JP2009144539A - 冷却ファン制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な始動性の確保と内燃機関の保護との両立を図る。
【解決手段】エンジン始動期間t11〜t14においては、冷却ファンのオンオフを切り替える判定値を、通常時(基準値Tw1,Tw2)よりも高温側のシフト値Tws1,Tws2に設定する。これにより、冷却水温がオン判定値Tws1を上回るまでは冷却ファンの駆動が停止されるため、冷却ファンの駆動に基づくバッテリ負荷を軽減することができる。これにより、エンジン始動期間におけるスタータモータの回転力の低下が抑制され、良好な始動性を確保することができる。また、冷却水温Twがオンシフト値Tws1以上の過高温域に至った場合には冷却ファンを駆動させるため、エンジンの加熱による異常燃焼やエンジンの劣化を抑制することができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、冷却ファン制御装置に関するものである。
従来、内燃機関の冷却システムとしては、内燃機関内に冷却水を循環させて行うものが知られている。この冷却システムにおいては、冷却水温度が所定の高温領域にある場合に駆動される電動式の冷却ファンが設けられたものがある。電動式の冷却ファンの場合、一般にスタータモータ等と同一電源から電力が供給されることで駆動される。このため、内燃機関が停止後直ちに始動される場合(すなわち再始動される場合)には、冷却水温度が高温領域にあり、スタータモータと冷却ファンとが同時に駆動されることが考えられる。この場合、冷却ファンでの電力消費によりスタータモータの回転力が低下し、始動性が悪化するおそれがある。
そこで、このような事態を回避するために、内燃機関の始動を行う際には、冷却水温度が高温領域にある場合であっても、始動開始から所定時間は電動式の冷却ファンの駆動を停止させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開昭61−252824号公報
しかしながら、上記特許文献1のように、内燃機関の始動開始から所定時間が経過するまで冷却ファンを駆動しないとすると、この所定時間内に冷却水温度が上昇していき、冷却水温度が、内燃機関の損傷等の不都合が生じるおそれがあるほど過度に高い温度(過高温)になった場合であっても、冷却ファンは停止されたままとなる。このため、上記特許文献1では、内燃機関の過熱により異常燃焼(ノッキング等)の発生や内燃機関の劣化等の問題が生じることも考えられる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、良好な始動性の確保と内燃機関の保護との両立を図ることができる冷却ファン制御装置を提供することを主たる目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
本発明は、電力の供給を受けて内燃機関を始動させる始動装置と同一電源に接続され、前記内燃機関を冷却する冷却水の放熱を行う電動式の冷却ファンに適用され、前記冷却水の温度がファン駆動温度域にある場合に前記電源から前記冷却ファンへ電力供給して前記冷却ファンを回転駆動させる冷却ファン制御装置である。そして、請求項1に記載の発明では、前記内燃機関の始動期間において、前記冷却水の温度が前記ファン駆動温度域内であって所定温度よりも低温側にある場合には、前記冷却ファンに対し、前記始動期間以外における駆動状態を基準とした駆動制限を行い、前記所定温度よりも高温側にある場合には、前記冷却ファンの駆動制限を行わないか又は駆動制限を緩和する。ここで、「始動期間以外における駆動状態を基準とした駆動制限」とは、始動期間以外を通常時とし、その通常時における冷却ファンの駆動状態に対してその駆動が制限された状態を示す。具体的には、通常時における冷却ファンのオン状態に対するオフ状態や、デューティ制御により冷却ファンを駆動する場合において、通常時のデューティ比よりも小さいデューティ比を用いることをいう。
要するに、内燃機関を始動させようとする始動期間において、冷却水温度がファン駆動温度域にある場合には、始動装置と同時に冷却ファンが駆動されることがある。かかる場合、始動装置と冷却ファンとの電源が同一であると、両者を駆動するのに十分な電力を電源から供給できず、それによってクランキングのための電力が不足する事態が想定される。この点本発明では、内燃機関の始動期間において、冷却水温度が、ファン作動温度域内の低温側にある場合には冷却ファンの駆動制限を行うため、冷却ファンの駆動に基づく電力消費を軽減することができる。これにより、電源から始動装置への電力供給を十分に行うことができ、ひいては良好な始動性を確保することができる。
また、冷却水温度がファン駆動温度域内の高温側にある場合には冷却ファンを駆動状態にするため、内燃機関での異常燃焼や内燃機関の劣化等を抑制することができる。ここで、所定温度を、内燃機関に損傷等の不都合が生じない値として許容される上限値とすることで、内燃機関の保護を好適に図ることができる。また、ファン駆動温度域内の高温側で冷却ファンを駆動させる場合、始動期間以外における同温度域での駆動状態と同等の駆動状態で冷却ファンを駆動するのが好ましい。
冷却ファンの駆動制限を行うための具体的な手段としては、請求項2に記載したように、前記冷却水の温度が前記ファン駆動温度域内であって前記所定温度よりも低温側にある場合には、前記冷却ファンの駆動を停止することにより行う。こうすることで、冷却ファンの駆動制限時には冷却ファンでの電力消費が生じないため、クランキングのための電力が不足する事態を確実に回避する点において好適である。
冷却ファンの駆動制限を行うための具体的な他の手段としては、請求項3に記載したように、前記冷却水の温度に応じて前記冷却ファンの回転速度を可変とする冷却ファン制御装置において、前記冷却水の温度が前記ファン駆動温度域内であって前記所定温度よりも低温側にある場合には、前記冷却ファンの回転速度を、前記始動期間以外の状況で設定される回転速度よりも小さく設定する。これにより、冷却ファンの駆動制限時においても冷却ファンの回転駆動が可能になるため、始動性の確保と内燃機関の保護とを行うにあたり、内燃機関の保護をより重視する場合に好適である。
請求項4に記載の発明では、制御系に電源を供給する電源スイッチを備え、前記電源スイッチのオン後の所定時間、又は前記電源スイッチのオン状態下で前記内燃機関を停止した後の所定時間を、前記始動期間とする。電源スイッチのオン後や、電源スイッチのオン状態下で内燃機関が停止された後には、始動装置が駆動される可能性が高い。したがって、こうした状況下において始動期間を設定することで、始動装置と冷却ファンとが同時に駆動されることによる始動装置への電力供給不足を好適に回避することができる。
請求項5に記載の発明では、前記始動装置による前記内燃機関の始動完了後に前記冷却ファンの駆動制限を解除する。こうすることで、始動装置への電力供給が不要となった場合に、冷却ファンの駆動条件を元の条件に速やかに戻すことができる。
請求項6に記載の発明では、前記始動期間において前記冷却ファンがオンされたことを条件に前記冷却ファンの駆動制限を解除する。特に、電源スイッチがオンされたにもかかわらず始動装置がオフのままの場合に、冷却ファンの駆動条件を元の条件に戻すための条件として好ましく適用することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態では、車載ガソリンエンジンの冷却システムを構築するものである。
図1は、冷却システム10の全体概略構成図である。冷却システム10は、エンジン20のシリンダブロックやシリンダヘッドに形成された図示しないウォータジャケットを流れる冷却水が、エンジン20で発生した熱を吸収することでエンジン20の冷却を行っている。冷却システム10にはラジエータ12が設けられ、往流路と復流路とで構成される冷却水通路13を介してウォータジャケットに接続されている。冷却水は、ウォータジャケットを通過する間にエンジン20の熱を奪った後、一方の冷却水通路13を介してラジエータ12に導入される。そして、この冷却水がラジエータ12にて冷却された後、冷却水通路13を介してエンジン20に再び戻される。このように、冷却システム10では、冷却水がエンジン20とラジエータ12とを、冷却水通路13を介して循環することにより、エンジン20を適温に保持している。
ラジエータ12の車両後方側には冷却ファン14が設けられている。冷却ファン14は電動式であり、バッテリ40から電動モータに電力が供給されることで回転駆動する。冷却ファン14がオン状態とされると、ラジエータ12近傍に空気の流れが形成される。これにより、ラジエータ12の放熱効率が高まる。
エンジン20は、イグニッションスイッチ24やスタータスイッチ21、スタータモータ22等により構成される始動回路25に接続されている。始動回路25では、イグニッションスイッチ24がオンされることによりバッテリ40とECU30とが電気的に接続される。これにより、制御系に電力が供給され、エンジン20を駆動するための各種制御が開始される。また、始動回路25では、スタータスイッチ21がオンされることによりバッテリ40とスタータモータ22とが電気的に接続される。これにより、スタータモータ22によるクランキングが開始され、エンジン20の始動が行われる。
また、エンジン20には、冷却水温Twを検出する水温センサ26や、エンジン20の所定クランク角毎に(例えば30°CA周期で)矩形状のクランク角信号を出力するクランク角度センサ28等が取り付けられている。水温センサ26からの冷却水温Tw、クランク角度センサ28からのエンジン回転速度Ne等といったエンジン20の運転状態を検出する各種センサからの信号は、電子制御ユニット30(以下、ECU30という)に入力される。
ECU30は、周知のCPU、ROM、RAM、EEPROM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されており、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、その都度のエンジン運転状態等に応じた各種制御を実施する。すなわち、ECU30は、水温センサ26やクランク角度センサ28などの各種センサから随時入力する各種の検出信号や、スタータスイッチ21がオン状態の場合に入力するスタータ信号などの各種の動作信号等に基づいてエンジン20の各種制御(例えば燃料噴射制御や点火制御など)を実施する。また、ECU30は、冷却水温Twに基づいて冷却ファン14に駆動信号を出力する。
次に、冷却ファン14の駆動制御について図2及び図3を用いて説明する。図2は、基本制御における冷却ファン14の駆動状態の推移を示すタイムチャートであり、図3は、冷却ファン14の基本制御(ファン基本処理)を示すフローチャートである。
冷却ファン14の基本制御では、冷却ファン14のオン状態が許容される冷却水温領域(ファン駆動温度域)において、冷却水温にヒステリシスを持たせて冷却ファン14のオン状態とオフ状態とを切り替える。具体的には、図2に示すように、冷却水温Twがオン判定値Tthon(例えば105℃)を上回った場合に冷却ファン14をオフからオンに切り替える。これに対し、冷却水温Twがオン判定値Tthonよりも低いオフ判定値Tthoff(例えば100℃)を下回った場合に冷却ファン14をオンからオフに切り替える。
次に、基本制御について図3のフローチャートを用いて説明する。本処理は、ECU30により所定の時間周期(例えば10msec周期)で繰り返し実行される。
ファン基本処理では、まず、冷却ファン14がオフ状態か否かを判定する(ステップS101)。冷却ファン14がオフ状態であれば、ステップS102に進み、冷却水温Twがオン判定値Tthon以上であるか否かを判定する。オン判定値Tthon以上の場合には、ステップS103へ進み、冷却ファン14をオン状態に切り替える。一方、オン判定値Tthon未満の場合には、冷却ファン14のオフ状態を維持する。
これに対し、ステップS101で冷却ファン14がオン状態の場合には、ステップS104へ移行する。ステップS104では、冷却水温Twがオフ判定値Tthoff以下であるか否かを判定する。オフ判定値Tthoff以下の場合には、ステップS105へ進み、冷却ファン14をオフ状態に切り替える。一方、オフ判定値Tthoffより大きい場合には、冷却ファン14のオン状態を維持する。
ところで、エンジン20の停止中にデッドソーク等により冷却水温が上昇し、エンジン20の始動を開始する際に冷却水温Twがオン判定値Tthon以上になっている場合が考えられる。かかる場合、冷却ファン14の駆動条件を満たしていることから、スタータモータ22と冷却ファン14とを同時に駆動させるのに必要な電力がバッテリ40で必要となる。この状態では、冷却ファン14の電気負荷により、スタータモータ22を回転させるのに十分な電力を、バッテリ40からスタータモータ22へ供給できないおそれがある。これにより、スタータモータ22の回転力が低下してしまい、エンジン20の始動性が悪化するおそれがある。
そこで、本実施形態では、エンジン20の始動期間における判定値Tthon,Tthoffを、始動期間以外(例えば車両走行中や車両停止時など、以下通常時ともいう)よりも高温側に設定する(すなわち冷却ファン14の駆動温度域を高温側にシフトする)ことで、冷却ファン14がオン判定値Tthon未満の場合における冷却ファン14の駆動を制限しつつ、冷却水温がオン判定値Tthon以上となった場合には、冷却ファン14を駆動させる。これにより、エンジン始動性の維持とエンジン保護との両立を図る。
ここで、エンジン始動期間とは、スタータスイッチ21のオン操作がなされる可能性がある期間であって、具体的には、イグニッションスイッチ24のオン切替時からスタータスイッチ21のオフ切替時までの期間、又はイグニッションスイッチ24がオン状態下でのエンジン停止時からの所定時間(例えば10min)、を示す。
続いて、本実施形態の冷却ファン14の駆動制御(判定値可変駆動処理)を、図4のフローチャートを用いて説明する。この処理は、ECU30により所定の時間周期(例えば10msec周期)で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS201及びS202において、エンジン始動期間か否かを判定する。ここでは、ステップS201でイグニッションスイッチ24のオン切替時か否かを判定し、ステップS202でイグニッションスイッチ24がオンのままエンジンストール(エンスト)が発生したか否かを判定する。ステップS202では、イグニッションスイッチ24がオンのままエンジン回転速度Neが略ゼロになった場合に肯定判定がなされる。そして、ステップS201又はステップS202で肯定判定された場合には、その後の短時間のうちにスタータモータ22が回転駆動される可能性が高いものと判断し、ステップS203へ移行する。
ステップS203では、オン判定値Tthon及びオフ判定値Tthoffを、それぞれオンシフト値Tws1及びオフシフト値Tws2に設定する。ここで、オンシフト値Tws1は、エンジン始動期間以外の通常制御においてオン判定値Tthonとして設定されるオン基準値Tw1(例えば105℃)よりも高温側に設定された値(例えば115℃)である。このオンシフト値Tws1は、冷却ファン14を駆動停止させるのにあたり、エンジン20に損傷等の不都合が生じない値として許容される上限値とすることができる。また、オフシフト値Tws2は、通常制御でのオフ判定値Tthoffとして設定されるオフ基準値Tw2(例えば100℃)よりも高温側に設定された値(例えば110℃)であり、オンシフト値Tws1よりも低温側の値である。
ステップS202又はS203の後のステップS204では、判定値Tthon,Tthoffがシフト値Tws1,Tws2に設定されているか否かを判定する。判定値Tthon,Tthoffが基準値Tw1,Tw2の場合には、ステップS204で否定判定がなされ、ステップS211へ進み、上述した図3のファン基本処理を実行する。ここでのファン基本処理では、判定値Tthon,Tthoffとして基準値Tw1,Tw2を用いる。
これに対し、ステップS204で、判断値Tthon,Tthoffがシフト値Tws1,Tws2に設定されている場合には、ステップS205へ進み、イグニッションスイッチ24のオン後又はエンスト後においてスタータスイッチ21がオンされる前か否かを判定する。そして、イグニッションスイッチ24のオン後又はエンスト後においてスタータスイッチ21がオンされた後の場合には、ステップS209へ移行する。
ステップS209では、エンジン始動が完了したか否かを判定する。ここでは、スタータスイッチ21のオフ後から規定時間TA(例えば数msec)が経過したか否かに基づいて判定する。そして、スタータスイッチ21のオフ後から時間TAが経過したことを条件に、ステップS210へ移行する。ステップS210で判定値Tthon,Tthoffを基準値Tw1,Tw2に戻した後、ステップS211のファン基本処理を実行する。このように、クランキングが完了してスタータモータ22がオフ状態になった場合には、もはやスタータモータ22への電力供給を行う必要がないことから、判定値Tthon,Tthoffを基準値Tw1,Tw2に戻し、冷却ファン14の駆動制限を解除する。
なお、ステップS209では、時間TAの経過を待つことなくスタータスイッチ21のオフ後直ちにステップS210へ移行してもよい。また、スタータスイッチ21のオンオフ状態の代わりに、別の条件(例えばエンジン20の回転速度など)にてエンジン始動が完了したか否かを判定してもよい。
一方、ステップS205でイグニッションスイッチ24のオン後又はエンスト後においてスタータモータ22がオン前の場合には、ステップS206へ移行する。ステップS206では、イグニッションスイッチ24のオン切替時又はエンスト発生時から待機時間TB(例えば10min)が経過したか否かを判定する。待機時間TBが未だ経過していない場合には、ステップS211でファン基本処理を実行せずに、そのまま本処理を終了する。
そして、ステップS206で、イグニッションスイッチ24のオン切替時又はエンスト発生時から待機時間TBが経過すると、ステップS207へ進み、イグニッションスイッチ24のオン後又はエンスト発生後に一度でも冷却ファン14がオンされたか否かを判定する。冷却ファン14が一度もオンされていない場合には、冷却ファン14の駆動制限を解除して、ステップS208の処理を実行する。ステップS208では、冷却水温Twがオン判定値Tthon(ここではオンシフト値Tws1)以上か否かを判定する。そして、冷却水温Twがオン判定値Tthon以上の場合には、ステップS211へ進み、ファン基本処理を実行する。一方、冷却水温Twがオン判定値Tthon未満の場合には、冷却ファン14の駆動条件を満たさないため、そのままこの処理を終了する。また、ステップS207で冷却ファン14が一度でもオンされている場合には、ステップS210へ移行し、判定値Tthon,Tthoffを基準値Tw1,Tw2に設定変更した後、ステップS211のファン基本処理を実行する。
次に、判定値可変駆動処理における冷却ファン14の駆動状態の推移を、図5のタイムチャートを用いて説明する。図5では、エンジン20の高温再始動を想定している。図5のうち(a)及び(b)は、イグニッションスイッチ24のオン後にスタータスイッチ21がオンされた場合であって、(a)は冷却水温Twがオンシフト値Tws1を超えない場合、(b)は冷却水温Twがオンシフト値Tws1以上となる場合、を示す。また、(c)は、イグニッションスイッチ24のオン切替後にスタータスイッチ21がオンされない場合を示す。
まず、図5(a)では、イグニッションオンされた時刻t11で、判定値Tthon,Tthoffが、通常時における基準値Tw1,Tw2から始動時におけるシフト値Tws1,Tws2へ設定変更される。このため、エンジン始動時には、冷却水温が上昇してオン基準値Tw1を上回った場合であっても、オンシフト値Tws1を超えるまでは冷却ファン14の駆動停止が維持される。このとき、オンシフト値は、冷却ファン14のオフ状態下でエンジン20に損傷等の不都合を与えない値に設定されていることから、エンジン保護を考慮しつつ節電を行うことができる。
時刻t11後の時刻t12でスタータオンされた後、時刻t13でスタータスイッチ21がオフされると、判定値Tthon,Tthoffが、シフト値Tws1,Tws2から基準値Tw1,Tw2へ戻される。ただし、本実施形態では、時刻t13から規定時間TAが経過した時刻t14で判定値Tthon,Tthoffを変更する。このように、時刻t11〜t14までのエンジン始動期間では、通常時でのファン駆動に対してその駆動が制限されることとなる。
次に、イグニッションスイッチ24のオン時又はオン後に冷却水温Twがオンシフト値Tws1以上になった場合を考える。この場合、図5(b)に示すように、スタータスイッチ21がオン状態であることを条件としてファン基本処理が実行される。図5(b)においては、冷却水温Twがオンシフト値Tws1以上であってスタータスイッチ21がオン状態である時刻t22で冷却ファン14がオン状態に切り替えられる。このように、冷却水温がオンシフト値Tws1以上となり、エンジン20の損傷等の不都合が生じるおそれがあるほど過度に高い温度(過高温)領域に至った場合には、冷却ファン14を駆動してエンジン保護を図る。
一方、図5(c)に示すように、時刻t31でイグニッションオンした後、スタータスイッチ21がオンされない場合には、時刻t31から待機時間TBが経過するまでは冷却ファン14の駆動を停止しておく。そして、時刻t31から待機時間TBが経過した後の時刻t32で、冷却水温Twがオンシフト値Tws1以上であることを条件として冷却ファン14を駆動する。冷却ファン14を一旦オンした場合には、判定値Tthon,Tthoffを基準値Tw1、Tw2に戻す。このように、スタータスイッチ21がオンされない(すなわちエンジン停止が継続されている)場合には、冷却水温が過高温に至った場合であってもエンジン20への負担は少ないと考えられるため、冷却ファン14をできる限り駆動しないことにより節電を優先して行う。
以上説明した第1の実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
従来においてはエンジン始動時から所定時間は冷却ファン14を駆動しないとしたが、この場合、冷却水温がいかなる温度(過高温など)であっても冷却ファン14は駆動されない。これに対し、本実施形態では、エンジン始動期間において、オン判定値Tthonを通常時よりも高温側にシフトすることで冷却ファン14の駆動制限を行う。かかる場合、冷却水温がオン判定値Tws1を上回るまでは冷却ファン14の駆動が停止されるため、冷却ファン14の駆動に基づくバッテリ負荷を軽減することができる。これにより、エンジン始動期間におけるスタータモータ22の回転力の低下が抑制される。その結果、良好な始動性を確保することができる。また、冷却水温Twがオン判定値Tthon(オンシフト値Tws1)以上の過高温域に至った場合には冷却ファン14を駆動するため、エンジン20の加熱による異常燃焼やエンジン20の劣化を抑制することができる。
冷却水温が上昇中の場合、オン基準値Tw1を超えてからオンシフト値Tws1に至るまでの温度域では冷却ファン14を停止したままにするため、冷却ファン14による電力消費が発生せず、バッテリ負荷の軽減を図る上で好適である。
判定値Tthon,Tthoffの高温側へのシフトは、イグニッションスイッチ24のオン切替時、又はイグニッションスイッチ24がオン状態のままエンジンストールが発生した場合(エンスト発生時)に行われるため、スタータモータ22が駆動される際に、判定値Tthon,Tthoffを確実に高温側に変更しておくことができる。また、これらの事象によれば、その後にスタータモータ22の駆動要求がなされる可能性が高いため、好適である。
イグニッションスイッチ24のオン後又はエンスト発生後にスタータスイッチ21がオンされない場合には、待機時間TBが経過するまで冷却ファン14を駆動しないため、スタータモータ22への電力供給を十分に行うことができ好適である。なお、待機時間TBが経過した後は、冷却水温が上昇から下降に転じているものと推測される。このため、スタータモータ22と冷却ファン14とが同時にオンされることによるスタータモータ22での電力低下は生じないものと考えられる。
また、オン判定値Tthonだけでなくオフ判定値Tthoffも高温側にシフトさせるため、スタータモータ22の回転駆動中における冷却ファン14の駆動をより制限することができ、好適である。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、作動デューティによるファン回転速度の可変制御により冷却ファン14の駆動制御を実行する。
具体的には、ECU30は、冷却水温Twと冷却ファン14の作動デューティ比Dとの関係を示すデューティ比設定用マップを予めROMに記憶しており、このマップを用いて冷却水温Twに対する作動デューティ比Dを設定する。そして、設定された作動デューティ比Dで冷却ファン14の電動モータを駆動することにより、冷却ファン14の回転速度の可変制御を実行する。
図6は、デューティ比設定用マップの一例である。図6のうち一点鎖線は冷却ファン14の通常制御で用いるマップ(通常マップ)を表し、実線はエンジン始動期間における駆動制御で用いるマップ(始動時マップ)を表す。本実施形態における通常マップでは、図6(a)に示すように、ファン駆動温度域(冷却水温Tw≧T1の温度域)において、エンジン20の冷却水温Twが高いほど冷却ファン14の電動モータのデューティ比Dが大きくなるよう(すなわちファン回転速度が大きくなるよう)に冷却水温Twと作動ディーティ比Dとが関連付けられている。また、冷却水温TwがT2(T2>T1)以上の温度域では、作動デューティ比Dが最大デューディ比D2に設定されている。
これに対し、始動時マップでは、図6(a)に示すように、通常時におけるファン駆動温度域のうちT1からT4までの温度域において、作動デューティ比Dが通常時よりも小さい値に設定されている。この始動時マップでは、ファン駆動温度域が高温側へシフトされており、T3(>T1)以上の温度域となっている。また、始動時マップでは、通常制御において最大デューティ比D2とされるファン駆動温度域(Tw≧T2の温度域)が高温側(Tw≧T4の温度域)にシフトされており、冷却水温TwがT4(>T2)以上の温度域で、作動デューティ比Dが最大デューディ比D2に設定されている。ここで、T4は、冷却ファン14の回転速度を制限した状態下でエンジン20に損傷等の不都合が生じない値として許容される上限値(例えば115℃)とすることができる。
なお、冷却水温Twと作動デューティ比Dとの関係はこれに限定しない。例えば、図6(b)に示すように、始動期間においては、ファン駆動温度域を通常時と同じ温度域(Tw≧T1の温度域)としつつ、最大デューティ比D12の設定温度域(Tw≧T2の温度域)を高温側へシフトしてもよい。また、図6(c)に示すように、始動時における最大デューティ比D22を、通常時における最大デューティ比D23よりも小さい値としてもよい。あるいは、運転状態を示す他のパラメータ(例えば車速など)を含めて関連付けてもよい。
図7は、本実施形態における冷却ファン14の駆動処理手順を示すフローチャート(デューティ比可変駆動処理)である。本処理は、上述した図4の処理に置き換えてECU30により所定の時間周期(例えば10msec周期)で繰り返し実行される。
図7の処理では、まずステップS301及びS302において、図4のステップS201及びS202と同様の処理を実行する。そして、ステップS301又はステップS302で肯定判定された場合には、短時間のうちにスタータモータ22が回転駆動される可能性が高いものと判断し、予めROMに記憶されたデューティ比設定用マップとして、冷却ファン14の回転速度が抑制される始動時マップ(図6参照)を選択する(ステップS303)。
ステップS302又はS303の後、ステップS304へ移行する。ステップS304では、始動時マップが選択されているか否かを判定する。始動時マップが選択されている場合には、図4のステップS205〜S208と同様のステップS305〜S309処理を実行し、ステップS310として、図4のステップS210の代わりに、デューティ比設定用マップとして通常マップ(図6参照)を選択する。そして、現在選択されているマップを用いて冷却水温Twから冷却ファン14の電動モータのデューティ比Dを設定し、該設定した作動デューティ比Dで冷却ファン14の電動モータを駆動する(ステップS311)。これにより、デューティ比Dに応じた回転速度で冷却ファン14が駆動されることとなる。
以上説明した第2の実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
冷却ファン14の駆動制限を作動デューディ比Dにより行うため、冷却ファン14の回転速度の低下による冷却ファン14の駆動制限を行うことができる。このため、ファン作動温度域内において、ファン回転速度を低下した状態で冷却ファン14の回転を継続して行うことが可能となる。したがって、バッテリ負荷の低減とエンジン保護とを並行して行うに際し、エンジン保護をより優先して行う場合に好適である。
(別の実施形態)
本発明は、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
上記第1の実施形態では、エンジン始動期間においては、冷却水温Twがオンシフト値Tws1以上になった場合には、スタータスイッチ21がオンであることを条件として冷却ファン14を駆動したが、スタータスイッチ21のオンオフにかかわらず、冷却水温Twがオンシフト値Tws1以上であれば冷却ファン14を駆動するとしてもよい。この場合における冷却ファン14の駆動状態の推移を図8に示す。なお、図8のうち(a)はイグニッションスイッチ24のオン後にスタータスイッチ21がオンされた場合を示し、(b)はイグニッションスイッチ24のオン後スタータスイッチ21がオフされたままの場合を示す。この形態においては、図8(a)及び(b)に示すように、イグニッションオン後に冷却水温Twがオンシフト値Tws1以上になった時点(時刻t41及び時刻t51)で、冷却ファン14が速やかにオン状態とされる。これにより、スタータスイッチ21のオン前にも冷却ファン14を駆動させることができ、エンジン20の保護を好適に行うことができる。
また、上記第1の実施形態において、冷却水温Twがオンシフト値Tws1以上であっても、イグニッションオンから所定時間(例えば数分〜数十分)が経過するまでは冷却ファン14の駆動を禁止し、所定時間が経過したのちに冷却ファン14の駆動を許可してもよい。この場合、イグニッションオンから所定時間は冷却ファン14の駆動を停止し、その後、シフト値Tws1,Tws2を用いてファン制御を実行する。こうすれば、冷却ファン14が駆動制限される頻度を高くすることができるため、エンジン20の始動性を向上させる点で好適である。
上記第1の実施形態では、ステップS207で冷却ファン14が一度もオン状態にされていない場合にはステップS208で冷却水温Twがオン判定値Tthon以上か否かを判定し、ステップS208で肯定判定がなされた場合にはステップS211でファン基本処理を実行したが、ステップS208及びS211を実行することなく、そのまま本処理を終了してもよい。
上記第1の実施形態では、エンジン始動期間においては、オン判定値Tthon及びオフ判定値Tthoffを高温側にシフトしたが、オン判定値Tthonのみを高温側にシフトしてもよい。この場合であっても、上記効果を達成することができる。また、冷却ファン14のオン状態とオフ状態とを切り替えるにあたり、ヒステリシスを持って行ったが、1つの判定値を用いて行ってもよい。さらに、上記第2の実施形態において、ヒステリシスを持って冷却ファン14の回転速度におけるデューティ制御を行ってもよい。
冷却システムの全体概略構成図。 基本制御における冷却ファンの駆動状態の推移を示すタイムチャート。 ファン基本処理のフローチャート。 高温再始動における冷却ファンの駆動状態の推移を示すタイムチャート。 判定値可変駆動処理のフローチャート。 デューティ比設定用マップの一例を示す説明図。 デューディ比可変駆動処理のフローチャート。 別の実施形態の高温再始動における冷却ファンの駆動状態の推移を示すタイムチャート。
符号の説明
10…冷却システム、14…冷却ファン、20…エンジン、21…スタータスイッチ、22…始動装置としてのスタータモータ、24…電源スイッチとしてのイグニッションスイッチ、26…水温センサ、30…冷却ファン制御装置としてのECU、40…バッテリ。

Claims (6)

  1. 電力の供給を受けて内燃機関を始動させる始動装置と同一電源に接続され、前記内燃機関を冷却する冷却水の放熱を行う電動式の冷却ファンに適用され、
    前記冷却水の温度がファン駆動温度域にある場合に前記電源から前記冷却ファンへ電力供給して前記冷却ファンを回転駆動させる冷却ファン制御装置であって、
    前記内燃機関の始動期間において、前記冷却水の温度が前記ファン駆動温度域内であって所定温度よりも低温側にある場合には、前記冷却ファンに対し、前記始動期間以外における駆動状態を基準とした駆動制限を行い、前記所定温度よりも高温側にある場合には、前記冷却ファンの駆動制限を行わないか又は駆動制限を緩和するファン制御手段を備えることを特徴とする冷却ファン制御装置。
  2. 前記ファン制御手段は、前記冷却水の温度が前記ファン駆動温度域内であって前記所定温度よりも低温側にある場合には、前記冷却ファンを駆動停止させることにより前記冷却ファンの駆動制限を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷却ファン制御装置。
  3. 前記ファン制御手段は、前記冷却水の温度に応じて前記冷却ファンの回転速度を可変とするものであり、前記冷却水の温度が前記ファン駆動温度域内であって前記所定温度よりも低温側にある場合には、前記冷却ファンの回転速度を、前記始動期間以外の状況で設定される回転速度よりも小さく設定することにより前記冷却ファンの駆動制限を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷却ファン制御装置。
  4. 制御系に電源を供給する電源スイッチを備え、
    前記ファン制御手段は、前記電源スイッチのオン後の所定時間、又は前記電源スイッチのオン状態下で前記内燃機関を停止した後の所定時間を、前記始動期間とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷却ファン制御装置。
  5. 前記ファン制御手段は、前記始動装置による前記内燃機関の始動完了後に前記冷却ファンの駆動制限を解除することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の冷却ファン制御装置。
  6. 前記ファン制御手段は、前記始動期間において前記冷却ファンがオンされたことを条件に前記冷却ファンの駆動制限を解除することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の冷却ファン制御装置。
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