JP2009148771A - 金属スラリー製造方法及び装置,金属加工方法 - Google Patents

金属スラリー製造方法及び装置,金属加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単な構成で、固液共存状態の金属スラリーを均質に効率よく製造する。
【解決手段】金属スラリー製造装置10は、架台20上に載置される容器12,該架台20を昇降させるシリンダ26,前記容器12の外側に配置された永久磁石40,該永久磁石40を回転駆動する回転モータ46,隔壁50及び52などにより構成される。永久磁石40は、2つの極42A,42Bが相対する略U字状であって、前記容器12の外側形状に沿った曲面を有するとともに、前記極42A,42Bの間に前記容器12を挟むように配置される。前記回転モータ46によって永久磁石40を回転させておき、前記容器12に、溶湯を液層線温度より一定の過熱度で注湯すると、永久磁石40の磁力が作用し、前記容器12内の溶湯の全体が攪拌され、固液共存状態の金属スラリーを均質に効率良く得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属スラリーの製造方法及び装置,金属加工方法に関し、更に具体的には、固液共存状態の半凝固スラリーの製造に関するものである。
アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属の鋳造には各種の方法があるが、鋳造素材の状態で区分すると、溶解した溶湯を使用する方法と、固液共存状態のスラリーを使用する方法がある。溶湯を使用する方法が従来から広く使用されており、主なものでも砂型鋳造,重力鋳造,低圧鋳造,コールドチャンバーダイカスト鋳造,スクイズ鋳造,ホットチャンバー鋳造等がある。また、固液共存状態のスラリーを作る方法には、セミソリッドないしチクソと称される半溶融法と、レオと称される半凝固法があり、これらの方法で作った固液共存状態のスラリーをダイカスト鋳造やスクイズ鋳造または鍛造等に適用して製品としている。
鋳造素材として溶湯を使用する場合と固液共存状態のスラリーを使用する場合を比較すると、固液共存状態のスラリーは固相を含んでおり溶湯に比べて全体の凝固収縮量が小さいことから収縮巣が少なく、液相が分散していることから連続した大きな収縮巣の発生が少ない。また、固液共存状態となる600℃以下では、溶湯中の飽和ガス量が大幅に減ることから残留ガスも少なく、かつ、スラリー状態であるため粘度があり、完全液体の溶湯に比較して同じ速度でも波立ちが少なくなるので鋳造中の速度での雰囲気ガスの巻き込みが少ない。更に、固液共存状態のスラリーの固相と液相はほぼ均一に分布しているため、それを鋳造凝固することにより固相の成長と液相の凝固が同時に進行することとなり、鋳造品の内部金属組成が均一で、一般の溶湯鋳造では問題となる偏析が少なく、機械的特性のバラツキが少なくなる。このほか、固液共存状態のスラリーの方が温度は低いことから、金型溶損が少なく金型寿命が長くなる等の優れた特徴がある。
固液共存状態のスラリーを作る方法を比較すると、半溶融法は1980年代から実用され実績がある。この方法では一度、大型の電磁撹拌装置により固液共存状態のスラリーとしてからビレット(円柱状鋳塊)として凝固させる。鋳造時にこのビレットを再度加熱し、固液共存状態のスラリーとして鋳造や鍛造の素材として使用する方法であるが、鋳造や鍛造の方案部分(ビスケット、ランナー等の製品外の製造時に必要な部分)を半溶融ビレットに戻すことが困難であり、経済性が良いとはいえず、更に、熱源利用が二度であるという不都合がある。
一方、半凝固法は、溶湯から固液共存状態のスラリーを作り、その状態で鋳造や鍛造の素材とする方法であるが、装置が簡便でありコストが少なく、方案部のリサイクルが可能であり、加熱も一度であることから、半溶融法に比べて装置構成や経済性,リサイクル性,CO排出抑制に優れている。
アルミニウム合金の半凝固スラリーを作る方法として、例えば、下記特許文献1などに開示されたNRC(ニューレオキャスト法)が著名である。この方法は溶湯を攪拌しないことを特徴とした方法である。具体的には、一定温度の金属容器内に液相線直上温度のアルミニウム合金溶湯を注湯し、冷却空気の噴霧を制御して容器内の温度勾配を低く抑えて等温的雰囲気の中で全体の温度を固液共存状態まで低速で低下させながら、初晶として析出するα相を等方的に成長させて球形に近い形状とし、同時に共晶相よりなる液層の混在した状態とし、最後に高周波加熱により金属容器に接する部分を加熱して温度一定のスラリーとすることを特徴としている。
また、下記特許文献2の金属成形品の製造装置には、高温に保持した炉中または断熱容器内に液相線直上温度のアルミニウム合金溶湯を注ぎ、攪拌子として冷し金を回転させ、攪拌と冷却により固液共存状態としてスラリーを作る機械攪拌方法が示されている。
更に、下記特許文献3の固液共存状態金属材料の製造方法に示すように、電磁攪拌を利用した方法も開発されている。当該技術は、電磁コイルをスラリー容器の外周に沿って巻き、例えば、200V,3相,50サイクル〜80サイクルを通電し、コイル内に置いたsスラリー容器に液相線温度直上のアルミニウム合金溶湯をスラリー容器内に注湯し、電磁攪拌と沈静により固液共存状態のスラリーを得る方法である。
また、下記特許文献4に開示されている金属スラリー製造方法は、一般的に傾斜冷却板法と呼称されているが、液相線温度直上の溶湯を傾斜冷却板へ注ぎ、傾斜冷却板を振動させて、溶湯の一部を固液共存状態の温度まで冷却させながら落下させ、下部に設置した鋳型に鋳造する方法である。
特開平10−128516号公報 特開2002−336946公報 特許第3496833号公報 特開2005−205478公報
しかしながら、以上のような背景技術には次のような不都合がある。まず、前記特許文献1に示されるようなNRC法によるスラリー製造は、等方的温度条件を維持していくには大径のスラリーは不向きであり、スラリー重量8kgまでの製造実績があるが、それを超える重量には適用が難しい。また、スラリーの温度分布を均一にするため、高周波加熱を加えていることやスラリー容器の洗浄・離形剤塗布・乾燥に加熱炉を複数使用することから、エネルギー消費が大きいという問題がある。このほか、スラリーの射出機構への挿入性から横型締め縦射出のダイカスト鋳造機(スクイズ鋳造機)を利用して鋳造するが、該横型締め縦射出のダイカスト鋳造機は射出機構のスイングやドッキングの機構が必要で価格が高く、更に深いピットが必要で工事費も高いという問題がある。更に、スラリー製造時3分〜4分間容器内に溶湯を保持し、高周波加熱や乾燥炉での加熱が重なる高温熱履歴の中で、スラリー容器に変形が発生する問題がある。スラリー容器が変形するとスラリーの排出が困難になり、ロボットのハンドリングミスが生じるなど、安定生産が困難となる問題がある。また、金属容器は切削加工で製造するため高価で、更新により経済性が更に悪化するという不都合もある。
次に、前記特許文献2に示す機械攪拌による方法では、スラリー生成に時間が掛かるため、炉または断熱容器や攪拌装置を3〜4セット用意し、順次運転する方法が採用されており、設備投資が大きくなるという問題がある。また、攪拌子へアルミニウム合金が凝着しやすくその対策として攪拌子の付着物剥離除去,冷却,清掃,セラミック離形材塗布,乾燥を行うために、大掛かりな装置を使用することになり設備が更に大きくなってしまう。このほか、攪拌子として使用する冷し金は、溶湯中を攪拌しながら運動するため磨耗や損耗が発生する。また、スラリーの固相率を高くすると攪拌子の磨耗や損耗が激しく、アルミニウム合金溶湯の付着や凝着も発生しやすく剥離除去が困難になり、スラリーの固相率を低い状態で使用するため収縮巣や偏析が少ないなどの半凝固法の特性を十分に発揮できない不都合がある。
前記特許文献3に示した電磁攪拌方法では、攪拌力が小さいため、半径方向の中央部分や長さ方向の中央部分に液相が残留しやすく、スラリーカップ径や長さの大きな容器では、スラリー硬さ分布の均一性が得難い問題がある。スラリー硬さの均一性が得られない場合、製品の一部に偏析を生じる問題がある。また、スラリー硬さのばらつきにより、横型締め横射出の鋳造機スリーブに投入するとスラリーに曲がりを発生し、射出ロッドチップとスリーブ開口部端によりスラリーの一部を切断して残部が発生し、スラリーの残部が射出ロッドチップやスリーブ周辺に落下して、次の射出時に製品に混入して品質を悪化させる問題がある。これらの問題のため、6kgを超えるスラリーでは種々の不都合を生じるおそれがある。
更に、前記特許文献4に記載の方法は、連続的な半凝固スラリー製造に適しているので、長い連続的な鋳物には好適であるが、鋳物や鍛造物の大部分を占める長手方向が均一断面以外の形状品には、能率が悪く適していない。
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、簡単な構成で、固液共存状態の金属スラリーを均質に効率良く得る製造装置及び方法を得ることである。他の目的は、前記方法及び装置によって製造したスラリーを使用した金属加工方法を提供することである。
前記目的を達成するため、本発明の金属スラリー製造装置は、金属の固液共存状態のスラリー製造装置であって、前記金属の溶湯が注湯されるとともに、開口部を上方にして架台上に載置される非磁性体からなる容器,該容器の近傍に1つ以上配置されており、前記容器の外側形状に沿った面形状を有する略U字状の永久磁石,該永久磁石の相対する2つの極の中間を通る線を軸として、該永久磁石を回転させる回転駆動機構,を備えたことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記永久磁石が、相対する2つの極の間に前記容器を挟むように配置されるとともに、該永久磁石の回転軸の延長線が、前記容器内の一部を通ることを特徴とする。
他の発明の金属スラリー製造装置は、金属の固液共存状態のスラリー製造装置であって、前記金属の溶湯が投入されるとともに、開口部を上方にして架台上に載置される非磁性体からなる容器,該容器の近傍に1つ以上配置されており、前記容器の径方向と略平行な主面を有する略平面状の永久磁石,該永久磁石の2つの極を分ける中央部において前記主面と略直交する線を軸とし、前記永久磁石を回転させる回転駆動機構,を備えたことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記永久磁石が、前記容器の底面の下方に配置されるとともに、該永久磁石の回転軸の延長線が、前記容器内の一部を通ることを特徴とする。好ましくは、前記永久磁石の回転軸の延長線が、前記容器の開口部及び底部の各中心を結ぶ中心線を通ることを特徴とする。
他の発明の金属スラリー製造装置は、金属の固液共存状態のスラリー製造装置であって、前記金属の溶湯が投入されるとともに、開口部を上方にして架台上に載置される非磁性体からなる容器,該容器の近傍に1つ以上配置されており、2つの極を分ける中心線が前記容器の径方向と略直交する略平面状の永久磁石,該永久磁石の中心線を軸として、前記磁石を回転させる第1の回転駆動機構,を備えたことを特徴とする。
主要な形態の一つは、前記永久磁石の回転軸が、前記容器の開口部及び底部の各中心を結ぶ中心線に対する相対的位置を維持するように、該永久磁石を前記容器の周囲で回転させる第2の回転駆動機構,を備えたことを特徴とする。他の形態は、前記永久磁石の回転軸が、前記容器の開口部及び底部の各中心を結ぶ中心線に対して、平行から直角までの範囲内で可動であることを特徴とする。
更に他の形態は、前記いずれかの金属スラリー製造装置において、前記永久磁石を冷却する冷却機構を備えたことを特徴とする。更に他の形態は、前記容器と前記永久磁石を相対的に上下動させる昇降機構を備えたことを特徴とする。更に他の形態は、前記永久磁石の大きさが、前記容器に注入される溶湯の深さと略同等であることを特徴とする。
本発明の金属スラリー製造方法は、前記いずれかに記載の金属スラリー製造装置の永久磁石を回転させながら、金属溶湯を液相線温度より一定の過熱度で前記容器に注湯し、該容器中の溶湯を固液共存状態のスラリーとすることを特徴とする。主要な形態の1つは、前記金属溶湯が、アルミニウム合金溶湯又はマグネシウム合金溶湯であることを特徴とする。
本発明の金属加工方法は、前記金属スラリー製造方法によって製造されたスラリーを、型内に圧入して鋳造する,あるいは、型内締めにより圧縮して鍛造することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
本発明は、金属の溶湯が注湯されるとともに、開口部を上方にして架台上に載置される非磁性体からなる容器の近傍に、(1)前記容器の外側形状に沿った面形状を有するとともに、2つの極が相対する略U字状の永久磁石,または、(2)前記容器の径方向と略平行な主面を有する略平面状の永久磁石,または、(3)2つの極を分ける中心線が前記容器の径方向と略直交する略平面状の永久磁石,のいずれかを1つ以上配置し、回転駆動機構によって、前記2つの極の境目を通る線を軸として前記永久磁石を回転させることとした。このため、簡単な構成で、固液共存状態の金属スラリーを均質に効率よく製造することができという効果が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
最初に、図1,図2,図8を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の基本構造を示す図であり、(A)は全体構成を示す断面図,(B)は主要部の外観斜視図である。図2は、本実施例の変形例を示す図であり、(A)は全体構成を示す断面図,(B)は主要部の外観斜視図である。図8は、本発明のスラリー製造装置における磁力線の方向を示す説明図である。本発明の金属スラリー製造装置は、固液共存状態の金属の半凝固スラリーを製造するためのものである。
図1に示すように、本実施例の金属スラリー製造装置(以下「スラリー製造装置」)10は、金属溶湯が注湯される容器12,該容器12を載置する架台20,該架台20を昇降させるシリンダ26,前記容器12の外側に配置された略U字状の永久磁石40,該永久磁石40を回転させるための回転モータ46,隔壁50及び52などにより構成されている。まず、前記容器12は、本実施例ではカップ形状であって、例えば、金属ないしセラミックスなどの非磁性体材料により形成されており、開口部14を上方に向けて前記架台20上に載置されている。前記架台20の周縁部には複数のポール22が立設されており、前記容器12の外側を支持している。
前記架台20の底面には、軸24の上端が固定されており、該軸24は前記シリンダ26によって図に矢印F2で示すように昇降可能となっている。前記シリンダ26は、ケース28内に収納されており、前記軸24は、前記ケース28の上面28Aに設けられた開口部30を貫通している。前記永久磁石40は、2つの極42A(N極),42B(S極)が相対する略U字状であって、かつ、前記容器12の外側形状に沿った曲面を有している。該永久磁石40の底部には、略筒状の伝達部44が設けられている。このような永久磁石40は、2つの極42A,42Bから容器12までの距離がほぼ同等となるような位置に配置される。すなわち、永久磁石40の中心軸(2つの極42A,42Bの中間を通る線)が前記容器12の中心線(開口部14及び底面の各中心を通る線)を通る位置に配置される。また、前記永久磁石40の大きさは、前記容器12に注入される溶湯の深さと略同等であることが望ましい。一方、前記ケース28の上面28Aには、前記永久磁石40を回転駆動するための回転モータ46が設置されており、その出力軸46Aと前記伝達部44に、ベルト48を掛け回すことによって、前記回転モータ46の出力が永久磁石40に伝達し、図に矢印F1で示す方向(又はその反対方向)に回転可能となっている。
更に、前記ケース28の上面28Aには、前記永久磁石40と容器12の間を仕切る隔壁50と、前記永久磁石40の外側と外部を仕切る隔壁52が設けられており、これら隔壁50及び52によって、前記永久磁石40を冷却するための冷却室54が形成されている。該冷却室54内には、ケース上面28A上に、冷却空気を供給するための冷気供給機58が設けられており、前記冷却室54の上方には、通気孔56が形成されている。前記隔壁50,52は、例えば、非磁性の薄いステンレス板などにより形成されている。以上のような構成のスラリー製造装置10では、架台20上に載置された容器12は、軸24を介してシリンダ26に接続され、前記永久磁石40に対して相対的に上下動可能となっており、図1に示す状態よりも上方に移動させると、隔壁50及び52や永久磁石40と接触することなく取り外すことが可能となっている。
図2には、本実施例の変形例のスラリー製造装置10Aが示されている。この例は、2つの略U字状の永久磁石40A,40Bを利用したもので、前記カップ12の周囲を4つの極が取り囲む構成となっている。他の構成は、図1に示すスラリー製造装置10と同様である。図8(A)には、前記図1に示すスラリー製造装置10における磁力線が矢印で示されており、図8(B)には、前記図2に示すスラリー製造装置10Aにおける磁力線が矢印で示されている。前記図8(A)及び(B)に示した場合では、磁力線の方向は異なるが、容器12内の溶湯の全体が攪拌されるようになる。
次に、図1に示すスラリー製造装置10の作用を説明する。前記容器12を架台20上に載置し、回転モータ46を駆動して永久磁石40を回転させる。そして、アルミニウム合金溶湯やマグネシウム合金溶湯などを、その液相線温度より一定の過熱度で前記容器12に注湯する。すると、図8(A)に示すように、永久磁石40の磁力が作用し、前記容器12内の溶湯の全体が攪拌され、固液共存状態の金属スラリーを均質に効率よく形成することができる。通常、容器12内は、外側の温度が低く、中心に向かうほど温度が高いが、仮に、容器12全体をその中心を軸として回転させると、攪拌が弱い場合は中心の温度と周辺との温度差は、小さくはなるものの存在するため、均一な組織のスラリーを得られない。本実施例によれば、そのような不都合の解消が可能となる。また、本実施例では、回転モータ46の回転数により攪拌能力を調整できるとともに、簡単な構成で強力な攪拌力が得られる。これを半凝固スラリーの製造に適用することにより、溶湯に非接触であるため損傷部品も少なく、1kgから数10kgまでの大容量から小容量までの半凝固スラリーの製造が可能となる。このようにして得た半凝固スラリーを、型内に圧入して鋳造ないし鍛造することにより、金属の加工品を形成することが可能となる。
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)略U字型の永久磁石40の2つの極42A,42Bの間に容器12を配置し、前記永久磁石40を回転させて容器12中の金属溶湯を攪拌することとしたので、簡単な構成で固液共存状態の金属スラリーを均質に効率よく製造することができる。
(2)永久磁石攪拌は、電磁攪拌よりも小型で能率が良いほか、攪拌能力が大きいため、溶湯内の温度差が少なく、スラリーの硬さ分布が均一となり、鋳造や鍛造にも適したスラリーが得られる。
(3)永久磁石40は、使用温度をキューリー点以下とすれば半永久的に一定の磁力が得られるため、回転モータ46用のエネルギーのみを供給すればよく、エネルギー源の節約が可能となる。
次に、図3,図4,図8をしながら、発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。図3(A)は、本実施例の全体構成を示す断面図,図3(B)は主要部の外観斜視図である。図4は、本実施例の実験例で生成したスラリーの金属組成を示す図である。上述した実施例1では、容器12の外側形状に沿った曲面を有する略U字状の永久磁石を用いることとしたが、本実施例は略平面状の永久磁石を利用した例である。図3に示すように、本実施例の金属スラリー製造装置60は、略平面状の台62に固定された架台64に、金属溶湯が注湯される容器12が載置されている。本実施例では、前記容器12は、深さが浅めの鍋型となっている。前記架台64の内側には、永久磁石72A,72Bが配置されている。該永久磁石72A,72Bは略平面状の長方形であって、中心を境にそれぞれ2つの極74A,74Bに分かれており、これら2つの永久磁石72A,72Bで略十字型を形成するように、中心が重ね合わせられている。
前記永久磁石72A,72Bは、それぞれの2つの極74A,74Bから容器12までの距離がほぼ同等となるような位置に配置される。すなわち、永久磁石72A,72Bの2つの極74A,74Bを分ける中央部において、該磁石の主面と略直交する線が、前記容器12の中心線(開口部14及び底面の各中心を通る線)を通る位置に配置される。そして、前記中央部の重ね合わせ部分に一端が固定された軸70には、略円柱状の伝達部68が設けられており、該伝達部68は、前記台62に固定された基部66によって、回転可能に支持されている。
一方、前記台62上であって、前記架台64の外側には、前記永久磁石72A,72Bを回転駆動するための回転モータ76が設置されており、その出力軸78と前記伝達部68に、ベルト80を掛け回すことによって、前記回転モータ76の出力が永久磁石72A及び72Bに伝達し、図3に矢印F3で示す方向(又はその反対方向)に回転可能となっている。なお、前記ベルト80は、前記架台64の適宜位置を貫通しており、回転が妨げられることがない。また、本実施例では、前記架台64は、非磁性材料により形成されており、上述した実施例1の隔壁50,52と同様に、永久磁石72A,72Bを冷却するための冷却室を形成している。なお、図示は省略されているが、前記架台64中に、前記実施例1と同様の冷気供給機を設けるようにしてもよい。図8(C)には、本実施例のスラリー製造装置60における磁力線が矢印で示されている。このように磁力が作用することにより、前記容器12内の溶湯の全体が攪拌されるようになる。
<実験例>・・・次に、本実施例の実験例を説明する。前記容器12として、熱伝導率0.1cal/mhr℃(at600℃)のイビウール(イビデン株式会社製断熱材)製の容器を架台64上に載置する。次に、アルミニウム合金JIS AC4CHを溶解して温度を650℃とし、永久磁石72A,72Bを回転させてから前記容器12に溶湯を3kg入れて15秒間攪拌する。その後、5秒間沈静して生成したスラリーの金属組成を図4に示す。なお、図4は、金属研磨機にて研磨剤Mastermet(Buehler社製)を使用して研磨したものを、金属顕微鏡によって観察した結果である。同図からは、均質な固液共存状態の半凝固スラリーが形成されていることが確認できる。なお、前記容器12の材質としては、ステンレスSUS304でもよいし、Ti合金などを利用してもよい。
次に、図5及び図8を参照しながら本発明の実施例3を説明する。図5(A)は、本実施例の基本構造の主要部を示す外観斜視図,図5(B)は本実施例の変形例の主要部を示す外観斜視図である。本実施例も、上述した実施例2と同様に略平面状の永久磁石を利用した例であるが、該永久磁石の配置が前記実施例2と異なっている。なお、本実施例では、主要部以外の構成要素の図示は省略されている。本実施例の容器12は、前記実施例1と同様にカップ形状である。
まず、図5(A)に示すスラリー製造装置100は、基本的な装置構成は、上述した実施例1と同様であるが、容器12の近傍には、略平面状の永久磁石102が配置されている。該永久磁石102は、極104A(N極)と104B(S極)を分ける中心線106が、前記容器12の径方向に略直交するように配置されている。また、前記中心線106上には軸108が連結されており、該軸108は回転モータ110に接続されている。これにより、前記永久磁石102は、中心線106を軸として矢印F5で示すように回転可能となる。この場合の磁力線の作用は、図8(D)に示す通りとなっている。なお、前記永久磁石102の大きさは、前記実施例1と同様に、容器12に注入される溶湯の深さと略同等となるようにすると都合がよい。容器12が回転対称形状の場合、一般に容器12の中心が攪拌されず、容器12からの熱移動が周辺に留まりがちであるが、本実施例では、永久磁石102を容器12の外側に配置することにより、図8(D)に示すように磁力線が作用するため、この問題が解決する。従って、上述した実施例1と同様に、容器12に注入された溶湯を強力に攪拌し、均質な固液共存状態の金属スラリーを簡単な構成で得ることができる。
図5(B)に示すスラリー製造装置100Aは、容器12の両側に永久磁石102A,102Bを配置したものである。一方の永久磁石102Aは、軸108Aの先端のプーリ112Aと、回転モータ110Aの出力軸114Aの先端のプーリ116Aに掛け回されたベルト118Aによって、前記回転モータ110Aの出力を受けて回転可能となっている。他方の永久磁石102Bも同様に、軸108Bの先端のプーリ112Bと、回転モータ110Bの出力軸114Bの先端のプーリ116Bに掛け回されたベルト118Bによって、前記回転モータ110Bの出力を受けて回転可能となっている。前記永久磁石102Aを矢印F5a方向,他方の永久磁石102Bを矢印F5b方向に回転させた場合の磁力線の作用は、図8(E)に示す通りとなっている。なお、永久磁石102Bを矢印F5b方向に回転させると、低温の壁と高温の中心部とを直接攪拌するため、均一温度を早く得るのに適している。また、永久磁石102Bを、永久磁石102Aと同方向(矢印F5a方向)に回転させると、スラリー全体が回転する。このため、実用上は、永久磁石102Aを矢印F5a方向に回転させておき、永久磁石102Bについては、攪拌開始は矢印F5b方向へ回転させ、途中から矢印F5a方向に回転を変化させるようにすると効率よく攪拌を行うことが可能となる。
次に、図6及び図7を参照して、本発明の実施例4を説明する。図6(A)は本実施例の基本構造の主要部を示す外観斜視図,図6(B)は本実施例の変形例の主要部を示す外観斜視図である。図7は、他の変形例の主要部を示す外観斜視図である。本実施例も前記実施例3と同様に、略平面状の永久磁石を利用した例である。まず、図6(A)に示すスラリー製造装置200では、永久磁石102の中心線106が、前記容器12の開口部14と底面の中心を通る中心線に対して傾くように、永久磁石102が配置されている。この場合の磁力線の様子が図8(F-1)〜(F-3)に示されており、(F-1)は容器12の上方,(F-3)は容器12の下方,(F-2)はその間の位置を示している。これらの図に示すように、永久磁石102の中心線106(軸108)を容器12に対して傾けることにより、該容器12内に斜め上方の回転力が発生し、水平方向の攪拌だけの場合よりも、容器12の深さ方向に発生する溶湯の温度差を減少させることが可能となる。
図6(B)に示すスラリー製造装置200Aは、2つの永久磁石102A,102Bを、前記容器12に対して傾けた例である。一方の永久磁石102Aは、軸108Aの先端のプーリ112Aと、回転モータ110Aの出力軸114Aの先端のプーリ116Aに掛け回されたベルト118Aによって、前記回転モータ110Aの出力を受けて回転可能となっている。他方の永久磁石102Bも同様に、軸108Bの先端のプーリ112Bと、回転モータ110Bの出力軸114Bの先端のプーリ116Bに掛け回されたベルト118Bによって、前記回転モータ110Bの出力を受けて回転可能となっている。なお、前記永久磁石102A,102Bは、前記容器12の中心軸に対して回転対称となるように配置されている。
図7に示すスラリー製造装置200Bは、前記図6(B)に示す例と同様に、2つの永久磁石102A,102Bを容器12の周囲に配置したものであるが、これらの軸108A,108Bに設けられたプーリ112A,112Bと、回転モータ110の出力軸114に設けられたプーリ116には共通のベルト120が掛け回されており、1つの回転モータ110で前記永久磁石102A,102Bを回転可能となっている。図6(B)及び図7に示した例の場合、前記図6(A)に示す例よりも更に大きな攪拌効果が得られる。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法,材質は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例1では、容器12を断面略円形のカップ形状,前記実施例2では、容器12を鍋型としたが、これも一例であり、例えば、直方体状,三角柱状など、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例1では、極42AをN極,極42BをS極としたが逆であってもよい。むろん、実施例2〜4についても同様である。
(3)前記実施例3において、永久磁石102の中心線106と、前記容器12の中心軸の相対的位置を維持しながら、永久磁石102が容器12の回りを図5に矢印F4で示すように回転するようにしてもよい。実施例4についても同様である。
(4)前記実施例1で示した隔壁50及び52,冷気供給機58による冷却機構も一例であり、同様の効果を奏するように必要に応じて適宜設計変更してよい。また、前記冷却機構は必要に応じて設けるようにすればよい。
(5)前記実施例で示した永久磁石の数も一例であり、必要に応じて適宜増減してよい。
(6)前記実施例で示した容器12の昇降機構,永久磁石の回転機構も一例であり、同様の効果を奏するものであれば、公知の各種の機構を利用してよい。
(7)前記実施例1では、溶湯としてアルミニウム合金溶湯やマグネシウム合金溶湯を具体例として挙げたが、これも一例であり、公知の各種の金属に本発明は適用可能である。
本発明によれば、金属の溶湯が注湯されるとともに、開口部を上方にして架台上に載置される非磁性体からなる容器の近傍に、(1)前記容器の外側形状に沿った面形状を有するとともに、2つの極が相対する略U字状の永久磁石,または、(2)前記容器の径方向と略平行な主面を有する略平面状の永久磁石,または、(3)2つの極を分ける中心線が前記容器の径方向と略直交する略平面状の永久磁石,のいずれかを1つ以上配置し、回転駆動機構によって、前記2つの極の境目を通る線を軸として前記永久磁石を回転させることとした。このため、固液共存状態の金属スラリーの製造に適している。特に、アルミニウム合金やマグネシウム合金の半凝固スラリーの製造に好適である。
本発明の実施例1の基本構造を示す図であり、(A)は全体構成を示す断面図,(B)は主要部の外観斜視図である。 前記実施例1の変形例を示す図であり、(A)は全体構成を示す断面図,(B)主要部の外観斜視図である。 本発明の実施例2を示す図であり、(A)は全体構成を示す断面図,(B)は主要部の外観斜視図である。 前記実施例2の実験例で生成したスラリーの金属組成を示す図である。 本発明の実施例3を示す図であり、(A)は基本構造の主要部を示す外観斜視図,(B)は変形例の主要部を示す外観斜視図である。 本発明の実施例4を示す図であり、(A)は基本構造の主要部を示す外観斜視図,(B)は変形例の主要部を示す外観斜視図である。 前記実施例4の他の変形例の主要部を示す外観斜視図である。 本発明のスラリー製造装置における磁力線の方向を示す図である。
符号の説明
10,10A:スラリー製造装置
12:容器
14:開口部
20:架台
22:ポール
24:軸
26:シリンダ
28:ケース
28A:上面
30:開口部
40,40A,40B:永久磁石
42A,42B:極
44:伝達部
46:回転モータ
46A:出力軸
48:ベルト
50,52:隔壁
54:冷却室
56:通気孔
58:冷気供給機
60:スラリー製造装置
62:台
64:架台
66:基部
68:伝達部
70:軸
72A,72B:永久磁石
74A,74B:極
76:回転モータ
78:出力軸
80:ベルト
100,100A:スラリー製造装置
102,102A,102B:永久磁石
104A,104B:極
106:中心線
108,108A,108B:軸
110,110A,110B:回転モータ
112A,112B,116,116A,116B:プーリ
114,114A,114B:出力軸
118,118A,118B,120:ベルト
200,200A,200B:スラリー製造装置

Claims (14)

  1. 金属の固液共存状態のスラリー製造装置であって、
    前記金属の溶湯が注湯されるとともに、開口部を上方にして架台上に載置される非磁性体からなる容器,
    該容器の近傍に1つ以上配置されており、前記容器の外側形状に沿った面形状を有する略U字状の永久磁石,
    該永久磁石の相対する2つの極の中間を通る線を軸として、該永久磁石を回転させる回転駆動機構,
    を備えたことを特徴とする金属スラリー製造装置。
  2. 前記永久磁石が、相対する2つの極の間に前記容器を挟むように配置されるとともに、該永久磁石の回転軸の延長線が、前記容器内の一部を通ることを特徴とする請求項1記載の金属スラリー製造装置。
  3. 金属の固液共存状態のスラリー製造装置であって、
    前記金属の溶湯が投入されるとともに、開口部を上方にして架台上に載置される非磁性体からなる容器,
    該容器の近傍に1つ以上配置されており、前記容器の径方向と略平行な主面を有する略平面状の永久磁石,
    該永久磁石の2つの極を分ける中央部において前記主面と略直交する線を軸とし、前記永久磁石を回転させる回転駆動機構,
    を備えたことを特徴とする金属スラリー製造装置。
  4. 前記永久磁石が、前記容器の底面の下方に配置されるとともに、該永久磁石の回転軸の延長線が、前記容器内の一部を通ることを特徴とする請求項3記載の金属スラリー製造装置。
  5. 好ましくは、前記永久磁石の回転軸の延長線が、前記容器の開口部及び底部の各中心を結ぶ中心線を通ることを特徴とする請求項2又は4記載の金属スラリー製造装置。
  6. 金属の固液共存状態のスラリー製造装置であって、
    前記金属の溶湯が投入されるとともに、開口部を上方にして架台上に載置される非磁性体からなる容器,
    該容器の近傍に1つ以上配置されており、2つの極を分ける中心線が前記容器の径方向と略直交する略平面状の永久磁石,
    該永久磁石の中心線を軸として、前記磁石を回転させる第1の回転駆動機構,
    を備えたことを特徴とする金属スラリー製造装置。
  7. 前記永久磁石の回転軸が、前記容器の開口部及び底部の各中心を結ぶ中心線に対する相対的位置を維持するように、該永久磁石を前記容器の周囲で回転させる第2の回転駆動機構,
    を備えたことを特徴とする請求項6記載の金属スラリーの製造方法。
  8. 前記永久磁石の回転軸が、前記容器の開口部及び底部の各中心を結ぶ中心線に対して、平行から直角までの範囲内で可動であることを特徴とする請求項6又は7記載の金属スラリー製造装置。
  9. 前記永久磁石を冷却する冷却機構を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の金属スラリー製造装置。
  10. 前記容器と前記永久磁石を相対的に上下動させる昇降機構を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の金属スラリー製造装置。
  11. 前記永久磁石の大きさが、前記容器に注入される溶湯の深さと略同等であることを特徴とする請求項1,2,6〜8のいずれかに記載の金属スラリー製造装置。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の金属スラリー製造装置の永久磁石を回転させながら、金属溶湯を液相線温度より一定の過熱度で前記容器に注湯し、該容器中の溶湯を固液共存状態のスラリーとすることを特徴とする金属スラリー製造方法。
  13. 前記金属溶湯が、アルミニウム合金溶湯又はマグネシウム合金溶湯であることを特徴とする請求項12記載の金属スラリー製造方法。
  14. 請求項12又は13記載の金属スラリー製造方法によって製造されたスラリーを、型内に圧入して鋳造する,あるいは、型内締めにより圧縮して鍛造することを特徴とする金属加工方法。
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