JP2008208214A - 近赤外線吸収材料およびそれを用いたフィルター - Google Patents

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治憲 成廣
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Abstract

【課題】 本発明の目的は、900〜1100nmの長波長近赤外線領域も吸収可能であり、かつ、可視領域の吸収が少なく、かつ、樹脂、溶剤などとの相溶性に優れた近赤外線吸収材料を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記一般式[1]で表される近赤外線吸収材料。
一般式[1]
【化1】
Figure 2008208214

[式中Mは金属原子を表し、AおよびBはカルボニル基を含む複素環を表し、Xはホスホニウムカチオンまたはスルホニウムカチオンまたはスルホキソニウムカチオンを表す。]
【選択図】なし

Description

本発明は、新規のジチオール系近赤外線吸収材料およびそれを用いた塗布剤、積層体、光学フィルターに関するものである。
プラズマディスプレイ(PDP)では、800〜1050nmのネオンガスの輝線を発しており、近赤外線リモコンを用いた機器の誤作動を招くという問題があり、近赤外線を吸収し、かつ可視透過率の優れたフィルターが必要である。このフィルターに用いる色素は高い熱安定性、高耐光性が要求されており、経時での材料劣化によるフィルターの色度変化・近赤外線吸収能力の低下が課題となっている。
また、カメラやビデオカメラ等の光学機器では、光信号を電気信号に変換するために、シリコンダイオード素子、相補型金属酸化物半導体(CMOS)や電荷結合素子(CCD)等が使用される。これらの光−電気変換素子(以下、光学素子という)は、300〜1100nmという広範囲の光感応領域を有するので、人間の目の視感度400〜700nmと比較すると、近赤外領域で強く感応することになる。一般に、カメラやビデオカメラのような光学機器では、人間の視感度領域の波長光に感応することが必要で、この領域から外れた波長光はむしろ好ましくなく、測光や色再現性に支障をきたすこととなる。したがって、この場合、可視光線を透過し、かつ、近赤外領域の光を効率よく吸収カットする光学フィルターが必要となる。
上記CCD、CMOS用フィルターとしてりん酸エステル銅化合物を樹脂に分散したもの(WO99/26951号公報、WO99/26952号公報、特開2000−7871号公報、WO98/55885号公報、特開2000−38396号公報)、ローパス機能と視感度補正機能を有する複合光学フィルター(特開平8−146216号公報)ホスフィン酸化物をモノマーの1成分として重合させた樹脂からなるフィルター(特開2000−98130号公報)、等があるが、耐久性・透明性という点では必ずしも満足したものではない。
一方、有機ジチオール系ニッケル系錯体は、一般に950nm〜1200nmの近赤外部に吸収を有し、近赤外線吸収材料として優れた性質を有している。
公知のジチオール系錯体近赤外線吸収材料としては、ビス(ジチオベンジル)ニッケル錯体化合物(特開昭63−227597号公報、特開昭64−61492号公報)、ビス(1,2−アセナフチレンジチオラト)ニッケル錯体化合物(特許第2923084号公報)、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオールニッケル錯体(特開昭63−307853号公報)、アルコキシ基を有するビス(ジチオベンジル)ニッケル錯体化合物(特開平2−264788号公報)が知られている。また、高分子ジチオール錯体ではジチオラートニッケル高分子錯体(特開平4−198304号公報)、ビスジチオレン錯体ポリマー(US5089585)などが知られている。ビスジチオレン錯体ポリマーは〜800nmと比較的短波長に吸収波長領域があり一般的な近赤外線吸収材料用途としては不適である。また錯体骨格部位に置換基を持たないため溶解性に乏しいという欠点があった。また多核型チオール錯体(特開2005−181966号公報)あるいは4級ホスホニウムビス(シス-1,2-エチレンジチオラト)ニッケレート誘導体(特公平6−72147号公報)、二級アルキル基を有するジチオレート金属錯体(特開2005-232185号公報)も長波長吸収材料として知られているが、溶媒に対する溶解性が低い、樹脂との相溶性に乏しい、あるいは低い温度に融点を持ち耐熱性に欠けるなど、実用的ではなかった。またチオカルボニル基を有するチオール錯体(昭61−26686号広報、昭61−42585号広報)は可視光領域特に450nmおよび600nmに吸収を持つため光学用途としては不適なうえ、キセノン耐光性試験および耐熱試験では大幅に近赤外線吸収が劣化してしまうため実用的ではない。また、Phosphorus, Sulfur, and Silicon, 1994, Vol. 90, pp. 219-227およびBull. Chem. Soc. Jpn., 63, 262-264(1990) 記載のカルボニルを有するチオール錯体は近赤外線吸収特性は良好なものの、カウンターカチオンが炭素数2〜4と短いため溶剤への溶解性および樹脂との相溶性に乏しかった。
一方、同様に近赤外線吸収化合物としてフタロシアニン系材料が知られている。置換基を有するフタロシアニン化合物もしくはナフタロシアニン化合物(特開平10−78509号公報)、アミノ基を有するフタロシアニン化合物(特開2004−18561号公報、特開2001−106689号公報、特開2000−63691号公報、特許第2746293号公報、特許第3226504号公報)含フッ素フタロシアニン化合物(特許第2907624号公報、特許第3014221号公報)等が知られている。
また、ジイモニウム系色素は、長波長(950nm〜1100nm)を幅広く吸収し、かつ可視光の透明性も極めて良好な材料であり、日本カーリット株式会社(特開平05−247437号公報、特開2005−325292号公報)、日本化薬株式会社(特許第3699464号公報、特開2003−096040号公報)記載の材料が知られている。この色素は、上記の特性を持ち、かつ高い溶解性、樹脂相溶性を有している。しかし、耐熱性や耐光性は、必ずしも満足できるものではない。
上記近赤外線吸収材に用いられる近赤外線吸収色素は、一般的に、溶媒に溶解させた後、樹脂と混合してプラスチック等の基板にコーティングするか、或いは樹脂と加熱混練されて、シート状、板状或いはその他の形状に成形されて用いられる。そのため、上記近赤外線吸収色素には、溶媒に対する溶解性や樹脂との相溶性等に優れていることが求められる。さらに、上記近赤外線吸収材料は、野外で使用される場合もあるので、近赤外線吸収材料色素自身にも高い耐久性、熱安定性等が要求される。
WO99/26951号公報 WO99/26952号公報 特開2000−7871号公報 WO98/55885号公報 特開2000−38396号公報 特開平8−146216号公報 特開2000−98130号公報 特開昭63−227597号公報 特開昭64−61492号公報 特許第2923084号公報 特開昭63−307853号公報 特開平2−264788号公報 特開平4−198304号公報 US5089585号公報 特開2005−181966号公報 特公平6−72147号公報 特開2005-232185号公報 特開平10−78509号公報 特開2004−18561号公報 特開2001−106689号公報 特開2000−63691号公報 特許第2746293号公報、 特許第3226504号公報 特許第2907624号公報、 特許第3014221号公報 特開平05−247437号公報 特開2005−325292号公報 特許第3699464号公報 特開2003−096040号公報 特開昭61−26686号公報 特開昭61−42585号公報 Phosphorus, Sulfur, and Silicon, 1994, Vol. 90, pp. 219-227 Bull. Chem. Soc. Jpn., 63, 262-264(1990)
従来近赤外線吸収材料色素として用いられている、置換ベンゼンジチオールニッケル錯体類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ビスジチオベンジルニッケル錯体類等は、樹脂に配合されて用いられたとき、必ずしも満足すべき効果を示しているとはいえない。例えば、フタロシアニン類は、種々の置換基で置換されて、溶媒への溶解性を向上させているが、その結果、耐光性、熱安定性等が劣ったものとなっている。また、吸収スペクトルがシャープであるため近赤外線を吸収できる波長範囲が小さいうえ、長波長(〜1100nm)まで吸収をえようとすると、材料合成が非常に複雑となる。一方、置換ベンゼンジチオールニッケル錯体類は、製造が比較的容易であること、耐久性が良好という等の点においては優れているが、溶剤への溶解性が小さく、吸収波長を長波長化することが難しい、また樹脂との相溶性に劣るという問題がある。
すなわち、溶剤への溶解度が小さいと、近赤外線吸収材料色素を溶剤に溶解させて用いるときに、基板として用いるガラス、紙又は樹脂の表面に、近赤外線を遮断するのに十分な量の色素を含有させることが困難となる。結果として可視光透過率の低下、近赤外線の吸収特性の低下を招く。また、近赤外線吸収材料色素をモノマーと混合し、このモノマーを重合硬化させて近赤外線吸収材料とするときも、モノマーへの溶解度が小さいと、十分な量の色素を含有させることが困難となり、未溶解の色素が原因となって、部分的に不透明になるという問題が生じる。さらに、上記近赤外線吸収材料色素と樹脂との相溶性が悪いと均一な近赤外線吸収材料を得ることができないという問題がある。
また、ジイモニウム色素などの従来の色素は900〜1100nmと長波長に吸収を有するが、カウンターアニオンが不安定であり、キノイド→ベンゼノイドに変化しやすく、近赤外線領域の吸収の耐久性が悪く、実用面で問題がある。また、従来のジチオールニッケル錯体は置換基を選べば900〜1100nmに吸収を持たせることが可能であるが、長波長化に伴い、可視領域にも着色が生じる。光学フィルターに適応する場合、この着色が問題となる。
本発明の目的は、900〜1100nmの長波長近赤外線領域も吸収可能であり、かつ、可視領域の吸収が少なく、かつ、樹脂、溶剤などとの相溶性に優れた近赤外線吸収材料を提供することを目的とする。
下記一般式[1]で表される近赤外線吸収材料に関する。
一般式[1]
Figure 2008208214
[式中Mは金属原子を表し、AおよびBはカルボニル基を含む複素環を表し、Xはホスホニウムカチオンまたはスルホニウムカチオンまたはスルホキソニウムカチオンを表す。]
本発明はAおよび/またはBが、下記一般式[2]で表される複素環であることを特徴とする上記近赤外線吸収材料に関する。
一般式[2]
Figure 2008208214
[式中AおよびAは、それぞれ直接結合もしくは置換基を有して良い炭素原子を表す。]
本発明はAおよびBが、下記式[2−1]で表される複素環であることを特徴とする上記記載の近赤外線吸収材料に関する。
式[2−1]
Figure 2008208214
本発明はXが、下記一般式[3]で表されるいずれかのカチオンであることを特徴とする上記いずれか記載の近赤外線吸収材料に関する。
一般式[3]
Figure 2008208214
[式中R〜R10は水素原子もしくは任意の置換基を表す。]
本発明はXの置換基のうち少なくともひとつが置換もしくは未置換のアルキル基を有することを特徴とする上記いずれか記載の近赤外線吸収材料に関する。
本発明はXが、少なくともひとつが置換もしくは未置換のフェニル基を有することを特徴とする上記いずれか記載の近赤外線吸収材料に関する。
さらに本発明は、一般式[1]で表される以外のニッケル錯体系色素および/またはフタロシアニン系色素および/またはジイモニウム系色素を含む上記いずれか記載の近赤外線吸収材料に関する。
さらに本発明は、バインダー樹脂を含む上記いずれか記載の近赤外線吸収材料に関する。
本発明は塗布剤である上記記載の近赤外線吸収材料に関する。
本発明はバインダー樹脂のガラス転移温度が、80℃以上であることを特徴とする上記いずれか記載の近赤外線吸収材料に関する。
本発明はバインダー樹脂が、粘着剤または接着剤である上記いずれか記載の近赤外線吸収材料に関する。
本発明は上記いずれか記載の近赤外線吸収材料を透明基材上に形成してなる積層体に関する。
本発明は光学フィルターである上記記載の積層体に関する。
本発明はプラズマディスプレイ用である上記いずれか記載の積層体に関する。
本発明はレーザーマーキング用である上記記載の積層体に関する。
本発明により、900〜1200nmに幅広い吸収帯をもち、さらに近赤外線吸収材料を溶剤もしくはバインダー樹脂との相溶性を上げることが出来、可視領域の透過率が高く、かつ高耐久性を持つ近赤外吸収材料を提供できた。
本発明の一般式[1]のAおよびBで表される複素環にカルボニル基を含有させることにより、可視光透過率が高く、近赤外領域特に900〜1200nmに幅広い吸収帯をもたせることができる。AおよびBはカルボニル基が含有されている複素環基であれば特に制限はないが、一般式[2]で表される複素環が特に好ましく、式[2−1]で表される構造がさらに好ましい。以下に一般式[2]で表される複素環の例を挙げるがこれらに限定されない。
Figure 2008208214
一般式[1]におけるXはホスホニウムカチオンまたはスルホニウムカチオンまたはスルホキソニウムカチオンであり、置換基のうち少なくとも一つが置換もしくは未置換のアルキル基を含むものが材料の溶解性という観点から好ましい。また特に置換基にフェニル基もしくはフェニレン基を含むものは分子間の強固な結晶性を崩し、溶解性を高めるため好ましい。
一般式[3]におけるR〜R10は水素原子または置換基を表し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基または置換もしくは未置換のアリール基または置換もしくは未置換のヘテロアリール基であり、置換基同士が結合して環を形成しても良い。
また、R〜R10の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、水酸基、メルカプト基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基を表し、また置換基は隣接した置換基同士で置換もしくは未置換をもつ共役もしくは非共役の環を形成しても良い。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、もしくはアルコキシ基、もしくはモノまたはジ置換アミノ基が挙げられる。また、隣接した置換基同士で置換もしくは未置換をもつ共役もしくは非共役の環としては、例えば、隣接した置換基同士で5ないし7員環の酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が含まれてもよい脂肪族、炭素環式芳香族、複素環式芳香族、複素環が挙げられ、これらの環は任意の位置にさらに置換基を有してもよい。以下、これらの基についてさらに詳細に説明する。
上記R〜R10の置換基を構成する置換もしくは未置換のアルキル基については、置換もしくは未置換のアルキル基であればよく、特に限定されるものではない。またアルキル基は直鎖でも、分岐したものでも、環化したシクロアルキル基であってもよい。置換もしくは未置換のアルキル基を具体的に示すと、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフロロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基、ベンジル基、2,4−シクロペンタジエン−1−イリデニル基などが挙げられる。
また、上記R〜R20の置換基を構成する置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、置換もしくは未置換のアルコキシ基であればよく、特に限定されるものではないが、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等が挙げられる。
また、上記R〜R20の置換基を構成する置換もしくは未置換のチオアルコキシ基としては、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基であればよく、特に限定されるものではないが、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等が挙げられる。
また、上記R〜R10の置換基を構成するモノまたはジ置換アミノ基としては、モノまたはジ置換アミノ基であればよく、特に限定されるものではないが、例えばメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(アセトオキシメチル)アミノ基、ビス(アセトオキシエチル)アミノ基、ビス(アセトオキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトオキシブチル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
また、上記R〜R10の置換基を構成する置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェニキシ基、3−フルオロフェニキシ基等が挙げられる。
また、上記R〜R10の置換基を構成する置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、例えばフェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基等が挙げられる。
また、上記R〜R10の置換基を構成する置換もしくは未置換のアリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、テトラフェニレニル基、3−ニトロフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基、o−,m−およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノニル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
また、上記R〜R10の置換基を構成する置換もしくは未置換のヘテロアリール基としては、例えばチオニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等が挙げられる。
本発明の一般式[1]Mは金属原子であれば特に限定はないが、ニッケル、コバルト、白金、パラジウムもしくは銅が好ましく、ニッケルが更に好ましい。
なお、本発明の一般式[3]で表されるカチオンは分子量1000以下が好ましく、分子量500以下が更に好ましい。
本発明の近赤外線吸収材料の一般式[1]の具体例を表1に示すが、これに限定されるものではない。
Figure 2008208214
Figure 2008208214
Figure 2008208214
Figure 2008208214
一般式[1]の対カチオンとして一般式[3]を用いることにより可視光透明性が高く、近赤外線(〜1200nm)を効率よく吸収でき、樹脂等への溶解性に優れた材料を提供できる。
本発明の近赤外線吸収材料は、前記一般式[3]の構造を有する前記一般式[1]構造を含む近赤外線吸収材料を含有するものであれば、その用途、構成等により特に制限を受けることはない。また、本発明の近赤外線吸収材料には、他に補助的に他の光吸収性色素や各種安定剤等を含有させることもできる。
本発明の近赤外吸収材料は、必要に応じてバインダー樹脂と共に、基材上に、近赤外吸収材料を含む層を形成して、積層体とすることができる。積層体は、例えば、光学フィルター、光学反射板、光学拡散板などに使用できる。
近赤外線吸収色素に用いることができる上記の他の近赤外線吸収色素としては、例えば、シアニン系、キノリン系、クマリン系、チアゾール系、オキソノール系、アズレン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、アゾ系、ベンジリデン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ナフトキノン系、アントロキノン系、トリフェニルメタン系、ジイモニウム系、前記一般式[1]、一般式[2]、一般式[4]で表される金属錯体以外のS、N、O含有金属錯体系化合物等が挙げられる。
本発明の近赤外線吸収材料は一般式[1]および一般式[2]及び一般式[4]のほかにさらに、一般式[1]で表される以外のニッケル錯体系色素および/またはフタロシアニン系色素および/またはジイモニウム系色素を含んでもよい。本発明の近赤外線吸収材料対するこれらの色素の添加量としては、本発明の近赤外線吸収材料100重量部に対して好ましくは20〜500重量部、更に好ましくは本発明の近赤外線吸収材料100重量部に対して50〜200重量部である。吸収スペクトルとの兼ね合いでフィルムとしたときの可視光透過率が70〜80%以上、近赤外領域の透過率は10%以下となる比率が好ましい。
上記一般式[1]で表される以外のニッケル錯体系色素としては、下記一般式[6]の構造を含むものならば限定されず、さらに一価のカチオンとのイオン化化合物となっていても良い。
一般式[6]
Figure 2008208214
[式中R14〜R17はOまたはSまたはNRを表す。Rは、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、モノまたはジ置換アミノ基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アリールオキシ基、または、アリールチオ基を表す。具体例は、前述したものと同じである。]
具体的にはAmerican Dye Source, Ink(Laser Dyes & Near Infrared Dyes)カタログ記載のADS845MC、ADS870MC、ADS880MC、ADS890MC、ADS920MC、ADS990MC等が挙げられるがこれらに限定したものではない。
フタロシアニン系色素としては、下記一般式[7]で挙げられるものが好ましい。
一般式[7]
Figure 2008208214
[M1は金属原子、式中R18〜R33は水素原子もしくは置換基を表し、M1にはさらに置換基を有しても良い。]
具体的には株式会社日本触媒製イーエクスカラーIR-10、IR-12、IR-14等があるがこれらに限定されるものではない。
さらにジイモニウム系色素としては、下記一般式[8]の構造を含むものが好ましく、
一般式[8]
Figure 2008208214
[式Xはハロゲンイオン、無機酸イオンまたは有機酸イオンを表す。]
上記一般式[8]においてXにおけるハロゲンイオンとしては例えばヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン等が挙げられる。また、無機酸イオンとしては例えばヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる。有機酸イオンとしては例えば酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等が挙げられる。例えば日本化薬(株)製IRG-022、IRG-023、IRG-040等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の近赤外線吸収材料に対する本発明の近赤外線吸収材料以外の補助的に他の光吸収性色素や各種安定剤等の添加量としては、本発明の近赤外線吸収材料色素100重量部に対して好ましくは20〜200重量部、更に好ましくは本発明の近赤外線吸収材料100重量部に対して50〜150重量部である。吸収スペクトルとの兼ね合いでフィルムとしたときの可視光透過率が70〜80%以上、近赤外領域の透過率は10%以下となる比率が好ましい。
本発明の近赤外線吸収材料におけるバインダー樹脂としては、例えば、脂肪族エステル系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変性樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂およびそれらの共重合樹脂を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料も挙げられる。
本発明の近赤外線吸収材料は、塗布剤、粘着剤または接着剤として用いることができる。
本発明でいう塗布剤とは、樹脂および/または有機溶剤または水を含む液状組成物またはペースト状の組成物からなる近赤外線吸収性を有する加工材料である。本発明の塗布剤は、本発明の近赤外線吸収材料を適宜の塗布剤に溶解または分散させることにより調製することができる。本発明の塗布剤は、油性の塗布剤であってもよく、水性の塗布剤であってもよい。また、本発明の塗布剤には、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が含有されていてもよい。本発明の塗布剤の用途は、基材の表面被覆を目的とするものであれば特に制限されるものではなく、本発明の塗布剤によれば、近赤外線吸収性を有する塗膜を形成することができる。油性の塗布剤を構成するバインダー樹脂としては、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変性樹脂、およびそれらの共重合樹脂を挙げることができる。また、油性の塗布剤を構成する有機溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、およびそれらの混合溶媒を挙げることができる。一方、水性の塗布剤の調製方法としては、本発明の近赤外線吸収材料を微粉化処理して数マイクロメーター以下の微粒子を得、当該微粒子を、未着色のアクリル系のポリマーエマルジョン中に分散させる方法を挙げることができる。
粘着剤として用いる場合、バインダーとして粘着性バインダーを使用しても良い。粘着性バインダーとしては、アクリル系、ウレタン系、ゴム系などが挙げられる。アクリル系として用いることのできるモノマーとしてはアクリルモノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。本発明においては、粘着物性を確保するという点で、炭素数が4〜12のアクリル系モノマーを共重合に供することが好ましい。さらに好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
これらは、粘着剤としての望ましい物性を得る目的のため、適宜選択して単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上述粘着性バインダーにおいてアクリル系モノマー、アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系モノマー、及びその他のモノマー等を共重合してなるアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は5万〜100万であることが好ましく、5万〜20万の低分子量アクリル系共重合体であることがより好ましい。
さらに、粘着性バインダーと本発明の近赤外吸収材料とを含んでなる粘着剤は、基材上に公知の方法で塗工されて、積層体である粘着剤シートとなる。ここで用いられる基材は、後に記載する基材のほか、紙、金属、布なども用いられる。また、粘着性バインダーが、単独でシートを構成できる場合は、基材を必要としない粘着剤シートとなる。また、基材の両面に粘着剤が塗工される形態であってもよい。ただし、一方の面の粘着剤が、本発明の粘着剤を含まない場合であってもよい。
本発明の近赤外線吸収材料の樹脂に対する添加量としては、樹脂100重量部に対して近赤外線吸収材料0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜15重量部である。この割合が0.01重量部未満である場合には、近赤外線領域の波長光を効率よく吸収することができず、一方、20重量部を超える場合には、近赤外線吸収材料の分散性が低下して透明性(可視光線透過性)が損なわれることがある。
本発明における接着剤は本発明の近赤外吸収材料および接着剤からなる近赤外線吸収性を有する加工材料である。本発明の接着剤は、本発明の近赤外線吸収材料を接着性を有する適宜の媒体に溶解または分散させることにより調製することができる。
また、本発明の近赤外線吸収材料や上記他の光吸収性色素の、光あるいは熱に対する安定化を図る目的で使用される上記各種安定化剤としては、例えば、ハイドロキノン誘導体(米国特許3935016号明細書、米国特許3982944号明細書)、ハイドロキノンジエーテル誘導体(米国特許4254216号明細書)、フェノール誘導体(特開昭54−21004号公報)、スピロインダン又はメチレンジオキシベンゼンの誘導体(英国特許出願公開2077455号明細書、英国特許2062888号明細書)、クロマン、スピロクロマン又はクマランの誘導体(米国特許3432300号明細書、米国特許3573050号明細書、米国特許3574627号明細書、米国特許3764337号明細書、特開昭52−152225号公報、特開昭53−20327号公報、特開昭53−17729号公報、特開昭61−90156号公報)、ハイドロキノンモノエーテル又はパラアミノフェノールの誘導体(英国特許1347556号明細書、英国特許2066975号明細書、特公昭54−12337号公報、特開昭55−6321号公報)、ビスフェノール誘導体(米国特許3700455号明細書、特公昭48−31625号公報)、金属錯体(米国特許4245018号明細書、特開昭60−97353号公報)、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報)、ジインモニウム化合物(米国特許465612号明細書)、ニッケル錯体(特開平4−146189号公報)、酸化防止剤(欧州特許820057号明細書)が挙げられる。また、本発明の光学フィルターは、一重項酸素等のクエンチャーとして、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよく、本発明の近赤外線吸収材料の効果を阻害しない範囲において、ビスチオラート金属錯体アニオン等のクエンチャーアニオンを用いてもよい。
本発明の光学フィルターの構成として、基材に、必要に応じて、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等の各層を設けてもよい。本発明の近赤外線吸収材料、上記の他の光吸収性色素や各種安定剤を本発明の光学フィルターに含有させる方法としては、例えば、基材又は任意の各層に含有させる方法、基材又は任意の各層にコーティングする方法、各層間のポリマーバインダーや接着剤、粘着材に混入させる方法、本発明の近赤外線吸収材料等を含有する近赤外線吸収層を上記の各層とは別に設ける方法等が挙げられる。本発明の近赤外線吸収材料は、各層間のポリマーバインダーや接着剤、粘着剤に混入させる方法及び近赤外線吸収層を設ける方法に好適である。
本発明の近赤外線吸収材料の使用量は、光学フィルターの単位面積当たり、1〜1000mg/m、好ましくは5〜100mg/mである。1mg/m未満の使用量では、近赤外線吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/mを超えて使用した場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、明度が低下するおそれもあるため好ましくない。
上記基材の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;あるいは、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン等の高分子材料が挙げられる。光学フィルター用途で有れば、基材は透明支持体であることが好ましく、透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
これらの基材中には、光吸収性色素、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機微粒子等を添加することができ、また、これらの基材には各種の表面処理を施すことができる。
上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等の無機微粒子が挙げられる。
上記各種表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
上記下塗り層は、本発明の近赤外線吸収材料を含有する近赤外線吸収層を設ける場合に、基材と近赤外線吸収層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、近赤外線吸収層側の表面が粗面である層又は近赤外線吸収層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成される。なお、近赤外線吸収層が設けられていない基材の面に下塗り層を設けて、基材とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するのために設けてもよく、また、下塗り層は、光学フィルターと画像形成装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、基材と近赤外線吸収層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。上記ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。表面が粗面である下塗り層は、粗面の上に近赤外線吸収層を形成することで、基材と近赤外線吸収層とを接着する。表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、20nm〜3μmであることが好ましく、50nm〜1μmであることがさらに好ましい。近赤外線吸収層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロン、高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターにおいては、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、基材を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤や硬膜剤等を添加してもよい。
上記反射防止層中においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、同6−115023号、同8−313702号、同7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、同6−299091号、同7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、同6−56478号、同7−92306号、同9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いることもできる。
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。ここで、主成分とは、無機微粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。また、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマー等を用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
上記ハードコート層は、透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。また、シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
上記反射防止層(低屈折率層)の表面には潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
上記の近赤外線吸収層、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
本発明の光学フィルターを用いれば太陽光の可視光線を有効に透過させ、かつ熱線を確実にカットできる。また耐久性に優れているため長期にわたって太陽光に暴露しても熱線遮断能力が損なわれることはない。
本発明の光学フィルターは、撮像装置(画像入力装置)におけるCCD(例えばシリコンフォトダイオードからなる光電変換素子)のための視感度補正フィルターとして好適に用いることができる。ここに、『CCDのための視感度補正フィルター』には、CCDに至る光路中に単独で配置される視感度補正フィルターのほか、リッド、レンズおよび保護板などが含まれるものとする。また、CCDを搭載する撮像装置としては、例えばビデオカメラ、デジタルカメラ、ボードカメラ、カラースキャナ、カラーファックス、カラー複写機、カラーテレビ電話装置などを挙げることができる。本発明の光学フィルターを搭載してなる撮像装置によれば、CCD(シリコンフォトダイオード)への入射光を、実質的に可視領域の光に限定することができ、この結果、正確な測光(露出操作)を行なうことができ、しかも、赤色成分の再現にも支障を来すことはない。
本発明の光学フィルターは、CMOSイメージセンサまたは人工網膜が搭載された撮像装置(画像入力装置)のための視感度補正フィルターとして好適に用いることができる。本発明の光学フィルターを備えたCMOSイメージセンサおよび人工網膜、並びにこれらを搭載してなる撮像装置によれば、上述したCCDにおける効果と同様の効果を奏することができる。
また本発明の光学フィルターは、赤外線通信装置(850〜950nmの光を媒体とする通信装置)が使用される環境におけるノイズカットフィルターとして好適に用いることができる。かかるノイズカットフィルターによれば、近赤外線の発生源(例えば自動ドア、リモコンなど近赤外線を用いた機械)をカバーし、当該発生源からの赤外線を遮断することにより、通信中におけるノイズの発生を確実に防止することができる。
また、本発明の光学フィルターを、プラズマディスプレイ装置もしくは液晶パネルディスプレイ装置のパネルの前面に配置することによって、当該パネルから照射される近赤外線を効率よくカットすることができる。この結果、当該ディスプレイ装置の周囲において、近赤外線に起因するリモコンの誤動作などを生じさせることはない。
近年、軽量化及び低コスト化等の観点より、自動車部品等、各種分野の部品として樹脂成形物が頻繁に用いられている。また、樹脂成形物の高生産性化等の観点より、樹脂成形物を予め複数に分割して成形し、これらの分割成形物を互いに接合する手段が採られることが多い。
樹脂材同士の接合は、従来、レーザーに対して透過性のある透過性樹脂材と、レーザーに対して吸収性のある吸収性樹脂材とを重ね合わせた後、前記透過性樹脂材側からレーザーを照射することにより、透過性樹脂材と吸収性樹脂材との当接面同士を加熱溶融させて両者を一体的に接合するレーザー溶着方法により行われている。
さらに、従来のレーザー溶着方法では、同種あるいは異なる種類の樹脂部材の接合において、接合される樹脂部材がレーザーに対して吸収性を有するものと吸収性を有さないものの2種類となるため、その色調に差が生じ、接合された樹脂部材の使用用途に限界があった。具体的には、レーザーに対して非吸収性の樹脂材料は白色あるいは透明のレーザー透過色であり、吸収性の部材はカーボンブラック等の黒色系のレーザー吸収色であるため、見た目の違和感を生じるようになっていた。すなわち、このような異なる色の樹脂材料を接合すると、見た目の接合力が弱く感じられるとともに、接合部が目立つという問題を有していた。
本発明の材料を用いれば、透過性樹脂材内を透過したレーザーが吸収性樹脂材の当接面に到達して吸収され、この当接面に吸収されたレーザーがエネルギーとして蓄積される。その結果、吸収性樹脂材の当接面が加熱溶融されると共に、この吸収性樹脂材の当接面からの熱伝達により透過性樹脂材の当接面が加熱溶融される。この状態で、透過性樹脂材及び吸収性樹脂材の当接面同士を圧着させれば、両者を一体的に接合することができる。本材料は可視光線の透過率が良好であることから、レーザー透過性樹脂材との色調差を小さくすることができ、また近赤外線領域の吸収において大きなモル吸光係数を有しているためレーザーの照射により透過性樹脂材及び吸収性樹脂材の当接面同士を確実に溶着させて十分な接合強度をもつ樹脂組成物を提供できる。
最近では、簡便かつ効率的にマーキングを行う方法として、レーザー光の照射によるマーキングが盛んに行われている。このレーザー光の照射によるマーキング方法は、文字やイラスト状にレーザー光を照射した部分が熱エネルギーにより変色し、光の散乱によって文字やイラストが識別できるというものである。
例えば、特開平9−302236号公報には、ロイコ色素、発色補助成分及び熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物を、成形後、レーザー光を照射することにより、レーザーマーキングが可能であることが開示されている。しかしながら、混練時の熱により発色成分の反応が起こるため、発色成分が限定され、発色の自由度が制約される。また、特開平11−92632号公報には、発色剤として銅系化合物及びニッケル系化合物を含むエポキシ樹脂にレーザー光を照射することにより、樹脂成形品の表面にレーザーマーキングする技術が開示されているが、この場合は黒色のマーキングに限られている。特開平8−120133号公報には、ゴム強化ビニル系樹脂にチタンブラック等の化合物を配合した有彩色のレーザーマーキングが可能な樹脂組成物が開示されているが、この場は樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂に限られており、その応用展開に制約がある。
本発明の材料は高い可視光線透過率および高い近赤外線吸収能を持つため低出力の活性エネルギー線でマーキング可能な、透明性の高いマーキング用組成物を提供できる。また鮮明で高速且つ高精度の文字やイラスト等の模様を、簡単に素早くマーキングすることができる。
LEDは高効率かつ高輝度発光でRGB三色にて現在様々な分野で利用されている。しかしながら、比較的大きなエネルギーを発生させるため発熱源となり、ダイオード使用機器は常に高温にさらされるという問題を有している。発熱の原因はダイオードの輻射熱・赤外線発生によるものである。本発明の近赤外線吸収材料およびそれを用いた近赤外線吸収積層体は近赤外線の吸収能に優れており、かつ高い可視光透明性を有しているためLEDの発光色を変えることなく赤外線をカットできる。また、高耐熱性および高耐光性を有しているため、長時間本材料をLEDに用いても近赤外線吸収能が衰えることは無い。本発明の近赤外線吸収材料およびそれを用いた近赤外線吸収積層体を用いればダイオードの発光による発熱を抑制することができる。
本発明の光学フィルターは好ましくは、ディスプレイ用フィルターまたはCCD、CMOSイメージセンサー用フィルターとして配置されその配置方法は何ら制限を受けるものではない。
(実施例)
以下、製造例および実施例にて本発明を詳細に説明する。しかし本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
製造例[1]P-1の合成
Figure 2008208214
窒素雰囲気下室温においてテトラチアペンタレンジオン(2g、9.6mmol)、メタノール150mlを撹拌した。そこにナトリウムメトキシド(1.04g、20.4mmol)を加え、室温にて30分撹拌した。次に塩化ニッケル(1.25g、9.6mmol)を加え、30分撹拌した。溶液が褐色に変化したところでテトラブチルフォスフォニウムブロマイド(2.00g、6.0mmol)を加え、3時間撹拌した。析出物をろ過してP−1を2.5g得た。収率87%。
製造例[2]P-2の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにヘプチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-2を合成した。収率85%。
製造例[3]P-3の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにベンジルトリフェニルフォスフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-3を合成した。収率88%。
製造例[4]P-4の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドドの代わりに2‐(1,3−ジオキソラン2−イル)エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-4を合成した。収率83%。
製造例[5]P-5の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりに2‐(トリメチルシリル)エトキシメチルトリフェニルフォスフォニウムクロライドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-5を合成した。収率88%。
製造例[6]P-6の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにトリブチルヘキサデシルフォスフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-6を合成した。収率90%。
製造例[7]P-7の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにテトラデシルトリフェニルフォスフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-7を合成した。収率89%。
製造例[8]P-8の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにテトラオクチルフォスフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-8を合成した。収率86%。
製造例[9]P-9の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにジメチルアミノエチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-2を合成した。収率87%。
製造例[10]P-10の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにトリtertブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレートを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-10を合成した。収率84%。
製造例[12]P-12の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにトリエチルスルフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-12を合成した。収率80%。
製造例[13]P-13の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにジフェニル(メチル)スルフォニウムテトラフルオロボレートを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-13を合成した。収率79%。
製造例[14]P-14の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにジメチルフェナシルスルフォニウムテトラフルオロボレートを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-14を合成した。収率85%。
製造例[15]P-15の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにトリフェニルスルフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-15を合成した。収率81%。
製造例[16]P-16の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにトリメチルスルフォニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-16を合成した。収率82%。
製造例[17]P-17の合成
テトラブチルフォスフォニウムブロマイドの代わりにトリメチルスルフォキソニウムブロマイドを用いた以外製造例[1]と同様の方法にてP-17を合成した。収率87%。
製造例[18]P-21の合成
Figure 2008208214
窒素雰囲気下室温においてテトラチアペンタレンジオン(2g、9.6mmol)、メタノール150mlを撹拌した。そこにナトリウムメトキシド(1.04g、20.4mmol)を加え、室温にて30分撹拌した。次にジクロロアセトン(1.22g、9.6mmol)を加え、2時間撹拌した。固体析出を確認後、さらにナトリウムメトキシド(1.04g、20.4mmol)を加え、室温にて30分撹拌した。次に塩化ニッケル(1.25g、9.6mmol)を加えて3時間撹拌し、溶液が褐色に変化したところでメチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド(1.93g、6.0mmol)を加え、3時間撹拌した。析出物をろ過してP−21を2.0g得た。収率69%。
比較化合物1、比較化合物2(特開2005-232185号公報記載)、比較化合物3(特許第3699464号公報記載)比較化合物4(昭61−26686号公報記載)および比較化合物5(Phosphorus, Sulfur, and Silicon, 1994, Vol. 90, pp. 219-227)、そして本発明の化合物P−1〜P−16およびP−21を固形分25%のポリメチルメタクリレート(Mw=200000)溶液(溶剤:酢酸エチル/メチルエチルケトン=1:1)に固形分に対して約2%混合し、PETフィルムに塗工した。このフィルムについて耐熱試験100℃-400時間、800時間行い、試験前後について極大吸収波長における透過率の差(ΔT)について比較を行った結果を表3に示す。
Figure 2008208214
Figure 2008208214
上記表より比較化合物1〜5に比べて本発明の近赤外線吸収材料のほうが耐熱性に優れていることが分かる。
比較化合物1、比較化合物2(特開2005-232185号公報記載)、比較化合物3(特許第3699464号公報記載)比較化合物4(昭61−26686号公報記載)および比較化合物5(Phosphorus, Sulfur, and Silicon, 1994, Vol. 90, pp. 219-227)、そして本発明の化合物P−1〜P−16およびP−21を固形分25%のアクリル系粘着材(モノマー組成:アクリル酸ブチル60%、アクリル酸イソブチル30%、アクリル酸3%、アクリル酸−2−エチルヘキシル7%、溶剤組成:酢酸エチル80%、トルエン20%)に固形分に対して約2.0%混合し、PETフィルムに塗工した。このフィルムについて耐湿熱試験80℃-湿度80%-200時間行い、試験前後について近赤外極大吸収の透過率変化(Δ%T)および色度変化(Δy)について比較を行い、表4に示した。
Figure 2008208214
上記表より比較化合物1〜5に比べて本発明の近赤外線吸収材料のほうが耐久性に優れており、色変化も小さいということが分かる。
比較化合物1、比較化合物2(特開2005-232185号公報記載)、比較化合物3(特許第3699464号公報記載)比較化合物4(昭61−26686号広報記載)、比較化合物5(Phosphorus, Sulfur, and Silicon, 1994, Vol. 90, pp. 219-227)および比較化合物6、化合物7(特開平2−264788号公報)、そして本発明の化合物P−1〜P−7の酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンに対する溶解性比較を行い、表5に示した。
Figure 2008208214
Figure 2008208214
上記表より一般式[3]のカチオンを有すると溶媒への溶解性が高くなることが分かる。比較化合物1〜7とP-1〜 P-5、P-12、P-17の溶解度を比較すると本発明の化合物のほうが溶剤への溶解性に優れていることが分かる。
比較化合物1、比較化合物2(特開2005-232185号公報記載)、比較化合物3(特許第3699464号公報記載)比較化合物4(昭61−26686号公報記載)、比較化合物5(Phosphorus, Sulfur, and Silicon, 1994, Vol. 90, pp. 219-227)および比較化合物6、化合物7(特開平2−264788号公報)、そして本発明の化合物P−1〜P−8を固形分25%のポリメチルメタクリレート(Mw=100000)溶液(溶剤:アセトン:メチルエチルケトン=1:3)に固形分に対して約2%混合し、PETフィルムに塗工した。このフィルムについて吸収波長およびHaze値を表7に示した。
Figure 2008208214
上記表7より、本発明の材料は長波長を吸収し、かつ樹脂との相溶性に優れていることが分かる。
実施例1〜4より、本発明の近赤外吸収材料は溶剤に対する溶解性、樹脂に対する相溶性が良好であり耐久性に優れた材料として提供することができるということが明らかとなった。
以上、記載した通り、本発明の近赤外吸収材料は、これまでの同種の近赤外吸収材料に比べて、格段の溶解性と耐久性を付与できたため、例えば、色目の調整剤、難燃剤、金属捕集剤、不可視マーカなど様々な用途に使用することが可能になった。
本発明の近赤外線吸収材料を含有する樹脂組成物は、近赤外線を吸収・カットする機能を有する半導体受光素子用の光学フィルター、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用近赤外線吸収フィルム、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体、電子機器用近赤外線カットフィルター、写真用近赤外線フィルター、保護めがね、サングラス、熱線遮断フィルム、光学記録用色素、光学文字読み取り記録、機密文書複写防止用、電子写真感光体、レーザー溶着、などに用いられる。またCCDカメラ用ノイズカットフィルター、CMOSイメージセンサ用フィルターとしても有用である。

Claims (15)

  1. 下記一般式[1]で表される近赤外線吸収材料。
    一般式[1]
    Figure 2008208214
    [式中Mは金属原子を表し、AおよびBはカルボニル基を含む複素環を表し、Xはホスホニウムカチオンまたはスルホニウムカチオンまたはスルホキソニウムカチオンを表す。]
  2. Aおよび/またはBが、下記一般式[2]で表される複素環であることを特徴とする請求項1記載の近赤外線吸収材料。
    一般式[2]
    Figure 2008208214
    [式中AおよびAは、それぞれ直接結合もしくは置換基を有して良い炭素原子を表す。]
  3. AおよびBが、下記式[2−1]で表される複素環であることを特徴とする請求項2記載の近赤外線吸収材料。
    式[2−1]
    Figure 2008208214
  4. Xが、下記一般式[3]で表されるいずれかのカチオンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の近赤外線吸収材料。
    一般式[3]
    Figure 2008208214
    [式中R〜R10は水素原子もしくは任意の置換基を表す。]
  5. Xの置換基のうち少なくともひとつが置換もしくは未置換のアルキル基を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の近赤外線吸収材料。
  6. Xが、少なくともひとつが置換もしくは未置換のフェニル基を有することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の近赤外線吸収材料。
  7. さらに、一般式[1]で表される以外のニッケル錯体系色素および/またはフタロシアニン系色素および/またはジイモニウム系色素を含む請求項1〜6いずれか記載の近赤外線吸収材料。
  8. さらに、バインダー樹脂を含む請求項1〜7いずれか記載の近赤外線吸収材料。
  9. 塗布剤である請求項8記載の近赤外線吸収材料。
  10. バインダー樹脂のガラス転移温度が、80℃以上であることを特徴とする請求項8または9記載の近赤外線吸収材料。
  11. バインダー樹脂が、粘着剤または接着剤である請求項8または9記載の近赤外線吸収材料。
  12. 請求項1〜11いずれか記載の近赤外線吸収材料を透明基材上に形成してなる積層体。
  13. 光学フィルターである請求項12記載の積層体。
  14. プラズマディスプレイ用である請求項12または13記載の積層体。
  15. レーザーマーキング用である請求項12記載の積層体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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