JP2009144053A - 近赤外線吸収材料、およびこれを含む積層体 - Google Patents

近赤外線吸収材料、およびこれを含む積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】1000nm以上の近赤外線を吸収し、製造が容易で、樹脂との相溶性または分散性が良好であり、耐熱性、耐久性に優れた近赤外線吸収材料を提供する。
【解決手段】一般式(1)等で表される化合物。一般式(1)
Figure 2009144053

【選択図】なし

Description

本発明は、新規のジチオール系材料からなる近赤外線吸収材料、該近赤外線吸収材料を含有する近赤外線吸収材料、前記近赤外線吸収材料を含む層を有する積層体、前記近赤外線吸収材料を含む近赤外線吸収フィルムおよび前記近赤外線吸収材料を含む近赤外線吸収フィルターに関する。更に詳細には、半導体受光素子用、プラズマディスプレイ用、液晶ディスプレイ用などの光学フィルターやその他種々の近赤外線吸収あるいは近赤外線カットフィルター、近赤外線吸収あるいは近赤外線カットフィルム、さらには光学記録用色素、レーザーマーキング用近赤外線吸収材料、レーザー溶着における近赤外線吸収材料など種々の用途において有用に用いられる、前記近赤外線吸収材料、これら近赤外線吸収材料を含む層を有する積層体、前記近赤外線吸収材料を含む近赤外線吸収フィルムおよび前記近赤外線吸収材料を含む近赤外線吸収フィルターに関する。
近赤外部に吸収を有する近赤外線吸収材料としては、種々のものが知られている。これら近赤外線吸収材料の中で、有機ニッケル系錯体は、一般に800nm〜1100nmの近赤外部に吸収を有し、近赤外線吸収材料として優れた性質を有している。そして主な用途として、近赤外線を吸収・カットする機能を有する半導体受光素子用の光学フィルター、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用近赤外線吸収フィルム、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体、電子機器用近赤外線カットフィルター、写真用近赤外線フィルター、保護めがね、サングラス、熱線遮断フィルム、光学記録用色素、光学文字読み取り記録、機密文書複写防止用、電子写真感光体、レーザー溶着、プラズマディスプレイ用前面フィルターなどの用途に用いられている。またCCDカメラ用ノイズカットフィルター、CMOSイメージセンサ用フィルターにも用いられている。
一方、プラズマディスプレイ(PDP)では、発光素子が800〜1050nmのネオンガスの輝線を発し、これにより近赤外線リモコンを用いた機器の誤作動が発生するという問題がある。これを解決するためにPDPには近赤外線を吸収するフィルターが用いられているが、このフィルターには優れた可視透過性が求められる。また、このフィルターに用いられる色素には高い熱安定性、高耐光性も要求されているが、材料劣化によるフィルターの色度変化・近赤外線吸収能力の低下が課題となっている。
また、カメラやビデオカメラ等の光学機器では、光信号を電気信号に変換するために、シリコンダイオード素子、相補型金属酸化物半導体(CMOS)や電荷結合素子(CCD)等が使用される。これらの光−電気変換素子(以下、「光学素子」という)は、300〜1100nmという広範囲の光感応領域を有するので、人間の目の視感度400〜700nmと比較すると、近赤外領域で強く感応することになる。一般に、カメラやビデオカメラのような光学機器では、人間の視感度領域の波長光に感応することが必要で、この領域から外れた波長光はむしろ好ましくなく、測光や色再現性に支障をきたすこととなる。したがって、この場合、可視光線を透過し、かつ、近赤外領域の光を効率よく吸収カットする光学フィルターが必要となる。
上記CCD、CMOS用フィルターとしてりん酸エステル銅化合物を樹脂に分散したもの(例えば、特許文献1〜5参照)、ローパス機能と視感度補正機能を有する複合光学フィルター(例えば、特許文献6参照)ホスフィン酸化物をモノマーの一成分として重合させた樹脂からなるフィルター(例えば、特許文献7参照)等があるが、耐久性・透明性という点では必ずしも満足できるものではない。
有機ニッケル系錯体としてジチオール系錯体も知られている。公知のジチオール系錯体近赤外線吸収材料としては、ビス(ジチオベンジル)ニッケル錯体化合物(例えば、特許文献8、9参照)、ビス(1,2−アセナフチレンジチオラト)ニッケル錯体化合物(例えば、特許文献10参照)、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオールニッケル錯体(例えば、特許文献11参照)、アルコキシ基を有するビス(ジチオベンジル)ニッケル錯体化合物(例えば、特許文献12参照)が挙げられる。また、高分子ジチオール錯体ではジチオラートニッケル高分子錯体(例えば、特許文献13参照)、ビスジチオレン錯体ポリマー(例えば、特許文献14参照)等が知られている。ビスジチオレン錯体ポリマーは、〜800nmと比較的短波長に吸収波長領域があり、一般的な近赤外線吸収材料用途としては不適である。また錯体骨格部位に置換基を持たないため溶解性に乏しいという欠点があった。また多核型チオール錯体(例えば、特許文献15参照)あるいは4級ホスホニウムビス(シス−1,2−エチレンジチオラト)ニッケレート誘導体(例えば、特許文献16参照)、二級アルキル基を有するジチオレート金属錯体(例えば、特許文献17参照)も長波長吸収材料として知られているが、溶媒に対する溶解性が低い、樹脂との相溶性に乏しい、あるいは融点が低いため耐熱性に欠けるなど、実用的ではなかった。
同様に近赤外線吸収化合物としてフタロシアニン系材料が知られている。このようなフタロシアニン系材料として、置換基を有するフタロシアニン化合物もしくはナフタロシアニン化合物(例えば、特許文献18参照)、アミノ基を有するフタロシアニン化合物(例えば、特許文献19〜23参照)、含フッ素フタロシアニン化合物(例えば、特許文献24、25参照)等が知られている。
さらに、ジイモニウム系色素は、長波長(950nm〜1100nm)を幅広く吸収し、かつ可視光の透明性も極めて良好な材料であり、種々のものが知られている(例えば、特許文献26〜29参照)。そしてこの色素は、高い溶解性、樹脂相溶性をも有している。しかしながら、ジイモニウム系材料はカウンターアニオンとの有機塩構造であり、このカウンターアニオンは脱離しやすい。そうするとジイモニウムのキノイド構造がベンゼノイド構造に変化するため近赤外線吸収波形が大きく変化する。こういったことを考慮すると耐溶剤性、耐熱性や耐光性は、必ずしも満足できるものではない。
また、特殊な例ではオレフィンコポリマーを置換基としてもつジチオールニッケル錯体(例えば特許文献30)も知られているが、合成過程も長く、合成の難易度が高いこと、また色素が樹脂に連結されているため合成後色素の濃度を調節することが難く、合成毎にモル吸光係数がばらつくことを考えると明らかに実用的ではない。
上記近赤外線吸収材に用いられる近赤外線吸収色素は、一般的に、溶媒に溶解させた後、樹脂と混合してプラスチック等の基板にコーティングするか、あるいは樹脂と加熱混練されて、フィルム状、シート状、板状あるいはその他の形状に成形されて用いられる。そのため、上記近赤外線吸収色素には、溶媒に対する溶解性や樹脂との相溶性等に優れていることが求められる。さらに、上記近赤外線吸収材料は、屋外で使用される場合もあるので、近赤外線吸収色素自身にも高い耐久性、熱安定性等が要求される。
WO99/26951号公報 WO99/26952号公報 特開2000−7871号公報 WO98/55885号公報 特開2000−38396号公報 特開平8−146216号公報 特開2000−98130号公報 特開昭63−227597号公報 特開昭64−61492号公報 特許第2923084号公報 特開昭63−307853号公報 特開平2−264788号公報 特開平4−198304号公報 米国特許第5089585号明細書 特開2005−181966号公報 特公平6−72147号公報 特開2005−232158号公報 特開平10−78509号公報 特開2004−18561号公報 特開2001−106689号公報 特開2000−63691号公報 日本特許第2746293号公報、 日本特許第3226504号公報 日本特許第2907624号公報、 日本特許第3014221号公報 特開平05−247437号公報 特開2005−325292号公報 日本特許第3699464号公報 特開2003−096040号公報 米国特許第6489399号明細書
従来近赤外線吸収色素として用いられている、置換ベンゼンジチオールニッケル錯体類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ビスジチオベンジルニッケル錯体類等は、近赤外線吸収材料として配合されて用いられたとき、必ずしも満足すべき効果を示しているとはいえない。例えば、フタロシアニン類は、種々の置換基で置換されて、溶媒への溶解性を向上させているが、その結果、耐光性、熱安定性等が劣ったものとなっている。また、吸収スペクトルがシャープであるため近赤外線を吸収できる波長範囲が小さい。一方、置換ベンゼンジチオールニッケル錯体類は、製造が比較的容易であること、耐久性が良好という等の点においては優れているが、溶媒への溶解性が小さく、また樹脂との相溶性または分散性に劣るという問題がある。
従来の近赤外線吸収材料、たとえばジイモニウム系材料は溶解性・吸収波長特性・可視光透明性に優れるが耐久性が低い、フタロシアニン系材料では溶解性・耐久性は良好であるが、長波長吸収が難しい、可視光透明性が悪い、ビスジチオベンジルニッケル錯体系は耐久性・近赤外線吸収特性、可視光透明性は良好だが溶解性が低い、といったように近赤外線吸収材料に求められる特性をバランスよく満たすことは困難である。
近赤外線吸収波長の観点から言えば、ジイモニウム材料以外で1000nm以上の長波長に吸収をもつ材料を合成することは難しい。長波長の近赤外線領域を吸収する材料を合成する場合、ジイモニウムやシアニン材料のような有機系色素の場合、イオン化構造にして長波長吸収を実現することが多く、その場合化合物自身が不安定な構造になってしまう。また、ニッケル錯体材料やフタロシアニン材料などの有機金属錯体では大幅な着色の出現や、不溶化など問題が出る場合が多い。また、溶解度の点ではたとえば十分な量の色素を含有させるべく色素を樹脂などに分散または溶解させた場合、凝集色素が原因となって、近赤外線吸収層が部分的に不透明になるという問題が生じる。1000nm以上の近赤外線を吸収する場合、上記問題点が複合的生じることが多く、その結果近赤外線吸収能力や耐久性が大幅に悪化して良好な近赤外線吸収特性を有する層を得ることができない。
したがって、本発明の目的は、1000nm以上の近赤外線を吸収し、製造が容易で、樹脂との相溶性または分散性が良好であり、耐熱性、耐久性に優れた近赤外線吸収材料を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記優れた特性を有する近赤外線吸収材料を含有する近赤外線吸収組成物を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記優れた特性を有する近赤外線吸収材料を少なくともその一層に含有する近赤外線吸収性積層体あるいは上記優れた特性を有する近赤外線吸収材料を含む樹脂フィルムを提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記優れた特性を有する近赤外線吸収材料を含有する光学フィルターを提供することである。
本発明は、下記近赤外線吸収材料、積層体、樹脂フィルムおよび、光学フィルターに関する。
本発明は下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物に関する。
一般式(1)
Figure 2009144053
(式中、M1は金属原子を表し、
1〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシ基を表し、
3とR4、および、R9とR10はそれぞれ互いに結合して環を形成しても良く、
また一価のカチオンと塩を形成しても良い。)
一般式(2)
Figure 2009144053
(式中、M2は金属原子を表し、
13〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシ基を表し、
13とR14、および、R15とR16はそれぞれ互いに結合して環を形成しても良く、
また一価のカチオンと塩を形成しても良い。)
本発明は上記記載の化合物を含んでなる近赤外線吸収材料に関する。
さらに本発明は上記記載の化合物およびこれと異なる吸収波長を有する化合物とを含む近赤外線吸収材料に関する。
さらに本発明はバインダー樹脂および/または溶剤を含む上記近赤外線吸収材料に関する。
さらに本発明はバインダー樹脂が粘着性バインダーである上記近赤外線吸収材料に関する。
さらに本発明は上記近赤外線吸収材料を含む層を有してなる積層体に関する。
さらに本発明は上記積層体を含んでなる光学フィルターに関する。
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収材料は、製造が容易であり、耐光性、耐熱性に優れ、1000nm以上に幅広い吸収を持つ材料で、近赤外線吸収材料として有用な材料である。また、本発明の近赤外線吸収材料は薄い膜でも近赤外線吸収性が良好で、可視光領域の光透過率も高く、耐久性の優れた膜を形成することができる。
また、本発明の近赤外線吸収材料は基材に塗布することにより被膜を形成することができるが、それ自体で樹脂フィルムを形成することもできる。得られた近赤外線吸収性膜、この膜を有する積層体および近赤外線吸収性樹脂フィルムは、プラズマディスプレイ用、液晶ディスプレイ用、CCDカメラ用またはCMOSイメージセンサ用などの光学フィルターとして、また省エネルギー用として用いられる熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用近赤外線吸収フィルム、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体やレーザー溶着、電子機器用近赤外線カットフィルター、写真用近赤外線フィルター、保護めがね、サングラス、熱線遮断フィルム、光学記録用色素、光学文字読み取り記録、機密文書複写防止用、電子写真感光体など種々の用途に好ましく用いることができる。
本発明は、上記一般式(1)で表される新規な近赤外線吸収材料、この新規な近赤外線吸収材料を含む近赤外線吸収組成物、前記近赤外線吸収材料または前記近赤外線吸収組成物を含む層を有する積層体、前記近赤外線吸収材料を含む近赤外線吸収樹脂フィルム、これら近赤外線吸収積層体や近赤外線吸収樹脂フィルムを含む近赤外線吸収フィルターに関する。
以下、本発明の新規な化合物から具体的に説明する。一般式(1)において:
Figure 2009144053
1は金属原子を表し、
1〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシ基を表し、
3とR4、および、R9とR10はそれぞれ互いに結合して環を形成しても良く、
また一価のカチオンと塩を形成しても良い。
また、一般式(2)において:
Figure 2009144053
2は金属原子を表し、
13〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシ基を表し、
13とR14、および、R15とR16はそれぞれ互いに結合して環を形成しても良く、
また一価のカチオンと塩を形成しても良い。
一般式(1)および一般式(2)におけるM1およびM2は、金属原子であればよく特に限定はないが、ニッケル、コバルト、白金、パラジウムもしくは銅が好ましく、ニッケルが更に好ましい。
ここで、本発明におけるR1〜R16の取り得る基である、アルキル基、アリール基、アルコキシ基に置換してもよい「置換基」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、水酸基、メルカプト基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基を表し、また「置換基」は隣接した置換基同士で置換もしくは未置換をもつ共役もしくは非共役の環を形成しても良い。好ましい「置換基」としては、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、もしくはアルコキシ基、もしくはモノまたはジ置換アミノ基が挙げられる。また、隣接した置換基同士で置換もしくは未置換をもつ共役もしくは非共役の環としては、例えば、隣接した置換基同士で5ないし7員環の酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が含まれてもよい脂肪族、炭素環式芳香族、複素環式芳香族、複素環が挙げられ、これらの環は任意の位置にさらに置換基を有してもよい。以下、これらの基についてさらに詳細に説明する。
上記「置換基」を構成する置換もしくは未置換のアルキル基は、置換もしくは未置換のアルキル基であればよく、特に限定されるものではない。またアルキル基は直鎖でも、分岐したものでも、環化したシクロアルキル基であってもよい。置換もしくは未置換のアルキル基を具体的に示すと、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフロロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基、2,4−シクロペンタジエン−1−イリデニル基などが挙げられる。
上記「置換基」を構成する置換もしくは未置換のアルコキシ基は、置換もしくは未置換のアルコキシ基であればよく、特に限定されるものではないが、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等が挙げられる。
上記「置換基」を構成する置換もしくは未置換のチオアルコキシ基は、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基であればよく、特に限定されるものではないが、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等が挙げられる。
上記「置換基」を構成するモノまたはジ置換アミノ基は、モノまたはジ置換アミノ基であればよく、特に限定されるものではないが、例えばメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(アセトオキシメチル)アミノ基、ビス(アセトオキシエチル)アミノ基、ビス(アセトオキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトオキシブチル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
上記「置換基」を構成する置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェニキシ基、3−フルオロフェニキシ基等が挙げられる。
上記「置換基」を構成する置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、例えばフェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基等が挙げられる。
上記「置換基」を構成する置換もしくは未置換のアリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、テトラフェニレニル基、3−ニトロフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基、o−,m−およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノニル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
上記「置換基」を構成する置換もしくは未置換のヘテロアリール基としては、例えばチオニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等が挙げられる。
上記「置換基」を構成する、隣接した置換基の結合によって形成された置換もしくは未置換をもつ共役もしくは非共役の環としては、例えば置換シクロヘキシル基、ナフチル基などが挙げられる。
よって、一般式(1)および(2)のR1〜R16における置換もしくは未置換のアルキル基としては例えばメチル基、エチル基、n−プロリル基、n−ブチル基、n−オクチル基、2−メチルプロピル基、2−エチルへキシル基、3−メチルブチル基、イソプロピル基、2,3−ジメチルブチル基、などの直鎖状または分岐状アルキル基、2−メトキシエチル基、3−エトキシへキシル基、などのアルコキシ基置換のアルキル基などが挙げられる。このうち好ましくは炭素数10以下、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
一般式(1)および(2)のR1〜R16における置換もしくは未置換のアリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、テトラフェニレニル基、3−ニトロフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基、o−,m−およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノニル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
一般式(1)および(2)のR1〜R16における置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、置換もしくは未置換のアルコキシ基であればよく、特に限定されるものではないが、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等が挙げられる。
また、R3とR4、R9とR10、R13とR14、および、R15とR16はそれぞれ互いに結合して環を形成しても良い。
また、一般式(1)および一般式(2)で表される近赤外線吸収材料は任意のカチオンと一価の塩の構造をとってもよく、カチオンとしては四級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アルカリ金属カチオンなどが挙げられる。四級アンモニウムカチオンとしては、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオンなどが挙げられ、ピリジニウムカチオンとしては、ヘキサデシルピリジニウムカチオン、N−ブチル−4−メチルピリジニウムイオンなどが挙げられ、4級ホスホニウムカチオンとしてはテトラブチルホスホニウムイオン、トリフェニルヘプチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
下記、式Aで表される構造は一般式(1)の部分構造であり、通常Aの結合手の先は置換アルキル基や置換フェニル基などであるが、本発明の一般式(2)を置換基として用いることにより顕著に長波長吸収化する。さらにSiは結合手を4つ持っており、そのうち3つが置換可能位置であるので、分子全体として溶解性または分散性も向上できる。
式A
Figure 2009144053
結果として吸収波長は長波長化し、溶媒への溶解性、樹脂との相溶性もしくは分散性が増す。これらの材料を用いたフィルムではHaze値が低下し、可視領域の光透過率が高く、1000nm〜の近赤外域を効率的にカットすることができ、かつ高耐久性を持つ近赤外吸収フィルム、近赤外吸収フィルターなどを作ることができる。その際、本材料は染料として用いても良いし、顔料として分散した形で用いても良い。
本発明における材料の構造の例を以下の表1に示すが、これらに限定されるものではない。
表1
Figure 2009144053
Figure 2009144053
Figure 2009144053
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Figure 2009144053
Figure 2009144053
一般式(1)で表される近赤外線吸収材料は任意に組み合わせて用いてもよく、さらに他の可視光線吸収色素、近赤外線吸収色素を数種類組み合わせて用いても良い。好ましくは下記一般式(3)を有する構造の近赤外線吸収材料であり、一般式(3)で表される構造の近赤外線吸収材料を同時に用いる場合、単一構造のものを用いてもよいし、異なる構造のものを組み合わせて用いてもよい。また、さらに一般式(4)で表される構造の近赤外線吸収材料を同時に用いても良い。
一般式(3)
Figure 2009144053
(式中、X3〜X6は、それぞれ独立に、直接結合、−NHCO−、−CONH−、−NHCOO−、−OCONH−、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−CO−、または、置換もしくは未置換のイミノ基を表し、
Ar3、Ar4はそれぞれ独立に、置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、
Ar5、Ar6はそれぞれ独立に、置換もしくは未置換のフェニル基を表し、
2〜n4はそれぞれ独立に、自然数を表し、Yは下記に示す二価の基から選ばれる基を表す。)
Figure 2009144053
一般式(4)
Figure 2009144053
(式中、R17〜R36はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基を表すが、R17〜R36の少なくとも一つはビニル基またはビニル基を有する置換基を表す。)
一般式(3)で示される繰り返し単位の代表的な構造例を表2に、また一般式(4)で示される代表的な構造例を表3に具体的に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、表2は、各ユニットモノマーの構造を示すのみで、その重合形態を示したものではない。
表2
Figure 2009144053
Figure 2009144053
Figure 2009144053
Figure 2009144053
Figure 2009144053
表3
Figure 2009144053
Figure 2009144053
一般式(1)もしくは一般式(2)と一般式(3)で表される近赤外線吸収材料(および一般式(4)で表される近赤外線吸収材料)を同時に使用する場合、これらは任意の比率で含まれてよいが、好ましい比率としては、一般式(1)表される近赤外線吸収材料:一般式(3)で表される化合物が、重量比で1:0.5〜1:5であることが好ましい。
前記一般式(1)もしくは一般式(2)で表される化合物、並びに該近赤外線吸収材料、積層体は、どのような用途においても用いることができ、またその使用態様、使用形態も近赤外線吸収材料の構造により制限を受けることはない。すなわち、本発明の化合物を近赤外線吸収材料として使用する場合は、上記一般式(1)の構造を含む近赤外線吸収材料以外の他の近赤外線吸収材料(近赤外線吸収性色素)、例えば前記の一般式(3)、一般式(4)で表される近赤外線吸収材料やこれ以外の近赤外線吸収材料、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの安定剤等の補助的材料とともに用いることができる。また、本発明の近赤外線吸収材料は、これら補助的成分と共に溶剤に溶解または溶剤または水に分散させる、あるいは必要であればバインダー樹脂等とともに溶剤に溶解または溶剤または水に分散した近赤外線吸収材料とし、これを塗布剤として用い、基材等に塗布して近赤外線吸収層を形成することができる。さらに、バインダー樹脂が自己支持性フィルムを形成することができるものであれば、例えば、該近赤外線吸収材料を剥離性基材上に塗布してフィルムを形成した後、剥離性基材からフィルムを剥離し、近赤外線吸収フィルムとして利用することもできる。本発明でいう塗布剤とは、樹脂および/または有機溶剤または水を含む液状材料またはペースト状の材料からなる近赤外線吸収性を有する加工材料である。本発明の塗布剤は、本発明の近赤外線吸収材料を適宜の塗布剤に溶解または分散させることにより調製することができる。本発明の塗布剤は、油性の塗布剤であってもよく、水性の塗布剤であってもよい。
また、前記のようにして近赤外線吸収層を形成することに代え、粘着剤あるいは接着剤層、紫外線吸収層、ハードコート層、基材など他の機能層に本発明の近赤外線吸収材料を含有させ、これら層に近赤外線吸収特性を付与してもよい。例えば、粘着剤層あるいは接着剤層に本発明の近赤外線吸収材料を含有させるには、従来公知の粘着剤あるいは接着剤組成物に本発明の近赤外線吸収材料を添加し、近赤外線吸収性の粘着剤あるいは接着剤を得ること、この近赤外線吸収性の粘着剤あるいは接着剤を用いて、近赤外線吸収性の粘着層あるいは接着層を形成し、この層を近赤外線吸収フィルター層として利用すればよい。このとき、必要であれば、前記他の成分を含ませてもよい。また必要であれば、成形樹脂中に含有させ、近赤外線吸収フィルムあるいは成形物を形成することもできる。前記本発明の近赤外線吸収材料を含む近赤外線吸収層を有する積層体あるいは単体フィルムは光学フィルターとして好ましく用いられる。
前記したように、本発明の近赤外線吸収材料においては、必要に応じバインダー樹脂と共に近赤外線吸収材料として、基材上に塗布することにより近赤外吸収材料を含む層を形成して、積層体とすることができる。積層体は、例えば、光学フィルター、光学反射板、光学拡散板などに使用できる。また、バインダー樹脂の他、例えば他の可視光線吸収材料、近赤外線吸収材料等の光収性色素や安定剤、溶剤、粘着性樹脂、他の補助成分、必要であれば他の機能層を形成する成分などが用いられて積層体層が形成されてもよい。
本発明の近赤外線吸収材料においては、油性の塗布剤を構成する場合、バインダー樹脂としては、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変性樹脂、およびそれらの共重合樹脂を挙げることができる。また、水性の塗布剤を構成する場合、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料が用いられる。バインダー樹脂は、塗布剤が油性であるか水性であるかにより、適宜の樹脂、共重合体を選択すればよい。これら樹脂のガラス転移温度は、近赤外線吸収材料を塗布剤として用いる場合は形成されるコート層の耐久性から考えて80℃以上であることが好ましい。また、粘着剤として用いる場合はこの限りではなく、室温以下、例えば0℃以下のガラス転移温度が粘着物性という観点から望ましい。
また、油性の塗布剤を構成する有機溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、およびそれらの混合溶媒を挙げることができる。一方、水性の塗布剤の調製方法としては、本発明の近赤外線吸収材料を微粉化処理して数マイクロメーター以下の微粒子を得、当該微粒子を、未着色のアクリル系のポリマーエマルジョン中に分散させる方法を挙げることができる。
本発明の近赤外線吸収材料および積層体で他の光吸収性色素を補助材料として使う場合、例えば、シアニン系、キノリン系、クマリン系、チアゾール系、オキソノール系、アズレン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、アゾ系、ベンジリデン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ナフトキノン系、アントロキノン系、トリフェニルメタン系、ジイモニウム系、前記一般式(3)および一般式(4)で表される近赤外線吸収材料以外のジチオールニッケル錯体系材料等が挙げられ、好ましくはジチオールニッケル錯体系材料および/またはフタロシアニン系材料および/またはジイモニウム系材料である。本発明の近赤外線吸収材料に対するこれら他の光吸収性色素の添加量は、本発明の近赤外線吸収材料100重量部に対して、好ましくは20〜500重量部、より好ましくは50〜200重量部である。吸収スペクトルとの兼ね合いでフィルムとしたときの可視光透過率が70〜80%以上、近赤外領域(850nm〜1000nm)の透過率は10%以下となる比率が好ましい。
上記ジチオールニッケル錯体系材料としては、具体的にはAmerican Dye Source, Ink(Laser Dyes & Near Infrared Dyes)カタログ記載のADS845MC、ADS870MC、ADS880MC、ADS890MC、ADS920MC、ADS990MC等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。さらに該材料は一価のカチオンとのイオン化化合物となっていても良い。
一方、上記フタロシアニン系材料としては、具体的には、株式会社日本触媒製イーエクスカラーIR−10、IR−12、IR−14等があるがこれらに限定されるものではない。
さらにジイモニウム系色素としては、市販品として例えば日本化薬(株)製IRG−022、IRG−023、IRG−040等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、本発明の近赤外線吸収材料や上記他の光吸収性色素の、光あるいは熱に対する安定化を図る目的で使用される上記各種安定化剤としては、例えば、ハイドロキノン誘導体(米国特許3935016号明細書、米国特許3982944号明細書参照)、ハイドロキノンジエーテル誘導体(米国特許4254216号明細書参照)、フェノール誘導体(特開昭54−21004号公報参照)、スピロインダンまたはメチレンジオキシベンゼンの誘導体(英国特許出願公開2077455号明細書、英国特許2062888号明細書参照)、クロマン、スピロクロマンまたはクマランの誘導体(米国特許3432300号明細書、米国特許3573050号明細書、米国特許3574627号明細書、米国特許3764337号明細書、特開昭52−152225号公報、特開昭53−20327号公報、特開昭53−17729号公報、特開昭61−90156号公報参照)、ハイドロキノンモノエーテルまたはパラアミノフェノールの誘導体(英国特許1347556号明細書、英国特許2066975号明細書、特公昭54−12337号公報、特開昭55−6321号公報参照)、ビスフェノール誘導体(米国特許3700455号明細書、特公昭48−31625号公報参照)、金属錯体(米国特許4245018号明細書、特開昭60−97353号公報参照)、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報参照)、ジインモニウム化合物(米国特許465612号明細書参照)、ニッケル錯体(特開平4−146189号公報参照)、酸化防止剤(欧州特許820057号明細書参照)が挙げられる。また、本発明の光学フィルターは、一重項酸素等のクエンチャーとして、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよく、本発明の近赤外線吸収材料の効果を阻害しない範囲において、ビスチオラート金属錯体アニオン等のクエンチャーアニオンを用いてもよい。
本発明の近赤外線吸収材料に対する、他の光吸収性色素や各種安定剤等の添加量は、本発明の近赤外線吸収材料100重量部に対して、好ましくは20〜200重量部、更に好ましくは50〜150重量部である。吸収スペクトルとの兼ね合いでフィルムとしたときの可視光透過率が70〜80%以上、近赤外領域の透過率は10%以下となる比率が好ましい。
前記のとおり、本発明の近赤外線吸収材料は、塗布剤の他、粘着剤または接着剤として用いることができる。本発明の塗布剤には、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が含有されていてもよい。本発明の塗布剤の用途は、基材の表面被覆を目的とするものであれば特に制限されるものではなく、本発明の塗布剤によれば、近赤外線吸収性を有する塗膜を形成することができる。
本発明の近赤外線吸収材料が粘着剤として用いられる場合、バインダーとして粘着性バインダーを使用しても良い。粘着性バインダーとしては、アクリル系、ウレタン系、ゴム系などが挙げられる。アクリル系として用いることのできるモノマーとしてはアクリルモノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。本発明においては、粘着物性を確保するという点で、炭素数が4〜12のアクリル系モノマーを共重合に供することが好ましい。さらに好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。これらは、粘着剤としての望ましい物性を得る目的のため、適宜選択して単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上述粘着性バインダーにおいてアクリル系モノマー、アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系モノマー、およびその他のモノマー等を共重合してなるアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は5万〜100万であることが好ましく、5万〜20万の低分子
量アクリル系共重合体であることがより好ましい。
さらに、粘着性バインダーと本発明の近赤外吸収材料とを含んでなる粘着剤は、基材上に公知の方法で塗工されて、積層体である粘着剤シートとなる。ここで用いられる基材は、後に記載する基材のほか、紙、金属、布なども用いられる。また、粘着性バインダーが、単独でシートを構成できる場合は、基材を必要としない粘着剤シートとなる。また、基材の両面に粘着剤が塗工される形態であってもよい。ただし、一方の面の粘着剤が、本発明の粘着剤を含まない場合であってもよい。
粘着性バインダーと本発明の近赤外線吸収材料とを含んでなる粘着剤は、基材上に公知の方法で塗工されて、積層体である粘着剤シートとなる。ここで用いられる基材は、後に記載する基材のほか、紙、金属、布なども用いられる。また、粘着性バインダーが、単独でシートを構成できる場合は、基材を必要としない粘着剤シートとなる。また、基材の両面に粘着剤が塗工される形態であってもよい。ただし、一方の面の粘着剤が、本発明の粘着剤を含まない場合であってもよい。
本発明の近赤外線吸収材料のバインダー樹脂に対する添加量としては、樹脂100重量部に対して、近赤外線吸収材料0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜15重量部である。この割合が0.01重量部未満である場合には、近赤外線領域の波長光を効率よく吸収することができず、一方、20重量部を超える場合には、近赤外線吸収材料の分散性が低下して透明性(可視光線透過性)が損なわれることがある。
本発明における接着剤は、本発明の近赤外吸収材料および接着剤からなる近赤外線吸収性を有する加工材料である。本発明の接着剤は、本発明の近赤外線吸収材料を、接着性を有する適宜の媒体に溶解または分散させることにより調製することができる。
本発明の光学フィルターの構成として、基材に、必要に応じて、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等の各層を設けてもよい。本発明の近赤外線吸収材料、上記の他の光吸収性色素や各種安定剤を本発明の光学フィルターに含有させる方法としては、例えば、基材または任意の各層に含有させる方法、基材または任意の各層にコーティングする方法、各層間のポリマーバインダーや接着剤、粘着材に混入させる方法、本発明の近赤外線吸収材料等を含有する近赤外線吸収層を上記の各層とは別に設ける方法等が挙げられる。本発明の近赤外線吸収材料は、各層間のポリマーバインダーや接着剤、粘着剤に混入させる方法および近赤外線吸収層を設ける方法に好適である。
本発明の近赤外線吸収材料の使用量は、光学フィルターの単位面積当たり、1〜1000mg/m2、好ましくは5〜100mg/m2である。1mg/m2未満の使用量では、
近赤外線吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/m2を超えて使用した
場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、明度が低下するおそれもあるため好ましくない。
上記基材の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;あるいは、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン等の高分子材料が挙げられる。光学フィルター用途で有れば、基材は透明支持体であることが好ましく、透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
これらの基材中には、光吸収性色素、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機微粒子等を添加することができ、また、これらの基材には各種の表面処理を施すことができる。
上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等の無機微粒子が挙げられる。
上記各種表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
上記下塗り層は、本発明の近赤外線吸収材料を含有する近赤外線吸収層を設ける場合に、基材と近赤外線吸収層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、近赤外線吸収層側の表面が粗面である層または近赤外線吸収層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成される。なお、近赤外線吸収層が設けられていない基材の面に下塗り層を設けて、基材とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するために設けてもよく、また、下塗り層は、光学フィルターと画像形成装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、基材と近赤外線吸収層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルまたはメチルビニルエーテルの重合またはこれらの共重合により得ることができる。上記ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。表面が粗面である下塗り層は、粗面の上に近赤外線吸収層を形成することで、基材と近赤外線吸収層とを接着する。表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、20nm〜3μmであることが好ましく、50nm〜1μmであることがさらに好ましい。近赤外線吸収層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロン、高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターにおいては、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、基材を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤や硬膜剤等を添加してもよい。
上記反射防止層中においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、5
0〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、同6−115023号、同8−313702号、同7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、同6−299091号、同7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、同6−56478号、同7−92306号、同9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式または芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いることもできる。
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物または硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫および酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物または硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。ここで、主成分とは、無機微粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。また、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマー等を用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
上記ハードコート層は、透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は
、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマーまたはモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。また、シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
上記反射防止層(低屈折率層)の表面には潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤またはその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
上記の近赤外線吸収層、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
本発明の光学フィルターを用いれば太陽光の可視光線を有効に透過させ、かつ熱線を確実にカットできる。また耐久性に優れているため長期にわたって太陽光に暴露しても熱線遮断能力が損なわれることはない。
本発明の光学フィルターは、撮像装置(画像入力装置)におけるCCD(例えばシリコンフォトダイオードからなる光電変換素子)のための視感度補正フィルターとして好適に用いることができる。ここに、「CCDのための視感度補正フィルター」には、CCDに至る光路中に単独で配置される視感度補正フィルターのほか、リッド、レンズおよび保護板などが含まれるものとする。また、CCDを搭載する撮像装置としては、例えばビデオカメラ、デジタルカメラ、ボードカメラ、カラースキャナ、カラーファックス、カラー複写機、カラーテレビ電話装置などを挙げることができる。本発明の光学フィルターを搭載してなる撮像装置によれば、CCD(シリコンフォトダイオード)への入射光を、実質的に可視領域の光に限定することができ、この結果、正確な測光(露出操作)を行うことができ、しかも、赤色成分の再現にも支障を来すことはない。
本発明の光学フィルターは、CMOSイメージセンサまたは人工網膜が搭載された撮像装置(画像入力装置)のための視感度補正フィルターとして好適に用いることができる。本発明の光学フィルターを備えたCMOSイメージセンサおよび人工網膜、並びにこれらを搭載してなる撮像装置によれば、上述したCCDにおける効果と同様の効果を奏することができる。
また本発明の光学フィルターは、赤外線通信装置(850〜950nmの光を媒体とする通信装置)が使用される環境におけるノイズカットフィルターとして好適に用いることができる。かかるノイズカットフィルターによれば、近赤外線の発生源(例えば自動ドア、リモコンなど近赤外線を用いた機械)をカバーし、当該発生源からの赤外線を遮断することにより、通信中におけるノイズの発生を確実に防止することができる。
また、本発明の光学フィルターを、プラズマディスプレイ装置もしくは液晶パネルディスプレイ装置のパネルの前面に配置することによって、当該パネルから照射される近赤外線を効率よくカットすることができる。この結果、当該ディスプレイ装置の周囲において、近赤外線に起因するリモコンの誤動作などを生じさせることはない。
近年、軽量化および低コスト化等の観点より、自動車部品等、各種分野の部品として樹脂成形物が頻繁に用いられている。また、樹脂成形物の高生産性化等の観点より、樹脂成形物を予め複数に分割して成形し、これらの分割成形物を互いに接合する手段が採られることが多い。樹脂材同士の接合は、従来、レーザーに対して透過性のある透過性樹脂材と、レーザーに対して吸収性のある吸収性樹脂材とを重ね合わせた後、前記透過性樹脂材側からレーザーを照射することにより、透過性樹脂材と吸収性樹脂材との当接面同士を加熱溶融させて両者を一体的に接合するレーザー溶着方法により行われている。従来のレーザー溶着方法では、同種あるいは異なる種類の樹脂部材の接合において、接合される樹脂部材がレーザーに対して吸収性を有するものと吸収性を有さないものの2種類となるため、その色調に差が生じ、接合された樹脂部材の使用用途に限界があった。具体的には、レーザーに対して非吸収性の樹脂材料は白色あるいは透明のレーザー透過色であり、吸収性の部材はカーボンブラック等の黒色系のレーザー吸収色であるため、見た目の違和感を生じるようになっていた。すなわち、このような異なる色の樹脂材料を接合すると、見た目の接合力が弱く感じられるとともに、接合部が目立つという問題を有していた。
本発明の材料を用いれば、透過性樹脂材内を透過したレーザーが吸収性樹脂材の当接面に到達して吸収され、この当接面に吸収されたレーザーがエネルギーとして蓄積される。その結果、吸収性樹脂材の当接面が加熱溶融されると共に、この吸収性樹脂材の当接面からの熱伝達により透過性樹脂材の当接面が加熱溶融される。この状態で、透過性樹脂材および吸収性樹脂材の当接面同士を圧着させれば、両者を一体的に接合することができる。本材料は可視光線の透過率が良好であることから、レーザー透過性樹脂材との色調差を小さくすることができ、また近赤外線領域の吸収において大きなモル吸光係数を有しているためレーザーの照射により透過性樹脂材および吸収性樹脂材の当接面同士を確実に溶着させて十分な接合強度をもつ樹脂組成物を提供できる。
最近では、簡便かつ効率的にマーキングを行う方法として、レーザー光の照射によるマーキングが盛んに行われている。このレーザー光の照射によるマーキング方法は、文字やイラスト状にレーザー光を照射した部分が熱エネルギーにより変色し、光の散乱によって文字やイラストが識別できるというものである。
例えば、特開平9−302236号公報には、ロイコ色素、発色補助成分および熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物を、成形後、レーザー光を照射することにより、レーザーマーキングが可能であることが開示されている。しかしながら、混練時の熱により発色成分の反応が起こるため、発色成分が限定され、発色の自由度が制約される。また、特開平11−92632号公報には、発色剤として銅系化合物およびニッケル系化合物を含むエポキシ樹脂にレーザー光を照射することにより、樹脂成形品の表面にレーザーマーキングする技術が開示されているが、この場合は黒色のマーキングに限られている。特開平8−120133号公報には、ゴム強化ビニル系樹脂にチタンブラック等の化合物を配合した有彩色のレーザーマーキングが可能な樹脂組成物が開示されているが、この場は樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂に限られており、その応用展開に制約がある。
本発明の近赤外線吸収材料は高い可視光線透過率および高い近赤外線吸収能を持つため、低出力の活性エネルギー線でマーキング可能な、透明性の高いマーキング用組成物を提供できる。また鮮明で高速且つ高精度の文字やイラスト等の模様を、簡単に素早くマーキングすることができる。
さらに、LEDは高効率かつ高輝度発光でRGB三色にて現在様々な分野で利用されている。しかしながら、比較的大きなエネルギーを発生させるため発熱源となり、ダイオード使用機器は常に高温にさらされるという問題を有している。発熱の原因はダイオードの輻射熱・赤外線発生によるものである。本発明の近赤外線吸収材料は近赤外線の吸収能に優れており、かつ高い可視光透明性を有しているためLEDの発光色を変えることなく赤外線をカットできる。また、高耐熱性および高耐光性を有しているため、長時間本材料をLEDに用いても近赤外線吸収能が衰えることは無い。本発明の近赤外線吸収材料を用いればダイオードの発光による発熱を抑制することができる。
本発明の光学フィルターは好ましくは、ディスプレイ用フィルターまたはCCD、CMOSイメージセンサ用フィルターとして配置されその配置方法は何ら制限を受けるものではない。
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。しかし本発明は以下の実施例によって何ら制限を受けるものではない。
まず、本発明の化合物の合成方法について示す。
[実施例1]化合物1の合成
Figure 2009144053
窒素気流下、四つ口フラスコ中にエタノール80ml、1,3,4,6−テトラチアペンタレン−2,5−ジオン(4.2g、20mmol)撹拌下、ナトリウムエトキシド(2.7g、40mmol)を添加して室温で1時間反応させた。そこにトリメチルシリルクロライド(4.3g、40mmol)を加え、室温にて一晩反応させた。のち室温にて一晩反応させた。生成物をろ過して化合物1を褐色固体として得た。収率65%。
[実施例2]P−1の合成
Figure 2009144053
窒素気流下、四つ口フラスコ中に化合物1(3.3g、10.0mmol)およびエタノール50mlを加えて撹拌しているところにナトリウムエトキシド(1.35g、20mmol)およびNiCl2(0.65g、5.0mmol)を加え、一晩室温にて反応させた。のち窒素気流を止め、Airをバブリングした。出てきた析出物をろ過してP−1を得た。収率21%。なお、TOF−MSはBRUKER社製 autoflex を、元素分析はパーキンエルマー社製2400型を用い、近赤外線極大吸収波長はJASCO社製 V−570を用いて測定した。
TOF−MS:656
元素分析:C1636NiS8Si4
計算値:C, 29.29%; H, 5.53%
実測値:C, 29.30%; H, 5.49%
近赤外線極大吸収波長:1075nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例3]P−2の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにジメチルエチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−2を得た。収率21%。
TOF−MS:712
元素分析:C2044NiS8Si4
計算値:C, 33.73%; H, 6.23%
実測値:C, 33.76%; H, 6.25%
近赤外線極大吸収波長:1073nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例4]P−3の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにトリイソプロピルシリルクロライドをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−3を得た。収率20%。
TOF−MS:990
元素分析:C4084NiS8Si4
計算値:C, 48.40%; H, 8.53%
実測値:C, 48.35%; H, 8.50%
近赤外線極大吸収波長:1030nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例5]P−4の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにクロロジメチルフェニルシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−4を得た。収率23%。
TOF−MS:904
元素分析:C3644NiS8Si4
計算値:C, 47.81%; H, 4.90%
実測値:C, 47.79%; H, 4.95%
近赤外線極大吸収波長:1070nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例6]P−5の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにジメチルt−ブチルシリルクロライドをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−5を得た。収率25%。
TOF−MS:822
元素分析:C2860NiS8Si4
計算値:C, 40.80%; H, 7.34%
実測値:C, 40.77%; H, 7.40%
近赤外線極大吸収波長:1050nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例7]P−6の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにトリエチルシリルクロライドをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−6を得た。収率23%。
TOF−MS:823
元素分析:C2860NiS8Si4
計算値:C, 40.80%; H, 7.34%
実測値:C, 40.78%; H, 7.33%
近赤外線極大吸収波長:1050nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例8]P−8の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにクロロジイソプロピルシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−8を得た。収率27%。
TOF−MS:822
元素分析:C2860NiS8Si4
計算値:C, 40.80%; H, 7.34%
実測値:C, 40.79%; H, 7.33%
近赤外線極大吸収波長:1050nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例9]P−9の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにジメチルオクチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−9を得た。収率19%。
TOF−MS:1049
元素分析:C4492NiS8Si4
計算値:C, 50.39%; H, 8.84%
実測値:C, 50.44%; H, 8.79%
近赤外線極大吸収波長:1070nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例10]P−10の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにジブチルメチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−10を得た。収率23%。
TOF−MS:990
元素分析:C4084NiS8Si4
計算値:C, 48.40%; H, 8.53%
実測値:C, 48.42%; H, 8.51%
近赤外線極大吸収波長:1051nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例11]P−11の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにジメチル−n−オクチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−11を得た。収率22%。
TOF−MS:1606
元素分析:C84172NiS8Si4
計算値:C, 62.67%; H, 10.77%
実測値:C, 62.70%; H, 10.75%
近赤外線極大吸収波長:1050nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例12]P−12の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにα-(クロロジメチルシリル)クメンをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−12を得た。収率22%。
TOF−MS:1073
元素分析:C4868NiS8Si4
計算値:C, 53.75%; H, 6.39%
実測値:C, 53.66%; H, 6.38%
近赤外線極大吸収波長:1071nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例13]P−13の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにジメチルシクロヘキシルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−13を得た。収率24%。
TOF−MS:926
元素分析:C3668NiS8Si4
計算値:C, 46.57%; H, 7.38%
実測値:C, 46.55%; H, 7.32%
近赤外線極大吸収波長:1040nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例14]P−14の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにジメチルイソプロピルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−14を得た。収率22%。
TOF−MS:766
元素分析:C2452NiS8Si4
計算値:C, 37.52%; H, 6.82%
実測値:C, 37.50%; H, 6.85%
近赤外線極大吸収波長:1073nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例15]P−15の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにクロロジメチル(3−フェニルプロピル)シランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−15を得た。収率20%。
TOF−MS:1070
元素分析:C4868NiS8Si4
計算値:C, 53.75%; H, 6.39%
実測値:C, 53.70%; H, 6.39%
近赤外線極大吸収波長:1070nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例16]P−16の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにベンジルクロロジメチルシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−16を得た。収率20%。
TOF−MS:958
元素分析:C4052NiS8Si4
計算値:C, 50.02%; H, 5.46%
実測値:C, 50.00%; H, 5.50%
近赤外線極大吸収波長:1070nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例17]P−17の合成
トリメチルシリルクロライドの代りに4−フルオロベンジルジメチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−17を得た。収率20%。
TOF−MS:1030
元素分析:C40484NiS8Si4
計算値:C, 46.54%; H, 4.69%
実測値:C, 46.55%; H, 4.72%
近赤外線極大吸収波長:1050nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例18]P−18の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにジフェニルメチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−18を得た。収率26%。
TOF−MS:1150
元素分析:C5652NiS8Si4
計算値:C, 58.36%; H, 4.55%
実測値:C, 58.33%; H, 4.62%
近赤外線極大吸収波長:1070nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例19]P−19の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにイソプロピルジエチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−19を得た。収率23%。
TOF−MS:878
元素分析:C3268NiS8Si4
計算値:C, 43.65%; H, 7.78%
実測値:C, 43.63%; H, 7.72%
近赤外線極大吸収波長:1060nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例20]P−20の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにメトキシジエチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−20を得た。収率28%。
TOF−MS:830
元素分析:C2452NiO48Si4
計算値:C, 34.64%; H, 6.30%
実測値:C, 34.63%; H, 6.32%
近赤外線極大吸収波長:1060nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例21]P−21の合成
トリメチルシリルクロライドの代りに(3−シアノプロピル)ジメチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−21を得た。収率29%。
TOF−MS:866
元素分析:C28484NiS8Si4
計算値:C, 38.73%; H, 5.57%
実測値:C, 38.65%; H, 5.52%
近赤外線極大吸収波長:1060nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例22]化合物2の合成
Figure 2009144053
窒素気流下、四つ口フラスコ中にエタノール80ml、1,3,4,6−テトラチアペンタレン−2,5−ジオン(4.2g、20mmol)撹拌下、ナトリウムエトキシド(2.7g、40mmol)を添加して室温で1時間反応させた。そこにジブチルジクロロシラン(4.3g、20mmol)を加え、室温にて一晩反応させた。のち生成物をろ過して化合物2を褐色固体として得た。収率85%。
[製造例23]P−25の合成
Figure 2009144053
化合物1の代わりに化合物2を用いる以外実施例2と同様の方法でP−25を合成した。収率31%。
TOF−MS:646
元素分析:C2036NiS8Si2
計算値:C, 37.08%; H, 5.60%
実測値:C, 36.95%; H, 5.56%
近赤外線極大吸収波長:1060nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例24]P−22の合成
ジブチルジクロロシランの代りにジクロロシクロヘキシルメチルシランをもちいた以外実施例22、23と同様の方法にてP−22を得た。収率29%。
TOF−MS:614
元素分析:C1828NiS8Si2
計算値:C, 35.11%; H, 4.58%
実測値:C, 35.10%; H, 4.52%
近赤外線極大吸収波長:1060nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例25]P−23の合成
ジブチルジクロロシランの代りにジクロロジメチルシランをもちいた以外実施例22、23と同様の方法にてP−23を得た。収率31%。
TOF−MS:478
元素分析:C812NiS8Si2
計算値:C, 20.04%; H, 2.52%
実測値:C, 20.10%; H, 2.50%
近赤外線極大吸収波長:1060nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例26]P−24の合成
ジブチルジクロロシランの代りにジクロロメチルエチルシランをもちいた以外実施例22、23と同様の方法にてP−23を得た。収率30%。
TOF−MS:506
元素分析:C1016NiS8Si2
計算値:C, 23.66%; H, 3.18%
実測値:C, 23.62%; H, 3.15%
近赤外線極大吸収波長:1060nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例27]P−26の合成
トリメチルシリルクロライドの代りに2−フェノキシエチルジメチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−26を得た。収率29%。
TOF−MS:1078
元素分析:C4460NiO48Si4
計算値:C, 48.91%; H, 5.60%
実測値:C, 48.88%; H, 5.56%
近赤外線極大吸収波長:1050nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例28]P−27の合成
トリメチルシリルクロライドの代りに(4−メチルチオ)フェニルジメチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−27を得た。収率26%。
TOF−MS:1086
元素分析:C4052NiS12Si4
計算値:C, 44.13%; H, 4.81%
実測値:C, 44.09%; H, 4.76%
近赤外線極大吸収波長:1090nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例29]P−28の合成
トリメチルシリルクロライドの代りにオクタデシル(3−フェニル)プロピルメチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−28を得た。収率26%。
TOF−MS:2024
元素分析:C116204NiS8Si4
計算値:C, 68.75%; H, 10.15%
実測値:C, 68.79%; H, 10.12%
近赤外線極大吸収波長:1040nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例30]P−29の合成
トリメチルシリルクロライドの代りに(2−チエノキシ)エチルメチルクロロシランをもちいた以外実施例1、2と同様の方法にてP−29を得た。収率29%。
TOF−MS:1102
元素分析:C3652NiO412Si4
計算値:C, 39.14%; H, 4.74%
実測値:C, 39.16%; H, 4.70%
近赤外線極大吸収波長:1040nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例31]P−32の合成
Figure 2009144053
窒素気流下、四つ口フラスコ中に化合物1(3.3g、10.0mmol)およびエタノール50mlを加えて撹拌しているところにナトリウムエトキシド(1.35g、20mmol)およびNiCl2(0.65g、5.0mmol)を加え、一晩室温にて反応させた。のち窒素気流を止め、テトラエチルアンモニウムブロマイドを20mol加えて1時間撹拌後、Airをバブリングした。出てきた析出物をろ過してP−32を得た。収率23%。
TOF−MS:784
元素分析:C2456NNiS8Si4
計算値:C, 36.66%; H, 7.18%
実測値:C, 36.69%; H, 7.16%
近赤外線極大吸収波長:1254nm(5×10-5mol/L、DMF中)
[実施例32]P−30の合成
Figure 2009144053
窒素気流下、四つ口フラスコ中に化合物3(3.1g、10.0mmol)およびエタノール50mlを加えて撹拌しているところにナトリウムエトキシド(1.35g、20mmol)およびNiCl2(0.65g、5.0mmol)を加え、一晩室温にて反応させた。のち窒素気流を止め、テトラブチルアンモニウムブロマイドを20mol加えて1時間撹拌後、Airをバブリングした。出てきた析出物をろ過してP−30を得た。収率33%。
TOF−MS:856
元素分析:C3464NNiS8Si2
計算値:C, 47.58%; H, 7.52%
実測値:C, 47.59%; H, 7.49%
近赤外線極大吸収波長:1265nm(5×10-5mol/L、DMF中)
次に、本発明の化合物を近赤外吸収色素として用いた実施例を示す。
[実施例33]
比較化合物1、比較化合物2、比較化合物3、および表4に示した本発明の化合物を固形分25%のポリメチルメタクリレート(Mw=200,000)溶液(溶剤:酢酸エチル:トルエン=2:1)に固形分に対して約2%混合し、PETフィルムに塗工した。このフィルムについて80℃−1000時間の耐熱試験を行い、試験前後についてHaze値変化および近赤外極大吸収波長における透過率変化(Δ%T)を表4に示した。Haze値は、NIPPONN DENSHOKU製 Haze Meter NDH2000にて測定した。またλmaxの透過率は、日本分光製吸光光度測定機V−570にて測定した。
Figure 2009144053
表4
Figure 2009144053
上記表4より、比較化合物を用いた場合では耐熱試験前後で材料の分解もしくは析出が起きていると考えられ、Haze値変化も大きく、近赤外極大吸収波長における透過率も大きく変化している。一方、本発明の化合物を用いた場合は耐熱試験前後でもHaze値は変わらず、透過率変化も小さい。
[実施例34]
比較化合物1、比較化合物2、比較化合物3、および表5に示した本発明の化合物を固形分25%のアクリル系粘着材(モノマー組成:アクリル酸ブチル60%、アクリル酸イソブチル30%、アクリル酸3%、アクリル酸−2−エチルヘキシル7%、溶剤組成:酢酸エチル80%、トルエン20%)に固形分に対して約2.0%混合し、PETフィルムに膜厚20μmで塗工し90℃で2分乾燥させた後、さらに粘着面をPETフィルムでラミネートした。このフィルムについて80℃−1000時間の耐熱試験を行い、試験前後についてHaze値変化および近赤外極大吸収波長における透過率変化(Δ%T)を表5に示した。なお、Haze値は実施例13と同様の方法で求めた。またλmaxの透過率は、日本分光製吸光光度測定機V−570にて測定した。
表5
Figure 2009144053
バインダー樹脂に粘着剤を用いた場合、上記表5より比較化合物を用いた場合では耐熱試験前後で材料の凝集あるいは析出が起きていると考えられ、Haze値変化も大きく、近赤外極大吸収波長における透過率も大きく変化している。一方、本発明の材料は耐熱試験前後でもHaze値は変わらず、透過率変化も比較的小さい。
[実施例35]
実施例3のフィルムにおいて、紫外線吸収PETフィルム(テイジンテトロンフィルム、帝人デュポンフィルム株式会社製)を装着し、キセノン−100W/m2、温度60%、湿度60%、で100時間耐光試験を行い、試験前後のHaze値、極大吸収波長の透過率変化Δ%Tを表6に示す。
表6
Figure 2009144053
表6より試験前後での透過率変化Δ%Tは比較化合物1、比較化合物2、比較化合物3、よりも本発明の化合物のほうが小さく、高い耐光性を持っていることが分かる。
[実施例36]
実施例15と同様の試験を実施例14で作成したフィルムを用いて行ったところ、実施例5と同様の結果が得られた。
[実施例37]
比較化合物1、比較化合物2、比較化合物3、および表7に示した本発明の化合物を固形分25%のポリメチルメタクリレート(Mw=200,000)溶液(溶剤:酢酸エチル:トルエン=2:1)に固形分に対して約2.0%混合し、さらにそこへPP−1(吸収波長850nm)を固形分に対して1.5%混合してPETフィルムに塗工し、100℃、2分で乾燥させた。このフィルムについて80℃、1000時間で耐熱試験を行い、850nmおよび1000nmにおける透過率変化を求めた。結果を表7に示す。
表7
Figure 2009144053
上記表7より本発明の一般式(1)の材料は他の近赤外線吸収色素と混合した場合でも互いに相互作用して吸収変化することなく、高い耐久性を有していることが分かる。
[実施例38]
実施例17と同様の試験を実施例14で用いた粘着性バインダー樹脂を用いて行ったところ、同様の結果が得られた。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物。
    一般式(1)
    Figure 2009144053


    (式中、M1は金属原子を表し、
    1〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシ基を表し、
    3とR4、および、R9とR10はそれぞれ互いに結合して環を形成しても良く、
    また一価のカチオンと塩を形成しても良い。)
    一般式(2)
    Figure 2009144053


    (式中、M2は金属原子を表し、
    13〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシ基を表し、
    13とR14、および、R15とR16はそれぞれ互いに結合して環を形成しても良く、
    また一価のカチオンと塩を形成しても良い。)
  2. 請求項1記載の化合物を含んでなる近赤外線吸収材料。
  3. さらに請求項1記載の化合物と異なる吸収波長を有する化合物とを含む請求項2記載の近赤外線吸収材料。
  4. さらにバインダー樹脂および/または溶剤を含む請求項2または3記載の近赤外線吸収材料。
  5. バインダー樹脂が粘着性バインダーである請求項4記載の近赤外線吸収材料。
  6. 請求項2〜5いずれか記載の近赤外線吸収材料を含む層を有してなる積層体。
  7. 請求項6記載の積層体を含んでなる光学フィルター。
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