(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電気自動車の構成を示す図である。
図1に示すように、電気自動車100は前輪1と、操舵機構2と、後輪3と、後輪駆動部10とを備える
前輪1は、車両前方側に一対設けられており、操舵機構2のステアリングホイール2aによって操舵される。この操舵機構2には、前輪1の操舵角度を検出するための舵角センサ2bが設置されている。
後輪3は、車両後方側に一対設けられている。この後輪3は、後輪駆動部10によって駆動される。この後輪駆動部10は、バッテリ11と、インバータ12と、駆動モータ13と、コントローラ14とを備える。
駆動モータ13は、左右の後輪3を独立して駆動することができるように、左右の後輪3ごとに設けられている。そして、バッテリ11に充電された電力が、駆動モータ13ごとに設けられたインバータ12を介して駆動モータ13に供給される。駆動モータ13は、インバータ12からの交流電圧値に応じた駆動力を発生させ、その駆動力が出力軸37を介して後輪3に伝達される。なお、インバータ12からの交流電圧値は、車両の運転状態に応じてコントローラ14によって制御される。
コントローラ14は、CPU、ROM、RAM及びI/Oインタフェースを有する。コントローラ14には、車両の速度を検出する車速センサ15、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ16、ブレーキペダル踏み込み量を検出するブレーキペダルセンサ17、セレクトレバーのポジションを検出するポジションセンサ18、車両の加速度を検出する加速度センサ19や前輪1の操舵角度を検出する舵角センサ2bなど、車両の運転状態を検出する各種センサの出力が入力する。コントローラ14は、これら出力に基づいてインバータ12から駆動モータ13に出力される交流電圧値を制御して、左右の後輪3に伝達される駆動モータ13の駆動力を調整する。
次に、図2を参照して、電気自動車100の駆動モータ13の構成について説明する。図2は、駆動モータ13の構成を示す概略図である。なお、本実施形態では、駆動モータ13が左右対称に構成されているので、説明の便宜上、一方の駆動モータ13についてのみ説明する。
図2に示すように、駆動モータ13はステータ31と、ロータ32と、ロータ軸33とを備える。
駆動モータ13は、円筒状のケース34の内周側にステータ31を収納する。そして、このステータ31の内側には、ロータ32が回転自在に配置される。
ロータ32は、その軸心を通るように、ロータ軸33が挿通される。このロータ軸33の一端は、ケース34に設けられた軸受け部35によって支持される。また、ロータ軸33の他端は、ケース34に配置された減速装置36に支持される。
減速装置36はプラネタリギヤなどから構成されており、減速装置36の出力軸37が後輪3と連結している。
一方、駆動モータ13のロータ軸33には、回転検出器38と、パーキング装置130とが設置される。
回転検出器38は、パーキング装置130のパーキングギヤ131の回転角度を検出する。そのため、回転検出器38の回転検出ロータ38aは、パーキングギヤ131に対して位置決めされてロータ軸33に設けられる。そして、回転検出器38によって検出されたパーキングギヤ131の回転角度は、図1において図示したコントローラ14に出力される。
パーキング装置130は、セレクトレバーがPレンジにセレクト操作されたときに車両を停止状態に維持する。このパーキング装置130について、図3を参照して説明する。図3は、パーキング装置130の構成を示す図であり、図2のIII−III断面を示す。
図3に示すように、パーキング装置130はパーキングギヤ131と、パーキングポール132と、パーキングロッド133とを備える。
パーキング装置130のパーキングギヤ131は、歯車形状であって、駆動モータ13のロータ軸33に対して同心に配置される。このパーキングギヤ131の歯131aと歯131aとの間に形成される歯溝131bは、パーキングポール132の凸部132aが噛み合うように構成されている。なお、図3において、パーキングギヤ131の歯131aは、パーキングギヤ周上に12個形成されているが、パーキングギヤ131の歯数はこれに限られるものではなく、必要に応じて任意に設定すればよい。
パーキングポール132は、その先端に歯溝131bと噛合する凸部132aを有する。また、パーキングポール132の後端は、ポールシャフト134を介して駆動モータ13のケース34に回転自在に支持されている。このポールシャフト134には、パーキングギヤ131とパーキングポール132の凸部132aとの噛合が解除される方向にバネ荷重が作用するようにトーションスプリング135が設けられている。このパーキングポール132は、セレクトレバーがPレンジにセレクト操作されたときに、パーキングロッド133によってポールシャフト134を中心に回転する。
パーキングロッド133は、先端側ロッド133aと、後端側ロッド133bと、カム137と、コイルスプリング138とを備える。
パーキングロッド133の先端側ロッド133aは、後端側ロッド133bよりも大径である。先端側ロッド133aは、駆動モータ13のケース34に固定されたブラケット136に対して摺動自在に支持される。一方、後端側ロッド133bには、パーキングポール132を駆動するためのカム137が配置される。カム137は、後端側ロッド133bに摺動自在に設けられており、後方からコイルスプリング138のバネ荷重を受けて、先端側ロッド133aと後端側ロッド133bとの間に形成される段差133cに当接する。なお、後端側ロッド133bは、その後端において図示しないセレクトレバーと連結する。
上記したパーキング装置130では、セレクトレバーがPレンジにセレクト操作されたときに、パーキングロッド133が、図3の矢印Aに示すように移動する。このようにパーキングロッド133が移動すると、カム137がブラケット136に乗り上げ、パーキングポール132の先端を図中下側から上側に向けて押し上げる。そうすると、パーキングポール132は、ポールシャフト134を中心に回転する。
そして、パーキングポール132の凸部132aが、パーキングギヤ131の歯溝131bの歯底面に当接する場合には、パーキングギヤ131の歯溝131bにパーキングポール132の凸部132aが噛合するので、駆動モータ13のロータ軸33の回転が規制され、車両が停止状態に維持される。
一方、パーキングポール132の凸部132aが、パーキングギヤ131の歯先面131cに当接する場合には、カム137がコイルスプリング138のバネ荷重に抗して後端側ロッド133bを後方(矢印Aの反対方向)に向けて摺動し、パーキングロッド133のストロークに対する逃げを確保する。これにより、パーキングポール132の凸部132aが歯先面131cに無理に押し付けられることがなくなり、パーキング装置130の故障が防止される。このようにパーキングポール132の凸部132aが歯先面131cに当接する場合は、パーキングギヤ131が僅かに回転して、パーキングポール132の凸部132aの位置にパーキングギヤ131の歯溝131bが来たときに、凸部132aと歯溝131bが噛合して、駆動モータ13のロータ軸33の回転が規制され、車両が停止状態に維持される。
なお、車両がある程度の速度(例えば車速V0)以上で走行しておりパーキングギヤが高速回転している場合も、カム137がコイルスプリング138のバネ荷重に抗して後端側ロッド133bを後方(矢印Aの反対方向)に向けて摺動するので、パーキング装置130の故障が防止される。
本実施形態のように、左右の後輪3を独立して駆動可能な電気自動車100においては、左右の駆動モータ13のロータ軸33のそれぞれにパーキング装置130が設置される。しかしながら、左右のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相がずれると、パーキング操作時に左右の後輪3の回転を同時に固定できないことがあり、一方の車輪がわずかに回転してしまうなど十分なパーキング効果を得ることができないという問題がある。
そこで、本実施形態では、左右のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させることによって、パーキング操作時に左右の後輪3の回転を同時に固定する。
ここで、パーキングギヤ131の歯131aの位相θAについて、図4を参照して説明する。
本実施形態において、パーキングギヤ131の歯131aの位相θAは、基準位置Pとパーキングギヤ131の歯131aとの角度であり、回転検出器38によって検出されたパーキングギヤ131の回転角度θBに基づいて(1)式によって算出される。この歯131aの位相θAは、0°から(2)式で算出されるピッチ角度Nの範囲で定まる値となるように、(1)式の整数nが決定される。
本実施形態では、パーキングギヤ歯数Gは12であり、(2)式からピッチ角度N=30°となるので、パーキングギヤ131の歯131aの位相θAは0°〜30°の範囲内で算出される。
したがって、図4(A)に示すように、回転検出器38によって基準位置Pとパーキングギヤ131の基準位置Qとの回転角度θBが25°と検出された場合には、(1)式においてn=0となって、パーキングギヤ131の歯131aの位相θAは25°となる。
一方、図4(B)に示すように、回転検出器38によって基準位置Pとパーキングギヤ131の基準位置Qとの回転角度θBが125°と検出された場合には、(1)式においてn=4となって、パーキングギヤ131の歯131aの位相θAは5°となる。
本実施形態では、回転検出器38で検出されたパーキングギヤ131の回転角度θBに基づいて、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARと、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALを算出する。そして、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARと位相θALとが一致するように駆動モータ13を制御(位相同期制御)して、パーキング操作時に左右の後輪3の回転を同時に固定する。
図5は、コントローラ14が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御は、エンジンの運転開始ともに一定周期(例えば10ミリ秒周期)で実施される。
ステップS101では、コントローラ14は、車速センサ15が検出した車速Vを読み込み、ステップS102に移行する。
ステップS102では、コントローラ14は、検出された車速Vが所定値V1よりも小さいか否かを判定する。
パーキング装置130は、車両がある程度低速(車速V0)になって、セレクトレバーがPレンジにセレクト操作されたときに、パーキングポール132の凸部132aがパーキングギヤ131の歯溝131bに噛合するように構成されている。パーキングギヤ131の歯131aの位相同期制御は、パーキングギヤ131とパーキングポール132とが噛合する前に実行する必要があるので、所定値V1は車速V0よりも大きい値に設定される。
そして、車速Vが所定値V1よりも小さい場合は、パーキングギヤ131の歯131aの位相を同期すべく、ステップS103に移る。
これに対して、車速Vが所定値V1よりも大きい場合は、パーキングギヤ131の歯131aの位相を同期することなく、ステップS105に移る。ステップS105では、コントローラ14はパーキング装置130の作動を禁止する。つまり、車両が高速で走行している場合に、運転者がセレクトレバーをPレンジに操作すると、高速で回転しているパーキングギヤ131にパーキングポール132の凸部132aが噛合しようとして、パーキング装置130の故障を招くおそれがある。これを防止するために、車速Vが所定値V1よりも大きい場合にパーキング装置130の作動を禁止する。
ステップS103では、コントローラ14は、パーキングギヤ131の歯131aの位相同期制御を実行し、ステップS104に移る。この位相同期制御の詳細については、図6を参照して後述する。
ステップS104では、コントローラ14はパーキング装置130の作動禁止を解除して、処理を終了する。パーキング装置130の作動禁止が解除されると、運転者がセレクトレバーをPレンジに操作したときに、パーキングポール132の凸部132aがパーキングギヤ131の歯溝131bに噛合するように作動する。
図6は、コントローラ14が実行する位相同期制御を示すフローチャートである。
ステップS131では、コントローラ14は、右後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARを算出し、ステップS132に移る。
ステップS132では、コントローラ14は、左後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALを算出し、ステップS133に移る。
ステップS133では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARと、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALとを比較する。そして、位相θARが位相θALよりも大きい場合にはステップS134に移り、位相θARが位相θALよりも小さい場合にはステップS136に移る。
ステップS134では、コントローラ14は、(3)式から位相差Δθを演算し、ステップS135に移る。
ステップS135では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(4)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御して、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。
このように、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも大きい場合には、右後輪側の駆動モータ13を位相差Δθだけ車両が減速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
一方、位相θARが位相θALよりも小さい場合には、ステップS136において、コントローラ14が(5)式に基づいて位相差Δθを演算し、ステップS137に移る。
ステップS137では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(6)式を満たすように、左後輪側の駆動モータ13を制御して、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。
このように、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも小さい場合には、左後輪側の駆動モータ13を位相差Δθだけ車両が減速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
以上により、本実施形態では、下記の効果を得ることができる。
本実施形態では、左右の後輪3を独立駆動する駆動モータ13にそれぞれ設置されるパーキング装置130において、パーキングギヤ131の歯溝131bにパーキングポール132の凸部132aが噛合する前に駆動モータ13を制御して、2つのパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。そのため、運転者がセレクトレバーをPレンジにセレクト操作したときに、左右の後輪3の回転を同時に固定することができ、安定して車両を停止することができる。
また、パーキングギヤ131の歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13を位相差分だけ減速方向に回転させて、歯131aの位相を同期させるので、パーキング操作前に車速を低下させることができ、パーキング操作時の安全性が向上する。
さらに、車速Vが所定値V1よりも小さいときに位相同期制御を実行するので、車両走行時に常に位相同期制御を実施する場合よりも、位相同期制御に起因するフィーリング性能の低下を抑制することができるとともに、駆動モータ13の負荷を小さくすることができる。
さらに、車速Vが所定値V1よりも大きい場合には、運転者がPレンジへセレクト操作しようとしても、パーキング装置130の作動を禁止するので、パーキング装置130の故障などが防止できる。
(第2実施形態)
第2実施形態について、図7を参照して説明する。
第2実施形態の電気自動車100の基本構成は、第1実施形態とほぼ同様であるが、パーキング装置130の作動が禁止された後の制御において相違する。つまり、パーキング装置130の作動禁止後に、車両の運転状態に基づいて制動制御をするようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
車両が徐行している場合など、車速が十分に低い場合であれば、パーキングギヤ131とパーキングポール132とが噛合するので、運転者がセレクトレバーをPレンジにセレクト操作したときに車両を停止させることができる。しかしながら、車速Vが所定値V1よりも大きいにもかかわらず、車両を停車させようと、運転者がセレクトレバーをPレンジにセレクト操作することも考えられる。そこで、第2実施形態では、このように車両が十分に減速していないときであっても、運転者がセレクトレバーをPレンジにセレクト操作した場合には、運転者の意図に応じて車両を停車するように制動制御する。
図7は、第2実施形態において、コントローラ14が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御は、エンジンの運転開始ともに一定周期(例えば10ミリ秒周期)で実施される。なお、ステップS101〜ステップS105までの制御は第1実施形態と同様であるので、説明の便宜上省略する。
ステップS105においてパーキング装置130の作動が禁止されると、ステップS106において、コントローラ14はセレクトレバーがPレンジにセレクト操作されたか否かを判定する。セレクトレバーがPレンジにセレクト操作された場合には、車両を制動すべく、ステップS107に移る。これに対して、セレクトレバーがPレンジにセレクト操作されていない場合には、パーキング装置130の作動を禁止したまま、処理を終了する。
ステップS107では、コントローラ14は、車両の速度が低下するように制動制御を実行して、処理を終了する。つまり、車両が高速で走行しており、パーキング装置130の作動が禁止されるときであっても、運転者がセレクトレバーをPレンジに操作した場合には、運転者に停車の意図があると判断して、強制的に車両を制動する。そして、制動制御によって、車両の速度Vが所定値V1よりも低くなると、パーキングギヤ131の歯131aの位相同期制御が実行され、その後パーキング装置130の作動禁止が解除される。
以上により、第2実施形態では、下記の効果を得ることができる。
高速走行時であっても、運転者がセレクトレバーをPレンジへセレクト操作する場合には、強制的に車両を制動し、車速が十分に低下した後に位相同期制御を実行して、パーキング装置130を作動させるので、左右の後輪3の回転を同時に固定することができるとともに、運転者の停車要求に早急に対応することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態について、図8を参照して説明する。
第3実施形態の電気自動車100の基本構成は、第1実施形態とほぼ同様であるが、位相同期制御を実行する時期において相違する。つまり、操舵機構2の舵角に基づいて位相同期制御するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
図8は、第3実施形態において、コントローラ14が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御は、エンジンの運転開始ともに一定周期(例えば10ミリ秒周期)で実施される。なお、ステップS101〜ステップS105の制御は第1実施形態と同様であるので、説明の便宜上省略する。
ステップS102において車速Vが所定値V1よりも小さい場合に、ステップS108で、コントローラ14は、操舵機構2のステアリングホイール2aがニュートラル位置にあるか否かを、舵角センサ2bの検出値に基づいて判定する。ここで、ステアリングホイール2aがニュートラル位置にあると判定された場合には、位相同期制御を実行するため、ステップS103に移る。また、操舵機構2が操作されており、ステアリングホイール2aがニュートラル位置にないと判定された場合には、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を同期させることなく処理を終了する。
ステップS103では、コントローラ14は位相同期制御を実行し、ステップS104に移り、処理を終了する。
したがって、第3実施形態では、ステアリングホイール2aがニュートラル位置にあって、車両が直進している場合にのみ、パーキングギヤ131の歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13を位相差分だけ減速方向に回転させて、2つのパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相を同期させる。
以上により、第3実施形態は下記の効果を得ることができる。
第3実施形態では、車両が直進している場合に位相同期制御を実行するので、運転者がセレクトレバーをPレンジにセレクト操作したときに、左右の後輪3の回転を同時に固定することができ、安定して車両を停止することができる。
また、車両の車輪に内外差が生じるコーナリング時においては、位相同期制御は実行されないので、コーナリング時に位相同期制御に起因するフィーリング性能の低下を招くことがない。
(第4実施形態)
第4実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。
第4実施形態の電気自動車100の基本構成は、第3実施形態とほぼ同様であるが、位相同期制御の仕方において相違する。つまり、コーナリング時にも位相同期制御するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
図9は、第4実施形態において、コントローラ14が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御は、エンジンの運転開始ともに一定周期(例えば10ミリ秒周期)で実施される。なお、ステップS101〜ステップS108の制御は第3実施形態と同様であるので、説明の便宜上省略する。
第4実施形態では、ステップS108でステアリングホイール2aがニュートラル位置にないと判定された場合に、ステップS109に移る。
ステップS109では、コントローラ14は、ステアリング操作時位相同期制御を実行する。このステアリング操作時位相同期制御については、図10を参照して説明する。
図10(A)は、コントローラ14が実行するステアリング操作時位相同期制御を示すフローチャートである。
ステップS191では、コントローラ14は、右後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARを算出し、ステップS192に移る。
ステップS192では、コントローラ14は、左後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALを算出し、ステップS193に移る。
ステップS193では、コントローラ14は、舵角センサ2bの検出値からステアリングホイール2aの舵角aを算出し、図10(B)のマップから位相同期速度係数Bを決定し、ステップS194に移る。
位相同期速度係数Bは、図10(B)に示すように、予めの実験などにより設定された舵角−位相同期速度係数特性マップに基づいて決定される。この位相同期速度係数Bは、舵角aが大きくなるにつれて小さくなり、0〜1の範囲で設定される値である。つまり、舵角aが大きく、車輪に生じる内外差が大きくなるような場合には、車両のフィーリング性能の低下を抑制するために位相同期速度係数Bは小さく設定される。
ステップS194では、コントローラ14は、右後輪側のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARと、左後輪側のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALとを比較する。そして、位相θARが位相θALよりも大きい場合にはステップS195に移り、位相θARが位相θALよりも小さい場合にはステップS197に移る。
ステップS195では、コントローラ14は、第1実施形態と同様の(3)式から位相差Δθを演算し、ステップS196に移る。
ステップS196では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(7)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御し、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。
このようにステアリング操作時位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも大きい場合に、舵角aによって定まる位相同期速度係数Bで位相差Δθを補正する。そして、その補正値に基づいて車両が減速する方向に右後輪側の駆動モータ13を駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
一方、ステップS197では、コントローラ14は、第1実施形態と同様の(5)式から位相差Δθを演算し、ステップS198に移る。
ステップS198では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(8)式を満たすように左後輪側の駆動モータ13を制御し、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。
このようにステアリング操作時位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも大きい場合に、舵角aによって定まる位相同期速度係数Bで位相差Δθを補正する。そして、その補正値に基づいて車両が減速する方向に左後輪側の駆動モータ13を駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
以上により、第4実施形態では、下記の効果を得ることができる。
舵角aが大きく、車輪に生じる内外差が大きくなるような場合には、位相同期速度係数Bは小さく設定されるので、歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13は、車両が減速する方向にゆるやかに駆動される。これにより、駆動モータ13が駆動する駆動量を低減するので、位相同期制御に起因する車両のフィーリング性能の低下を抑制することができる。
また、舵角aが小さく、車輪に生じる内外差も小さい場合には、位相同期速度係数Bは大きく設定されるので、歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13は、車両が減速する方向に速やかに駆動される。舵角aが小さいときには、駆動モータ13を速やかに駆動して、運転者の急なパーキング操作に備えることができる。
(第5実施形態)
第5実施形態について、図11を参照して説明する。
第5実施形態の電気自動車100の基本構成は、第1実施形態とほぼ同様であるが、位相同期制御を実施する時期において相違する。つまり、車両が停車する可能性がある場合に位相同期制御を実施するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
図11は、第5実施形態において、コントローラ14が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御は、エンジンの運転開始ともに一定周期(例えば10ミリ秒周期)で実施される。
ステップS110では、コントローラ14は、アクセルペダルセンサ16の検出値に基づいて、アクセルペダルが踏み込まれているか否かを判定する。アクセルペダルが踏み込まれている場合には、運転者が車両を停車する意思はないと判定してステップS111に移る。これに対して、アクセルペダルが踏み込まれていない場合には、運転者が車両を停車してパーキング操作をする可能性があると判定して、位相同期制御をすべく、ステップS103に移る。
ステップS111では、コントローラ14は、ブレーキペダルセンサ17の検出値に基づいて、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを判定する。ブレーキペダルが踏み込まれていない場合には、運転者が車両を停車する意思はないと判定してステップS112に移る。これに対して、ブレーキペダルが踏み込まれている場合には、運転者が車両を停車してパーキング操作をする可能性があると判定して、位相同期制御をすべく、ステップS103に移る。
ステップS112では、コントローラ14は、ポジションセンサ18の検出値に基づいて、セレクトレバーが駆動レンジ(Dレンジ、Rレンジ、1速レンジや2速レンジなど)からNレンジに切り換えられたか否かを判定する。セレクトレバーが駆動レンジにある場合には、運転者が車両を停車する意思はないと判定して、処理を終了する。これに対して、セレクトレバーがNレンジにある場合には、運転者が車両を停車してパーキング操作をする可能性があると判定して、位相同期制御をすべく、ステップS103に移る。
ステップS103では、コントローラ14は位相同期制御を実行する。ステップS103での位相同期制御は、第1実施形態のステップS103における位相同期制御と同様であるので、説明の便宜上省略する。
以上により、第5実施形態では、下記の効果を得ることができる。
アクセルペダルセンサ16やブレーキペダルセンサ17、ポジションセンサ18の検出値に基づいて、運転者が車両を停車してパーキング操作をする可能性がある場合に、位相同期制御を実施する。そのため、運転者の急なパーキング操作に備えることができ、Pレンジにセレクト操作された場合に左右の後輪3の回転を同時に固定することができる。
(第6実施形態)
第6実施形態について、図12を参照して説明する。
第6実施形態の電気自動車100の基本構成は、第1実施形態とほぼ同様であるが、位相同期制御を実施する時期において相違する。つまり、車両の減速度に基づいて所定値V1を決定するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
図12(A)は、第6実施形態において、コントローラ14が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御は、エンジンの運転開始ともに一定周期(例えば10ミリ秒周期)で実施される。
ステップS113では、コントローラ14は、加速度センサ19の検出値に基づいて減速度αを算出し、ステップS114に移行する。
ステップS114では、コントローラ14は、検出された減速度αに基づいて、位相同期制御の開始時期の基準となる車速の所定値V1を決定し、ステップS101に移る。所定値V1は、図12(B)に示すように、予めの実験などにより設定されたマップに基づいて決定される。この所定値V1は、減速度αが大きくなるにつれて大きくなる値である。
ステップS101では、コントローラ14は、車速センサ15が検出した車速Vを読み込み、ステップS404に移行する。
ステップS102では、コントローラ14は、検出された車速Vが、ステップS702で決定された所定値V1よりも小さいか否かを判定する。
車速Vが所定値V1よりも小さい場合は、位相同期制御を実行すべくステップS705に移る。これに対して、車速Vが所定値V1よりも大きい場合は、位相同期制御をすることなく、処理を終了する。
ステップS103では、コントローラ14は位相同期制御を実行し、処理を終了する。ステップS103での位相同期制御は、第1実施形態のステップS103における位相同期制御と同様であるので、説明の便宜上省略する。
以上により、第6実施形態では、下記の効果を得ることができる。
車両の減速度αが大きく、まもなく車両が停車してパーキング操作される可能性がある場合には、所定値V1は大きく設定されるので、車速がある程度高いときから位相同期制御を開始することができ、運転者の急なパーキング操作に備えることができる。
また、車両の減速度αが小さく、車両が停車するまでに余裕がある場合には、所定値V1は小さく設定されるので、車速が十分に低下したときから位相同期制御を開始することができ、パーキング操作時の安全性が向上する。
(第7実施形態)
第7実施形態について、図13を参照して説明する。
第7実施形態の電気自動車100の基本構成は、第1実施形態とほぼ同様であるが、位相同期制御の仕方において相違する。つまり、位相同期時の駆動モータ13の駆動量が小さくなるように制御するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
第1実施形態では、パーキングギヤ131の歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13を位相差分だけ車両の減速方向に回転させて、歯131aの位相を同期させる。したがって、例えば、右後輪側のパーキングギヤ131の位相θARが5°、左後輪側のパーキングギヤ131の位相θALが25°であって、位相差Δθが20°である場合には、左後輪側の駆動モータ13を位相差Δθ=20°だけ車両が減速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
しかしながら、上記のように位相差Δθがピッチ角度Nの1/2(本実施形態では30°/2=15°)よりも大きい場合には、右後輪側の駆動モータ13を10°だけ車両が減速する方向に駆動することによっても、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させることができ、このように制御する方が位相同期時の駆動モータ13の駆動量は小さくなる。
第7実施形態では、上述の通り、位相同期時の駆動モータ13の駆動量が最小となるように制御する。図13は、第7実施形態の位相同期制御を示すフローチャートを示し、第1実施形態の図6に置き換わるものである。
ステップS231では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARが0°のときの、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALを左後輪側の回転検出器38の検出値に基づいて算出し、ステップS232に移る。
ステップS232では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALが(9)式を満たしているか否かを判定する。
そして、位相θALが(9)式を満たす場合にはステップS233に移り、そうでない場合にはステップS235に移る。
ステップS233では、コントローラ14は、(10)式に基づいて位相差Δθを算出し、ステップS234に移る。
ステップS234では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が、第1実施形態の(3)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御して、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。このように、左後輪側の位相θALがピッチ角度Nの1/2よりも大きい場合には、右後輪側の駆動モータ13を、ピッチ角度Nから位相θALを減算した分だけ、車両が減速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
一方、左後輪側の位相θALがピッチ角度Nの1/2よりも小さい場合には、ステップS235において、コントローラ14が(11)式に基づいて位相差Δθを演算し、ステップS236に移る。
ステップS236では、コントローラ14は、第1実施形態の(6)式を満たすように、左後輪側の駆動モータ13を制御して、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。このように、左後輪側の位相θALがピッチ角度Nの1/2よりも小さい場合には、左後輪側の駆動モータ13を、位相θALθだけ、車両が減速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
以上により、第7実施形態では、下記の効果を得ることができる。
第7実施形態によれば、位相同期時の駆動モータ13の駆動量が小さくなるので、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させることができるだけでなく、位相同期時の車両のフィーリング性能の悪化を抑制することもできる。
なお、この第7実施形態は、第1実施形態と同様の位相同期制御する他の実施形態に適用することができる。
(第8実施形態)
第8実施形態について、図14及び図15を参照して説明する。
第8実施形態の電気自動車100の基本構成は、第1実施形態とほぼ同様であるが、位相同期制御の時期において相違する。つまり、車両が登坂路を走行している場合に位相同期制御を実行するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
図14は、第8実施形態において、コントローラ14が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御は、エンジンの運転開始ともに一定周期(例えば10ミリ秒周期)で実施される。
ステップS301では、コントローラ14は、車両が登坂路を走行しているか否かを判定する。車両が登坂路を走行しているか否かは、車両の姿勢を検出する車両姿勢センサや加速度センサ19などの検出値に基づいて判定するようにすればよい。そして、車両が登坂路を走行していると判定した場合はステップS302に移り、車両が登坂路以外の道路(平地など)を走行していると判定した場合はステップS303に移る。
ステップS302では、コントローラ14は、登坂路位相同期制御を実行し、処理を終了する。この登坂路位相同期制御については、図15を参照して後述する。
ステップS303では、コントローラ14は、第1実施形態のステップS103で実行される位相同期制御と同様の位相同期制御を実行して処理を終了する。
図15は、コントローラ14が実行する登坂路位相同期制御を示すフローチャートである。
ステップS321では、コントローラ14は、右後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARを算出し、ステップS322に移る。
ステップS322では、コントローラ14は、左後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALを算出し、ステップS323に移る。
ステップS323では、コントローラ14は、右後輪側のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARと、左後輪側のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALとを比較する。そして、位相θARが位相θALよりも大きい場合にはステップS324に移り、位相θARが位相θALよりも小さい場合にはステップS326に移る。
ステップS324では、コントローラ14は、第1実施形態と同様の(3)式から位相差Δθを演算し、ステップS325に移る。
ステップS325では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(12)式を満たすように左後輪側の駆動モータ13を制御し、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。
このように登坂路位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも大きい場合に、左後輪側の駆動モータ13を位相差Δθだけ車両が加速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
一方、位相θARが位相θALよりも小さい場合には、ステップS326において、コントローラ14は、第1実施形態と同様の(5)式から位相差Δθを演算し、ステップS327に移る。
ステップS327では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(13)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御し、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。
このように登坂路位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも小さい場合に、右後輪側の駆動モータ13を位相差Δθだけ加速方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
第8実施形態では、上述の通り、車両が登坂路を走行している場合に登坂路位相同期制御を実行し、車両が登坂路以外の道路を走行している場合に平地位相同期制御を実行して、パーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相が一致するように制御する。
以上により、第8実施形態では、下記の効果を得ることができる。
第8実施形態では、第1実施形態と同様に、左右の後輪3を独立して駆動する駆動モータ13にそれぞれ設けられるパーキング装置130において、車両走行中に駆動モータ13を制御して、パーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。そのため、運転者がセレクトレバーをPレンジに操作したときに、左右の後輪3の回転を同時に固定することができ、安定して車両を停止することができる。
また、車両が登坂路を走行している場合には、パーキングギヤ131の歯131aの位相が遅れているパーキング装置側の駆動モータ13を位相差分だけ加速方向に回転させるので、登坂路走行時の減速感を緩和することができ、登坂路走行時のフィーリング性能の低下を抑制することができる。
(第9実施形態)
第9実施形態について、図16を参照して説明する。
第9実施形態の電気自動車100の基本構成は、第8実施形態とほぼ同様であるが、登坂路位相同期制御の仕方において相違する。つまり、登坂路位相同期制御において位相同期時の駆動モータ13の駆動量が小さくなるように制御するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
第9実施形態では、第7実施形態と同様の原理に基づいて、登坂路位相同期時の駆動モータ13の駆動量が小さくなるように制御する。図16は、第9実施形態の登坂路位相同期制御を示すフローチャートを示し、第8実施形態の図15に置き換わるものである。
ステップS421では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARが0°のときの、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALを、左後輪側の回転検出器38の検出値に基づいて算出し、ステップS422に移る。
ステップS422では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALが、第7実施形態で示した(9)式を満たしているか否かを判定する。そして、位相θALが(9)式を満たす場合にはステップS423に移り、そうでない場合にはステップS425に移る。
ステップS423では、コントローラ14は、第7実施形態で示した(10)式に基づいて位相差Δθを算出し、ステップS424に移る。
ステップS424では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が、第8実施形態で示した(12)式を満たすように左後輪側の駆動モータ13を制御して、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。このように、左後輪側の位相θALがピッチ角度Nの1/2よりも大きい場合には、左後輪側の駆動モータ13を、ピッチ角度Nから位相θALを減算した分だけ、車両が加速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
一方、左後輪側の位相θALがピッチ角度Nの1/2よりも小さい場合には、ステップS425において、コントローラ14が、第7実施形態で示した(11)式に基づいて位相差Δθを演算し、ステップS426に移る。
ステップS426では、コントローラ14は、第8実施形態の(13)式を満たすように、右後輪側の駆動モータ13を制御して、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。このように、左後輪側の位相θALがピッチ角度Nの1/2よりも小さい場合には、右後輪側の駆動モータ13を、位相θALだけ、車両が加速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
以上により、第9実施形態では、下記の効果を得ることができる。
第9実施形態によれば、位相同期時の駆動モータ13の駆動量が第7実施形態よりも小さくなるので、登坂路走行時の減速感を緩和することができるだけでなく、位相同期制御に起因する車両のフィーリング性能の低下を抑制することもできる。
(第10実施形態)
第10実施形態について、図17及び図18を参照して説明する。
第10実施形態の電気自動車100の基本構成は、第1実施形態とほぼ同様であるが、位相同期制御の仕方において相違する。つまり、車両の減速度αに基づいて位相同期速度を変更するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
図17は、第10実施形態において、コントローラ14が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御は、エンジンの運転開始ともに一定周期(例えば10ミリ秒周期)で実施される。
ステップS501では、コントローラ14は、加速度センサ19の検出値に基づいて車両減速度αを算出し、ステップS502に移行する。
ステップS502では、コントローラ14は、車両の減速度αに基づいて、車両が減速中であるか否かを判定する。車両が減速している場合にはステップS503に移り、車両が減速中していない場合には位相同期制御を実行せずに処理を終了する。
ステップS503では、コントローラ14は、減速時位相同期制御を実行する。この減速時位相同期制御の詳細については、図18を参照して説明する。
図18(A)は、コントローラ14が実行する減速時位相同期制御を示すフローチャートである。
ステップS531では、コントローラ14は、右後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARを算出し、ステップS532に移る。
ステップS532では、コントローラ14は、左後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALを算出し、ステップS533に移る。
ステップS553では、コントローラ14は、車両減速度αに基づいて位相同期速度係数Cを決定し、ステップS554に移る。
位相同期速度係数Cは、図18(B)に示すように、予めの実験などにより設定された減速度−位相速度係数特性マップに基づいて決定される。この位相同期速度係数Cは、減速度αが大きくなるにつれて大きくなり、0〜1の範囲で設定される値である。つまり、減速度αが大きく、まもなく車両が停車してパーキング操作される可能性がある場合には、位相同期速度係数Cは大きく設定される。また、減速度αが小さく、車両が停車するまでに余裕がある場合には、位相同期速度係数Cは小さく設定される。
ステップS534では、コントローラ14は、右後輪側のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARと、左後輪側のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALとを比較する。そして、位相θARが位相θALよりも大きい場合にはステップS535に移り、位相θARが位相θALよりも小さい場合にはステップS537に移る。
ステップS535では、コントローラ14は、第1実施形態と同様の(3)式から位相差Δθを演算し、ステップS536に移る。
ステップS536では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(14)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御し、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。
このように減速時位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも大きい場合に、減速度αによって定まる位相同期速度係数Cで位相差Δθを補正する。そして、その補正値に基づいて車両が減速する方向に右後輪側の駆動モータ13を駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
一方、ステップS537では、コントローラ14は、第1実施形態と同様の(5)式から位相差Δθを演算し、ステップS538に移る。
ステップS538では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(15)式を満たすように左後輪側の駆動モータ13を制御し、左右両側のパーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させて、処理を一旦抜ける。
このように減速時位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも小さい場合に、減速度αによって定まる位相同期速度係数Cで位相差Δθを補正する。そして、その補正値に基づいて車両が減速する方向に左後輪側の駆動モータ13を駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
以上により、第10実施形態では、下記の効果を得ることができる。
車両の減速度が小さい場合には、車両が停車するまである程度の時間的余裕があり、位相同期速度係数Cは小さく設定される。そのため、歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13の駆動量は低減し、位相が徐々に同期するように制御されるので、位相同期制御に起因する車両のフィーリング性能の低下を抑制することができる。
また、車両の減速度が大きい場合には、まもなく車両が停車してパーキング操作される可能性があり、位相同期速度係数Cは大きく設定される。そのため、歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13の駆動量が増大し、車両が減速する方向に速やかに駆動されるので、運転者の急なパーキング操作に備えることができる。
(第11実施形態)
第11実施形態について、図19及び図20を参照して説明する。
第11実施形態の電気自動車100の基本構成は、第1実施形態とほぼ同様であるが、位相同期制御の仕方において相違する。つまり、車両の減速度に基づいて位相同期制御を実行するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
図19は、第11実施形態において、コントローラ14が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御は、エンジンの運転開始ともに一定周期(例えば10ミリ秒周期)で実施される。
ステップS501では、コントローラ14は、加速度センサ19の検出値に基づいて車両の減速度αを算出し、ステップS502に移行する。
ステップS502では、コントローラ14は、車両減速度αに基づいて、車両が減速中であるか否かを判定する。車両が減速している場合にはステップS504に移り、車両が減速中していない場合には位相同期制御を実行せずに処理を終了する。
ステップS504では、コントローラ14は、車両減速度αが所定値α0よりも大きいか否かを判定する。車両減速度αが所定値α0よりも大きい場合には、まもなく車両が停車してパーキング操作される可能性があると判定し、ステップS505に移る。これに対して、車両減速度αが所定値α0よりも小さい場合には、車両が停車するまで余裕があると判定し、ステップS506に移る。
ステップS505では、コントローラ14は、第1実施形態のステップS103で実行される位相同期制御と同様の位相同期制御を実行し、処理を終了する。
車両が大きく減速する場合には、まもなく車両が停車してパーキング操作される可能性があるため、パーキングギヤ131の歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13を位相差分だけ減速方向に回転させて、歯131aの位相を同期させ、車速をさらに低下させてパーキング操作に備えることができる。
ステップS506では、コントローラ14は、小減速時位相同期制御を実行し、処理を終了する。この小減速時位相同期制御の詳細については、図20を参照して説明する。
図20は、コントローラ14が実行する小減速時位相同期制御を示すフローチャートである。
ステップS561では、コントローラ14は、右後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARを算出し、ステップS562に移る。
ステップS562では、コントローラ14は、左後輪側の駆動モータ13に設置される回転検出器38の検出値から左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALを算出し、ステップS563に移る。
ステップS563では、コントローラ14は、右後輪側のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARと、左後輪側のパーキング装置130のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALとを比較する。そして、位相θARが位相θALよりも大きい場合にはステップS544に移り、位相θARが位相θALよりも小さい場合にはステップS567に移る。
ステップS564では、コントローラ14は、第1実施形態と同様の(3)式から位相差Δθを演算し、ステップS565に移る。
ステップS565では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(16)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御し、ステップS566に移る。
ステップS566では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(17)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御して、一旦処理を抜ける。
このように、小減速時位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも大きい場合に、右後輪側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が減速する方向に駆動するとともに、左後輪側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が加速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
一方、ステップS567では、コントローラ14は、第1実施形態と同様の(5)式から位相差Δθを演算し、ステップS548に移る。
ステップS568では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(18)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御し、ステップS569に移る。
ステップS569では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が(19)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御して、一旦処理を抜ける。
このように、小減速時位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも小さい場合に、右後輪側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が加速する方向に駆動するとともに、左後輪側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が減速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
以上により、第11実施形態では、下記の効果を得ることができる。
第11実施形態では、車両の減速度αに基づいてパーキングギヤ131の歯131aの位相同期制御の仕方を変更する。
車両の減速度αが所定値α0よりも小さい場合には、車両が停車するまである程度の時間的余裕があるので、歯131aの位相が遅れているパーキング装置側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が加速する方向に駆動し、歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が減速する方向に駆動する。このように左右両側の駆動モータ13を同時に制御して、歯131aの位相を同期させるので、駆動モータ13が駆動する駆動量を低減することができ、位相同期時のフィーリング性能の悪化を抑制することができる。
また、車両の減速度αが所定値α0よりも大きい場合には、まもなく車両が停車してパーキング操作される可能性があるので、パーキングギヤ131の歯131aの位相が進んでいるパーキング装置側の駆動モータ13を位相差分だけ減速方向に駆動する。これにより、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を同期させるとともに、車速をさらに低下させてパーキング操作に備えることができる。
(第12実施形態)
第12実施形態について、図21を参照して説明する。
第12実施形態の電気自動車100の基本構成は、第11実施形態とほぼ同様であるが、小減速時位相同期制御の仕方において相違する。つまり、小減速時位相同期制御において位相同期時の駆動モータ13の駆動量が小さくなるように制御するようにしたもので、以下にその相違点を中心に説明する。
第12実施形態では、第7実施形態と同様の原理に基づいて、小減速時位相同期時の駆動モータ13の駆動量が小さくなるように制御する。図21は、第12実施形態の小減速時位相同期制御を示すフローチャートを示し、第11実施形態の図20に置き換わるものである。
ステップS661では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θARが0°のときの、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALを、左後輪側の回転検出器38の検出値に基づいて算出し、ステップS662に移る。
ステップS662では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相θALが、第7実施形態で示した(9)式を満たしているか否かを判定する。そして、位相θALが(9)式を満たす場合にはステップS643に移り、そうでない場合にはステップS666に移る。
ステップS663では、コントローラ14は、第7実施形態で示した(10)式に基づいて位相差Δθを算出し、ステップS664に移る。
ステップS664では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が、第11実施形態の(16)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御し、ステップS665に移る。
ステップS665では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が、第11実施形態の(17)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御して、一旦処理を抜ける。
このように、小減速時位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも大きい場合に、右後輪側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が減速する方向に駆動するとともに、左後輪側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が加速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
一方、ステップS666では、コントローラ14は、第7実施形態で示した(11)式に基づいて位相差Δθを演算し、ステップS667に移る。
ステップS667では、コントローラ14は、右後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が、第11実施形態の(18)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御し、ステップS668に移る。
ステップS668では、コントローラ14は、左後輪側のパーキングギヤ131の歯131aの位相が、第11実施形態の(19)式を満たすように右後輪側の駆動モータ13を制御して、一旦処理を抜ける。
このように、小減速時位相同期制御では、右後輪側の位相θARが左後輪側の位相θALよりも小さい場合に、右後輪側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が加速する方向に駆動するとともに、左後輪側の駆動モータ13を位相差Δθの1/2だけ車両が減速する方向に駆動して、両パーキングギヤ131の歯131aの位相を一致させる。
以上により、第12実施形態では、下記の効果を得ることができる。
第12実施形態によれば、位相同期時の駆動モータ13の駆動量が第11実施形態よりも小さくなるので、位相同期制御に起因する車両のフィーリング性能の低下をさらに抑制することができる。
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
例えば、第1実施形態から第12実施形態のパーキング装置130では、図22に示すように、パーキングロッド133の後端側ロッド133bに電動アクチュエータ200を設置するようにしてもよい。この場合には、セレクトレバーがPレンジへセレクト操作されたときの信号を検出して、この検出信号に基づいて電動アクチュエータ200を作動させて、パーキングロッド133を矢印Aの方向に移動させる。
また、第1実施形態から第12実施形態のパーキング装置130では、図23に示すように、セレクトレバー300と左後輪側及び右後輪側のパーキング装置130のパーキングロッド133とを、リンク機構310で連結するように構成してもよい。このように構成されるパーキング装置130では、運転者がセレクトレバー300をPレンジへセレクト操作したときに、2つのパーキングロッド133を同時に矢印Aの方向に移動させることができる。
さらに、第1実施形態から第12実施形態のパーキング装置130は、図24に示すように、車輪(例えば、後輪3)のホイール内に配置され、後輪3を直接駆動する駆動モータ(以下「インホイールモータ」)13に適用してもよい。このインホイールモータ13では、ホイール3aの内側に配置されたケース34にステータ31が収納され、このステータ31に対して回転自在に設けられるロータ32のロータ軸33にパーキング装置130と回転検出器38とが設置される。このようにインホイールモータ13を構成することによっても、第1実施形態から第12実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、上記した各実施形態では、左右の後輪3を独立駆動可能な駆動モータ13を備えた電気自動車100について説明したが、左右の前輪1を独立駆動する駆動モータ13を有する電気自動車100においては、前輪1を駆動するそれぞれの駆動モータ13にパーキング装置130と回転検出器38とを備えるようにすればよい。