JP2009136245A - Thermoanaerobacter属細菌検出のためのプライマーセットおよびThermoanaerobacter属細菌検出法 - Google Patents

Thermoanaerobacter属細菌検出のためのプライマーセットおよびThermoanaerobacter属細菌検出法 Download PDF

Info

Publication number
JP2009136245A
JP2009136245A JP2007318592A JP2007318592A JP2009136245A JP 2009136245 A JP2009136245 A JP 2009136245A JP 2007318592 A JP2007318592 A JP 2007318592A JP 2007318592 A JP2007318592 A JP 2007318592A JP 2009136245 A JP2009136245 A JP 2009136245A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermoanaerobacter
primer
seq
bacteria
blockii
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007318592A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroyuki Murakami
裕之 村上
Yasuhiro Fujita
康弘 藤田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kirin Holdings Co Ltd
Original Assignee
Kirin Holdings Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kirin Holdings Co Ltd filed Critical Kirin Holdings Co Ltd
Priority to JP2007318592A priority Critical patent/JP2009136245A/ja
Publication of JP2009136245A publication Critical patent/JP2009136245A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】環境中や食品中に存在するThermoanaerobacter属細菌を特異的に、迅速かつ簡便に検出するための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、Thermoanaerobacter属細菌検出用PCRプライマーセットであって、Thermoanaerobacter属細菌のlac遺伝子、16S rRNA遺伝子、およびN10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の特異的領域にアニーリング可能なプライマーセット、ならびにThermoanaerobacter属細菌のlac遺伝子、16S rRNA遺伝子、およびN10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の特異的領域のPCR法による増幅を用いてThermoanaerobacter属細菌を検出するための方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、Thermoanaerobacter属細菌を迅速かつ正確に検出するためのプライマーセットおよび方法に関する。
より具体的には、本発明はPCR法においてThermoanaerobacter属細菌のlac遺伝子、16S rRNA遺伝子、およびN10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の特異的領域の増幅を検出することによる、Thermoanaerobacter属細菌の検出のためのプライマーセットおよび方法に関する。
Thermoanaerobacter属細菌は、偏性嫌気性の好熱性細菌であり、泥、温泉、熱水噴出口などの各種環境や精糖プラント、ビート抽出液などからの検出例が報告されている。また、加温販売されるミルクコーヒーやココアなどの低酸性缶詰飲料での腐敗事例において、Thermoanaerobacter属細菌の分離例が報告されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。したがって、Thermoanaerobacter属細菌は、産業分野で非常に重要な菌種であると考えられている。
従来、Thermoanaerobacter属細菌の検出のためには増菌や分離培養などによる手法が行われているが、これらの手法は結果を得るまでに時間を要するという欠点を有する。高温発育性の嫌気性細菌については、糖分解能試験や酵素活性による分類法も報告されている(非特許文献1、非特許文献5)。また、高温発育性の嫌気性細菌であるクロストリジアを特殊な培地で検出する方法も報告されている(特許文献1)。
Thermoanaerobacter属細菌の菌種の確認には遺伝子を用いた方法が用いられている。例えば、Thermoanaerobacter属細菌の16S rRNA遺伝子領域を増幅し、その配列を確認するDNAシーケンス法が広く知られている。また、Thermoanaerobacter属細菌の16S−23Sスペーサー領域および23S rRNA遺伝子を増幅し、その配列を確認するDNAシーケンス法も報告されている。しかしながら、そのような方法は特別な機器が必要なうえ多大な時間と労力を要する(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。
特開2006−304698号公報 Klingeberg, M.ら, FEMS Microbiol. Lett., 1990, 69: 145-152 Hollaus, F.ら, Int. Sugar J., 1973, 75, 237-241 Leigh, J.A.ら, Arch. Microbiol., 1981, 129: 275-280 駒木 勝、ソフト・ドリンク技術資料、2001年2号、p.103−136 Jean-Philippe, C.ら, Anaerobe, 2006, 12: 153-159 Xue, Y.ら, Int J Syst Evol Microbial., 2001, 51(4): 1335-1341 Ashraf, Iら, BioTechniques., 2001, 30: 414-420
本発明の目的は、Thermoanaerobacter属細菌の迅速かつ簡便な検出を可能にするために、PCR法によってThermoanaerobacter属細菌を特異的に検出可能であるプライマーセットを提供することである。
本発明の別の目的は、Thermoanaerobacter属細菌の特異的遺伝子領域のPCR法による増幅により、Thermoanaerobacter属細菌を検出する方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するため検討を行った結果、Thermoanaerobacter属菌のlac遺伝子、16S rRNA遺伝子、N10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の特異的領域に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、このオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR法により増幅することにより、Thermoanaerobacter属菌を検体中から特異的、簡便かつ迅速に検出することを実現し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、要約すると、以下の特徴を有する。
(1)Thermoanaerobacter属細菌の(i)lac遺伝子、(ii)16S rRNA遺伝子、および(iii)N10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の特異的領域にそれぞれアニーリング可能なプライマーを含む、Thermoanaerobacter属細菌検出用PCRプライマーセットであって、以下のもの(i)プライマーThlac−F(配列番号1)、プライマーThlac−R(配列番号2)、プライマーThlaccell−F(配列番号3)、およびプライマーThlaccell−R(配列番号4)、(ii)プライマーTh16S−F(配列番号5)、プライマーThace−R(配列番号6)、およびプライマーThsisu−R(配列番号7)、ならびに(iii)プライマーThkiv−F(配列番号8)、およびプライマーThkiv−R(配列番号9)を含む、上記プライマーセット。
(2)Thermoanaerobacter属細菌が、Thermoanaerobacter acetoethylicus、Thermoanaerobacter brockii subsp. brockii、Thermoanaerobacter brockii subsp. finni、Thermoanaerobacter brockii subsp. lactiethylicus、Thermoanaerobacter cellulolyticus、Thermoanaerobacter ethanolicus、Thermoanaerobacter italicus、Thermoanaerobacter kivui、Thermoanaerobacter mathranii、Thermoanaerobacter siderophilus、Thermoanaerobacter sulfurophilus、Thermoanaerobacter thermocopriae、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus、およびThermoanaerobacter wiegeliiからなる群より選択される、上記(1)に記載のプライマーセット。
(3)Thermoanaerobacter brockii subsp. brockii、Thermoanaerobacter brockii subsp. finni、Thermoanaerobacter brockii subsp. lactiethylicus、Thermoanaerobacter cellulolyticus、Thermoanaerobacter ethanolicus、Thermoanaerobacter italicus、Thermoanaerobacter mathranii、Thermoanaerobacter thermocopriae、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus、およびThermoanaerobacter wiegeliiからなる群より選択されるThermoanaerobacter属細菌検出用PCRプライマーセットであって、プライマーThlac−F(配列番号1)、プライマーThlac−R(配列番号2)、プライマーThlaccell−F(配列番号3)、およびプライマーThlaccell−R(配列番号4)を含む、上記プライマーセット。
(4)Thermoanaerobacter acetoethylicus、Thermoanaerobacter siderophilus、Thermoanaerobacter sulfurophilus、およびThermoanaerobacter wiegeliiからなる群より選択されるThermoanaerobacter属細菌検出用PCRプライマーセットであって、プライマーTh16S−F(配列番号5)、プライマーThace−R(配列番号6)、およびプライマーThsisu−R(配列番号7)を含む、上記プライマーセット。
(5)Thermoanaerobacter kivui検出用PCRプライマーセットであって、プライマーThkiv−F(配列番号8)、およびプライマーThkiv−R(配列番号9)を含む、上記プライマーセット。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のプライマーセットを使用して、Thermoanaerobacter属菌の(i)lac遺伝子、(ii)16S rRNA遺伝子、および/または(iii)N10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の特異的領域のPCR法による増幅を検出することを含む、Thermoanaerobacter属細菌の検出方法。
(7)上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のプライマーセットを含む、Thermoanaerobacter属細菌検出用キット。
本発明のプライマーセットもしくはキットを用いたPCR法、または本発明の方法により、検体中のThermoanaerobacter属細菌を他のThermoanaerobacter科細菌種から区別して特異的に、迅速かつ簡便に検出可能である。
本発明を用いて検出可能なThermoanaerobacter属細菌としては、限定するものではないが、Thermoanaerobacter acetoethylicus、Thermoanaerobacter brockii subsp. brockii、Thermoanaerobacter brockii subsp. finni、Thermoanaerobacter brockii subsp. lactiethylicus、Thermoanaerobacter cellulolyticus、Thermoanaerobacter ethanolicus、Thermoanaerobacter italicus、Thermoanaerobacter kivui、Thermoanaerobacter mathranii、Thermoanaerobacter siderophilus、Thermoanaerobacter sulfurophilus、Thermoanaerobacter thermocopriae、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus、およびThermoanaerobacter wiegelii、ならびにこれらの変異株が挙げられる。
本明細書中で用いる「lac遺伝子」とは、Thermoanaerobacter属細菌のβ−glactosidaseをコードする遺伝子を指す。該酵素は乳糖の利用や取り込みに関連する。
Thermoanaerobacter属細菌のひとつであるThermoanaerobacter mathraniiのlac遺伝子の塩基配列は、例えば登録番号AJ316559としてGenBankなどから入手可能である。また、Thermoanaerobacter cellulolyticusのlac遺伝子の塩基配列は、例えば登録番号E15128としてGenBankなどから入手可能である。
本明細書中で用いる「16S rRNA遺伝子」とは、16SリボソームRNAをコードする遺伝子を指す。該遺伝子は、系統分類の指標として広く認められている。
Thermoanaerobacter acetoethylicus、Thermoanaerobacter siderophilusおよびThermoanaerobacter sulfurophilusの16S rRNA遺伝子の塩基配列は、例えばそれぞれ登録番号X69336、AF120479およびY16940としてGenBankなどから入手可能である。
本明細書中で用いる「N10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子」とは、10−ホルミルテトラヒドロ葉酸合成酵素をコードする遺伝子を指す。該酵素は葉酸補酵素の1種で、細菌をはじめとする生物の生育において生理活性物質として作用する。
Thermoanaerobacter kivuiのN10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の塩基配列は、例えば登録番号AF295704としてGenBankなどから入手可能である。
本発明者らは、Thermoanaerobacter属細菌のlac遺伝子、16S rRNA遺伝子およびN10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の塩基配列を他の細菌のものと比較し、Thermoanaerobacter科細菌のうち、これらの遺伝子中にThermoanaerobacter属細菌に特異的な配列が存在することを見出した。そして、そのような特異的領域の配列から、本発明の具体的なPCRプライマーを設計した。ここで、「特異的な配列」または「特異的領域」とは、他の細菌と比較してThermoanaerobacter属細菌に固有の塩基配列またはそのような配列を有する領域を指す。
本発明のプライマーは、Thermoanaerobacter属細菌の遺伝子中に存在する特異的領域にアニーリング可能な配列を有する限り、その配列において特に限定されない。しかし、好ましいプライマーは、それぞれ配列番号1〜9に示される塩基配列を有するプライマーである。
配列番号1〜9に示される配列とは、具体的には以下のものである:
配列番号1:GACAGAGGTTATAAATAAAGAAGGTG
配列番号2:GGATGATCTGGATGCCAAGT
配列番号3:ACCCAAAAAGCCGAAAAGAT
配列番号4:CCCAGCCCATCTCAGTGTAT
配列番号5:GGCTGCTGGCACGTAGTTAG
配列番号6:GCCAAAGGAGGAATCCGCCTTG
配列番号7:GTCGAGCGATTCAGAGGTCGG
配列番号8:ACTGTTGGTTTAGGCGATGC
配列番号9:TGCATGGAAATCTCCTGTGA
PCR法のプライマーとして用いることができるオリゴヌクレオチドは、自動化オリゴヌクレオチド合成機などを用いて合成することができ、そのようなオリゴヌクレオチドの合成法は当業者には公知である。
本発明のプライマーセットを用いたPCR法の実施により、Thermoanaerobacter属細菌を他のThermoanaerobacter科細菌種から区別して(すなわち特異的に)検出することができる。ここで、「特異的に」とは、検出反応が他のThermoanaerobacter科細菌種に対して陰性であることを意味する。
本明細書中で用いる「PCR法」、「PCR反応」とは、ポリメラーゼ連鎖反応を指す。当該反応は公知であるため、当業者であれば該反応を適宜実施することができる。PCR反応の具体的な実施については、例えば、Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.,Cold Spring Harbor Lab.press(1989);Ausubel,F.M. et al.,Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley&Sons(1995)などに記載されている。
PCR法の反応は、一般的には、初期変性ステップ;変性、アニーリング、および伸長の各ステップを含むサイクルを繰り返すことによる増幅ステップ;ならびにさらなる伸長ステップを含む。変性、アニーリングおよび伸長の各ステップのための温度および時間は、用いるポリメラーゼ、プライマー配列、増幅対象の断片の長さなどに依存して変わりうるが、当業者であれば容易に決定することができる。また、増幅ステップにおいてアニーリングおよび伸長を同じ温度で行うシャトルPCR(二段階温度PCR)の使用も有利である。そのようなPCR反応条件は、例えば、「PCR法最前線」(蛋白質核酸酵素臨時増刊号、関谷ら(編)、1996年、共立出版)などの文献に詳細に記載されている。
PCR法の実施に必要な試薬は当業者には公知であり、上記文献にも記載されている。プライマーおよび鋳型DNA以外のそのような試薬としては、例えば、Taqポリメラーゼ、pfuポリメラーゼなどの耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTPミックス、および好適なバッファーが挙げられる。
本発明では、限定するものではないが、PCR法としてリアルタイムPCR法を用いるのが有利である。リアルタイムPCR法に用いるPCR反応試薬としては、例えば、タカラバイオ社から市販されているDNA増幅試薬キットであるSYBR Premix Ex Taq(但し、プライマーセットを除く)が挙げられる。該キットを用いる場合のPCR反応液は、例えば、滅菌蒸留水を7.1μL、SYBR Premix Ex Taqを10μL、Thlac−F、Thlac−R、Thlaccell−F、Thlaccell−R、Th16S−F、Thace−R、Thsisu−R、Thkiv−F、Thkiv−Rの各プライマー(各20μM)を各0.1μL、検体液(鋳型DNA)2μLを加え、全量20μLとして調製する。
SYBR GreenIを用いるリアルタイム反応PCR法の場合、ポリメラーゼ反応によって合成された2本鎖DNAに、反応液中に含まれるインターカレーター(SYBR GreenI)が結合すると蛍光を発する。この蛍光強度を測定することで核酸増幅の有無を確認することができる。核酸増幅が観察されるならば、標的遺伝子が存在することを意味し、結果としてThermoanaerobacter属細菌陽性(+)であることが示される。逆に、核酸増幅が観察されない場合には、標的遺伝子が不存在であることを意味し、結果としてThermoanaerobacter属細菌陰性(−)であることが示される。
また、本発明の方法においてサーマルサイクラーによる通常のPCR反応を行う場合は、当該PCR反応が適切に行われる限り限定するものではないが、例えば、タカラバイオ社から市販されているDNA増幅試薬キットであるTaKaRa Ex Taq試薬(但し、プライマーセットを除く)を利用することができる。その場合、PCR反応液は、例えば、滅菌蒸留水を14.3μL、10×Ex Taqバッファーを2μL、dNTPミックス(各2.5mM)を1.6μL、Thlac−F、Thlac−R、Thlaccell−F、Thlaccell−R、Th16S−F、Thace−R、Thsisu−R、Thkiv−F、Thkiv−Rの各プライマー(各20μM)を各0.1μL、TaKaRa Ex Taqを0.2μL、検体液(鋳型DNA)1μLを加え、全量20μLとして調製する。
通常よく用いられるサーマルサイクラーを用いたPCR法の場合、10μL程度のPCR反応液をアガロース電気泳動などに供することで、核酸増幅の有無を確認することができる。目的とする増幅部分と同じ分子量での核酸増幅が観察されるならば、標的遺伝子が存在することを意味し、結果としてThermoanaerobacter属細菌陽性(+)であることが示される。逆に、核酸増幅が観察されない場合には、標的遺伝子が不存在であることを意味し、結果としてThermoanaerobacter属細菌陰性(−)であることが示される。
本発明のキットの構成要素としては、本発明のThermoanaerobacter属細菌検出用プライマーの他に、耐熱性ポリメラーゼ、dNTPミックス、バッファーおよび使用説明書などが挙げられるが、これらに限定されない。
核酸増幅によるThermoanaerobacter属細菌の同定のための検体としては、限定するものではないが、食品検体、例えば乳およびその製品、野菜類、茶葉、果汁、液糖、缶詰など、ならびに環境検体、例えば土壌、水、拭き取り検体などを用いることができる。
このような検体をPCR法において検体として用いる場合には、検体中に存在する菌体の濃縮、分離、菌体からの核酸放出、核酸の濃縮などの操作を前処理として行うこともできる。菌体の濃縮および分離の方法は適宜選択することができ、ろ過、遠心分離などが知られている。食品検体や環境検体などに存在する菌体からの核酸の放出は、例えばLysozymeやProteinase Kなどによって菌体を処理し、100℃での加熱により菌体から核酸を放出させることにより行うことができる。また、特に食品検体の場合、必要があれば、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿、遠心分離などにより核酸のさらなる精製を行い、該核酸を最終的にTE緩衝液などに再溶解させ、該溶解液を鋳型DNAとして試験に供してもよい(Wernars K.et al.,J. Appl. Bacteriol.,1991,70:121−126;Golbang N.et al.,J. Clin. Pathol.,1996,49:861−863)。
例えば、食品中にThermoanaerobacter属細菌が存在すると考えられる場合には、該食品中に存在する細菌を適切な培地で増菌培養し、寒天培地上に形成されたコロニーからDNAを分離し、このDNAに対して上記プライマーを用いたPCR反応を行い、Thermoanaerobacter属細菌遺伝子中の特異的領域を増幅することにより、Thermoanaerobacter属細菌を検出することができる。
本発明のPCR法によるThermoanaerobacter属細菌の検出法は、食品や環境試料などの検査対象物に存在するThermoanaerobacter属細菌の有無を迅速に判定することができる検出法として用いることができる。特に、該方法は、乳製品、野菜類などでのThermoanaerobacter属細菌の汚染の検出のために使用することができる。
また、本発明のPCR法による検出法はThermoanaerobacter属細菌の増殖を検知する方法にも応用することができる。食品やその原料、環境試料などがある条件下において放置される場合に、それらの中に存在するThermoanaerobacter属細菌の増殖の有無については、例えば本発明の方法をリアルタイム反応PCR法を用いて行うことにより、迅速に判定することが出来る。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.PCR反応
PCR反応に用いる各試薬の内容は次のとおりである。PCR反応試薬はタカラバイオ社製のSYBR Premix Ex Taqを用いた。PCR反応液は、滅菌蒸留水を7.1μL、SYBR Premix Ex Taqを10μL、Thlac−F、Thlac−R、Thlaccell−F、Thlaccell−R、Th16S−F、Thace−R、Thsisu−R、Thkiv−F、Thkiv−Rの各プライマー(各20μM)を各0.1μL、検体液(鋳型DNA)2μLを加え、全量20μLとして調製した。調製に際しては、タカラバイオ社、SYBR Premix ExTaq試薬キット(カタログ番号:RR041A)の添付説明書に従った。
PCR反応は、ロシュ社製のライトサイクラーを用い、シャトルPCR(二段階温度PCR)として行った。反応条件は、タカラバイオ社製のSYBR Premix Ex Taqの添付説明書に従った。具体的には、初期変性としての95℃、10秒(20℃/秒)に続いて、95℃、5秒(20℃/秒);60℃、20秒(20℃/秒)を1サイクルとして35サイクルを行い、最後に、融解曲線分析を、95℃、0秒(20℃/秒);65℃、15秒(20℃/秒);95℃、0秒(0.1℃/秒)に設定して行った。カッコ内は温度変化速度を表す。反応終了後に、増幅曲線と融解曲線を確認し、PCR産物の増幅の有無を判定した。増幅曲線の立ち上がりが認められたものをThermoanaerobacter属細菌陽性、増幅曲線が認められないものを陰性とした。
鋳型DNAは、表1に示された14種のThermoanaerobacter属細菌および14種の他のThermoanaerobacter科細菌から抽出したDNAを用いた。
2.プライマーの設計
Thermoanaerobacter属細菌のlac遺伝子、16S rRNA遺伝子、およびN10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の配列を他の細菌のものと比較し、Thermoanaerobacter属細菌に特異的な配列を有するPCRプライマーを設計した。
(i)配列番号1〜4:Thlac−F(配列番号1)、Thlac−R(配列番号2)、Thlaccell−F(配列番号3)、およびThlaccell−R(配列番号4)のプライマーセットを、lac遺伝子の特異的領域を増幅するように設計した。
(ii)配列番号5〜7:Th16S−F(配列番号5)、Thace−R(配列番号6)、およびThsisu−R(配列番号7)のプライマーセットは、16S rRNA遺伝子の特異的領域を増幅するように設計した。
(iii)配列番号8および9:Thkiv−F(配列番号8)、およびThkiv−R(配列番号9)のプライマーセットは、N10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の特異的領域を増幅するように設計した。
3.結果(1)
上記(i)〜(iii)のプライマーセットを個々に用いてPCR反応を行った結果は以下の通りである。表1に結果をまとめた。
表1に示したThermoanaerobacter属細菌14種および他のThermoanaerobacter科細菌について、上記(i)のプライマーセットを用いてPCR反応を行った結果、Thermoanaerobacter brockii subsp. brockii、Thermoanaerobacter brockii subsp. finni、Thermoanaerobacter brockii subsp. lactiethylicus、Thermoanaerobacter cellulolyticus、Thermoanaerobacter ethanolicus、Thermoanaerobacter italicus、Thermoanaerobacter mathranii、Thermoanaerobacter thermocopriae、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus、およびThermoanaerobacter wiegeliiの10菌種のみについて核酸の増幅が認められ、他のThermoanaerobacter科細菌種では増幅が認められなかった。
上記(ii)のプライマーセットを用いてPCR反応を行った結果、Thermoanaerobacter acetoethylicus、Thermoanaerobacter siderophilus、Thermoanaerobacter sulfurophilus、およびThermoanaerobacter wiegeliiについて核酸の増幅が認められ、他のThermoanaerobacter科細菌種では増幅が認められなかった。
上記(iii)のプライマーセットを用いてPCR反応を行った結果、Thermoanaerobacter kivuiのみについて核酸の増幅が認められ、他のThermoanaerobacter科細菌種では増幅が認められなかった。
上記のように、Thermoanaerobacter属細菌のlac遺伝子、16S rRNA遺伝子、またはN10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子に対して設計された各プライマーセットは、それぞれ標的とした遺伝子を保有するThermoanaerobacter属細菌を検出可能であり、他のThermoanaerobacter科細菌種との交差性は認められなかった。また、これらのプライマーセットを用いた検出結果を併せると、検査した14種すべてのThermoanaerobacter属細菌を網羅することができた。
4.結果(2)
そこで、配列番号1〜9に示される配列を有するプライマーすべてを混合し、PCR反応を行った。その結果、検査した14種のThermoanaerobacter属細菌のみについて増幅が認められ、他のThermoanaerobacter科細菌種では増幅が認められなかった。
このことから、Thermoanaerobacter属細菌のlac遺伝子、16S rRNA遺伝子、およびN10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子に対して設計された本発明の各プライマーセットを同時に用いてPCR反応を行うことにより、検体中のThermoanaerobacter属細菌を特異的に、迅速かつ簡便に検出しうることが示された。
Figure 2009136245
本発明のプライマーセットおよびThermoanaerobacter属細菌の検出法は、食品や環境試料などの検査対象中のThermoanaerobacter属細菌の有無を、特異的に、迅速かつ簡便に判定することができる。したがって、本発明は、乳製品、野菜類、缶詰などでのThermoanaerobacter属細菌の汚染の検出に有用である。
配列番号1〜9:プライマー

Claims (7)

  1. Thermoanaerobacter属細菌の(i)lac遺伝子、(ii)16S rRNA遺伝子、および(iii)N10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の特異的領域にそれぞれアニーリング可能なプライマーを含む、Thermoanaerobacter属細菌検出用PCRプライマーセットであって、以下のもの(i)プライマーThlac−F(配列番号1)、プライマーThlac−R(配列番号2)、プライマーThlaccell−F(配列番号3)、およびプライマーThlaccell−R(配列番号4)、(ii)プライマーTh16S−F(配列番号5)、プライマーThace−R(配列番号6)、およびプライマーThsisu−R(配列番号7)、ならびに(iii)プライマーThkiv−F(配列番号8)、およびプライマーThkiv−R(配列番号9)を含む、上記プライマーセット。
  2. Thermoanaerobacter属細菌が、Thermoanaerobacter acetoethylicus、Thermoanaerobacter brockii subsp. brockii、Thermoanaerobacter brockii subsp. finni、Thermoanaerobacter brockii subsp. lactiethylicus、Thermoanaerobacter cellulolyticus、Thermoanaerobacter ethanolicus、Thermoanaerobacter italicus、Thermoanaerobacter kivui、Thermoanaerobacter mathranii、Thermoanaerobacter siderophilus、Thermoanaerobacter sulfurophilus、Thermoanaerobacter thermocopriae、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus、およびThermoanaerobacter wiegeliiからなる群より選択される、請求項1に記載のプライマーセット。
  3. Thermoanaerobacter brockii subsp. brockii、Thermoanaerobacter brockii subsp. finni、Thermoanaerobacter brockii subsp. lactiethylicus、Thermoanaerobacter cellulolyticus、Thermoanaerobacter ethanolicus、Thermoanaerobacter italicus、Thermoanaerobacter mathranii、Thermoanaerobacter thermocopriae、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus、およびThermoanaerobacter wiegeliiからなる群より選択されるThermoanaerobacter属細菌検出用PCRプライマーセットであって、プライマーThlac−F(配列番号1)、プライマーThlac−R(配列番号2)、プライマーThlaccell−F(配列番号3)、およびプライマーThlaccell−R(配列番号4)を含む、上記プライマーセット。
  4. Thermoanaerobacter acetoethylicus、Thermoanaerobacter siderophilus、Thermoanaerobacter sulfurophilus、およびThermoanaerobacter wiegeliiからなる群より選択されるThermoanaerobacter属細菌検出用PCRプライマーセットであって、プライマーTh16S−F(配列番号5)、プライマーThace−R(配列番号6)、およびプライマーThsisu−R(配列番号7)を含む、上記プライマーセット。
  5. Thermoanaerobacter kivui検出用PCRプライマーセットであって、プライマーThkiv−F(配列番号8)、およびプライマーThkiv−R(配列番号9)を含む、上記プライマーセット。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のプライマーセットを使用して、Thermoanaerobacter属菌の(i)lac遺伝子、(ii)16S rRNA遺伝子、および/または(iii)N10−formyltetrahydrofolate synthetase遺伝子の特異的領域のPCR法による増幅を検出することを含む、Thermoanaerobacter属細菌の検出方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のプライマーセットを含む、Thermoanaerobacter属細菌検出用キット。
JP2007318592A 2007-12-10 2007-12-10 Thermoanaerobacter属細菌検出のためのプライマーセットおよびThermoanaerobacter属細菌検出法 Pending JP2009136245A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007318592A JP2009136245A (ja) 2007-12-10 2007-12-10 Thermoanaerobacter属細菌検出のためのプライマーセットおよびThermoanaerobacter属細菌検出法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007318592A JP2009136245A (ja) 2007-12-10 2007-12-10 Thermoanaerobacter属細菌検出のためのプライマーセットおよびThermoanaerobacter属細菌検出法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009136245A true JP2009136245A (ja) 2009-06-25

Family

ID=40867572

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007318592A Pending JP2009136245A (ja) 2007-12-10 2007-12-10 Thermoanaerobacter属細菌検出のためのプライマーセットおよびThermoanaerobacter属細菌検出法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2009136245A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019107019A (ja) * 2013-10-07 2019-07-04 三井化学株式会社 細菌dna増幅用のpcr用プライマーセット、細菌種の検出及び/または同定用キット及び細菌種の検出及び/または同定方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019107019A (ja) * 2013-10-07 2019-07-04 三井化学株式会社 細菌dna増幅用のpcr用プライマーセット、細菌種の検出及び/または同定用キット及び細菌種の検出及び/または同定方法
EP3543362A3 (en) * 2013-10-07 2019-10-23 Mitsui Chemicals, Inc. Pcr primer set for bacterial dna amplification, kit for detecting and/or identifying bacterial species, and method for detecting and/or identifying bacterial species

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2007117022A (ja) リステリア・モノサイトゲネス検出のためのプライマーセットおよび方法
Sen Development of a rapid identification method for Aeromonas species by multiplex-PCR
Abed Evaluation of methods for the extraction and purification of DNA of cultured Lactobacillus colony isolated from dairy products
Kim et al. Development of a real-time PCR assay for rapid screening of acetic acid bacteria as a group in food products
Zhou et al. LAMP, PCR, and real-time PCR detection of Acetobacter aceti in yogurt
TWI502105B (zh) 用於偵測損壞食物的微生物之組成物
JP2005110587A (ja) アリサイクロバチラス属菌検出用プライマー
JP2009136245A (ja) Thermoanaerobacter属細菌検出のためのプライマーセットおよびThermoanaerobacter属細菌検出法
Scornec et al. Rapid 96-well plates DNA extraction and sequencing procedures to identify genome-wide transposon insertion sites in a difficult to lyse bacterium: Lactobacillus casei
WO2017073753A1 (ja) エコール産生能の測定方法
US7439022B2 (en) Nucleic acids for detection of Listeria
JP2010081916A (ja) 高温嫌気性芽胞細菌の検出用プライマーセットおよび検出法
EP2655667A2 (en) Composition to overcome inhibitors in pcr and growth cultures
JP2008005779A (ja) ラクトバチルス・ブレビス検出のためのプライマーおよびそれを用いた検出法
KR101426119B1 (ko) 실시간 중합효소연쇄반응법과 융해곡선분석을 이용하는 마이코박테리아의 동정 방법
JP2007189980A (ja) 黄色ブドウ球菌検出のためのプライマーおよびそれを用いた検出法
KR101919190B1 (ko) 미생물의 2 단계 분석 방법
JP5873356B2 (ja) モニリエラ属真菌の検出方法
Tagawa et al. Development of a genotyping method for potato scab pathogens based on multiplex PCR
WO2023214588A1 (ja) 芽胞形成細菌の検出方法
US7321032B2 (en) Method of detecting Bifidobacterium infantis
JP5383105B2 (ja) オリゴヌクレオチド及びこれをプライマーとして用いたバチルス・コアグランスの検出法
JP2012039977A (ja) 黄色ブドウ球菌検出用プライマーセット
JP2009022168A (ja) アリサイクロバチルス・アシドカルダリウス検出のためのプライマーおよびそれを用いた検出法
KR100553336B1 (ko) 중합효소연쇄반응을 이용한 수계에서의 대장균 검출방법