JP2009142809A - ローラ式粉砕機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 石灰石(CaCO3)のような付着性物質を粉砕するに際し、大型機で従来通りの安定した操業を行ないながら、なおかつ微粉の生産量を増加させることができるローラ式粉砕機を提供する。
【解決手段】 中心線回りに所定間隔で配置された複数の粉砕ローラ2と、複数の粉砕ローラ2との間で材料を粉砕するべく中心線回りの周方向に連続して配設されたベース部材1とが相対的に周方向の旋回運動をすることにより、原料の粉砕を行うローラ式粉砕機において、粉砕ローラ2は表面が滑らかなフラットローラとし、ベース部材1は、粉砕ローラ2との間に材料を噛み込んで破砕する環状の破砕面に、前記旋回方向と交差する方向のスリット溝6が周方向に所定ピッチで形成された溝付きベースとする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、石灰石(CaCO3)や水分含有量の多い石炭、れき青炭、亜れき青炭、渇炭、泥炭等のような付着性を有する物質の粉砕に適したローラ式粉砕機に関する。
ローラ式粉砕機としては、竪型ローラミルやレイモンドミル型粉砕機が代表的である。竪型ローラミルは、円周方向に回転する回転テーブルと、回転テーブル回転方向に間隔をあけてテーブル上の定位置に配置された複数の竪型粉砕ローラとの組合せからなり、回転テーブルの回転に伴って粉砕ローラとの間に材料を噛み込み粉砕する。粉砕ローラはフリーローラであり、回転テーブルの回転に追従して回転する。粉砕ローラとしては、台錐形ローラ(断面台形型ローラ)、タイヤ型ローラなどが使用される。
レイモンドミル型粉砕機は、水平に固定されたタイヤと呼ばれる環状のベース部材と、その内側を高速旋回する複数の横型の粉砕ローラとの組合せからなり、複数の横型の粉砕ローラの回転を伴う旋回運動とこれによる遠心押圧力とにより、ベース部材内周面との間で材料を粉砕する。
石灰石のような付着性物質をローラ式粉砕機、例えば非常に生産能力が大きい各種竪型ローラミル、レイモンドミル型粉砕機を使用して粉砕する場合、微粉砕粒子を多量生産することが非常に困難になる。例えば、時間当たり5〜6トンの粉砕能力を持つ断面台形型ローラ2個から構成されたロッシェ竪型粉砕ミルによる石灰石の粉砕においては、6,300ブレーン(cm2/g)以上もしくは45ミクロン以下の微細粉を多量生産する事が非常に困難である。
小型粉砕機では微細粉を生産することはさして困難では無いが、大型粉砕機になると微細粉の生産粉砕が困難となるのである。このため、従来は微細粉は小型機で生産されているか、大型機で生産能力を落として生産さている。しかし、大型粉砕機により一度で多量に微細粉を得ることが出来れば、コストの大幅低減につながることは言うまでもない。
付着性物質は一般的に非常に柔らかい物質が多く、これを粉砕すると、凝着し易く、柔らかいクッション層を形成し易すいため、粉砕圧力を吸収分散し易い欠点がある。これが、大型粉砕機で微粉粒子を一度に多量生産することが難しい理由である。
大型の竪型ミルを使用して微細粒度の石灰石を大量生産するためには、粉砕ローラへの加圧力を増大するか、ローラとテーブル間隙を小さくする必要がある。付着性が大きい石灰石の場合、ローラ面圧を高くするとテーブル上の微粉粉末がローラ面に反転付着し、ローラ面に多量の付着塊が発生して見かけ上のローラ外径が大きくなるため、周速度が速くなる。その結果、粉砕バランスが崩れて、ローラ回転が不安定になり、粉砕機が大きく振動するようになる。ローラとテーブルとの間隙を小さくしても同様の傾向が生じる。
このローラ振動の問題のため、実際の粉砕操業に於いては、振動が発生しない安定した操業条件を選択しなくては成らず、その結果、石灰石を大型竪型ミルで粉砕した場合、微粉の多量生産が出来ないこととなる。
本発明は、大型機で従来通りの安定した操業を行ないながら、なおかつ微粉の生産量を増加させることができるローラ式粉砕機を提供することを目的とする。
なお、本発明での微粉は、前述したように例えば45μm以下である。一方、粉体工学での微粉体の定義は0.3〜3μm程度であるので、本発明での微粉は粉体工学での微粉には続さない(著書:粉体の工学 著者神歩元二参照)。しかし、本発明では従来粉砕されて得られた粒子に較べ小さい粒子に粉砕するとこを目的とするので、本発明で得られる粉末粒子を便宜上、微細粒子、微細粉、微粒子と称する
上記目的を達成するために、本発明者は、付着性物質として石灰石を取り上げ、大型粉砕機で微粉の生産量を増加させたときの振動の発生原因について解析し、合わせてその振動を防止するための対策について研究した。
通常、竪型ローラミルは2〜4個の竪形粉砕ローラと水平な回転式粉砕テーブルとから構成され、テーブルが回転することにより、ミルの中央から供給された粉砕原料がテーブルの回転による遠心力でテーブル外周に移送されテーブル上に配置された粉砕ローラとの間隙部に原料が入り込み粉砕操作が開始される。粉砕ローラの円滑回転は、粉砕原料との摩擦力とローラに対する加圧力とのバランスの上に成立し、両者のいずれが欠けてもローラの円滑回転が出来なくなる。即ち、粉砕ローラは従動輪であり、テーブルが駆動輪に相当する。
また、レイモンドミルは、タイヤの内側に配置された2〜6個の横形の粉砕ローラを高速旋回させ、その遠心力でローラをタイヤに圧し付けながら底部に取り付けられた掻き上げ用プラウで原料を掻き上げローラとタイヤ間に原料を供給して連続的に粉砕操作を行う粉砕機のことである。粉砕原料への加圧力はローラの重量による遠心力と回転速度による加圧力とで調整できる。
例えば竪型ローラミルで石灰石のような付着性物質を大量に微粉砕する場合、粉砕ローラに起因して一つの大きな問題点が生じる。即ち、粉砕ローラとしては、円筒型、タイヤ型、断面台形型のローラが使用されるが、これらで付着性の大きい粉砕原料を微粉砕する場合、そのローラが回転すると、付着性物質を掻き上げローラ表面に付着を発生させる。時間が経過するに連れ雪だるま式に付着が促進されてローラ表面に不安定な層が形成される。このような性質を持つ粉砕ローラの表面に、原料の噛み込み性を向上させるために回転方向に直角な横溝(スリット)を形成した場合、逆に付着を促進してより雪だるま状の積層を助長するようになり、円滑な回転が不可能になる。
ローラ表面に粉末が付着して形成された粉末層はローラ表面に不均一な厚みで形成されるので、ローラ径が不規則に成り原料の噛み込み量が異なり、その結果ローラ回転が不規則になると同時に、上下に振動を発生するようになる。またテーブル間とで初期設定されたクリアランスが狭くなって原料を噛み込んで行かなくなる。原料のフィード量は依然として一定であるので、噛み込まれないと粉砕されずに食い過ぎ状態になり、ミルから排出されるようになる。当然の成り行きとして粉砕機は振動、排出を繰り返し安定操業が不可能になる。
付着し易い粉砕原料は一般的に言って非常に柔らかい物質が多い。粉砕機に供給される原料の寸法はさほど大きな物は無く、直径が15〜20mm以下のものが多い。硬度の低い物質であることと投入原料の寸法が比較的小さいので、テーブルやローラの摩耗は非常に少ない。従って、石灰石粉砕の場合、高クロム鋳鉄により製造されたローラ、テーブルならばおおよそ20年間の使用期間に耐える程である。また肉盛溶接で製造される場合には高クロム鋳鉄製肉盛ワイヤで10mm程度の厚みを全面均一に肉盛すれば、更に長期寿命を確保出来る.
上述したように、粉砕ローラに対して噛み込み性を向上させ微粉砕量を高めるための横溝(スリット)を形成すると、ローラに粉体の付着を発生させ、円滑回転が出来難くなり、最終的に安定操業の維持が不可能になることが判明したことから、本発明者は発想を転換し、平面回転を行うテーブルか固定されたタイヤ、すなわちベース部材の方に溝を形成することが適切であるのではないかと考え、様々な実験を繰り返した。その結果、ローラの表面は滑らかにし、ベース部材の破砕面に溝(スリット)を形成するのが、ローラ表面への粉体付着を阻止できる有効な手段であることが判明した。
竪型ローラミルにおけるテーブル溝形状については各種考えられ、回転方向に直角な半径方向の直角溝(スリット)、半径線に対して傾斜した斜めスリットで粉砕原料をテーブル中心方向に掻き戻す方向とテーブル外周方向に排出する方向とがあり、更にこの斜めスリットが交互に配置された形状等が想定される。竪型ローラミルの場合、直角スリットの配列はテーブル中心点から放射状に形成され、丁度扇子を広げた扇子の骨の配置を想定すれば良い。
レイモンドミルの場合、タイヤに直角スリット形成する方法として、タイヤ円周の中心軸と平行に設けられ、その形は檜の風呂桶の様に、等間隔の檜の板を円周上に配置した形状に類似している。
一方、粉砕ローラの外周面に回転方向に直角な横溝を設けることは粉砕物の付着の原因となり、推奨されないことは前述したとおりである。ところが、粉砕ローラの外周面に回転方向に沿った複数の縦溝を並列的に設ければ、粉砕物の付着が生じないばかりか、細かい微粉度と厚い層厚が可能になることが、更に明らかになった。
すなわち、粉砕ローラの外周面に複数の縦溝を形成してそれらに傾斜をつけてスクリュー溝にすれば、粉砕中の原料に回転軸方向の推進力を付与することができる。そして更に、竪型ローラミルで粉砕ローラの回転に伴って粉砕原料を外周側へ送り出す方向の傾斜を縦溝に付与した場合、例え原料層厚が薄くなった場合でもスクリュー溝により粉砕原料を主粉砕面に確実に送り込む作用効果を発揮してローラの安定回転を維持する。例えば、石炭火力発電所において発電電力量を少なく調整する場合に低付加操業が行われるが、この場し歩、ミルへの石炭投入量が減少される。一般に粉砕原料のミル内供給量が少なくなると、ローラとテーブル間に噛み込まれる石炭量が不足して石炭層厚が薄くなり、粉砕ローラの回転が不安定になるが、スクリュー溝は安定回転を維持するのである。
これらの知見は、石灰石の微粉砕に関して最も優れた形態を調査するために、小型粉砕機を製作して粉砕実験を行うことにより得たものであり、それらの知見を基礎として、本発明は完成された。
本発明のローラ式粉砕機は、中心線回りに所定間隔で配置された複数の粉砕ローラと、複数の粉砕ローラとの間で原料を粉砕するべく中心線回りの周方向に連続して配設されたベース部材とが相対的に周方向の旋回運動をすることにより、原料の粉砕を行うローラ式粉砕機において、ベース部材は、粉砕ローラとの間に原料を噛み込んで破砕する環状の破砕面に、前記旋回方向と交差する方向のスリット溝が周方向に所定ピッチで形成された溝付きベースとしたものである。
ローラ式粉砕機は、旋回動作として周方向に回転するベース部材としての回転テーブルと、回転テーブル回転方向に間隔をあけてテーブル上の定位置に配置された複数の竪型の粉砕ローラとからなる竪型ローラ粉砕機と、固定された環状のベース部材と、その内側を回転しながら旋回する複数の横型の粉砕ローラとからなるレイモンドミル型粉砕機の2つが代表的である。
本発明のローラ式粉砕機において、ベース部材における複数のスリット溝は、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向に対して傾斜した傾斜溝でもよいし、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向に対して直角な直角溝でもよい。また、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向に対して両方向に傾斜した2種類の傾斜溝の組合せでもよい。
個々のスリット溝は、ベース部材の表面に直角な垂直溝でもよいし、ベース部材の表面に直角な垂直線に対して、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向又は反旋回方向に傾斜した非垂直溝でもよい。
ベース部材に関しては又、隣接するスリット溝の間のベース部材表面の少なくとも一部を、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向上流側のスリット溝から下流側のスリット溝に向かって押圧方向へ傾斜した傾斜面とすることができる。
ローラ式粉砕機が竪型ローラミルの場合、個々のスリット溝は、ベース部材である回転テーブルの中心側から外周側へ向けて断面積が漸次増大する形状が好ましい。
粉砕ローラは表面が滑らかなフラットローラとするか、若しくは、ローラ外周面に、回転方向に沿った複数の縦溝が、中心軸方向に並列的に且つ回転方向に対して傾斜して設けられたスクリュー溝付きローラとするのがよい。スクリュー溝付きローラにおけるスクリュー状縦溝の回転方向に対する傾斜方向は、竪型ローラミルでは、そのローラの回転に伴って粉砕原料をテーブル外周側へ排出する方向が好ましく、レイモンドミルでは、そのローラの回転に伴って粉砕原料をベース部材(タイヤ)の内側で上方へ押し上げる方向が好ましい。
竪型ローラミルでの代表的な粉砕ローラは、テーブル外周側ほど外径が大きくなる台錐形ローラである。その主たる粉砕部は大径部領域であるので、スクリュー溝の傾斜方向は、この主たる粉砕部へ粉砕原料を積極的に供給可能な、溝付きローラの回転に伴って粉砕原料をテーブル外周側へ排出する方向が好ましいのである。溝付きローラの傾斜方向を逆方向、すなわち溝付きローラの回転に伴って粉砕原料をテーブル中心側へ押し戻す方向とした場合は、粉砕原料の粉砕部に滞留する時間が長くなり、粉砕原料の層厚が厚くなりやすく、ミルへの原料供給量を減少させた低負荷操業時の場合に有利となる。
レイモンドミルでは、水平に固定されたタイヤと呼ばれる環状のベース部材の内側を高速旋回する複数の横型の粉砕ローラの回転を伴う旋回運動とこれによる遠心押圧力とで粉砕を行う。このミルでの溝付きローラにおけるスクリュー溝の傾斜方向は、その溝付きローラの回転に伴って粉砕原料をベース部材(タイヤ)の内側で上方へ押し上げる方向とする。これにより粉砕原料がベース部材(タイヤ)の内周面とその内側のローラ外周面との間で確実に糞酸され、粉砕効率が上がる。逆方向、すなわち溝付きローラの回転に伴って粉砕原料をベース部材(タイヤ)の内側で下方へ押し下げる方向の場合は、タイヤとローラ粉砕面間に原料を長時間滞留させ、層厚を厚くする傾向を生じさせる。なぜなら、かき上げプラウは絶えず原料を上方へかき上げるが、溝付きローラは原料を下方へ押し下げるために原料同士が粉砕面で衝突し層厚を厚くする方向に作用するからである。
本発明のローラ式粉砕機は、粉砕ローラと組み合わされるベース部材を、粉砕ローラとの間に原料を噛み込んで破砕する環状の破砕面に、前記旋回方向と交差する方向のスリット溝が周方向に所定ピッチで形成された溝付きベースとすることにより、大型機で従来通りの安定した操業を行ないながら、なおかつ微粉の生産量を増加させることができる。
粉砕ローラは表面が滑らかなフラットローラを基本とするが、ローラ外周面に、回転方向に沿った複数の縦溝が、中心軸方向に並列的に且つ回転方向に対して傾斜して設けられたスクリュー溝付きローラとすることもでき、スクリュー溝付きローラとした場合は、粉砕原料の微粉化を図りつつ大きな層厚が確保され、微粉化とローラの安定回転とが可能になる。
以下に本発明の実施形態を説明する。
本発明のローラ式粉砕機の有効性を調査するために、竪型ローラ粉砕機の一種であるロッシェミルに類似した実験用の小型粉砕機を製造した。この粉砕機は、図1に示すように、ベース部材である水平な回転テーブル1の外周部表面に粉砕ローラ2が対向する構造とした。粉砕ローラ2は、表面が平滑なフラットローラであると共に、断面台形型の竪型ローラであり、大径側を外周側に小径側を中心側に向け対向面が並行となるように傾斜配置されている。試験機であるためローラ個数は1とした。
回転テーブル1においては、粉砕ローラ2と対向する外周部が環状の破砕部3となり、環状の粉砕部3は、試験機であるため、テーブル本体4に対して脱着可能とした。破砕部3とのクリアランスを任意に調節できるように、粉砕ローラ2はその支持機構5に対して回転自在かつ昇降自在に取り付けられている。また、破砕に伴う衝撃を逃がし、且つ粉砕原料に所定の加圧力を付加するために、粉砕ローラ2はスプリングにより、破砕部3へ押し付けられる方向へ付勢されている。回転テーブル1の回転により、回転テーブル1と粉砕ローラ2は、相対的な旋回運動を行う。破砕部3上のローラ付近に原料を保持するために、破砕部3の内周部及び外周部に壁を設けた。試験機の更なる詳細は以下のとおりである。
ローラ寸法: 太径:200mm、小径:170mm、幅:57mm
テーブル径: 外径470mm×内径330mm
周速度: 30RPM(約44M/分)
ローラ加圧: スプリング加圧方式
以下、この小型試験機を使用した粉砕実験により、テーブル破砕面形状の内、最も石灰石の微粉砕に関して優れた形状を調査した結果を説明する。
石灰石の粉砕実験では、粉砕機本体のテーブルに各種スリットを加工することは非常に困難であることから、前述したとおり、脱着可能なテーブルリング(図1中の環状の破砕部3)を別に作成して、これを粉砕機テーブルに装着することにより実験を行うことにした。テーブルリングは、外径470×内径330×板厚6mmのSS400のリングを作成してそのリングの表面(破砕面)に様々なスリット溝6(図1参照)を形成した。作成したテーブルリングの表面形状、すなわち破砕面形状は次の5種類であり、図2に図示されている。
(1)参考のための平滑面
(2)回転テーブルの回転方向に直角な直角スリット(図2(a))
(3)回転テーブルの内周側から外周側に向かって回転方向に傾斜した傾斜スリット(図2(b))。この傾斜スリットは、粉砕原料をテーブル内周側に掻き込む方向の斜めスリットでもある。
(4)回転テーブルの内周側から外周側に向かって反回転方向に傾斜した傾斜スリット(図2(c))。この傾斜スリットは、粉砕原料をテーブル外周側へ強制排出する方向の斜めスリットでもある。
(5)掻き込み方向の斜めスリットと排出方向の斜めスリットを周方向に交互に組み合わせた波型スリット(図2(d))
これら5種類のテーブルリングを使用して石灰石の粉砕試験を行った結果は以下のとおりである。粉砕実験の試験条件を以下に示す。
粉砕原料: 石灰石
粒子径: 1〜3mm
粒度分布: 10メッシュ:46g、16メッシュ:44g、
30メッシュ:9g、60メッシュ:Tr、P:0.5g
粉砕量: 1500g
粉砕時間: 30分
ローラとテーブル間隙: 1mm
粒度分布: 3試料を採取してその平均値とる。
上記試験条件にて石灰石の粉砕実験を行いその粒度分布を調査した。破砕面形状の相違による粒度分布の比較試験なので、粉砕基準粒度を先ず求める必要がある。この基準粒度は通常、粉砕業界で使用されている粉砕機のローラ破砕面形状が平滑面ローラであり、テーブルも平滑面が使用されているので、平滑面同士の組み合わせのときの粉砕粒度とした。粉砕基準粒度の詳細を表1に示す。また、調査結果をこの基準粒度で評価した結果を表2に示す。
Figure 2009142809
Figure 2009142809
表2に示されてるように、ローラとテーブルとのクリアランスが1mmの場合、フラットローラとフラットテーブルとの基本組み合わせにおける基準粒度分布と比較して、溝付きテーブルローラを使用することにより、総て微粉砕量が増加した。
予備実験として、前述した(1)〜(5)の破砕面をテーブル粉砕部に採用し、破砕面がフラットな粉砕ローラと組み合わせて、付着を発生し無い粉砕原料として溶接フラックスの粉砕実験を行った。この場合は、テーブル表面に(5)の波型スリットを設けたとき、最も微粉砕量が増加したが、石灰石のように付着性が高く凝着し易い原料の粉砕の場合は、低湿度下において他の破砕面に較べあまり効果が見られなかった。その理由は破砕面に長く原料が閉じこめられるために、付着性粒子のクッション層が形成され、加圧力が吸収分散されて微細粒子の粉砕量が低下したと想定された。例え粉砕室における滞留時間が長くても付着性の少ない高硬度粒子の場合にはクッション層の形成が少なく直接圧力が粒子に伝達されるために微粉砕されると考えられた。
本実験での興味がある現象として、(5)のタイヤ波型破砕面テーブルの場合、80%の高湿度下での粉砕において微粉砕量が増加した。235メッシュ以下の粒度を比較すると低湿度下(約40〜45%)では4.8gに対して80%の高湿度下の場合、10.4gに成り、約2倍に微粉の粉砕量が増加した。
湿度が高い場合、微粉の粉砕量が増加した理由を推測すると、湿度により粒子が凝集して凝集体を形成し、ローラとテーブル間に発生する圧力が凝集体に充分伝達されるので、微粉砕量が増加すると考えられる。低湿度の場合には凝集体を形成しない粉体粒子はクッション層に成って加圧力を吸収分散し粉砕に必要な圧力が減少することにより微粉砕量が減少したと想定される。
その他3種類の破砕面の場合には、原料の滞留時間がタイヤ波型に比べ短く外部に早く排出されるためにクッション層が出来が難く、加圧力が有効に作用して微粉の粉砕量が増加したようである。特に粉砕原料をテーブル内部に掻き込む方向のスリット(3)の場合、ハサミで物を切断する状況に似ており、原料の噛み込み性や加圧力点が暫時スリット長さに沿って移動するので、粉砕効率を高める形状と考えられる。この加圧方法は、粉砕ローラ面とテーブル面とで作用する加圧方法とは異なる現象として想定される。面加圧と線加圧との相違と考えられる。
概して付着性が高く柔らかい原料でクッション層を形成し易い原料を微粉砕する場合には、従来のローラ面とテーブル面間で粉砕する方法よりもローラ面とナイフエッジのような線間とで粉砕する方が、加圧力が集中してより細かい粒子が多量に採取出来ると想定される。
いずれにしても、石灰石を微粉砕する場合、ローラに平滑破砕面を選択し、テーブルにスリット破砕面を付けることにより効果が得られることが判明した。その効果はスリットのエッジによる噛み込み作用と加圧作用とによりもたらされ、湿度が高い程その効果が向上することが判明した。この実験結果から得られた作用効果から、微粉砕をさらに促進するテーブルスリットの形状を考案した。それを図3及び図4を参照して以下に説明する。考案したスリット形状は直角スリット、斜めスリット、タイヤ波型の全てに適応可能である。
(1)スリット溝の間隔
特許第1618574号に於いて粉砕ローラに施すリブの幅は粉砕機の寸法、能力によっても異なるが、使用実績から判断して通常30〜60mm幅を実機に適用して優れた効果を発揮している。隣接する2本のスリット溝6,6の間がリブに対応する。このことから、回転テーブル1の破砕部3、即ち粉砕ローラ2が対向するテーブル外周部の表面(破砕面)に付けるスリット溝6の間隔Wは、リブ幅に準じて30mm以上が好ましい。上限については、テーブル外径が大きいために100mmmまでの範囲が好ましい。
(2)スリット幅
スリット溝6の幅wは、粉砕原料が投入される内周側から粉砕原料が排出される外周側に向かって漸次拡大することが好ましい。その理由は、投入時の粉砕原料の寸法が例えば約15〜20mmと大きく、これがテーブル外周に向かって漸次粉砕されるに連れ、その粒径は著しく小さくなる反面、その容積は著しく増加する。従って、スリット幅wをテーブル半径方向で同一にしておれば、粉砕された原料がスリット溝を充填してしまい、溝が完全に埋められてしまうので、スリットのエッジ効果が十分に発揮でき難くなる。常にスリットエッジがテーブル粉砕面に露出していることが、加圧作用を増加する上で重要な要因となる。通常、テーブル内周側におけるスリット幅をw1 とし、外周側におけるスリット幅をw2 すると、w2 ≦3w1 が好ましい。
(3)スリット深さ
前項でも述べたように、粉砕原料の容積はテーブル内周に比べ外周では極端に大きくなるので、スリット深さも外周に近づくに連れ漸次深くすることが望まれる。その深さの関係はテーブル内周側における深さをDとすれば外周側では3D以下が好ましい。
(4)スリットの底面形状
粉砕原料は周速度が最も速いテーブル外周近辺で微粉砕されるので、この部分では凝集し易い微粉の状態に変化している。従って、微粉がスリット内部に押し込まれるとその内部で付着、凝着して抜け難くなり易い。この現象を防止するか若しくは抜け易くするためにスリットの底面形状はコ型では無く、R面形状にすることが望まれる。出来れば、摩擦係数を小さくする硬質クロムメッキを溝内面に施工しておくと、より排出が容易となる。曲率半径Rは溝幅wの1/2程度で良い。
(5)スリットエッジの形状
スリット溝6の機能は、粉砕原料をローラ2とテーブル1間とに形成される粉砕室に噛み込ませる役目と、噛み込まれた原料に対してスリットエッジにおいて充分な線加圧力を与える役目の二つである。粉砕原料を加圧するには、図4に示すように、スリット溝6のエッジが、直角よりも鋭角の方が集中力が高くなり、好ましい。このエッジ角度θの範囲は45度≦θ≦90度が好ましい。θが90度超の場合も加圧効果は発揮されるが、シャープエッジになる程、加圧力が集中する。しかし、45度未満になると、粉砕機に鉄等の介在物が混入して来る場合に欠損し易くなるので45度以上が望ましい。
このエッジ形状は、付着性物質の粉砕において、粉砕原料に高線圧を与える優れた方法であることは当然のことであるが、付着性物質以外の微粉砕においても同様の効果が発揮される対策である。例えばバイオマス発電に於いて石炭と同時に粉砕原料として木材チップのような繊維状物質が混合粉砕される場合にも、非常に好ましいエッジ形状を与える。繊維状物質が混入している場合には繊維を切断するためにエッジ角度は45度程度の尖った鋭角が好ましい。
回転テーブル1の回転方向に直角な直角スリット6を、テーブル表面に対して傾斜した非垂直溝、具体的には、図4に示すように、溝底に向かって回転方向下流側に傾斜させることにより、原料押し込み方向下流側(回転方向下流側)におけるスリットエッジを鋭角エッジとし、石灰石の粉砕試験を行ない粒度分布の比較を行なった。また、直角スリット6を、溝底に向かって回転方向上流側に傾斜させることにより、原料押し込み方向上流側(回転方向上流側)におけるスリットエッジを鋭角エッジとし、石灰石の粉砕試験を行ない粒度分布の比較を行なった。後者の場合、原料押し込み方向下流側(回転方向下流側)におけるスリットエッジは120度の鈍角エッジとなるので、ここでは後者を鈍角エッジと呼ぶ。試験条件として、ローラとテーブルとのクリアランスは1mm、試験時間は30分間とした。原料が押し込まれる側に鋭角エッジを配置した場合と、鈍角エッジを配置した場合の粒度分布比較試験を行った結果を表3に示す。
Figure 2009142809
ローラ2とテーブル1との回転により粉砕原料が送り込まれる方向に対抗する側のテーブルスリットの片側に鋭角エッジθ=60度、鈍角エッジθ=120度のいずれを配置しても、著しく微粉砕量が増加した。通常の粉砕機に類似するフラットローラとフラットテーブルとの組み合わせにおける粒度分布を基準粒度とした場合、それと比較して、20メッシュから120メッシュまでの粒度合計量が83.5gであったものが54.6g、59.1gまでに減少した。
即ち29%〜35%粗粒分が減少したことになり、更に200メッシュ以下の合計量が18.6gに対して45.7g、42.2gと著しく増加した。即ち2.3〜2.5倍も微粉砕量が増加した。上述した試験によりテーブルスリットのエッジを鋭角にすることにより、ローラとテーブル間との線圧が増加して付着し易く凝着し易い石灰石の粉砕に於いて著しく微粉砕量を増加させることが可能になった。両者を比較した場合は、原料押し込み方向下流側のスリットのエッジを鋭角にした方が微粉砕性能が上がる。この線圧増加は、微粉砕量の増加に著しく効果があることが判明したので、次に述べる線圧増加法に発展した。
(6)線圧増加法
粉砕原料をテーブル内周側に掻き込む傾斜スリットの場合、図3(b)に示した破砕面形状を与えることにより微粉砕性を増加させる。即ち、テーブル外周部の粉砕部表面(環状の破砕面)を、ある適切なスリット間隔W(スリット中心線間距離)で割ると、N本の半径方向分割線が得られる。図3(b)における傾斜スリット6は、隣接する2本の半径方向分割線に挟まれた扇形部分7に斜めに形成されており、より詳しくは、扇形部分7の対角同士を結ぶ直線により形成されている。ここで、分割ピッチ、即ちスリット間隔W(スリット中心線間距離)が大きいと、傾斜スリット6の角度は半径方向分割線に対して倒れ直角に近づく。傾斜スリット6の最大傾斜角度は、半径方向分割線とのなす角度で表して45度までが好ましい。
回転テーブル1が原料を内周側に掻き込む方向に回転すると、スリット溝6により掻き寄せられる粉砕原料には、スリット溝6に対して直角方向の分力Fyが作用する。この分力Fyは、テーブル外周縁に接近するほど周速度が速くなるので増大し、内周側では粉砕原料をテーブル1の破砕面上(破砕部3の表面上)に掻き込み、最外周では原料を外部に排出する力として作用する。このFy分力は、周速度の差違により、テーブル外周側に向かって徐々に大きくなり、内周側では小さくなる。
また、Fxy合成力は、傾斜したスリット溝6の長手方向の外周側においては粉砕原料を外部に排出する力となって作用し、内周側においては原料を破砕面上に掻き込む作用力として働く。スリット内周側においては、粗粒の粉砕原料は内周側に押し戻され、一気に粉砕作用の大きい外周側に送り込まれないので、外周側においては一度に多量の粉砕原料を粉砕する度合いが少なくなり、より充分な微粉砕作用が行われ、微粉の生産量が増加する。特にテーブル外周側で粉砕作用が主として行われるが、粉砕された多量の微粉がスリット溝に蓄積されるようになる。しかし、Fxyの合成力は微粉を一気に外部に排出しようとすると同時に、スリット溝6内に蓄積された微粉も外部に吸引する作用力として働く。その結果、このFxy分力によりスリット溝6への微粉蓄積が少なくなる傾向が生じる。
原料を掻き込む方向にスリット溝6を傾斜させることは、Fxy合成力を発生させて溝内に蓄積された石灰を常に除去する作用を与え、スリットエッジを粉砕面に露出させる結果にも繋がり、粉砕線圧を向上させることにより、微粉の生産量を増加させることができるが、ただ単に傾斜スリットをテーブル表面に配列するのでは無く、隣接する2本の傾斜スリットに挟まれた溝間部分の断面形状を図3(c)に示した三角形の断面形状に形成することにより、更なる線圧の向上が達成されると同時に、溝内に蓄積された微粉石灰石を溝内から引き出す作用が増大する。
具体的に説明すると、隣接する2本の傾斜スリット6,6に挟まれた部分(溝間部分)の表面に、回転方向下流側に向かって下降するα度の傾斜角度(進入角)を付与すると、下流側のスリット溝6に蓄積された石灰石を溝内から引き出す作用が増加すると同時に、引き出された石灰分が増量することによりローラ面圧が増加して、進入角αと抜け角βとで形成される稜線部8で最大線圧が生まれることになり、微粉砕作用が向上する。β度の抜け角度は、微粉砕された原料を速やかに溝間部分の表面からスリット溝内に逃がす作用として働く。抜け角βは故意に付ける必要性はなく、βが0でαが直接スリットエッジに接触する形状でも良い。
単純なスリットでさえ、スリットエッジが線圧を発生させる要因になるが、隣接する2本の傾斜スリットに挟まれた溝間部分の表面に故意に線圧向上のため稜線部8からなるエッジを付与することにより、単純なスリットエッジに比べ微粉の生産量を向上させることが出来る。更に、隣接する2本の傾斜スリットに挟まれた溝間部分内において、α度とβ度で構成される稜線部8の位置をテーブル半径方向やこれに直角な方向に沿って変化させることも可能である。それにより元々のスリットエッジに加え、第2のエッジを溝間部分の表面に作り出し、微粉砕に必要な線圧を多数作り出すことができる。溝間部部の線圧は更に粉砕原料の掻き込みや排出を行うする作用として働き、掻き込み線圧、排出線圧を交互に溝間部内に形成することにより、粉砕原料に攪拌作用も与えることも可能となる。
また、スリット溝間ごとに逆方向のαβからなる傾斜角度を付与するようなことも可能である。これにより多様な粉砕作用を生み出し、微粉砕の向上や微粉粒度の調節、攪拌等も可能に成る。
(7)原料の種類
石灰石の場合にはローラとテーブルとのクリアランスG=0mmの場合、スリットの効果は認められなかったが、G=1mmでスリットの効果が発揮され、鋭角エッジはさらに微粉砕に貢献した。即ち、付着、凝集し易い粉砕原料の場合にはテーブルスリットの効果が認められ、線圧が微粉砕に貢献することが判明した。G=0の場合には、面圧が高くなり、ローラに付着が発生したので、テーブルスリットの効果が得られなかったと思われる。
付着性の少ない硬質のフラックスの場合にはG=0mm,1mmの場合ともにテーブルスリットの効果が認められなかった。即ち付着性、凝集性の無いかもしくは少ない原料の場合にはテーブルスリットは効果を発揮することが無く、むしろローラスリットで効果が認められ、G=1mmの場合には効果が無く、0mmで効果を発揮した。G=1mmの場合には硬いフラックスは粉砕不十分になり、スリット破砕面形状の差違が認められなかったが、0mmでは面圧が上昇して微粉砕され、しかも曲率を持つ回転体表面のスリットは平面に付けられたスリットに較べ噛み込み性が優れているためか、ローラスリットの方に効果が認められた。
結論的には付着性、凝集性のある原料の場合にはテーブルスリットが微粉砕性に効果があり、付着性、凝集性の無い硬質原料の場合にはローラスリットが微粉砕に効果を発揮するということである。
(8)ローラスリット
図5は、本発明のローラ式粉砕機におけるスクリュー溝付きローラの有効性を調査するための実験用小型粉砕機の構成図、図6は粉砕ローラの説明図、図7はスクリュー溝付きローラにおけるスクリュー溝の傾斜角度Θ及びピッチPの説明図であるである。図5の粉砕機は、粉砕ローラ2が図1の実験用小型粉砕機と異なる。
この粉砕機における粉砕ローラ2は、大径側を外周側に小径側を中心側に向けた断面台形型の竪型ローラであると共に、外周面に複数のスクリュー溝9が中心軸方向に並列的に設けられている。個々のスクリュー溝9は、粉砕ローラ2の回転方向に沿った縦溝を、その回転方向に対して傾斜させたものであり、その傾斜方向は、粉砕ローラ2の回転に伴って粉砕原料をテーブル外周側へ排出する方向に設定されている。また、傾斜角度は、ローラ軸方向の全域で同一であり、ここではローラ回転方向に対する傾斜角度Θで表現して22.5度〔ローラ中心軸に対する傾斜角度で表現すれば67.5度(90度−Θ度)〕とされている。
他の構成は、テーブル1が粉砕部3の表面にスリット6を有することを含め、図1の実験用小型粉砕機と同じである。テーブルスリット6は、テーブル回転方向に直角な直角スリットで、且つテーブル表面に垂直な垂直溝と、テーブル回転方向に直角な直角スリットで、且つテーブル表面に対して回転方向上流側に傾斜した60度の鋭角エッジをもつ非垂直溝の二種類である。粉砕を終えた原料の粒度分布を表4に示す。スクリュー溝付きローラの仕様は以下のとおりである。
スクリュー溝付きローラの仕様:
大径200mm×小径170mm×幅57mm
ローラ回転方向に対する傾斜角度 67.5度
溝幅 3mm
溝深さ 3〜4mm
隣接する溝間距離 13mm
溝間の送り羽根部の幅 10mm
Figure 2009142809
粉砕を終えた原料の粒度分布は、粉砕ローラ2が平滑面ローラ(フラットローラ)でテーブル1が直角スリット付きの場合、その直角スリットが鋭角エッジのない垂直溝だと、235メッシュ以下が12.5g(表2)、その直角スリットが60度鋭角エッジ付きの傾斜溝だと、200メッシュ以下が37.3g(表3)であった。テーブル1上に残存した粉砕原料の層厚は平均して1〜2mmであった。
これに対し、粉砕ローラ2がスクリュー溝付きであると、テーブル溝が垂直溝の場合も60度の鋭角エッジをもつ傾斜溝の場合も、200メッシュ以下が43〜45gと非常に多い上に、テーブル1上に残存した粉砕原料の層厚は4〜5mmと非常に厚かった。これは、粉砕ローラ2のスクリュー溝9により、粉砕原料である石灰石が粉砕部(図6)に強制的に掻き寄せられたたためと推定される。これは特筆すべき現象である。
すなわち、層厚が2.5〜4倍も厚くなっているにもかかわらず、200メッシュ以下43〜45gの粒度分布が得られたことは特筆すべき現象である。常識から判断すれば、層厚がこれほど厚くなれば、200メッシュ以下の粉砕原料は非常に少なくなるのであるが、層厚が1〜2mmのときと同じ微粉度が確保されることは想像し難い現象である。その理由はやはり、ローラに形成されたスクリュー溝が、原料粉砕部へ原料を確実に送り込み、エネルギーロスの少ない効率的な粉砕を行っていることと考えられる。
更に詳しく説明すれば、石灰石の粉砕ローラへの付着性については、ローラ溝が回転方向に直角な横溝の場合、その横溝は生産性を向上させるスリットであったため粉砕原料の付着を促進したが、スクリュー溝の場合、その溝は基本的に粉砕ローラの回転方向に沿った縦溝であるために、溝内には付着を生じるが、ローラ表面の付着性は平滑面ローラと同程度と推測される。また、仮にこの縦溝付きローラに石灰石が付着したとしても、スクリューの送り込み作用により、付着した原料が常に除去作用を受け、粉砕部では確実に除去される結果、粉砕面圧が粉砕原料に確実に伝達され、層厚が大きくなっも微粉が厚み方向で十分に得られるものと考えられる。
結論として、スリット溝付きテーブルとスクリュー溝付きローラとの組合せは、非常に効率的である。
ローラ表面の回転方向に沿った縦溝を寝かしていくと(縦溝のローラ回転方向に対する傾斜角度Θを0から徐々に大きくしていくと)、次第に噛み込み性能が向上していく反面、飛散現象が顕著となる。例えばこの傾斜角度Θを45度にした場合、飛散量は実験機によれば平滑面ローラと平滑面テーブルとの組み合わせと同じ程度の飛散量を生じるので、既に平滑面ローラでは低負荷振動が発生していることを考慮するならば、スクリュー溝の傾斜角度Θは45度未満、具体的には35度以下必要となる。
傾斜角度Θの下限については、粉砕原料にテーブル半径方向の推力を付与するために、0度超、具体的には5度以上とすることが好ましい。特に好ましいスクリュー溝の傾斜角度は45度と0度の中間の22.5度を挟む15〜30度である。
また、破砕ローラの外径及び中心軸方向の厚みを一定とした場合、スクリュー溝の傾斜角度Θが小さいほど、その溝の周長が長くなる。反対にスクリュー溝の傾斜角度Θを大きくすると、溝長は短くなる。スクリュー溝の機能発現のためには、個々のスクリュー溝の周長はローラの半周以上であることが望ましく、スクリュー溝の傾斜角度Θが5〜35度の範囲内にあっても破砕ローラのサイズによっては、スクリュー溝の周長が半周未満となることもある。この場合はスクリュー溝の周長が半周以上となるように、その傾斜角度Θを5〜35度の範囲内で選択することが望まれる。
スクリュー溝の傾斜角度Θの選択により、ローラ近辺に蓄えられた粉砕原料はローラ粉砕空間に噛みこまれ、ローラとテーブルとの間における原料層の層厚が大きくなり、投入原料量が少ない場合のローラとテーブルとのメタルタッチが減少して、振動現象の要因の一つが除去され、更にローラと原料との摩擦力が向上してミルの振動が防止されるようになる。
本発明者が先に開発したスリットローラの場合、溝はローラ回転方向に直角(傾斜角度90度)であるため、テーブル回転方向における噛み込み性は優れているが、テーブル半径方向における推力は生まない。また、原料の外部への飛散量は溝の傾斜角度Θが90度の場合が最も多い。このため、低負荷操業において少ない原料供給量の場合、追加投入しない限りローラとテーブル間に出来る原料層厚が非常に薄くなり、実験では約1mm程度となってミル振動を生じた。従って、このスリットローラは低負荷操業には適用できないと想定された。
しかし、ローラ回転方向に対して傾斜して周方向に取り巻くスクリュー溝、特に原料をテーブル外周側へ押し込むスクリュー溝は、ローラとテーブルとの間に形成される粉砕空間に原料を強制的に押し込む能力が高い。一方では生産量を高めることができ、他方では粉砕能力に関して前者より多少劣るかもしれないが、外部への飛散量を減少させ、さらに粉砕空間に強制的に効率よく原料を押し込む効果により、層厚が厚くなり、振動抑制を可能にし、竪型粉砕機が持つ性能の幅をオールランドに発揮可能にした。
竪型ローラミルの破砕ローラには円錐台型形状をしたローラとタイヤ型ローラとがある。これらの破砕ローラでは、ローラ中心軸方向の位置によってローラ径が異なり周長が異なる。円錐台型形状の破砕ローラにおける1本のスクリュー溝を例にとって考える。図7に示すにように、最もローラ径が大きいテーブル外周側でのスクリュー溝の傾斜角度ΘをΘaとする。最もローラ径が小さいテーブル中心側までこのΘaを維持してもよいし、軸方向位置によってΘを変化させてもよい。傾斜角度Θが一定の場合、テーブル外周側からテーブル中心側へ向かうにつれて、すなわちローラ径が小さくなるにしたがってローラ中心軸方向の溝間ピッチPが小さくなる。逆にローラ中心軸方向の溝間ピッチPを一定としてもよい。この場合はスクリュー溝のローラ回転方向に対する傾斜角度Θは、テーブル外周側からテーブル中心側へ向かうにつれて、すなわちローラ径が小さくなるにしたがって大きくなる。この場合のスクリュー溝の傾斜角度Θは平均角度(大径側の最小角度+小径側の最大角度/2)となり、この平均角度が前記範囲内に入るように選択される。タイヤ型ローラの場合も同様であり、ローラ中心軸方向において傾斜角度Θを一定としてもよいし、ローラ中心軸方向の溝間ピッチPを一定としてもよい。
スクリュー溝の溝幅をd、隣接するスクリュー溝の溝間距離をDとすると(図6参照)、両者は0.1D≦d≦Dを満足するのが適切である。Dに比してdが小さすぎる場合は粉砕原料のスクリュー溝による送り込み効果が小さくなりやすく、反対にDに比してdが大きすぎる場合は送り込み効果が増大する反面、粉砕ローラとしての有効粉砕面積が減少し、十分な破砕量を確保するのが難しくなる。
スクリュー溝の溝幅dが大きいと、多量の原料を低速度で送り込む性能が高まり、溝幅dが狭くなると、送り込む能力が落ちる。原料の流れの抵抗から判断して、テーブル中心側ではスクリュー溝の溝幅dを広めに取って一気に原料を送り込み、テーブル外周側に向かうにつれて暫時溝幅dを狭めて送り込み速度を遅くしてローラとテーブルに形成される粉砕空間に確実に送り込むことが重要である。特に低負荷操業においては、供給原料量が極端に絞られているので、粉砕空間に確実に少量の石炭を送り込むことが重要である。粉砕空間以外に漏れることは層厚を薄くすることに繋がり振動発生の原因になる。
(8)その他
本実施形態では、石灰石の様に付着凝着し易い粉砕原料の粉砕に関するテーブル破砕面形状について主に述べたが、多少の付着性や凝着性がある物質で木材チップのような繊維物質が含有されている原料を粉砕する場合、ローラ面に付着現象を生じても粉砕操業が安定して行われるならば、粉砕ローラ面に同一破砕面形状を与え特に(5)(6)のスリットエッジ処理を行えば、噛み込み性と微粉砕性の向上により効果がある。
テーブル本体は耐摩耗性鋳鋼、軟鋼材、14%オーステナイトマンガン鋼、その他各種鋼材または耐摩耗性金属を肉盛された耐摩耗性クラッド鋼等で構成される。その摩耗面に対してスリットが形成されるが、スリットはアークガウジングやグラインダー研削、放電加工等により形成することができる。鋳鋼の場合には、木型等によりスリットを含めた形状に一体成型することができる。
ローラミルにおける破砕ローラの表面は耐磨耗性金属からなる。粉砕ローラの外周面にスクリュー溝を形成するには、スクリュー溝を形成する部分に他の部分より耐磨耗性の劣る材料を配置し、粉砕ローラの使用よりスクリュー溝を形成していく。より具体的には、粉砕ローラの母材表面のスクリュー溝形成位置に軟鋼等の耐磨耗性の劣る材料からなるリブを取付け、リブ以外の部分に耐磨耗性の優れた材料を溶接肉盛り或いはキャスティングする。その他の方法として、肉盛ワイヤでローラの外周面全体を溶接肉盛した後に、スクリュー溝形成部分からアークガウジングにより硬化金属を除去する。様々な方法で耐磨耗性金属からなるローラ表面にスクリュー溝を形成することができる。耐摩耗性に劣った部分は、粉砕操業において他の部分に比べ早期磨耗を自然発生的に生じて、スクリュー溝を形成する。粉砕操業開始時点から噛み込み効果を得たい場合には当初から、耐磨耗性の低い材料の高さを他の部分のところより3〜5mm、若しくはそれ以上凹ませておけばよい。
本発明の有効性を調査するための実験用小型粉砕機の構成図である。 (a)〜(d)は破砕部(テーブルリング)の表面に形成されるスリット溝のパターンを示す平面図である。 本発明の実施形態を示す粉砕機の概略構成図であり、(a)は立面図、(b)は平面図、(c)は図(a)中のA−A線断面図である。 スリット溝の断面形状を示す模式図である。 本発明の有効性を調査するための、別の実験用小型粉砕機の構成図である。 スクリュー溝付きローラの構成図である。 スクリュー溝付きローラにおけるスクリュー溝の傾斜角度Θ及びピッチPの説明図である。
符号の説明
1 回転テーブル(ベース部材)
2 粉砕ロール
3 破砕部
4 テーブル本体
5 支持機構
6 スリット溝
7 扇形部分
8 稜線部
9 スクリュー溝

Claims (11)

  1. 中心線回りに所定間隔で配置された複数の粉砕ローラと、複数の粉砕ローラとの間で原料を粉砕するべく中心線回りの周方向に連続して配設されたベース部材とが相対的に周方向の旋回運動をすることにより、原料の粉砕を行うローラ式粉砕機において、ベース部材は、粉砕ローラとの間に原料を噛み込んで破砕する環状の破砕面に、前記旋回方向と交差する方向のスリット溝が周方向に所定ピッチで形成された溝付きベースであるローラ式粉砕機。
  2. ローラ式粉砕機は、旋回動作として周方向に回転するベース部材としての回転テーブルと、回転テーブル回転方向に間隔をあけてテーブル上の定位置に配置された複数の竪型の粉砕ローラとからなる竪型ローラ粉砕機である請求項1に記載のローラ式粉砕機。
  3. ローラ式粉砕機は、固定された環状のベース部材と、その内側を回転しながら旋回する複数の横型の粉砕ローラとからなるレイモンドミル型粉砕機である請求項1に記載のローラ式粉砕機。
  4. 請求項1に記載のローラ式粉砕機において、複数のスリット溝は、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向に対して傾斜した傾斜溝であるローラ式粉砕機。
  5. 請求項1に記載のローラ式粉砕機において、複数のスリット溝は、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向に対して両方向に傾斜した2種類の傾斜溝の組合せであるローラ式粉砕機。
  6. 請求項1に記載のローラ式粉砕機において、複数のスリット溝は、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向に対して直角な直角溝であるローラ式粉砕機。
  7. 請求項1に記載のローラ式粉砕機において、個々のスリット溝は、ベース部材表面に直角な垂直方向に対して、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向又は反旋回方向に傾斜した非垂直溝であるローラ式粉砕機。
  8. 請求項1に記載のローラ式粉砕機において、隣接するスリット溝の間のベース部材表面の少なくとも一部が、ベース部材又は粉砕ローラの旋回方向上流側のスリット溝から下流側のスリット溝に向かって押圧方向へ傾斜した傾斜面であるローラ式粉砕機。
  9. 請求項2に記載のローラ式粉砕機において、スリット溝は、ベース部材である回転テーブルの中心側から外周側へ向けて断面積が漸次増大する形状であるローラ式粉砕機。
  10. 請求項1に記載のローラ式粉砕機において、粉砕ローラは表面が滑らかなフラットローラであるローラ式粉砕機。
  11. 請求項1に記載のローラ式粉砕機において、粉砕ローラは、ローラ外周面に、回転方向に沿った複数の縦溝が、中心軸方向に並列的に且つ回転方向に対して傾斜して設けられたスクリュー溝付きローラであるローラ式粉砕機。
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