JP2009151996A - 内燃機関用スパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】軸線方向にほぼ直交する方向に火花放電を行うスパークプラグにおいて、着火性の飛躍的な向上を図るとともに、混合気の流入方向による影響を受けにくくする。
【解決手段】接地電極27の先端面27sに、軸線に向けて突出する貴金属チップ32が溶接される。接地電極27は基本的には断面円形状をなしており、先端面27sに臨む先端部分背面には平面状部分51が形成されている。平面状部分51の接地電極27の長手方向に沿った距離をA(mm)とし、平面状部分51の幅をB(mm)としたとき、A×B≧0.2(mm2)、B≧0.2(mm)を満たしている。従って、例えば接地電極27の斜め背面側から混合気が流入してきた場合においても、接地電極27の背面のうち平面状部分51に当たった混合気は、内側に廻り込むことなく滑るようにして流れ、所望とする発火ポイントの方に向けて流れる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、内燃機関に使用されるスパークプラグに関する。
自動車エンジン等の内燃機関用のスパークプラグは、例えば軸線方向に延びる中心電極と、その外側に設けられた絶縁体と、当該絶縁体の外側に設けられた筒状の主体金具と、基端部が前記主体金具の先端面に接合された接地電極とを備える。一般に、接地電極は、断面略矩形状をなし、その先端部内側面が前記中心電極の先端部と対向するように曲げ返されて配置され、これにより中心電極の先端部及び接地電極の先端部間に火花放電間隙が形成される。また近年では、中心電極の先端部や、接地電極の先端部に、それぞれ貴金属合金よりなるチップ(貴金属チップ)を接合することで、耐火花消耗性の向上が図られているものもある。
ところで、前記主体金具の外周面には、ねじ部が形成されている。スパークプラグは、当該ねじ部において、エンジンのシリンダヘッドに形成された雌ねじを備えるプラグホールに螺着されることで、取付けられる。しかし、スパークプラグの取付状態において、混合気が接地電極の背面に当たるような位置関係になってしまった場合、接地電極が混合気の火花放電間隙への流入を阻害するおそれがある。その結果、着火性にバラツキが生じてしまうおそれがある。
これに対し、2以上の接地電極を有するタイプにおいて、各接地電極を、断面が略円形状(つまり略円柱状)とするという技術がある(例えば、特許文献1参照)。このように断面を略円形状とすることで、混合気が接地電極の背面に当たるような位置関係になった場合であっても、混合気がその内側に廻り込んで、火花放電間隙に混合気が到達しやすいものとなる。
特開平11−121142号公報
ところで、昨今では、接地電極側の貴金属チップを、軸線に向けて突出するよう溶接し、中心電極の先端部外周(中心電極用貴金属チップ外周)との間で、前記軸線方向と直交する方向、いわば横方向に火花放電させることで、着火性や火花伝播性の向上を図ることが考えられている。
しかしながら、このように横方向に火花放電させるタイプにおいて、上記特許文献1に記載された技術を適用し、接地電極の断面を円形状にしようとした場合、次述する不具合が生じることが懸念される。すなわち、図11(b)に示すように、断面円形状の接地電極81の斜め背面側から混合気が流入してきたような場合(同図矢印参照)には、接地電極81の背面に当たった混合気が接地電極81の内側に廻り込んでしまい、火花放電間隙の主たる予定発火部分(例えば図示するポイントz)に流れないといった事態が起こってしまうことがある。そして、この場合には、着火性能が低下してしまうこととなり、接地電極の断面を円形状にしたことが却って悪影響を及ぼすこととなってしまう。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸線方向にほぼ直交する方向に火花放電を行うタイプの内燃機関用スパークプラグにおいて、着火性の飛躍的な向上を図るとともに、混合気の流入方向による影響を受けにくくすることのできる内燃機関用スパークプラグを提供することにある。
以下、上記課題等を解決するのに適した各構成を項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
構成1.本構成のスパークプラグは、
軸線方向に延びる棒状の中心電極と、
前記中心電極の外周に設けられた略円筒状の絶縁体と、
前記絶縁体の外周に設けられた筒状の主体金具と、
基端が前記主体金具の先端面に接合され、先端が前記軸線に向けて曲げられて配置された接地電極と、
前記接地電極の先端から前記軸線に向けて突出するように設けられ、前記中心電極の先端部外周面との間に火花放電間隙を形成する貴金属チップと
備えた内燃機関用スパークプラグであって、
前記接地電極は、前記中心電極側とは反対側の背面に凸状の湾曲面を有しているとともに、自身の先端面に臨む先端部分背面には、前記先端面とのなす角度が70゜以上100゜以下となるよう平面状部分を有していることを特徴とする。
尚、「中心電極側とは反対側の背面に凸状の湾曲面を有している」とあるのは、接地電極を背面側から見たとき、当該視認される部位が湾曲面になっていることを意味する。従って、例えば、断面矩形状の接地電極の背面側両側の角部を湾曲状に面取りしたような場合には、両角部間の面取りされていない面は依然として平面であり、凸状の湾曲面とはいえない。
上記構成1によれば、貴金属チップが接地電極から軸線に向けて突出するように設けられており、貴金属チップと中心電極の先端部外周面との間で火花放電間隙が形成される。このため、着火性や火花伝播性の向上を図ることができる。
また、接地電極は、中心電極側とは反対側の背面に凸状の湾曲面を有していることから、混合気が接地電極の背面に直接当たるような位置関係になった場合であっても、混合気が接地電極の内側に廻り込んで、火花放電間隙に混合気が到達しやすい。そのため、上述した着火性や火花伝播性の一層の向上を図ることができる。
その上、構成1では、自身の先端面に臨む先端部分背面には、平面状部分を有している。従って、接地電極の斜め背面側から混合気が流入してきた場合においても、接地電極の背面のうち前記平面状部分に当たった混合気は、内側に廻り込むことなく平面状部分を滑るようにして流れ、火花放電間隙の方に向けて流れる。その結果、着火性や火花伝播性の一層の向上を図る上で、混合気の流入方向による影響を受けにくくすることができる。
尚、「平面状部分」とあるのは、厳密な意味での平面形状に限られるものではなく、火花放電間隙に混合気を案内させうる形状であれば、若干の凹形状をなしていてもよいという趣旨である。また、種々の混合気の流入角度を勘案すると、火花放電間隙に混合気を安定して案内させるべく、平面状部分と先端面とのなす角度は70゜以上100゜以下である必要があり、例えば、平面状部分と先端面とが略直交しているのが望ましい。
また、上記平面状部分は、構成2のように所定の大きさを有しているのが望ましい。
構成2.本構成のスパークプラグは、構成1に記載の内燃機関用スパークプラグにおいて、
前記平面状部分の前記接地電極の長手方向に沿った距離をA(mm)とし、
前記平面状部分の幅をB(mm)としたとき、
A×B≧0.2(mm2)、
B≧0.2(mm)
を満たすことを特徴とする。
構成2によれば、平面状部分の幅であるBが、0.2(mm)以上であり、しかも平面状部分の面積に相当するA×Bが0.2(mm2)以上である。このため、接地電極の斜め背面側から混合気が流入してきた場合に、前記平面状部分に当たった混合気は、より確実に火花放電間隙の方に向けて流れ、着火性の低下をより確実に防止できる。一方で、A×B<0.2(mm2)、或いは、B<0.2(mm)の場合には、着火性の低下を招いてしまうおそれがある。
また、着火性をより確実に確保し、貴金属チップの耐久性を確保するという観点からは、次の構成3とするのが望ましい。
構成3.本構成のスパークプラグは、構成1又は2に記載の内燃機関用スパークプラグにおいて、
前記火花放電間隙の最短距離をC(mm)とし、
前記火花放電間隙のうち前記貴金属チップの前記軸線方向先端及び前記中心電極の前記軸線方向先端間の中点と、前記接地電極の先端部分背面との間の前記軸線方向における距離をD(mm)とし、
前記中点と、前記接地電極の先端面との間の前記軸線に直交する方向における距離をE(mm)とし、
前記貴金属チップの前記先端面からの突出長をF(mm)としたとき、
E≧2×D [但し、0.3(mm)≦D≦C/4+0.8(mm)の場合]、
E≧0.6(mm) [但し、D<0.3(mm)の場合]、
F≦1.6(mm)
を満たすことを特徴とする。
上記構成3によれば、貴金属チップの先端面からの突出長であるFが、1.6(mm)以下であるため、突出長が長すぎることに起因する熱引きの悪化を防止できる。
また、D<0.3(mm)の場合においては、E≧0.6(mm)とすることで、平面状部分を有していることの効果がより確実に奏される。
一方で、D≧0.3(mm)の場合には、E≧2×Dとすることで、平面状部分を有していることの効果がより確実に奏される。但し、この場合のDの上限は、C/4+0.8(mm)である(F=E−C/2であることから、2D−C/2≦1.6(mm)と表すことができるからである)。
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、スパークプラグ1を示す一部破断正面図である。なお、図1では、スパークプラグ1の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ1の先端側、上側をスパークプラグ1の後端側として説明する。
スパークプラグ1は、長尺状をなす絶縁体としての絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
絶縁碍子2には、軸線CL1に沿って軸孔4が貫通形成されている。そして、軸孔4の先端部側には中心電極5が挿入、固定され、後端部側には端子電極6が挿入、固定されている。軸孔4内における中心電極5と端子電極6との間には、抵抗体7が配置されており、この抵抗体7の両端部は導電性のガラスシール層8,9を介して、中心電極5と端子電極6とにそれぞれ電気的に接続されている。
中心電極5は、絶縁碍子2の先端から突出し、端子電極6は絶縁碍子2の後端から突出した状態でそれぞれ固定されている。また、中心電極5には、その先端に、中心電極5よりも小径でイリジウムを主成分とする貴金属チップ(中心電極用貴金属チップ)31が溶接により接合されている。
一方、絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、軸線CL1方向略中央部において径方向外向きに突出形成されたフランジ状の大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれより細径に形成され、内燃機関(エンジン)の燃焼室に晒される脚長部13とを備えている。絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、脚長部13を含む先端側は、筒状に形成された主体金具3の内部に収容されている。そして、脚長部13と中胴部12との連接部には段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面にはスパークプラグ1をエンジンのシリンダヘッドに取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。ねじ部15の後端側の外周面には座部16が形成され、ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3をシリンダヘッドに取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられるとともに、後端部において絶縁碍子2を保持するための加締め部20が設けられている。
また、主体金具3の内周面には、絶縁碍子2を係止するための段部21が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3の後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部21に係止された状態で、主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって固定される。なお、絶縁碍子2及び主体金具3双方の段部14,21間には、円環状の板パッキン22が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、燃焼室内に晒される絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料空気が外部に漏れないようにしている。
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24間にはタルク(滑石)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン22、リング部材23,24及びタルク25を介して絶縁碍子2を保持している。
また、主体金具3の先端面26には、接地電極27が接合されている。すなわち、接地電極27は、前記主体金具3の先端面26に対しその基端部が溶接されるとともに、先端側が前記軸線CL1側に曲げ返されて、その先端面が中心電極5の先端部外周面(本実施形態では中心電極用貴金属チップ31の外周面)とほぼ対向するように配置されている。また、本実施形態では、当該接地電極27には、前記貴金属チップ31の外周面に対向するようにして接地電極27よりも小径の貴金属チップ32が設けられている。より詳しくは、当該貴金属チップ32は、接地電極27の先端面27sに対し、抵抗溶接で接合されているとともに、当該先端面27sから軸線CL1に向けて突出している(図2参照)。そして、これら貴金属チップ31,32間の隙間が火花放電間隙33となっている。つまり、本実施形態では、軸線CL1方向と直交する方向(図の横方向)にほぼ沿って火花放電が行われるようになっている。
尚、図2に示すように、中心電極5は、銅又は銅合金からなる内層5Aと、ニッケル(Ni)合金からなる外層5Bとにより構成されている。中心電極5は、その先端側が縮径されるとともに、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端面が平坦に形成されている。ここに円柱状をなす上記貴金属チップ31を重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に沿ってレーザ溶接、或いは、電子ビーム溶接等を施すことにより貴金属チップ31と中心電極5とが溶け合い、溶融部41が形成される。すなわち、貴金属チップ31は、中心電極5先端に対し、溶融部41で固着されることで接合されている。
一方、接地電極27は、内層27A及び外層27Bからなる2層構造となっている。本実施形態における外層27Bは、インコネル600やインコネル601(いずれも登録商標)等のニッケル合金で構成されている。これに対し、内層27Aは、前記ニッケル合金よりも良熱伝導性金属である銅合金或いは純銅で構成されている。当該内層27Aの存在によって、熱引き性の向上が図られている。
また、上記中心電極5側の貴金属チップ31がイリジウムを主成分としている点については言及したが、接地電極27側の貴金属チップ32は、例えば白金を主成分とし、20質量%のロジウムを含有する貴金属合金により構成されている。但し、これらの素材構成はあくまでも例示であって、上記記載に何ら限定されるものではない。これら貴金属チップ31,32は、例えば次のようにして製造される。まず、主成分をイリジウム、或いは白金とするインゴットを用意し、上述した所定の組成となるよう各合金成分を配合・溶融し、当該溶融合金に関し再度インゴットを形成し、その後、当該インゴットについて熱間鍛造、熱間圧延(溝ロール圧延)を施す。その後、線引き加工を施すことで、棒状素材を得た後、それを所定長に切断することで、それぞれ円柱状の貴金属チップ31,32が得られる。
さて、貴金属チップ32が、接地電極27の軸線CL1側の先端面27sから軸線CL1に向けて突出している点については上述したが、本実施形態では、接地電極27等に特徴を有しており、以下には、当該特徴部分についてより詳細に説明する。
図3に示すように、本実施形態における接地電極27は、基本的には断面円形状をなしている。また、これとともに、接地電極27のうち、先端面27sに臨む先端部分背面には、当該先端面27sとのなす角度が70゜以上100゜以下となるよう平面状部分51が形成されている。本実施形態における平面状部分51は、接地電極27の先端部分の背面側の一部が切削加工等で切り欠かれることで形成されているが、例えばプレス加工等で形成されていてもよい。
また、図4(a),(b)に示すように、本実施形態では、平面状部分51の接地電極27の長手方向に沿った距離をA(mm)とし、平面状部分51の幅をB(mm)としたとき、
A×B≧0.2(mm2)、
B≧0.2(mm)
を満たしている。
さらに、図5に示すように、本実施形態では、火花放電間隙33の最短距離をC(mm)とし、火花放電間隙33のうち貴金属チップ32の軸線CL1方向先端及び中心電極5の軸線CL1方向先端間の中点aと、接地電極27の先端部分背面との間の軸線CL1方向における距離をD(mm)とし、前記中点aと、接地電極27の先端面27sとの間の軸線CL1に直交する方向における距離をE(mm)とし、貴金属チップ32の先端面27sからの突出長をF(mm)としたとき、
E≧2×D [但し、0.3(mm)≦D≦C/4+0.8(mm)の場合]、
E≧0.6(mm) [但し、D<0.3(mm)の場合]、
F≦1.6(mm)
を満たしている。
次に、上記のように構成されてなるスパークプラグ1の製造方法について説明する。まず、主体金具3を予め加工しておく。すなわち、円柱状に形成された金属素材(例えばS15CやS25Cといった鉄系素材やステンレス素材)を冷間鍛造加工により貫通孔を形成し、概形を製造する。その後、切削加工を施すことで外形を整え、主体金具中間体を得る。
一方で、断面円形状の接地電極27の中間体を製造する。すなわち、接地電極27の中間体は、未だ屈曲前の直棒状のものである。当該屈曲前の接地電極27は、例えば次のようにして得られる。
すなわち、内層27Aを構成する金属材料よりなる芯材と、外層27Bを構成する金属材料よりなる有底筒状体とを用意する(いずれも図示略)。そして、有底筒状体の凹部に対し、芯材を嵌入することにより、カップ材を形成する。次に、当該2層構造をもつカップ材に関し、冷間にて細化加工を施す。冷間での細化加工としては、例えば、ダイス等を用いた線引き加工、雌型等を用いた押出成形加工等が挙げられる。その後、スウェージング加工等が施されることにより、細径化された棒状体が形成される。
続いて、前記主体金具中間体の先端面に、屈曲前、チップ接合前の接地電極27(棒状体)を抵抗溶接により接合する。尚、抵抗溶接に際してはいわゆる「ダレ」が生じるので、その「ダレ」を除去する作業が行われる。また、本例では、スウェージング加工、切削加工等を施した後、屈曲前の接地電極27を抵抗溶接により接合することとしているが、細化加工後、棒状体を主体金具中間体に接合した後、スウェージング加工を行い、その後、切削を行うこととしてもよい。この場合、スウェージングに際しては、主体金具中間体を保持した状態で、その先端面に接合された棒状体をその先端側からスウェージャーの加工部(スウェージングダイス)に導入することができる。従って、スウェージングに際し保持するための部位を確保するために、棒状体をわざわざ長めに設定したりすることが不要となる。
その後、主体金具中間体の所定部位に、ねじ部15が転造によって形成される。これにより、屈曲前の接地電極27の溶接された主体金具3が得られる。主体金具3等には、亜鉛メッキ或いはニッケルメッキが施される。尚、耐食性向上を図るべく、その表面に、さらにクロメート処理が施されることとしてもよい。
また、前記接地電極27の先端部分に関し、切削又はプレスといった加工を行うことで前述の平面状部分51を形成する。当該切削又はプレス加工は、ねじ部15の転造の後段階に行われてもよいし、前段階に行われてもよい。ねじ部15の転造の前段階に行われる場合には、主体金具中間体への溶接の前段階に行われてもよいし、後段階に行われてもよい。
一方で、上述のように、円柱状の貴金属チップ32を形成しておき、当該貴金属チップ32を接地電極27の先端面27sに対し、抵抗溶接により接合する。このとき、接地電極27の先端面27sに対し貴金属チップ32を押し当てながら抵抗溶接を施して、前記先端面27sに対する貴金属チップ32の突出長たるF(mm)が1.6以下を満たすようにする。尚、溶接をより確実なものとするべく、当該溶接に先だって溶接部位のメッキ除去が行われたり、或いは、メッキ工程に際し溶接予定部位にマスキングが施されたりする。また、当該貴金属チップ32の溶接を、後述する組付けの後(曲げ加工の前)に行うこととしてもよい。
一方、前記主体金具3とは別に、絶縁碍子2を成形加工しておく。例えば、アルミナを主体としバインダ等を含む原料粉末を用い、成形用素地造粒物を調製し、これを用いてラバープレス成形を行うことで、筒状の成形体が得られる。得られた成形体に対し、研削加工が施され整形される。そして、整形されたものが焼成炉へ投入され焼成されることで、絶縁碍子2が得られる。
また、前記主体金具3、絶縁碍子2とは別に、中心電極5を製造しておく。すなわち、Ni系合金が鍛造加工され、その中央部に放熱性向上を図るべく銅芯が設けられる。そして、その先端部には、上述した貴金属チップ31が、レーザ溶接等により接合される。
そして、上記のようにして得られた貴金属チップ31が接合された中心電極5と、端子電極6とが、やはり図示しないガラスシールによって前記絶縁碍子2の軸孔4へ封着固定される。ガラスシールとしては、一般的にホウ珪酸ガラスと金属粉末とが混合されて調製されたものが用いられる。そして先ず中心電極5を絶縁碍子2の軸孔4へ挿通した状態とし、前記調製されたシール材が絶縁碍子2の軸孔4に注入された後、後方から前記端子電極6が押圧された状態とした上で、焼成炉内にて焼き固められる。尚、このとき、絶縁碍子2の後端側の胴部表面には釉薬層が同時に焼成されることとしてもよいし、事前に釉薬層が形成されることとしてもよい。
その後、上記のようにそれぞれ作製された中心電極5及び端子電極6を備える絶縁碍子2と、直棒状の接地電極27を備える主体金具3とが組付けられる。より詳しくは、比較的薄肉に形成された主体金具3の後端部に対し、冷間加締めや熱間加締めが行われることで、周方向から絶縁碍子2の一部が主体金具3に取り囲まれるようにして保持される。
そして、最後に、直棒状の接地電極27を曲げ返すことで、中心電極5(の貴金属チップ31)及び接地電極27(の貴金属チップ32)間の前記火花放電間隙33を調整する加工が実施される。
このように一連の工程を経ることで、上述した構成を有するスパークプラグ1が製造される。
以上詳述したように、本実施形態によれば、接地電極27は、その先端面27sに臨む先端部分背面に、平面状部分51を有している。従って、例えば図11(a)に示すように、接地電極27の斜め背面側から混合気が流入してきた場合(同図矢印参照)においても、接地電極27の背面のうち前記平面状部分51に当たった混合気は、内側に廻り込むことなく平面状部分51を滑るようにして流れ、所望とする発火ポイントの方(例えば前記中点a)に向けて流れる。その結果、混合気の流入方向による影響を受けにくくすることができる。特に、本実施形態では、前記平面状部分51は十分な幅及び面積を具備しているとともに、上述した寸法関係を満たしていることから、着火性の一層の向上を図ることができるとともに、貴金属チップ32の耐久性を確保することができる。
ここで、上記効果を確認するべく、種々のサンプルを作製し、種々の評価を試みた。その実験結果を以下に記す。
まず第1に、本発明に相当する実施例サンプル[A=1.0(mm)、B=0.4(mm)の平面状部分51を有し直径1.6mmの断面円形状の接地電極を具備するスパークプラグサンプル]と、従来技術に相当する比較例サンプル[直径1.6mmの断面円形状の接地電極を具備するスパークプラグサンプル]とを用意し、燃料噴霧角度を種々変更させた上で机上での着火性評価試験を行った。但し、その他の寸法については、実施例サンプルについては、C=0.9(mm)、D=0.425(mm)、E=1.45(mm)とし、比較例サンプルについては、C=0.9(mm)、D=0.45(mm)、E=1.45(mm)とした。また、机上での着火性評価試験に際しては、加圧チャンバー(図示略)内において、例えば図6(a),(b),(c)に示すように、燃料を種々の角度で噴霧し、各角度毎の着火の有無を判定した(図6(a)では燃料噴霧角度が−15゜の例を、図6(b)では燃料噴霧角度が0゜の例を、図6(c)では燃料噴霧角度が20゜の例をそれぞれ示す)。当該判定は、加圧チャンバーに取付けた圧力センサの波形に基づいて行うこととした。さらに、使用燃料はガソリンとし、チャンバー内の初期加圧:1MPa、噴射圧:20MPa、空燃比(A/F)=25とした。また着火率は、30回の噴射に対する着火回数により算出することとしている。上記条件下での机上着火性評価試験の結果を図7のグラフに示す。
図7に示すように、断面円形状の接地電極を具備する比較例サンプルに関しては、燃料噴霧角度が−20゜〜10゜の範囲で着火率の低下を招いてしまうことが明らかとなった。これに対し、実施例サンプルは、燃料噴霧角度が−20゜〜10゜の範囲においてもさほどの着火性の低下は認められず、比較例サンプルの着火率を大きく上回るものとなった。当該結果より、平面状部分51を設けることで、燃料噴霧角度が−20゜〜10゜となった場合における着火性の飛躍的な向上を図ることができるといえる。
次に、上記机上着火性評価試験において比較例サンプルに対する優位性が最も顕著であった燃料噴霧角度が−10゜であるときの、平面状部分51のA及びBの値を種々変更した場合における着火率の関係を求めた。その試験結果を図8のグラフに示す。
図8に示すように、平面状部分51の幅であるBの値が0.2(mm)を下回る場合(B=0,B=0.1の場合)には、いくらAの値が大きくても着火率は低いものとなってしまった。このことから、平面状部分51を設けることによる効果をより確実なものとするためには、平面状部分51の幅であるBの値が、少なくとも0.2(mm)以上必要であるといえる。また、平面状部分51の面積であるA×Bの値が、0.2(mm2)を下回る場合にも、着火率は低下してしまった。このことから、平面状部分51を設けることによる効果をより確実なものとするためには、その面積であるA×Bの値が、少なくとも0.2(mm2)以上必要であるといえる。
次に、貴金属チップ32の先端面27sからの突出長をF(mm)とした場合における、Fの値に対するギャップ増加量の関係を評価した。より詳しくは、排気量2000cc、6気筒エンジンを用い、Fの値の異なるスパークプラグサンプルを取付けた上で、5000rpm全負荷にて、100時間運転を継続させたときの、火花放電間隙の増加量(ギャップ増加量)を計測した。その結果を図9に示す。
図9に示すように、先端面27sからの突出長であるFが、1.6(mm)を超える場合には、ギャップ増加量が消耗限界である0.2(mm)を超えてしまい、耐久試験後の貴金属チップの消耗量が著しく増加してしまったことが明らかとなった。これは、突出長、すなわち、貴金属チップ32の長さが長くなるにつれ、熱引きが十分に行われなくなることに起因するものと考えられる。
また次に、上記同様、燃料噴霧角度が−10゜であるときの、前記中点aと接地電極27の先端部分背面との間の軸線CL1方向における距離であるD(mm)と、前記中点aと接地電極27の先端面27sとの間の軸線CL1に直交する方向における距離であるE(mm)とを種々変更した場合における着火率の関係を求めた。その試験結果を図10のグラフに示す。但し、本試験に際して、平面状部分51のAの値を1.0(mm)、Bの値を0.4(mm)とした。
図10に示すように、D<0.3(mm)の場合においては、Eの値が0.6(mm)以上である場合に、着火率が高くなることが明らかとなった。また、D≧0.3(mm)の場合においては、E≧2×Dである場合に、着火率が高くなり、平面上部分51を形成したことによる作用効果がより確実に奏されることが明らかとなった。尚、上記のとおり、先端面27sからの突出長であるFが1.6(mm)以下であることが望ましいことから、F≦1.6(mm)が成り立ち、また、F=E−C/2であることから、2D−C/2≦1.6(mm)が成り立つ。従って、D≦C/4+0.8(mm)であることが望ましい、すなわち、D≧0.3(mm)の場合においては、当該Dの上限はC/4+0.8(mm)であるといえる。
尚、上述した実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
(a)上記実施形態では、断面円形状をなす接地電極27のうち、先端面27sに臨む先端部分背面にのみ、平面状部分51が形成されているが、図12(a)に示すように、先端部分の両側面にも、平坦面部分52,53を形成することとしてもよい。このような構成とすることで、接地電極27の先端部分の延びる方向に対し、斜めに交わる方向から混合気が流入してくる場合でも、火花放電間隙に混合気を安定して案内させることができる。
(b)上記実施形態では、断面円形状の接地電極27を用いることとしているが、背面側のみが湾曲面となっていてもよい。例えば、図12(b)に示すように、内側面が平坦面27fとなっている略かまぼこ型の接地電極27を用いてもよい。また、この場合においても、先端部分背面に平面状部分51を設けるのみならず、先端部分両側面に平坦面部分52,53を形成することとしてもよい。
さらに、図13に示すように、内側面が平坦面27fとなっている略かまぼこ型の接地電極27の前記平坦面27fに対し、その先端面から中心電極に向かって突出するようにして、角柱状の貴金属チップ321を接合することとしてもよい。また、同図に示すように、貴金属チップ321の一部が前記平坦面27fに対し埋没するようなかたちで接合(例えば抵抗溶接)することとしてもよい。
(c)上記実施形態では、貴金属チップ32は、接地電極27に対し、抵抗溶接で接合される場合について具体化されているが、必ずしも抵抗溶接に限定されるものではない。従って、例えばレーザー溶接で接合することとしてもよい。また、貴金属チップ32の一部を接地電極27に埋設させることとしてもよい。
(d)上記実施形態では、1本の接地電極27が設けられたスパークプラグについて例示されているが、2本以上の接地電極を有するタイプのスパークプラグに具現化することもできる。
(e)上記実施形態では、中心電極5の先端に貴金属チップ31が溶接により接合されている場合について具体化したが、当該中心電極用貴金属チップ31を省略した構成としてもよい。
(f)上記実施形態では、説明の便宜上、接地電極27を単なる2層構造をなすものとして説明しているが、3層構造或いは4層以上の多層構造をなしていてもよい。但し、外層27Bに対し、その内側の層は、外層27Bよりも良熱伝導性金属を含んでいることが望ましい。例えば、外層27Bの内側に銅合金或いは純銅で構成された中間層が設けられ、中間層の内側に純ニッケルで構成された最内層が設けられていてもよい。また、複層構造ではなく、ニッケル単層のみからなる接地電極27を用いてもよい。
本実施形態のスパークプラグの構成を示す一部破断正面図である。 スパークプラグの部分拡大断面図である。 貴金属チップが設けられてなる接地電極を示す部分斜視図である。 接地電極を示す図(貴金属チップは省略)であって、(a)は平面図、(b)は先端部分の端面図である。 各種寸法を説明するべく、スパークプラグの先端部分を示す模式図である。 着火性評価試験に際し、燃料噴霧角度を種々変更させた場合を例示する図であって、(a)は燃料噴霧角度を−15゜としたときの、(b)は燃料噴霧角度を0゜としたときの、(c)は燃料噴霧角度を20゜としたときの状態を示す模式図である。 燃料噴霧角度に対する着火率の関係を示すグラフである。 Bの値を種々変更させた場合におけるAの値に対する着火率の関係を示すグラフである。 Fの値に対するギャップ増加量の関係を示すグラフである。 Dの値を種々変更させた場合におけるEの値に対する着火率の関係を示すグラフである。 (a)は本実施形態における混合気の流れの一形態を模式的に示す部分斜視図であり、(b)は従来技術における混合気の流れの一形態を模式的に示す部分斜視図である。 (a)は別の実施形態を示す接地電極の側端面図であるり、(b)は別の実施形態を示す接地電極の部分斜視図である。 別の実施形態を示す接地電極及び貴金属チップの部分斜視図である。
符号の説明
1…スパークプラグ、2…絶縁碍子、3…主体金具、5…中心電極、27…接地電極、27s…先端面、32(,321)…貴金属チップ、33…火花放電間隙、51…平面状部分。

Claims (3)

  1. 軸線方向に延びる棒状の中心電極と、
    前記中心電極の外周に設けられた略円筒状の絶縁体と、
    前記絶縁体の外周に設けられた筒状の主体金具と、
    基端が前記主体金具の先端面に接合され、先端が前記軸線に向けて曲げられて配置された接地電極と、
    前記接地電極の先端から前記軸線に向けて突出するように設けられ、前記中心電極の先端部外周面との間に火花放電間隙を形成する貴金属チップと
    備えた内燃機関用スパークプラグであって、
    前記接地電極は、前記中心電極側とは反対側の背面に凸状の湾曲面を有しているとともに、自身の先端面に臨む先端部分背面には、前記先端面とのなす角度が70゜以上100゜以下となるよう平面状部分を有していることを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
  2. 前記平面状部分の前記接地電極の長手方向に沿った距離をA(mm)とし、
    前記平面状部分の幅をB(mm)としたとき、
    A×B≧0.2(mm2)、
    B≧0.2(mm)
    を満たすことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  3. 前記火花放電間隙の最短距離をC(mm)とし、
    前記火花放電間隙のうち前記貴金属チップの前記軸線方向先端及び前記中心電極の前記軸線方向先端間の中点と、前記接地電極の先端部分背面との間の前記軸線方向における距離をD(mm)とし、
    前記中点と、前記接地電極の先端面との間の前記軸線に直交する方向における距離をE(mm)とし、
    前記貴金属チップの前記先端面からの突出長をF(mm)としたとき、
    E≧2×D [但し、0.3(mm)≦D≦C/4+0.8(mm)の場合]、
    E≧0.6(mm) [但し、D<0.3(mm)の場合]、
    F≦1.6(mm)
    を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関用スパークプラグ。
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