しかし、上述した従来の光電センサでは、ガラス基板等の透明体を検出する場合、振動、温度特性の変化等により、受光量が大きく変動する。例えば特許文献1及び2に開示されている光電センサでは、投光手段から発せられた光が回帰形反射板に当たる場所がずれることにより、回帰反射される受光量が大きく変動する。ユーザは、斯かる変動の影響を受けることなく、透明体により遮光された場合にのみ物体の有無を検出できるレベルに閾値を設定する必要があり、調整が困難であるという問題点があった。
また、アンプ部に受光量が表示されている場合、透明体による受光量変動は小さいことから、受光量表示の変動を見ているだけでは、直感的に透明体を検出できているのか、透明体検出の有無を判断するための閾値まで余裕がどの程度あるのかを判断することが困難であり、閾値を調整するために多くの試行錯誤を必要とするため、効率的に閾値を設定することができないという問題点もあった。
さらに、上述した受光量の変動によって、物体検出領域において何も検出していない場合においても、アンプ部の表示部における数値が定常値とならず、絶えず変動値を表示する。これでは、ユーザにとっては光電センサ自体が正常に動作しているのか、透明体を検出しているのか、正確に判断することは困難であり、該光電センサの使用に対する不安感が生じるおそれがあるという問題点もあった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ガラス基板のような透明体の検出において、検出対象を安定して検出することができ、検出しない場合には、受光量及び透明体検出の有無を判断するための閾値を定常値として表示することができる光電センサを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、第1発明に係る光電センサは、光を物体検出領域へ投光する投光手段と、前記物体検出領域からの当該光を受光する受光手段とを備えた光電センサにおいて、前記受光手段で受光した前記光の受光量を取得するタイミング又は期間の指示を受け付ける受付手段と、受け付けた指示に対応した前記タイミング又は期間に取得した前記受光量に基づいて、受光量を表示するための基準となる表示基準量を決定する決定手段と、取得した前記受光量に基づいて、物体の有無を判断するための閾値を、前記表示基準量よりも小さな値として算出する算出手段と、前記受光手段で受光する受光量を、該受光量が前記表示基準量以上である場合はゼロに、前記受光量が前記表示基準量よりも小さい場合は、前記受光量が小さくなるにつれ、値が大きくなる表示用受光量に変換する変換手段と、変換された前記表示用受光量を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
第1発明では、受光手段で受光した光の受光量を取得するタイミング又は期間の指示を受け付け、受け付けた指示に対応したタイミング又は期間に取得した受光量に基づいて、表示基準量を決定する。また、取得した受光量に基づいて、物体の有無を判断するための閾値を、受光量よりも小さな値として算出する。受光手段で受光する受光量を、該受光量が表示基準量以上である場合はゼロに、受光量が表示基準量よりも小さい場合は、受光量が大きく(小さく)なるときに小さく(大きく)なる表示用受光量に変換し、変換された表示用受光量を表示する。所定のタイミング又は期間に取得した受光量の変動を考慮して表示基準量を決定し、受光量が表示基準量以上である場合はゼロに、受光量が表示基準量よりも小さい場合は、受光量が大きく(小さく)なるときに小さく(大きく)なるよう表示することができる。したがって、振動、周囲温度等により受光量が経時的に頻繁に変動した場合であっても、物体を検出していない場合には一定値であるゼロを、検出することにより受光量が小さくなった場合には大きな値を表示することができ、ユーザが直感的に物体を検出したか否かを容易に判断することができる。ここで、「表示基準量」とは、変動する受光量の代表値であり、例えば一定期間内の受光量の移動平均値等の統計的算出値である。「閾値」とは、受光量が下回った場合に物体の存在を検出するための判断基準値である。
また、第2発明に係る光電センサは、第1発明において、取得した前記受光量に基づいて、前記タイミング又は期間に取得した前記受光量を代表する代表受光量を決定する手段と、前記物体が前記物体検出領域に存在するか否かを判断する判断手段とをさらに備え、前記変換手段は、前記判断手段で存在しないと判断された場合の前記受光量と、前記代表受光量との変動分を補償するべく前記表示用受光量に加減算又は前記表示用受光量を乗除算することを特徴とする。
第2発明では、物体が物体検出領域に存在しないと判断された場合の受光量と、取得した受光量との変動分を補償するべく表示用受光量に加減算又は表示用受光量を乗除算することにより、振動、温度特性の変化等により、受光量が経時的に変動した場合であっても、表示用受光量は、物体を検出していない場合には常に一定値であるゼロを安定的に表示させることができ、ユーザに該光電センサを信頼して使用する安心感を与えることができる。
また、第3発明に係る光電センサは、第2発明において、前記決定手段は、さらに、前記代表受光量に基づいて前記表示基準量を決定することを特徴とする。
第3発明では、代表受光量に基づいて表示基準量を決定することにより、振動、温度特性の変化等により、受光量が経時的に大きく変動した場合であっても、物体を検出したか否かの判断の精度を一定に維持することができる。
また、第4発明に係る光電センサは、第2又は第3発明において、前記算出手段は、さらに、前記代表受光量に基づいて前記閾値を決定することを特徴とする。
第4発明では、代表受光量に基づいて閾値を決定することにより、振動、温度特性の変化等により、受光量が経時的に大きく変動した場合であっても、物体を検出したか否かの判断の精度を一定に維持することができる。
また、第5発明に係る光電センサは、第4発明において、前記算出手段は、前記代表受光量から所定の値を減じ、又は前記代表受光量に対して所定の比率を乗じて前記閾値を算出することを特徴とする。
第5発明では、代表受光量から所定の値を減じ、又は前記受光量に対して所定の比率を乗じて前記閾値を算出することにより、振動、温度特性の変化等により、受光量が経時的に大きく変動した場合であっても、物体を検出したか否かの判断の精度を一定に維持することができる。
また、第6発明に係る光電センサは、第2乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記判断手段で存在しないと判断された場合の前記受光量基づいて、前記代表受光量との変動分を補償するように前記閾値を補正する補正手段を備えることを特徴とする。
第6発明では、物体が物体検出領域に存在しないと判断された場合の受光量と、代表受光量との変動分に基づいて閾値を補正することにより、振動、温度特性の変化等により、受光量が経時的に大きく変動した場合であっても、物体を検出したか否かの判断の精度を一定に維持することができる。
また、第7発明に係る光電センサは、第6発明において、前記変換手段は、前記表示基準量に基づいて、前記閾値も前記表示用受光量に対応した表示用閾値に変換し、前記表示手段は、変換された前記表示用閾値も併せて表示し、前記補正手段は、前記表示用閾値が一定値となるよう前記閾値を補正することを特徴とする。
第7発明では、表示基準量に基づいて、閾値も表示用受光量に対応した表示用閾値に変換し、変換された表示用閾値も併せて表示する。また、物体が物体検出領域に存在しない場合には表示用閾値が一定値となるよう閾値を補正する。これにより、受光量だけでなく閾値についても表示基準量との差分として、表示用受光量と併せて表示することができ、ユーザが物体を検出したか否かを容易に目視確認することができる。また、物体が物体検出領域に存在しない場合には表示用閾値が一定値となるよう閾値を補正することにより、ユーザは、物体を検出しているか否かを容易に目視確認することができ、ユーザに該光電センサに対する信頼感を生じさせることが可能となる。
また、第8発明に係る光電センサは、第1発明において、前記変換手段は、前記表示基準量に基づいて、前記閾値も前記表示用受光量に対応した表示用閾値に変換し、前記表示手段は、変換された前記表示用閾値も併せて表示することを特徴とする。
第8発明では、表示基準量に基づいて、閾値も表示用受光量に対応した表示用閾値に変換し、変換された表示用閾値も併せて表示する。これにより、受光量だけでなく閾値についても表示基準量との差分として、表示用受光量と併せて表示することができ、ユーザが物体を検出したか否かを容易に目視確認することができる。
また、第9発明に係る光電センサは、第1発明において、前記変換手段は、前記表示基準量と、前記受光手段で受光する受光量との差又は比率に基づいて、前記受光手段で受光する受光量を前記表示用受光量に変換することを特徴とする。
第9発明では、表示基準量と、受光手段で受光する受光量との差又は比率に基づいて、受光手段で受光する受光量を表示用受光量に変換する。これにより、検出対象の物体によって遮光された光量を表示用受光量としてより安定した値として表示することができ、物体を検出する場合には表示用受光量が大きく表示されることから、ユーザが物体を検出したか否かを容易に目視確認することができる。
また、第10発明に係る光電センサは、第1発明において、前記算出手段は、前記取得した前記受光量から所定の値を減じ、又は前記取得した前記受光量に対して所定の比率を乗じて前記閾値を算出することを特徴とする。
第10発明では、取得した受光量から所定の値を減じ、又は受光量に対して所定の比率を乗じて閾値を算出する。これにより、物体検出の有無を判断する閾値を、取得した受光量よりも確実に小さい値として算出することが可能となる。
また、第11発明に係る光電センサは、第1発明において、取得した前記受光量のうち最小の受光量が、前記閾値と同じ又はそれ以上である基準受光量より小さいか否かを判断する条件判断手段を備え、該条件判断手段で前記最小の受光量が前記基準受光量よりも小さいと判断された場合、前記表示手段に警告表示させるようにしてあることを特徴とする。
第11発明では、取得した受光量のうち最小の受光量が、閾値と同じ又はそれ以上である基準受光量より小さいと判断された場合、警告表示させる。最小の受光量が、閾値と同じ又はそれ以上である基準受光量より小さい場合には、誤検出又は物体検出を失する可能性が高いことから、現状の閾値設定が適切ではない旨をユーザに警告表示により知らせることが可能となる。ここで、「最小の受光量」とは、所定のタイミング又は期間内の受光量の変動値の最小値を意味する。
また、第12発明に係る光電センサは、第6又は第7発明において、前記表示基準量は、複数のタイミング又は期間で決定するようにしてあり、前記表示手段は、前記表示基準量として最初に決定された初期表示基準量を、前記表示用閾値として前記初期表示基準量に基づいて変換された表示用閾値を、それぞれ表示するようにしてあることを特徴とする。
第12発明では、表示基準量として最初に決定された初期表示基準量を、表示用閾値として初期表示基準量に基づいて変換された表示用閾値を、それぞれ表示する。これにより、受光手段の経年変化等により受光量が減少した場合であっても、閾値の設定が不適切であると判断されるまではユーザには同一の表示を継続することができ、ユーザの該光電センサの使用に対する不安感が生じるのを未然に防止することが可能となる。
本発明によれば、所定のタイミング又は期間に取得した受光量の変動を考慮して表示基準量を決定し、受光量が表示基準量以上である場合はゼロに、受光量が表示基準量よりも小さい場合は、受光量が大きく(小さく)なるときに小さく(大きく)なるよう表示することができる。したがって、振動、周囲温度等により受光量が経時的に変動した場合であっても、物体を検出していない場合には一定値であるゼロを、検出することにより受光量が小さくなった場合には大きな値を表示することができ、ユーザが直感的に物体を検出したか否かを容易に判断することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施の形態の説明で参照する図面を通じて、同一又は同様の構成又は機能を有する要素については、同一又は同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
本実施の形態では、光電センサとして、いわゆる回帰型光電センサを例に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る光電センサの構成を模式的に示す例示図である。図1に示すように本実施の形態に係る光電センサは、光電センサ部1と回帰形反射板4とで構成されており、光電センサ部1と回帰形反射板4との間にガラス基板等の透明体が存在するか否かを検出する。
光電センサ部1は、投光手段21及び受光手段22を備えたセンサ部2と、アンプ部3とで構成されている。センサ部2の投光手段21は、例えば、発光素子であるLD(Laser Diode)23、レンズ24及び偏光フィルタ25を投光光軸に沿って直線状に配設してあり、受光手段22は、受光素子であるフォトダイオード26、レンズ27及び偏光フィルタ28を受光光軸に沿って直線状に配設してある。
フォトダイオード26の受光面側の前方に配設してある偏光フィルタ28と、LD23の出射方向の前面に配設してある偏光フィルタ25とは、偏光方向が互いに直交するようにしてある。信号処理回路29は、LD23に投光電流をパルス状に供給することでLD23をパルス状に発光させ、検出領域に向けてパルス状の光が投射される。フォトダイオード26は、検出領域からの光を受光し、受光した光量に応じた受光信号をアンプ部3へ出力する。
一方、センサ部2の前方には回帰形反射板4が対向配置されている。回帰形反射板4は、複数のコーナキューブで構成されている反射板本体41を、プラスチックケース42に溶着して形成されている。
コーナキューブは、互いに約90°を成す3枚の反射面を有するように形成されている。図2は、コーナキューブでの反射状態を説明する模式図である。図2において、コーナキューブ411は、互いに約90°を成す3枚の反射面411a、411b、411cを有するように形成されており、入射光を各反射面411a、411b、411cで反射することにより、入射光と同一方向に回帰反射させる特性を有する。さらに、回帰形反射板4には、反射面の前面側に図示しない位相差板が設けられており、回帰形反射板4に入射される光は、位相差板を通過して反射することにより、偏光方向が入射された光に対して約90°回転した光として反射される。
LD23から光が投光された場合、投光された光はレンズ24により帯状の平行光線に変換され、偏光フィルタ25を通過して回帰形反射板4に到達する。反射板本体41の各コーナキューブ411に到達した光は、コーナキューブ411の反射面で反射し、図2に示すような光路を辿って入射光と同一方向に反射される。
図3は、本発明の実施の形態に係る光電センサのアンプ部3の構成を模式的に示す斜視図である。図3に示すようにアンプ部3は、幅狭の比較的細長いボックス状のケーシング31を有し、センサ部2の投光手段21及び受光手段22と接続されているヘッドケーブル11及び12が、ケーシング31の一端面で接続している。アンプ部3への電源供給及び出力は、ケーシング31の他端面から延出するケーブル32を通じて行われる。
ケーシング31の細長い矩形の上面31aには、長手方向に横並びに隣接して配置された第1の表示部33及び第2の表示部34が設けられている。第1の表示部33及び第2の表示部34は、上面31aの幅と実質的に同じ幅を有し、第1の表示部33及び第2の表示部34は、上面31aの長手方向寸法の約半分を占める長手方向長さを有している。第1の表示部33及び第2の表示部34は、共に、横並びに隣接して配置された4つのセクションを有し、各セクションは7セグメントLEDで構成されている。すなわち、第1の表示部33及び第2の表示部34は、一体となって8桁の数値、8つの文字又はこれらの組み合わせをデジタル表示することができ、また、必要であれば合計8個の7セグメントLEDを使ってバー表示することができる。また、第1の表示部33及び第2の表示部34で夫々4桁の数値又は4つの文字又はこれらの組み合わせを横並びに表示することができる。第1の表示部33及び第2の表示部34を構成する7セグメントは、これを1色LEDで構成してもよく、また、2色LEDで構成してもよい。また、第1の表示部33と第2の表示部34とを異なる色で表示するようにしてもよい。また、第1の表示部33及び第2の表示部34は、これを一つ又は2つの白黒又はカラー液晶(LCD)で構成してもよい。
ケーシング31の上面31aには、出力切替ボタン35、モードボタン36、スイング式のしきい値調整(上下)スイッチ37、スライド式のch切替スイッチ38、セットキースイッチ39、動作表示灯40が設けられている。なお、ケーシング31の上面31aは、アンプ部3を操作しないときには、図示を省いた片開き式の透明の蓋によって覆うことができるようになっている。
モードボタン36は、押し続けて3秒以上経過した場合(長押し)、第1の表示部33及び第2の表示部34の画面の表示モードを切り替えることができる。表示モードとしては、通常の検出動作中の表示モード(運用モード)と、各種の設定を行うための表示モード(設定モード)とを有している。モードボタン36が3秒経過前に離された場合(短押し)、各表示モードで、第1の表示部33及び第2の表示部34の画面を切り替えることができる。
スイング式のしきい値調整(上下)スイッチ37は、アップ(△)側を押すと閾値を大きくする方向に調整することができ、ダウン(▽)側を押すと閾値を小さくする方向に調整することができる。また、設定モードでは、パラメータの選択に用いることができる。
1台の光電センサに対して、複数の閾値を設定可能であり、スライド式のch切替スイッチ38は、設定対象となる閾値の切替えを行うものである。セットキースイッチ39は、閾値を自動的に設定するのに用いられる。すなわち、検出対象となる物体、例えばガラス基板を物体検出領域に配置していない状態で、セットキースイッチ39を押すことで、受光手段22で受光した光の受光量を取得するタイミング又は期間の指示を出す。取得した受光量に応じて、後述する手順に従って閾値が自動的に設定される。
図4は、本発明の実施の形態に係る光電センサのアンプ部3の構成を示すブロック図である。アンプ部3は、センサ部2のLD23を発光させるためのLD駆動回路301を有し、ヘッドケーブル11を介してセンサ部2と接続されている。また、フォトダイオード26に接続された受光回路302、受光回路302からの出力信号を増幅する増幅部303及び増幅された出力信号をA/D変換するA/D変換部304を有し、ヘッドケーブル12を介してセンサ部2と接続されている。
LD駆動回路301、受光回路302の動作を制御する主制御部305は、ゲートアレイ、CPU等で構成されている。主制御部305には、上述した各種スイッチ又はボタンを含む操作部306からの信号が供給される他、記憶部307との間でデータの授受を行い、主制御部305で処理されたデータは、第1の表示部33及び第2の表示部34へ供給され、生成したオンオフ信号等は外部入出力部308を介して外部へ送信される。
アンプ部3は、受光回路302で取得した受光量を閾値と比較し、その大小によって物体検出領域内での物体の有無を検出し、その結果を示すオンオフ信号等を出力する。受光回路302が取得した現在の受光量と、物体の有無を検出するために設定されている閾値とは、第1の表示部33、第2の表示部34に横並びの状態で同時に表示することも可能である。現在の受光量を左側の第1の表示部33に表示するか、右側の第2の表示部34に表示するかは任意である。
さて、センサ部2と回帰形反射板4との間の物体検出領域に検出対象となる物体が存在しない場合の方が、存在する場合よりもフォトダイオード26からの受光量が大きい。さらに、受光量は振動、温度特性等により頻繁に変動するため、ユーザは物体検出領域に透明体たる例えばガラス基板がない状態で受光量が閾値を超えて小さくなっていないこと、受光量と閾値の間の差分、すなわち受光量が変動しても問題とならない余裕がどの程度であるか等を確認する必要があった。しかし、物体が存在しない場合の受光量が大きいので、振動する数値の範囲を限定することは難しく、また余裕を算出する場合に表示されている表示値と閾値との間で差を求める等の作業をユーザが行うことは困難であった。
そこで、本実施の形態では、表示する受光量を物体検出領域に物体が位置することにより遮光された受光量として表示させることにより、センサ部2と回帰形反射板4との間の物体検出領域に検出対象となる物体が存在しない場合には、安定した表示状態をユーザに提供している。図5は、本発明の実施の形態に係る光電センサのアンプ部3の主制御部305の処理手順を示すフローチャートである。
アンプ部3の主制御部305は、センサ部2の受光手段22で受光した光の受光量を取得するタイミング又は期間の指示情報を受け付ける(ステップS501)。具体的には、検出対象となる物体、例えばガラス基板を物体検出領域に配置していない状態で、ユーザがセットキースイッチ39を押すことで、受光手段22で受光した光の受光量を取得する指示情報が主制御部305へ送信される。このとき、セットキースイッチ39を押した時点又は押している期間を「タイミング又は期間の指示情報」とすることもできるし、セットキースイッチ39を押した時点から所定の期間、又は次にセットキースイッチ39を押す時点までの期間を「期間の指示情報」とすることができる。
主制御部305は、受け付けた指示情報に対応したタイミング又は期間に取得した受光量に基づいて、表示基準量を決定する(ステップS502)。「表示基準量」とは、受光量を表示するために基準となる量であり、例えば指示情報で指定された所定の期間内の受光量の移動平均値等の統計的算出値である。また、主制御部305は、受け付けた指示情報に対応したタイミング又は期間に取得した受光量に基づいて、指示情報で指定された所定の期間内の受光量を代表する代表受光量を移動平均値等の統計的演算により決定し、この代表受光量に基づいて「表示基準量」を算出してもよい。
また、算出された統計的算出値又は代表受光量を所定量だけ下方にオフセットして表示基準量とすることが好ましい。振動(外乱)により、物体検出領域に物体が存在しない場合の受光量が多少変動したときでも、表示用受光量を確実に0(ゼロ)表示できるようにするためである。
主制御部305は、ステップS501で受け付けた指示情報に対応したタイミング又は期間に取得した受光量に基づいて、物体検出の有無を判断するための閾値を、受光量よりも小さな値として算出する(ステップS503)。「閾値」とは、透過型又は回帰反射型の光電センサの場合は、受光量が下回った場合に物体の存在を検出し、反射型の光電センサの場合は受光量が上回った場合に物体の存在を検出するための判断基準値である。センサ部2と回帰形反射板4との間の物体検出領域に検出対象となる物体が存在しない場合の受光量より小さな値として設定することにより、受光量が大きく変動した場合であっても物体検出の精度に影響が出ることはない。
図6は、受光量と閾値との関係を示す模式図である。図6において、センサ部2と回帰形反射板4との間の物体検出領域に検出対象となる物体が存在しない場合の受光量61、及び存在する場合の受光量62は、共に振動、温度変動等により経時的に大きく変動している。そして、受光量61の方が受光量62よりも大きい。したがって、閾値は受光量61の変動幅の最小値と、受光量62の変動幅の最大値との間の区間63にて設定することが好ましい。
具体的には、統計的算出値である代表受光量、表示基準量等から所定の値を減じて閾値を設定する。所定の値は、検出対象となる物体に関する過去の設定閾値から求めた統計値や予め定められた固定値を用いれば良い。また、代表受光量、表示基準量等に対して所定の比率を乗じて閾値を算出しても良い。所定の比率についても、検出対象となる物体に関する過去の設定閾値から求めた統計値、予め定められた固定値等を用いれば良い。
閾値が設定された状態で、主制御部305は、センサ部2の受光手段22で受光した光の受光量を取得する(ステップS504)。主制御部305は、取得した受光量が、決定された表示基準量以上であるか否かを判断する(ステップS505)。
主制御部305が、取得した受光量が、決定された表示基準量以上であると判断した場合(ステップS505:YES)、主制御部305は、表示用受光量として0(ゼロ)を設定する(ステップS506)。主制御部305が、取得した受光量が、決定された表示基準量より小さいと判断した場合(ステップS505:NO)、主制御部305は、受光量が大きく(小さく)なるときに小さく(大きく)なる表示用受光量に変換する(ステップS507)。
主制御部305は、設定又は変換された表示用受光量を、受光量の代わりに表示する(ステップS508)。表示用受光量を左側の第1の表示部33に表示するか、右側の第2の表示部34に表示するかは任意である。
このように、表示用受光量に変換して表示することにより、物体検出領域に物体が位置することにより遮光された受光量を表示させることができる。したがって、センサ部2と回帰形反射板4との間の物体検出領域に検出対象となる物体が存在しない場合には、表示用受光量を0(ゼロ)表示として一定値を表示することができ、ユーザにとっては物体を検出しないときに0(ゼロ)表示され、検出したときに表示用受光量が増大することから、感覚的に自然であり、光電センサが正常に動作しているか否かを容易に確認することができる。
また、物体が物体検出領域に存在しないと判断された時点での受光量を基調として、表示用受光量を補償することで、物体が物体検出領域に存在しない場合の表示用受光量はより安定して0(ゼロ)表示することができる。すなわち、主制御部305は、物体が物体検出領域に存在するか否かを判断し、存在しないと判断された場合の受光量と、代表受光量との変動分を表示用受光量に加減算する。また、表示用受光量を乗除算することにより、当該変動分を補償しても良い。物体が物体検出領域に存在するか否かに関する判断は、一定期間一定範囲の受光量を継続して受光しているか否かで判断することができるが、特にこれに限定されるものではない。これにより、物体が物体検出領域に存在しない場合には、存在しない場合として確実に0(ゼロ)表示することができ、受光量が経時的に大きく変動した場合であっても情報として不必要な表示のちらつきを抑えることができる。
さらに、物体が物体検出領域に存在しないと判断された時点での受光量を基調として、閾値も補償しても良い。閾値も補償することにより、物体検出の有無の判断精度は、補償する前の状態と同様の精度を維持することができる。すなわち、主制御部305は、物体が物体検出領域に存在するか否かを判断し、存在しないと判断された場合の受光量と、代表受光量との変動分に基づいて閾値も加減算あるいは変動分に対応した比率で乗除算することにより、表示基準量に対する閾値の比率を略一定に維持することができる。
なお、表示用受光量を、表示基準量を基準として求めても良い。すなわち、表示基準量と、受光手段22で受光する受光量との差又は比率に基づいて、受光量を表示用受光量に変換する。このようにすることで、検出対象の物体によって遮光された光量を表示用受光量としてより安定した値として表示することができる。
また、表示用受光量と表示用閾値とを並べて表示させることも、ユーザにとっては物体を検出したか否かを目視確認することができる点で有用である。この場合、表示基準量に基づいて、閾値も表示用受光量に対応した表示用閾値に変換し、表示用受光量が表示されていない右側の第2の表示部34又は左側の第1の表示部33に表示する。ここで、表示用受光量が表示用閾値を超えた時に、アンプ部3が物体検出領域内に物体が存在することを示すオンオフ信号等を出力するように、表示用受光量及び表示用閾値への変換が行われることはいうまでもない。つまり、受光量から表示用受光量への変換方法と、閾値から表示用閾値への変換方法とは密接な関連があり、受光量から表示用受光量への変換方法を変更した場合、それに応じて閾値から表示用閾値への変換方法も変更される。
図7は、第1の表示部33及び第2の表示部34の表示を示す例示図である。図7の例では、第1の表示部33に表示用閾値を、第2の表示部34に表示用受光量を、それぞれ表示している。表示用閾値は、閾値とは異なり、表示基準量から閾値までの差分として表示されており、結果としてどのレベルまで光が遮られた場合に物体の存在を検出するかを示す境界値となっている。
表示用閾値を表示する場合、物体が物体検出領域に存在しないと判断された時点での表示用受光量と同様、一定値を表示することが好ましい。しかしながら、物体が物体検出領域に存在しないと判断された時点での受光量が代表受光量から変動した場合、受光量の表示用受光量からの変動分に基づいて補償すると、受光量から表示用受光量への変換方法が変更されるため、閾値が変動しない場合であっても表示用閾値が変動してしまう。さらに、閾値を受光量の表示用受光量からの変動分に基づいて補正する場合も、それに応じて表示用閾値が変動してしまう。閾値が変動表示された場合には、ユーザは、その閾値が適正か否かを見極めることが難しく継続して該光電センサを使用することに対して不安になり、信頼感を失するおそれがあるからである。したがって、受光量を補償する場合に、主制御部305は、閾値を受光量の補償に応じて補正することができる。これにより、主制御部305は、常に表示用閾値が一定値を示すように表示させることができ、少なくとも第1の表示部33に表示されている表示用閾値は初期値のまま一定表示させておくことができる。この結果、光電センサ1は、閾値の補正により環境変動に対して安定的な検出ができる、一方、表示用受光量の補償と表示用閾値を一定に表示させることにより、視認性の向上、特に、ユーザにとって閾値が適正か否かを見極めや検出状態の把握が容易になる。
もちろん、表示基準量は、複数のタイミング又は期間で決定することができるので、表示基準量として最初に決定された初期表示基準量を、表示用閾値として初期表示基準量に基づいて変換された表示用閾値を、それぞれ表示しておいても良い。また、受光量と閾値とを同時に表示する表示モードと、表示用受光量と表示用閾値とを同時に切り換えられる表示モードとを任意に切り換えられるようにしても良い。
また、閾値が、受け付けた指示情報に対応したタイミング又は期間に取得した受光量のうち最小の受光量より大きい場合には、誤検出又は物体検出を失する可能性が高いことから、現状の閾値設定が適切ではない旨をユーザに警告表示により知らせる必要がある。図8は、警告表示する場合のアンプ部3の主制御部305の処理手順を示すフローチャートである。
主制御部305は、受け付けた指示情報に対応したタイミング又は期間に取得した受光量のうち、最小の受光量を抽出する(ステップS801)。主制御部305は、算出した閾値と同値又は所定値を加算した基準受光量を算出し(ステップS802)、抽出した最小の受光量が、算出した基準受光量より小さいか否かを判断する(ステップS803)。基準受光量を閾値と同値又は所定値を加算した値として算出しているのは、物体検出のための判断の余裕範囲を設けておくためである。
主制御部305が、抽出した最小の受光量が、算出した基準受光量以上であると判断した場合(ステップS803:NO)、主制御部305は警告表示をせず、主制御部305が、抽出した最小の受光量が、算出した基準受光量より小さいと判断した場合(ステップS803:YES)、主制御部305は、第1の表示部33及び/又は第2の表示部34に、警告表示を表示する(ステップS804)。
このように警告表示することにより、現状の閾値設定が適切ではない旨をユーザに知らせることが可能となる。
図9および図10は、本発明の実施の形態に係る光電センサにおいて、受光量および閾値から表示受光量および表示閾値の算出を説明するための経時グラフである。図9(a)は、セットキースイッチ39の押下の状態変化を示すグラフであり、ONはセットキースイッチ39が押下される時(ティーチング時)、OFFは押下されない時を示している。図9(b)は、受光量Lvおよび受光量Lvの経時的な変化に応じて補正された閾値Thを示すグラフである。
図9(b)の場合、まず、セットキースイッチ39が押下される期間に得られた受光量Lvの統計的算出値(例えば平均値)である400が代表受光量Prとして決定される。続いて、受光量変動が考慮された代表受光量Prよりも小さい値が表示基準量をとして決定される。例えば、図9(b)の場合、代表受光量Prよりも5小さい395が表示基準量をとして決定される。さらに、表示基準量よりも小さい値が物体の有無を判断するための閾値Thとして算出される。例えば、図9(b)の場合、代表受光量の90%に相当する値である360が、閾値Thとして算出される。
また、図9(b)のように、受光量Lvが経時的に変動する場合、物体非検知状態と判断された場合の受光量Lvに基づいて閾値Thが補正される。より好ましくは、閾値は、代表受光量から閾値を算出した方法と同様に、物体非検知状態と判断された場合の受光量Lvの統計的算出値(例えば移動平均値)の90%に相当する値に補正される。
図10(a)は、受光量Lvおよび補正された閾値Th、並びに、代表受光量からの変動分が補償された受光量Lvcおよび補償された閾値Thcを示すグラフである。図10(a)の場合は、物体非検知状態と判断された場合の受光量Lvの統計的算出値(例えば移動平均値)に対する代表受光量Pr(この場合、400)からの変動比が求められる。この変動比の逆数を受光量Lvおよび閾値Thに乗算して、補償された受光量Lvcおよび補償された閾値Thcがそれぞれ算出される。この結果、T1において代表受光量よりも受光量Lv(この場合、約560)が大きくなり、また、T2代表受光量よりも受光量Lv(この場合、約280)が小さくなったとしても、補償された受光量Lvc(この場合、400)および補償された閾値Thc(この場合、390)はセットキースイッチ39が押下される期間の状態とほぼ同じ状態に補償(スケーリング)される。
図10(b)は、表示受光量Lvdおよび表示閾値Thdを示すグラフである。図10(b)の表示受光量Lvdは、補償された受光量Lvcから表示基準量(この場合、395)が減算され、その減算結果が符号反転されたものであり、符号反転後、負の数となる場合には、値が0(ゼロ)に切り上げられる。図10(b)の表示閾値Thdは、補償された閾値Thcから表示基準量(この場合、395)が減算され、その減算結果が符号反転されたものである。
これにより、一回のティーチング動作で、適切な閾値設定と適切な表示を行うため、安定的な検出を行えると共に、不要な変動情報を表示しないという、検出性能と良好な視認性を兼ね備えた光電センサの提供が可能となる。
なお、補償された受光量Lvcおよび補償された閾値Thcを算出せず、表示基準量と物体非検知状態と判断された場合の受光量Lvとに基づいて表示受光量Lvdが算出されても良く、また、表示閾値Thdも表示基準量と物体非検知状態と判断された場合の受光量Lvとに基づいて算出されても良い。
なお、上述した実施の形態においては、投光面と受光面とが別々に設けられた光電センサの場合について説明したが、これに限らず、例えば、偏光ビームスプリッタを用いた同軸光学系を採用しても良い。また、受光量の安定性を目的として投光する光の形状を帯状としたが、これに限らず、例えば、円形の形状の光を投射しても良い。さらに、光電センサとして、いわゆる回帰型光電センサを用いてガラス基板等の透明体を検出する場合について説明しているが、回帰型光電センサに限定されるものではなく、例えば透過型の光電センサ、背景反射の大きな場合での反射型の光電センサ等を用いても、同様の効果が期待できる。
また、光電センサ部1が、投光手段21及び受光手段22を備えたセンサ部2と、アンプ部3とで構成されている場合について説明しているが、特にこれに限定されるものではなく、センサ部2とアンプ部3とが一体化された光電センサであっても良いことは言うまでもない。