JP2009133707A - 高レベル放射性廃液から選択的にセシウムを分離する方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ジオクチルオキソ−カリックス[4]−クラウン−6若しくはカリックス[4]−クラウン−6の誘導体を、炭素数6〜9の一価のアルコールとn−ドデカンとからなる溶液に、0.005モル/dm3〜0.03モル/dm3となるように溶解して、カリックス溶液を調製する調製工程と、調製工程により調製されたカリックス溶液に、セシウムを含む核分裂生成物を含有する高レベル放射性廃棄液を添加して、カリックス溶液中にセシウムを抽出する抽出工程と、抽出工程により抽出されたセシウムを、0.01モル/dm3以下の硝酸を溶解した溶液を用いて、逆抽出する逆抽出工程とを備えることを特徴とする高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法を使用する。
【選択図】図5
Description
本発明は、特に、発電用原子炉から発生する使用済核燃料(SF)の再処理、廃棄物処理・処分に関するものであり、核燃料サイクルにおいて、高レベル放射性廃液からセシウムのみを選択的に分離・回収する方法に関する。
また、高レベル放射性廃液中の放射性各種を半減期や元素の化学的性質等に応じていくつかのグループに分離回収する群分離も検討されている。この群分離の分離対象としては、1)半減期の長い超ウラン元素(Transuranics)やテクネチウム(Tc)、2)熱源および放射線源であるストロンチウム(Sr)およびセシウム(Ce)、3)資源として貴重な白金族元素等が挙げられる。
しかしながら、この方法は無機イオン交換体が廃棄物として発生し、この廃棄物を処理する必要があるという問題点を有する。
しかしながら、この方法はセシウムの分離の際に酸化防止剤としてヒドラジン誘導体などの添加物を共存させる必要がある点、また、吸着剤が放射性廃棄物として発生し、廃棄物を処理する必要があるという問題点を有する。
しかしながら、この方法はイオン交換と同様の技術であり、最終的に放射性固体廃棄物が発生する点、高放射線場に置かれたときに、ポリマー樹脂の分解および配位子の分解による吸着効率の低下、配位子自体や樹脂の脱離などが欠点として挙げられる。
しかしながら、この方法では、クラウンカリックス[4]アレンを溶解する、有機溶媒にオルト−ニトロフェニルヘキシルエーテルを用いる必要があり、このオルト−ニトロフェニルヘキシルエーテルは、放射線分解などによるニトロ化など潜在的な危険を有しており、産業利用という点では難点がある。また、クラウンカリックス[4]アレンは、無極性溶媒などには難溶であり、溶媒選定が問題となっている。
しかしながら、この方法もセシウムを分離回収後にイオン交換体が廃棄物として発生し、廃棄物を処理する必要があるという問題点を有する。
しかしながら、この方法で用いられるコバルトジカルボリド系では、ニトロベンゼンのような有害な溶媒(希釈剤)を用いることになり、抽出試薬の入手先が限定されることから入手が困難であり、また、使用後に焼却すると金属塩(固体廃棄物)が残るという問題点がある。
また、本発明の別の態様である高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法は、ジオクチルオキソ−カリックス[4]−クラウン−6若しくはカリックス[4]−クラウン−6の誘導体を、炭素数6〜9の一価のアルコールとN,N−ジアルキルカルボキシアミドとからなる溶液に、0.005モル/dm3〜0.1モル/dm3となるように溶解して、カリックス溶液を調製する調製工程と、調製工程により調製されたカリックス溶液に、セシウムを含む核分裂生成物を含有する高レベル放射性廃棄液を添加して、カリックス溶液中にセシウムを抽出する抽出工程と、抽出工程により抽出されたセシウムを、0.01モル/dm3以下の硝酸を溶解した溶液を用いて、逆抽出する逆抽出工程とを備えることを特徴とする。上記の炭素数6〜9の一価のアルコールは、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−ノナノール及びシクロヘキサノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールであることが好ましい。
また、抽出剤として用いるジオクチルオキソ−カリックス[4]−クラウン−6若しくはカリックス[4]−クラウン−6の誘導体や溶媒(希釈剤)として用いる炭素数6〜9の一価のアルコールやn−ドデカン若しくはN,N−ジアルキルカルボキシアミドは、炭素、酸素、水素、窒素で構成されているため焼却処分が可能であるため、イオン交換法や他の溶媒抽出法などと比べ、固体廃棄物が発生しないという利点を有する。
また、本発明においては、カリックス溶液とは、抽出剤として用いる上記のジオクチルオキソ−カリックス[4]−クラウン−6若しくはカリックス[4]−クラウン−6の誘導体を、後述の希釈剤として用いられる溶媒、例えば炭素数が6〜9の一価のアルコール、n−ドデカン、N,N−ジアルキルカルボキシアミドに溶解して得られる溶液を意味する。
また、炭素数が6〜9の一価のアルコールとしては、1−ノニルアルコール、1−オクタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−オクタノール、2−ヘキサノールなどが挙げられる。これらのうち、1−ノニルアルコール、1−オクタノール、1−ヘキサノール及びシクロヘキサノールなどが、ジオクチルオキソーカリックス[4]―クラウンー6の溶解性のため好ましく、中でも1−オクタノールがより好ましい。
N,N−ジアルキルカルボキシアミドとしては、N,N−ジペンチルオクタンアミド、N,N−ジヘキシルオクタンアミド、N,N−ジヘプチルオクタンアミド、N,N−ジオクチルヘキサンアミドなどが挙げられる。これらのうち、ウランやプルトニウムなどの分離において候補化合物として論文などに報告され、基礎データなどが豊富である点からN,N−ジヘキシルオクタンアミドが好ましい。なお、炭素数が6〜9の一価のアルコールについては上記と同様である。また、これらの溶媒は本発明の効果、すなわちセシウムの選択的な分離に影響を与えない程度の不可避不純物を含んでいてもよい。
この高レベル放射性廃液(硝酸廃液)を廃液中のセシウムの濃度などに基づいて、上記のカリックス溶液(有機相)中に、例えば高レベル放射性廃液(水相):カリックス溶液(有機相)が1:0.5〜2、特には、1:1(体積比)となるように添加して、前記カリックス溶液(有機相)中にセシウムを抽出する。
逆抽出された、すなわち分離されたセシウム溶液は、必要であれば所定の処理を行った後に回収され、さらに所定の処理を行った後、例えば中間貯蔵庫において中間貯蔵され、十分に放熱(発熱)させた後、地層に埋設する地層処理が行われる。一方、セシウムが分離除去された放射性廃液は、例えば所定の処理を行った後、ガラス固化された後、地層に埋設する地層処理が行われる。
図2の分離方法(分離法−1)では、まず、使用済燃料溶解液から6価のウラン(U(VI))の回収工程によりウランをウラン製品、例えば二酸化ウラン(UO2)として分離・回収し、次に、ウラン回収工程によりウランが分離された後の放射性廃棄液から、超ウラン元素(TRU)回収工程により超ウラン元素(TRU)を分離する。
ウラン及び超ウラン元素(TRU)が分離された高レベル放射性廃液に、本発明のセシウムを分離(及び回収)する方法が適用される。このセシウム(Cs)分離工程により分離され、回収されたセシウム(回収液)は、中間貯蔵された後、地層に埋設される地層処分が行われる。セシウム(回収液)は、例えば中間貯蔵の間にセシウムによる発熱を行わせ、発熱が殆ど終了した後に、地層に埋設される地層処分を行うことにより、より安全に保管することができる。一方、Cs回収分離工程で分離された核分裂生成物(FP)は、発熱量の大きいCsが含まれていないので、より安全に地層に埋設される地層処分が行われる。なお、分離されたウランや超ウラン元素(TRU)(全TRU回収液)は、図2に示されるように、所定の処理を行い、処理される。
また、抽出剤として用いるジオクチルオキソ−カリックス[4]−クラウン−6若しくはカリックス[4]−クラウン−6の誘導体や溶媒(希釈剤)として用いる炭素数6〜9の一価のアルコールやN,N−ジアルキルカルボキシアミドは、炭素、酸素、水素、窒素で構成されているため焼却処分が可能であるため、イオン交換法や他の溶媒抽出法などと比べ、固体廃棄物が発生しないという利点を有する。
さらに、溶媒抽出法を用い再処理から抽残液をそのまま多段向流型の装置により処理することで、これまでのイオン交換のための溶液調整やpH領域での分離などのための希釈操作が必要なく、装置・分離操作にかかる経済性も向上する。また、セシウム、特にセシウム−137は発熱性の放射性物質であるので、セシウムを分離することにより、ガラス固化体の30年から50年の冷却(及び保管)期間において、保管施設における除熱の必要性が低減できるとともに、放射線の遮蔽も含め、固化体の健全性や施設維持の負担が低減できる。
ジオクチルオキソ−カリックス[4]−クラウン−6(dioctyloxo−calix[4]crown−6)(合成品)(以下、「DOC[4]C6」とも称する。)を0.005モル/dm3となるように、30体積%の1−オクタノールと70体積%のドデカンの溶液に添加してジオクチルオキソ−カリックス[4]−クラウン−6溶液(有機相)を調製した。次に、10−2濃度(モル/dm3)のセシウムが溶解した、図4にプロットされているように種々の硝酸濃度での高レベル放射性廃液(硝酸廃液)を、体積比で、硝酸廃液(水相):有機相=1:1となるように、上記の有機相に加え、十分に混合し、セシウムの分配比を調べた。
また1−オクタノールの代わりに、1−ノニルアルコール、1−ヘキサノール及びシクロヘキサノールを用いて、同様にセシウムの分配比を調べた。セシウムの抽出分配比に対するこれらの種々のアルコールの添加効果(影響)を、硝酸濃度依存性を含めて調べた結果を図4に示す。
図5にプロットされているように種々の所定の濃度(モル/dm3)となるように、ジオクチルオキソカリックス[4]−クラウン−6(DOC[4]C6)を、30体積%の1−オクタノールと70体積%のn−ドデカン溶液に溶解し、他は実施例1と同様にしてセシウムの抽出とDOC[4]C6濃度との関係を調べた。なお、同時に高レベル放射性廃液(硝酸廃液)の硝酸濃度を変動させてセシウムとDOC[4]C6濃度との関係を調べた。その結果を図5に示す。
この実施例3では、セシウムの抽出分配比に及ぼす初期のセシウム濃度の影響を調べた。ジオクチルオキソカリックス[4]−クラウン−6(DOC[4]C6)を、0.05モル/dm3となるように、30体積%の1−オクタノールと70体積%のn−ドデカンの溶液中に添加して(有機相)を調製した。次に、図6にプロットされているように種々の濃度のセシウムを含む、3.0モル/dm3硝酸含有高レベル放射性廃液(硝酸廃液)を、体積比で、硝酸廃液(水相):有機相=1:1となるように、上記の有機相に加え、十分に混合し、3.0モル/dm3硝酸溶液からのセシウムの抽出分配比に及ぼす初期のセシウム濃度の影響を調べた。その結果を図6に示す。
この実施例4では、セシウム抽出時に影響を及ぼすと考えられるストロンチウム(Sr)、ナドリウム(Na)およびユーロピウム(Eu)について、その分離選択性を調べた。ジオクチルオキソカリックス[4]−クラウン−6(DOC[4]C6)を、0.05モル/dm3となるように、30体積%の1−オクタノールと70体積%のn−ドデカンの溶液中に添加して(有機相)を調製した。次に、セシウム抽出時に影響を及ぼすと考えられるストロンチウム(Sr)、ナドリウム(Na)およびユーロピウム(Eu)について、それぞれ、図7にプロットされているように、種々の濃度が溶解した、かつ、種々の硝酸濃度での高レベル放射性廃液(硝酸溶液)を、体積比で、硝酸廃液(水相):有機相=1:1となるように、上記の有機相に加え、十分に混合し、実施例1と同様に行って、ストロンチウム(Sr)、ナドリウム(Na)およびユーロピウム(Eu)の分配比を調べ、セシウムの分配比と比較した。その結果を図7に示す。
この実施例5では、希硝酸溶液によるセシウムの逆抽出挙動を調べた。実施例1のように、ジオクチルオキソカリックス[4]−クラウン−6(DOC[4]C6)を、0.05モル/dm3となるように、30体積%の1−オクタノールと70体積%のn−ドデカンの溶液中に溶解して抽出したセシウムを、図8にプロットされているように、硝酸濃度を変動させて、希硝酸溶液によるセシウムの逆抽出挙動を調べた。その結果を図8に示す。
ジオクチルオキソカリックス[4]−クラウン−6(DOC[4]C6)を、0.01モル/dm3となるように、10体積%のN,N−ジヘキシルオクタンアミド(合成品)と90体積%の1−オクタノールの溶液中に溶解し、実施例1と同様にして、セシウムの抽出実験を行った。その結果、硝酸濃度3.0モル/dm3から抽出分配比7.0で抽出することができることが確認された。また、硝酸濃度0.001モル/dm3溶液を用いることでセシウムを逆抽出できることが確認された。
上記の実施例6と同様に、DOC[4]C6の濃度が0.01mol/dm3となるように、10体積%のN,N−ジヘキシルオクタンアミドと90体積%の1−オクタノール溶液に溶解したカリックス溶液を用いて、セシウム、ストロンチウム、ユーロピウムおよびナトリウムの抽出実験を、表1示されているように種々の硝酸濃度(1.0〜4.0モル/dm3)を用いて行った。硝酸濃度1.0〜4.0mol/dm3の範囲で取得した各元素の抽出分配比を表1に示す。
Claims (8)
- ジオクチルオキソ−カリックス[4]−クラウン−6若しくはカリックス[4]−クラウン−6の誘導体を、炭素数6〜9の一価のアルコールとn−ドデカンとからなる溶液に、0.005モル/dm3〜0.03モル/dm3となるように溶解して、カリックス溶液を調製する調製工程と、
前記調製工程により調製された前記カリックス溶液に、セシウムを含む核分裂生成物を含有する高レベル放射性廃棄液を添加して、前記カリックス溶液中にセシウムを抽出する抽出工程と、
前記抽出工程により抽出されたセシウムを、0.01モル/dm3以下の硝酸を溶解した溶液を用いて、逆抽出する逆抽出工程と
を備えることを特徴とする高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法。 - ジオクチルオキソ−カリックス[4]−クラウン−6若しくはカリックス[4]−クラウン−6の誘導体を、炭素数6〜9の一価のアルコールとN,N−ジアルキルカルボキシアミドとからなる溶液に、0.005モル/dm3〜0.1モル/dm3となるように溶解して、カリックス溶液を調製する調製工程と、
前記調製工程により調製されたカリックス溶液に、セシウムを含む核分裂生成物を含有する高レベル放射性廃棄液を添加して、前記カリックス溶液中にセシウムを抽出する抽出工程と、
前記抽出工程により抽出されたセシウムを、0.01モル/dm3以下の硝酸を溶解した溶液を用いて、逆抽出する逆抽出工程と
を備えることを特徴とする高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法。 - 前記炭素数6〜9の一価のアルコールが1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−ノナノール及びシクロヘキサノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールであることを特徴とする請求項1又は2記載の高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法。
- 前記高レベル放射性廃液が、軽水炉の使用済燃料からウラン及びプルトニウムを分離した高レベル放射性廃液であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法。
- 前記高レベル放射性廃液が、MOX使用済み燃料の再処理後の高レベル放射性廃液であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法。
- 前記高レベル放射性廃液が、FBR使用済み燃料からウラン、プルトニウム、ネプツニウムを少なくとも一部取り除いた高レベル放射性廃液であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法。
- 前記高レベル放射性廃液が、アメリシウム、キュリウム及び核分裂生成物を含む高レベル放射性廃液であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法。
- 前記高レベル放射性廃液が、ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム及び核分裂生成物を含む高レベル放射性廃液であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の高レベル放射性廃棄液からセシウムを分離する方法。
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