアミン塩酸塩、ヘキサメチレントリアミン塩酸塩等のポリアミン塩酸塩類;メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩等の1級アミン塩酸塩類;ジメチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩等の2級アミン塩酸塩類;トリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩等の3級アミン塩酸塩類;ピリジン塩酸塩、アニリン塩酸塩等の芳香族アミン塩酸塩類;トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ピリジニウム、塩化イミダゾリニウム等の芳香族4級アンモニウム塩類;等が挙げられる。
塩化物イオンを供給する塩化物としては、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムのようなアルカリ性の酸化剤を共存させる場合には、アルカリ性水溶液中でも水酸化物を生成して沈澱を生じることがない塩化物、具体的には、塩化ナトリウムや塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物等が、特に望ましい。
銀クロロ錯塩は、チオシアン酸錯塩やチオ硫酸錯塩、アミノ酸銀とは異なり、次亜塩素酸ナトリウムのようなアルカリ性の酸化剤によって酸化分解されて水酸化銀の沈澱を生じることはない。しかも、塩化物イオンを供給する塩化物を含む場合には、銀クロロ錯塩が、塩化物イオンによって安定化されるため、塩素系酸化剤の使用時においても、混在する塩化物イオンにより塩化銀を生成して沈澱を生じることがない。
また、一般に、銀イオンは、硫黄または硫化物の存在下では硫化銀に変化して、抗菌活性を失うことが知られている。しかし、本発明に係る第1の抗菌剤では、銀イオンに酸化剤を共存させることにより、硫黄または硫化物の存在下であっても、硫黄または硫化物を酸化することができるため、硫化銀の生成を防ぐことができる。従って、本発明に係る第1の抗菌剤は、従来の銀糸抗菌剤を適用することができなかった硫黄または硫化物の存在している場所での抗菌処理にも用いることができる。
本発明に係る第1の抗菌剤に使用する酸化剤としては、特に限定されるものではないが、価格が安価であるということ、無色であるということ、水溶液状態で数カ月程度は十分安定であること、特に即効性が優れているという点で、亜塩素酸塩および/または次亜塩素酸塩が適している。次亜塩素酸塩は、より優れた即効性が期待される。一方、亜塩素酸塩は、pHが中性付近のため、混合可能な金属イオンの種類をより広く選択することが可能であるという特徴、および、次亜鉛素酸塩よりも分解に対して安定であるという特徴を有している。また、亜塩素酸塩としては亜塩素酸ナトリウムが特に好ましく、次亜塩素酸塩としては次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。
なお、酸化剤の多くは自己分解して含有量が低下する性質を有するが、銀クロロ錯塩は酸化剤の分解を促進することがないので、銀クロロ錯塩を共存させることで酸化剤の安定性が損なわれることはない。
上記した本発明に係る第1の抗菌剤の抗菌作用は、塩化物水溶液中に0.05mg/l以上の銀イオンを含むことで十分に発揮される。したがって、上記水溶液中における銀クロロ錯塩の濃度は、銀イオン濃度換算で0.05mg/以上であることが好ましい。
しかし、酸化剤の共存下であっても、硫化物形態の硫黄を含む有機物が存在する場合には、若干の銀が硫化銀となって消費されるため、2.5mg/l以上の銀イオンをクロロ錯塩として含むことがより望ましい。すなわち、2.5mg/l未満の銀イオン濃度の場合には、抗菌作用がやや乏しいので、硫化物形態の硫黄を含まない被処理物(処理対象物)の抗菌に使用することが望ましい。したがって、上記水溶液中における銀クロロ錯塩の濃度は、銀イオン濃度換算で2.5mg/以上であることがより好ましい。
また、上記水溶液中における塩化物イオンの濃度は、必要とする銀イオン濃度に応じて適宜定めることができる。例えば、塩化物イオンの濃度が0.003モル/l以上であれば、銀をクロロ錯イオンとして溶解させることができるが、銀イオン濃度を硫化物存在下でも有効な2.5mg/l以上にするためには、塩化物イオンの濃度を0.02モル/l以上とすることが好ましい。また、上記水溶液中における酸化剤の濃度は、任意の濃度に定めることが可能であるが、被処理物が硫黄や硫化物などを多く含む場合には必要に応じて高濃度にするなど、適宜勘案して使用することが望ましい。
以上のように、本発明に係る第1の抗菌剤の好ましい形態は、酸化剤と、銀イオンのクロロ錯塩と、クロロ錯塩を安定化するための塩化物とを主成分として含むものであるが、その他の添加物として、界面活性剤、芳香剤、色素等をさらに含むこともできる。
本発明に係る第1の抗菌剤の製造方法は、塩化物水溶液と、銀および/または銀化合物と、酸化剤とを混合する方法である。ここで、銀とは、銀メタル(銀単体)を指すものとする。
特に好適な第1の抗菌剤の製造方法は、所定濃度の塩化物水溶液と銀および/または銀化合物とを混合し、該塩化物水溶液中に所定濃度(好ましくは0.05mg/以上)の銀イオンをクロロ錯塩として溶解させ、さらに、この銀イオンをクロロ錯塩として含む塩化物水溶液に、酸化剤を所定濃度で溶解させる方法である。これにより、本発明に係る抗菌剤水溶液、すなわち、塩化物水溶液中に所定濃度の銀イオンをクロロ錯塩として含み、かつ酸化剤を含む抗菌剤を得ることができる。
また、本発明に係る第1の抗菌処理方法では、銀クロロ錯塩を含む水溶液、好ましくは銀クロロ錯塩を含む塩化物水溶液を酸化剤の存在下で使用して被処理物を処理する。酸化剤は、銀クロロ錯塩を含む水溶液に予め混合しておいてもよく、被処理物を処理する際に銀クロロ錯塩を含む水溶液とともに使用してもよい。すなわち、本発明に係る抗菌剤水溶液である銀クロロ錯塩と酸化剤とを含む水溶液を使用して被処理物を処理してもよく、銀クロロ錯塩を含む水溶液と酸化剤とを使用して被処理物を処理してもよい。さらに、固体のクロロ錯塩と固体の酸化剤と(好ましくはさらに固体の塩化物と)を含む混合物である固体状抗菌剤を水に溶解させて水溶液とし、該水溶液を使用して被処理物を処理してもよい。
本発明に係る抗菌剤水溶液を用いる場合、原液(抗菌剤水溶液自体)で被処理物を処理することもできるが、原液で被処理物を処理した後に水で洗浄する方法を採用してもよく、また、原液を水で希釈した後に被処理物を処理する方法を採用してもよい。
原液で被処理物を処理した場合には、酸化剤が即効性の抗菌作用を、銀クロロ錯塩が残効性の抗菌作用を示す。原液で被処理物を処理した後に水で洗浄する方法では、洗浄時に塩化物イオン濃度が低下し、銀クロロ錯塩が難溶性の塩化銀に変化して被処理物の表面に固定化される。この方法で生成した塩化銀は、非常に微細な微粒子であり、分散しており、かつ、広い表面積を持っている。このために、この方法で生成した塩化銀は、強い抗菌活性を長期間示し、塩化銀が生成した場合に通常見られる黒化も生じない。したがって、この方法では、酸化剤による即効性の抗菌作用と、微小な塩化銀による残効性の抗菌作用とが発現する。さらに、原液を水で希釈した後に被処理物を処理する方法では、希釈時に銀イオンのクロロ錯塩が塩化銀に変化する。これにより、原液による処理の後に水洗した場合と同様に、酸化剤による即効性の抗菌作用と、微小な塩化銀による残効性の抗菌作用とが発現する。なお、原液を水で希釈した後に被処理物を処理する方法では、水で希釈した後の銀イオン濃度が前記の条件を満たすようにすることが望ましい。
次に、本発明に係る第1の抗菌剤および第1の抗菌剤の製造方法並びに第1の抗菌処理方法について、実施例に基づいて説明する。
〔実施例1〕
本実施例では、抗菌剤溶液の安定性を調べた。
まず、塩化ナトリウムを35重量%、銀クロロ錯塩を銀イオン濃度として500ppm含む水溶液(溶液A)と、137g/lの有効塩素を含む次亜塩素酸ナトリウムの水溶液(溶液B)とを、容量比1:1で混合して、本発明に係る第1の抗菌剤としての抗菌剤溶液(溶液C)を得た。抗菌剤溶液における銀クロロ錯塩の濃度は、銀イオン濃度換算で約3×102mg/lである。
これらの各溶液A、B、およびCを30℃の条件で50日間保管し、有効塩素量の変化および溶液状態の変化を測定した。試験開始時(混合直後)および30℃で50日間経過後における有効塩素量(g/l)の測定結果および溶液状態の観察結果、並びに、30℃で50日間経過後における有効塩素の残存率(試験開始時の塩素量を100%として表した有効塩素量)を、表1に示す。その結果、銀クロロ錯塩の存在下でも有効塩素の減少が促進されることはなく、保存性が低下することはないことが明らかとなった。また、銀クロロ錯塩が、次亜塩素酸ナトリウムと混合することにより不安定化して沈澱を生じることがないことも明らかになった。
〔実施例2〕
本実施例では、黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果を調べた。
まず、上記実施例1の抗菌剤溶液(溶液C)を用いて、黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果を評価した。また、対照として、次亜塩素酸ナトリウム溶液(溶液B)を用いて、同様の評価を行った。評価方法は以下の通りである。
リノリウムからなる床材を多数の10cm×10cm片に切断し、中性洗剤を含む水の中で1時間の煮沸を4回繰り返し、可塑剤等を除去した。これらの床材に、200倍に希釈した溶液Bと、100倍に希釈した溶液Cとを、それぞれ霧吹きで約1ml/枚の割合で噴霧した。噴霧は、所定の間隔で繰り返し行った。噴霧の間隔は、毎日、1日おき、2日おき、6日に一度の4通りとした。また、各床材には、濃度102CFU(Colony Formation Unit)/mlの黄色ブドウ球菌の菌液を約1ml/枚ずつ毎日噴霧して接種した。溶液Cで処理する床材については、溶液処理後、床材表面が乾燥した後に接種を行った。試験開始7日目にYP培地を床材上に噴霧し、30℃、100%R.H.(相対湿度)のもとで、2日間培養した。
得られた結果を次の表2に示す。
上記表中における処理溶液の欄の「なし」は、処理を行わなかったことを示す。上記表中の「○」は処理溶液の噴霧を実施した日を示し、表中の試験(処理)開始時からの経過日数の欄の「−」は、処理溶液の噴霧を実施しなかった日を示す。また、上記表中における菌の増殖の欄において、「++」は数百(102〜103)コロニー/枚であることを示し、「+」は数十(10〜102)コロニー/枚であることを示し、、「−」はコロニーがないことを示す。
表2から分かるように、次亜塩素酸ナトリウムのみを含む溶液Bでは、黄色ブドウ球菌に対する残効性が認められなかったが、同量の有効塩素を含むように希釈した溶液Cでは、2日間の残効性が認められた。
〔実施例3〕
本実施例では、本発明に係る第1の抗菌剤と、酸化剤を含まない比較用の抗菌剤との間で、菌の成育速度の比較を行った。
まず、塩化カルシウム35gと塩化銀0.05gとを水100mlに溶解して、比較用の抗菌剤としての銀クロロ錯塩溶液(溶液a)を調整した。さらに、この溶液aの7容量部に対して、3容量部の4.3重量%亜塩素酸ナトリウム溶液を添加して、本発明に係る第1の抗菌剤としての抗菌剤溶液(溶液b)を調整した。
次に、Trypto−Soya Broth“Nissui”(TSB)培地(日水製薬株式会社製)をpH7.2に調整した後、121℃にて15分間滅菌し、2等分に分割した。この2つのTSB培地各々に、上記溶液aまたは溶液bを0.1重量%(Ag濃度換算で溶液aが0.5mg/lおよび溶液bが0.35mg/l)になるように、それぞれ添加した。
上記の溶液aまたは溶液bを添加した各TSB培地に、前培養した大腸菌の菌液(菌種:Escherichia coli MC1061)を100倍に希釈して20μlずつ接種し、37℃で28時間培養した。その間、分光光度計(株式会社島津製作所製、商品名「Shimadzu SP−20A」)を用いて660nmの光に対する吸光度を60分毎に測定し、図1の生育曲線を得た。なお、「対照」は、菌株未接種の培地を使用し上記と同様に培養処理したものを測定した結果である。
TSB培地は、ペプトンや大豆ペプトンなどの、硫黄を硫化物の形で含む蛋白質が存在する培地であるが、図1から分かるように、対照では6時間で菌の増殖が始まるのに対し、溶液aを添加した場合には8時間後まで、溶液bを添加した場合には19時間後まで、菌の増殖が抑えられた。
〔実施例4〕
本実施例では、上記実施例3の溶液aおよび溶液bを用いて、各種の菌に対する最小生育阻止濃度を調べた。
最初に、実施例3と同じ大腸菌(Escherichia coli MC1061)に対する溶液aおよび溶液b最小生育阻止濃度を調べた。
すなわち、まず、Nutrient Broth(NB)培地(DIFCO社製)をpH7.2に調整後、121℃で15分間加熱滅菌した。これらの培地に溶液aまたは溶液bを加え、各培地中の溶液濃度が下記表1に示す濃度になるようにした。
その後、各培地に、前培養した菌液(菌種:Escherichia coli MC1061)を100倍に希釈して20μlずつ接種し、37℃で24時間培養した。培養後の培地の吸光度を実施例1と同様に測定し、Escherichia coli MC1061(以下、E.coliと略記する)の生育阻止を評価した。すなわち、吸光度が0.05以上の場合を「成育あり」と評価し、吸光度が0.05未満の場合を「成育なし」と評価した。評価結果を次の表3に示す。なお、表3では、「成育あり」を「+」で、「成育なし」を「−」で示している。
表3から分かるように、代表的なグラム陰性菌であるE.coliに対しては、溶液aが濃度0.8容量%(Ag濃度4.0mg/l)以上で抗菌力を示すのに対し、さらに酸化剤の亜塩素酸塩を含む溶液bでは濃度0.5容量%(Ag濃度2.5mg/l)で抗菌力を示した。すなわち、溶液aの最小成育阻止濃度が0.8容量%であるのに対し、溶液bの最小成育阻止濃度は0.5容量%であった。この結果から、銀イオンと共に酸化剤を含む溶液bは、硫黄を含む培地であっても、溶液aよりも低濃度で抗菌作用があることが分かる。
次に、上記のE.coliに代えて、代表的なグラム陽性菌であるブドウ球菌Staphylococcus aureus IFO3183(以下、S.aureusと略記する)を用いて、上記の試験と同様の各種操作を行い、上記の試験と同様に吸光度を測定して表3と同様の評価方法でS.aureusの生育阻止を評価した。得られた結果を次の表4に示す。
表4の結果より、代表的なグラム陽性細菌であるS.aureusに対する抗菌力は、溶液aが濃度1.0容量%(Ag濃度5.0mg/l)以上なのに対して、溶液bでは濃度0.5容量%(Ag濃度2.5mg/l)であった。すなわち、溶液aの最小成育阻止濃度が1.0容量%であるのに対し、溶液bの最小成育阻止濃度は0.5容量%であった。この結果からも、溶液bが低濃度で抗菌力を示すことが分かる。
上記と同様の試験を、他の培地を用いた場合や、その他の細菌、酵母、糸状菌(かび類)を用いた場合について実施して、溶液bの最小生育阻止濃度を測定した。具体的には、デゾキシコレート培地上の前記大腸菌E.coli、MSA培地上のブドウ球菌S.aureus、NB培地上におけるその他の各種細菌、SABOURAUD培地上の酵母、PDA培地上の糸状菌について、溶液bの最小生育阻止濃度(以下、MICと記す)を測定した。なお、培養温度は25℃とし、培養期間については、細菌は1日間、酵母は3日間、糸状菌は7日間とした。 その結果、デゾキシコレート培地を用いた場合の大腸菌E.coli、MSA培地を用いた場合のブドウ球菌S.aureusについては、MICが0.5容量%であり、NB培地を用いた場合と同じ結果であった。その他の細菌では、Pseudomonas fluorescens IAM12022はMICが0.5容量%、Bacillus subtilis 3013はMICが0.3容量%、Streptcoccus lactis 12546はMICが0.4容量%であった。酵母では、Pnichia membranaefaciens IAM4911およびDebaryomyces hasenii IAM12209共に、MICが0.3容量%であった。また、糸状菌(かび類)では、Aspergillus oryzae IFO4296およびPenicillium citrinum IFO共に、MICが0.5容量%であった。
このように、本発明に係る第1の抗菌剤である溶液bは、細菌よりも生育の抑制が困難である酵母や、かび類に対しても、細菌の場合と同程度の濃度(Ag濃度で1.5〜2.5mg/l程度)で、その生育を抑える効果が認められた。
〔実施例5〕
上記実施例3の溶液bを用いて、瞬間消臭試験を実施した。まず、豆腐製造過程で副生する大豆の絞り粕「おから」を2枚のシャーレに100gずつ広げ、そのうちの一枚には約1gの溶液bを裏面に均一に散布し、残りの一枚は無処理(溶液添加無し)とし、20℃で開放状態で放置した。
その結果、無処理のサンプルは3時間で明らかに臭気が感じられ、徐々に褐色に変化したが、溶液bを噴霧したサンプルは4週間を経ても無臭であり、着色も認められなかった。
次に、本発明に係る第2の抗菌剤およびそれを用いた第2の抗菌処理方法について説明する。
まず、本願の第1発明者等は、本願発明に先立って、銀クロロ錯塩を含む抗菌剤に関する出願(特開平10−182326号公報として1998年5月7日に公開)を行っている。
銀クロロ錯塩は、銀のチオシアン酸錯塩やチオ硫酸錯塩等とは異なり、硫化物イオン(S2−)を含まない。このため、熱や酸により分解して有毒ガスを発生したり、硫化銀の形成により黒化することがなく、安定である。
また、銀クロロ錯塩は、塩化物イオン濃度が高い状態では安定性が高いため、塩化銀の沈殿を生じることなく、水溶性または水易溶件の状態で安定に存在する。
一方、銀クロロ錯塩は、水等で希釈されて周囲の塩化物イオン濃度が低くなると、塩化銀または銀メタル(銀単体)を析出し易いという性質を有している。これは、塩化物イオン濃度が低い状態では、銀クロロ錯塩の安定化に直接寄与する塩化物イオンの量が少なくなるためである。
銀クロロ錯塩は、このような塩化物イオン濃度が低い状態で塩化銀または銀メタルを析出させて塩化銀または銀メタルを被処理物表面に付着させることにより、抗菌性を発揮する。上記出願の抗菌剤は、銀クロロ錯塩の上記性質を利用して各種工業製品、家庭用品等の被処理物表面を抗菌化するものである。
ところが、上記出願の銀クロロ錯塩を主成分とする抗菌剤では、上記銀クロロ錯塩の性質により、保存中は、塩化物イオン濃度を高濃度に維持する必要があるため、使用に際して抗菌剤を水等で所定の濃度に希釈しなければならない。しかし、抗菌剤の用途によっては、水等で希釈することなく用いた方が簡便な場合がある。そのような場合でも、使用に際して予め所定の濃度に希釈するという工程を入れなければならず、抗菌処理作業が煩雑になる。
例えば、上記の抗菌剤をスプレー容器等に保存し、使用に際してこれをノズル等から噴霧して抗菌処理を行うという形態で使用する場合には、容器内の抗菌剤を逐一希釈して使用したのでは、抗菌処理作業が極めて煩雑となり簡便化を図ることができない。
一方、銀クロロ錯塩を主成分とする抗菌剤を保存するに際しては、上述の如く、塩化物イオン濃度を高く保つことにより保存安定性を維持する必要がある。従って、上記使用形態のように抗菌剤を希釈せずに使用したい場合には、塩化物イオン濃度が高い状態で使用しなければならない。このため、このような場合には、被処理物表面に錆が発生したり、塩類が析出する可能性がある。
また、銀クロロ錯塩は、所定の低濃度で優れた抗菌活性を有するが、即効性を有しないため、即効性が要求される分野では、銀クロロ錯塩単独では使用できない。さらに、銀クロロ錯塩自体には、抗菌活性はあるが洗浄能力がないため、抗菌処理と同時に被処理物の洗浄を行うことができない。
本発明に係る第2の抗菌剤は、上記の課題を解決するために、銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための塩化物イオンを解離(電離)により抗菌剤中に供給することができる塩化物と、上記塩化物が溶解する水等の溶媒(以下、「溶媒」と略記する)と相溶性を有する化合物とを各所定濃度で含んでいる。
本発明に係る第2の抗菌剤では、水等の溶媒と相溶性を有する化合物が、抗菌剤中に含まれる水等の溶媒を捕捉することで、水銀クロロ錯塩近傍における、自由水(化学的・物理的に捕捉されていない水)等のような化学的・物理的に捕捉されていない溶媒を減少させることができる。これにより、銀クロロ錯塩の近傍に存在し、銀クロロ錯塩の安定化に寄与する見かけ上の塩化物イオンの濃度を増加させることができる。従って、抗菌剤全体としては、実際上の塩化物イオン濃度を少なくすることができる。
本発明に係る第2の抗菌剤に含まれる銀クロロ錯塩は、前記構造式(1)で表される錯イオン構造を溶液中で提供することができる塩であれば、特に限定されない。
本発明に係る第2の抗菌剤に含まれ、銀クロロ錯塩を安定化させる塩化物イオンを提供する塩化物としては、例えば、第1の抗菌剤に用いる塩化物として例示した各種の塩化物を用いることができる。
前記例示の塩化物のうち、溶媒と相溶性を有する化合物に対する溶解度が大きいものが特に望ましい。上記塩化物のうちでは、4級アンモニウム塩類、ポリアミン塩酸塩類、1〜3級アミン塩酸塩類、芳香族アミン類等の有機化合物が特に好ましい。
また、前記例示の塩化物のうち、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびカルシウムイオンの少なくとも1つを含む塩化物は、溶媒と相溶性を有する化合物のうち、メタノールやエタノール等の極性の大きい化合物には溶解するが、極性の小さい化合物に対しては溶解性を示さない。しかしながら、これらの塩化物は、溶媒に対する溶解度が他の塩化物と比較して大きいため、銀クロロ錯塩の濃度を高く維持することができるので特に好ましい。
本発明に係る第2の抗菌剤に含まれる、溶媒と相溶性を有する化合物とは、例えば、水素結合やイオン結合等を水分子等の溶媒分子との間に形成することによって、水分子等の溶媒分子と親和性の相互作用を有する化合物を指すものとする。
また、本発明に係る第2の抗菌剤には、必要に応じて、塩化物が溶解する溶媒が含まれていてもよい。塩化物が溶解する溶媒としては、水や、水と同様の挙動を示すプロトン性溶媒のほか、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒;炭酸プロピレン;ポリビニルピロリドン;等が挙げられる。上記溶媒のうち、水が特に好ましい。これは、水に対する塩化物の溶解度が他の溶媒に対する塩化物の溶解度と比較して大きいため、抗菌剤中における銀クロロ錯塩濃度を高くすることができるからである。
溶媒と相溶性を有する化合物としては、例えば、有機化合物としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1,1−ジメチル−1−プロパノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン(グリセロール)、ポリエチレングリコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、イソプレングリコール、エチルグリコール(エチレングリコールモノエチルエーテル)、エチルジグリコール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、エチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)、ブチルグリコール(エチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ネオペンチルグリコール(エチレングリコールモノネオペンチルエーテル)、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1.5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ヘキシレングリコール、ポリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、カテコール、プロピレンクロロヒドリン等のアルコール類;
酢酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレンカーボネート、乳酸メチル、ジ酢酸エチレングリコール等のエステル類;
ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;
アセトニトリル、スクシノニトリル等のニトリル類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イソプロパノールアミン、エタノールアミン、モノ−n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、m−フェニレンジアミン・α体、m−フェニレンジアミン・β体、ヘキシルアミン塩酸塩、ベンジルアミン塩酸塩、ジエチルアミン、ジフェニルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミン等のアミン類およびその塩類;
ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸アンモニウム、ギ酸ルビジウム、ギ酸セシウム、酢酸、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸セシウム、プロピオン酸、イソ酪酸、3−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、シュウ酸、シュウ酸カリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、クエン酸、(±)−リンゴ酸、グリオキシル酸、マロン酸、マレイン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸アンモニウム、フタル酸ナトリウム、メタンスルホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸5ナトリウム塩、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウム、1−ナフタレンスルホン酸アンモニウム塩、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、安息香酸カリウム、デオキシコール酸、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロ酢酸、ニコチン酸ナトリウム等の有機酸またはその塩類;
D−グルコース、スクロース、L−ソルボース、マルトース、メチル−D−グルコシド、D−ソルビトール等の糖類またはその誘導体;
グリオキサール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド類;
o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、フェノール等のフェノール類;
1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、ジメチルカーボネート、ポリエチレンイミン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルヒドラジン、ヘキサン、フェニルヒドラジン、N,N−ジメチルホルムアミド、2,2−ジメトキシプロパン、ポリビニルピロリドン、テトラヒドロフラン、エチレンシアンヒドリン、アセトアニリド、尿素、コデインリン酸塩、ピロガロール、ベタイン、ベタイン臭化水素酸塩、ベタイン硫酸塩、2,4−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−メチルピリジン、1−メチルピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン;等が挙げられる。
また、溶媒と相溶性を有する無機化合物としては、例えば、過塩素酸銀、フッ化銀、硝酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、硝酸バリウム、塩素酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、アミド硫酸カルシウム、Ca[SiF6]、セレン酸カドミウム、Ce(NH4)2(NO3)5、Ce(NH4)2(NO3)6、塩素酸コバルト、過塩素酸コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、チオシアン酸コバルト、[Co(NH3)5(H2O)](ClO4)3、[Co(NH3)5(H2O)](NO3)3、[Co(NH3)4(H2O)2](NO3)3、[Co(NH3)4(H2O)2]2(SO4)3、[Cr(NH3)5(H2O)](ClO4)3、[Cr(N)3(NH3)5](ClO4)2、過塩素酸クロム、硝酸クロム、硫酸クロム、硫酸セシウム、炭酸水素セシウム、Cs2Fe(SO4)2、モリブデン酸セシウム、タングステン酸セシウム、塩素酸銅、過塩素酸銅、硝酸銅、Cu[SiF6]・4H2O、Cu(SO3F2)・4NH3、アミド硫酸銅、過塩素酸第一鉄、過塩素酸第二鉄、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄、FeK2(SO4)2・4H2O、FeK2(SO4)2・2H2O、GaNH4(SO4)2・12H2O、臭素酸カドミウム、InNH4(SO4)2・12H2O、炭酸カリウム、フッ化カリウム、リン酸水素2カリウム、モリブデン酸カリウム、リン酸3カリウム、K2S2O4、K3H(P2O6)・3H2O、KPH2O2、K4P2O8・8H2O、KSnBr3・H2O、K2[Sn(OH)6]・2H2O、K2[Sn(OH)5]、La2Mg3(NO3)12、 、硝酸ランタン、臭素酸ランタン、La(NH4)2(NO3)5、臭素酸リチウム、塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヨウ素酸リチウム、リン酸2水素リチウム、硝酸リチウム、塩素酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、Mg3Nd2(NO3)12、Mg3Pr2(NO3)12、アミド硫酸マグネシウム、硝酸マンガン、Mn3Nd2(NO3)12・24H2O、Mn3Pr2(NO3)12・24H2O、ヒドロキシルアミン塩酸塩、フッ化アンモニウム、リン酸2アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、(NH4)2S2O6、(NH4)2S2O8、(NH4)2S3O6、(NH4)2S4O6、アミド硫酸アンモニウム、ヒドラジン・1/2硫酸塩、(NH4)2[Fe(CN)6]、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、リン酸水素1ナトリウム、硝酸ナトリウム、NaPHO3、アミド硫酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、Na2S3O5・3H2O、亜テルル酸ナトリウム、Na2[TiF5]、硝酸ネオジウム、臭素酸ネオジウム、Nd2Zn3(NO3)12・24H2O、塩素酸ニッケル、過塩素酸ニッケル、硝酸ニッケル、H4P2O6・2H2O、ピロリン酸、Ni3Pr2(NO3)12、硝酸プラセオジム、臭素酸プラセオジム、Pr2Zn3(NO3)12・24H2O、硝酸ルビジウム、フッ化ルビジウム、炭酸水素ルビジウム、Rb「IBr2」、モリブデン酸ルビジウム、タングステン酸ルビジウム、臭素酸サマリウム、硝酸サマリウム、(NH4)2SnBr4・H2O、硝酸ストロンチウム、Te[GeF6]、TiOSO4・2H2O、硝酸イットリウム、硫酸イッテルビウム、塩素酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、硝酸亜鉛、(NH4)2[ZrF6]、(NH4)3ZrF7、硫酸亜鉛等が挙げられる。
溶媒と相溶性を有する化合物は、即効性の抗菌作用を有することから、アルコールであることが好ましい。アルコールのうち、特に、エタノール、メタノール、およびイソプロパノールは、優れた殺菌効果を有する化合物である。従って、これら化合物を溶媒と相溶性を有する化合物として抗菌剤中に含有させることにより、抗菌剤に優れた殺菌効果を付与することができる。
上記溶媒と相溶性を有する化合物は、上記溶媒に溶解することが可能な組み合わせであれば、2種類以上の化合物の混合物であってもよい。この場合、混合物として含まれる上記化合物は、互いに組み合わせることによって、溶媒と相溶性を有する化合物であってもよい。
2種類以上の化合物の好適な組み合わせとしては、酢酸と酢酸エチル、酢酸とヘキサン、メタノールと酢酸エチル、メタノールとフェノール、1−プロパノールとヘキサン、アセトンと酢酸エチル、アセトンとフェノール、エタノールと酢酸エチル、エタノールとジエチルエーテル、エタノールと1,1−ジクロロエタン、エタノールと1,2−ジクロロエタン、エタノールとヘキサン等が挙げられる。
また、本発明に係る第2の抗菌剤に含まれる溶媒と相溶性を有する化合物は、以下に示す界面活性剤であってもよい。これにより、抗菌剤に洗浄能力を同時に付与することができる。
但し、以下に挙げる界面活性剤のうち、陰イオン性界面活性剤は、抗菌剤中に存在する陽イオンがアルカリ土類金属イオン等である場合のように、陰イオン性界面活性剤由来の陰イオンと沈殿物を生成する性質を有さない場合にのみ適用可能である。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型非イオン性界面活性剤;
ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等のエーテルエステル型非イオン性界面活性剤;
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型非イオン性界面活性剤;
脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド等の含窒素型非イオン性界面活性剤;
アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルエーテル硫酸塩、第2高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤;等が挙げられる。
また、上記エーテル型非イオン性界面活性剤のうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレン(3モル)ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン(3モル)オクチルエーテル、ポリオキシエチレン(3モル)デシルエーテル、ポリオキシエチレン(6モル)オクチルエーテル、ポリオキシエチレン(6モル)デシルエーテル、ポリオキシエチレン(6モル)ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9モル)オクチルエーテル、ポリオキシエチレン(9モル)デシルエーテル、ポリオキシエチレン(6モル)ヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン(12モル)ヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン(15モル)ノニルエーテル、ポリオキシエチレン(20モル)ヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン(23モル)ドデシルエーテル等が挙げられる。また、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルとしては、ポリオキシエチレン(9モル)オキシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンp−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニル(9.5モル)エーテル(Triton X−100)、ポリオキシエチレン(20モル)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル等が挙げられる。なお、「ポリオキシエチレン」の後に付記した括弧内のモル数は、エチレンオキサイドの付加モル数、すなわち、エチレンオキサイド鎖の繰り返し回数を示す。
界面活性剤の評価方法としては、例えば、乳化力測定法、剥離力測定法等が挙げられる。乳化力測定法は、任意の種類の油と、界面活性剤を含む水(界面活性剤濃度1〜10%(w/v))とを混合し、エマルジョン相の量(容量あるいは高さ)を測ることで評価する方法である。なお、「%(w/v)」とは、溶液全体の容量から溶液全体の比重を1として求めた溶液全体の重量に対する、溶質の重量の割合を%で表したものである。
また、剥離力測定法は、布を油で濡らして、この布を界面活性剤を含む水に浸漬し、油が布から剥離するまでの時間を測定する方法である。この方法をより簡便に行う場合は、マジックインキ(商標名)でガラス板に線を書いたものを界面活性剤を含む水に浸漬し、マジックインキがガラス板から剥離するまでの時間を測定する。界面活性剤の評価方法としては、上記方法のほか、被洗浄物の汚れを実際に洗浄して評価する方法等がある。
本発明に係る第2の抗菌剤中での塩化物の濃度は、特に限定されないが、抗菌剤中に含まれる銀クロロ錯塩の濃度に応じて適宜所定の濃度で含有させることが望ましい。例えば、塩化物として塩化ナトリウムを使用する場合を例に採ると、下記の表5に示すように、銀クロロ錯塩濃度の量に対し正の相関を示す所定の濃度を採用することが望ましい。具体的には、銀クロロ錯塩の安定化に必要な塩化物の濃度(25℃)は、水または、70%(w/v)エタノール水溶液中では、以下のような相関を示す。
また、上記塩化物の濃度の上限値は、(1)自由水等の量、(2)塩化物を形成する陽イオンの溶媒に対する溶解度によって決定される。例えば、溶媒と相溶性を有する化合物の含有量が少ないほど、塩化物の溶解に寄与する自由水が多くなるため、抗菌剤全体としての塩化物の濃度を上昇させることができる。また、塩化物を形成する陽イオンの種類が、リチウム、マグネシウム、カルシウム、有機塩基類等の親水性の高いものである場合は、溶媒に対する溶解度が高いため、この場合も塩化物の濃度の上限値は上昇する。
本発明に係る第2の抗菌剤に含まれる銀クロロ錯塩の濃度は、抗菌剤中に含まれる陽イオンの種類および溶媒と相溶性を有する化合物の種類によって異なる。より具体的には、(1)自由水等の化学的・物理的に捕捉されていない溶媒の量、(2)自由水等の化学的・物理的に捕捉されていない溶媒に対する銀クロロ錯塩の溶解度、(3)自由水等の化学的・物理的に捕捉されていない溶媒における塩化物イオン濃度によって決定される。
上記(1)に関していえば、自由水等の化学的・物理的に捕捉されていない溶媒の量は、溶媒と相溶性を有する化合物の含有量が少ない場合は、銀クロロ錯塩を溶解するために必要な自由水等の化学的・物理的に捕捉されていない溶媒が多くなるため、これに対応して銀クロロ錯塩の濃度の上限値を高くすることができる。また、(3)に関していえば、自由水等の化学的・物理的に捕捉されていない溶媒にどれだけ塩化物イオンが溶解しているかによって、銀クロロ錯塩が錯解離せずに安定に存在し得るかが決定されるため、該塩化物イオン濃度によって、銀クロロ錯塩濃度の上限値が左右されることになる。
例えば、銀クロロ錯塩濃度の上限値は、銀クロロ錯塩(テトラクロロ銀(I)酸ナトリウム)−塩化ナトリウム−水−エタノールの系においては、水:エタノールを容積比32:68で混合し、塩化ナトリウムを3%(w/v)含有した場合、約46ppmである。
本発明に係る第2の抗菌剤に含まれる、溶媒と相溶性を有する化合物の濃度は、上記塩化物の一部を形成する陽イオンや銀クロロ錯塩が溶解できるだけの自由水等の化学的・物理的に捕捉されていない溶媒がどれだけの量確保されるかにより決定づけられる。従って、溶媒と相溶性を有する化合物の濃度の上限値は、上記塩化物の濃度、銀クロロ錯塩の濃度との相対的な関係によって決まる。なお、溶媒と相溶性を有する化合物が捕捉すべき溶媒に対する該化合物の親和力(該溶媒が水である場合は水和力)が強いほど、自由水等の化学的・物理的に捕捉されていない溶媒の量は減少する。
銀クロロ錯塩、塩化物、および溶媒と相溶性を有する化合物の、抗菌剤中における比率は、以上のように各構成成分の種類によって異なる。
より具体的には、銀クロロ錯塩の濃度は、抗菌活性の観点から、銀イオン濃度で0.01ppm以上であることが好ましく、0.05ppm以上であることがさらに好ましい。
溶媒と相溶性を有する化合物の好ましい濃度は、当該化合物の溶媒に対する溶解度が上限値となる。但し、塩化物イオン濃度をより低く抑えたい場合には、溶媒と相溶性を有する化合物の濃度を上限値に近い濃度にまで高めればよい。具体的な濃度は、上記化合物の種類により異なる。例えば、溶媒と相溶性を有する化合物が、エタノールである場合には、その殺菌力を効果的に発揮させるために、50〜95容量%が好ましく、60〜90容量%がさらに好ましい。
本発明に係る第2の抗菌剤を用いた抗菌処理方法(第2の抗菌処理方法)によって、あらゆる種類の被処理物を抗菌処理することができる。特に本発明に係る第2の抗菌剤は、従来用いられている抗菌剤と比較して塩化物イオンの濃度が低く錆の発生が少ないため、ステンレス鋼(SUS304)製の厨房設備や浴槽等の錆び易い被処理物に対しても好適に用いることができる。また、溶媒と相溶性を有する化合物としてアルコールが含まれている抗菌剤は、親油性を有しているため、樹脂製の器材等を均一に処理することができるという利点がある。その他、本発明に係る第2の抗菌剤は、コンクリート製の壁面、床面、セラミック製品、繊維製品等、様々なものに使用することができる。
本発明に係る第2の抗菌処理方法としては、例えば、被処理物を第2の抗菌剤中に浸漬することにより処理する方法、被処理物に対して第2の抗菌剤を噴霧することにより処理する方法、被処理物に対して直接的に第2の抗菌剤を塗布する方法、第2の抗菌剤をしみ込ませた布等により被処理物を拭く方法等が挙げられる。
以下において、本発明に係る第2の抗菌剤に含まれる銀クロロ錯塩が、被処理物に対して抗菌性を発揮する機構および、本発明に係る第2の抗菌剤に含まれる塩化物並びに溶媒と相溶性を有する化合物が上記銀クロロ錯塩に対して作用する機構について説明する。
銀クロロ錯塩は、中心イオンである銀の存在により、溶液中で銀クロロ錯塩または、塩化銀あるいは、銀メタルの形態で被処理物に対して抗菌性を発揮する。銀クロロ錯塩の中心イオンである銀イオンは、周囲の塩化物イオン濃度が減少するにつれて、塩化銀の沈殿を生じる。この塩化銀の沈殿は、水に難溶性であり、保存中に塩化銀の沈殿が生じることを防ぐ必要がある。しかし、抗菌剤中の塩化物イオン濃度がさらに上昇すると、塩化物イオンが塩化銀を形成することなく平衡状態を保つことができるため、銀クロロ錯塩は、水に可溶な錯塩の状態で安定に存在することができる。
従って、銀クロロ錯塩を可溶化し、塩化銀の沈殿を生じることなく安定化しておくためには、ある一定濃度以上の塩化物を抗菌剤中に含有させた状態で保存する必要がある。しかしながら、上記保存状態の抗菌剤を溶媒で希釈することなく使用したい場合には、塩化物濃度がある濃度以上で存在するために、被処理後に被処理物に錆が発生したり、塩類が析出するという不都合がある。
本発明に係る第2の抗菌剤では、塩化物が溶解する溶媒と相溶性を有する化合物を共存させることにより、抗菌剤保存中の塩化物濃度を従来と比較して少なくすることができる。ここでは、塩化物が溶解する溶媒が水である場合を例に採って説明する。水と相溶性を有する化合物が抗菌剤中に含まれていると、この化合物がその化合物量に対応した量の水を捕捉する。このため、自由水つまり、化学的、物理的に捕捉されていない水の相対量が、水と相溶性を有する化合物を含有しない場合と比較して減少することとなる。
この結果、銀クロロ錯塩の安定化に寄与する見かけ上の塩化物イオンの濃度を増加させることができる。従って、銀クロロ錯塩の安定化に直接必要な塩化物イオン濃度を確保しつつ、実際上は、抗菌剤溶液中に含まれる塩化物イオン濃度を少なくすることが可能となる。このため、使用時に抗菌剤溶液を希釈することなく、簡便に抗菌処理を行うことができる。
次に、本発明に係る第2の抗菌剤およびそれを用いた第2の抗菌処理方法について、実施例に基づいて説明する。
〔実施例6〕
以下において、抗菌剤中に溶媒と相溶性を有する化合物が存在する場合における塩化物濃度と、塩化銀の沈殿生成の有無との関係について述べる。
塩化ナトリウムを35%(w/v)含み、銀クロロ錯塩を銀イオン濃度で500ppm含む水溶液(溶液D)を用意した。溶液Dと、表6に示す成分組成を有する、溶液Dとの混合に用いる溶液(30容量%エタノール水溶液)とを容積比1:99の割合で混合し、銀クロロ錯塩を同表に示す銀濃度で含むと共に、塩化ナトリウムを同表に示す最終濃度で含む抗菌剤溶液を調製した。抗菌剤溶液は、4時間室温において静置した後、塩化銀等の沈殿の有無を観察した。結果を表6に示す。
〔実施例7〜12〕
表6に示す各成分組成を有する、溶液Dとの混合に用いる溶液を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行った。結果を表6に示す。
〔比較例1〜4〕
表6に示す各成分組成を有する、溶液Dとの混合に用いる溶液を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行った。結果を表6に示す。
表6に示されるように、エタノール、グリセリン、アセトンを各所定濃度含む抗菌剤溶液は、これらを含まず、塩化ナトリウムを最終濃度で6.35g/l含む比較例3の抗菌剤と同様に、塩化銀の沈殿が生成しなかった。この結果より、上記各化合物を所定の濃度含むことにより、高濃度の塩化ナトリウムを含まなくても、銀クロロ錯塩の安定化が図れることがわかる。
なお、実施例6の結果のように、エタノールを約30容量%の濃度で含む抗菌剤溶液では、塩化銀の沈殿が僅かに生成した。しかしながら、実施例7に示されるように、この抗菌剤溶液に、従来よりも低濃度(最終濃度3.35g/l)の塩化ナトリウムが含まれていれば、塩化銀の沈殿は全く生成しない。
〔実施例13〕
大腸菌および黄色ブドウ球菌をそれぞれトリプトソーヤ・ブイヨン培地(日水製薬製)で37℃、24時間培養し、それぞれ108CFU/ml程度の濃度の菌液とした。実施例9と同じ組成比の抗菌剤溶液、つまり、70容量%エタノール水溶液であり、銀クロロ錯塩を銀濃度で5ppm、および塩化ナトリウムを0.35g/lの濃度で含む抗菌剤溶液10mlに、各0.1mlの上記各菌液を添加し、10分間処理した。さらに、これら溶液を各0.1ml採取し、トリプトソーヤ・ブイヨン培地を10mlずつ添加した後、37℃、72時間培養した。培養後の培養液の濁度を目視観察して、それぞれの菌の増殖の有無を判断した。結果を表7に示す。なお、表7において、「+」は、菌が増殖したことを表し、「−」は、菌が増殖しなかったことを表す。
〔比較例5〜9〕
抗菌剤溶液として、表7に示す比較用の抗菌剤溶液をそれぞれ用いた以外は、実施例13と同様の操作を行った。結果を表7に示した。
〔実施例14〕
実施例9と同じ組成を有する抗菌剤溶液(エタノールを所定の濃度で含む抗菌剤溶液)を調製した。調製直後において、この抗菌剤溶液を1μl/cm2となるように、φ9cmのシャーレに噴霧、風乾後、室温で7日間放置した。その後、シャーレ上に106CFU/mlの濃度の大腸菌懸濁液0.5mlを滴下した。このシャーレを4.5×4.5cmの滅菌したフィルムで覆い、25℃で、相対湿度を90%以上に保ち、24時間処理した。処理後、上記懸濁液を0.1ml回収し、標準寒天培地(日水製薬株式会社製)上に拡げ、35℃、24時間培養した後、菌数を測定した。結果を表8に示した。
〔実施例15〜16〕
実施例14で用いた抗菌剤溶液をそれぞれ実施例10と同じ組成を有する抗菌剤溶液(グリセリンを所定の濃度で含む抗菌剤溶液)、実施例11と同じ組成を有する抗菌剤溶液(アセトンを所定の濃度で含む抗菌剤溶液)とする以外は、実施例14と同様の操作を行った。結果を表8に示した。
〔比較例10〜14〕
実施例14で用いた抗菌剤溶液をそれぞれ表8に示す比較用の抗菌剤溶液とする以外は、実施例14と同様の操作を行った。結果を表8に示した。
〔実施例17〕
実施例12と同じ組成を有する抗菌剤溶液(ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレエートを所定の濃度で含む抗菌剤溶液)を調製した。調製した直後の上記抗菌剤溶液を1μl/cm2となるようにφ9cmのシャーレに噴霧し、各10mlの水で2回洗浄した後、風乾し、室温で7日間放置した。このシャーレ上に106CFU/mlの大腸菌懸濁液0.5mlを滴下し、4.5cm×4.5cmの滅菌したフィルムでこのシャーレを覆い、25℃で、相対湿度を90%以上に保ち、24時間処理した。処理後、上記懸濁液を0.1ml回収し、標準寒天培地を用いて35℃、24時間培養して菌数を測定した。結果を表9に示した。
〔比較例15〜18〕
実施例17で用いた抗菌剤溶液をそれぞれ表9に示す比較用の抗菌剤溶液とする以外は、実施例17と同様の操作を行った。結果を表9に示した。
〔実施例18〕
市販の食用油(商品名「日清サラダ油」;日清製油株式会社製)10mlと、蒸留水40mlとを100mlのメスシリンダーに入れた。この液体混合物にさらに、実施例12と同じ組成を有する抗菌剤溶液(ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレエートを所定の濃度で含む抗菌剤溶液)を5ml添加した。この後、メスシリンダーの口をパラフィルム(商標名)で密封して上下によく振って攪拌した。25℃で18時間静置し、エマルジョン相の容量を測定した。結果を表10に示した。
〔比較例19〜20〕
実施例18で用いた抗菌剤溶液をそれぞれ水、比較例1と同じ組成を有する比較用の抗菌剤溶液とする以外は、実施例18と同様の操作を行った。結果を表10に示した。
〔比較例21〕
実施例18で用いた抗菌剤溶液を14%(w/v)のポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレエート水溶液とする以外は、実施例18と同様の操作を行った。結果を表10に示した。
〔実施例19〕
市販の食用油(商品名「日清サラダ油」;日清製油株式会社製)1mlをポリスチレン製のφ9cmシャーレに滴下し、ガラス製のコンラージ棒でシャーレ表面に拡げた。次に、実施例12と同じ組成を有する抗菌剤溶液を含ませたスポンジでシャーレ表面を洗浄した後、シャーレを蒸留水ですすいだ。その後、シャーレ表面の油の残存を目視により観察した。結果を表11に示した。
〔比較例22〜23〕
実施例19で用いた抗菌剤溶液の代わりに、水または、調製直後の、比較例1と同じ組成を有する抗菌剤溶液を用いる以外は、実施例19と同様の操作を行った。結果を表11に示した。
〔比較例24〕
実施例19で用いた抗菌剤溶液の代わりに、14%(w/v)のポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレエート水溶液を用いた他は、実施例19と同様の操作を行った。結果を表11に示した。
表11に示されるように、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレエートを含む抗菌剤溶液を用いた場合は、油の残存が観察されず、油の洗浄能力を備えていることがわかる。また、上記実施例19と表9に示す実施例17の結果とから、上記界面活性剤を含む抗菌剤溶液が、持続性のある抗菌性と洗浄能力とをともに備えていることがわかる。
また、以上の結果から総合的に示されるように、エタノールを所定の濃度で含む抗菌剤溶液は、高濃度の塩化ナトリウムを含むことなく、銀クロロ錯塩の安定化が図れると共に、即効性のある抗菌性すなわち殺菌力をも有していることがわかる。また、エタノール、グリセリン、アセトンを各所定の濃度で含む抗菌剤溶液は、高濃度の塩化ナトリウムを含むことなく、銀クロロ錯塩の安定化が図れると共に、持続性のある抗菌性を有していることがわかる。さらに、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレエートを含む抗菌剤溶液は、高濃度の塩化ナトリウムを含むことなく、銀クロロ錯塩の安定化が図れると共に、界面活性と持続性のある抗菌性とを有していることが分かる。
次に、本発明に係る第3の抗菌剤について詳細に説明する。
前述したように、銀クロロ錯塩は、塩化物イオン濃度が低い状態で塩化銀または銀メタルを析出させて塩化銀または銀メタルを被処理物表面に付着させることにより、抗菌性を発揮する。
上記塩化銀が被処理物表面に付着することによる抗菌性は、より具体的には、塩化物イオン濃度が低い状態で、銀クロロ錯塩が、不安定化し、塩化銀の微粒子となって析出することにより発揮される。例えば、繊維製品等の被処理物表面は表面エネルギーが高いため、この析出した塩化銀の微粒子が該表面に多数吸着することとなる。なお、吸着した塩化銀の結晶を核として、該結晶が成長することもあるが、その大きさは1μm程度である。
そのため、被処理物を抗菌処理する際に、上記塩化銀の微粒子が生じるような塩化物イオン濃度に設定することにより、被処理物表面に塩化銀の微粒子を固定あるいは定着させ、これにより被処理物の抗菌処理を行うことができる。
前記の先行出願(特開平10−182326号公報)の抗菌剤は、銀クロロ錯塩の上記性質を利用して各種工業製品、家庭用品等の被処理物表面を抗菌化するものである。
ところが、上記先行出願の抗菌剤は、塩化物イオンを提供するために含まれている塩化物が、塩化アンモニウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物に限定されている。これらの塩化物は、いずれも、溶媒が蒸発することにより溶液中に溶解し切れなくなると、例えば、白色結晶等の結晶として析出する性質を有している。このため、上記抗菌剤を、抗菌性が発揮できる濃度で被処理物に対し噴霧、塗布等して抗菌処理する場合に、上記白色結晶等により、被処理物の美観や触感が損なわれる可能性がある。
また、上記先行出願の抗菌剤では、被処理物が、例えば、汚水や廃液等の液体である場合は、上記塩化銀の微粒子の働きによって優れた抗菌性を発揮させることが比較的困難である。これは、被処理物が、汚水や廃液等の液体である場合は、上記繊維製品等の場合と異なり、塩化銀の微粒子が被処理物である液体中に均一に分散してしまい非局在化するので、抗菌処理を行うことが比較的困難なためである。
さらには、上記先行出願の抗菌剤は、界面張力(表面張力)が大きく、被処理物に対する充分な浸透力を有していない。このため、上記抗菌剤は、例えば、被処理物表面に微細な空隙等がある場合、空隙内部に到達することができず、微細な空隙に存在する細菌や、かび等に対する抗菌処理を充分に行えない可能性がある。このように、上記抗菌剤は、例えば微細な空隙等の複雑な表面構造を有する被処理物については、抗菌処理が有効に行えない可能性がある。
本発明に係る第3の抗菌剤は、上記課題を解決するために、銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるために塩化物イオンを供給する塩化物とを含み、該塩化物は、少なくとも室温において、結晶核の存在下に、過飽和水溶液として24時間以上存在できる性質、および、水に溶解させると分解する性質の少なくとも一方を有する塩化物と、銀クロロ錯塩とを含んでなる。
本発明に係る第3の抗菌剤に含まれる銀クロロ錯塩は、前記の構造式(1)で表される錯イオン構造を備えた塩であれば、特に限定されない。
本発明に係る第3の抗菌剤に含まれる塩化物は、少なくとも室温において、結晶核の存在下に、過飽和水溶液として24時間以上存在できる性質(第一の性質)、および、水に溶解させると分解する性質(第二の性質)の少なくとも一方を有する塩化物であり、銀クロロ錯塩を安定化させる役割を担っている。
以下において、本発明の塩化物が有する上記第一の性質および第二の性質と、本発明に係る第3の抗菌剤が被処理物表面に白色結晶等の結晶を析出させず美観や触感を損なわない点との関係について、より詳しく説明する。
一般に、化合物は、その過飽和状態、すなわち、所定温度における該化合物固有の溶解度に相当する量以上の溶質を含む溶液(過飽和溶液)の状態では準安定状態であるため、例えば結晶核の存在等、外部からの刺激により安定性を失い、液相から固相への転移、すなわち、結晶析出の進行が開始される。
しかしながら、上記第一の性質を有することにより、塩化物は、上記転移が速度論的に極めて緩慢に進行する。また、結晶核が存在しない場合であれば、結晶核が存在する場合と比較して、さらに上記転移の進行が緩慢であるため、通常の抗菌処理条件においては、ほぼ半永久的に過飽和水溶液が安定して存在することも可能である。
以上のように、上記第一の性質を有する塩化物には、過飽和か否かの明確な境界が存在しないため、抗菌処理後に上記塩化物が乾燥によって濃縮されても、結晶として析出することがない。従って、上記第一の性質を有する塩化物を含む抗菌剤では、抗菌処理後に抗菌剤が乾燥した場合でも、目視により観察できる程度に結晶が析出することがない。
また、上記第二の性質を有する塩化物は、水に溶解させることにより分解する。ここで、ある化合物が水に溶解させることにより分解するとは、水に溶解させることにより化合物が別の化合物に変化することをいう。より詳しくは、分解とは、水に溶解させる前の化合物と、水に溶解させた後再び水を除去して回収された化合物とが異なるものとなる現象をいう。
このため、上記第二の性質を有する塩化物を含む抗菌剤では、抗菌処理後に抗菌剤が乾燥することにより抗菌剤中に含まれる成分が濃縮された場合であっても、該成分が上記塩化物の分解により生成する化合物は、加水分解生成物、多くは、塩基性塩およびそのポリマーであるため、結晶が析出することがない。
従って、上記両性質の少なくとも一方を有する塩化物を用いることにより、従来の抗菌剤に見られるような、被処理物表面のザラツキや美観を損なう原因となる白色結晶等の結晶析出を防止することができる。
ここで、本発明にかかる塩化物が有する上記両性質は、測定方法によって、所定温度における溶解度が一致せず、その結果、明確な溶解度を決定できないという特異な性質としてとらえることもできる。
より具体的には、上記両性質は、(1)塩化物を溶媒に溶解して測定した溶解度と、溶液を濃縮して上記溶解時における溶媒量として測定した溶解度とが一致しない、また、(2)上記塩化物を高速で溶解して測定した溶解度と、該速度より低速で溶解して測定した溶解度が一致しない、さらには、(3)上記塩化物を所定温度で溶解して測定した溶解度と、上記温度より高温で塩化物を溶解した後に上記温度にまで冷却して測定した溶解度とが一致しないという、(1)〜(3)の条件の少なくとも一つを満たす場合を称している。ここで、「一致するか否か」は、両者の差が10%を超えているか否かで判断される。
上記第一の性質における過飽和溶液が有する過飽和度、すなわち、過飽和の度合いを表す尺度の範囲は、使用する塩化物の種類および量により適宜決定され、特に限定されない。
本発明に係る第3の抗菌剤に含まれる塩化物は、上記第一の性質および第二の性質の少なくとも一方を、少なくとも室温、すなわち、通常、抗菌処理が行われる生活環境における温度、例えば、18℃〜25℃程度の範囲内において有している。
本発明に係る第3の抗菌剤に含まれる塩化物としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム;塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化コリン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、塩化イミダゾリニウム、塩化N−ラウリルピリジウム等の有機化合物;等が挙げられる。
上記例示の塩化物のうち、ポリ塩化アルミニウムは、水溶液中でコロイド状の水酸化物(水酸化アルミニウム)を生成し、該コロイド状の水酸化物が抗菌性を発揮する塩化銀の微粒子を吸着して水溶液中に拡散するため、抗菌性を発揮する塩化銀の微粒子を水溶液中で局在化させることができ、被処理物が、例えば、汚水、廃水等の液体である場合に、特に好ましい。
また、上記例示の塩化物のうち、有機化合物、すなわち、炭素を含む化合物は、抗菌剤を溶液の形態で用いた場合に、該溶液の表面張力を小さくすることができ、被処理物に対する抗菌剤溶液の浸透力を高めることができる。これにより、被処理物が、例えば、微細な空隙等の複雑な表面構造を有する場合に、抗菌剤が空隙内部に到達することができ、微細な空隙に存在する細菌や、かび等に対する抗菌処理を充分に行うことができるため、特に好ましい。
また、上記例示の有機化合物のうち、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化イミダゾリニウム、塩化N−ラウリルピリジウム等のような陽イオン界面活性剤としての機能を有する塩化物、特に塩化ベンザルコニウムは、抗菌剤溶液の表面張力をより小さくできる。このため、上記複雑な表面構造を有する被処理物に用いる場合に、さらに有効な抗菌性を発揮できるため、さらに好ましい。さらには、塩化ベンザルコニウムは、殺菌力をも有しているため、即効性に優れた抗菌性が必要とされる場合に特に好ましい。
本発明に係る第3の抗菌剤を用いて抗菌処理する場合、抗菌処理時における銀クロロ錯塩の濃度は、抗菌剤をそのままの状態、例えば、原液で、または数十倍〜数千倍程度の希釈液で用いた場合に抗菌性が発揮できる範囲内であればよく、特に限定されない。抗菌性が発揮できる範囲内としては、具体的には、抗菌処理時における溶液中の銀濃度として0.01〜5000mg/lの範囲内であることがより好ましく、0.1〜2000mg/lの範囲内であることがさらに好ましく、1〜500mg/lの範囲内であることが最も好ましい。
また、本発明に係る第3の抗菌剤が溶液状である場合、抗菌剤中の塩化物の濃度は、塩化物の種類、溶解度等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、1〜500g/lの範囲内であることがより好ましく、10〜400g/lの範囲内であることがさらに好ましく、100〜300g/lの範囲内であることが最も好ましい。
本発明にかかる銀クロロ錯塩と塩化物との割合は、抗菌剤が抗菌性を発揮できる所定の範囲であれば特に限定されないが、重量比で、1:5×108〜1:2の範囲内であることがより好ましく、1:1000〜1:107の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明に係る第3の抗菌剤は、例えば、水溶液等の溶液の状態であってもよく、また、例えば、粉末状等の固体の状態であってもよい。また、本発明に係る第3の抗菌剤は、上記銀クロロ錯塩および塩化物以外に、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
本発明に係る第3の抗菌剤によって、あらゆる種類の被処理物を抗菌処理することができる。本発明に係る第3の抗菌剤を用いて抗菌処理することができる被処理物としては、樹脂、繊維、紙、木材、セメント、モルタル、漆喰、不織布、フェルト、皮革等を原材料とする各種工業製品、家庭用品の他、コンクリート製の壁面、床面、セラミック製品等が挙げられる。上記被処理物は、それ自体に抗菌性を付与すべきものであればよく、例えば、各粉末状の化粧品やビルダー等、本発明に係る第3の抗菌剤を添加混合することによって、抗菌性が付与されるものも含まれる。
また、本発明に係る第3の抗菌剤に含まれる塩化物が、例えば、塩化ベンザルコニウム等の有機化合物の塩化物である場合、微細な空隙等の複雑な表面構造を有する被処理物に対し、特に有効な抗菌性が発揮される。上記微細な空隙を有する被処理物の例としては、例えば、セメント、モルタル、漆喰等よりなる壁面、床面、天井、タイルの目地;木材等よりなる壁面、床面、天井、家具;不織布、フェルト等によりなるフィルター類;等が挙げられる。
本発明に係る第3の抗菌剤が固形状である場合は、例えば、粉末状洗剤等の粉体に含有させた形態で用いることができる。また、本発明に係る第3の抗菌剤が、固形状である場合は、例えば、樹脂や繊維等に混練することにより抗菌性樹脂や抗菌性繊維を得ることができる。
本発明に係る第3の抗菌剤を用いて被処理物を処理する方法としては、例えば、第3の抗菌剤を微粒子の状態で含む粉末状洗剤、粉末状洗濯助剤等により被処理物を洗浄する方法、第3の抗菌剤の溶液中に被処理物を浸漬することにより処理する方法、第3の抗菌剤の溶液を被処理物に対して噴霧することにより処理する方法、被処理物に第3の抗菌剤を直接塗布する方法、被処理物に第3の抗菌剤の溶液の形態あるいはクリーム状物質等と混合させた形態で塗布する方法、第3の抗菌剤の溶液をしみ込ませた布等により被処理物を拭く方法等が挙げられる。
本発明に係る第3の抗菌剤を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、銀および/または銀化合物と、塩化物と、水等の溶媒とを混合して溶液を調製する工程により、または、抗菌剤が固体の形態をとる場合には、該工程に加えてさらに、溶液から蒸発等により溶媒を除去する工程を経ることにより製造することができる。
上記の銀は、銀メタルをいう。また、銀化合物は、解離により銀イオンを提供できる化合物であれば特に限定されないが、例えば、塩化銀、硫酸銀、硝酸銀等の銀塩が挙げられる。
銀および/または銀化合物と、塩化物と、水等の溶媒とを混合して溶液を調製する工程における設定温度は、特に限定されないが、5〜95℃の範囲内であることがより好ましい。また、蒸発等により溶媒を除去する工程における設定温度は、特に限定されないが、−20〜900℃の範囲内であることがより好ましい。
銀および/または銀化合物と、塩化物と、水等の溶媒とを混合して溶液を調製する工程における、銀および/または銀化合物と、塩化物と、水との混合の順序は特に限定されず、例えば、塩化物を水に溶解させて水溶液とし、これに銀および/または銀化合物を添加混合する方法等を用いることができる。
以上のように、本発明に係る第3の抗菌剤は、銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための塩化物とを含み、該塩化物は、少なくとも室温において、たとえ結晶核が存在する場合であっても、過飽和水溶液として24時間以上存在できる性質、および、水に溶解させると分解する性質の少なくとも一方を有している。
塩化物が上記性質の少なくとも一方を有することにより、抗菌処理後、抗菌剤が乾燥し、抗菌剤に含まれる成分が濃縮された場合であっても、抗菌処理後の被処理物表面にザラツキや美観を損なう原因となる白色結晶等の結晶が析出することがない。また、例えば、被処理物表面に透明な不定形の残存物が残ることがあるが、これは過飽和状態で存在している上記塩化物または、溶解時に分解して溶解前の塩化物とは異なる化合物となったものである。これら残存物は、上記ザラツキや美観を損なう原因とはならず、被処理物の美観や触感を損なうことがない。
また、上記塩化物のうち、例えば、ポリ塩化アルミニウムを含む抗菌剤は、水溶液中ではコロイド状の水酸化物を生成する性質を有し、該コロイド状の水酸化物が、塩化銀の微粒子を吸着して水溶液中に拡散するため、抗菌性を発揮する塩化銀の微粒子を水溶液中で局在化させることができる。その結果、被処理物が、例えば、汚水、廃水等の液体である場合に、従来の抗菌剤と比較して高い抗菌性を発揮することができる。
また、上記塩化物のうち、例えば、塩化ベンザルコニウム等の有機化合物の塩化物を含む抗菌剤は、抗菌剤溶液の表面張力を小さくできるため、被処理物に対する浸透力を高めることができる。これにより、例えば、微細な空隙等の複雑な表面構造を有する被処理物に対し、有効な抗菌性を発揮できる。
次に、本発明に係る第3の抗菌剤を、実施例および比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、これらの実施例および比較例における各種試験方法は、以下の通りである。
<白色結晶の有無の確認方法>
抗菌剤により抗菌処理した後における被処理物表面の白色結晶析出の有無は、以下の方法により確認した。抗菌剤の原液および100倍希釈液を、それぞれ、直径9cmのガラスシャーレに10μl/cm2の割合となるように噴霧し、30℃で1日間乾燥した。乾燥後に、上記ガラスシャーレ表面に白色結晶が析出しているか否かを目視により観察した。
<ジャガイモ搾汁液防臭効果試験>
ジャガイモを搾汁機(ジューサー)で搾汁し、該搾汁液を100mlずつ200mlの三角フラスコに分注した。抗菌剤を、銀濃度としてそれぞれ0.2mg/l、1.0mg/l、5.0mg/lとなるように、上記各搾汁液に添加し、充分に攪拌した後に、20℃で放置した。所定期間経過後における各ジャガイモ搾汁液の臭気を10名の被験者による官能試験により評価し、臭みの程度を示す官能試験評価値の平均値を求めた。官能試験評価値は、「無臭」を5、「僅かに臭い」を4、「少し臭い」を3、「臭い」を2、「非常に臭い」を1とした。
<抗菌性試験>
50mlの滅菌済遠心管に、MRSAが、1/1000希釈トリプトソーヤブイヨン培地(日水製薬株式会社製)中に7.0×105CFU/mlの割合で含まれる懸濁液10mlを入れ、抗菌剤を銀濃度として0.1mg/lとなるように添加した。次に、150rpmで旋回させながら、約25℃で、所定時間インキュベーションした後、上記懸濁液1ml中の細菌数を、以下の細菌数測定方法により測定した。また、比較のため、抗菌剤を無添加とする場合についても、上記同様の操作を行った。
<噴霧による抗菌処理効果試験>
抗菌剤が銀濃度として1.0mg/lとなるように希釈した希釈液を、1μl/cm2となるようにφ9cmのシャーレに噴霧して乾燥させた後、20℃にて3日間保管した。このシャーレ上に1/1000希釈トリプトソーヤブイヨン培地中に5.0×106CFU/mlの割合でMRSAが含まれる懸濁液0.5mlを滴下した。次に、4.5cm×4.5cmの滅菌したフィルムでこのシャーレを覆い、25℃で、相対湿度を100%に保ち、24時間静置した。静置後、1/1000希釈トリプトソーヤブイヨン培地5mlを添加して抗菌処理済懸濁液を回収した。回収した抗菌処理済懸濁液1ml中の細菌数を、以下の細菌数測定方法により測定した。また比較のため、抗菌剤を無添加とする場合についても、上記同様の操作を行った。
<抗菌剤の浸透力確認試験>
抗菌剤を純水で100倍希釈した水溶液100μlを、静かにポリスチレン製シャーレに滴下し、1分後に液滴の直径(mm)を測定した。該直径を浸透力を示す尺度として用いた。また、上記水溶液の20℃での表面張力(dyn/cm)を、自動表面張力計(商品名「自動表面張力計K10ST」、クリュス社製)で測定した。被処理物に対する抗菌剤の浸透力は、上記液滴の直径が大きいほど、また、上記表面張力が小さいほど高いものと判断される。また、比較のため、抗菌剤に代えて水についての液滴の直径および表面張力も測定した。
<細菌数測定方法>
懸濁液、または、懸濁液を1/1000希釈トリプトソーヤブイヨン(日水製薬株式会社製)で希釈した希釈液を用意した。上記懸濁液または希釈液1mlを直径9cmのシャーレに入れた。次に、オートクレーブ滅菌した後40℃まで冷却した標準寒天培地(日水製薬株式会社製)を上記シャーレに20mlずつ加えた。この培地を十分に攪拌した後、放置して固化させた。上記シャーレを36℃、24時間培養した後、コロニー数を計数し、上記懸濁液1ml中の細菌数(CFU/ml)を計算した。
〔実施例20〕
銀クロロ錯塩を銀濃度として0.13g/l、本発明にかかる塩化物としてのポリ塩化アルミニウムをAlCl3に換算して100g/lとなるように水溶液を調製し、該水溶液を本発明に係る第3の抗菌剤として得た。
次に、上記抗菌剤により抗菌処理した後における被処理物表面の白色結晶の有無を上記白色結晶の有無の確認方法により調べた。結果を表12に示す。
次に、上記抗菌剤のジャガイモ搾汁液に対する防臭効果を上記確認方法により確認した。結果を表13に示す。
さらに、上記抗菌剤によるMRSAに対する抗菌性を、上記抗菌性試験により調べた。結果を表14に示す。
〔実施例21〕
銀クロロ錯塩を銀濃度として0.08g/l、ポリ塩化アルミニウムの代わりに塩化ベンザルコニウムを用いる以外は、実施例20と同様の操作を行い、本発明に係る第3の抗菌剤を得た。
次に、上記抗菌剤により抗菌処理した後における被処理物表面の白色結晶の有無を上記白色結晶の有無の確認方法により調べた。結果を表12に示す。
次に、上記抗菌剤によるMRSAに対する抗菌性を、上記抗菌性試験により調べた。結果を表14に示す。
また、上記抗菌剤によるMRSAに対する抗菌性を、上記噴霧による抗菌処理効果試験によっても調べた。結果を表15に示す。
さらに、上記抗菌剤の、被処理物に対する浸透力を、上記抗菌剤の浸透力確認試験により確認した。結果を表16に示す。
〔実施例22〕
銀クロロ錯塩を銀濃度として0.08g/l、本発明にかかる塩化物としてのポリ塩化アルミニウムをAlCl3に換算して133g/lとなるように水溶液を調製し、該水溶液を本発明に係る第3の抗菌剤として得た。
次に、上記抗菌剤により抗菌処理した後における被処理物表面の白色結晶の有無を上記白色結晶の有無の確認方法により調べた。結果を表12に示す。
〔比較例25〕
銀クロロ錯塩を銀濃度として0.50g/l、塩化ナトリウムを330g/lとなるように水溶液を調製する以外は、実施例20と同様の操作を行い、該水溶液を比較用の抗菌剤として得た。
次に、上記抗菌剤により抗菌処理した後における被処理物表面の白色結晶の有無を上記白色結晶の有無の確認方法により調べた。結果を表12に示す。
次に、上記抗菌剤のジャガイモ搾汁液に対する防臭効果を上記確認方法により確認した。結果を表13に示す。
次に、上記抗菌剤によるMRSAに対する抗菌性を、上記抗菌性試験により調べた。結果を表14に示す。
また、上記抗菌剤によるMRSAに対する抗菌性を、上記噴霧による抗菌処理効果試験によっても調べた。結果を表15に示す。
さらに、上記抗菌剤の、被処理物に対する浸透力を、上記抗菌剤の浸透力確認試験により確認した。結果を表16に示す。
〔比較例26〕
銀クロロ錯塩を銀濃度として0.50g/l、塩化アンモニウムを250g/lとなるように水溶液を調製した以外は、実施例20と同様の操作を行い、該水溶液を比較用の抗菌剤として得た。
次に、上記抗菌剤により抗菌処理した後における被処理物表面の白色結晶の有無を上記白色結晶の有無の確認方法により調べた。結果を表12に示す。
次に、上記抗菌剤によるMRSAに対する抗菌性を、上記抗菌性試験により調べた。結果を表14に示す。
また、上記抗菌剤によるMRSAに対する抗菌性を、上記噴霧による抗菌処理効果試験によっても調べた。結果を表15に示す。
〔比較例27〕
銀クロロ錯塩を銀濃度として0.08g/l、塩化ナトリウムを330g/lとなるように水溶液を調製した以外は、実施例20と同様の操作を行い、該水溶液を比較用の抗菌剤として得た。
次に、上記抗菌剤により抗菌処理した後における被処理物表面の白色結晶の有無を上記白色結晶の有無の確認方法により調べた。結果を表12に示す。
〔比較例28〕
銀クロロ錯塩を銀濃度として0.08g/l、塩化アンモニウムを250g/lとなるように水溶液を調製した以外は、実施例20と同様の操作を行い、該水溶液を比較用の抗菌剤として得た。
次に、上記抗菌剤により抗菌処理した後における被処理物表面の白色結晶の有無を上記白色結晶の有無の確認方法により調べた。結果を表12に示す。
表12の結果から明らかなように、塩化物としてポリ塩化アルミニウムまたは塩化ベンザルコニウムを含む本発明に係る第3の抗菌剤を用いて抗菌処理した場合は、白色結晶が認められず、透明な不定形の残存物が認められた。該残存物は、被処理物表面のザラツキや白色結晶等の析出物の原因とはなっておらず、過飽和状態で存在している上記塩化物であると考えられた。従って、本発明の抗菌剤を用いて抗菌処理した場合は、被処理物の美観や触感が損なわれないことがわかる。これに対し、塩化ナトリウムまたは塩化アンモニウムを含む比較例25〜28の抗菌剤を用いた場合には、被処理物表面に白色結晶が析出し、美観や触感が損なわれることがわかる。
表13の結果から、ポリ塩化アルミニウムを含む本発明に係る第3の抗菌剤を用いて抗菌処理したジャガイモ搾汁液は、21日経過後も、1.0mg/l以上の銀濃度で添加することにより、臭みが全く認められないことがわかる。これにより、ポリ塩化アルミニウムを含む本発明に係る第3の抗菌剤は、液体の被処理物に対して、従来の抗菌剤と比較して高い抗菌性を発揮することがわかる。
また、表14および表15の結果から、本発明に係る第3の抗菌剤は、MRSAに対する抗菌処理開始後24時間の抗菌性および噴霧による抗菌処理においては、細菌数が0.0CFU/mlとなり、優れた抗菌性を有していることがわかる。一方、表14の結果から明らかなように、本発明に係る第3の抗菌剤は、いずれも、MRSAに対する抗菌処理開始直後より細菌数の減少が認められる。このことから、本発明に係る第3の抗菌剤は、比較例25および比較例26の抗菌剤と比較して、即効性に優れた抗菌性、すなわち、優れた殺菌力をも有していることがわかる。特に、塩化物として塩化ベンザルコニウムを含む本発明に係る第3の抗菌剤では、上記即効性が特に優れていることがわかる。
表16の結果から、塩化物として塩化ベンザルコニウムを含む本発明に係る第3の抗菌剤では、シャーレ上に滴下した液滴の直径が、比較例25の抗菌剤または水と比較して大きく、表面張力については小さいことがわかる。従って、塩化ベンザルコニウムを含む本発明に係る第3の抗菌剤は、被処理物に対して従来の抗菌剤と比較して高い浸透力を有していることがわかる。
次に、本発明に係る第4の抗菌剤について詳細に説明する。
前記の先行出願(特開平10−182326号公報)の抗菌剤は、銀クロロ錯塩を含むものである。
ところが、上記先行出願の抗菌剤は、まず、塩化アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩化物を塩化物イオンとして含む水溶液を調製した後、該水溶液に塩化銀または銀メタルを添加して銀クロロ錯塩として溶解させることにより製造される。従って、上記抗菌剤は、溶液すなわち液状の形態で製造、保存、使用がなされる。このため、上記抗菌剤は、粉末洗剤等の粉体と混合した固体状で保存・使用等ができない。
また、上記先行出願の抗菌剤は、固体状ではないため、これを微粉砕することにより微粒子化して用いることができない。つまり、樹脂や繊維等からなる各種工業製品、家庭用品等を製造する場合、微粒子化した抗菌剤を予め上記樹脂や繊維中に練り混み(混練)等によって含有させることが困難である。
本来、銀クロロ錯塩を含む抗菌剤は、持続性のある抗菌性を有し、例えば被処理物表面が汚れ等により覆われたり繰り返し洗浄された場合にも、抗菌性が失われないという優れた性質を有している。しかしながら、上記先行出願の抗菌剤は液状の形態であるために、例えば、混練により被処理物に含有させることが困難であり、従って用途が限定されてしまう。
本発明に係る第4の抗菌剤は、上記課題を解決するために、銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための、塩化物イオンを供給する塩化物とを含み、かつ、固体状の形態をとっている。
本発明に係る第4の抗菌剤に含まれる銀クロロ錯塩は、前記の構造式(1)で表される錯イオン構造を備えた塩であれば、特に限定されない。また、対イオン(陽イオン)は、用途に応じて選択すればよく、特に限定されない。
本発明に係る第4の抗菌剤に含まれ、銀クロロ錯塩を安定化させる、塩化物イオンを供給する塩化物としては、例えば、第1の抗菌剤に用いる塩化物として例示した各種の塩化物を用いることができる。
本発明にかかる銀クロロ錯塩と塩化物イオンを供給する塩化物(以下単に、「塩化物」という)との割合は、銀クロロ錯塩が不安定化して塩化銀を生じることがなく、かつ、抗菌剤が抗菌性を発揮できる所定の範囲であれば特に限定されないが、重量比で、1:108より銀クロロ錯塩の占める割合が高くなる範囲が好ましい。上記範囲内より銀クロロ錯塩の占める割合が低くなると、抗菌剤の添加量を多くする必要があり、塩化物その他の成分の濃度を実用性を有する範囲内に希釈する必要がある関係上、結果的に銀クロロ錯塩の濃度が極めて低くなるように希釈しなければならなくなるため好ましくない。より具体的には、重量比で、1:105〜1:10の範囲内であることがより好ましく、1:1000〜1:50の範囲内であることがさらに好ましく、1:200〜3:200の範囲内であることが最も好ましい。なお、上記範囲内より銀クロロ錯塩の占める割合が高くなると、銀クロロ錯塩が不安定化するおそれがある。
本発明に係る第4の抗菌剤を、例えば、粉末状の洗剤等に含有させた形態で用いる場合、抗菌剤の配合比は、洗剤等が有する洗浄力等の力価、被処理物の種類、量等に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。例えば、抗菌剤を粉末状の洗剤に含有させて洗濯時に千倍に希釈して使用する場合には、使用時に抗菌性が維持される範囲となるような割合であればよく、銀純分で、0.001〜10重量%の範囲内であることがより好ましく、0.01〜2重量%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、上記の場合、洗濯時において優れた除菌・抗菌性を付与するためには、洗浄液中での抗菌剤濃度は、銀濃度で0.01ppm以上であることが好ましい。
本発明に係る第4の抗菌剤は、上記銀クロロ錯塩および塩化物以外に、必要に応じて他の固体状の成分を含んでいてもよい。
本発明に係る第4の抗菌剤を添加混合して用いることができる粉体は、使用に際して抗菌性が要求されるものであれば特に限定されず、例えば、粉末状の洗剤の他、各粉末状の洗濯助剤、界面活性剤、酵素、蛍光増白剤、再汚染防止剤、漂白剤、泡安定化剤、抑泡剤、柔軟化剤、可溶化剤、増粘剤、乳濁剤、香料、色素等が挙げられる。
また、抗菌剤を添加混合して用いた粉体には、抗菌性を有する防腐剤、殺菌剤がさらに含まれていてもよい。さらに、本発明に係る第4の抗菌剤を添加混合して用いる対象は、上記粉体の他、例えば、固形石鹸等、他の固形物であってもよい。
本発明に係る第4の抗菌剤を、上記各粉体等に添加混合する方法としては、例えば、抗菌剤を粉末状とした後、上記各粉体に対し直接添加し、ミキサー等により攪拌して均一に混合する方法、予め洗剤等の粉体が溶解した溶液に抗菌剤を添加した後、蒸発等により乾固させる方法が挙げられる。
本発明に係る第4の抗菌剤は、固体状であるため、例えば、樹脂や繊維等に混練することにより抗菌性樹脂や抗菌性繊維を得ることができる。本発明に係る第4の抗菌剤を、例えば樹脂や繊維に混練する方法は、特に限定されないが、例えば、本発明に係る第4の抗菌剤を微粉砕して微粒子とし、樹脂や繊維製造時において、原材料と共に混合する方法等が挙げられる。
本発明に係る第4の抗菌剤によって、あらゆる種類の被処理物を抗菌処理することができる。本発明に係る第4の抗菌剤を用いて抗菌処理することができる被処理物としては、樹脂、繊維、紙、皮革等を原材料とする各種工業製品、家庭用品の他、コンクリート製の壁面、床面等の建築材料、セラミック製品等が挙げられる。上記被処理物は、それ自体に抗菌性を付与すべきものであればよく、例えば、各粉末状の化粧品やビルダー等、本発明に係る第4抗菌剤を添加混合することによって、抗菌性が付与されるものも含まれる。
本発明に係る第4の抗菌剤を用いて被処理物を処理する方法としては、例えば、第4の抗菌剤を微粒子の状態で含む粉末状の洗剤や粉末状の洗濯助剤等により被処理物を洗浄する方法、樹脂や繊維等からなる被処理物を製造する場合において微粉砕した第4の抗菌剤を上記樹脂や繊維中に混練等によって含有させる方法等が挙げられる。
本発明に係る第4の抗菌剤の製造方法は、銀および/または銀化合物と、塩化物と、水とを混合して混合物を調製する工程(第一の工程)と、該混合物から水を除去する工程(第二の工程)とを含んでいる。
本発明に係る第4の抗菌剤の製造方法は、具体的には、例えば、(1)銀および/または銀化合物と塩化物と水とを混合して水溶液の形態とした混合物を調製し、次いで該水溶液から水を蒸発させることにより除去する方法、(2)銀および/または銀化合物および塩化物を湿潤させてペースト状とできる量の水を、上記銀および/または銀化合物と塩化物とに添加し、均一に混合して混合物を調製した後、該混合物から水を蒸発させることにより除去する方法等が挙げられる。
上記例示の2つの方法のうち、(2)の方法は、水溶液の形態を経由することなく、ペースト状すなわち同相状態での反応により銀クロロ錯塩を生成させることができる。(2)の方法によれば、銀クロロ錯塩の安定化に寄与する塩化物の量を、水溶液の形態を経由する(1)の方法と比較して増やすことができる。このため、銀クロロ錯塩濃度を(1)の方法を用いる場合よりもさらに増やすことができるという利点がある。また、(2)の方法では、(1)の方法で水溶液から水を除去するために必要となる耐食性の濃縮装置が不要であるため、製造コストが低く抑えられるという利点もある。従って、上記2方法のうちでは、(2)の方法を用いることがより好ましい。
上記第一の工程において混合される銀は、銀メタルをいう。
また、上記第一の工程において混合される銀化合物としては、例えば、塩化銀が用いられる他、塩化銀よりも溶解度の低い銀塩である硫化銀、セレン化銀、テルル化銀、ヨウ化銀、臭化銀を除くいかなる種類の銀化合物も用いることができる。上記銀および銀化合物のうち、工業的には銀塩を混合することがより好ましい。また、銀塩のうちでは、塩化銀を用いることがより好ましい。
第一の工程で、例えば、方法(1)のように、混合物が水溶液の形態をとる場合における銀および/または銀化合物の水溶液中の濃度は特に限定されない。
また、例えば、方法(1)のように、上記混合物が水溶液の形態をとる場合における塩化物の水溶液中の濃度は特に限定されないが、1〜40重量%の範囲内が好ましく、5〜30重量%の範囲内がさらに好ましく、10〜20重量%の範囲内が最も好ましい。
一方、第一の工程で、例えば、方法(2)のように、混合物がペースト状の形態をとる場合において、銀および/または銀化合物と、塩化物と、水との割合は、(2)の方法をとることによる上記利点が得られる範囲内であれば特に限定されないが、塩化物の割合は、銀および/または銀化合物を1としたとき、重量比にて1.3以上の範囲であることが好ましい。また、水の割合は、銀および/または銀化合物を1としたとき、重量比にて10〜100の範囲内であることが好ましい。
第一の工程における設定温度は、特に限定されないが、60〜110℃の範囲内であることがより好ましい。また、第二の工程における設定温度は、特に限定されないが、20〜200℃の範囲内であることがより好ましい。
第一の工程において混合される銀および/または銀化合物と、塩化物と、水との混合の順序は特に限定されず、例えば、塩化物を水に溶解させて水溶液とし、これに銀および/または銀化合物を添加混合する方法や、塩化物と水とを混合させた後に銀および/または銀化合物を添加混合し、これを、別に混合した塩化物と水との混合物に添加してさらに混合する方法を用いることができる。
第二の工程において、混合物から水を除去する方法としては、混合物を水溶液の形態で得た場合には、例えば、ロータリーバキュームエバポレーター等を用いて、該混合物を室温または加熱下において減圧濃縮した後、室温または加熱下において乾燥させ蒸発乾固する方法を用いることができる。また、混合物をペースト状の形態で得た場合には、該混合物を室温または加熱下において乾燥させ蒸発乾固する方法等を用いることができる。
本発明に係る第4の抗菌剤の製造方法では、上記第一の工程において、銀および/または銀化合物が、塩化物と所定の割合で反応することにより、持続性のある抗菌性を有し、水に可溶な銀クロロ錯塩が生成する。また、上記塩化物が、生成した銀クロロ錯塩を安定化する役割を担う。次に、第二の工程において、混合物から水を除去することにより、固体状の形態を有する本発明に係る第4の抗菌剤を得ることができる。
以下において、本発明に係る第4の抗菌剤に含まれる銀クロロ錯塩が、被処理物に対して抗菌性を発揮する機構および、本発明に係る第4の抗菌剤に含まれる塩化物が上記銀クロロ錯塩に対して作用する機構について説明する。
一般に、銀イオンの錯塩は、中心原子である銀の存在により、広範囲の種類の細菌や、かびに対して抗菌性を有する。このうち、銀クロロ錯塩は、銀のチオシアン酸錯塩や、チオ硫酸錯塩等とは異なり、硫化物イオン(S2−)を含まない。このため、熱や酸により分解して有毒ガスを発生したり、硫化銀の形成により黒化することがなく、持続性のある抗菌性を発揮することができる。すなわち、銀クロロ錯塩は、銀クロロ錯塩または、塩化銀あるいは、銀メタルの形態をとることにより、被処理物に対して抗菌性を発揮する。
本発明に係る第4の抗菌剤を、例えば、粉末状の洗剤に含有させて洗濯時に使用する場合、水で希釈されるため、銀クロロ錯塩の周囲に存在する塩化物濃度が減少する。塩化物濃度が減少すると、銀クロロ錯塩は不安定化し、塩化銀の微粒子となって析出する。繊維製品等の表面は、表面エネルギーが高いため、この析出した塩化銀の微粒子が該表面に多数吸着し抗菌性を発揮する。なお、吸着した塩化銀の結晶を核として、該結晶が成長することもあるが、その大きさは1μm程度である。
また、本発明に係る第4の抗菌剤を、例えば、樹脂や繊維等に混練した場合には、繊維から一旦溶出した塩化銀の微粒子が繊維表面に再吸着して、上記繊維表面で抗菌性を発揮する。この現象は、電子顕微鏡写真等による観察により確認することができる。また、上記のようにして繊維表面に再吸着した塩化銀の微粒子による抗菌性は、水洗によっても失われることがなく安定である。
また、本発明に係る第4の抗菌剤の製造方法を用いて、例えば、銀および/または銀化合物と塩化物とを水溶液の形態とせず、少量の水にてペースト状として混合することにより銀クロロ錯塩を生成させることができる。このため、銀クロロ錯塩の安定化に寄与する塩化物の量を、銀クロロ錯塩が塩化銀に変化することを抑制できる範囲に適宜設定することが容易であり、生成した銀クロロ錯塩の安定化をさらに図ることができる。また、これにより、溶液状の抗菌剤と比較して、生成させる銀クロロ錯塩量を増やすことができる。
以上のように、本発明に係る第4の抗菌剤は、銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための塩化物とを含み、固体状の形態をとっている。抗菌剤が固体状であるため、例えば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる。また、銀クロロ錯塩を安定化する塩化物を含むことによって、安定した抗菌性を得ることができる。
また、銀クロロ錯塩と塩化物との割合を、例えば、重量比で、1:1000〜1:50の範囲内とすることにより、より安定した固体状の抗菌剤が得られるとともに、銀クロロ錯塩の含有量を増やすことができるため、溶液状の抗菌剤と比較して、抗菌性をより高めることができる。
本発明に係る第4の抗菌剤の製造方法は、銀および/または銀化合物と、塩化物と、水とから銀クロロ錯塩を生成させた混合物から水を除去するため、固体状の抗菌剤を製造することができる。従って、例えば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤を得ることができる。また、混合物中に生成した銀クロロ錯塩が、持続性のある抗菌性を発揮すると共に、塩化物が銀クロロ錯塩を安定化させるため、安定した抗菌性を有する抗菌剤を得ることができる。 次に、本発明に係る第4の抗菌剤およびその製造方法を、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、実施例24における菌数測定方法および粉末状洗剤の組成は、以下の通りである。
<菌数測定方法>
溶液中に含まれるMRSAの菌数は、以下の方法により測定した。
溶液、または、溶液を1/1000希釈トリプトソーヤブイヨン(日水製薬製)で希釈した溶液希釈液を用意した。上記溶液または溶液希釈液1mlを直径9cmのシャーレに入れた。次に、オートクレーブ滅菌した後40℃まで冷却した標準寒天培地(日水製薬株式会社製)を上記シャーレに20mlずつ加えた。この培地を十分に攪拌した後、放置して固化させた。上記シャーレを37℃、24時間培養した後、コロニー数を計数し、上記溶液中の菌数を計算した。
<粉末状洗剤の組成>
抗菌剤を含有した洗剤組成物を調製するために、以下の組成を有する粉末状洗剤を用いた。
ドデシルベンゼンスルホン酸 15重量%
トリポリリン酸ナトリウム 17重量%
珪酸ナトリウム 10重量%
炭酸ナトリウム 3重量%
カルボキシメチルセルロース 1重量%
硫酸ナトリウム 54重量%
〔実施例23〕
第一の工程において、混合物が水溶液状態を経由する本発明に係る第4の抗菌剤の製造方法を用いて、本発明に係る第4の抗菌剤を製造した。
塩化カリウム933gを水に溶解し、全量3lの水溶液とした。次いで、該水溶液に、湿潤した塩化銀2.43g(銀純分として、1.5g含有)を攪拌により分散、溶解させて混合物とし、銀クロロ錯塩水溶液を調製した。この水溶液を、ロータリーバキュームエバポレーターにて80℃で減圧濃縮し、濃縮スラリーを得た。該濃縮スラリーは、105℃にて、空気中で8時間乾燥した。乾燥後、回収できた乾燥物の重量は、936gであった。該乾燥物は、直射日光下で10分以上暴露しても変色が認められず、該乾燥物中に塩化銀が残存していないことが確認された。これにより、該乾燥物を、固体状である本発明に係る第4の抗菌剤として得た。
〔実施例24〕
第一の工程において、混合物が水溶液状態を経由しない本発明に係る第4の抗菌剤の製造方法を用いて、本発明に係る第4の抗菌剤を製造した。
塩化カリウム20gを粉末化し、これに対し、水3.4mlを添加混合し、ペースト状とした。次いで、湿潤した塩化銀2.6g(銀純分として1.6g含有)をこれに加え、均一になるまで混合した混合物(A)を得た。次に、別の容器に塩化カリウム980gと水60mlを添加して均一になるまで混合し、上記混合物(A)をこれに添加して、再度均一になるまで混合し、新たに混合物(B)を得た。混合物(B)の一部を採取して日光に暴露したところ、迅速に青紫色に変色した。これにより、上記採取時点では、未だ銀クロロ錯塩に変化していない塩化銀が残存することが確認された。そこで、混合物(B)をさらに105℃にて8時間空気中で乾燥した。乾燥後、回収した乾燥物の重量は、1003gであった。該乾燥物は、直射日光下で10分以上暴露しても、もはや何ら変色が認められず、塩化銀が残存していなことが確認された。これにより、水溶液状態を経由せずに、固相にて銀クロロ錯塩が形成されていることが確認できた。該乾燥物を、固体状である本発明に係る第4の抗菌剤として得た。該抗菌剤は、銀クロロ錯塩を銀濃度として、1595mg/kg(1.595×10−3重量%)含んでおり、銀クロロ錯塩以外の残部として塩化カリウムを含んでいた。
上記組成を有する粉末状洗剤に、粉末状にした上記抗菌剤を添加混合した洗剤組成物による布の抗菌化を行った。
1lのビーカーに、1.8cm×1.8cmのポリアセテート製の布を30枚入れた。このビーカーに、500mlの水を加えた後、抗菌剤50mgと上記組成の粉末状洗剤500mgとを混合した洗剤組成物をさらに添加し、旋回させながら5分間洗濯した。次に、布を滅菌水500mlが入った別のビーカーに移し、5分間すすぎを行った。
布を滅菌済シャーレ中に取り出し、風乾した後、該布を1枚ずつ別々の50mlの遠心チューブに移した。1000倍希釈したトリプトソーヤブイヨン培地(日水製薬株式会社製)中にMRSAが5×104個/mlの割合で含まれるMRSA懸濁液を0.2ml取り、これを布上に接種した。接種後の布をそれぞれ室温(20〜25℃)で18時間処理した。この遠心チューブに、食塩0.85重量%と、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)0.2重量%とを含む溶液20mlを添加し、30回振とうして菌を洗い出し、それぞれの溶液中に含まれる菌数を上記菌数測定方法により測定し、布30枚についての平均値として求めた。
また、粉末状洗剤を0gとする以外は、上記同様の操作を行い、菌数を測定した。
一方、抗菌剤を用いない以外は、上記同様の操作を行い、菌数を測定した。
さらに、抗菌剤および粉末状洗剤を用いない以外は、上記同様の操作を行い、菌数を測定した。これら結果を表17に示した。
表17の結果から、本発明に係る第4の抗菌剤または、本発明に係る第4の抗菌剤を含有した洗剤組成物を用いて洗浄することにより、布の抗菌化が行えることがわかる。これに対し、本発明に係る第4の抗菌剤を用いず、粉末状洗剤単独で洗浄した場合、または水洗いのみの場合には、植菌した菌が生育し、抗菌化が行われていないことがわかる。
次に、本発明に係る洗剤、洗濯助剤、および第3の抗菌処理方法について詳細に説明する。
本発明に係る洗剤、洗濯助剤は、以下に述べる成分を含む洗剤、洗濯助剤に、銀クロロ錯塩を所定の割合でさらに含有させることにより得ることができる。
銀クロロ錯塩は、前記の構造式(1)で表される錯イオン構造を、水溶液中で提供することができる塩であれば、特に限定されない。
一般に、銀イオンの錯塩は、中心原子である銀の存在により、広範囲の種類の細菌や、かびに対して抗菌性を有する。このうち、銀クロロ錯塩は、銀のチオシアン酸錯塩や、チオ硫酸錯塩等とは異なり、硫化物イオン(S2−)を含まない。このため、熱や酸により分解して有毒ガスを発生したり、硫化銀の形成により黒化することがなく、安定である。
また、銀クロロ錯塩は、単独で保存する場合のみならず、洗剤や洗濯助剤中で保存する場合であっても、紫外線や熱等によって不安定化することがない。また、銀クロロ錯塩は、洗剤や洗濯助剤の成分である増粘剤(後述する)等に含まれる塩素イオンと共存する場合であっても、塩化銀の沈殿を生成することがないため非常に安定である。
本発明で使用する銀クロロ錯塩は、水溶液の状態で液体洗剤あるいは液体状の洗濯助剤に含まれていてもよい。また、銀クロロ錯塩の水溶液を蒸発乾固させて得られる固体(粉末)の状態で、粉末洗剤または粉末状の洗濯助剤に含まれていてもよい。さらには、銀クロロ錯塩は、ゼオライト等の多孔質物質に担持させた状態で粉末洗剤または粉末状の洗濯助剤に含まれていてもよい。
本発明における洗剤は、界面活性剤を主体として、界面活性剤および添加剤からなり、その主たる洗浄の作用が界面活性によるものをいう。また、該洗剤に含まれる添加剤としては、ビルダー、酵素、蛍光増白剤、再汚染防止剤、漂白剤、泡安定化剤、抑泡剤、柔軟化剤、可溶化剤、増粘剤、乳濁剤、香料、色素等が挙げられる。また、該洗剤には、抗菌性を有する防腐剤、殺菌剤がさらに含まれていてもよい。
上記界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、長鎖脂肪酸塩等の、陰イオン性界面活性剤;非イオン性界面活性剤;等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、本発明に係る第2の抗菌剤に用いる界面活性剤として例示した各種の非イオン性界面活性剤を用いることができる。
上記ビルダーとしては、無機系ビルダーおよび有機系ビルダーが挙げられる。無機系ビルダーとしては、水可溶性および不溶性のビルダーを使用することができる。可溶性ビルダーとしては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸塩;珪酸ナトリウム等の珪酸塩;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム等の炭酸塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩;クエン酸ナトリウム等のカルボン酸塩;等が挙げられる。不溶性のビルダーとしては、結晶性アルミノ珪酸ナトリウム(ゼオライト)等が挙げられる。
有機系ビルダーとしては、有機キレート系ビルダー、高分子電解質系ビルダー、有機活性剤系ビルダー等が挙げられる。有機キレート系ビルダーとしては、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のアミノカルボン酸や、これらの塩類;シュウ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等の有機酸や、これらの塩類;ピロメリト酸、ベンゾポリカルボン酸等のシクロカルボン酸やこれらの塩類;カルボキシメチルタルトロン酸(CMT)、カルボキシメチルオキシコハク酸(CMOS)、2,5−ジオキサ−1,1,3,4,6,6−ヘキサンヘキサカルボン酸(TMD)等のエーテルカルボン酸;等を使用することができる。高分子電解質系ビルダーとしては、例えば、アクリル酸重合体、無水マレイン酸重合体、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体、α−ヒドロキシアクリル酸重合体、イタコン酸重合体、エポキシコハク酸重合体等の合成高分子の酸化誘導体;デンプン、セルロース、アルギン酸等の天然高分子の酸化誘導体;等を使用することができる。有機活性剤系ビルダーとしては、例えば、アミノスルホネート等を使用することができる。
上記酵素としては、銀イオンにより活性を失う酵素でなければよく、例えば、各種プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等を用いることができる。
上記蛍光増白剤としては、例えば、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンスルホン酸誘導体、ビススチリルビフェニル誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体、ナフタルイミド誘導体等が使用できる。
上記再汚染防止剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート(酢酸ビニル重合体)、エチレングリコール−エチレンフタレート共重合体、ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ビニルスルホン酸−アクリル酸ナトリウム共重合体、ビニルアセテート−無水マレイン酸共重合体、ビニルピロリドン−無水マレイン酸共重合体、ビニルスルホン酸−無水マレイン酸共重合体等を使用することができる。
上記漂白剤としては、例えば、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ砂、過炭酸ナトリウム、過ピロリン酸ナトリウム、過安息香酸塩、尿素−過酸化水素化合物、メラミン−過酸化水素化合物、クエン酸過水和物、過ホウ酸ナトリウムフタロシアニンスルホン化物亜鉛塩、過ホウ酸ナトリウムフタロシアニンスルホン化物アルミニウム塩等を使用することができる。また、漂白剤の活性化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水安息香酸、N,N’,N”,N”’−テトラアセチルグリコールウリル、テトラアセチルエチレンジアミン等が挙げられる。あるいは、漂白剤の安定化剤として、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸スズ等が挙げられる。
上記泡安定化剤としては、例えば、ジエタノールアミド、長鎖アルコール、アミンオキシド、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシアルキルアミド、アルキルスルホキシド等を使用することができる。
抑泡剤としては、例えば、微晶ワックス、シリコーン、炭素数が18〜40のケトン等を使用することができる。
上記柔軟化剤としては、ジメチルステアリルアンモニウムクロリド等の陽イオン性界面活性剤;モノアルキルジメチルアミンオキシド、高分子ポリアミン、天然鉱物であるモンモリロナイト;等を使用できる。
本発明に係る洗剤が、液体洗剤である場合には、銀クロロ錯塩を可溶化する等を目的として、可溶化剤を用いることができる。可溶化剤としては、例えば、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、尿素、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸塩、セロソルブ(エチレングリコールモノエチルエーテル)等が使用できる。
本発明に係る洗剤が、液体洗剤である場合には、洗剤に増粘剤が含まれていてもよい。増粘剤としては、例えば、マレイン酸重合体、イタコン酸重合体、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の高分子化合物;硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機電解質;等が挙げられる。
本発明に係る洗剤が、液体洗剤である場合には、乳濁剤が含まれていてもよい。乳濁剤としては、例えば、スチレン−アクリルアミド共重合体、スチレン−ビニルピロリドン共重合体、酢酸ビニル重合体、ステアリン酸マグネシウム、モノグリセリド、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、エチレングリコールジ脂肪酸エステル、魚鱗箔、雲母チタン等が挙げられる。
また、本発明に係る洗剤が液体洗剤である場合、これに含まれる銀クロロ錯塩が持つ抗菌作用により該液体洗剤の防腐、抗菌も行われることになる。しかしながら、銀クロロ錯塩と、公知の防腐剤、殺菌剤とを併用することもできる。防腐剤や殺菌剤としては、デヒドロ酢酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、p−オキシ安息香酸イソブチル、p−オキシ安息香酸イソプロピル、p−オキシ安息香酸エチル、p−オキシ安息香酸ブチル、p−オキシ安息香酸n−プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
上記香料、色素の種類は、特に限定されない。
本発明に係る洗濯助剤とは、洗剤の洗浄能力を増強する目的あるいは例えば繊維製品等に洗浄以外の処理を施す目的で、洗剤の使用前、使用中、使用後に用いるものをいう。洗浄以外の処理としては、例えば、漂白、増白、柔軟化、糊付け、アルカリ分除去等が挙げられる。本発明における洗濯助剤としては、例えば、予浸剤、軟水化剤、前処理剤、漂白剤、増白剤、サワー剤、柔軟剤、糊剤等を含むものを挙げることができる。これらの洗濯助剤には、例えば、本発明に係る洗剤成分として含まれる、上記界面活性剤、ビルダー、酵素、蛍光増白剤、再汚染防止剤、漂白剤、泡安定化剤、抑泡剤、柔軟化剤、可溶化剤、増粘剤、乳濁剤、香料、色素等がさらに含まれていてもよい。また、本発明における洗濯助剤には、除菌剤、抗菌剤がさらに含まれていてもよい。
また、本発明に係る洗濯助剤に含まれる漂白剤には、前記例示の漂白剤の他に、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩、および/または、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩を用いることができる。すなわち、本発明に係る洗濯助剤に含まれる銀クロロ錯塩は、塩素イオンの存在下であっても安定である。このため、本発明に係る洗濯助剤として、上記次亜塩素酸塩および/または亜塩素酸塩を含む漂白剤、すなわちいわゆる塩素系漂白剤と、銀クロロ錯塩とを組み合わせて用いることが可能である。これにより、被洗浄物に対する漂白効果とともに、銀クロロ錯塩の抗菌性により被洗浄物に対する抗菌効果をも兼ね備えることができる。
本発明に係る第3の抗菌処理方法では、銀クロロ錯塩を含む溶液中で繊維製品等の被洗浄物(被処理物)を処理する。上記溶液は、銀クロロ錯塩と界面活性剤とを含む洗浄液であることが好ましい。これにより、被処理物を抗菌処理すると共に洗浄することができる。すなわち、上記溶液は、少なくとも界面活性剤を含み必要に応じて洗濯助剤等をさらに含む洗浄液内に、銀クロロ錯塩を添加したものであることが好ましい。
銀クロロ錯塩を洗浄液内に添加する方法は、被洗浄物を除菌・抗菌化し得る方法であれば特に限定されない。例えば、洗浄液に直接投入する方法、被洗浄物に予め噴霧する方法、銀クロロ錯塩を含む液に被洗浄物を予め浸漬する方法、銀クロロ錯塩を予め洗剤や洗濯助剤の一成分としてこれら洗剤、洗濯助剤に混合しておく方法等を採用することができる。また、銀クロロ錯塩を洗浄液に添加する時期は、洗浄開始時点からすすぎが終了するまでの間のいずれの時期であってもよい。なお、洗浄の際、脱水処理を行ってもよい。
本発明に係る洗剤および洗濯助剤中に含まれる銀クロロ錯塩の配合比は特に限定されず、洗濯時等に、数十倍〜数千倍に希釈して使用する場合に、抗菌性が維持される範囲となるような割合で含有されていればよい。優れた除菌・抗菌性付与のためには、銀濃度で0.1ppm以上が好ましい。
本発明に係る洗剤、洗濯助剤の洗浄液中での濃度は、洗浄と同時に除菌および抗菌化が行える範囲内であれば特に限定されないが、洗浄液中における銀イオン濃度として0.01ppm以上あることが、充分な抗菌性を発揮するためには好ましい。また、同一の被洗浄物を繰返し洗浄する場合であれば、さらに低い濃度でも抗菌効果を発揮できる。
以下において、本発明に係る銀クロロ錯塩が、製品に対して抗菌性を付与する機構について説明する。
銀クロロ錯塩は、洗濯等に使用する場合に水で希釈されるため、塩素イオン濃度が低下する。塩素イオン濃度が低下すると、銀クロロ錯塩は不安定化し、塩化銀の微粒子となって析出する。繊維製品等の表面は表面エネルギーが高いため、この析出した塩化銀の微粒子が該表面に多数吸着することとなる。なお、吸着した塩化銀の結晶を核として、該結晶が成長することもあるが、その大きさは1μm程度である。
そのため、被洗浄物を洗浄する際に、銀クロロ錯塩を洗浄液に添加し、その後に必要に応じて水によるすすぎを行うことによって、被洗浄物表面に塩化銀の微粒子を固定あるいは定着させ、これにより被洗浄物の抗菌化を行うことができる。
この場合、被洗浄物表面等に吸着した塩化銀の結晶は、非常に微粒子であるため、その表面積が大きい。その結果、銀イオンの溶出が容易に起こり、高い抗菌性が示されることとなる。また、繊維表面に吸着した塩化銀は、非常に微粒子であるため、紫外線照射を受けても、肉眼で明らかになるほどには黒化しない。
以上のように、本発明に係る洗剤および洗濯助剤に含まれる銀クロロ錯塩の上記性質を利用すれば、洗浄と同時に被洗浄物の除菌・抗菌化を簡便に行うことができるとともに、被洗浄物の抗菌性を持続させることができる。
本発明に係る洗剤、洗濯助剤を適用できる繊維としては、羊毛、絹、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。また、上記適用できる繊維は色柄ものであってもよい。
次に、本発明に係る洗剤、洗濯助剤および第3の抗菌処理方法を、実施例および比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、これらの実施例および比較例における洗剤水溶液および菌数測定方法は、以下の通りである。
上記組成の水溶液を0.1重量%含み、かつ、銀クロロ錯塩および/または次亜塩素酸ナトリウムを所定濃度で含む水溶液を洗剤水溶液として以下の洗濯工程において使用した。
<菌数測定方法>
溶液(洗浄液、すすぎ液)中の菌数は、前記の実施例24と同一の方法により、測定した。
〔実施例25〕
以下において、銀クロロ錯塩による布の除菌を行った。
内容量50mlの遠心チューブに、1.8cm×1.8cmの布を入れ、チューブごとオートクレーブ滅菌した。1000倍希釈トリプトソーヤブイヨン培地中にMRSAが5×104個/mlの割合で含まれる懸濁液を0.2ml取り、これを布上に接種した。
1.0ppmの銀クロロ錯塩を含む洗剤水溶液20mlを遠心チューブに添加した。この遠心チューブを150rpmで旋回させながら、布を10分間洗濯し、上澄みを洗浄液とした。次に、この布を、滅菌水が20ml入った別の遠心チューブに移し、150rpmで10分間すすぎ、上澄みをすすぎ液とした。布を取り出して、標準寒天培地上に置き、37℃で24時間培養してMRSAの増殖の有無を確認した。上記操作を3回行い、それぞれシャーレ1、シャーレ2、シャーレ3とした。
同様に、10.0ppm、100.0ppmの各濃度の銀クロロ錯塩を含む洗剤水溶液、並びに、銀クロロ錯塩1.0ppmおよび次亜塩素酸ナトリウム(試薬)を活性塩素濃度で125.0ppm含む洗剤水溶液についても、上記の操作を行った。結果を表18に示した。
また、各洗浄液、すすぎ液中に含まれる菌数を上記菌数測定方法によって測定した。菌数1個以上/シャーレ1枚を「+」、菌数0個/シャーレ1枚を「−」と表示した。結果を表19および表20に示した。
〔比較例29〕
銀クロロ錯塩を用いない以外は、実施例25と同様の操作を行い、結果を表18〜20に示した。
〔実施例26〕
以下において、銀クロロ錯塩による布の抗菌化を行った。
100mlのビーカーに、1.8cm×1.8cmの布を入れた。所定濃度の銀クロロ錯塩および/または次亜塩素酸ナトリウムを含む洗剤水溶液50mlを添加し、旋回させながら5分間洗濯した。50mlの滅菌水が入った別のビーカーに布を移し、5分間すすぎを行った。
布を滅菌シャーレ中に取り出し、風乾した後、布を50mlの遠心チューブに移した。1000倍希釈トリプトソーヤブイヨン培地中にMRSAが5×104個/mlの割合で含まれるMRSA懸濁液0.2mlを布上に接種し、室温(20〜25℃)で18時間処理した。この遠心チューブに、0.85%の食塩と0.2%のTween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)とを含む溶液20mlを添加し、30回振とうして菌を洗い出し、その溶液中に含まれる菌数を上記菌数測定方法に従って測定した。また、上記洗剤水溶液を水に変更する以外は同様の操作を行って菌数を測定した。結果を表21に示した。
〔比較例30〕
銀クロロ錯塩を用いない以外は、実施例26と同様の操作を行い、結果を表21に示した。
表18〜20に示された結果から、銀クロロ錯塩が銀濃度1.0ppm以上含まれる場合、洗濯、すすぎ後の布に菌が存在せず、除菌が完全に行われたことがわかる。
表18〜20に示された結果から、次亜塩素酸ナトリウム自体も除菌効果を有することがわかる。しかし、表21の結果から、洗剤水溶液が銀クロロ錯塩を含まない場合は、次亜塩素酸ナトリウムが含まれていても洗浄後の布に抗菌性が付与されず、菌が生育していることがわかる。
また、表21の結果から、界面活性剤の有無にかかわらず、銀クロロ錯塩が抗菌能力を発揮し得ることがわかる。
次に、本発明に係る使い捨てシーツの実施の一形態について図2(a)および(b)、並びに図3ないし図6に基づいて説明する。
図2(a)および(b)に示すように、本実施形態の使い捨てシーツ1では、長方形のシーツ2に対し、シーツ2を右側部分2Rと左側部分2Lとの2つに切り離し可能とする切り込み3がシーツ2の長手方向に沿って設けられ、切り込み3を封止するためのテープ4が、切り込み3を覆うように粘着剤(図示しない)によってシーツ2上に貼着されている。
使い捨てシーツ1は、寝たきり患者のベッドに敷いて患者を寝かせれば、その上に患者を寝かせたまま移動させるだけで取り除くことができる。
具体的には、使い捨てシーツ1を取り除く際には、まず、患者の体を回転させてシーツ2の右側部分2R(または左側部分2L)上に移動させ、切り込み3を封止しているテープ4を剥がす。これにより、図3に示すように、切り込み3が現れる。次いで、シーツ2の左側部分2L(または右側部分2R)を手で強く引っ張れば、シーツ2の右側部分2Rと左側部分2Lとが切り込み3で切り離され、シーツ2の左側部分2L(または右側部分2R)が取り除かれる。次に、患者の体を回転させて、シーツ2の左側部分2L(または右側部分2R)を取り除いたところ(例えば、下に敷いた他の使い捨てシーツ1の左側部分2L上)に移動させ、シーツ2の右側部分2R(または左側部分2L)を手で引けば、シーツ2の右側部分2R(または左側部分2L)が取り除かれる。
このように、患者を寝かせたままで使い捨てシーツ1を取り除くことができるので、予め使い捨てシーツ1の下に別のシーツを敷いておけば、患者を寝かせたままでシーツの交換が可能となる。それゆえ、患者をベッドから移動させる必要がなくなり、一人の介護者でシーツを交換することが可能となる。
また、使い捨てシーツ1では、切り込み3がテープ4で封止されているので、使用時に、患者の尿や汗等が切り込み3を通って下に敷いたシーツ、例えば、他の使い捨てシーツ1に滲みることが防止されている。
使い捨てシーツ1のサイズは、それを敷くベッドのサイズに応じて適宜調節すればよいが、例えば、幅150cm程度、長さ220cm程度とすればよい。
シーツ2としては、汗などによる蒸れを防止できることから、紙や不織布などの通気性シート、あるいは該通気性シートに添加剤を添加したものが好ましい。上記通気性シートとしては、安価であること、および、ある程度の吸水性を備えており尿や汗等を幾らか吸収できることから、紙および不織布が特に好ましい。 シーツ2は、添加剤として銀クロロ錯塩等の抗菌・防臭剤をさらに含んでいることが望ましい。これにより、シーツ2の抗菌および防臭を行うことができ、より清潔な環境を維持することが可能となる。
シーツ2は、添加剤として高分子吸水剤をさらに含んでいることが望ましい。これにより、尿や汗等を確実に吸収することができ、尿や汗等がシーツ2を透過して下へ滲みだすことを防止できる。高分子吸水剤としては、「アクアキープ10SH−NF」(商品名、住友精化株式会社製)に代表される微粉末状の高吸水性樹脂が好適に使用できる。
通気性シートに添加剤を添加する方法としては、特に限定されるものではないが、通気性シートを製造する際に通気性シートの原料に練り込む方法(以下、練り込み法と称する);通気性シートと他のシートとの間に挟み込んでから2枚のシートを接着する方法(以下、挟み込み法と称する);結着剤とともに溶解して溶液とした後、該溶液に通気性シートを浸漬する方法(以下、浸漬法と称する)などが挙げられる。
次に、添加剤を添加する方法について、抗菌・防臭剤および高分子吸水剤を添加する場合を例にとってさらに詳細に説明する。
まず、抗菌・防臭剤および高分子吸水剤の両方を練り込み法で添加する場合には、紙または不織布等の通気性シートの原料から通気性シートを製造する際に、抗菌・防臭剤および高分子吸水剤を通気性シートの原料に練り込むことにより、抗菌・防臭剤および高分子吸水剤を添加すればよい。
これにより、図4に示すように、通気性シート21中に抗菌・防臭剤23および高分子吸水剤22が分散された1層構造のシーツ2が得られる。この場合、抗菌・防臭剤23としては、粉末状の抗菌・防臭剤、例えば、粉末状の銀クロロ錯塩を用いることができる。また、高分子吸水剤22としては、粉末状の高分子吸水剤、例えば、「アクアキープ10SH−NF」(商品名、住友精化株式会社製)に代表される微粉末状の高吸水性樹脂を用いることができる。
なお、シーツ2の強度を高めたい場合には、通気性シート21中に抗菌・防臭剤23および高分子吸水剤22を練り込んだ1層構造のシートと、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド等からなる樹脂シート、あるいは、抗菌・防臭剤および高分子吸水剤を含まない通気性シート(紙や不織布など)とを接着剤で接着して一体化すれば、強度を高めることができる。この場合には、シーツ2は、2層構造となる。
また、抗菌・防臭剤を添加する方法として浸漬法を採用し、高分子吸水剤を添加する方法として挟み込み法を採用する場合には、次のようにすればよい。
すなわち、まず、紙や不織布等からなる通気性シートを製造した後、抗菌・防臭剤と結着剤との混合液中に通気性シートを浸漬し、通気性シート表面に抗菌・防臭剤と結着剤(バインダー)とを付着させる。これにより、抗菌・防臭剤が結着剤によって通気性シート表面に固定され、通気性シートに抗菌・防臭剤が添加される。この場合、抗菌・防臭剤としては、液体の抗菌・防臭剤、例えば、液体の銀クロロ錯塩が使用できる。
次に、この抗菌・防臭剤を付着させた通気性シートと、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂シート、あるいは抗菌・防臭剤を含まない通気性シート(紙や不織布など)とを、これらシートの間に高分子吸水剤を挟み込んだ状態で接着剤で接着し、一体化する。この場合、高分子吸水剤としては、粉末状の高分子吸水剤、例えば、「アクアキープ10SH−NF」(商品名、住友精化株式会社製)に代表される微粉末状の高吸水性樹脂が使用できる。
これにより、図5に示すように、抗菌・防臭剤23が分散された通気性シート21と、樹脂シートまたは通気性シートからなるシート24との間に、高分子吸水剤22が挟持された2層構造のシーツ2’が得られる。
なお、抗菌・防臭剤と高分子吸水剤とを配置する位置は逆にしてもよい。すなわち、高分子吸水剤を含む通気性シートを製造した後、高分子吸水剤を含む通気性シートと、樹脂シート、あるいは高分子吸水剤を含まない通気性シートとを、これらシートの間に抗菌・防臭剤を挟み込んだ状態で接着剤で接着しても、抗菌・防臭剤および高分子吸水剤を含む2層構造のシーツを製造することができる。この場合には、抗菌・防臭剤として、粉末状の抗菌・防臭剤、例えば、粉末状の銀クロロ錯塩が使用できる。
シーツ2を切り離すための切り込み3は、人の手で引っ張ることによりシーツ2が2つに切り離されるようなものであればよく、例えば、スリット、ミシン目等が挙げられる。
切り込み3は、シーツ2の長手方向に沿った中心線に沿って、すなわち、例えば、シーツ2の幅が150cmであればシーツ2の長辺との間隔が75cmとなるように入れられていることが好ましい。
これにより、シーツ2における切り込み3を挟む2つの部分、すなわち右側部分2Rおよび左側部分2Lの大きさが互いに等しくなる。前述したように使い捨てシーツ1の上に患者を乗せたまま使い捨てシーツ1を交換するには、シーツ2の右側部分2Rに患者を乗せた後、シーツ2の左側部分2Lを取り除いた部分(例えば、下に敷いた他の使い捨てシーツ1のシーツ2の左側部分2L)に患者を乗せる必要がある。右側部分2Rおよび左側部分2Lの大きさを互いに等しくすると、シーツ2の右側部分2Rに患者を乗せる作業、および、シーツ2の左側部分2Lを取り除いた部分に患者を乗せる作業のいずれも比較的容易となる。
切り込み3を覆うテープ4としては、シーツ2と同じ組成・構造を有するシート、例えば紙や不織布等を、シーツ2より狭い幅にカットしたものを使用することができる。テープ4の幅は、切り込み3を覆うことができ、かつ、粘着剤によって接着することができる程度の幅があればよく、例えば、2cm程度とすればよい。
前記の粘着剤は、シーツ2とテープ4との間に設けられていればよいが、テープ4のみに塗布することが望ましい。これにより、使い捨てシーツ1の交換時、患者をシーツ2の右側部分2Rからシーツ2の左側部分2Lを取り除いた部分に移動させる際に、粘着剤が患者に付着することを回避できる。なお、粘着剤の種類は、特に限定されるものではない。
使い捨てシーツ1は、図6に示すように、使い捨てシーツ1が複数枚重ねられた使い捨てシーツセットとして用いることが望ましい。上記構成によれば、患者のベッドに一度敷けば、その上に患者を寝かせたまま移動させるだけで使い捨てシーツ1の交換が可能となる。それゆえ、1人の介護者で使い捨てシーツ1を取り替えることが可能となる。
重ねられた使い捨てシーツ1の枚数は、患者を寝かせたままで交換が可能な使い捨てシーツ1の枚数に決定する。そして、使い捨てシーツセットにおける全ての使い捨てシーツ1が使用された後は患者をベッドから移動させて使い捨てシーツセットを交換する必要があるので、使い捨てシーツ1の枚数は、使い捨てシーツセットを交換する周期に応じて選択するとよい。例えば、使い捨てシーツ1の枚数を7枚とすると、ちょうど1週間毎に使い捨てシーツセットを交換することになり、都合がよい。
なお、使い捨てシーツ1は、図6に示すように、テープ4が上となるよう重ねることが望ましい。これにより、使い捨てシーツ1の交換時にテープ4を容易に剥がすことができる。
次に、本発明に係る使い捨てシーツおよび使い捨てシーツセットの他の実施形態について図7(a)および(b)、図8、並びに図9に基づいて説明する。
図7(a)および(b)に示すように、本実施形態の使い捨てシーツ11では、2枚の長方形のシーツ部材12・13が、その長辺が互いに接し合うように並べられ、テープ14が、各シーツ部材12・13における接し合う部分を覆うように粘着剤(図示しない)によって各シーツ部材12・13上に貼着されている。
使い捨てシーツ11は、寝たきり患者のベッドに敷いて患者を寝かせれば、その上に患者を寝かせたまま移動させるだけで取り除くことができる。
具体的には、使い捨てシーツ11を取り除く際には、まず、シーツ部材12・13に跨がっている患者の体を回転させてシーツ部材12(またはシーツ部材13)上に移動させ、テープ14を剥がす。これにより、図8に示すように、各シーツ部材12・13が独立して移動可能な状態となる。次いで、シーツ部材13(またはシーツ部材12)を手で引けば、シーツ部材13(またはシーツ部材12)が取り除かれる。次に、患者の体を回転させて、シーツ部材13(またはシーツ部材12)を取り除いたところ(例えば、下に敷いた他の使い捨てシーツ11のシーツ部材13上)に移動させ、シーツ部材12(またはシーツ部材13)を手で引けば、シーツ部材12が取り除かれる。
このように、使い捨てシーツ11では、患者を寝かせたまま取り除くことができるので、予め使い捨てシーツ11の下に別のシーツを敷いておけば、患者を寝かせたままで交換が可能となる。それゆえ、患者をベッドから移動させる必要がなくなり、一人の介護者でシーツを交換することが可能となる。
また、使い、捨てシーツ11では、シーツ部材12とシーツ部材13との接し合う部分がテープ14で覆われているので、使用時に、患者の尿や汗等がシーツ部材12とシーツ部材13との間隙を通って下に敷いたシーツ、例えば、他の使い捨てシーツ11に滲みることが防止されている。
使い捨てシーツ11のサイズは、それを敷くベッドのサイズに応じて適宜調節すればよいが、例えば、幅150cm程度、長さ220cm程度とすればよい。
シーツ部材12・13としては、汗などによる蒸れを防止できることから、紙や不織布などの通気性シート、あるいは該通気性シートに添加剤を添加したものが好ましい。上記通気性シートとしては、安価であること、および、ある程度の吸水性を備えており尿や汗等を幾らか吸収できることから、紙および不織布が特に好ましい。
シーツ部材12・13は、添加剤として銀クロロ錯塩等の抗菌・防臭剤をさらに含んでいることが望ましい。これにより、シーツ部材12・13の抗菌および防臭を行うことができ、より清潔な環境を維持することが可能となる。
シーツ部材12・13は、添加剤として高分子吸水剤をさらに含んでいることが望ましい。これにより、尿や汗等を確実に吸収することができ、尿や汗等がシーツ部材12・13を透過して下へ滲みだすことを防止できる。高分子吸水剤としては、「アクアキープ10SH−NF」(商品名、住友精化株式会社製)に代表される微粉末状の高吸水性樹脂が好適に使用できる。
通気性シートに添加剤を添加する方法としては、特に限定されるものではないが、通気性シートを製造する際に通気性シートの原料に練り込む方法(以下、練り込み法と称する);通気性シートと他のシートとの間に挟み込んでから2枚のシートを接着する方法(以下、挟み込み法と称する);結着剤とともに溶解して溶液とした後、該溶液に通気性シートを浸漬する方法(以下、浸漬法と称する)などが挙げられる。なお、通気性シートに抗菌・防臭剤および高分子吸水剤を添加したシーツ部材12・13の形態については、実施の形態1において説明したシーツ2の各形態、例えば、図4に示すシーツ2や図5に示すシーツ2’を採用することができる。
シーツ部材12・13の大きさは、同一であることが好ましい。前述したように使い捨てシーツ11の上に患者を乗せたまま使い捨てシーツ11を交換するには、シーツ部材12上に患者を乗せた後、シーツ部材13を取り除いた部分(例えば、下に敷いた他の使い捨てシーツ11のシーツ部材13)に患者を乗せる必要がある。シーツ部材12の大きさとシーツ部材13の大きさとを等しくすると、シーツ部材12上に患者を乗せる作業、および、シーツ部材13を取り除いた部分に患者を乗せる作業のいずれも比較的容易となる。
テープ14としては、シーツ部材12・13と同じ組成・構造を有するシート、例えば紙や不織布等を、シーツ部材12・13より狭い幅にカットしたものを使用することができる。テープ14の幅は、シーツ部材12・13の互いに接し合う部分を覆うことができ、かつ、粘着剤によって接着することができる程度の幅があればよく、例えば、2cm程度とすればよい。
前記の粘着剤は、シーツ部材12・13とテープ14との間に設けられていればよいが、テープ14のみに塗布することが望ましい。これにより、使い捨てシーツ11の交換時、患者をシーツ部材12上からシーツ部材13を取り除いた部分へ移動させる際に、粘着剤が患者に付着することを回避できる。なお、粘着剤の種類は、特に限定されるものではない。
使い捨てシーツ11は、図9に示すように、使い捨てシーツ11が複数枚重ねられた使い捨てシーツセットとして用いることが望ましい。上記構成によれば、患者のベッドに一度敷けば、その上に患者を寝かせたまま移動させるだけで使い捨てシーツ11の交換が可能となる。それゆえ、1人の介護者で使い捨てシーツ11を取り替えることが可能となる。
重ねられた使い捨てシーツ11の枚数は、患者を寝かせたままで交換が可能な使い捨てシーツ11の枚数に決定する。そして、使い捨てシーツセットにおける全ての使い捨てシーツ11が使用された後は患者をベッドから移動させて使い捨てシーツセットを交換する必要があるので、使い捨てシーツ11の枚数は、使い捨てシーツセットを交換する周期に応じて選択するとよい。例えば、使い捨てシーツ11の枚数を7枚とすると、ちょうど1週間毎に使い捨てシーツセットを交換することになり、都合がよい。
なお、使い捨てシーツ11は、図9に示すように、テープ14が上となるよう重ねることが望ましい。これにより、使い捨てシーツ11の交換時にテープ14を容易に剥がすことができる。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
産業上の利用可能性
本発明に係る第1の抗菌剤は、以上のように、銀クロロ錯塩と酸化剤とを含む構成である。
上記構成は、殺菌および消臭に対して即効性と残効性とを兼ね備え、広い殺菌スペクトルを示し、耐性菌が発生しにくく安全性が高いうえ、硫化物が共存する媒体中や環境でも十分な安定性を保持し、かつ価格的にも実用的であって、消臭作用および抗菌および防かび作用に優れた抗菌剤を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る第1の抗菌剤の製造方法は、以上のように、塩化物水溶液と、銀および/または銀化合物と、酸化剤とを混合する方法である。
上記方法は、殺菌および消臭に対して即効性と残効性とを兼ね備え、広い殺菌スペクトルを示し、耐性菌が発生しにくく安全性が高いうえ、硫化物が共存する媒体中や環境でも十分な安定性を保持し、かつ価格的にも実用的であって、消臭作用および抗菌防かび作用に優れた抗菌剤が得られる抗菌剤の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る第1の抗菌処理方法は、以上のように、酸化剤の存在下で銀クロロ錯塩を含む水溶液を使用して被処理物を処理する方法である。
上記方法は、殺菌および消臭に対して即効性と残効性とを兼ね備え、広い殺菌スペクトルを示し、耐性菌が発生しにくく安全性が高いうえ、硫化物が共存する媒体中や環境でも十分な安定性を保持し、かつ価格的にも実用的であって、消臭作用および抗菌防かび作用に優れた抗菌処理方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る第2の抗菌剤は、以上のように、銀クロロ錯塩と、塩化物イオンを供給する塩化物とを含む抗菌剤であって、上記塩化物が溶解する溶媒と相溶性を有する化合物をさらに含む構成であり、より好ましくは、抗菌剤が上記塩化物が溶解する溶媒(好ましくは水)をさらに含む構成である。
それゆえ、塩化物が溶解する溶媒と相溶性を有する化合物が、水またはその他の溶媒を捕捉することによって、抗菌剤溶液中の、銀クロロ錯塩近傍における自由水または化学的、物理的に捕捉されていない上記溶媒を減少させることができる。これにより、銀クロロ錯塩の安定化に寄与する見かけ上の塩化物イオンの濃度を増加させることができる。従って、銀クロロ錯塩の安定化に直接必要な塩化物イオン濃度を確保しつつ、実際上は抗菌剤溶液中に含まれる塩化物イオン濃度を少なくすることが可能となる。このため、上記構成は、使用時に抗菌剤溶液を希釈することなく簡便に抗菌処理を行うことができる抗菌剤を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る第2の抗菌処理方法は、以上のように、上記第2の抗菌剤で被処理物を処理する方法である。
それゆえ、上記方法は、使用に際して、保存状態での塩化物イオンの濃度を変化させる必要がないので、簡便に抗菌処理を行うことができるという効果を奏する。
本発明に係る第3の抗菌剤は、以上のように、少なくとも室温において結晶核の存在下に過飽和水溶液として24時間以上存在できる性質、および、水に溶解させると分解する性質の少なくとも一方を有する塩化物と、銀クロロ錯塩とを含む構成である。
それゆえ、上記構成は、塩化物が上記性質を有することにより、抗菌処理後に抗菌剤が乾燥して塩化物が濃縮された状態においても、被処理物表面に塩化物の白色結晶等が生じて美観や触感を損なわないという効果を奏する。
本発明に係る第4の抗菌剤は、以上のように、銀クロロ錯塩と、塩化物とを含み、固体状である構成である。
それゆえ、抗菌剤が固体状であるため、例えば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤を提供することができるという効果を奏する。また、持続性のある抗菌性を有する銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための塩化物とにより、安定した抗菌性を有する抗菌剤を提供できるという効果も奏する。
本発明に係る第4の抗菌剤の製造方法は、以上のように、銀および/または銀化合物と、塩化物イオンを供給する塩化物と、水とを混合して混合物を調製する工程と、該混合物から水を除去する工程とを含む構成である。
それゆえ、混合物が上記塩化物を含んでいるので、該混合物から水を除去しても、銀クロロ錯塩が安定な状態で存在する。これにより、安定した抗菌性を有し、固体状の抗菌剤を製造することができる。従って、例えば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤の製造方法を提供することができるという効果を奏する。また、混合物中に生成した銀クロロ錯塩が、持続性のある抗菌性を発揮すると共に、上記塩化物が銀クロロ錯塩を安定化させるため、安定した抗菌性を有する抗菌剤の製造方法を提供できるという効果も奏する。
本発明に係る洗剤は、以上のように、銀クロロ錯塩を含む構成である。
それゆえ、被洗浄物(被処理物)を変色させることなく、被洗浄物の抗菌処理が行える。また、持続性のある抗菌性を洗濯時に簡便に付与できる。また、例えば陰イオン性界面活性剤等の洗剤中に含まれる成分と反応せず、安定に抗菌能力を維持することができるため、洗浄と抗菌処理とを同時に行うことができるという種々の効果を奏する。さらには、洗剤自体の防腐を行うことができる。
本発明に係る洗濯助剤は、以上のように、銀クロロ錯塩を含む構成である。
それゆえ、例えば柔軟剤と併用した場合に、柔軟性を付与すると同時に、被洗浄物(被処理物)を変色させることなく、被洗浄物の抗菌処理が行える。また、柔軟性等を付与する際に、持続性のある抗菌性を簡便に付与できる。また、例えば陰イオン性界面活性剤等の洗濯助剤中に含まれる成分と反応せず、安定に抗菌能力を維持することができるため、柔軟性等の付与と抗菌処理とを同時に行うことができるという種々の効果を奏する。さらには、洗濯助剤自体の防腐を行うことができる。
本発明に係る第3の抗菌処理方法は、以上のように、銀クロロ錯塩を含む溶液中で被処理物を処理する方法である。
それゆえ、被処理物を変色させることなく、簡便に抗菌処理を行うことができる。また、被処理物の抗菌効果を簡便に持続させることができるという効果を奏する。
本発明に係る使い捨てシーツは、以上のように、長方形のシーツに対し、該シーツを2つに切り離し可能とする切り込みがシーツの長手方向に沿って設けられ、上記切り込みを封止するためのテープが、上記切り込みを覆うように粘着剤によって上記シーツ上に貼着されている構成である。
それゆえ、上記構成は、その上に人を寝かせたまま取り除くことが可能な使い捨てシーツを提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る使い捨てシーツは、以上のように、2枚の長方形のシーツ部材が、その長辺が互いに接し合うように並べられ、テープが、各シーツ部材における接し合う部分を覆うように粘着剤によって各シーツ部材上に貼着されている構成である。
それゆえ、上記構成は、その上に人を寝かせたまま取り除くことが可能な使い捨てシーツを提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る使い捨てシーツセットは、以上のように、上記各使い捨てシーツのいずれかが複数枚重ねられてなる構成である。
それゆえ、上記構成は、寝たきり患者のベッドに用いた場合に1人の介護者で使い捨てシーツを取り替えることが可能な使い捨てシーツセットを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例3での硫化物を含む培地での大腸菌の生育試験における、培養時間と細菌の繁殖(吸光度で表示)との関係を示したグラフである。
図2(a)および(b)は、本発明の使い捨てシーツの実施の一形態を示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は側面図である。
図3は、図2(a)および(b)に示す使い捨てシーツのテープを剥がした状態を示す斜視図である。
図4は、図2(a)および(b)に示す使い捨てシーツに用いられるシーツの一例を示す断面図である。
図5は、図2(a)および(b)に示す使い捨てシーツに用いられるシーツの他の一例を示す断面図である。
図6は、本発明の使い捨てシーツセットの実施の一形態を示す斜視図である。
図7(a)および(b)は、本発明の使い捨てシーツの他の実施の形態を示す図であり、図7(a)は斜視図、図7(b)は側面図である。
図8は、図7(a)および(b)に示す使い捨てシーツのテープを剥がした状態を示す斜視図である。
図9は、本発明の使い捨てシーツセットの他の実施の形態を示す斜視図である。
Claims (9)
- さらに、酸化剤を含むことを特徴とする請求項1記載の抗菌剤。
- 前記酸化剤が、次亜塩素酸塩および/または亜塩素酸塩である請求項1または2記載の抗菌剤。
- 銀および/または銀化合物と、塩化物イオンを供給する塩化物と、水とを、前記銀クロロ錯塩と、前記塩化物とが、重量比で、1:10 5 〜1:10の範囲内となるように混合して混合物を調製する工程と、該混合物から水を除去する工程とを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗菌剤の製造方法。
- 前記塩化物は、ポリ塩化アルミニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化コリン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、塩化イミダゾリニウム、または、塩化N−ラウリルピリジウムである請求項5に記載の抗菌剤。
- 溶液状の抗菌剤であるとともに、抗菌剤中の塩化物の濃度は、1〜500g/lである請求項5または6に記載の抗菌剤。
- 請求項1、2、3、5、6、7または8に記載の抗菌剤で被処理物を処理する抗菌処理方法。
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