JP2004315519A - 有機過酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い安定性と殺菌力を示し、殺菌剤等として好適な有機過酸を、過酸化水素を過剰に使用せずに製造できる方法を提供する。
【解決手段】 (A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルと(B)過酸化水素とを、特定モル比で、水中でpH8〜12で反応させ、次いで当該反応系をpH1以上7未満として有機過酸を製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、殺菌剤、漂白剤等に使用される有機過酸の製造方法に関する。
現在、漂白や殺菌、消毒等の作用を示す薬剤はさまざまなものが知られているが、特に塩素系殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩、酸素系殺菌剤として過酸化水素や水中で過酸化水素を発生する過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム等が主として使用されている。しかしながら、これらの殺菌剤は様々な課題を有しており、例えば次亜塩素酸塩は金属等に対する腐食の問題や誤使用による塩素ガス発生の問題があり、過酸化水素は高度の殺菌効果を得るためには高濃度での使用や長時間の接触を要するといった問題がある。過酸化水素を使用する場合、これらの問題を解消するために、活性化剤を併用して使用時に有機過酸を発生させることで殺菌効果を高める等の対応がとられている。そのような殺菌剤組成物として、特許文献1では、無機過酸化物、多価アルコールの有機酸不完全エステル、アルカリ土類金属塩を含有する殺菌剤組成物が開示されているが、pH7未満での使用の記載はなく、薬品耐性のより高い芽胞、カビ胞子についての殺菌効果は更に改善の余地がある。また、殺菌剤として有機過酸を適用する方法としては、特許文献2、3が挙げられるが、これらは殺菌剤組成物として過酢酸と酢酸と過酸化水素の濃厚な併用が基本となっており、強い刺激臭を伴い取り扱いにくいものである。更に、特許文献4では有機過酸発生系においてpHを調整し漂白効果を向上させる方法を提案しているが、薬品耐性のより高い芽胞、カビ胞子についての殺菌力の向上は期待できない。
有機過酸は、例えば、過酢酸の場合、過酸化水素と酢酸を酸性下で反応させることで連続的に製造され、過酢酸、酢酸、過酸化水素及び水を含む平衡混合物として得られる。また、過酢酸は、アセトアルデヒドを気相で部分酸化して製造することや、アセトアルデヒドを触媒下で酸化し、中間体のアセトアルデヒドモノパーアセテートを生成させ、これを溶剤中で分解して製造することもできる。また、特許文献5、6には、過酢酸もしくは酢酸と、過酸化水素と、水等とを含有する、殺菌に適した濃縮物が開示されている。しかし、これまでの有機過酸を用いた殺菌剤等においては、その製造方法において適切な原料バランスを考慮し、残存する過酸化水素量を制御することは十分になされているとは言い難い。また、上記の通り、酢酸と過酸化水素とを反応させる場合、反応生成物が過酸化水素を含む平衡混合物として得られるため、過酸化水素濃度の比率が相対的に高くなる。従って、従来の方法で製造された有機過酸水溶液は、未反応の過酸化水素成分の含有量が多くなる傾向があった。単位量あたりの過酸化水素の濃度が高くなると有機過酸の濃度が低くなるため、より高度な殺菌には不利となる。また、今日、環境に対する負荷を軽減することは大きな課題であるが、過酸化水素を過剰に含有する殺菌剤等は、排出前に中和、分解等の処理が必要となり、その処理コストが大きな負担となる。
特開平6−305920号公報 特表平8−500843号公報 特開平8−311495号公報 特開平5−25497号公報 特開昭52−25034号公報 特開昭52−25011号公報
本発明は、高い安定性と殺菌力を示し、殺菌剤等として好適な有機過酸を、過酸化水素を過剰に使用せずに製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明は、(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステル〔以下、(A)成分という〕と(B)過酸化水素〔以下、(B)成分という〕とを、(A)/(B)=1/10〜20/1のモル比で、水中でpH8〜12で反応させ、次いで当該反応系をpH1以上7未満とする工程を有する、有機過酸の製造方法に関する。
本発明によれば、(A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルと(B)過酸化水素とを、(A)/(B)=1/10〜20/1のモル比で、水中でpH8〜12で反応させ、次いで当該反応系をpH1以上7未満とする工程を有する、有機過酸を含有する殺菌剤組成物の製造方法が提供される。
本発明によれば、殺菌剤等として効果が高い有機過酸を過剰な過酸化水素の使用なしに効率よく製造することができる。このため過酸化水素の含有量の低い有機過酸水溶液を得ることができるため、例えば殺菌剤として用いた場合も、環境への排水負荷を軽減できる。
<(A)成分>
(A)成分の多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルは、(B)成分から放出される過酸化水素の活性化剤であり、過酸化水素と反応して有機過酸を生じるものである。
(A)成分を構成するための多価アルコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類、グルコース、ショ糖、果糖、ソルビトール、ペンタエリスリトール、アルキルポリグリコシド、アルキルフラノシド等の糖類が挙げられる。
また、(A)成分を構成するための有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、オクタン酸等の脂肪族モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の水酸基を有するヒドロキシカルボン酸等が挙げられるが、好ましくは炭素数1〜8の飽和又は不飽和の脂肪族モノ又はジカルボン酸が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜8の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸が挙げられ、更に好ましくは炭素数1〜8の脂肪酸が挙げられ、特に好ましくは炭素数2〜8の脂肪酸が挙げられる。(A)成分のエステル化度は限定されない。
具体的な(A)成分としては、グリセリンと炭素数1〜8の脂肪族モノカルボン酸のエステルが好ましく、なかでもトリアセチンが好ましい。
<(B)成分>
(B)成分は、過酸化水素であり、水中で過酸化水素を放出する無機過酸化物を水に溶解させて用いてもよい。当該無機過酸化物としては、過炭酸塩、なかでも過ホウ酸塩が好ましく、特に過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムが好ましい。
<製造方法>
本発明の製造方法は、(A)成分と(B)成分とを反応させる際に、両者のモル比を特定比率とし、かつ反応系のpHを二段階で変化させるものである。本発明の製造方法は、酢酸と過酸化水素とを反応させる従来の方法と異なり、(A)成分と(B)成分の反応が不可逆反応であるため、系中に過酸化水素が蓄積せず、所望の濃度の有機過酸を含有する水溶液を製造する場合に有利である。すなわち、本発明によれば、(A)成分と(B)成分とを上記特定のモル比で、水中でpH8〜12で反応させ、次いで当該反応系をpH1以上7未満とする工程を有する、有機過酸を含有する水溶液の製造方法を提供することができる。
(A)成分と(B)成分のモル比は、(A)/(B)=1/10〜20/1であり、1/10〜10/1、特に1/5〜10/1であることが、有機過酸の生成効率と安定性の点から、好ましい。また、(A)成分のエステル基1個あたりの(B)成分のモル比は、効率的に有機過酸を生成し、かつ未反応の過酸化水素を低減させる観点から、2倍モル以下が好ましく、特に0.3〜2倍モルが好ましい。
また、(A)成分と(B)成分と水の比率は、重量比で〔(A)+(B)〕/水=1/10000〜1/1が好ましく、1/1000〜1/2が好ましい。
上記モル比ないし重量比を満たした上で、反応系中、(A)成分を0.1〜90重量%、更に0.5〜70重量%、特に1〜50重量%、(B)成分を0.1〜50重量%、更に0.1〜30重量%、特に0.1〜20重量%を仕込むことが好ましい。
本発明の製造方法には、(A)成分と(B)成分とを含有し水分含有量が1〜25重量%である液状組成物を用いることが好ましい。すなわち、本発明の製造方法において、(A)成分と(B)成分は、(A)成分と(B)成分とを含有し水分含有量が1〜25重量%である液状組成物としてもたらされることが好ましい。該液状組成物中の(A)成分の含有量は、20〜90重量%、更に30〜90重量%、特に40〜80重量%が好ましく、(B)成分の含有量は、1〜30重量%、更に5〜25重量%、特に10〜25重量%が好ましい。また、(A)成分と(B)成分のモル比は、(A)/(B)=1/10〜20/1、更に1/10〜10/1、特に1/5〜10/1であることが好ましい。また、(A)成分のエステル基1個あたりの(B)成分のモル比は、効率的に有機過酸を生成し、かつ未反応の過酸化水素を低減させる観点から、2倍モル以下が好ましく、特に0.3〜2倍モルが好ましい。
また、該液状組成物は、必要に応じて、キレート剤、pH調整剤、溶剤等を含有することができる。FeやCr等の金属イオンの微量混入による触媒的分解を抑制するためにキレート剤は有用である。該液状組成物の原液pH(20℃)は、貯蔵安定性の点から、0.5〜6が好ましく、さらに1〜5が好ましく、特に1〜4が好ましい。pH調整剤としての作用とキレート剤としての作用を兼ね備えたものが好ましく、具体的には、リン酸、重合リン酸、有機ホスホン酸、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、若しくはこれらの塩が好ましい。中でも、有機ホスホン酸若しくはその塩が好ましい。溶剤としては、多価アルコール溶剤が好ましく、プロピレングリコール等のグリコール溶剤が特に好ましい。
なお、(B)成分は、水中で過酸化水素を放出する無機過酸化物、例えば過炭酸塩、過ホウ酸塩、特に過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムを含有する粒状、粉状等、固体状の組成物から得られたものを使用することもできる。
本発明では、(A)成分と(B)成分とを混合後、反応系のpHを8〜12、好ましくは9〜11とし(第一工程)、次いでpH1以上7未満、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5とする(第二工程)。第一工程では、アルカリ性のpH調整剤を、第二工程では酸性のpH調整剤を用いるのが好ましい。このpHは、反応時のものであるが、好ましくは反応後の最終生成物が25℃において上記第二工程のpHを満たすことである。
上記第一工程は、有機過酸を発生させるための工程であり、時間は限定されないが、理論値の50%の有機過酸が発生するまではpHを8〜12に保持することが好ましい。第一工程の好ましい反応時間は、1〜120分である。また、第一工程における反応温度は5〜50℃が好ましい。
また、二工程は、発生した有機過酸を安定化させるための工程であり、基本的にpHを1以上7未満とするためのpH調整剤を反応系中に添加することで行われる。すなわち、pHが所定の数値となったときは第二工程の終了である。第二工程における反応温度は5〜50℃が好ましい。
本発明の製造方法によれば、有機過酸は水溶液中に存在する形態で得ることができるが、当該水溶液中の残存過酸化水素の濃度は、過酸化水素の蓄積防止と有機過酸の安定性の観点から、過酸化水素の初期仕込み量の60重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、0.1〜50重量%が特に好ましい。
アルカリ性のpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸アルカリ金属塩、リン酸3ナトリウム等のアルカリ性を呈するリン酸アルカリ金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩が挙げられるが、アルカリ度や水溶性の観点より水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、リン酸3ナトリウムやリン酸3カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩が好ましい。また、酸性のpH調整剤としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸が挙げられるが、酸度や水溶性の観点より硫酸やリン酸等の液体無機酸やクエン酸や酢酸等の高水溶性有機酸が好ましい。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらpH調整剤は、そのまま本発明で製造された有機過酸を含有する水溶液中に存在してよい。
本発明では、(A)成分、(B)成分以外にも、界面活性剤、無機又は有機の塩類、キレート剤、香料、顔料、染料等を反応系中に仕込むことができる。これにより、殺菌剤や漂白剤等が容易に得られる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEと記す)アルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレン・POE(ブロック又はランダム)アルキルエーテル、POEアリールフェニルエーテル、POEスチレン化フェニルエーテル、POEトリベンジルフェニルエーテル等の1価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤;(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド等の多価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、POEアルキルスルホン酸塩、POEアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、POEアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、POEアリールフェニルエーテルスルホン酸塩、POEアリールフェニルエーテルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、POEトリベンジルフェニルエーテルスルホン酸塩、POEトリベンジルフェニルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル(炭素数8〜18)トリメチルアンモニウムクロライド、ジ長鎖アルキル(炭素数8〜18)ジメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルアミノトリメチルグリシン、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、多価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、界面活性剤は、本発明における反応系中に0〜20重量%、更に0〜10重量%含有されることが好ましい。
塩類は、pH調整剤として用いられる他に、主として殺菌薬剤の安定化の目的で用いられ、具体的には、コハク酸、マロン酸、クエン酸、グルコン酸、グルタル酸等のカルボン酸金属塩等の有機塩、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、リン酸等のリン酸化合物金属塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩等の無機塩が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリポリリン酸、ポリヒドロキシアクリル酸、有機ホスホン酸等又はこれらの塩が挙げられる。
本発明により得られた有機過酸を含む水溶液は、さまざまな形態をとることができるが、液状の場合、流動性の高いものが好ましく、水溶液の他、流動性のあるスラリー、ゲル、ペースト状等であってもよい。
本発明により製造された有機過酸を含有する水溶液は、有機過酸濃度が、10〜100,000ppm(重量比、以下同様)、更に10〜50,000ppmであることが好ましい。
例えば、殺菌剤の場合、使用時に本発明の製造方法が実施されるように配合成分を用いることで、必要な濃度の有機過酸が簡便に得られるため、有用である。
また、殺菌剤の場合、本発明により製造された有機過酸を含有する水溶液は、そのまま使用してもよいが、経済性の観点から、適宜水で希釈し、有機過酸濃度が、10〜20,000ppm、更に10〜10,000ppmの水溶液として用いることが好ましい。
本発明の製造方法により得られた有機過酸を殺菌剤として用いる場合、有機過酸を含有する水溶液(以下、殺菌用水溶液という)を、被殺菌物と接触させる。
殺菌用水溶液を被殺菌物と接触させる方法としては、当該水溶液を散布、浸漬、充填、塗布する等の方法が挙げられる。散布する場合は噴霧することが好ましい。また、適当な担体に当該水溶液を含浸させて対象物をふき取っても良い。接触時間は限定されないが、被殺菌物によっては30秒以内、特に10秒以内という短時間でも十分な効果が得られる。また、接触させる際の当該水溶液の温度も限定されないが、10〜90℃が好ましく、15〜80℃がより好ましい。
このような殺菌用水溶液は、殺菌剤組成物であり、当該組成物中の過酸化水素含有量は0.5重量%以下、更に0.3重量%以下、特に0.2重量%以下が好ましい。
本発明により製造された有機過酸は、高い殺菌効果を有するために、種々の微生物が存在する様々な被殺菌物を殺菌対象とすることができる。例えば、細菌類では大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、緑濃菌等の食中毒や院内感染等の起因菌、黒コウジカビ、カンジダ菌等の真菌類、更には殺菌剤に強い耐性を有する枯草菌等の細菌芽胞や黒コウジカビ等の真菌胞子が挙げられる。このうち、細菌芽胞とは、増殖に適さない環境において作られる耐久性を有する休眠細胞であり、菌体の外側には多重の層状外殻を有している。このような細菌芽胞は薬剤や熱などに対する耐久性が非常に高く、一般的な殺菌では完全に死滅させることは困難である。しかし、本発明により製造された有機過酸によれば、このような細菌芽胞に対しても十分な殺菌効果が得られる。
このように、本発明により製造された有機過酸は、殺菌スペクトルが広く、細菌類のみならず、真菌類や芽胞に対する効果も高いため、幅広い分野での殺菌に有用である。例えば、病院、養護施設、食品加工工場、クリーニング施設、厨房等の壁、床、窓等あるいはそれらで用いられる器具、備品、及び製品用(例えば飲料用)容器等の殺菌に用いられる。
実施例1及び比較例1
表1〜6に示す量の(A)成分、(B)成分及びイオン交換水〔表中、(C)の記号を付す〕と適量のアルカリ性pH調整剤〔炭酸ナトリウム〕とを、200mLビーカー内で20分間攪拌混合した。その際のpHは、8〜12となるようにした。その後、更に酸性pH調整剤〔クエン酸〕を用いて表中に示す目的のpHに調整した。その際の経時的な有機過酸濃度の変化を測定した。有機過酸濃度は、以下の方法で測定した。結果を表1〜6に示す。
また、表7に示す量の(A)成分、(B)成分及びイオン交換水〔表中、(C)の記号を付す〕と適量の酸性pH調整剤〔クエン酸〕とを、200mLビーカー内で20分間攪拌混合した。その際のpHは、3〜5となるようにした。その際の有機過酸濃度を測定したが、有機過酸の発生は認められなかった。なお、本例は、第一工程のpHを3〜5とし、第二工程を特に設けない例に相当する。結果を表7に示す。
(1)有機過酸濃度の測定方法
(1−1)過酸化水素の定量
200mLのコニカルビーカーに、第二工程後の有機過酸含有水溶液w1g(目安として1〜50g)を精秤し、20%硫酸水溶液10mLと氷片2〜3個を加えて溶液を冷却し、触媒として飽和硫酸マンガン水溶液を1〜2滴加えた後、0.1mol/L(1/2規定)過マンガン酸カリウム水溶液で滴定する。溶液が淡いピンク色を1〜10秒間呈するところを終点とする。過酸化水素濃度は下記式(1−1)により算出される。
Figure 2004315519
1:0.1mol/L過マンガン酸カリウム水溶液の滴定所要量(mL)
1:0.1mol/L過マンガン酸カリウム水溶液のファクター
1:第二工程後の有機過酸含有水溶液の重量(g)
(1−2)有機過酸の定量
300mL共栓付三角フラスコに、第二工程後の有機過酸含有水溶液w2g(目安として1〜50g)を精秤し、20%硫酸水溶液10mL、純水20mL及び飽和ヨウ化カリウム水溶液2mLを加えて密栓した後、フラスコを軽く振盪する。これを冷暗所に5分間静置した後、0.2mol/L(1/5規定)チオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定する。溶液が淡黄色を示したところで2%澱粉水溶液を数滴加えて滴定を続ける。溶液の青紫色が消失したところを終点とする。有機過酸濃度は下記式(1−2)により算出される。
Figure 2004315519
2:0.2mol/Lチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴定所要量(mL)
2:0.2mol/Lチオ硫酸ナトリウム水溶液のファクター
H:(1−1)式で求めた過酸化水素濃度(重量%)
2:第二工程後の有機過酸含有水溶液の重量(g)
Figure 2004315519
(注)配合成分の( )内の数値はモル数であり、(B)成分の( )内のモル数は、過酸化水素としての量である(以下同様)。また、(A)/(B)モル比は、(A)成分と過酸化水素のモル比である(以下同様)。また、有機過酸濃度における第二工程直後とは、系中のpHが所定の値となった直後を意味し、有機過酸残存率は、〔(第二工程直後の有機過酸濃度)/(第二工程の60分後の有機過酸濃度)〕×100により算出されるものである(以下同様)。また、過酸化水素残存率は、前記式(1−1)から算出された過酸化水素濃度から系内の全過酸化水素重量を求め、これを初期の投入全過酸化水素重量で除すことにより算出されるものである(以下同様)。また、(A)成分のうち、グリセリン脂肪酸エステル〔商品名:ホモテックスPT、花王(株)製〕の脂肪酸は、炭素数8のものである(以下同様)。なお、過炭酸ナトリウムは、過酸化水素を22重量%含有し、過ホウ酸ナトリウムは、過酸化水素を20重量%含有していた。
Figure 2004315519
Figure 2004315519
Figure 2004315519
Figure 2004315519
Figure 2004315519
Figure 2004315519
参考例1及び比較参考例1
実施例1及び比較例1で製造された有機過酸を表8〜11に示す濃度で含有し、表8〜11のpHを有する殺菌用水溶液を調製し、以下の方法で殺菌効果を測定した。結果を表8〜11に示す。
(1)細菌芽胞の殺滅効果
芽胞形成細菌である、枯草菌(Bacillus subtilis var. niger)とサーキュランス菌(Bacillus circulans IFO3967)とを、それぞれSCD寒天培地(日本製薬(株)製)に30℃で約4週間前培養した後、寒天培地上に形成されたコロニーを適量かきとって1mLの滅菌水に懸濁し、検鏡して細菌芽胞(以下、芽胞という)の形成を確認した。この懸濁液を2回遠心洗浄後、適量の滅菌水で約108〜109cell/mLの菌濃度に調整した(芽胞液1)。この芽胞液1の0.1mlを、表8〜11の殺菌用水溶液2mLに接種し、25℃にて120秒間作用させた。その後、直ちに、芽胞液1を含む殺菌用水溶液の0.1mLを、1.0%チオ硫酸ナトリウムを加えたSCDLP培地(日本製薬(株))中に添加して、殺菌用水溶液を不活性化した(芽胞液2)。芽胞液2を、直径9cmの標準寒天培地に0.2mL塗抹して、35℃で36時間培養して、培地上に形成されたコロニー数をカウントすることで残菌数を確認した。
(2)カビ胞子の殺滅効果
黒コウジカビ(Aspergillus niger IFO6341)を、ポテトデキストロース寒天培地(日本製薬(株))に25℃で約4週間前培養した。培地上に発生した菌体をかき取って5mlの滅菌水に懸濁し、ガラスホモジナイザーを用いて懸濁菌液を均一にした。本懸濁液を2回遠心洗浄後、適量の滅菌水で約108〜109cell/mLの菌濃度に調整した(胞子液1)。この胞子液1の0.1mLを、表8〜11の殺菌用水溶液2mlに接種し、25℃にて120秒作用させた。その後、直ちに、胞子液1を含む殺菌用水溶液の0.1mlを、1.0%チオ硫酸ナトリウムを加えたSCDLP培地(日本製薬(株))中に添加して、殺菌用水溶液を不活性化した(胞子液2)。胞子液2を、直径9cmのポテトデキストロース寒天培地に0.2mL塗抹して、25℃で3〜4日間培養して、培地上に形成されたコロニー数をカウントすることで残菌数を確認した。
Figure 2004315519
Figure 2004315519
Figure 2004315519
Figure 2004315519
実施例2
表12に示す重量の(A)成分、(B)成分、有機ホスホン酸〔商品名:ディクエスト2010(ソルーシアジャパン(株)製)〕、アルカリ性pH調整剤に、イオン交換水を加えて全重量を100gとした(第一工程)。これを200mLビーカー内で約10分間攪拌混合した。その際のpHは、8〜12であった。その後、速やかに表10に示す重量の酸性pH調整剤を用いて目的のpHに調整し、さらにイオン交換水を添加して全量を110gにした(第二工程)。この時点(調製直後とする)での有機過酸濃度および過酸化水素濃度を測定するとともに、有機過酸濃度の経時変化(調製直後から30分後、60分後、120分後)を測定した。120分経時した殺菌用水溶液は有機過酸濃度として3000ppmに調整して殺菌効果を確認した。なお、過酸化水素濃度及び有機過酸濃度の測定方法は実施例1の有機過酸濃度の測定方法に従った。また、殺菌試験方法は参考例1の細菌芽胞の殺滅効果に従ったが、本例では殺菌用水溶液と菌の接触温度および接触時間を60℃20秒間とし、対象菌としてBacillus cereus IFO13494ならびにBacillus circulans IFO3967を供した。
Figure 2004315519
実施例3
表13に示す組成の液状組成物を調製し、以下の方法で有機過酸生成の安定性を評価した。結果を表13に示す。
<有機過酸生成安定性試験方法>
表13の液状組成物Xgと、有機ホスホン酸0.1gと、NaOH2gに、イオン交換水を加えて全量が100gとなるよう、100mLビーカー中にて調製した。5分間撹拌混合した後に、生成した有機過酸濃度(%)(調製直後の有機過酸生成濃度)を、実施例1の有機過酸濃度の測定方法に準じて測定した。ここで、実施例3−1〜3−3はX=7.5(g)とし、実施例3−4〜3−9、比較例3−1〜3−2はX=10(g)とした。
また、表13の液状組成物150mlを容量200mlのガラス瓶(無色透明)に充填し、蓋をして50℃にて保存する。4週間経過した後、上記と同様に有機過酸生成を行い、同様に保存後の有機過酸生成濃度(%)を測定した。有機過酸生成安定率を次式にて求めた。
有機過酸生成安定率(%)=〔(保存後の有機過酸生成濃度)÷調整直後の有機過酸生成濃度〕×100
Figure 2004315519

Claims (6)

  1. (A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルと(B)過酸化水素とを、(A)/(B)=1/10〜20/1のモル比で、水中でpH8〜12で反応させ、次いで当該反応系をpH1以上7未満とする工程を有する、有機過酸の製造方法。
  2. (A)多価アルコールと水酸基を有していても良い炭化水素基を有する有機酸とのエステルと(B)過酸化水素とを、(A)/(B)=1/10〜20/1のモル比で、水中でpH8〜12で反応させ、次いで当該反応系をpH1以上7未満とする工程を有する、殺菌剤組成物の製造方法。
  3. (A)と(B)が、(A)と(B)とを含有し水分含有量が1〜25重量%である液状組成物としてもたらされる請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 殺菌剤組成物中の過酸化水素含有量が0.5重量%以下である請求項2又は3記載の製造方法。
  5. (A)を構成する有機酸が、炭素数1〜8の脂肪酸である請求項1〜4の何れか1項記載の製造方法。
  6. (A)と(B)との水中でのpH8〜12での反応を、5〜50℃で1〜120分間行う請求項1〜5の何れか1項記載の製造方法。
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