JP2009142924A - 研磨装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】研磨レシピを変更することなく研磨非対称性を回避可能な研磨装置を提供する。
【解決手段】研磨装置に加工条件が入力されたときに、基板の回転速度、研磨パッドの回転速度、研磨パッドの相対揺動範囲、相対揺動速度、揺動機構の制御条件として予め設定された既定の加減速パターンに基づいて、被研磨面上における研磨面の各部の走行軌跡を積算して走行軌跡の分布密度を算出する。算出された分布密度の円周方向のばらつきが予め設定された所定の基準値を超えると判断されたときに、加減速パターンの揺動遅延時間を変化させた場合について走行軌跡の分布密度を算出し、既定の加減速パターンを円周方向のばらつきが基準値以下となる加減速パターンに変更するように構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、基板を回転させる基板回転機構、基板よりも小径の研磨パッドを回転させるパッド回転機構、基板と研磨パッドとを当接させた状態で基板に対して研磨パッドを相対揺動させる揺動機構、及び基板の回転、研磨パッドの回転及び基板に対する研磨パッドの相対揺動を制御して基板の研磨加工を制御する制御装置とを備えて構成される研磨装置に関するものである。
基板表面を研磨する研磨装置としてCMP装置が例示される。CMP装置は、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により基板表面を超精密に研磨加工する技術として、シリコン基板やガラス基板、半導体ウェーハなどの基板の研磨加工に広く利用されている。このような研磨装置では、チャックに保持された基板と研磨ヘッドに装着された研磨パッドとを相対回転させて押接し、基盤と研磨パッドとの当接部に研磨内容に応じたスラリー(Slurry)を供給して化学的・機械的な研磨作用を生じさせ、基板表面を平坦に研磨加工する。
このような研磨装置は、主として基板と研磨パッドの大小関係から、研磨パッドの直径が基板の直径よりも大きなタイプと、研磨パッドの直径が基板の直径よりも小さいタイプの2種類に大別される。研磨パッドの直径が基板の直径よりも小さいタイプの研磨装置では、基板全面を均一に研磨加工するため、一般的に、基板に対して研磨パッドを相対揺動させる揺動機構が設けられている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2006−319249号公報
上記のように、研磨パッドの直径が基板の直径よりも小さく揺動機構により基盤と研磨パッドとを相対移動させる研磨装置では、研磨加工中において、研磨パッドと当接して研磨作用を受ける領域と、研磨パッドが離隔して研磨作用を受けない領域とが、(基板の回転角度位置と基板に対する研磨パッドの位置に応じて)瞬時・瞬時に変化する。そのため、研磨加工を行う際に設定する基板の回転速度や研磨パッドの回転速度、基板に対する研磨パッドの相対揺動速度などの加工条件の組み合わせ(研磨レシピと称される)によって、基板表面の研磨レートが領域ごとに異なって研磨量分布に非対称性が生じ、所望の平面度が得られない場合が発生する。
このような場合に、従来では、研磨レシピのうち、どの条件をどの程度変更すれば良いかを判断することが困難であった。このため、研磨量分布の非対称性が生じた場合に、研磨レシピの各条件値を少しずつ変化させながら、モニター・ウェーハ(Monitor Wafer)を用いたテスト加工を繰り返し行う必要があり、時間的・コスト的に生産性を阻害する要因になるという課題があった。特に、類似する研磨装置を用いて過去に良好な研磨結果を得ていた場合や、基板直径は異なるが加工内容が近似しているような場合には、時間的・コスト的に負荷の大きいテスト加工や、研磨レシピの変更に伴う新たな問題発生を避けるため、できるかぎり実績のある研磨レシピを変更することなく研磨加工を行いたいという要望が強かった。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、研磨レシピに関する煩雑な作業を解消し生産性を向上できるような研磨装置を提供することを目的とする。
上記目的達成のため、請求項1に係る発明の研磨装置は、基板を保持して回転させる基板回転機構と、基板よりも小径に形成され基板と対向姿勢で配設される研磨パッドを回転させるパッド回転機構と、相対回転される基板の被研磨面と研磨パッドの研磨面とを当接させた状態で基板に対して研磨パッドを相対揺動させる揺動機構(例えば、実施形態におけるアーム揺動機構35)と、基板の回転、研磨パッドの回転及び基板に対する研磨パッドの相対揺動を制御して基板の研磨加工を制御する制御装置とを備えて構成される。そのうえで、この研磨装置における制御装置は、研磨加工の加工条件が入力されたときに、入力された加工条件における基板の回転速度、研磨パッドの回転速度、基板に対する研磨パッドの相対揺動範囲及び相対揺動速度、並びに揺動機構の制御条件として予め設定された既定の加減速パターンに基づいて、被研磨面上における研磨面の各部の走行軌跡を積算して被研磨面上における走行軌跡の分布密度を算出し、算出された分布密度の円周方向のばらつきが予め設定された所定の基準値を超えると判断されたときに、既定の加減速パターンを変化させた場合について被研磨面上における走行軌跡の分布密度を算出し、既定の加減速パターンを、分布密度の円周方向のばらつきが基準値以下となる加減速パターンに変更するように構成される。
請求項2に係る発明の研磨装置は、前記制御装置が、前記既定の加減速パターンのうち、基板に対する研磨パッドの相対移動方向が逆転する際に相対揺動速度がゼロとなる揺動停止時間を変化させるように構成される。
請求項3に係る発明の研磨装置は、前記制御装置が、前記既定の加減速パターンのうち、基板に対する研磨パッドの相対移動方向が逆転し相対揺動速度がゼロの状態から加工条件において設定された相対揺動速度に到達するまでの加速時間を変化させるように構成される。請求項4に係る発明の研磨装置は、前記制御装置が、前記既定の加減速パターンのうち、基板に対する研磨パッドの相対移動方向を逆転させるため加工条件において設定された相対揺動速度の状態から相対揺動速度がゼロになるまでの減速時間を変化させるように構成される。
本発明に係る研磨装置によれば、研磨レシピに基づいて、研磨面の各部の走行軌跡が積算されて被研磨面上における走行軌跡の分布密度が算出され、この分布密度の円周方向のばらつきが所定の基準値を超えると判断された場合に、円周方向のばらつきが基準値以下となる加減速パターンに自動変更され、研磨レシピを変更することなく非対称性の問題が生じないように自律制御される。このため、高額なモニター・ウェーハを多数消費したテスト加工を繰り返して非対称性が生じない加工条件を探し出す必要がなく、時間及びコストを低減できるとともに、所望の研磨レシピで研磨加工を実行することができる。
従って、本発明によれば、研磨レシピに関する煩雑な作業を解消し生産性を向上可能な研磨装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。本発明を適用した研磨装置1の概略構成を図2に示す。研磨装置1は、シリコンウェーハ等の基板Wを保持して回転させる基板回転機構10、研磨パッド23が装着された研磨ヘッド21を回転させるパッド回転機構20、基板Wに対して研磨パッド23を昇降及び相対揺動させるヘッド移動機構30、詳細図示を省略するが、研磨パッド23の中心部にスラリーを供給するスラリー供給機構40、基板Wや研磨パッド23の回転、基板Wに対する研磨パッド23の昇降及び揺動、研磨加工部へのスラリーの供給など、研磨装置の作動を制御して基板Wの研磨加工を制御する制御装置50など備えて構成される。
基板回転機構10は、円盤状のチャック11と、このチャック11の下部から鉛直下方に延びるスピンドル14、スピンドル14に回転駆動力を伝達してチャック11を水平面内で回転させるチャック駆動モータ15などから構成される。チャック11は、セラミック等の高剛性材料を用いて平面度の高い円盤状に形成されたチャックプレート12と、このチャックプレート12の上面に貼られた吸着パッド13を有して構成される。チャックプレート11の内部には基板Wの下面を真空吸着する真空チャック構造が設けられて基板Wを着脱可能に構成されるとともに、チャック上部が加工テーブルTから露出して配設されており、チャック11に吸着保持された基板Wの研磨対象面(被研磨面)が上向きの水平姿勢で配設される。
チャック駆動モータ15の作動は制御装置50により制御され、チャック11に吸着保持された基板Wの回転・停止、回転方向、回転速度などが、加工プログラムに応じて制御装置50により制御される。基板回転機構10と隣接して、ヘッド移動機構30が設けられており、このヘッド駆動機構30の研磨アーム32の先端にパッド回転機構20が設けられる。
パッド回転機構20は、円盤状の研磨ヘッド21と、研磨ヘッド21の上部から鉛直上方に延びるスピンドル24、スピンドル24に回転駆動力を伝達して研磨ヘッド21を水平面内で回転させるパッド駆動モータ25などから構成される。
研磨ヘッド21は、チャック11と同様の高剛性材料を用いて平面度の高い円盤状に形成されたポリッシングプレート22と、このポリッシングプレート22の下面に貼られた研磨パッド23を有して構成される。研磨パッド23は、外径が研磨対象である基板Wの直径よりも幾分小さい(80〜95%程度の)円環状に形成されており、例えば、独立発泡構造を有する硬質ポリウレタンのシートを用いて構成され、ポリッシングプレート22の下面に貼り付けられて研磨面が下向きの水平姿勢で配設される。
研磨ヘッド21の中心部に、スラリー供給機構40により供給されるスラリーを研磨パッド23の中央部に供給するためのスラリー供給構造が、ポリッシングプレート22の中心を上下に貫通して設けられている。また、研磨ヘッド21の内部に形成された加圧室にエアの供給を受けてポリッシングプレート22を下向きに加圧する、いわゆるエアバッグ式のパッド加圧機構が設けられており、研磨パッド23を基板Wに当接させた状態で加圧室の圧力を制御することにより基盤Wと研磨パッド23との当接圧力、すなわち研磨圧力を制御可能になっている。
パッド駆動モータ25の作動及び加圧室の圧力は制御装置50によって制御され、研磨ヘッド21に装着された研磨パッド23の回転・停止、回転方向、回転速度、研磨圧力などが、加工プログラムに基づいて制御装置50により制御される。
ヘッド移動機構30は、加工テーブルTから上方に突出する基部31と、この基部31から水平に延びる研磨アーム32、基部31を通って上下に延びる揺動軸を中心として研磨アーム32を水平揺動させるアーム揺動機構35、および研磨アーム全体を垂直昇降させるアーム昇降機構(不図示)などからなり、上述したパッド回転機構20が研磨アーム32の先端部に設けられている。ヘッド移動機構30は、アーム揺動機構35により研磨アーム32を水平揺動させたときの研磨ヘッド21の揺動軌跡上に基板回転機構10が位置するように構成されており、研磨ヘッド21をチャック11と対向させた状態で研磨アーム全体を昇降させ、研磨パッド23の研磨面を基板Wの被研磨面に当接させた状態で基板Wに対して研磨パッド23を水平揺動可能に構成される。
アーム揺動機構35及びアーム昇降機構の作動は、制御装置50によって制御され、チャック11に保持された基板Wに対する研磨パッド23の揺動開始点(研磨アーム32の揺動開始角度位置)、揺動ストローク(研磨アーム32の揺動角度範囲)、揺動速度などが、加工プログラムに基づいて制御装置50により制御される。
制御装置50は、入力された加工プログラムから研磨レシピ(研磨加工の加工条件)を読み出す。加工プログラムには、研磨レシピとして研磨パッド23の回転速度、基板Wの回転速度、基板Wに対する研磨パッド23の揺動開始点及び揺動ストローク、研磨パッド23の揺動速度、研磨圧力、スラリーの種別、スラリーの供給流量などの条件値が含まれている。
制御装置50は、研磨レシピから、研磨パッドの走行軌跡を規定するパラメータである研磨パッド23の回転速度、基板Wの回転速度、基板Wに対する研磨パッド23の揺動開始点及び揺動ストローク、研磨パッド23の揺動速度を取得し、これらの条件値に基づいて基板Wの被研磨面上における研磨パッド23の各部の走行軌跡を算出する。具体的に、加工プログラムにおいて設定された研磨パッド23の回転速度Vp=110[rpm]、基板Wの回転速度Vw=−60[rpm]、基板Wに対する研磨パッド23の揺動開始点を基板中心から30[mm]、揺動ストローク90[mm]、揺動速度Vs=60[mm/sec]について、研磨パッドの走行軌跡を算出する。ここで、基板Wに対して研磨パッド23の往復揺動は、平面視において時計廻りの揺動〜停止〜半時計廻りの揺動の繰り返しであり、研磨アーム32の揺動制御は、原則的に制御装置50内のメモリーに予め設定記憶された既定の加減速パターンPV(図4を参照)に基づいて実行される。そこで、この最初の走行軌跡の算出に際しては、研磨アーム32を既定の加減速パターンで往復揺動させた場合について算出される。なお、研磨アーム32の腕の長さは一定であり、研磨アーム32の揺動の加減速パターンと基板Wに対する研磨パッド23の相対揺動の加減速パターンとは同義である。
図3は、研磨パッド23の任意点Pについて、上記条件での走行軌跡Lの時間的な変化を示したものであり、(a)(b)(c)の各図は、(a)研磨スタート時:t=0[sec]、(b)研磨スタート後3秒経過時:t=3[sec]、(c)研磨スタート後9秒経過時:t=9[sec]の状態を示している。
この図から理解されるように、任意点Pの走行軌跡Lはきわめて複雑であり、基板Wの被研磨面上では、走行軌跡Lの密度が高い領域と低い領域とが見られ、基盤Wの被研磨面から外れた外周領域を走行する軌跡も散見される。基板Wの被研磨面に形成された走行軌跡Lは、研磨パッド23の任意点Pによって研磨される研磨軌跡であることから、走行軌跡Lの密度が高い領域ほど研磨レート(Removal Rate)が高く、走行軌跡Lの密度が低い領域ほど研磨レートが低くなることを表す。
制御装置50は、研磨パッド23の研磨面の各部について走行軌跡を積算し、基板Wの被研磨面上に形成される走行軌跡の密度分布を算出する。例えば、上記任意点Pを、周方向に5度ピッチ、径方向に5mmピッチの多数の走行点P1〜Pnとして設定し、これらP1〜Pnの各点の走行軌跡L1〜Lnを研磨加工時間分について積算して、被研磨面上における研磨面の走行軌跡の密度を算出する。こうして得た走行軌跡の密度分布は、実際に研磨加工を行った基板を形状測定して得た研磨レートの面分布の測定データと高い相関関係を有することが発明者による実験により確認されており、算出された走行軌跡の密度に所定の係数kを乗じたものが、研磨レートの面分布をシミュレートしたものとなる。
そして、研磨レートの面分布から、同一半径の円周上に位置する角度0〜360度の角度の研磨レートの分布として展開したものがポーラー研磨レート(Polar Removal Rate)である。横軸に角度をとったポーラー研磨レートのグラフが平坦でなく、研磨量分布の不均一性を表すポーラー・レンジ(Polar Range=(Max-Min)/Average)が大きいことは、基板の中心軸に対して研磨レートの分布が軸対称でないこと、すなわち非対称性の問題が生じることを意味する。
本発明は、以上のような走行軌跡の密度分布と研磨レートの面分布との間の高い相関関係、及びポーラー・レンジと被研磨面の非対称性との関係に基づいて成されており、制御装置50は、複数の半径位置について走行軌跡の分布密度を算出し、算出された分布密度の円周方向のばらつきが予め設定された所定の基準値を超えるか否か、換言すれば、シミュレートしたポーラー・レンジの最大値(最大ポーラー・レンジ(Max Polar Range))が所定の基準値を超えるか否かを判断する。走行軌跡の分布密度が予め設定された所定の基準値を超えると判断されたときには、制御装置50内のメモリーに設定された研磨アーム32の既定の加減速パターンを変化させた場合について走行軌跡の密度分布を算出する。そして、既定の加減速パターンを、走行軌跡の密度の円周方向のばらつきが基準値以下となる加減速パターンに変更する。
図4に、研磨アームの加減速パターンPVを示す。図4において横軸が時間t、縦軸が研磨アーム32の揺動速度(基板Wに対する研磨パッド23の揺動速度)の絶対値|V|である。研磨アーム32は、平面視において時計廻りの揺動と半時計廻りの揺動とを交互に繰り返すことから、加減速パターンは、加速〜設定揺動速度Vs(VOscillation)〜減速を繰り返す。揺動方向が逆方向に反転する減速領域と加速領域との間には、アーム揺動機構35に作用するモーメントが無限大になることを防止するため、揺動速度がゼロとなる停止領域が設けられる。
ここで、加速・減速・停止の各領域にあっても、基板Wと研磨パッド23とはスラリー供給下の押接状態で相対回転しており被研磨面上に走行軌跡が形成される。従って、この加速・減速・停止領域のパターンを変化させれば、研磨レシピにおいて指定された揺動速度Vsを変更することなく、走行軌跡の密度分布を変化させることができ、ポーラー・レンジが所定の基準値以下となる加減速パターンを抽出することができる。
具体的には、揺動速度がゼロの状態から設定速度Vsに到達するまでの加速時間をtup、設定速度Vsで等速揺動する等速領域の時間をtv、揺動速度が設定速度Vsからゼロになるまでの減速時間をtdown、揺動方向を反転する際に一時停止する揺動停止時間をtstopとしたときに、加速・減速・停止領域の各時間tup,tdown,tstopのうち少なくともいずれかを変化させて、等速領域以外の設定速度Vsに満たない領域の時間(揺動遅れ時間:Oscillation offset Timeという)toffsetを変化させる。ここに、toffset=tup+tdown+tstopである。
いま、加速・減速領域における加速度の絶対値を同一値aとした場合には、
up=tdown=Vs/a
offset=tup+tdown+tstop=(2Vs/a)+tstop
この式から、加速・減速領域の加速度の大きさaを変化させて加速時間tup及び減速時間tdownを変化させ、または揺動折り返しの揺動停止時間tstopを変化させることにより、走行軌跡の密度分布を変化させてポーラー・レンジの値を変化させることができる。
上式から加速度aを求めると、
a=2Vs/(toffset−tstop
揺動停止時間tstopを求めると、
stop=(2Vs/a)+toffset
制御装置50は、研磨装置の制御プログラムにパラメータとして設定されている加速度a(加速時間tup,減速時間tdown)を所定の加速度範囲内で変化させ、若しくは同様にパラメータ設定されている揺動停止時間tstopを変化させ、またはこれら両方を変化させることによって揺動遅れ時間toffsetを変化させた加減速パターンについて、走行軌跡の密度分布を算出し、これに基づいてシミュレートした研磨レートの面分布から、各条件ごとの最大ポーラー・レンジを算出する。
図1は、上記のようにして算出した最大ポーラー・レンジの変化を示すグラフである。図1において、横軸が揺動遅れ時間(Oscillation offset Time)toffset、縦軸が最大ポーラー・レンジ(Max Polar Range)であり、揺動遅れ時間toffsetを0〜0.1[sec]の間で変化させた場合の最大ポーラー・レンジの変化を表している。
この図1から、明らかなように、揺動遅れ時間toffsetを変化させることにより最大ポーラー・レンジを変化させることができる。例えば、既定の加減速パターンにおいて揺動遅れ時間toffsetが0.02[sec]であり、このとき算出される最大ポーラー・レンジが17%であった場合に、揺動遅れ時間toffsetを0.04[sec]以上に変更すれば、最大ポーラー・レンジを7%以下に抑制することができ、揺動遅れ時間toffsetを0.05[sec]に変更すれば最大ポーラー・レンジを2%以下とすることができる。
制御装置50は、上記のようなシミュレーション結果に基づき、走行軌跡の密度の円周方向のばらつきが基準値以下となる加減速パターンに変更する。例えば、ポーラー・レンジに換算したときの値が7%以下となる加減速パターンとし、その中の最小値である揺動遅れ時間toffset=0.05[sec]の加減速パターンに変更する。この場合において、変更する具体的なパラメータは、加速度の絶対値a(または加速時間tup,減速時間tdown)及び揺動停止時間tstopの何れであっても良い。
制御装置50は、研磨加工の実行操作に応じて研磨加工をスタートさせ、基板回転機構10、パッド回転機構20、ヘッド移動機構30、アーム揺動機構35、及びスラリー供給装置40等の作動を制御し、研磨レシピに基づいた加工条件で研磨加工を実行する。変更された加減速パターンのパラメータは制御装置内のRAMに記憶され、同一の加工プログラムを実行する際に、既定の加減速パターンのパラメータと置換して研磨加工が実行される。
なお、研磨レシピにおいて設定された加工条件のままで、走行軌跡の密度分布に偏りが無くポーラー・レンジが比較的小さい場合もある。図5は、基板Wの回転速度Vw=−65[rpm]、基板Wに対する研磨パッド23の揺動速度Vs=62[mm/sec]、他の加工条件を同一とした場合において、揺動遅れ時間toffsetを変化させた場合の最大ポーラー・レンジの変化を三角印でプロットし、丸印でプロットする図1のデータと重ねて表示したグラフである。
この図5から理解されるように、研磨レシピにおいて設定された加工条件のままで最大ポーラー・レンジが比較的小さい場合であっても、揺動遅れ時間toffsetを変化させることにより最大ポーラー・レンジを最小化することができる。例えば、既定の加減速パターンにおいて揺動遅れ時間toffsetが0.02[sec]の場合、算出される最大ポーラー・レンジは4%弱であり十分に小さい値であるが、揺動遅れ時間toffsetを0.07[sec]に変更すれば、最大ポーラー・レンジをさらに低減して2%以下にすることができる。すなわち、走行軌跡の密度分布の円周方向のばらつきが比較的変化が小さい場合においても、前述同様の処理を行って加減速パターンを変更することにより、研磨レシピを変更することなく非対称性を最小化した条件で研磨加工を実行することができる。
また、研磨レシピにおいて設定された加工条件のうち、基板の回転速度Vwと基板に対する研磨パッドの揺動速度Vsとを一定範囲で変化させ、これらの加工条件を変更した場合についてそれぞれ前述同様に走行軌跡の密度分布を算出し、研磨レシピを含めて条件の最適化を実行するように構成しても良い。このような構成によれば、例えば図5において丸印でプロットする特性から三角印でプロットする特性に変化させることができ、これにより揺動遅延時間toffsetの変化に対する最大ポーラー・レンジの変化を小さく(揺動遅延時間が変動した場合の対称性に与える影響を小さく)することができる。
以上説明したように、本発明の研磨装置では、高額なモニター・ウェーハを多数消費したテスト加工を繰り返して非対称性が生じない加工条件を探し出したり、これに基づいて研磨レシピを変更設定したりする必要がなく、加工プログラムにおいて当初設定した研磨レシピで高品位の研磨加工を実行することができる。従って、本発明によれば、研磨レシピに関する煩雑な作業を解消して生産性を向上可能な研磨装置を提供することができる。
揺動遅れ時間に対する最大ポーラー・レンジの変化を示すグラフである。 本発明を適用した研磨装置の構成を略示する説明図である。 基板に対する研磨パッドの任意点の走行軌跡を示す説明図である。 研磨アームの揺動制御における加減速パターンを示すグラフである。 揺動遅れ時間に対する最大ポーラー・レンジの変化を示すグラフである。
符号の説明
1 研磨装置 10 基板回転機構
20 パッド回転機構 23 研磨パッド
30 ヘッド移動機構 35 アーム揺動機構(揺動機構)
50 制御装置 L 走行軌跡
V 加減速パターン W 基板
up 加速時間 tdown 減速時間
stop 揺動停止時間 toffset 揺動遅れ時間

Claims (4)

  1. 基板を保持して回転させる基板回転機構と、前記基板よりも小径に形成され前記基板と対向姿勢で配設される研磨パッドを回転させるパッド回転機構と、相対回転される前記基板の被研磨面と前記研磨パッドの研磨面とを当接させた状態で前記基板に対して前記研磨パッドを相対揺動させる揺動機構と、前記基板の回転、前記研磨パッドの回転及び前記基板に対する前記研磨パッドの相対揺動を制御して前記基板の研磨加工を制御する制御装置とを備えて構成される研磨装置において、
    前記制御装置は、研磨加工の加工条件が入力されたときに、入力された前記加工条件における前記基板の回転速度、前記研磨パッドの回転速度、前記基板に対する前記研磨パッドの相対揺動範囲及び相対揺動速度、並びに前記揺動機構の制御条件として予め設定された既定の加減速パターンに基づいて、前記被研磨面上における前記研磨面の各部の走行軌跡を積算して前記被研磨面上における前記走行軌跡の分布密度を算出し、算出された前記分布密度の円周方向のばらつきが予め設定された所定の基準値を超えると判断されたときには、前記既定の加減速パターンを変化させた場合について前記被研磨面上における前記走行軌跡の分布密度を算出し、前記既定の加減速パターンを、前記分布密度の円周方向のばらつきが前記基準値以下となる加減速パターンに変更するように構成したことを特徴とする研磨装置。
  2. 前記制御装置は、前記既定の加減速パターンのうち、前記基板に対する前記研磨パッドの相対移動方向が逆転する際に相対揺動速度がゼロとなる揺動停止時間を変化させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
  3. 前記制御装置は、前記既定の加減速パターンのうち、前記基板に対する前記研磨パッドの相対移動方向が逆転し相対揺動速度がゼロの状態から前記加工条件において設定された相対揺動速度に到達するまでの加速時間を変化させるように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研磨装置。
  4. 前記制御装置は、前記既定の加減速パターンのうち、前記基板に対する前記研磨パッドの相対移動方向を逆転させるため前記加工条件において設定された相対揺動速度の状態から相対揺動速度がゼロになるまでの減速時間を変化させるように構成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の研磨装置。



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Citations (5)

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