JP2008265560A - 車両挙動制御装置 - Google Patents

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尚大 横田
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Abstract

【課題】より確実にロールオーバーを抑制できる車両挙動制御装置を提供すること。
【解決手段】車両が有するECU60に、ロールオーバーが発生する危険性があるかを判定可能なロールオーバー判定部68と、ロールオーバーが発生する危険性があると判定された場合に車両の前輪の舵角を旋回方向と反対方向に操舵する制御であるカウンターステア制御が可能な舵角制御部66と、ロールオーバーが発生する危険性があると判定された場合に車両の加速制御が可能な駆動力制御部71とを設ける。これにより、ロールオーバーが発生する危険性があると判定された場合には、カウンターステア制御と加速制御とを行ない、旋回方向の反対方向のヨーレートを大きくすることができる。つまり、ロールオーバーさせようとする力を打ち消す方向の力を発生させることができる。この結果、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、車両挙動制御装置に関するものである。特に、この発明は、車両走行時における車両の挙動を制御することにより、車両走行時の安全性の向上を図ることのできる車両挙動制御装置に関するものである。
自動車等の車両は、路面に接地した車輪が回転することにより走行可能に設けられているが、この車輪の接地部は、走行中の車両における最下部に位置している。このため、車両の大部分は接地部よりも上方に位置しており、重心も接地部よりも高くなっている。このように、車両の重心は接地部よりも上方に位置しているため、車両の旋回時には、旋回による横方向の加速度である横Gにより、接地部付近が回転の軸となって重心が車両の旋回半径における外側方向に移動する方向の回転モーメントが発生する。このため、車両は旋回半径における外側方向に傾く。
また、このように旋回時等に発生する横Gは、車両を急旋回させることなどにより大きくなるが、横Gが大きくなった場合、車両の傾きも大きくなる。このため、横Gが大きくなり過ぎた場合、車両の傾きも大きくなり、この傾きにより旋回半径における内側に位置する車輪が路面から浮き上がり、車両は横転する虞がある。そこで、従来の車両挙動装置では、車両走行中の横転であるロールオーバーを抑制しているものがある。例えば、特許文献1に記載の操舵力制御装置では、横転傾向判断手段により横転傾向にあると判断されたとき、操舵力付加手段により横転を抑制する方向の操舵力を操向車輪に付加する。これにより、横転する虞がある場合に、素早く横加速度を減じることができるので、横転を適切に抑制することができる。
また、従来の車両制御装置では、車両走行中の車両のロールオーバーを、ブレーキ制御によって抑制しているものがある。例えば、特許文献2に記載の車両のロールオーバー抑制制御装置では、車両が過剰なロール状態であると検出されたら、旋回外輪への制動力を付与または増加させることにより、ロールオーバーを抑制している。つまり、旋回外輪に制動力を与えることにより、車両に旋回方向の反対方向への旋回モーメントを発生させ、これによりロールオーバーを抑制することができる。
さらに、特許文献2に記載の車両のロールオーバー抑制制御装置では、車両の左右輪がいずれも路面に接地していると判定された場合には、車両の左右輪のいずれにも制動力を付与している。これにより、レーンチェンジ時やS字カーブ走行時のように、車両の旋回方向が切り替わることにより制動すべき旋回外輪が切り替わる場合でも、4輪接地状態時に4輪に制動力が与えることができるので、車速を抑えることができ、ロールオーバーを抑制することができる。
特開2004−9812号公報 特開2005−104344号公報
しかしながら、従来の車両挙動制御装置のように、車両がロールオーバーしそうな場合に、ロールオーバーを抑制する方向の操舵力を操向車輪に付加したり(特許文献1)、旋回外輪への制動力を付与したり(特許文献2)することにより、危険度の小さいロールオーバーの場合は回避できるが、危険度が大きいロールオーバーは回避できない虞がある。つまり、ロールオーバーを抑制する方向の操舵力の操向車輪への付加や、旋回外輪への制動力の付与は、車両の横力を小さくすることを目的としているため、所定以上の横力が発生した場合におけるロールオーバーは、これらの制御によって回避することが困難なものとなっていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、より確実にロールオーバーを抑制できる車両挙動制御装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る車両挙動制御装置は、車両の旋回走行時にロールオーバーが発生する危険性があるかを判定可能なロールオーバー判定手段と、前記ロールオーバー判定手段で前記ロールオーバーが発生する危険性があると判定された場合に、前記車両が有する前輪の舵角を旋回方向の反対方向に操舵する制御であるカウンターステア制御が可能な舵角制御手段と、前記ロールオーバー判定手段で前記ロールオーバーが発生する危険性があると判定された場合に、前記車両が有する車輪の駆動力を大きくする制御である加速制御が可能な駆動力制御手段と、を備えることを特徴とする。
この発明では、ロールオーバー判定手段でロールオーバーが発生する危険性があると判定された場合には、カウンターステア制御と加速制御とを行なっている。ロールオーバーの危険性がある際に、このようにカウンターステア制御を行なうことにより、旋回方向の反対方向のヨーレートを発生させることができる。これにより、横Gを小さくすることができる。また、カウンターステアの状態で加速制御をすることにより、旋回方向の反対方向のヨーレートを、より大きくすることができ、横Gをより小さくすることができる。これにより、車両のロール量を小さくすることができる。つまり、ロールオーバーの危険性があると判定された場合に、カウンターステア制御と加速制御とを行なうことにより、ロールオーバーさせようとする力を打ち消す方向の力を発生させることができる。この結果、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
また、この発明に係る車両挙動制御装置は、さらに、前記ロールオーバーの危険性が大きいかを判定可能なロールオーバー危険度判定手段と、複数の前記車輪の制動力をそれぞれ独立して制御可能に設けられていると共に、前記ロールオーバー危険度判定手段でロールオーバーの危険性が小さいと判定された場合には、前記車両の旋回半径の方向における前記車両の外側に位置する前記車輪である旋回外輪に対して、前記旋回半径の方向における前記車両の内側に位置する前記車輪である旋回内輪よりも大きな制動力を与える制御である制動力制御が可能な制動制御手段と、を備えており、前記舵角制御手段は、前記ロールオーバー危険度判定手段でロールオーバーの危険性が大きいと判定された場合に前記カウンターステア制御をし、前記駆動力制御手段は、前記ロールオーバー危険度判定手段でロールオーバーの危険性が大きいと判定された場合に前記加速制御をすることを特徴とする。
この発明では、ロールオーバーの危険性が小さい場合には、制動力制御を行ない、ロールオーバーの危険性が大きい場合には、カウンターステア制御と加速制御とを行なっている。ロールオーバーの抑制は、制動力制御、またはカウンターステ制御と加速制御とで、共にロールオーバーを抑制することができるが、制動力制御よりも、カウンターステ制御と加速制御との方が、旋回方向の反対方向のヨーレートを大きくすることができる。また、カウンターステアの状態で制動力制御を行なった場合、車両は旋回中の車両軌跡が外側に膨らんでしまう虞がある。これらのため、ロールオーバーの危険性に応じて異なる制御を行なうことにより、ロールオーバーの状態に応じた適切な制御を行なうことができる。この結果、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
また、この発明に係る車両挙動制御装置は、さらに、前記車両の走行時のヨーレートを検出可能なヨーレート検出手段を備えており、前記カウンターステア制御及び前記加速制御から前記制動力制御に移行する際には、前記前輪の舵角の方向と前記旋回方向とが等しい場合、若しくは前記ヨーレート検出手段で検出した前記ヨーレートと前記前輪の舵角の方向とが等しい場合に前記制動力制御を開始することを特徴とする。
この発明では、カウンターステア制御及び加速制御から制動力制御に移行する際に、前輪の舵角の方向と旋回方向とが等しい場合、若しくはヨーレートと前輪の舵角の方向とが等しい場合に、制動力制御を開始しているので、車両軌跡が外側に膨らむことを抑制しつつロールオーバーを抑制できる。つまり、カウンターステアの状態で制動力制御を行なうと、車両は旋回中の車両軌跡が外側に膨らんでしまう虞があるため、カウンターステアが完了したことを確認した後、制動力制御を行なうことにより、車両軌跡が外側に膨らむことを抑制できる。また、カウンターステアを終了すると、ロールオーバーの危険性が高まるが、カウンターステアが終了した後、制動力制御を開始しているので、カウンターステアの終了時におけるロールオーバーを抑制できる。これらの結果、車両軌跡が外側に膨らむことを抑制すると共に、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
また、この発明に係る車両挙動制御装置は、さらに、前記制動制御手段が前記制動力制御を行なった際に前記車両が周囲の障害物に衝突する危険性があるかを判定する制動力制御時衝突判定手段を有しており、前記制動制御手段は、前記制動制御手段で前記制動力制御を行なった際に前記車両が周囲の前記障害物に衝突する危険性はないと前記制動力制御時衝突判定手段で判定した場合に前記制動力制御を行なうことを特徴とする。
この発明では、制動力制御を行なった際に車両が周囲の障害物に衝突する危険性はないと制動力制御時衝突判定手段で判定した場合にのみ制動力制御を行なうので、制動力制御に起因する車両と障害物との衝突を抑制できる。従って、車両と周囲の障害物との衝突を考慮しつつ、ロールオーバーを抑制することができる。この結果、旋回走行時の安全性の向上を図ることができる。
また、この発明に係る車両挙動制御装置は、前記カウンターステア制御と前記加速制御とを終了する際には、前記加速制御の終了後に前記カウンターステア制御を終了することを特徴とする。
この発明では、加速制御の終了後にカウンターステア制御を終了しているので、ロールオーバーを助長することなく制御を終了することができる。つまり、ロールオーバーに対する加速制御の影響は、前輪の舵角の方向に依存するため、加速制御を終了させないでカウンターステア制御を終了した場合、前輪の舵角が旋回方向となった状態で加速することになる。この場合、ロールオーバーを助長することになる。これに対し、カウンターステアは、加速の状態に関係なくロールオーバーを低減する作用を有するため、カウンターステア制御の終了前に加速制御を終了させても、ロールオーバーを抑制した状態を維持することができる。このため、カウンターステア制御と加速制御とを終了する際に、加速制御の終了後にカウンターステア制御を終了することにより、ロールオーバーを助長することなく制御を終了することができる。この結果、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
また、この発明に係る車両挙動制御装置は、さらに、前記車両が備える電源の電気容量が前記カウンターステア制御を行なうのに必要な容量であるかを判定する電源容量判定手段を有しており、前記舵角制御手段は、前記電源の電気容量が前記カウンターステア制御を行なうのに必要な容量であると前記電源容量判定手段で判定した場合に前記カウンターステア制御を行なうことを特徴とする。
この発明では、ロールオーバーを抑制する際において、電源の電気容量がカウンターステア制御を行なうのに必要な容量以上の場合のみカウンターステア制御を行なうので、より確実にカウンターステア制御を行なうことができる。つまり、ロールオーバーを抑制する際にカウンターステアの状態にした場合、車両軌跡は外側に膨らむ傾向にあるため、ロールオーバーを抑制するためのカウンターステアの状態はなるべく短時間の方が好ましい。このため、カウンターステア制御をする際における前輪の舵角を変化させる速度は、なるべく速くする必要がある。しかし、前輪の舵角を変化させる装置が電気的な作用で作動する場合、舵角を変化させる速度を速くすると、消費電力が大きくなる。
このため、電源の電気容量が不十分の場合、前輪の舵角を素早く変化させることができなくなる虞があり、カウンターステア制御を十分に行なうことができなくなる虞がある。この場合、カウンターステア制御の時間が長くなり、車両軌跡が大きく外側に膨らむ虞がある。従って、電源の電気容量が所定の容量未満の場合にはカウンターステア制御は行なわず、電源の電気容量が所定の容量以上の場合のみカウンターステア制御を行なうことにより、より確実にカウンターステア制御を行なうことができる。この結果、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
また、この発明に係る車両挙動制御装置は、さらに、前記カウンターステア制御と前記加速制御とを同時に行なう制御であるステア駆動力制御を前記舵角制御手段と前記駆動力制御手段とで行なった際に前記車両が周囲の障害物に衝突する危険性があるかを判定するステア駆動力制御時衝突判定手段を有しており、前記舵角制御手段は、前記舵角制御手段と前記駆動力制御手段とで前記ステア駆動力制御を行なった際に前記車両が周囲の前記障害物に衝突する危険性はないと前記ステア駆動力制御時衝突判定手段で判定した場合に前記カウンターステア制御を行なうことを特徴とする。
この発明では、ステア駆動力制御を行なった際に車両が周囲の障害物に衝突する危険性はないとステア駆動力制御時衝突判定手段で判定した場合にのみステア駆動力制御を行なうので、ステア駆動力制御に起因する車両と障害物との衝突を抑制できる。従って、車両と周囲の障害物との衝突を考慮しつつ、ロールオーバーを抑制することができる。この結果、旋回走行時の安全性の向上を図ることができる。
本発明に係る車両挙動制御装置は、より確実にロールオーバーを抑制することができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る車両挙動制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施例1に係る車両挙動制御装置が設けられた車両の概略図である。実施例1に係る車両挙動制御装置2を備える車両1は、内燃機関であるエンジン10を動力発生手段としており、エンジン10が発生した動力が自動変速機15を介して、車両1が有する車輪4のうち駆動輪として設けられる後輪8へ伝達されることにより走行可能になっている。この実施例1において、エンジン10はガソリンを燃料とするレシプロ式の火花点火式エンジンであるが、エンジン10はこれに限定されるものではない。エンジン10は、例えば、LPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)やアルコールを燃料とする火花点火式エンジンであってもよいし、いわゆるロータリー式の火花点火式エンジンであってもよいし、ディーゼル機関であってもよい。エンジン10は、車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)60によってエンジン回転数やトルク(出力)が制御される。
動力発生手段であるエンジン10は、車両1の進行方向における前側部分に搭載されており、自動変速機15、プロペラシャフト16、デファレンシャルギヤ17を介して後輪8を駆動する。また、この車両1は、エンジン10が車両1の進行方向における前側部分に搭載され、後輪8が駆動輪として設けられた、いわゆるFR(Front engine Rear drive)の駆動形式となっている。なお、実施例1に係る車両挙動制御装置2は、動力発生手段の動力が駆動輪へ伝達される車両1であれば、駆動形式に関わらず適用できる。また、エンジン10の回転を変速する変速機は自動変速機15以外のものでもよく、例えば、手動で変速をする手動変速機でもよい。
車両1が有する車輪4のうち後輪8は、このように駆動輪として設けられるのに対し、前輪5は車両1の操舵輪として設けられている。操舵輪である前輪5は、車両1の運転席に配設されるハンドル20によって操舵可能に設けられている。このハンドル20は、電動パワーステアリング装置であるEPS(Electric Power Steering)装置32に接続されており、このようにEPS装置32に接続されることにより、前輪5を操舵可能に設けられている。
詳しくは、ハンドル20は、車両1の旋回時等にハンドル操作をする際における回転軸である第1ステアリングシャフト33の一端に接続されており、第1ステアリングシャフト33の他端は、ハンドル操作に対する前輪5の舵角を制御可能な舵角制御装置31に接続されている。さらに、この舵角制御装置31には、第2ステアリングシャフト34が接続されており、第2ステアリングシャフト34における舵角制御装置31に接続されている側の端部の反対側に位置する端部は、EPS装置32に接続されている。
また、前輪5のうち車両1の進行方向における左側に位置する前輪5である左前輪6と、車両1の進行方向における右側に位置する前輪5である右前輪7とは、共にそれぞれの前輪5の近傍に設けられると共に各前輪5の車両1幅方向における内側方向に位置するナックルアーム36に接続されている。このナックルアーム36とEPS装置32とは、タイロッド35によって接続されている。つまり、左前輪6に接続されるナックルアーム36とEPS装置32、及び右前輪7に接続されるナックルアーム36とEPS装置32は、共に双方の間に位置するタイロッド35によって接続されている。
また、各車輪4の近傍には、油圧によって作動するホイールシリンダ41と、このホイールシリンダ41と組みになって設けられると共に車輪4の回転時には車輪4と一体となって回転するブレーキディスク42とが設けられている。さらに、車両1には、ホイールシリンダ41と油圧経路45によって接続され、ブレーキ操作時に、ホイールシリンダ41に作用させる油圧を制御するブレーキ油圧制御装置40が設けられている。このブレーキ油圧制御装置40は、各車輪4の近傍に設けられる各ホイールシリンダ41に対して、それぞれ独立して油圧の制御が可能に設けられている。これによりブレーキ油圧制御装置40は、複数の車輪4の制動力をそれぞれ独立して制御可能に設けられている。
また、車両1には、車両1の運転席に運転者が座った状態における運転者の足元付近に、エンジン10の出力を調整する際に操作するアクセルペダル21と、走行中の車両1を制動する際に操作するブレーキペダル22とが併設されている。このうち、アクセルペダル21の近傍には、アクセルペダル21の開度を検出可能なアクセル開度検出手段であるアクセル開度センサ51が設けられている。また、ブレーキペダル22の近傍には、ブレーキペダル22のストロークを検出可能なブレーキストローク検出手段であるブレーキストロークセンサ52が設けられている。また、この車両1には、車両1の幅方向の加速度を検出可能なGセンサ53と、車両1の走行時のヨーレートを検出可能なヨーレート検出手段であるヨーレートセンサ54とが設けられている。
図2は、図1に示した車両挙動制御装置の要部構成図である。また、これらのアクセル開度センサ51、ブレーキストロークセンサ52、Gセンサ53、ヨーレートセンサ54、舵角制御装置31、ブレーキ油圧制御装置40、エンジン10及び自動変速機15は、車両1の各部を制御するECU60に接続されており、ECU60によって制御可能に設けられている。ECU60には、処理部61、記憶部78及び入出力部79が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU60に接続されているアクセル開度センサ51、ブレーキストロークセンサ52、Gセンサ53、ヨーレートセンサ54、舵角制御装置31、ブレーキ油圧制御装置40、エンジン10、自動変速機15は、入出力部79に接続されており、入出力部79は、これらのセンサ類等との間で信号の入出力を行なう。
また、記憶部78には、本実施例1に係る車両挙動制御装置2を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部78は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、処理部61は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、アクセル開度センサ51での検出結果よりアクセル開度を取得可能なアクセル操作取得手段であるアクセル開度取得部62と、ブレーキストロークセンサ52での検出結果よりブレーキペダル22のストローク量を取得可能な制動操作取得手段であるブレーキストローク量取得部63と、を有している。
また、処理部61は、エンジン10の運転状態を制御可能なエンジン制御手段であるエンジン制御部64と、ブレーキ油圧制御装置40を制御することにより、ホイールシリンダ41の作動状態を制御可能な制動制御手段であるブレーキ制御部65と、車両1の前後方向に対する前輪5の回転方向である舵角を制御可能に設けられており、当該舵角を車両1の旋回方向の反対方向に操舵する制御であるカウンターステア制御が可能な舵角制御手段である舵角制御部66と、を有している。
また、処理部61は、車両1の走行中における横方向、つまり車両1の幅方向の加速度である横Gを推定可能な横G推定手段である横G推定部67と、ロールオーバーが発生する危険性があるかを判定可能なロールオーバー判定手段であるロールオーバー判定部68と、ロールオーバーの危険度が大きいかを判定可能なロールオーバー危険度判定手段であるロールオーバー危険度判定部69と、制動力制御の開始許可判定が可能な駆動力制御開始許可判定手段である駆動力制御開始許可判定部70と、を有している。
また、処理部61は、車両1の駆動力の制御である駆動力制御が可能な駆動力制御手段である駆動力制御部71と、カウンターステア制御と駆動力制御とが同時に行なう制御であるステア駆動力制御が実施中であるかを判定するステア駆動力制御判定手段であるステア駆動力制御判定部72と、ロールオーバー時の制動力制御開始を許可するかを判定可能な制動力制御開始許可判定手段である制動力制御開始許可判定部73と、有している。
ECU60によって制御されるエンジン10や舵角制御装置31などの制御は、例えば、Gセンサ53などによる検出結果に基づいて、処理部61が前記コンピュータプログラムを当該処理部61に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じてエンジン10や舵角制御装置31などの作動部分を作動させることにより制御する。その際に処理部61は、適宜記憶部78へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このようにエンジン10などを制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU60とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
この実施例1に係る車両挙動制御装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の走行時には、エンジン10を運転させてエンジン10の動力を駆動輪である後輪8に伝達することにより走行する。詳しくは、エンジン10の運転中は、エンジン10が有するクランクシャフト(図示省略)の回転が自動変速機15に伝達され、自動変速機15で車両1の走行状態に適した変速比で変速される。自動変速機15で変速された回転は、プロペラシャフト16、デファレンシャルギヤ17を介して後輪8に伝達される。これにより、駆動輪である後輪8は回転し、車両1は走行する。
また、エンジン10の回転が後輪8に伝達されることにより走行をする車両1の車速は、アクセルペダル21を足で操作し、エンジン10の回転数や出力を調整することにより調整する。アクセルペダル21を操作した場合には、アクセルペダル21のストローク量、或いはアクセル開度が、アクセルペダル21の近傍に設けられるアクセル開度センサ51によって検出される。アクセル開度センサ51による検出結果は、ECU60の処理部61が有するアクセル開度取得部62に伝達されてアクセル開度取得部62で取得し、さらに、取得したアクセル開度が、ECU60の処理部61が有するエンジン制御部64に伝達される。エンジン制御部64は、アクセル開度取得部62で取得したアクセル開度センサ51やその他のセンサによる検出結果に基づいて、エンジン10を制御する。
また、車両1の走行中に、アクセルペダル21を戻すことによる速度の低下以上の低下速度で車速を低下させる場合には、ブレーキペダル22を踏むことによってブレーキをかける。このように、ブレーキペダル22を踏んで操作する場合には、ブレーキペダル22のストローク量が、ブレーキペダル22の近傍に設けられるブレーキストロークセンサ52によって検出される。ブレーキストロークセンサ52による検出結果は、ECU60の処理部61が有するブレーキストローク量取得部63で取得する。
ブレーキストローク量取得部63で取得したブレーキペダル22のストローク量は、ECU60の処理部61が有するブレーキ制御部65に伝達され、ブレーキ制御部65は、ブレーキストローク量取得部63から伝達されたストローク量に応じた制御信号をブレーキ油圧制御装置40に対して送信する。これにより、ブレーキ制御部65は、ブレーキストローク量取得部63で取得したブレーキペダル22のストローク量に応じた油圧を、ブレーキ油圧制御装置40で発生させる。
ブレーキ油圧制御装置40で発生させた油圧は、ブレーキ油圧制御装置40とホイールシリンダ41との間に設けられる油圧経路45を介してホイールシリンダ41に伝達され、ホイールシリンダ41はこの油圧によって作動する。ホイールシリンダ41が作動した場合には、ホイールシリンダ41は、当該ホイールシリンダ41と組みになって設けられ、且つ、車輪4の回転時に一体となって回転するブレーキディスク42の回転速度を低下させる。これにより、車輪4の回転速度も低下し、車両1の速度が低下する。従って、足でブレーキペダル22を操作することにより、ホイールシリンダ41にはブレーキディスク42の回転速度を低下させる力であるブレーキ力が発生し、ブレーキディスク42の回転速度の低下を介して車輪4の回転速度を低下させ、走行中の車両1を制動することができる。
また、車両1を旋回させるなど車両1の進行方向を変化させる場合には、ハンドル操作をする。即ち、ハンドル20を、第1ステアリングシャフト33を回転軸として回転させる。ハンドル20を回転させることにより第1ステアリングシャフト33を回転させた場合、その回転は舵角制御装置31に入力される。第1ステアリングシャフト33の回転が入力された舵角制御装置31は、この第1ステアリングシャフト33からの入力、及びECU60の処理部61が有する舵角制御部66からの制御信号に応じて、第2ステアリングシャフト34に出力する。つまり、舵角制御装置31は、第1ステアリングシャフト33の回転が入力された際に、舵角制御部66からの制御信号に応じて相対角を変化させて第2ステアリングシャフト34に出力し、第2ステアリングシャフト34を回転させる。
第2ステアリングシャフト34の回転はEPS装置32に伝達され、EPS装置32は、タイロッド35を介してナックルアーム36に押力、または引張り力を伝達することにより、ナックルアーム36を回動させる。ナックルアーム36は前輪5に接続されているので、ナックルアーム36が回動した場合、この回動と共に前輪5も回動する。これにより、前輪5の回転方向は車両1の前後方向とは異なる方向になるため、車両1の進行方向は変化し、車両1は旋回等を行なう。
車両1が旋回した場合、車両1には遠心力が発生するため、遠心力によって車両1の幅方向の加速度、即ち横方向の加速度である横Gが発生する。このように車両1の旋回中に発生する横Gは、Gセンサ53で検出し、検出結果をECU60の処理部61が有する横G推定部67で取得して当該横G推定部67で横Gの大きさを推定する。
横G推定部67で推定した横Gは、ECU60の処理部61が有するロールオーバー判定部68でロールオーバーの危険性があるかの判定をする所定値と比較し、さらに、ロールオーバー危険度判定部69で、ロールオーバーの危険性が大きいかの判定をする所定値と比較する。これらの判定により、ロールオーバーの危険性が大きいと判定した場合には、舵角制御部66でカウンターステア制御を行なう。このようにカウンターステア制御を行なう場合には、舵角制御部66から舵角制御装置31に対してカウンターステア制御の制御信号を送信する。
舵角制御部66からの制御信号を受けた舵角制御装置31は、第2ステアリングシャフト34を当該第2ステアリングシャフト34の中立位置よりも、現在の第1ステアリングシャフト33の回転方向の反対方向に回転させる。つまり、第2ステアリングシャフト34の中立状態に対する回転角度が、第1ステアリングシャフト33の中立状態に対する回転角度の反対方向になるように第2ステアリングシャフト34を回転させる。
第2ステアリングシャフト34が回転すると、この回転はEPS装置32に伝達され、第2ステアリングシャフト34の回転に応じて作動する。即ち、EPS装置32は、第2ステアリングシャフト34の回転角度に応じてタイロッド35を介してナックルアーム36に押力や引張り力を伝達する。これにより、ナックルアーム36は回動し、この回動と共に前輪5も回動する。
このように、前輪5は、第1ステアリングシャフト33の回転方向の反対方向に回転した第2ステアリングシャフト34に応じて回動するため、通常走行時にハンドル20を回転させた場合における前輪5の回動方向の反対方向に回動する。車両1の旋回時は、ハンドル20は旋回方向に回転させているため、このようにハンドル20の回転方向の反対方向に回動する前輪5は、車両1の旋回方向の反対方向に回動する。即ち、カウンターステア状態になる。
車両1の旋回走行時においてロールオーバーの危険性が大きい場合に、前輪5の舵角をカウンターステアにすると、車両1には旋回方向の反対方向のヨーレートが発生し、旋回半径の径方向における外方に移動する。これにより横Gが小さくなる。
カウンターステア制御を行なった後は、ECU60の処理部61が有する駆動力制御開始許可判定部70で、前輪5がカウンターステア状態になり、車両1がカウンターステアに応じた運動をしているかを判定する。この判定により、前輪5がカウンターステア状態になり、車両1がこれに応じた運動をしていると判定された場合には、駆動力制御を行なう。
この駆動力制御は、ECU60の処理部61が有する駆動力制御部71で行ない、具体的には、駆動力制御部71により、車両1が有する車輪4の駆動力を大きくする制御である加速制御を行なう。カウンターステアを行ない、旋回方向の反対方向のヨーレートが発生した状態で、このように加速制御を行なうと、車両1はより旋回方向の反対方向に向きを変え、横Gはより小さくなる。換言すると、旋回走行中の車両1の前輪5をカウンターステアにした状態で加速制御を行なうことにより、ロールオーバーの反対方向の力が与えられる。このため、車両1のロール量は低減し、ロールオーバーの危険性は小さくなる。
また、このようにカウンターステア制御と車両1の加速制御とを同時に実施している場合において、これらの制御を終了する際には、加速制御の終了後にカウンターステア制御を終了する。さらに、これらの制御の終了後には、ECU60の処理部61が有するブレーキ制御部65よりブレーキ油圧制御装置40に対して制御信号を送信し、車両1の旋回半径の方向において車両1の外側に位置する車輪4である旋回外輪に対して、車両1の旋回半径の方向において車両1の内側に位置する車輪4である旋回内輪よりも大きな制動力を与える。このように、旋回外輪に対して旋回内輪よりも大きな制動力を与えることにより、旋回外輪には旋回内輪よりも大きな減速力が発生する。このため、車両1には旋回方向の反対方向のヨーレートが発生し、ロール量が低減する。
図3は、本発明の実施例1に係る車両挙動制御装置の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例1に係る車両挙動制御装置2の制御方法、即ち、車両挙動制御装置2による処理手順について説明する。車両挙動制御装置2による処理手順では、まず、横Gを推定する(ステップST10)。この推定は、Gセンサ53の検出結果が、ECU60の処理部61が有する横G推定部67に伝達され、この横G推定部67で横Gの大きさを推定する。次に、ロールオーバーの危険性があるかを判定する(ステップST20)。この判定は、横G推定部67で推定した横Gが、ECU60の処理部61が有するロールオーバー判定部68に伝達され、このロールオーバー判定部68で行なう。
ロールオーバー判定部68でロールオーバーの危険性があるかを判定する際には、横G推定部67で推定した横G(G_real)の絶対値(|G_real|)が、ロールオーバーの危険性を判定する閾値であるロールオーバー危険性判定閾値(G_th1)より大きいかを判定する。横Gの絶対値(|G_real|)が、ロールオーバー危険性判定閾値(G_th1)よりも大きい場合には、ロールオーバーの危険性があると判定し、横Gの絶対値(|G_real|)が、ロールオーバー危険性判定閾値(G_th1)以下の場合には、ロールオーバーの危険性はないと判定する。即ち、ロールオーバー判定部68は、(|G_real|>G_th1)の場合は、ロールオーバーの危険性があると判定し、(|G_real|≦G_th1)の場合はロールオーバーの危険性はないと判定する。
なお、ロールオーバー危険性判定閾値(G_th1)は、予めECU60の記憶部78に記憶されている。また、ロールオーバー危険性判定閾値は、設計諸元(トレッド・重心高)より導出される静的ロールオーバー限界横Gに対し、安全マージンをもって設定するのが望ましい。ロールオーバー判定部68での判定により、ロールオーバーの危険性はないと判定された場合には、この処理手順から抜け出る。
これに対し、ロールオーバー判定部68での判定により、ロールオーバーの危険性があると判定された場合には、次に、ロールオーバーの危険性が大きいかを判定する(ステップST30)。この判定は、ECU60の処理部61が有するロールオーバー危険度判定部69で行なう。
ロールオーバー危険度判定部69では、横G推定部67で推定した横Gの絶対値(|G_real|)が、車両1の制動力制御のみでロールオーバーを抑制できる横Gであるロールオーバー抑制可能横G(G_th2)以上であるかを判定する。横Gの絶対値(|G_real|)が、ロールオーバー抑制可能横G(G_th2)よりも大きい場合には、ロールオーバーの危険性は大きいと判定し、横Gの絶対値(|G_real|)が、ロールオーバー抑制可能横G(G_th2)以下の場合には、ロールオーバーの危険性は小さいと判定する。即ち、ロールオーバー危険度判定部は、(|G_real|>G_th2)の場合は、ロールオーバーの危険性は大きいと判定し、(|G_real|≦G_th2)の場合はロールオーバーの危険性は小さいと判定する。なお、ロールオーバー抑制可能横G(G_th2)は、予めECU60の記憶部78に記憶されている。
ロールオーバー危険度判定部69での判定により、ロールオーバーの危険性は大きいと判定された場合には、カウンターステア制御を行なう(ステップST40)。このカウンターステア制御は、ECU60の処理部61が有する舵角制御部66で行なう。舵角制御部66でカウンターステア制御を行なう場合には、舵角制御装置31に対してロールオーバーを抑制する方向に操舵するように、舵角制御部66によって舵角制御装置31を制御する。
このように、舵角制御部66でカウンターステア制御を行なう場合に目標となる操舵角は、車速や路面の摩擦係数より、旋回できる最小回転となる操舵角を算出する。具体的には、目標となる操舵角は、目標操舵角をδとし、車両1の運動特性がどのような特性かを示すパラメータであるスタビリティファクタをAとし、車速をVとし、車両1のホイールベースをLとし、路面摩擦係数をμとした場合に、下記の式(1)により導出する。このうち、スタビリティファクタA、ホイールベースLは、予めECU60の記憶部78に記憶されており、車速Vは、車両1の走行中に他の制御で用いられる車速の値を用いる。また、路面摩擦係数μは、Gセンサ53での検出結果より推定する。つまり、車両1が滑った状態が、Gセンサ53での検出結果と路面のμとが同じ値であると考えられるため、Gセンサ53の検出結果より推定する。
δ=(1+AV2)×{(Lμ)/V2}・・・(1)
目標操舵角δを算出した舵角制御部66は、操舵角を目標操舵角δにする制御信号を舵角制御装置31に送信する。舵角制御部66からの制御信号を受けた舵角制御装置31は、その制御信号に応じて作動し、第2ステアリングシャフト34、EPS装置32、タイロッド35、ナックルアーム36を介して、前輪5を回動させる。これにより、前輪5は目標操舵角δで回動する。
次に、駆動力制御開始を許可するかを判定する(ステップST50)。この判定は、ECU60の処理部61が有する駆動力制御開始許可判定部70で行なう。駆動力制御開始許可判定部70は、車両1の走行中における左右の旋回方向のうち、一方向を+の符号にし、他方向を−の符号にした場合に、実際の操舵角(δ_real)の符号がカウンターステア方向の符号と等しく、且つ、ヨーレートセンサで検出したヨーレート(yr_real)の符号が操舵角(δ_real)の符号と等しい場合に、駆動力制御開始を許可する判定をする。なお、駆動力制御開始許可判定部70による判定は、操舵角及びヨーレートの符号のみにより判定しているが、操舵角及びヨーレートの閾値に不感帯を設定したり、ヨーレートのみで判定したりしてもよい。
駆動力制御開始許可判定部70での判定により、駆動力制御開始を許可する判定をした場合には、次に駆動力制御をする(ステップST60)。この駆動力制御は、ECU60の処理部61が有する駆動力制御部71で行なう。駆動力制御部71による駆動力制御は、例えば、加速スリップが発生しそうな場合には、駆動輪の空転を抑制する制御であるトラクションコントロール制御をしたり、作動状態を任意に制御可能なLSD(Limited Slip Differential)を有する場合において片輪浮きが発生しそうな場合には、LSD制御を行なったりすることにより、車両1の加速制御をする。
なお、このような加速制御を実施することは、車両1の旋回走行の軌跡を旋回の径方向における外方に膨らませることになるため、ロールオーバーの危険性の変化状況に応じて、駆動力制御の方法を切り替えてもよい。例えば、ロールオーバーの危険性が増加傾向にある場合には、加速制御を実施し、ロールオーバーの危険性が減少傾向にある場合には、加速制御を実施しなくてもよい。駆動力制御部71により駆動力制御を行なった後は、この処理手順から抜け出る。
ロールオーバー危険度判定部69での判定により、ロールオーバーの危険性は小さいと判定された場合には、次に、カウンターステア制御と駆動力制御とが同時に行なわれる制御であるステア駆動力制御が実施中であるかを判定する(ステップST70)。この判定は、ECU60の処理部61が有するステア駆動力制御判定部72で行なう。ステア駆動力制御判定部72は、舵角制御部66がカウンターステア制御を行なっており、且つ、駆動力制御部71が駆動力制御を行なっている場合には、ステア駆動力制御が実施中であると判定する。
ステア駆動力制御判定部72での判定により、ステア駆動力制御が実施中であると判定された場合には、ステア駆動力制御の終了処理を行なう(ステップST80)。このステア駆動力制御の終了処理は、舵角制御部66によるカウンターステア制御を終了し、駆動力制御部71による駆動力制御、即ち加速制御を終了する。その際に、駆動力制御部71による加速制御を終了した後に、舵角制御部66によるカウンターステア制御を終了する。また、駆動力制御部71による加速制御、及び舵角制御部66によるカウンターステア制御の終了の際には、車両挙動の発生を抑えるため、制御量を徐変させる。
ステア駆動力制御の終了処理を行なった後は、次に、制動力制御開始を許可するかを判定する(ステップST90)。この判定は、ECU60の処理部61が有する制動力制御開始許可判定部73で行なう。制動力制御開始許可判定部73は、操舵角(δ_real)の符号が旋回方向の符号と等しく、且つ、ヨーレートセンサ54で検出したヨーレート(yr_real)の符号が操舵角(δ_real)の符号と等しい場合に、制動力制御開始を許可する判定をする。
なお、制動力制御開始許可判定部73による判定は、操舵角及びヨーレートの符号のみにより判定しているが、操舵角及びヨーレートの閾値に不感帯を設定したり、ヨーレートのみ、若しくは操舵角のみで判定したりしてもよい。制動力制御開始許可判定部73での判定により、制動力制御開始を許可しないと判定した場合には、この処理手順から抜け出る。
駆動力制御開始許可判定部70での判定により(ステップST50)、駆動力制御開始を許可しないと判定した場合、または、ステア駆動力制御判定部72での判定により(ステップST70)、ステア駆動力制御は実施中ではないと判定された場合、または、制動力制御開始許可判定部73での判定により(ステップST90)、制動力制御開始を許可するとの判定をした場合には、制動力制御を行なう(ステップST100)。この制動力制御は、ECU60の処理部61が有するブレーキ制御部65で行なう。この場合におけるブレーキ制御部65による制動力制御は、ブレーキ制御部65からブレーキ油圧制御装置40に対して制御信号を送信し、旋回外輪のみに制動力を与えるように、または、旋回外輪に旋回内輪よりも大きな制動力を与えるように、ブレーキ油圧制御装置40を作動させる。ブレーキ制御部65により制動力制御を行なった後は、この処理手順から抜け出る。
以上の車両挙動制御装置2は、車両1が旋回走行をしている最中に、ロールオーバー判定部68でロールオーバーが発生する危険性があると判定された場合には、カウンターステア制御と加速制御とを行なっている。ロールオーバーの危険性がある際に、このようにカウンターステア制御を行なうことにより、旋回方向の反対方向のヨーレートを発生させることができる。これにより、旋回走行時の横Gを小さくすることができる。また、カウンターステアの状態で加速制御をすることにより、旋回方向の反対方向のヨーレートを、より大きくすることができ、横Gをより小さくすることができる。これらのように、車両1の旋回走行中における横Gを小さくした場合、車両1をロールさせようとする力が小さくなるので、車両1のロール量を小さくすることができる。つまり、ロールオーバーの危険性があると判定された場合に、カウンターステア制御と加速制御とを行なうことにより、ロールオーバーさせようとする力を打ち消す方向の力を発生させることができる。この結果、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
また、ロールオーバーの危険性が大きいかをロールオーバー危険度判定部69で判定し、ロールオーバーの危険性が小さい場合には、制動力制御を行ない、ロールオーバーの危険性が大きい場合には、カウンターステア制御と加速制御とを行なっている。ロールオーバーの抑制は、制動力制御、またはカウンターステ制御と加速制御とで、共にロールオーバーを抑制することができるが、制動力制御よりも、カウンターステア制御と加速制御との方が、旋回方向の反対方向のヨーレートを大きくすることができる。また、カウンターステアの状態で制動力制御を行なった場合、車両1は旋回中の車両軌跡が外側に膨らんでしまう虞がある。これらのため、ロールオーバーの危険性に応じて異なる制御を行なうことにより、ロールオーバーの状態に応じた適切な制御を行なうことができる。この結果、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
また、カウンターステア制御及び加速制御から制動力制御に移行する際に、前輪5の舵角の方向と旋回方向とが等しい場合、若しくはヨーレートと前輪5の舵角の方向とが等しい場合に、制動力制御を開始しているので、車両軌跡が外側に膨らむことを抑制しつつロールオーバーを抑制できる。つまり、カウンターステアの状態で制動力制御を行なうと、旋回方向の反対方向のヨーレートが大きくなり過ぎる虞がある。この場合、車両1は旋回中の車両軌跡が外側に膨らんでしまう虞があるため、カウンターステアが完了したことを確認した後、制動力制御を行なうことにより、車両軌跡が外側に膨らむことを抑制できる。また、カウンターステアを終了すると、ロールオーバーの危険性が高まるが、カウンターステアが終了した後、制動力制御を開始しているので、カウンターステアの終了時におけるロールオーバーを抑制できる。これらの結果、車両軌跡が外側に膨らむことを抑制すると共に、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
また、加速制御の終了後にカウンターステア制御を終了しているので、ロールオーバーを助長することなく制御を終了することができる。つまり、ロールオーバーに対する加速制御の影響は、前輪5の舵角の方向に依存するため、加速制御を終了させないでカウンターステア制御を終了した場合、前輪5の舵角が旋回方向となった状態で加速することになる。この場合、横Gが大きくなり、ロールオーバーを助長することになる。これに対しカウンターステアは、加速の状態に関係なくロールオーバーを低減する作用を有するため、カウンターステア制御の終了前に加速制御を終了させても、ロールオーバーを抑制した状態を維持することができる。このため、カウンターステア制御と加速制御とを終了する際に、加速制御の終了後にカウンターステア制御を終了することにより、ロールオーバーを助長することなく制御を終了することができる。この結果、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
実施例2に係る車両挙動制御装置は、実施例1に係る車両挙動制御装置と略同様の構成であるが、現在のバッテリーの容量を考慮して制御している点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図4は、本発明の実施例2に係る車両挙動制御装置の要部構成図である。同図に示す車両挙動制御装置90は、実施例1に係る車両挙動制御装置2と同様にECU95にアクセル開度センサ51、ブレーキストロークセンサ52、Gセンサ53、ヨーレートセンサ54、舵角制御装置31、ブレーキ油圧制御装置40、エンジン10、自動変速機15が接続されており、さらに、舵角制御装置31やEPS装置32などの車両1(図1参照)に搭載される各電気部品の電源として備えられるバッテリー91が接続されている。
また、この実施例2に係る車両挙動制御装置90が有するECU95は、実施例1に係る車両挙動制御装置2と同様に処理部61と記憶部78と入出力部79とを有している。このうち、処理部61は、少なくともアクセル開度取得部62と、ブレーキストローク量取得部63と、エンジン制御部64と、ブレーキ制御部65と、舵角制御部66と、横G推定部67と、ロールオーバー判定部68と、ロールオーバー危険度判定部69と、駆動力制御開始許可判定部70と、駆動力制御部71と、ステア駆動力制御判定部72と、制動力制御開始許可判定部73と、有している。さらに、この処理部61は、バッテリー91に充電されている電気の容量が、カウンターステア制御を行なうのに必要な容量であるかを判定する電源容量判定手段である電源容量判定部96を有している。
この実施例2に係る車両挙動制御装置90は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の旋回走行中においてロールオーバーの危険性が大きい場合には、実施例1に係る車両挙動制御装置2ではカウンターステア制御を行なっているが、実施例2に係る車両挙動制御装置90では、バッテリー91に充電されている電気の容量である電源容量が所定の容量以上の場合のみカウンターステア制御を行なう。即ち、ロールオーバーの危険性が大きい場合において、電源容量が所定の容量以上の場合にはカウンターステア制御を行ない、電源容量が所定の容量以下の場合には、カウンターステア制御を行なわずに、実施例1に係る車両挙動制御装置2と同様な制動力制御を行なう。このように、制動力制御を行なうことにより、ロール量が低減し、ロールオーバーの危険性は低減する。
図5は、本発明の実施例2に係る車両挙動制御装置の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例2に係る車両挙動制御装置の制御方法、即ち、車両挙動制御装置による処理手順について説明する。車両挙動制御装置90による処理手順では、まず、Gセンサ53の検出結果より、ECU95が有する横G推定部67で横Gを推定する(ステップST10)。次に、横G推定部67で推定した横Gより、ECU95が有するロールオーバー判定部68でロールオーバーの危険性があるかを判定する(ステップST20)。この判定は、横G推定部67で推定した横Gの絶対値(|G_real|)とロールオーバー危険性判定閾値(G_th1)とを比較して判定する。
ロールオーバー判定部68での判定により、ロールオーバーの危険性があると判定された場合には、次に、ECU95が有するロールオーバー危険度判定部69によって、ロールオーバーの危険性が大きいかを判定する(ステップST30)。この判定は、横Gの絶対値(|G_real|)とロールオーバー抑制可能横G(G_th2)とを比較して判定する。
ロールオーバー危険度判定部69での判定により、ロールオーバーの危険性は大きいと判定された場合には、次に、電源容量はカウンターステア制御を可能な容量以上であるかを判定する(ステップST35)。この判定は、ECU95の処理部61が有する電源容量判定部96で行なう。電源容量判定部96では、現在のバッテリー91に充電されている電気の容量である電源容量が、舵角制御装置31やEPS装置32(図1参照)を作動させるのに十分な容量であるかにより、カウンターステア制御を可能な容量以上であるかを判定する。
この判定により、電源容量が舵角制御装置31やEPS装置32を作動させるのに十分な容量である場合は、カウンターステア制御を可能な容量以上であると判定し、舵角制御装置31やEPS装置32を作動させるのに十分な容量ではない場合には、カウンターステア制御を行なう容量としては不十分であると判定する。なお、この判定の基準となる電気の容量は、予め記憶部78に記憶されており、電源容量判定部96は、具体的には現在の電源容量と記憶部78に記憶された電気の容量とを比較することにより、現在の電源容量が、カウンターステア制御を可能な容量以上であるかを判定する。
電源容量判定部96での判定により、現在の電源容量が、カウンターステア制御を可能な容量以上であると判定された場合には、ECU95が有する舵角制御部66によってカウンターステア制御を行なう(ステップST40)。舵角制御部66でカウンターステア制御を行なった後は、次にECU95が有する駆動力制御開始許可判定部70で、駆動力制御開始を許可するかを判定する(ステップST50)。駆動力制御開始許可判定部70での判定により、駆動力制御開始を許可する判定をした場合には、次にECU95が有する駆動力制御部71で、駆動力制御をする(ステップST60)。駆動力制御部71により駆動力制御を行なった後は、この処理手順から抜け出る。
ロールオーバー危険度判定部69での判定により(ステップST30)、ロールオーバーの危険性は小さいと判定された場合、または、電源容量判定部96での判定により(ステップST35)、現在の電源容量は、カウンターステア制御を可能な容量未満であると判定された場合には、次に、ECU95が有するステア駆動力制御判定部72で、ステア駆動力制御が実施中であるかを判定する(ステップST70)。ステア駆動力制御判定部72での判定により、ステア駆動力制御が実施中であると判定された場合には、ステア駆動力制御の終了処理を行なう(ステップST80)。
ステア駆動力制御の終了処理を行なった後は、次に、ECU96が有する制動力制御開始許可判定部73で、制動力制御開始を許可するかを判定する(ステップST90)。制動力制御開始許可判定部73での判定により、制動力制御開始を許可しないと判定した場合には、この処理手順から抜け出る。
駆動力制御開始許可判定部70での判定により(ステップST50)、駆動力制御開始を許可しないと判定した場合、または、ステア駆動力制御判定部72での判定により(ステップST70)、ステア駆動力制御は実施中ではないと判定された場合、または、制動力制御開始許可判定部73での判定により(ステップST90)、制動力制御開始を許可するとの判定をした場合には、ECU95が有するブレーキ制御部65で制動力制御を行なう(ステップST100)。ブレーキ制御部65により制動力制御を行なった後は、この処理手順から抜け出る。
以上の車両挙動制御装置90は、ロールオーバーを抑制する際において、電源容量がカウンターステア制御を行なうのに必要な容量以上の場合のみカウンターステア制御を行なうので、より確実にカウンターステア制御を行なうことができる。つまり、ロールオーバーを抑制する際にカウンターステアの状態にした場合、車両軌跡は外側に膨らむ傾向にあるため、ロールオーバーを抑制するためのカウンターステアの状態はなるべく短時間の方が好ましい。このため、カウンターステア制御をする際における前輪5(図1参照)の舵角を変化させる速度は、なるべく速くする必要がある。しかし、舵角を変化させる速度を速くすると、舵角制御装置31やEPS装置32の消費電力が大きくなる。
このため、電源容量が不十分な場合、舵角制御装置31やEPS装置32の作動速度が低下して前輪5の舵角を素早く変化させることができなくなる虞があり、カウンターステア制御を十分に行なうことができなくなる虞がある。この場合、カウンターステア制御の時間が長くなり、車両軌跡が大きく外側に膨らむ虞がある。従って、電源容量が所定の容量未満の場合にはカウンターステア制御は行なわず、電源容量が所定の容量以上の場合のみカウンターステア制御を行なうことにより、より確実にカウンターステア制御を行なうことができる。この結果、より確実にロールオーバーを抑制することができる。
実施例3に係る車両挙動制御装置は、実施例1に係る車両挙動制御装置と略同様の構成であるが、ロールオーバーの抑制をする制御をした際に、車両が衝突する虞があるかを考慮して制御している点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図6は、本発明の実施例3に係る車両挙動制御装置の要部構成図である。同図に示す車両挙動制御装置100は、実施例1に係る車両挙動制御装置2と同様にECU105にアクセル開度センサ51、ブレーキストロークセンサ52、Gセンサ53、ヨーレートセンサ54、舵角制御装置31、ブレーキ油圧制御装置40、エンジン10、自動変速機15が接続されており、さらに、車両1(図1参照)の走行時に現在の車両1の位置情報及び車両1の周囲の状況を検出可能なカーナビゲーションシステム101が接続されている。
また、この実施例3に係る車両挙動制御装置100が有するECU101は、実施例1に係る車両挙動制御装置2と同様に処理部61と記憶部78と入出力部79とを有している。このうち、処理部61は、少なくともアクセル開度取得部62と、ブレーキストローク量取得部63と、エンジン制御部64と、ブレーキ制御部65と、舵角制御部66と、横G推定部67と、ロールオーバー判定部68と、ロールオーバー危険度判定部69と、駆動力制御開始許可判定部70と、駆動力制御部71と、ステア駆動力制御判定部72と、制動力制御開始許可判定部73と、有している。
さらに、この処理部61は、ステア駆動力制御を行なった際に、車両1が周囲の障害物に衝突する危険性があるかを判定するステア駆動力制御時衝突判定手段であるステア駆動力制御時衝突判定部106と、制動力制御を行なった際に、車両1が周囲の障害物に衝突する危険性があるかを判定する制動力制御時衝突判定手段である制動力制御時衝突判定部107と、を有している。
この実施例3に係る車両挙動制御装置100は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の旋回走行中においてロールオーバーの危険性が大きい場合には、実施例1に係る車両挙動制御装置2ではカウンターステア制御を行なっているが、実施例3に係る車両挙動制御装置100では、ステア駆動力制御を行なった際に、車両1が周囲の対向車やガードレールなどの障害物に衝突する危険性がない場合にのみカウンターステア制御を行なう。つまり、ロールオーバーの危険性が大きい場合において、ステア駆動力制御を行なった際に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性がない場合にはカウンターステア制御を行ない、車両1が周囲の障害物に衝突する危険性がある場合には、カウンターステア制御を行なわない。
さらに、実施例3に係る車両挙動制御装置100では、制動力制御を行なう場合においても、ステア駆動力制御を行なう場合と同様な判定をし、制動力制御を行なった際に、車両1が周囲の対向車やガードレールなどの障害物に衝突する危険性がない場合にのみ制動力制御を行なう。つまり、制動力制御によってロールオーバーを抑制する場合において、制動力制御を行なった際に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性がない場合には実施例1に係る車両挙動制御装置2と同様な制動力制御を行ない、車両1が周囲の障害物に衝突する危険性がある場合には、制動力制御を行なわずに、そのまま様子をみる。
図7は、本発明の実施例3に係る車両挙動制御装置の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例3に係る車両挙動制御装置100の制御方法、即ち、車両挙動制御装置100による処理手順について説明する。車両挙動制御装置100による処理手順では、まず、Gセンサ53の検出結果より、ECU105が有する横G推定部67で横Gを推定する(ステップST10)。次に、横G推定部67で推定した横Gより、ECU105が有するロールオーバー判定部68でロールオーバーの危険性があるかを判定する(ステップST20)。この判定は、横G推定部67で推定した横Gの絶対値(|G_real|)とロールオーバー危険性判定閾値(G_th1)とを比較して判定する。
ロールオーバー判定部68での判定により、ロールオーバーの危険性があると判定された場合には、次に、ECU105が有するロールオーバー危険度判定部によって、ロールオーバーの危険性が大きいかを判定する(ステップST30)。この判定は、横Gの絶対値(|G_real|)とロールオーバー抑制可能横G(G_th2)とを比較して判定する。
ロールオーバー危険度判定部69での判定により、ロールオーバーの危険性は大きいと判定された場合には、次に、ステア駆動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性があるかを判定する(ステップST36)。この判定は、ECU105の処理部61が有するステア駆動力制御時衝突判定部106で行なう。ステア駆動力制御時衝突判定部106では、カーナビゲーションシステム101で用いられる車両1周辺の画像情報、及びカーナビゲーションシステム101で用いられるGPS(Global Positioning System)(図示省略)による車両1の位置情報より、車両1が周囲の対向車やガードレールなどの障害物に衝突する危険性があるかを判定する。
具体的には、ステア駆動力制御をした際における車両軌跡を、横Gに応じて予めマップ(図示省略)を作成して記憶部78に記憶しておき、横G推定部67で推定した横Gをこのマップに照らし合わせることにより、ステア駆動力制御を行なった際における車両軌跡を導出する。ステア駆動力制御時衝突判定部106では、導出した車両軌跡とカーナビゲーションシステム101による車両1の周囲の情報とにより、導出した車両軌跡上にガードレールなどの障害物があるかを判定する。導出した車両軌跡上に障害物がある場合には、ステア駆動力制御時衝突判定部106はステア駆動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性があると判定し、導出した車両軌跡上に障害物がない場合には、ステア駆動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性はないと判定する。
ステア駆動力制御時衝突判定部106での判定により、ステア駆動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性はないと判定された場合には、ECU105が有する舵角制御部66によってカウンターステア制御を行なう(ステップST40)。舵角制御部66でカウンターステア制御を行なった後は、次にECU105が有する駆動力制御開始許可判定部70で、駆動力制御開始を許可するかを判定する(ステップST50)。駆動力制御開始許可判定部70での判定により、駆動力制御開始を許可する判定をした場合には、次にECU105が有する駆動力制御部71で、駆動力制御をする(ステップST60)。駆動力制御部71により駆動力制御を行なった後は、この処理手順から抜け出る。
ロールオーバー危険度判定部69での判定により(ステップST30)、ロールオーバーの危険性は小さいと判定された場合、または、ステア駆動力制御時衝突判定部106での判定により(ステップST36)、ステア駆動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性があると判定された場合には、次に、ECU105が有するステア駆動力制御判定部72で、ステア駆動力制御が実施中であるかを判定する(ステップST70)。ステア駆動力制御判定部72での判定により、ステア駆動力制御が実施中であると判定された場合には、ステア駆動力制御の終了処理を行なう(ステップST80)。
ステア駆動力制御の終了処理を行なった後は、次に、ECU105が有する制動力制御開始許可判定部73で、制動力制御開始を許可するかを判定する(ステップST90)。制動力制御開始許可判定部73での判定により、制動力制御開始を許可しないと判定した場合には、この処理手順から抜け出る。
駆動力制御開始許可判定部70での判定により(ステップST50)、駆動力制御開始を許可しないと判定した場合、または、ステア駆動力制御判定部72での判定により(ステップST70)、ステア駆動力制御は実施中ではないと判定された場合、または、制動力制御開始許可判定部73での判定により(ステップST90)、制動力制御開始を許可するとの判定をした場合には、次に、制動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性があるかを判定する(ステップST95)。この判定は、ECU105の処理部61が有する制動力制御時衝突判定部107で行なう。制動力制御時衝突判定部107では、ステア駆動力制御時衝突判定部106での判定と同様に、カーナビゲーションシステム101で用いられる車両1の周囲の画像情報、及びカーナビゲーションシステム101で用いられるGPSによる位置情報より、車両1が周囲の障害物に衝突する危険性があるかを判定する。
具体的には、制動力制御をした際における車両軌跡を、横Gに応じて予めマップ(図示省略)を作成して記憶部78に記憶しておき、横G推定部67で推定した横Gをこのマップに照らし合わせることにより、制動力制御をした際における車両軌跡を導出する。制動力制御時衝突判定部107では、導出した車両軌跡とカーナビゲーションシステム101による車両1の周囲の情報とにより、導出した車両軌跡上に障害物があるかを判定する。導出した車両軌跡上に障害物がある場合には、制動力制御時衝突判定部107は制動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性があると判定し、導出した車両軌跡上に障害物がない場合には、制動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性はないと判定する。制動力制御時衝突判定部107での判定により、制動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性があると判定された場合には、この処理手順から抜け出る。
これに対し、制動力制御時衝突判定部107での判定により、制動力制御時に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性はないと判定された場合には、ECU105が有するブレーキ制御部65で制動力制御を行なう(ステップST100)。ブレーキ制御部65により制動力制御を行なった後は、この処理手順から抜け出る。
以上の車両挙動制御装置100は、ステア駆動力制御を行なった際に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性はないとステア駆動力制御時衝突判定部106で判定した場合にのみステア駆動力制御を行なうので、ステア駆動力制御に起因する車両1と障害物との衝突を抑制できる。また、制動力制御を行なった際に車両1が周囲の障害物に衝突する危険性はないと制動力制御時衝突判定部107で判定した場合にのみ制動力制御を行なうので、制動力制御に起因する車両1と障害物との衝突を抑制できる。
つまり、ステア駆動力制御はカウンターステア制御を行なうことによりロールオーバーを抑制しており、制動力制御は旋回方向の反対方向のヨーレートを発生させることによりロールオーバーを抑制している。このため、いずれの場合も車両軌跡が外側に膨らみ易くなっているが、本実施例3に係る車両挙動制御装置100では、車両1が周囲の障害物に衝突する危険性がない場合にのみ、ステア駆動力制御や制動力制御を行なっている。従って、道幅が狭い状況や対向車がある状況でステア駆動力制御や制動力制御を行なうことにより車両軌跡が外側に膨らんで、車両1がガードレールや対向車などの障害物に衝突することを抑制することができる。この結果、車両1と周囲の障害物との衝突を考慮しつつ、ロールオーバーを抑制することができ、旋回走行時の安全性の向上を図ることができる。
以上のように、本発明に係る車両挙動制御装置は、ハンドルの状態に関わらず前輪の舵角を制御できる車両に有用であり、特に、ロールオーバーを抑制する場合に適している。
本発明の実施例1に係る車両挙動制御装置が設けられた車両の概略図である。 図1に示した車両挙動制御装置の要部構成図である。 本発明の実施例1に係る車両挙動制御装置の処理手順を示すフロー図である。 本発明の実施例2に係る車両挙動制御装置の要部構成図である。 本発明の実施例2に係る車両挙動制御装置の処理手順を示すフロー図である。 本発明の実施例3に係る車両挙動制御装置の要部構成図である。 本発明の実施例3に係る車両挙動制御装置の処理手順を示すフロー図である。
符号の説明
1 車両
2、90、100 車両挙動制御装置
4 車輪
5 前輪
6 左前輪
7 右前輪
8 後輪
10 エンジン
15 自動変速機
16 プロペラシャフト
17 デファレンシャルギヤ
20 ハンドル
21 アクセルペダル
22 ブレーキペダル
31 舵角制御装置
32 EPS装置
33 第1ステアリングシャフト
34 第2ステアリングシャフト
35 タイロッド
36 ナックルアーム
40 ブレーキ油圧制御装置
41 ホイールシリンダ
42 ブレーキディスク
45 油圧経路
51 アクセル開度センサ
52 ブレーキストロークセンサ
53 Gセンサ
54 ヨーレートセンサ
60、95、105 ECU
61 処理部
62 アクセル開度取得部
63 ブレーキストローク量取得部
64 エンジン制御部
65 ブレーキ制御部
66 舵角制御部
67 横G推定部
68 ロールオーバー判定部
69 ロールオーバー危険度判定部
70 駆動力制御開始許可判定部
71 駆動力制御部
72 ステア駆動力制御判定部
73 制動力制御開始許可判定部
78 記憶部
79 入出力部
91 バッテリー
96 電源容量判定部
101 カーナビゲーションシステム
106 ステア駆動力制御時衝突判定部
107 制動力制御時衝突判定部

Claims (7)

  1. 車両の旋回走行時にロールオーバーが発生する危険性があるかを判定可能なロールオーバー判定手段と、
    前記ロールオーバー判定手段で前記ロールオーバーが発生する危険性があると判定された場合に、前記車両が有する前輪の舵角を旋回方向の反対方向に操舵する制御であるカウンターステア制御が可能な舵角制御手段と、
    前記ロールオーバー判定手段で前記ロールオーバーが発生する危険性があると判定された場合に、前記車両が有する車輪の駆動力を大きくする制御である加速制御が可能な駆動力制御手段と、
    を備えることを特徴とする車両挙動制御装置。
  2. さらに、前記ロールオーバーの危険性が大きいかを判定可能なロールオーバー危険度判定手段と、
    複数の前記車輪の制動力をそれぞれ独立して制御可能に設けられていると共に、前記ロールオーバー危険度判定手段でロールオーバーの危険性が小さいと判定された場合には、前記車両の旋回半径の方向における前記車両の外側に位置する前記車輪である旋回外輪に対して、前記旋回半径の方向における前記車両の内側に位置する前記車輪である旋回内輪よりも大きな制動力を与える制御である制動力制御が可能な制動制御手段と、
    を備えており、
    前記舵角制御手段は、前記ロールオーバー危険度判定手段でロールオーバーの危険性が大きいと判定された場合に前記カウンターステア制御をし、
    前記駆動力制御手段は、前記ロールオーバー危険度判定手段でロールオーバーの危険性が大きいと判定された場合に前記加速制御をすることを特徴とする請求項1に記載の車両挙動制御装置。
  3. さらに、前記車両の走行時のヨーレートを検出可能なヨーレート検出手段を備えており、
    前記カウンターステア制御及び前記加速制御から前記制動力制御に移行する際には、前記前輪の舵角の方向と前記旋回方向とが等しい場合、若しくは前記ヨーレート検出手段で検出した前記ヨーレートと前記前輪の舵角の方向とが等しい場合に前記制動力制御を開始することを特徴とする請求項2に記載の車両挙動制御装置。
  4. さらに、前記制動制御手段が前記制動力制御を行なった際に前記車両が周囲の障害物に衝突する危険性があるかを判定する制動力制御時衝突判定手段を有しており、
    前記制動制御手段は、前記制動制御手段で前記制動力制御を行なった際に前記車両が周囲の前記障害物に衝突する危険性はないと前記制動力制御時衝突判定手段で判定した場合に前記制動力制御を行なうことを特徴とする請求項2または3に記載の車両挙動制御装置。
  5. 前記カウンターステア制御と前記加速制御とを終了する際には、前記加速制御の終了後に前記カウンターステア制御を終了することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両挙動制御装置。
  6. さらに、前記車両が備える電源の電気容量が前記カウンターステア制御を行なうのに必要な容量であるかを判定する電源容量判定手段を有しており、
    前記舵角制御手段は、前記電源の電気容量が前記カウンターステア制御を行なうのに必要な容量であると前記電源容量判定手段で判定した場合に前記カウンターステア制御を行なうことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両挙動制御装置。
  7. さらに、前記カウンターステア制御と前記加速制御とを同時に行なう制御であるステア駆動力制御を前記舵角制御手段と前記駆動力制御手段とで行なった際に前記車両が周囲の障害物に衝突する危険性があるかを判定するステア駆動力制御時衝突判定手段を有しており、
    前記舵角制御手段は、前記舵角制御手段と前記駆動力制御手段とで前記ステア駆動力制御を行なった際に前記車両が周囲の前記障害物に衝突する危険性はないと前記ステア駆動力制御時衝突判定手段で判定した場合に前記カウンターステア制御を行なうことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両挙動制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010044390A1 (ja) 2008-10-14 2010-04-22 株式会社日本触媒 ポリアルキレンイミンを含むウイルス感染症治療薬
JP2011011575A (ja) * 2009-06-30 2011-01-20 Nissan Motor Co Ltd 車体傾動制御装置及びその方法
CN107585027A (zh) * 2017-09-21 2018-01-16 安徽机电职业技术学院 一种汽车防侧翻控制方法及其装置
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