JP2009143093A - 発泡樹脂成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】可動側金型と固定側金型との型締め後、発泡樹脂材料をキャビティ内に射出充填した後、可動側金型を後退させて発泡スペースを確保した状態で発泡反応を誘起させ、所要形状に成形される発泡樹脂成形品であって、周縁部の変形並びに艶ムラを防止することで、外観性能並びに相手部品との合わせ精度を高める。
【解決手段】固定側金型60に対して可動側金型50を型締めし、発泡樹脂材料Mを射出充填した後、可動側金型50を後退させ、発泡スペースを確保した状態で発泡反応を行なわせて成形したドアトリムロア(発泡樹脂成形品)30であって、このドアトリムロア30に立体感を付与する縦壁部33が形成されており、この縦壁部33の先端に薄肉部34を設定するとともに、縦壁部33と薄肉部34との間に板厚徐変部35を設けることにより、製品表面の艶ムラを防止する。
【選択図】図3

Description

本発明は、可動側金型と固定側金型とを型締めした後、発泡樹脂材料をキャビティ内に充填し、更に、可動側金型を後退させて、発泡スペースを確保した後、発泡反応を開始させ、所要形状に成形してなる発泡樹脂成形品に係り、特に、製品の周縁の全長、あるいは周縁の一部に設けられる縦壁部先端の変形を可及的に防止でき、かつ縦壁部表面に艶ムラ等が生じることがなく、外観性能並びに隣接部品に対する合わせ精度を高めた発泡樹脂成形品に関する。
図11は、ドアパネル(図示せず)の室内面側に装着される自動車用ドアトリム1を示すもので、このドアトリム1は、軽量でかつ剛性及び耐衝撃性能に優れ、コストも廉価なことから、ポリプロピレン(PP)発泡体等の発泡樹脂成形品が多く使用されている。上記ドアトリム1には、室内側に向けて膨出するアームレスト部1aが一体成形され、このアームレスト部1aの下方には、ドアポケット用開口1bが開設され、更にそのフロント側にスピーカグリル1cがドアトリム1と一体、あるいは別体に設けられている。尚、ドアトリム1の周縁の全長、あるいは周縁の一部にパネル側に向く縦壁部1dが一体化されている。
そして、この種発泡樹脂成形品を用いたドアトリム1を所要形状に成形する従来の成形方法について、図12,図13を基に説明する。図12は成形金型の概略構成、図13は成形金型のプレスチャート図をそれぞれ示す。成形金型2は、可動側金型3と固定側金型4とから大略構成され、可動側金型3は昇降シリンダ3aの駆動により、所定ストローク上下動可能であり、固定側金型4に対して型開き並びに型締めが行なわれる。また、固定側金型4には、図示しない射出機が連設されており、この射出機から供給される発泡樹脂材料Mが両金型3,4間のキャビティC内に射出充填される。ここで、型締め時における初期金型状態においては、可動側金型3の金型位置は図13のプレスチャート図の(a1)位置であり、この状態の時、射出機から発泡樹脂材料Mが可動側金型3と固定側金型4との間に画成されるキャビティC内に射出充填される。
そして、一定時間経過後、可動側金型3が型開き方向に可動して、図13のプレスチャート図の(a2)位置まで型開きし、この位置で発泡反応が行なわれ、最終製品形状のドアトリム1が成形されることになる。すなわち、金型位置が図13中(a1)位置では可動側金型3と固定側金型4との間のクリアランスが小さく設定されているため、発泡樹脂材料Mの発泡反応を抑えた状態でキャビティC内に発泡樹脂材料Mを迅速に射出充填することができる。尚、充填された発泡樹脂材料Mは、可動側金型3や固定側金型4の型面と接する部位は、ソリッド層が即座に形成されるが、内部は未発泡状態のままである。そして、金型位置を図13中(a2)位置まで型開きすれば、すなわち、可動側金型3と固定側金型4との間の型クリアランスを若干広く設定することにより、発泡スペースを確保することができ、ソリッド層内部の発泡樹脂材料の発泡反応を円滑に行なわせることで、ドアトリム1を最終製品形状に成形できる。
このように成形されるドアトリム1の周縁部に形成される縦壁部1dの成形工程について図14(a)〜(d)に沿って説明する。まず、図13のプレスチャート図中(a)地点は、可動側金型3と固定側金型4とが型締めされた状態、すなわち、まだ射出充填前の状態であり、図14(a)に示すように、一般部の型クリアランスが2.0mmであるのに対して縦壁部1dの型クリアランスは2.5mm以上に設定されている。そして、図13のプレスチャート図中(b)地点では、図14(b)に示すように、キャビティC内に発泡樹脂材料Mが射出充填され、特に外表面のソリッド層に固化が始まる状態となる。この時、ソリッド層内部に発泡層を形成するために、図14(c)に示すように、可動側金型3が上昇して、一般部分の型クリアランスが3.6mmまで確保される。尚、図14(c)の時には、外表面に形成されるソリッド層内部の発泡樹脂材料Mは未発泡状態のままである。
その後、図14(d)に示すように、一般部はもとより縦壁部1dにおいても、未発泡状態の発泡樹脂材料Mが発泡して、ソリッド層a内部に発泡層bが形成され、縦壁部1dを有するドアトリム1の成形が完了する。上記発泡樹脂成形品の成形方法の従来例については、特許文献1に詳細に記載されている。
特開2002−120252号公報
このように、従来の発泡樹脂成形品の成形方法においては、特に、ドアトリム1における縦壁部1dの先端部分においては、図15に示すように、可動側金型3の後退時、可動側金型3と固定側金型4との間にクリアランス(図中Lで示す)が生じるため、可動側金型3の型面による拘束が解除される結果、発泡樹脂材料Mの発泡圧により、端末部分に変形が発生し易く、この変形が発生する度合いは、板厚が厚くなるほど顕著に発生する傾向にある。
従って、発泡樹脂成形品周縁部分の外周ラインが蛇行し易く、外観性能が著しく低下するという欠点があるとともに、隣接部品との間に干渉等の問題が発生し、合わせ精度を低下させるという問題点も同時に指摘されている。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、可動側金型と固定側金型の型締め後、キャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填し、その後、可動側金型を後退させ、発泡スペースを確保した状態で発泡反応を誘起させ、所要形状に成形してなるソリッド層内部に発泡層を有する発泡樹脂成形品であって、この発泡樹脂成形品周縁の全長、あるいは周縁の一部に設けた縦壁部先端の変形並びに艶ムラを防止することで、外観見栄えを高めるとともに、隣接部品に対する合わせ精度を向上させた発泡樹脂成形品を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、可動側金型と固定側金型との間に画成されるキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填した後、可動側金型を後退させて、発泡スペースを確保した後、上記発泡樹脂材料を発泡させることにより、所要形状に成形される発泡樹脂成形品であって、外表面にソリッド層、内部に発泡層を有する発泡樹脂成形品において、前記発泡樹脂成形品の周縁の全長、あるいは周縁の一部に縦壁部が設けられているとともに、この縦壁部の先端部分には、ソリッド層のみからなる薄肉部が設定され、縦壁部と薄肉部との間は、その厚みがなだらかに変化する板厚徐変部が設定されていることを特徴とする。
ここで、発泡樹脂成形品を成形するために使用する成形金型は、可動側金型と固定側金型と、固定側金型に連結されている射出機とから構成されている。上記可動側金型は、駆動シリンダの動作により、型開き位置から型締め位置(下死点)まで上下動作を行なう。更に、発泡樹脂材料の発泡スペースを確保するために、可動側金型は微小ストローク後退し、その後型開き位置まで動作する。すなわち、可動側金型は、型開き位置、型締め位置、型締め位置からやや型クリアランスを確保した発泡位置の3つのポジションをとることになる。
一方、固定側金型には、射出機から供給される発泡樹脂材料を可動側金型と固定側金型との間に画成されるキャビティ内に射出充填するための樹脂通路として、ホットランナー、バルブゲートが設けられており、成形後、発泡樹脂成形品を突き出すためのエジェクタピン等のエジェクタ機構が設けられている。
そして、可動側金型と固定側金型との間で画成されるキャビティ形状において、発泡樹脂成形品の周縁の全長、あるいは周縁の一部に縦壁部が形成されるように、縦壁部用キャビティが設定され、特に、この縦壁部用キャビティの先端部分の厚みが半減されるように、段部が固定側金型に設定されており、縦壁部用キャビティの厚みが先端部分に向けてなだらかに変化するように調整されている。尚、この縦壁部は、製品に立体感並びに剛性を付与するために設けられている。縦壁部並びに薄肉部の寸法関係としては、薄肉部の厚みは1.0〜2.0mm、薄肉部の高さは0.5〜2.0mm、また、板厚が徐変する徐変部の長さとしては1.0mm以上が好ましい。
次いで、発泡樹脂成形品の素材は、熱可塑性樹脂中に発泡剤が混入されたものを使用する。例えば、使用する熱可塑性樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択される。一方、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。
従って、可動側金型を下死点まで駆動して、可動側金型と固定側金型とを型締めした状態で両者間に画成されるキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填すれば、時間の経過とともに、型面に当接する部位は、冷却固化することで、ソリッド層が外表面から内部に向けて形成される。そして、一定時間経過後、可動側金型が型開方向に動作して、可動側金型と固定側金型との型クリアランスが確保された状態で可動側金型を停止させれば、発泡樹脂材料の発泡反応により、ソリッド層内に発泡層が形成され、所定厚みを有する発泡樹脂成形品が所要形状に成形される。
以上の構成から明らかなように、可動側金型と固定側金型との型締め動作により画成されるキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填した後、可動側金型を型開方向に後退動作させて、発泡スペースを確保した状態で発泡樹脂材料の発泡反応を行なわせ、ソリッド層内に発泡層を備えた発泡樹脂成形品を所要形状に成形できる。その際、製品の周縁の全長、あるいは周縁の一部に設けた縦壁部の先端には、ソリッド層のみからなる薄肉部が形成されているため、可動側金型の型開動作により、可動側金型の型面による拘束が解除されていても、薄肉部は発泡内圧が加わらないため、変形することがない。更に、薄肉部から縦壁部にかけて厚みがなだらかに変化しているため、外観上、艶ムラ等が生じることもない。
次いで、本発明に係る発泡樹脂成形品の好ましい実施の形態においては、前記縦壁部から薄肉部にかけての板厚徐変部における内面は、凹状のR面加工がなされ、ソリッド層の割合が多く設定されていることを特徴とする。そして、この実施の形態においては、縦壁部から先端にかけて板厚を徐変させる際、板厚徐変部の内面に凹状のR面が形成されているため、ソリッド層の割合が多くなることから、縦壁部における剛性をより強固に維持することができる。
以上説明した通り、本発明に係る発泡樹脂成形品は、成形金型のキャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填した後、可動側金型を後退動作させて、所定厚みの発泡スペースを確保して、発泡反応を誘起させ、ソリッド層と発泡層とからなる発泡樹脂成形品を所要形状に成形するというものであり、その際、製品の周縁の全長、あるいは周縁の一部に縦壁部が設けられ、この縦壁部の先端部分にソリッド層のみからなる薄肉部が形成されているため、この薄肉部には、発泡内圧が作用せず、従来生じた外周ラインの蛇行等の不良を未然に防止できる。
更に、本発明に係る発泡樹脂成形品は、縦壁部から薄肉部にかけて板厚が変化するけれども、なだらかに板厚を変化させているため、表面に艶ムラ等が生じることがなく、美麗な外観を維持でき、外観性能並びに隣接部品に対する合わせ精度を高めることができるという効果を有する。
以下、本発明に係る発泡樹脂成形品の一実施例を添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
図1乃至図10は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明に係る発泡樹脂成形品をドアトリムロアに適用した上下二分割構造のドアトリムを示す正面図、図2は同ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同ドアトリムにおけるドアトリムロアの縦壁部の構成を示す断面図、図4は同ドアトリムにおけるドアトリムロアの成形に使用する成形金型の構成を示す概要図、図5は図4に示す成形金型における可動側金型のプレスチャート図、図6乃至図8は同ドアトリムロアの成形工程を示す各説明図、図9,図10は本発明に係る発泡樹脂成形品の変形例を示す各断面図である。
図1,図2において、自動車用ドアトリム10は、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30の上下二分割体から構成されている。上記ドアトリムアッパー20には、インサイドハンドルエスカッション11、また、乗員が肘を載せるアームレスト部にはプルハンドル12やパワーウインドウスイッチフィニッシャー13が取り付けられている。一方、ドアトリムロア30には、備品を収容できるドアポケット用開口14が開設されているとともに、そのフロント側にスピーカグリル15がドアトリムロア30と一体、または別体に設けられている。
更に、上記ドアトリムアッパー20及びドアトリムロア30の構成については、図2に示すように、ドアトリムアッパー20は、樹脂芯材21の表面に表皮22を貼付してなる積層構造体から構成されており、樹脂芯材21の素材となる合成樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択されて良く、また、所望により合成樹脂にタルク、クレイ、木粉等のフィラーを混入しても良い。一方、表皮22は、サーモプラスチックオレフィン(TPO)に代表される熱可塑性エラストマー樹脂等の合成樹脂シート、あるいはTPOシート裏面にポリエチレンフォーム等のクッション層を裏打ちした積層シート材料等の合成樹脂シートが使用できる。
また、ドアトリムアッパー20を所望形状に成形するには、射出成形工法、モールドプレス成形工法が量産性を考慮した場合好適である。すなわち、成形金型内に表皮22をセットし、型締め後、あるいは型締め直前に溶融樹脂に射出充填することで、樹脂芯材21を所望の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材21の表面側に表皮22を一体貼着することができる。一方、ドアトリムロア30は、本発明では発泡樹脂成形品が使用されており、合成樹脂中に発泡剤が混入されている。使用できる合成樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択される。そして、合成樹脂に対して、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤を混入したものを使用している。
そして、図1,図2に示すドアトリム10は、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との外観上のアクセント効果により、良好な製品外観を得られるとともに、成形金型のコンパクト化を図ることができる。また、ドアトリムロア30を発泡樹脂成形品から構成することで、軽量化にも大きく貢献している。
ところで、図3に示すように、このドアトリムロア30は、製品表面となる一般部32に対して一般部32の両側及び下縁にパネルP側に向けて折曲された縦壁部33が一体に成形され、更に、その先端部分に薄肉部34が一体形成されている。尚、この縦壁部33は、ドアトリムロア30に立体感を付与するために設けられている。更に、ドアトリムロア30の内部構成は、ソリッド層30a内部にセル構造の発泡層30bを含む二層構造になっており、この発泡層30bは、一般部32から縦壁部33にかけて延在しているが、薄肉部34については、ソリッド層30aのみで形成されている。更に、寸法関係については、この実施例において、一般部32の厚みt1は3.0mm、縦壁部33の厚みt2は2.0mm、薄肉部34の厚みAは1.0mm、また、薄肉部34の高さBは1.0mmにそれぞれ設定されているとともに、特に、縦壁部33から薄肉部34にかけて厚みがなだらかに変化する板厚徐変部35(図3中長さ寸法をαで示す)として設定されている。尚、薄肉部34の厚みAは1.0〜2.0mm、薄肉部34の高さBは0.5〜2.0mmのそれぞれの範囲内にあれば良い。
従って、本発明に係るドアトリムロア30は、縦壁部33の先端部分にソリッド層30aのみからなる薄肉部34を設定したため、後述するドアトリムロア30の成形時に発泡内圧による外周部の変形を未然に防止でき、外周ラインが蛇行することがないとともに、縦壁部33から薄肉部34にかけて板厚徐変部35により板厚がなだらかに変化しているため、外観に艶ムラ等が生じることがなく、外観見栄えを良好に維持することができ、かつ隣接部品に対する合わせ精度をも高めることができる。
次いで、上記ドアトリムロア30を成形するために使用する成形金型40の概略構成について、図4を基に説明する。この成形金型40は、可動側金型50と、固定側金型60と、射出機70とから大略構成されている。更に詳しくは、上記可動側金型50は、図示しない駆動シリンダの動作により、型開き位置、型締め位置に加えて、発泡位置の3つのポジションをとるように駆動される。一方、固定側金型60は、射出機70から供給される溶融樹脂の樹脂通路となるホットランナー61、バルブゲート62を通じて型面に溶融樹脂が供給されるとともに、成形後の発泡樹脂成形品を突き出すためのエジェクタピン63が内装されている。
更に、可動側金型50と固定側金型60との間で画成されるキャビティC形状に沿って、ドアトリムロア30が所要形状に成形されるが、ドアトリムロア30の周縁に縦壁部33を延設するために、成形金型40は、キャビティCの外周部に縦壁部用キャビティC1が設定されている。また、この縦壁部用キャビティC1の先端部分には、ドアトリムロア30における縦壁部33の先端部分に設けた薄肉部34を形成するための段部64が固定側金型60に設けられているとともに、縦壁部33から薄肉部34にかけて設定されている板厚徐変部35を形成する傾斜面65が形成されている。
次いで、図5は、成形金型40における可動側金型50のプレスチャート図を示し、図6乃至図8は成形金型40を使用したドアトリムロア30の成形工程を経時的に示している。すなわち、可動側金型50は、型開き位置(図5のプレスチャート図中(a)に示すポイント)から可動側金型50が駆動シリンダの動作により可動し、下死点(図5のプレスチャート図中(b)に示すポイント)まで下降し、固定側金型60に対して一定のクリアランスを保つ地点まで可動側金型50が型締めされる。
更に、固定側金型60に対する可動側金型50の型締め後、図6に示すように、射出機70からホットランナー61、バルブゲート62を通じてキャビティC内に発泡樹脂材料Mが射出充填される。尚、発泡樹脂材料Mは、縦壁部用キャビティC1にも射出充填される。この時、図示はしないが、外部からキャビティC内にエアを強制導入し、発泡樹脂材料Mが発泡反応を行なわないようにキャビティC内に樹脂を充填するカウンタープレッシャー工法を採用することもできる。
そして、発泡樹脂材料Mの射出充填工程が完了すれば、図5のプレスチャート図中(c)〜(d)で示すように、可動側金型50が型開き方向に後退することで、図7中符号Sで示す発泡スペースが確保される。この可動側金型50の後退動作では、図7に示すように、一般部のクリアランスが3.6mmになるように、後退ストロークの寸法は1.6mmに設定されている。尚、固定側金型60に設けられる段部64の寸法は、可動側金型50の後退ストロークの寸法を基準として設定されている。更に、図5のプレスチャート図中(d)〜(e)に示す発泡工程において、ソリッド層30a内の発泡樹脂材料Mが発泡して、発泡層30bが形成され、図8に示すように、所定厚みのドアトリムロア30が成形される。
本発明においては、図7,図8に示す可動側金型50の後退時、ドアトリムロア30における縦壁部33の先端部分に薄肉部34が形成されるように固定側金型60に段部64が設定されているとともに、縦壁部33と薄肉部34との厚み変化がなだらかになるように板厚徐変部35が設定されているため、固定側金型60は、傾斜面65として形状設定がなされており、段部64の幅寸法により薄肉部34としてはソリッド層30aのみで構成されることになる。このように、ドアトリムロア30における縦壁部33の先端部分は、金型形状により部分的に薄肉化しており、内部樹脂が発泡反応を誘起することなく、ソリッド層30aとして固化しているため、発泡内圧が外方に向けて加わることがなく、縦壁部33の外周ラインの見栄えが良く、隣接部品に対する合わせ精度も向上するとともに、縦壁部33と薄肉部34との板厚変化がなだらかに変化するため、艶ムラが縦壁部33の外表面に生じることがなく、このことも外観性能を良好に維持できる要因となっている。
次いで、図9,図10は、本発明に係る発泡樹脂成形品を適用したドアトリムロア30の変形例を示すもので、図9の構造は、縦壁部33と薄肉部34との間の厚み変化を現出させる板厚徐変部35の内面側が凹状となるR面35aに加工されている。この場合には、薄肉部34がソリッド層30aのみで構成されるため、変形を防止できるとともに、板厚徐変部35により板厚がなだらかに変化するため、艶ムラも生じることがないという上述実施例と同様の効果が期待できる。加えて、特に板厚徐変部35においては、その内面において凹部状R面加工がなされているため、板厚徐変部35においては、発泡層30bに比べソリッド層30aの割合が比較的多くなり、縦壁部33の剛性をより強化するこができるという利点がある。また、図10に示すように、薄肉部34の厚みAを1.0mm以上とし、縦壁部33と薄肉部34との間の板厚変化を少なくすることで縦壁部33、薄肉部34を含めた剛性を更に強化することができる。
以上説明した実施例は、上下二分割型のドアトリム10におけるドアトリムロア30に適用したが、用途はこれに限定されることなく、発泡樹脂成形品全般に適用できる。更に、成形金型40の構造として、バルブゲート62を使用する以外に、例えば、サイドゲートタイプの金型を使用することもでき、また、可動側金型50側にコア部、固定側金型60側にキャビティ部を設定することもできる。尚、発泡樹脂材料Mの射出充填時、キャビティ内に圧空エアを供給するカウンタープレッシャー工法を採用することも可能である。
本発明に係る発泡樹脂成形品の一実施例であるドアトリムロアを使用した上下二分割構造のドアトリムを示す正面図である。 図1中II−II線断面図である。 図1中III −III 線断面図である。 図1に示すドアトリムにおけるドアトリムロアを成形するための成形金型の概略構成を示す説明図である。 図4に示す成形金型における可動側金型のプレスチャート図である。 図4に示す成形金型を使用してドアトリムロアを成形するドアトリムロアの成形方法における発泡樹脂材料の射出充填工程を示す説明図である。 図4に示す成形金型を使用してドアトリムロアを成形するドアトリムロアの成形方法における可動側金型の後退動作を示す説明図である。 図4に示す成形金型を使用してドアトリムロアを成形するドアトリムロアの成形方法における発泡成形工程を示す説明図である。 本発明に係る発泡樹脂成形品を適用したドアトリムロアの変形例を示す断面図である。 本発明に係る発泡樹脂成形品を適用したドアトリムロアの変形例を示す断面図である。 従来の自動車用ドアトリムを示す正面図である。 従来の自動車用ドアトリムの成形方法に使用する成形金型の概略構成を示す説明図である。 従来のドアトリムの成形方法における可動側金型のプレスチャート図である。 従来のドアトリムの成形方法における縦壁部の成形工程を示す説明図である。 従来のドアトリムの成形方法における不具合を示す説明図である。
符号の説明
10 自動車用ドアトリム
20 ドアトリムアッパー
30 ドアトリムロア
30a ソリッド層
30b 発泡層
32 一般部
33 縦壁部
34 薄肉部
35 板厚徐変部
40 成形金型
50 可動側金型
60 固定側金型
61 ホットランナー
62 バルブゲート
63 エジェクタピン
64 段部
65 傾斜面
70 射出機
C キャビティ
C1 縦壁部用キャビティ
M 発泡樹脂材料

Claims (2)

  1. 可動側金型(50)と固定側金型(60)との間に画成されるキャビティ(C)内に発泡樹脂材料(M)を射出充填した後、可動側金型(50)を後退させて、発泡スペースを確保した後、上記発泡樹脂材料(M)を発泡させることにより、所要形状に成形される発泡樹脂成形品(30)であって、外表面にソリッド層(30a)、内部に発泡層(30b)を有する発泡樹脂成形品(30)において、
    前記発泡樹脂成形品(30)の周縁の全長、あるいは周縁の一部に縦壁部(33)が設けられているとともに、この縦壁部(33)の先端部分には、ソリッド層(30a)のみからなる薄肉部(34)が設定され、縦壁部(33)と薄肉部(34)との間は、その厚みがなだらかに変化する板厚徐変部(35)が設定されていることを特徴とする発泡樹脂成形品。
  2. 前記縦壁部(33)から薄肉部(34)にかけての板厚徐変部(35)における内面は、凹状のR面(35a)加工がなされ、ソリッド層(30a)の割合が多く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形品。
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