JP2009149527A - 増粘剤組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記(A)および(B)を含み、水系中において前記成分がハイブリッド体を形成していることを特徴とする増粘剤組成物。
(A)ビニル系高分子
(B)下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体
Si−(OR1)4 (1)
(式中、R1は多価アルコール残基である。)
前記増粘剤組成物の製造方法において、水系溶媒中においてビニル系高分子と水溶性シラン誘導体とを混合する工程と、前記混合物をホモミキサー攪拌分散する工程と、を含むことを特徴とする増粘剤組成物の製造方法。
【選択図】なし
Description
例えば、多糖類溶液中において水溶性のシラン誘導体であるオルトケイ酸テトラキス(2−ヒドロキシエチル)から多糖類−シリカナノコンポジット構造を形成させ、ゲル化し難い多糖類溶液をゼリー状にし得ることが報告されている(非特許文献1)。
Journal of Colloid and Interface Science 287 (2005) 373-378
また、従来の増粘剤等でゲル化した組成物は、高分子間に保持された水分が分離する現象、すなわち離しょう(シネレシス)の生じ易いものであった。離しょうにより水分が抜ければ、組成物からはみずみずしさが失われ、また、系の粘度変化や不透明化といった品質低下が導かれる。したがって、特に長期間にわたる安定性の維持が必要とされる化粧料等においては、離しょう性の低いゲルを形成する増粘剤が求められていた。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みて行われたものであって、その目的は、増粘性及び耐塩性が高く、みずみずしい感触を有する使用性に優れた増粘剤組成物及びその製造方法を提供することにある。
また、前記増粘剤組成物において、ビニル系高分子がカルボキシビニルポリマーであることが好適である。
前記増粘剤組成物は、さらに、多糖類を含むことが好適である。
(化1)
Si−(OR1)4 (I)
(式中、R1は多価アルコール残基である。)
前記製造方法においては、ビニル系高分子及び水溶性シラン誘導体の混合物を攪拌分散する工程(B)において、さらに多糖類を添加することが好適である。
すなわち、本発明にかかる乳化化粧料は、水相成分と油相成分と前記増粘剤組成物とを含有することを特徴とする。
また、本発明にかかる前記乳化化粧料の製造方法は、水相成分と油相成分を乳化してなる乳化化粧料と、増粘剤組成物とをそれぞれ製造し、その後両組成物を混合することを特徴とする。
本発明にかかる増粘剤組成物は、水系において、ビニル系高分子の三次構造上に、下記一般式(I)で示される水溶性シラン誘導体の加水分解・重縮合を経て形成されるシリカが析出してなるハイブリッド体を含有するものである。
(化2)
Si−(OR1)4 (I)
(式中、R1は多価アルコール残基である。)
まず、本発明にかかる増粘剤組成物の必須成分であるビニル系高分子−シリカハイブリッド体を形成する成分について説明する。
本発明にかかるハイブリッド体は、ビニル系高分子及び特定構造の水溶性シラン誘導体を水系溶媒中において反応させることにより容易に得ることができる。
前記ビニル系高分子としては、カルボマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸等、カルボキシル基を有するアルカリ増粘型ポリマーのものが好ましい。
前記カルボマーは、アクリル酸系の架橋共重合体で、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸等の置換アクリル酸等のアクリル酸系モノマーの架橋ポリマーである。前記アクリル酸系モノマーは好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸であり、アクリル酸が最も好ましい。
また、前記ビニル系高分子は、有機塩又は無機塩の形であってもよい。有機塩としては、例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩、アルギニン塩等が挙げられる。無機塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等が挙げられる。
前記ビニル系高分子と架橋構造を形成するシリカは、下記一般式(I)で示される水溶性シラン誘導体から生成される。
Si−(OR1)4 (I)
(式中、R1は多価アルコール残基である。)
本発明に用いられる上記一般式(I)に示される水溶性シラン誘導体において、R1は多価アルコールの残基であり、多価アルコールにおける1つの水酸基が除かれた形として示される。なお、前記水溶性シラン誘導体は、通常、テトラアルコキシシランと多価アルコールとの置換反応により調製することができ、R1は、使用する多価アルコールの種類によって異なるが、例えば、多価アルコールとしてエチレングリコールを用いた場合、R1は−CH2−CH2−OHとなる。
本発明に用いられる水溶性シラン誘導体としては、より具体的には、Si−(O−CH2−CH2−OH)4、Si−(O−CH2−CH2−CH2−OH)4、Si−(O−CH2−CH2−CHOH−CH3)4、Si−(O−CH2−CHOH−CH2−OH)4等が挙げられる。
テトラアルコキシシランは、ケイ素原子に4つのアルコキシ基が結合したものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、入手のし易さ、及び反応副生成物の安全性の点から、テトラエトキシシランを好適に用いることができる。
テトラアルコキシシランの代替としてモノ、ジ、トリハロゲン化アルコキシシラン、すなわちモノクロロトリエトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、モノブロモトリエトキシシランなど、あるいはテトラハロゲン化シラン例えばテトラクロロエトキシシランを用いることも可能である。
固体触媒として用いられるイオン交換樹脂としては、例えば、酸性陽イオン交換樹脂及び塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらのイオン交換樹脂の基体をなす樹脂としてはスチレン系、アクリル系、メタクリル酸系樹脂が挙げられ、また、触媒活性を示す官能基としてはスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、4級アンモニウム、3級アミン、1,2級ポリアミンが挙げられる。また、イオン交換樹脂の基体構造としては、ゲル型、ポーラス型、バイポーラス型等から、目的に応じて選択することができる。
固体触媒は、反応終了後にろ過あるいはデカンテーション等の処理を行なうことによって、容易に生成物と分離することができる。
本発明においては、ビニル系高分子及び水溶性シラン誘導体を水系溶媒中で混合することにより、ビニル系高分子の構造上にシリカを析出させ、さらにこれをホモミキサーを用いて攪拌分散することにより、なめらかなゲル状をなす増粘剤組成物を製造することができる。
具体的な製造方法としては、例えば、ビニル系高分子及び水溶性シラン誘導体を含む混合水溶液を調製し、これを適宜静置して水溶性シラン誘導体の加水分解・縮合によるシリカの析出反応を促す。重合が十分に進行した後、ホモミキサーを用いて生成したゲル組成物を攪拌分散すれば、容易に本発明の増粘剤組成物を得ることができる。
ビニル系高分子のカルボキシル基を中和するためのアルカリ塩の添加は、水溶性シラン誘導体と混合する前に行うことが好ましい。
また、水溶性シラン誘導体の配合量は、該組成物の製造にかかる全成分に対して0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。配合量が0.1質量%に満たないと、増粘剤組成物が十分な増粘効果を与えることができず、一方、配合量が10質量%を超えると、系が固くなりすぎてしまうことがあるため好ましくない。
本発明の増粘剤組成物の製造にかかる前記ビニル系高分子と水溶性シラン誘導体の配合量比は、(ビニル系高分子):(水溶性シラン)が1:10〜1:50であることが好適である。前記配合量比を維持していれば、例えば、ビニル系高分子及び水溶性シラン誘導体の配合量を増大させて高濃度のハイブリッド体を含む増粘剤組成物を製造し、これを使用時に適切な濃度に希釈して用いることも可能である。
上記増粘剤組成物の製造における温度条件は特に制限されるものではないが、通常、室温から使用する溶媒の沸騰温度の範囲で行うことが好ましい。特に、ビニル系高分子及び水溶性シラン誘導体を混合した後、重合促進に適した温度条件である25〜50℃において、1〜48時間静置しておくことが好適である。
ホモミキサーによる攪拌条件は、製造する組成物の量や形態により適宜設定することができるが、通常6000〜9000rpmにて1〜3分間程度処理すれば、組成物に十分ななめらかさが付与される。
したがって、この離しょうの改善は、多糖類の添加量よりも添加時期によるところが大きいと考えられることから、多糖類の添加量は、組成物に対し0.01〜0.1質量%程度で足る。多糖類は成分の混合時に添加しても、離しょうの低下にある程度は寄与するが、十分な効果を得るならば重合反応後のホモミキサー処理時に添加することが好ましい。添加する多糖類としては、特にキサンタンガムが好ましい。
特に、本発明の増粘剤組成物は、基礎をなすビニル系高分子自体の高い増粘性が保持されている上、その構造上にシリカを析出させる(ハイブリッド化)ことによりさらに増粘性が強化されていることから、従来の増粘剤に比して少量の配合で極めて高い増粘効果を得ることができる。また、ビニル系高分子上にシリカが析出することにより、ビニル系高分子がシリカでコーティングされた状態となる。そのため、ビニル系高分子の欠点であった耐塩性の低さが克服されることとなり、高い増粘性と耐塩性の両立が達成される。
ただし、乳化化粧料へ配合する場合には製品製造時に増粘剤組成物を原料成分ごとに添加すると、増粘剤組成物の製造におけるビニル系高分子と水溶性シラン誘導体のハイブリッド体の形成や、ホモミキサーによる増粘剤成分の攪拌分散を十分に行うことが困難であるため、製品の系の増粘及びなめらかさに劣ることがある。したがって、本発明の増粘剤組成物の乳化化粧料への配合手段としては、増粘剤組成物を別途製造し、これを各種製品へ添加することが好ましい。
本発明にかかる増粘剤を配合する乳化化粧料は、水相成分と油相成分とを乳化混合して得られる通常の乳化化粧料であればよく、その剤型ないし使用形態にも制限はない。
乳化化粧料の剤型としては、例えば、水中油型(O/W)、油中水型(W/O)、トリプル型(W/O/WまたはO/W/O)等のエマルジョンが挙げられるが、特に水中油型のものが好適である。
また、前記乳化化粧料の使用形態としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ローション、パック、軟膏、ムース、及び石けんの他、ファンデーション、アイシャドー、マスカラ、口紅等のメークアップ化粧料、ヘアーリンス、シャンプー、浴用剤等が挙げられる。
水相成分としては、例えば、水の他、低級アルコール、多価アルコールが含まれる。
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
特に、ゲル化した乳化化粧料の離しょう性を向上するため、キサンタンガム等の多糖類を配合することが好ましい。
液体油脂として、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
乳化化粧料の通常の製造において、該増粘剤組成物の各成分を配合し、乳化化粧料中にて増粘剤組成物を調製することも可能であるが、乳化化粧料の粘度を安定して調節し得る点では、乳化化粧料及び増粘剤組成物を別途調製後混合することが好ましい。
前記乳化化粧料の製造における、乳化化粧料と増粘剤組成物の混合比は目的とする乳化化粧料の剤形にもよるが、(増粘剤組成物):(乳化化粧料)が重量比で1:1〜1:10程度であれば適度な増粘効果を得ることができる。
まず、本実施例における水溶性シラン誘導体の合成例について説明する。
水溶性シラン誘導体の合成例
テトラエトキシシラン60.1g(0.28モル)と、グリセリン106.33g(1.16モル)とを混合し、無溶媒下、固体触媒として強酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.1gを添加した後、85℃で混合攪拌した。約3時間の後、混合物は一層透明溶液となった。さらに5時間30分反応を続けた後、得られた溶液を終夜静置した。減圧下、固体触媒をろ過分離した後、少量のエタノールで洗浄した。さらにこの溶液からエタノールを留去して、透明の粘性液体112gとしてグリセリン置換水溶性シラン誘導体(Si−(O−CH2−CHOH−CH2−OH)4)を得た。この生成物は、同量の水と室温で混合することにより、やや発熱し、均一で透明なゲルを形成した(収率:97%)。
増粘剤組成物の製造例
イオン交換水とビニル系高分子であるカルボキシビニルポリマーを混合し、攪拌して均一な水溶液とし、水酸化カリウムを用いて中和した。該水溶液へ上記合成例による水溶性シラン誘導体を加えて混合した。前記混合液を室温下にて2日間静置して水溶性シラン誘導体の重合反応を促し、各サンプルの増粘剤組成物を得た。
図1は、上記製造例により得られた増粘剤組成物を凍結乾燥し、走査型電子顕微鏡にて観察した画像である。右図(B)は上記製造例において、カルボキシビニルポリマーを組成物に対し0.2%、水溶性シラン誘導体を0.5%として調製したものであり、左図(A)は比較例として、上記製造例において水溶性シラン誘導体を添加せず、カルボキシビニルポリマーの0.2%水溶液のみから製造した組成物を示す。
図1によれば、カルボキシビニルポリマーと水溶性シラン誘導体から得た増粘剤組成物は、カルボキシビニルポリマー単独である比較例に比べ、架橋した高分子が著しく膨潤していることが確認できる。これは、高分子に沿うようにシリカが析出し、ネットワーク構造を形成していることを示す。すなわち、本発明の増粘剤組成物では、ビニル系高分子とシリカがハイブリッド体を形成していることが確認された。
本発明にかかる増粘剤組成物における、ビニル系高分子及び水溶性シラン誘導体の配合量に対する粘度挙動を測定した。
すなわち、上記製造例において、水溶性シラン誘導体濃度を組成物に対し0〜5.0%、カルボキシビニルポリマー濃度を0〜0.5%まで変化させた際に得られる組成物の粘度を測定した。粘度の測定はB型粘度計(芝浦システム(株):VS−A1)を用い、30℃下にて実施した。結果を図2に示す。
また、上記製造例において、水溶性シラン誘導体濃度を0%(不使用)、0.5%とし、カルボキシビニルポリマー濃度を0.5%とした組成物それぞれについて、動的粘弾性を測定した。結果を図3に示す。なお、図3中のG’は貯蔵弾性率(弾性成分)、G’’は損失弾性率(粘性成分)、tanδはG’’/G’(粘性の割合)、ω[s−1]はずり速度を表す。
評価方法
専門パネラー10名の皮膚表面へ各サンプルを塗布し、下記項目について評価を行った。評価基準は次のとおりである。
(みずみずしさ)
パネル8名以上が、みずみずしいと感じた:◎
パネル6名以上8名未満が、みずみずしいと感じた:○
パネル3名以上6名未満が、みずみずしいと感じた:△
パネル3名未満が、みずみずしいと感じた:×
パネル8名以上が、塗布時になめらかであると感じた:◎
パネル6名以上8名未満が、塗布時になめらかであると感じた:○
パネル3名以上6名未満が、塗布時になめらかであると感じた:△
パネル3名未満が、塗布時になめらかであると感じた:×
パネル8名以上が、ぬめりを感じないと認めた:◎
パネル6名以上8名未満が、ぬめりを感じないと認めた:○
パネル3名以上6名未満が、ぬめりを感じないと認めた:△
パネル3名未満が、ぬめりを感じないと認めた:×
パネル8名以上が、塗布時にべたつきを感じないと認めた:◎
パネル6名以上8名未満が、塗布時にべたつきを感じないと認めた:○
パネル3名以上6名未満が、塗布時にべたつきを感じないと認めた:△
パネル3名未満が、塗布時にべたつきを感じないと認めた:×
パネル8名以上が、塗布後の皮膚に皮膜感がないと認めた:◎
パネル6名以上8名未満が、塗布後の皮膚に皮膜感がないと認めた:○
パネル3名以上6名未満が、塗布後の皮膚に皮膜感がないと認めた:△
パネル3名未満が、塗布後の皮膚に皮膜感がないと認めた:×
パネル8名以上が、塗布時にふっくら感があると認めた:◎
パネル6名以上8名未満が、塗布時にふっくら感があると認めた:○
パネル3名以上6名未満が、塗布時にふっくら感があると認めた:△
パネル3名未満が、塗布時にふっくら感があると認めた:×
使用性 試験例1 試験例2
みずみずしさ △ ◎
なめらかさ ◎ △
ぬめり △ ○
べたつき ○ ○
皮膜感 △ ○
ふっくら感 △ ○
さらに、表1より、同様の粘度を示す組成物であっても、ビニル系高分子と水溶性シラン誘導体とを含む組成物の方が、従来の増粘剤を単独で使用するよりもみずみずしさや、ぬめり感、皮膜感のなさ、ふっくら感といった使用感に優れていることが明らかになった。
したがって、ビニル系高分子と水溶性シラン誘導体から形成されるハイブリッド体を含む本発明の増粘剤組成物により、適度な粘性を有し弾性に優れたゲルが得られることが明らかになった。
以上の結果から、本発明にかかる増粘剤組成物は、ビニル系高分子及び水溶性シラン誘導体の配合により、増粘性が高く、且つ使用性に優れたものであることが認められた。
下記の各種増粘剤組成物について、耐塩性及び使用感を試験した。各サンプルの調製及び試験の方法は以下のとおりである。
製造及び試験方法
下記製造方法により製造した各組成物へ塩化ナトリウムを組成物に対し0から0.1%濃度となるように添加していき、B型粘度計を用いて30℃における粘度変化を測定した。結果を図4に示す。
また、前記試験において、塩化ナトリウム濃度0.1%とした時の各試験サンプルについて、前述の評価方法にしたがって使用感を評価し、さらに図4の結果から耐塩性及び増粘性を相対的に評価した。これらの結果を表2に示す。
イオン交換水へ0.1%濃度となるようにカルボキシビニルポリマーの中和物を添加し、混合した。
(試験例4)
上記増粘剤組成物の製造例において、カルボキシビニルポリマーの中和物及び水溶性シラン誘導体の各濃度を0.1%及び2.0%とした。
(試験例5)
上記した増粘剤組成物の製造例において、カルボキシビニルポリマーの中和物に代えてキサンタンガムを用い、キサンタンガム及び水溶性シラン誘導体の各濃度を0.1%及び2.0%とした。
(試験例6)
上記した増粘剤組成物の製造例において、カルボキシビニルポリマーの中和物に代えてヒアルロン酸を用い、ヒアルロン酸及び水溶性シラン誘導体の各濃度を0.1%及び2.0%とした。
使用性 試験例3 試験例4 試験例5 試験例6
みずみずしさ ◎ ◎ × ×
なめらかさ ◎ △ ○ ○
ぬめり △ ○ × △
べたつき ○ ○ △ △
皮膜感 △ ○ △ △
耐塩性 × ○ ○ ○
増粘性 ○ ◎ × △
さらに、表2に示す結果から、使用感においてもみずみずしさや、ぬめり、べたつき、皮膜感のなさの点で試験例4が優れた評価を得た。一方、試験例3は使用時にぬめりや皮膜感が認められ、試験例5及び6は特にみずみずしさが著しく劣っていた。
したがって、試験例5及び6の増粘剤組成物を多量に使用して試験例4と同じ粘度を得ようとすれば、益々みずみずしさは失われ、ぬめりやべたつきが増加すると考えられる。対して、試験例4の増粘剤組成物を用いれば、少量の使用で系を高く増粘することができ、しかも優れた使用性を付与することができることが明らかである。
以上のことから、本発明にかかる増粘剤組成物は、ビニル系高分子とシリカのハイブリッド体により極めて高い増粘性及び耐塩性を示し、また、塩の存在下においても優れた使用性を維持するものである。
<ホモミキサー処理による粘性挙動>
下記製造例による増粘剤組成物について、動的粘弾性を測定した。結果を図5に示す。なお、図5中のG’は貯蔵弾性率(弾性成分)、G’’は損失弾性率(粘性成分)、tanδはG’’/G’(粘性の割合)、ω[s−1]はずり速度を表す。
増粘剤組成物の製造例(ホモミキサー処理あり)
0.3%カルボキシビニルポリマー、2.5%水溶性シラン誘導体の混合水溶液を調製した。前記混合水溶液を室温下にて2日間静置した後、9000rpmにて3分間ホモミキサー処理を施し、増粘剤組成物を得た。
増粘剤組成物の製造例(ホモミキサー処理なし)
ホモミキサー処理を行わないこと以外は上記製造例と同様にして増粘剤組成物を得た。
したがって、本発明にかかる増粘剤組成物において、成分混合後にホモミキサー処理を行うことにより、なめらかな使用感を付与することができることが明らかになった。
下記表3に示す処方の増粘剤組成物について、ホモミキサー処理及びキサンタンガム添加の有無における粘度と離しょう性を試験した。結果を表3に示す。
なお、各試験例の組成物は下記の方法で調製した。各組成物は室温下にて10日間保存後、B型粘度計を用いて30℃における粘度を測定し、組成物の感触によって離しょうの状態を評価した(離しょうが見られない:○、やや離しょうが見られる:△、著しく離しょうが見られる:×)。
(試験例7)
カルボキシビニルポリマーと水酸化カリウムの一部とを水へ加えて混合して溶解させ、ここへ水溶性シラン誘導体を添加し混合した。その後残りの成分を添加して混合し、該混合物を2日間静置して増粘剤組成物を得た。
(試験例8)
残りの成分としてキサンタンガムを添加する他は、前記試験例7と同様に調製して増粘剤組成物を得た。
(試験例9)
試験例8と同様の成分混合工程を行い、得られた混合物を2日間静置した。その後、該混合物をホモミキサー(9000rpm、2分間)で混合撹拌して増粘剤組成物を得た。
(試験例10)
カルボキシビニルポリマーと一部の水酸化カリウムとを水へ加えて混合して溶解させ、ここへ水溶性シラン誘導体を添加し混合した。その後キサンタンガムを除く残りの成分を添加し、得られた混合物を2日間静置した。その後、該混合物にキサンタンガムを添加し、ホモミキサー(9000rpm、2分間)で混合攪拌して増粘剤組成物を得た。
(処方) 試験例7 試験例8 試験例9 試験例10
イオン交換水 96.0 95.95 95.95 95.95
カルボキシビニルポリマー 0.3 0.3 0.3 0.3
水溶性シラン誘導体 1.0 1.0 1.0 1.0
アスコルビン酸2−グルコシド 2.0 2.0 2.0 2.0
水酸化カリウム 0.6 0.6 0.6 0.6
キサンタンガム(先に添加) − 0.05 0.05 −
キサンタンガム(後に添加) − − − 0.05
ホモミキサー処理 なし なし あり あり
粘度 3000 6500 3500 3000
離しょう性 × × △ ○
以上の結果から、本発明にかかる増粘剤組成物の製造方法において、ハイブリッド体の形成後にホモミキサーを用いて攪拌処理を行うことにより、離しょうの低い優れた増粘剤組成物が得られることが認められた。また、このホモミキサー処理時に微量のキサンタンガム等の多糖類を添加することが好適である。
下記表4に示す処方及び製造方法により乳化化粧料を製造した。各乳化化粧料の粘度をB型粘度計を用いて測定し、乳化化粧料の凝集の有無を以下の規準で外観から評価した。結果を表4に示す。
評価基準
凝集が認められず、系がなめらかである:○
やや凝集が認められる:△
著しく凝集が認められる:×
1.(15)に(11)及び(13)を添加して混合した後、(14)を加えて混合した。前記混合物を室温にて2日間静置したのち、(12)を加えてホモミキサー(9000rpm、2分間)を用いて混合攪拌し、増粘剤組成物を得た。
2.水相成分(8)〜(10)、(16)の混合物と、油相成分(1)〜(7)の混合物を70℃の加熱下で混合して乳化させた。均一に乳化したのち、25℃に冷却して乳化化粧料を得た。
3.上記工程1で得た増粘剤組成物を、工程2で得た乳化化粧料へ加えて混合し、増粘した乳化化粧料を得た。
以上の結果から、本発明に係る増粘剤組成物を乳化化粧料へ添加することにより、増粘した乳化化粧料が得られることが認められた。また、増粘剤組成物調製時の水分量により乳化化粧料の粘度を調整し、様々な剤型とすることができる。
製造方法
(試験例11)
上記製造例1の製造方法と同様にして調製した。
(試験例12)
水相成分(9)〜(16)の混合物と、油相成分(1)〜(9)の混合物を70℃の加熱下で混合して乳化させた。均一に乳化したのち、25℃に冷却して乳化化粧料を得た。
試験例11 比較例12
離しょう ○ △
使用性
みずみずしさ ◎ △
なめらかさ ○ ×
ぬめり ○ ○
べたつき ○ ○
皮膜感 ○ △
ふっくら感 ○ △
したがって、本発明にかかる乳化化粧料の製造方法において、乳化化粧料と増粘剤組成物とをそれぞれ製造し、その後両者を混合することが好適である。
処方例1 乳液 (質量%)
(1)ジメチルポリシロキサン 2.0
(2)ベヘニルアルコール 0.5
(3)グリセリン 5.0
(4)1,3−ブチレングリコール 5.0
(5)スクワラン 5.0
(6)硬化油 3.0
(7)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 2.0
(8)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.0
(9)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1.0
(10)アスコルビン酸2−グルコシド 2.0
(11)水酸化カリウム 適量
(12)クエン酸 0.02
(13)クエン酸ナトリウム 0.08
(14)フェノキシエタノール 適量
(15)カルボキシビニルポリマー 0.1
(16)キサンタンガム 0.05
(17)1,3-ブチレングリコール置換水溶性シラン誘導体 2.0
(Si−(O−CH2−CH2−CHOH−CH3)4)
(18)イオン交換水 残余
(製造方法)
1.(18)の一部に(15)及び(11)を添加して混合した後、(17)を加えて混合した。前記混合物を室温にて2日間静置したのち、(16)を加えてホモミキサー(9000rpm、2分間)を用いて混合攪拌し、増粘剤組成物を得た。
2.水相成分(3)、(4)、(10)、(12)〜(14)、(18)の混合物と、油相成分(1)、(2)、(5)〜(9)の混合物を70℃の加熱下で混合して乳化させた。均一に乳化したのち、25℃に冷却して乳化化粧料を得た。
3.上記工程1で得た増粘剤組成物を、工程2で得た乳化化粧料へ加えて混合し、乳液を得た。
(1)ジメチルポリシロキサン 2.0
(2)ベヘニルアルコール 0.5
(3)グリセリン 5.0
(4)1,3−ブチレングリコール 5.0
(5)スクワラン 5.0
(6)硬化油 3.0
(7)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 2.0
(8)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.0
(9)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1.0
(10)水酸化カリウム 適量
(11)クエン酸 0.02
(12)クエン酸ナトリウム 0.08
(13)フェノキシエタノール 適量
(14)カルボキシビニルポリマー 0.2
(15)キサンタンガム 0.05
(16)グリセリン置換水溶性シラン誘導体 2.0
(Si−(O−CH2−CHOH−CH2−OH)4)
(17)イオン交換水 残余
(製造方法)
1.(17)の一部に(14)及び(10)を添加して混合した後、(16)を加えて混合した。前記混合物を室温にて2日間静置したのち、(15)を加えてホモミキサー(9000rpm、2分間)を用いて混合攪拌し、増粘剤組成物を得た。
2.水相成分(3)、(4)、(11)〜(13)、(18)の混合物と、油相成分(1)、(2)、(5)〜(9)の混合物を70℃の加熱下で混合して乳化させた。均一に乳化したのち、25℃に冷却して乳化化粧料を得た。
3.上記工程1で得た増粘剤組成物を、工程2で得た乳化化粧料へ加えて混合し、クリームを得た。
Claims (7)
- ビニル系高分子上にシリカが析出してなるビニル系高分子−シリカハイブリッド体と、水とを含むことを特徴とする増粘剤組成物。
- 前記ビニル系高分子がカルボキシビニルポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の増粘剤組成物。
- さらに、多糖類を含むことを特徴とする請求項1及び2に記載の増粘剤組成物。
- 請求項1に記載の増粘剤組成物の製造方法において、
(A)ビニル系高分子と、
下記一般式(I)で示される水溶性シラン誘導体とを混合する工程、及び、
(B)前記混合物をホモミキサーにより分散処理する工程、
を含むことを特徴とする増粘剤組成物の製造方法。
(化1)
Si−(OR1)4 (I)
(式中、R1は多価アルコール残基である。) - ビニル系高分子及び水溶性シラン誘導体の混合物を攪拌分散する工程(B)において、さらに多糖類を添加することを特徴とする請求項4に記載の増粘剤組成物の製造方法。
- 水相成分、油相成分、及び請求項1ないし3に記載の増粘剤組成物とを含有することを特徴とする乳化化粧料。
- 請求項6に記載の乳化化粧料の製造方法において、
水相成分と油相成分を乳化してなる乳化化粧料と、増粘剤組成物とをそれぞれ製造し、その後両組成物を混合することを特徴とする乳化化粧料の製造方法。
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