JP2009143981A - タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部に適用し、空気入りタイヤの乗り心地性能を維持しながら操縦性能を向上させるタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、紙繊維と、シランカップリング剤とを少なくとも含み、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を構成するタイヤ用ゴム組成物であって、上記紙繊維は、原料紙を細片化した後に叩解して得られる紙繊維であり、平均繊維長さが5〜1000μm、平均繊維長さLと平均繊維径Dとの比L/Dが10〜2000であって、ゴム成分100質量部に対して紙繊維を0.5〜10質量部配合することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、紙繊維と、シランカップリング剤とを少なくとも含み、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を構成するタイヤ用ゴム組成物であって、上記紙繊維は、原料紙を細片化した後に叩解して得られる紙繊維であり、平均繊維長さが5〜1000μm、平均繊維長さLと平均繊維径Dとの比L/Dが10〜2000であって、ゴム成分100質量部に対して紙繊維を0.5〜10質量部配合することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明はタイヤ用ゴム組成物に関し、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部を構成するゴムとして好適なタイヤ用ゴム組成物である。また、本発明は、該タイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
近年、自動車の装備や性能の著しい充実化に加え、道路網が拡充発展したことで、タイヤについても常に安定した操縦性能、特に、高速走行での高い制動性能の要求に加えて、乗り心地についても高い性能が要求されてきている。タイヤの制動性能を高くするにはタイヤの前後剛性を高くすればよいが、この方法としては、ケース部を高剛性化することが知られている。
上記ケース部を高剛性化する方法としては、ブレーカー用接着ゴムのE*を上げればよい。ケース用接着ゴムE*をあげる方法としては、従来カーボンブラックの配合量を増加させる方法が採用されている。しかしながら、背反性能として、発熱量の増加に伴う耐久性能の低下や、タイヤ縦方向の剛性が上昇することによる乗り心地の低下という問題があった。
特開2006−213193号公報
特開2006−306955号公報
本発明は、空気入りタイヤの乗り心地性能を維持しながら操縦性能を向上させることを目的とする。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、紙繊維と、シランカップリング剤とを少なくとも含み、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を構成するタイヤ用ゴム組成物であって、上記紙繊維は、原料紙を細片化した後に叩解して得られる紙繊維であり、平均繊維長さが5〜1000μm、平均繊維長さLと平均繊維径Dとの比L/Dが10〜2000であって、ゴム成分100質量部に対して紙繊維を0.5〜10質量部配合することを特徴とする。
シランカップリング剤は、ゴム成分100質量部に対して0.2〜10質量部配合することが好ましい。
原料紙は、新聞古紙およびクラフト紙の少なくとも一方であることが好ましい。
上記短繊維は、平均繊維径Dが1〜100μmであることが好ましい。
上記短繊維は、平均繊維径Dが1〜100μmであることが好ましい。
上記タイヤ用ゴム組成物は、温度70℃、周波数10Hz、動歪±1%の測定条件における複素弾性率E*が5〜20MPaであることが好ましく、また、この測定条件における損失正接tanδが0.04〜0.2でることが好ましい。
また本発明は、ケース部およびブレーカー部を少なくとも備えた空気入りタイヤであって、ケース部を構成するケース接着用ゴムおよびブレーカー部を構成するブレーカー接着用ゴムの少なくとも一方が、上記タイヤ用ゴム組成物により形成される空気入りタイヤに関する。
上記ケース接着用ゴムおよびブレーカー接着用ゴムの少なくとも一方は、タイヤ周方向の複素弾性率E* aとタイヤラジアル方向の複素弾性率E* bとの比E* a/E* bが1.5以上に設定されていることが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記特定の紙繊維と上記シランカップリング剤と少なくとも含むことにより、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を該ゴム組成物により形成した場合に、得られたタイヤの乗り心地性能を改善し、さらに操縦安定性を向上させることができる。
<空気入りタイヤ>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部を構成するのに好適なゴム組成物である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部を構成するのに好適なゴム組成物である。
上記ケース部およびブレーカー部について、空気入りタイヤを模式的に示した図1に従い説明する。
すなわち、本発明の空気入りタイヤTは、図1に例示されるように、トレッド部3と、そのトレッド部3からタイヤ半径方向内方に延びるサイドウォール部2と、各サイドウォール部2の内方端に位置するビード部1とを備える構造を有するのが一般的である。また、ビード部1間にはケース5が架け渡され、このケース5の外側かつトレッド部3の内側に、タガ効果を有してトレッド部3を補強するブレーカー6(ベルト層)が配される。
なお、上記ケース5は、ケースコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば70〜90°の角度で配列する1枚以上のプライから形成され、このプライは、上記トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部1のビードコア7の廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返されて係止(図1中、5a)される。
上記ブレーカー6は、ベルトコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば40°以下の角度で配列した2枚以上のベルトプライからなり、各ベルトコードがプライ間で交差するよう向きを違えて重置している。
なお、上記空気入りタイヤは、ケース部およびブレーカー部を少なくとも備えるものであれば特に限定されるものではない。
このような本発明の空気入りタイヤは、乗用車用、トラック用、バス用、重機用等、種々の用途に適用され得る。
<ケース部およびブレーカー部>
上記空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を構成するケース接着用ゴムおよびブレーカー接着用ゴムの少なくとも一方は、タイヤ周方向の複素弾性率E* aとタイヤラジアル方向の複素弾性率E* bとの比E* a/E* bが1.5以上であるであることが好ましい。
上記空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を構成するケース接着用ゴムおよびブレーカー接着用ゴムの少なくとも一方は、タイヤ周方向の複素弾性率E* aとタイヤラジアル方向の複素弾性率E* bとの比E* a/E* bが1.5以上であるであることが好ましい。
複素弾性率の比E* a/E* bが1.5以上である場合、乗り心地性能を良好に保つことができ、かつ操縦安定性を向上させることができる。上記複素弾性率の比E* a/E* bは、1.6以上であることがより好ましい。また、上記複素弾性率の比E* a/E* bは、10以下であることがより好ましく、さらに9以下であることが好ましい。複素弾性率の比E* a/E* bが10以下であれば、乗り心地性能を損なわずに良好に保つことができ、操縦安定性を向上させることができ、上記各特性のバランスに優れたケース接着用ゴムまたはブレーカー接着用ゴムとして好適である。
本発明においては、上記の複素弾性率E* aが10MPa以上50MPa以下であることが好ましい。E* aが10MPa以上である場合、ケース部またはブレーカー部は十分な剛性を有するものとなり操縦安定性を改善することができ、50MPa以下である場合は、乗り心地性能および耐久性能を損なうおそれが少ない。また本発明においては、上記の複素弾性率E* bが4MPa以上11MPa以下であることが好ましい。E* bが4MPa以上である場合、操縦安定性が良好であり、E* bが11MPa以下である場合、乗り心地性能および耐久性能を損なうおそれが少なく、上記のように各特性のバランスを良好なものとすることができる。
ここで、本発明において複素弾性率とは、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で粘弾性スペクトロメータを用いて測定し求められる値をいう。
本発明において、上記のようなタイヤ周方向とタイヤラジアル方向との複素弾性率の異方性の付与は、E* a/E* bを上記範囲に設定することができれば特に限定されるものではないが、たとえばケースまたはブレーカーを構成するタイヤ用ゴム組成物をシート状に押出し成形する際の押出し条件の調整により上記ゴム組成物に配合された紙繊維の配向性を制御する方法などにより行なうことができる。具体的には、たとえば上記押出し成形により、紙繊維が上記のように配向したゴム組成物からなるシートを、ケース部またはブレーカー部のタイヤ周方向がタイヤラジアル方向に比べてより高剛性となるように配向性の高い方向が、タイヤ周方向となるように配することにより制御することができる。
<タイヤ用ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、紙繊維と、シランカップリング剤とを少なくとも含み、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を構成するタイヤ用ゴム組成物である。このようなゴム組成物は、ゴム成分と紙繊維とを上記範囲内において含む限り他の成分を含んでいても差し支えない。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、紙繊維と、シランカップリング剤とを少なくとも含み、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を構成するタイヤ用ゴム組成物である。このようなゴム組成物は、ゴム成分と紙繊維とを上記範囲内において含む限り他の成分を含んでいても差し支えない。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、複素弾性率E*が5〜20MPaであることが好ましく、7〜13MPaであることがより好ましい。タイヤ用ゴム組成物の複素弾性率E*が5MPa以上であれば、操縦性および耐久性が良好となる。また複素弾性率E*が、20MPa以下であれば、この範囲を外れる場合に比べて、剛性を高めながらも乗り心地性能をより良好なものとすることができる。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、損失正接tanδが0.04〜0.2であることが好ましく、0.04〜0.15であることがより好ましい。タイヤ用ゴム組成物の損失正接tanδが0.04以上であれば、上記複素弾性率比を良好な範囲に調整することが容易でり、0.2以下であれば発熱を抑えることができる。
なお、本発明における上記タイヤ用ゴム組成物の損失正接は、上記複素弾性率の測定条件と同一条件において測定した値により求めることができる。
<ゴム成分>
本発明のタイヤ用ゴム組成物において使用されるゴム成分としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらのうち1種類または2種類以上を含むことが好適である。なお、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とは、エチレン−プロピレンゴム(EPM)に第三ジエン成分を含むものである。ここで第三ジエン成分としては、たとえば炭素数5〜20の非共役ジエンが挙げられ、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンおよび1,4−オクタジエンや、1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンなどの環状ジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネンおよび2−イソプロペニル−5−ノルボルネンなどのアルケニルノルボルネン等が好ましく例示できる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において使用されるゴム成分としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらのうち1種類または2種類以上を含むことが好適である。なお、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とは、エチレン−プロピレンゴム(EPM)に第三ジエン成分を含むものである。ここで第三ジエン成分としては、たとえば炭素数5〜20の非共役ジエンが挙げられ、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンおよび1,4−オクタジエンや、1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンなどの環状ジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネンおよび2−イソプロペニル−5−ノルボルネンなどのアルケニルノルボルネン等が好ましく例示できる。
ここで、上記天然ゴムとしては、従来天然ゴムとして知られるものであればいずれのものも含まれ、原産地等は限定されない。このような天然ゴムは、シス1,4ポリイソプレンを主体として含むが、トランス1,4ポリイソプレンを含むこともできる。したがって、上記天然ゴムには、シス1,4ポリイソプレンを主体として含む天然ゴムの他、たとえば南米産アカテツ科のゴムの一種であるバラタ等、トランス1,4イソプレンを主体として含む天然ゴムも含まれる。このような天然ゴムを1種または2種以上含むことができる。なお、このような天然ゴムには、上記のような天然ゴムを変性または精製した変性天然ゴムも含まれる。たとえば、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱蛋白天然ゴム(DPNR)等が含まれる。
一方、上記合成ゴムとしては、たとえばスチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物などを挙げることができる。このような合成ゴムを1種または2種以上含むことができる。これらの合成ゴムのなかでも、特にケース部に適用する場合は、上記各種特性を維持させるために、スチレンブタジエンゴムを用いることが好ましい。
なお、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とは、エチレン−プロピレンゴム(EPM)に第三ジエン成分を含むものである。ここで第三ジエン成分としては、たとえば炭素数5〜20の非共役ジエンが挙げられ、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンおよび1,4−オクタジエンや、1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンなどの環状ジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネンおよび2−イソプロペニル−5−ノルボルネンなどのアルケニルノルボルネン等が例示できる。
上記ケース部を構成するタイヤ用ゴム組成物に含まれるゴム成分としては、天然ゴムと合成ゴムとを含むことが好ましい。ゴム成分が天然ゴムと合成ゴムとを含む場合、これらの配合比率は、天然ゴムに対する合成ゴムの配合比率を20質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。このような配合比率のゴム成分を採用することにより、紙繊維を配合した状態であっても、ケース部に要求される特有の物性を向上させることができ、操縦安定性を向上させるという本発明の効果が顕著である。天然ゴムに対する合成ゴムの配合比率が上記範囲を外れる場合には、このような特性をバランスよく保つことが困難となる場合がある。
<紙繊維>
本発明のタイヤ用ゴム組成物に含まれる紙繊維は、上記ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下含まれる。紙繊維の配合がゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上であれば、ケース部およびブレーカー部の補強効果(高剛性化効果)が十分に得られ、10質量部以下であれば、ケース部およびブレーカー部が硬くなり過ぎることによる乗り心地性能の悪化、および引張強度の低下等による耐久性能の低下の虞がない。紙繊維の配合量は、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上でありる。また、紙繊維の配合量は7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物に含まれる紙繊維は、上記ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下含まれる。紙繊維の配合がゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上であれば、ケース部およびブレーカー部の補強効果(高剛性化効果)が十分に得られ、10質量部以下であれば、ケース部およびブレーカー部が硬くなり過ぎることによる乗り心地性能の悪化、および引張強度の低下等による耐久性能の低下の虞がない。紙繊維の配合量は、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上でありる。また、紙繊維の配合量は7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
このようにケース部およびブレーカー部を構成するタイヤ用ゴム組成物に紙繊維を配合することにより、タイヤの高剛性化を実現できるとともに、上記のようにこの紙繊維を配合したゴム組成物の複素弾性率比を特定の範囲とすることで、ケース接着用ゴムおよびブレーカー接着用ゴムとしての各種特性に優れたタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。また、紙繊維の種類および配合量を適宜設定することにより、このようなケース部およびブレーカー部を構成するゴム組成物の複素弾性率比および所望の特性を簡便かつ任意に制御することができる。
本発明で用いられる紙繊維とは、原料紙と細片化した後、叩解して得られる短繊維をいい、平均繊維長さLが5〜1000μmであり、平均繊維長さLと平均繊維径Dとの比L/Dが10〜2000である。
上記平均繊維長さLは、10〜1000μmの範囲内であることがより好ましい。該平均繊維長さLが5μm以上である場合、上記のように特定の部位に用いるタイヤ用ゴム組成物としての諸特性を優れたものとすることができる。また、上記平均繊維長さLが1000μm以下である場合、ゴム組成物中における紙繊維の分散不良やゴム組成物の物性の不均一を良好に防止し、分散性および配向性に優れたゴム組成物とすることができる。
上記紙繊維の平均繊維径Dは、0.05〜800μmであることが好ましく、1〜400μmであることがより好ましく、さらに10〜200μmであることが好ましい。該平均繊維径Dが1μm以上であれば、上記のように各部位に用いるタイヤ用ゴム組成物としての諸特性を優れたものとすることができる。また、上記紙繊維の平均繊維径Dが100μm以下であれば、ゴム組成物中における紙繊維の分散不良やゴム組成物の物性の不均一が良好に防止される。
そして、本発明においては、該平均繊維長さLと該平均繊維径Dとの比L/Dが、10〜2000である。上記比L/Dが10以上であれば、本発明の効果を発揮することができ、2000以下であれば、ゴム組成物中における紙繊維の分散やゴム組成物の物性不均一を良好な状態に維持することができ、本発明の効果を得ることができる。
なお、本発明における繊維状フィラーの平均長さLおよび平均径Dは、たとえば走査型電子顕微鏡を用いて撮影された画像から画像解析によって測定される値より算出する方法で評価される。いずれもゴム組成物に配合する前の形状が上記範囲内にあれば、本発明の効果が十分に発現するものである。
本発明における紙繊維としては、クラフトパルプ、セミケミカルパルプ、機械パルプ等のパルプ化法で得られるパルプ、ケナフ、バガス、竹、コットン、海藻等を由来とする非木材パルプ、使用済コピー用紙、古新聞紙、古段ボール紙等の古紙を脱墨して得られる古紙パルプ、等から得られる原料紙の1種または2種以上の混合物を用いて調製されたものを挙げることができる。
これらのなかでも、物理的強度が比較的大きい紙繊維として、新聞古紙およびクラフト紙が単独または混合して好ましく用いられる。
上記クラフト紙とは、クラフトパルプ(KP)を抄紙して得られる紙の全般を指し、未晒クラフト紙および晒クラフト紙を含む。クラフトパルプは、化学パルプに分類されるものの主流であり、一般に比較的長い繊維長を有することから、クラフト紙は強度に優れる紙として包装用途等に広く使用される。クラフトパルプとしては針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプのいずれも使用できるが、針葉樹クラフトパルプは繊維長が比較的長いため好ましい。
このようなクラフトパルプは、一般に以下のような方法で製造される。まず原料となるチップの不純物を除去するとともに、厚みや長さ等を一定範囲内に均一化する。次にチップを苛性ソーダ、硫化ソーダ等の薬品で、たとえば150〜160℃程度の高温で蒸煮し、チップ中の主にリグニンを溶出させ、パルプ化する。溶出リグニンおよび薬品をパルプと分離するための洗浄工程を経た後、該パルプをたとえば酸素およびアルカリで処理すること等により、パルプ中の残存リグニンをさらに溶出させる。最後に異物除去、洗浄を行ない、未晒クラフトパルプを得ることができる。未晒クラフトパルプはさらに漂白工程を経ることによって晒クラフトパルプとされることができる。未晒クラフトパルプを抄紙することにより未晒クラフト紙、晒クラフトパルプを抄紙することにより晒クラフト紙をそれぞれ製造することができる。
本発明において配合される紙繊維は、原料紙を細片化し、さらに叩解して繊維状とすることにより得られる。細片化した原料紙を叩解した場合、原料紙中の繊維の解繊および繊維長の短小化が生じる。よって叩解により得られた紙繊維の表面積は叩解しないものと比べて著しく大きくなり、シランカップリング剤と反応する紙繊維の面積を大きくすることができるため、タイヤ用ゴム組成物の補強効果を高めることとなる。
上記の細片化は、原料紙を上記所望の紙繊維の平均繊維長さL程度、幅1〜200μm程度の大きさになるまで行なえばよい。
細片化された原料紙を叩解することにより、本発明において用いられる紙繊維が調製される。叩解条件は、原料紙の種類、目的とするタイヤ用ゴム組成物の物性等に応じて適宜選択され得るが、コストが比較的安価であるという点で、叩解が乾式で行なわれることが好ましい。
<シランカップリング剤>
本発明においては、タイヤ用ゴム組成物にシランカップリング剤を配合する。シランカップリング剤は、ゴム成分100質量部に対して0.2〜10質量部配合することが好ましく、0.4〜2質量部配合することがより好ましい。シランカップリング剤を配合することにより、上記紙繊維(特に紙繊維等の多糖に含まれる水酸基)とシランカップリング剤とが反応し、ゴム組成物により良好な補強効果がもたらされる。その結果、上記タイヤ用ゴム組成物としての特性を損なうことなく、タイヤの耐摩耗性(すなわち耐久性能)および操縦安定性を顕著に向上させることができる。ゴム成分100質量部に対してシランカップリング剤の配合量が0.2質量部以上である場合、耐摩耗性および操縦安定性の向上効果が良好に得られる。またシランカップリング剤の配合量が10質量部以下である場合、ゴムの混練、押出工程での焼け(スコーチ)が生じる危険性が少ない。
本発明においては、タイヤ用ゴム組成物にシランカップリング剤を配合する。シランカップリング剤は、ゴム成分100質量部に対して0.2〜10質量部配合することが好ましく、0.4〜2質量部配合することがより好ましい。シランカップリング剤を配合することにより、上記紙繊維(特に紙繊維等の多糖に含まれる水酸基)とシランカップリング剤とが反応し、ゴム組成物により良好な補強効果がもたらされる。その結果、上記タイヤ用ゴム組成物としての特性を損なうことなく、タイヤの耐摩耗性(すなわち耐久性能)および操縦安定性を顕著に向上させることができる。ゴム成分100質量部に対してシランカップリング剤の配合量が0.2質量部以上である場合、耐摩耗性および操縦安定性の向上効果が良好に得られる。またシランカップリング剤の配合量が10質量部以下である場合、ゴムの混練、押出工程での焼け(スコーチ)が生じる危険性が少ない。
上記シランカップリング剤としては、反応効率、加工時の分散性等の点で特に含硫黄シランカップリング剤が好ましく用いられる。好ましい含硫黄シランカップリング剤としては、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
その他のシランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を使用することができる。
本発明では、用途に応じてその他のカップリング剤、例えばアルミネート系カップリング剤、チタン系カップリング剤を単独またはシランカップリング剤と併用して使用することも可能である。
<その他の成分>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記の各成分以外に他の成分を含んでいても差し支えない。このような他の成分としては、たとえばカーボンブラック、白色充填剤、加硫剤(硫黄)、加硫促進剤、加硫助剤、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、ワックス、オイル、軟化剤、可塑剤、カップリング剤等、タイヤ用または一般のゴム組成物用に配合される従来公知の各種配合剤または添加剤を本発明の上記効果に悪影響を及ぼさない範囲内で適宜配合することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記の各成分以外に他の成分を含んでいても差し支えない。このような他の成分としては、たとえばカーボンブラック、白色充填剤、加硫剤(硫黄)、加硫促進剤、加硫助剤、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、ワックス、オイル、軟化剤、可塑剤、カップリング剤等、タイヤ用または一般のゴム組成物用に配合される従来公知の各種配合剤または添加剤を本発明の上記効果に悪影響を及ぼさない範囲内で適宜配合することができる。
<製造方法>
本発明の空気入りタイヤは、上記のタイヤ用ゴム組成物を用いて、従来公知の方法により極めて良好な加工性で製造される。すなわち、上記構成のタイヤ用ゴム組成物を混練りし、未加硫の段階でタイヤのケース部またはブレーカー部の形状に合わせて押出し加工し、タイヤの他の部材とともに、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の空気入りタイヤを極めて加工性良く得ることができる。
本発明の空気入りタイヤは、上記のタイヤ用ゴム組成物を用いて、従来公知の方法により極めて良好な加工性で製造される。すなわち、上記構成のタイヤ用ゴム組成物を混練りし、未加硫の段階でタイヤのケース部またはブレーカー部の形状に合わせて押出し加工し、タイヤの他の部材とともに、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の空気入りタイヤを極めて加工性良く得ることができる。
なお、上記で説明した通り、このようなケース部またはブレーカー部におけるタイヤ周方向とタイヤラジアル方向との複素弾性率の異方性の付与は、E* a/E* bを上記範囲に設定することができれば特に限定されるものではないが、たとえばタイヤ用ゴム組成物をシート状に押出し成形する際の押出し条件の調整によりタイヤ用ゴム組成物に配合された紙繊維の配向性を制御する方法などにより行なうことができる。具体的には、たとえば上記押出し成形により、紙繊維が上記のように配向したゴム組成物からなるシートを、ケース部またはブレーカー部のタイヤ周方向がタイヤラジアル方向に比べてより高剛性となるように配向性の高い方向が、タイヤ周方向となるように配することにより制御することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜4、従来例1、比較例1〜4)
<タイヤ用ゴム組成物の作製(ケース接着用ゴムを構成するゴム組成物)>
表1に示す配合に従い、神戸製鋼所(株)製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤を除く配合成分を、上記ミキサーにおける充填率が58%になるように充填し、回転数80rpmで150℃で5分間混練りした。ついで、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤を表1に示す配合量で加えた後、2軸オープンロールを用いて、80℃で5分間混練りし、実施例1〜4、従来例1および比較例1〜4の混練り状態のケース部に適用するタイヤ用ゴム組成物を得た。
<タイヤ用ゴム組成物の作製(ケース接着用ゴムを構成するゴム組成物)>
表1に示す配合に従い、神戸製鋼所(株)製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤を除く配合成分を、上記ミキサーにおける充填率が58%になるように充填し、回転数80rpmで150℃で5分間混練りした。ついで、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤を表1に示す配合量で加えた後、2軸オープンロールを用いて、80℃で5分間混練りし、実施例1〜4、従来例1および比較例1〜4の混練り状態のケース部に適用するタイヤ用ゴム組成物を得た。
(実施例5〜8、従来例2、比較例5〜8)
<タイヤ用ゴム組成物の作製(ブレーカー接着用ゴムを構成するゴム組成物)>
ゴム組成物の配合を表2に示すものとした以外は、実施例1と同様の条件により実施例5〜8、従来例2および比較例5〜8の混練り状態のブレーカー部に適用するタイヤ用ゴム組成物を得た。
<タイヤ用ゴム組成物の作製(ブレーカー接着用ゴムを構成するゴム組成物)>
ゴム組成物の配合を表2に示すものとした以外は、実施例1と同様の条件により実施例5〜8、従来例2および比較例5〜8の混練り状態のブレーカー部に適用するタイヤ用ゴム組成物を得た。
NR:天然ゴム(タイ製、「RSS#3」)
SBR:スチレンブタジエンゴム(「SBR1502」、JSR社製)
カーボンブラック:「N220」、三菱化学社製
紙繊維:クラフト紙粉砕品(「ミルファイブ100」、三共精粉社製、平均長さL=10μm、L/D=100)
有機繊維:ビニロン繊維(「PVA(ポリビニルアルコール)短繊維」、クラレ社製、平均長さL=5μm、L/D=100)
硬化レジン:「スミライトレジンPR12686」、住友デュレツ社製
シランカップリング剤:「Si266」、デグサ社製
プロセスオイル:「ダイアナプロセスAH40」、出光興産社製
ワックス:「サンノックワックス」、大内新興化学工業社製
ナフテン酸コバルト:「パーメック」、日本油脂製
老化防止剤:「オゾノン6C」、精工化学社製
ステアリン酸:「桐」、日本油脂社製
酸化亜鉛:「銀嶺R」、東邦亜鉛社製
硫黄:粉末硫黄、鶴見化学社製
加硫促進剤:「ノクセラーNS」(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、大内新興化学工業社製
<空気入りタイヤの作製>
上記で得られた各タイヤ用ゴム組成物を用いて各ゴムシート(厚み:1.0mm、大きさ:50mm×1240mm)を作製後、これを他の部材とともに張り合わせ、150℃で35分間、25kgfでプレス加硫することにより、実施例1〜8、従来例1〜2および比較例1〜8のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ(サイズ:195/65R15)を作製した。
このような空気入りタイヤは、図1に示したような構造を有しており、その詳細は以下の通りである。
<空気入りタイヤの構造>
カーカス(ケース):材料 ポリエステル(1500デニール)
構成 1500デニール/2(1670dtex/2)
エンズ 50コード/50mm
ブレーカー層:材料 スチールコード、
構造 1×4×0.27、エンズ 40コード/50mm
角度 22°×22°
<評価>
実施例、従来例および比較例において得られたタイヤ用ゴム組成物および該タイヤ用ゴム組成物を備える空気入りタイヤについて、以下の性能評価を行なった。その結果を表1および表2に示す。
カーカス(ケース):材料 ポリエステル(1500デニール)
構成 1500デニール/2(1670dtex/2)
エンズ 50コード/50mm
ブレーカー層:材料 スチールコード、
構造 1×4×0.27、エンズ 40コード/50mm
角度 22°×22°
<評価>
実施例、従来例および比較例において得られたタイヤ用ゴム組成物および該タイヤ用ゴム組成物を備える空気入りタイヤについて、以下の性能評価を行なった。その結果を表1および表2に示す。
<加工指数>
キャラストメーターを用いて測定した粘度の値をそのまま指数として表1および表2に示す。
キャラストメーターを用いて測定した粘度の値をそのまま指数として表1および表2に示す。
<複素弾性率>
上記で得られたシート状のゴム組成物から短冊状試料(幅4mm×長さ30mm×厚み1.5mm)を作製し、岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で損失正接tanδ、複素弾性率比E* aおよびE* bを測定した。その結果を表1および表2に示す。
上記で得られたシート状のゴム組成物から短冊状試料(幅4mm×長さ30mm×厚み1.5mm)を作製し、岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で損失正接tanδ、複素弾性率比E* aおよびE* bを測定した。その結果を表1および表2に示す。
<引張り強度>
JIS−K6251に準じて、上記で得られた空気入りタイヤのケース部またはブレーカー部から引張り方向がタイヤ周方向に対して平行となるように3号ダンベルを用いてサンプルを打ち抜き、引張り試験を実施して破断時の引張強度を測定し、破断伸び(EB)%を求めた。その結果を表1および表2に示す。
JIS−K6251に準じて、上記で得られた空気入りタイヤのケース部またはブレーカー部から引張り方向がタイヤ周方向に対して平行となるように3号ダンベルを用いてサンプルを打ち抜き、引張り試験を実施して破断時の引張強度を測定し、破断伸び(EB)%を求めた。その結果を表1および表2に示す。
<操縦安定性>
上記得られた空気入りタイヤを車に装着し、テストコースにて40〜100km/hで走行し、操縦安定性(ハンドル応答性、剛性感、グリップ性)および乗り心地性能についてテストドライバーによるフィーリング試験を実施した。その試験の評価は10点満点法で行ない、3人のドライバーの平均値を、従来例2の空気入りタイヤを「100」とする指数により表わした。それぞれ数値が大きいほど操縦安定性および乗り心地性能が良いことを表わす。その結果を表1および表2に示す。
上記得られた空気入りタイヤを車に装着し、テストコースにて40〜100km/hで走行し、操縦安定性(ハンドル応答性、剛性感、グリップ性)および乗り心地性能についてテストドライバーによるフィーリング試験を実施した。その試験の評価は10点満点法で行ない、3人のドライバーの平均値を、従来例2の空気入りタイヤを「100」とする指数により表わした。それぞれ数値が大きいほど操縦安定性および乗り心地性能が良いことを表わす。その結果を表1および表2に示す。
<評価結果>
表1および表2より明らかなように、実施例1〜8において得られたタイヤ用ゴム組成物をケース部に用いた空気入りタイヤは比較例1〜8の空気入りタイヤに比べ、操縦安定性に優れたものであった。紙繊維の配合が本発明の範囲を超える比較例1および5では、引張強度が低下し、耐久性能が悪化する結果となった。また、高剛性化のために紙繊維とともに硬化レジンを配合した比較例2および6では、タイヤ周方向だけでなく、タイヤラジアル方向の剛性も高くなるため、路面の凹凸による振動を吸収しにくくなり、乗り心地性能および操縦安定性を改善できない。紙繊維を本発明の範囲内で配合した場合であっても、シランカップリング剤を配合していない比較例3および7では、補強効果が十分に得られず、操縦安定性の改善が十分でない。紙繊維の代わりに有機繊維であるビニロンを用いた比較例4および8では、シランカップリング剤を配合しているにもかかわらず、繊維表面の補強性が改善されず、操縦安定性の向上が不十分であり、また破断強度が向上しなかった。
表1および表2より明らかなように、実施例1〜8において得られたタイヤ用ゴム組成物をケース部に用いた空気入りタイヤは比較例1〜8の空気入りタイヤに比べ、操縦安定性に優れたものであった。紙繊維の配合が本発明の範囲を超える比較例1および5では、引張強度が低下し、耐久性能が悪化する結果となった。また、高剛性化のために紙繊維とともに硬化レジンを配合した比較例2および6では、タイヤ周方向だけでなく、タイヤラジアル方向の剛性も高くなるため、路面の凹凸による振動を吸収しにくくなり、乗り心地性能および操縦安定性を改善できない。紙繊維を本発明の範囲内で配合した場合であっても、シランカップリング剤を配合していない比較例3および7では、補強効果が十分に得られず、操縦安定性の改善が十分でない。紙繊維の代わりに有機繊維であるビニロンを用いた比較例4および8では、シランカップリング剤を配合しているにもかかわらず、繊維表面の補強性が改善されず、操縦安定性の向上が不十分であり、また破断強度が向上しなかった。
一方、実施例1〜8において得られたタイヤ用ゴム組成物は加工性能に優れたものであった。このように、本発明の特定のタイヤ用ゴム組成物を空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方に適用することにより、得られた空気入りタイヤの操縦安定性が優れることが確認された。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 ビード部、2 サイドウォール部、3 トレッド部、4 ビードエイペックスゴム、5 ケース、6 ブレーカー、7 ビードコア。
Claims (8)
- ゴム成分と、紙繊維と、シランカップリング剤とを少なくとも含み、空気入りタイヤのケース部およびブレーカー部の少なくとも一方を構成するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記紙繊維は、原料紙を細片化した後に叩解して得られる紙繊維であり、平均繊維長さが5〜1000μm、平均繊維長さLと平均繊維径Dとの比L/Dが10〜2000であって、
前記紙繊維は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5〜10質量部配合してなる、タイヤ用ゴム組成物。 - 前記シランカップリング剤は、ゴム成分100質量部に対して0.2〜10質量部配合してなる、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記原料紙は、新聞古紙およびクラフト紙の少なくとも一方である、請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記短繊維は、平均繊維径Dが1〜100μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記タイヤ用ゴム組成物は、温度70℃、周波数10Hz、動歪±1%の測定条件における複素弾性率E*が5〜20MPaである、請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記タイヤ用ゴム組成物は、温度70℃、周波数10Hz、動歪±1%の測定条件における損失正接tanδが0.04〜0.2である、請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- ケース部およびブレーカー部を少なくとも備えた空気入りタイヤであって、
前記ケース部を構成するケース接着用ゴムおよび前記ブレーカー部を構成するブレーカー接着用ゴムの少なくとも一方は、請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物により形成される空気入りタイヤ。 - 前記ケース接着用ゴムおよび前記ブレーカー接着用ゴムの少なくとも一方は、タイヤ周方向の複素弾性率E* aとタイヤラジアル方向の複素弾性率E* bとの比E* a/E* bが1.5以上である請求項7に記載の空気入りタイヤ。
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WO2011096393A1 (ja) * | 2010-02-02 | 2011-08-11 | 国立大学法人京都大学 | ゴム組成物及びその製造方法 |
JP2011231205A (ja) * | 2010-04-27 | 2011-11-17 | Kyoto Univ | ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ |
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-
2007
- 2007-12-11 JP JP2007319746A patent/JP2009143981A/ja not_active Withdrawn
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