JP2009126873A - 共重合体ラテックス組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】保存可能な期間が十分に長く、品質の劣化が生じ難い共重合体ラテックス組成物を提供する。
【解決手段】(A)芳香族ビニル単量体に由来する構造単位、及び、共役ジエン系単量体に由来する構造単位を含有する共重合体を含む共重合体ラテックスと、(B)前記(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、1.0×10−3〜5.0×10−2質量部配合される2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、(C)前記(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、2.0×10−4〜1.0×10−2質量部配合されるオクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、を含有する共重合体ラテックス組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、共重合体ラテックス組成物に関する。更に詳しくは、腐敗しにくく保存安定性に優れる共重合体ラテックス組成物に関する。
水溶性の接着剤や塗料などは、共重合体ラテックスが主成分として含有されており、この共重合体ラテックス以外にも、安定剤、抑制剤、フィルター染料、ハレーション防止色素、マット剤、界面活性剤等の各種添加剤が含有されている。このような親水性の接着剤や塗料などは、貯蔵条件によってはバクテリアやカビ等が繁殖し易いため、長期間保存すると、変質や腐敗が生じていた。そして、変質や腐敗が生じると、粘度が低下したり、共重合体ラテックスが不安定化して相分離を起こしたりするため、その品質を著しく損なうという問題があった。
このような問題に対して、バクテリアやカビ等の繁殖を防止するため、殺菌剤や防腐剤を添加することが行われている。このような殺菌剤や防腐剤を添加した共重合体ラテックス組成物としては、例えば、所定量の、脂肪族共役ジエン系単量体、芳香族ビニル系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体及びこれらと共重合可能な他の単量体(ただし、メチロール基含有単量体を除く)からなる単量体を乳化重合して得られるものに、所定のベンゾイソチアゾリン系化合物、及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを添加した共重合体ラテックス組成物が報告されている(特許文献1参照)。また、1,2−ベンゾチアゾロン−3−オン、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、及び、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを殺菌剤として添加したスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス組成物が報告されている(特許文献2参照)。
特開2005−097474号公報 特公平7−037362号公報
特許文献1に記載の共重合体ラテックス組成物は、所定のベンゾイソチアゾリン系化合物及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含有することによって殺菌効果を得ているものであるが、上記所定のベンゾイソチアゾリン系化合物が貯蔵中に分解してしまうため、殺菌効果が低下し、腐敗するという問題があった。即ち、特許文献1に記載の共重合体ラテックス組成物は、保存可能期間が短いという問題があった。
また、特許文献2に記載の共重合体ラテックス組成物は、1,2−ベンゾチアゾロン−3−オン、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、及び、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを殺菌剤として添加したものであるが、この殺菌剤の殺菌効果も未だ十分ではなく、保存可能期間が短いという問題があった。
また、特許文献1、2に記載の共重合体ラテックス組成物は、腐敗の原因であるバクテリアやカビ等によって、含有される共重合体が分解され、粘度の低下などの品質の劣化が生じる場合があった。
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、腐敗しにくく、保存可能な期間が十分に長い、即ち、保存安定性に優れ、品質の劣化が生じ難い共重合体ラテックス組成物を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定量の、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン及びオクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含有させることによって、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明により、以下の共重合体ラテックス組成物が提供される。
[1] (A)芳香族ビニル単量体に由来する構造単位、及び、共役ジエン系単量体に由来する構造単位を含有する共重合体を含む共重合体ラテックスと、(B)前記(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、1.0×10−3〜5.0×10−2質量部配合される2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、(C)前記(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、2.0×10−4〜1.0×10−2質量部配合されるオクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、を含有する共重合体ラテックス組成物。
[2] 前記(C)オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと前記(B)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの配合比((C):(B))が、質量比で、1:2〜1:50である前記[1]に記載の共重合体ラテックス組成物。
[3] 前記(A)共重合体ラテックスに含まれる前記共重合体が、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、アクリルアミド、及びメタアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも一種に由来する構造単位を更に含有する前記[1]または[2]に記載の共重合体ラテックス組成物。
[4] 前記(A)共重合体ラテックスに含まれる前記共重合体が、スチレン・ブタジエン共重合体である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の共重合体ラテックス組成物。
[5] 前記(A)共重合体ラテックスに含まれる共重合体が、カルボキシル基によって変性されたスチレン・ブタジエン共重合体である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の共重合体ラテックス組成物。
本発明の共重合体ラテックス組成物は、所定量の、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン及びオクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含有するものであり、これらを組み合わせて使用することによって、バクテリアやカビ等が繁殖することを防止することができるため、腐敗しにくく長期保存安定性に優れ、含有される共重合体、特に、スチレン・ブタジエン共重合体がバクテリアやカビ等によって分解されることを防止することができるため、品質の劣化が生じ難いという効果を奏するものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
[1]共重合体ラテックス組成物:
本発明の共重合体ラテックス組成物の一実施形態は、(A)芳香族ビニル単量体に由来する構造単位、及び、共役ジエン系単量体に由来する構造単位を含有する共重合体を含む共重合体ラテックス(以下、「(A)成分」と記す場合がある)と、(B)前記(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、1.0×10−3〜5.0×10−2質量部配合される2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「(B)成分」と記す場合がある)と、(C)前記(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、2.0×10−4〜1.0×10−2質量部配合されるオクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「(C)成分」と記す場合がある)と、を含有するものである。
このように、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン及びオクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを組み合わせて、それぞれ、所定量使用することによって、これらの(B)成分及び(C)成分が貯蔵中に分解し、活性成分が減少し難くなり、バクテリアやカビ等が繁殖することを防止することができる。そのため、本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、腐敗しにくく、優れた長期保存安定性を有する。また、(B)成分及び(C)成分が分解し難くなるため、(A)成分中の共重合体が、バクテリアやカビ等によって分解されてしまうことを防止することができる。そのため、本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、品質の劣化が生じ難い。
[2](A)成分:
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される(A)成分は、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位、及び、共役ジエン系単量体に由来する構造単位を含有する共重合体を含む共重合体ラテックスである。
芳香族ビニル単量体に由来する構造単位を構成するための芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、特に、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。なお、これらの芳香族ビニル単量体は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
芳香族ビニル単量体に由来する構造単位の含有率は、全構造単位に対して、5〜90質量%であることが好ましく、8〜75質量%であることが更に好ましく、10〜70質量%であることが特に好ましい。上記含有率が5質量%未満であると、凝集力が低下して保持力が劣るおそれがある。一方、90質量%超であると、共重合体が硬くなりすぎ、接着剤として使用したときの粘着性が低下するおそれがある。
共役ジエン系単量体に由来する構造単位を構成するための共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等を挙げることができ、特に、1,3−ブタジエンが好ましい。なお、これらの共役ジエン系単量体は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
共役ジエン系単量体に由来する構造単位の含有率は、全構造単位に対して、10〜80質量%であることが好ましく、15〜75質量%であることが更に好ましく、20〜70質量%であることが特に好ましい。上記含有率が10質量%未満であると、接着剤として使用したときに十分な接着強度が得られないおそれがある。一方、80質量%超であると、耐水性が低下するおそれがある。
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される(A)成分は、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位、及び、共役ジエン系単量体に由来する構造単位以外に、その他の単量体に由来する構造単位を含有することができる。
その他の単量体に由来する構造単位を構成するためのその他の単量体としては、上記芳香族ビニル単量体及び上記共役ジエン系単量体と共重合可能なものであれば特に制限はないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート等のアクリル酸アルキルエステル類またはメタクリル酸アルキルエステル類、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル単量体、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体またはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体等を挙げることができる。これらの中でも、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、アクリルアミド、またはメタアクリルアミドが好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸単量体、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、アクリルアミド、またはメタアクリルアミドであると、共重合体ラテックスの機械的安定性、化学的安定性、耐油性及び接着強度が向上するという利点がある。なお、これらのその他の単量体は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
その他の単量体に由来する構造単位の含有率は、全構造単位に対して、0〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることが更に好ましく、20〜70質量%であることが特に好ましい。上記含有率が90質量%超であると、接着剤として使用したときの接着強度が低下するおそれがある。
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される(A)成分は、芳香族ビニル化合物、共役ジエン系単量体、及び、必要に応じてその他の単量体を水中に添加し、乳化剤、分子量調節剤、及び重合開始剤などの存在下で、従来公知の方法によって乳化重合して製造することができる。
乳化重合温度は、5〜85℃であることが好ましく、35〜80℃であることが更に好ましい。
乳化重合に用いられる乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム、ロジン酸カリウム、不均化ロジン酸カリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン系乳化剤を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、不均化ロジン酸カリウム、精製した不均化ロジン酸カリウムが好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、不均化ロジン酸カリウム、精製した不均化ロジン酸カリウムを用いることによって、共重合体ラテックスの安定性が向上するという利点がある。
乳化剤の使用量は、単量体全量100質量部に対して、0.1〜10.0質量部であることが好ましく、0.15〜8.0質量部であることが更に好ましい。上記使用量が0.1質量部未満であると、共重合体ラテックスの機械的安定性、化学的安定性が低下するおそれがある。一方、10.0質量部超であると、耐水性が低下するおそれがある。
乳化重合に用いられる分子量調節剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチレンキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチレンチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類、四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類、α−メチルスチレンダイマー、ペンタフェニルエタン等の炭化水素類、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン等を挙げることができる。これらの中でも、メルカプタン類が好ましい。メルカプタン類を用いることによって、トルエン不溶解分(ゲル分)の調節が容易にできるという利点がある。これらの分子量調節剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
分子量調節剤の使用量は、単量体全量100質量部に対して、0.05〜5.0質量部であることが好ましく、0.1〜3.5質量部であることが更に好ましい。上記使用量が0.05質量部未満であると、共重合体ラテックスが硬くなりすぎて粘着性及び接着性が低下するおそれがある。一方、5.0質量部超であると、接着強度が低下するおそれがある。
乳化重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性重合開始剤を使用することができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、単量体全量100質量部に対して、0.05〜5.0質量部であることが好ましく、0.1〜3.0質量部であることが更に好ましい。上記使用量が0.05質量部未満であると、反応が完結しないおそれがある。一方、5.0質量部超であると、反応が暴走するおそれがある。
乳化重合を促進させるために、ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、グルコース、ホルムアルデヒドスルホキシレート、L−アスコルビン酸等の還元剤や、グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート化剤等を併用することもできる。
なお、乳化重合を行うに際し、各単量体を重合系内に添加する方法としては、一括添加法、連続添加法等を採用することできるが、均一な粒径の粒子を安定性よく得るためには連続添加法が好ましい。特に、シード粒子の存在下で乳化重合を行うことが好ましい。なお、乳化重合における重合転化率は、60〜100質量%であることが好ましい。
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される(A)成分に含まれる共重合体は、スチレン・ブタジエン共重合体、または、カルボキシル基変性されたスチレン・ブタジエン共重合体(以下、「カルボキシル基変性スチレン・ブタジエン共重合体」と記す場合がある)であることが好ましい。なお、(A)成分に含まれる共重合体としては、スチレン・ブタジエン共重合体とカルボキシル基変性スチレン・ブタジエン共重合体とを含むものであってもよい。
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される(A)成分に含まれる共重合体は、そのガラス転移温度が、−70℃〜+60℃であることが好ましく、−50℃〜+40℃であることが更に好ましい。上記ガラス転移温度が−70℃未満であると、接着強度が低下するおそれがある。一方、+60℃超であると、粘着性が低下するおそれがある。
ここで、本明細書において「ガラス転移温度」とは、(A)成分をフィルム状に塗布した後、50℃で2時間真空乾燥を行い、フィルムを作製した。このフィルムについて、示差走査熱量計を用いてASTM法に準じてガラス転移温度を測定した。ガラス転移温度を測定する装置としては、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の「DSC6200」を使用することができる。
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される(A)成分に含まれる共重合体は、その数平均粒子径が、50〜300nmであることが好ましく、70〜250nmであることが更に好ましく、80〜200nmであることが特に好ましい。数平均粒子径が50nm未満であると、共重合体ラテックスの粘度が上昇して、作業性を損なうおそれがある。一方、数平均粒子径が300nm超であると、接着強度が低下するおそれがある。ここで、本明細書において「数平均粒子径」とは、大塚電子社製の濃厚系粒径アナライザー「FPAR−1000」を使用し、定法によって測定した値である。
[3](B)成分:
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される(B)成分は、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンであり、この2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、1.0×10−3〜5.0×10−2質量部配合されるものである。(B)成分は、バクテリアやカビ等の繁殖を抑制する作用を有するものである。特に、(A)成分中の共重合体がカルボキシル基変性スチレン・ブタジエン共重合体である場合、カルボキシル基変性オリゴマーの腐敗が起こりやすいが、(B)成分がバクテリアの殺菌に対して効果的に作用し、優れた殺菌効果を得ることができるという利点がある。
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの配合量は、(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、1.0×10−3〜5.0×10−2質量部であることが必要であり、2.0×10−3〜4.0×10−2質量部であることが好ましく、4.0×10−3〜3.0×10−2質量部であることが更に好ましい。上記配合量が1.0×10−3質量部未満であると、防腐効果、即ち、バクテリアやカビ等の繁殖を抑制する効果が低下し、バクテリアやカビ等が繁殖するため、共重合体ラテックスが腐敗する。一方、5.0×10−2質量部超であると、共重合体ラテックスが発泡しやすくなり、取り扱いが困難となる。
[4](C)成分:
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される(C)成分は、オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンであり、このオクチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、2.0×10−4〜1.0×10−2質量部配合されるものである。(C)成分は、バクテリアやカビ等を殺菌する作用を有するものである。このように(C)成分がバクテリアやカビ等を殺菌するため、バクテリアやカビ等によって共重合体ラテックス中の共重合体が分解されることを防止することができる。そのため、共重合体が分解されることに起因する粘度の低下などの品質の劣化が生じ難くなる。
オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの配合量は、(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、2.0×10−4〜1.0×10−2質量部であることが必要であり、3.0×10−4〜0.8×10−2質量部であることが好ましく、4.0×10−4〜0.7×10−2質量部であることが更に好ましい。上記配合量が2.0×10−4質量部未満であると、貯蔵中の共重合体ラテックス組成物表面にバクテリアやカビ等が繁殖する。一方、1.0×10−2質量部超であると、例えば、紙塗工用の塗工液の材料として使用した場合に、得られる塗工紙の印刷光沢が低下する。
本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、(A)成分を含有し、更に、所定量の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、所定量のオクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとを組み合わせて用いることに特徴がある。
より具体的には、(B)成分によって共重合体ラテックス組成物中に存在するバクテリアやカビ等の繁殖を抑制し、(C)成分によってバクテリアやカビ等を殺菌することに加えて、(B)成分及び(C)成分を併用することによって、互いの効果が相乗的に発揮されるため、(B)成分及び(C)成分が長期間分解し難くなる。従って、殺菌・防腐効果が長期間持続し、保存可能期間が長くなるという利点がある。ここで、(A)成分中の共重合体がスチレン・ブタジエン共重合体である場合、その機械的及び化学的安定性を得るため、(A)成分のpHは8.0〜11.0程度に設定されることが多いが、(B)成分及び(C)成分は、pH8.0〜11.0程度であっても優れた殺菌・防腐効果を発揮することができるという利点がある。
(C)成分と(B)成分との配合比((C):(B))は、質量比で、1:1〜1:40であることが好ましく、1:3〜1:20であることが更に好ましく、1:6〜1:15であることが特に好ましい。上記配合比((C):(B))において(C)成分1質量部に対して(B)成分が1質量部未満であると、貯蔵中の共重合体ラテックスが腐敗するおそれがある。一方、上記配合比において(C)成分1質量部に対して(B)成分が40質量部超であると、(C)成分の効果が損なわれ、貯蔵中の共重合体ラテックスにバクテリアやカビ等が発生するおそれがある。
なお、(B)成分と(C)成分とを含む市販品としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「ロシマ553」などを挙げることができる。
[5]その他の殺菌剤・防腐剤:
本実施形態の共重合体ラテックス組成物には、(B)成分及び(C)成分以外に、2−ブロモ−2−ニトリロプロパン−1,3−ジオール(ブロノポール)、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−メルカプトピリジン−N−オキシドNa塩、過酸化水素水などの殺菌剤や1,2−ベンゾイソチアゾリン−3オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3オン、ブロモニトロアルコール、クロルアセトアミドなどの防腐剤を使用することができる。これらの中でも、2−ブロモ−2−ニトリロプロパン−1,3−ジオール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3オンが好ましく、これらを使用することによって、更に長期間の保存が可能になるという利点がある。
[6]その他の添加剤:
本実施形態の共重合体ラテックス組成物には、(A)〜(C)成分、及びその他の殺菌剤・防腐剤以外に、安定剤などの添加剤(その他の添加剤)を含有することができる。安定剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを挙げることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用できる。
更に、本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、例えば、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、トリポリ燐酸ナトリウム等を含有することができる。
本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、pHが5.0〜12.0であることが好ましく、5.5〜11.5であることが更に好ましく、6.0〜11.0であることが特に好ましい。上記pHが5.0未満であると、共重合体ラテックスの機械的安定性が低下するおそれがある。一方、pHが12.0超であると、共重合体ラテックスの粘度が高くなり作業性が低下するおそれがある。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例、比較例中のガラス転移温度及び数平均粒子径の測定は、下記の方法により行った。
[ガラス転移温度]:
(A)共重合体ラテックスをフィルム状に塗布し、50℃で2時間真空乾燥を行い、フィルムを作製した。このフィルムについて、示差走査熱量計(「DSC6200」、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いてASTM法に準じてガラス転移温度を測定した。
[数平均粒子径]:
(A)共重合体ラテックス中の共重合体の数平均粒子径を、大塚電子社製の濃厚系粒径アナライザー「FPAR−1000」にて測定した。
(合成例1)
攪拌装置及び温度調節器を備えた耐圧反応容器に、表1に示す1段目成分(表1に示す各成分を所定の配合量(部)で混合したもの)を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、耐圧反応容器内の温度を45℃に昇温し、約1時間重合を行った。ここで、重合転化率が70%以上であることを確認した後、表1に示す2段目成分(表1に示す各成分を所定の配合量(部)で混合したもの)、及び1/3量の還元剤水溶液(表1に示す各成分を所定の配合量(部)で混合したもの)を3時間かけて連続的に重合系内に添加した。次いで、表1に示す3段目成分(表1に示す各成分を所定の配合量(部)で混合したもの)、及び1/3量の還元剤水溶液を3時間かけて連続的に添加した。その後、重合を完結させるために、残り(1/3量)の還元剤水溶液を更に3時間かけて連続的に重合系内に添加した。最終的な重合転化率は99%であった。このようにして共重合体ラテックスを得、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7.5に調整した。その後、水蒸気を吹き込んで未反応成分(単量体)を除去し、更に加熱水蒸気蒸留によって固形分濃度50%のスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス((A)共重合ラテックス)を調製した。
Figure 2009126873
Figure 2009126873
(実施例1)
合成例1で得られた(A)共重合体ラテックス100部(固形分濃度50%)に対して、(B)成分として2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(商品「コーデック50C」、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)を400×10−4部、及び(C)成分として2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(商品「レバナックスBS−50」、昌栄化学社製)を10×10−4部を添加して、共重合体ラテックス組成物を調製した。このようにして調製した共重合体ラテックス組成物について、以下に示す方法によって、殺菌性、及び虐待試験の評価を行った。
[殺菌性]
本実施例で得られた共重合体ラテックス組成物に、添加後の菌数が10個/mlとなるように、菌液を添加し、48時間、40℃に置いた後の、共重合体ラテックス組成物中の菌数を測定して殺菌性の評価を行った。なお、菌液は、合成例1で得られたスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスに指標菌としてcomamonas acidovoransを添加し、腐敗させ、所定の菌数としたスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いた。評価基準は、菌数が10個/ml未満である場合を「○」とし、菌数が10個/ml以上で10個/ml未満である場合を「△」とし、菌数が10個/ml以上である場合を「×」とした。なお、菌数の測定は、市販の「イージーカルトTTC」(Orion Diagnostica社製:フィンランド)を用い、28℃で48時間恒温器内で培養した後、コロニー数を観察して行った。
[虐待試験]
本実施例で得られた共重合体ラテックス組成物100gに、指標菌としてcomamonas acidovoransを用い、その菌数が10個/mlである合成例1で得られたスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス20gを1週間毎に繰り返して添加した。添加後、48時間後の、共重合体ラテックス組成物中の菌数を測定して虐待試験の評価を行った。評価基準は、繰り返し添加5回(5週間経過後)の菌数が10個/ml以下である場合を「○」とし、繰り返し添加2〜4回(2〜4週間経過後)の菌数が10個/ml以下である場合を「△」とし、1回(1週間経過後)の菌数が10個/ml以上である場合を「×」とした。なお、菌数の測定は、上記[殺菌性]の評価と同様にして行った。
本実施例の共重合体ラテックス組成物は、殺菌性の評価が○であり、虐待試験の評価が○であった。
(実施例2〜4、比較例1〜4)
表3に示す配合処方とした以外は、実施例1と同様にして共重合体ラテックス組成物を調製し、調製した共重合体ラテックス組成物について、殺菌性、及び虐待試験の評価を行った。
Figure 2009126873
実施例1〜4の共重合体ラテックス組成物は、いずれも、殺菌性、及び虐待試験に優れることが確認できた。一方、比較例1の共重合体ラテックス組成物は、防腐剤の活性成分の添加量が所定の範囲外であるため、殺菌性及び虐待試験の結果が劣ることが確認された。比較例2、3の共重合体ラテックス組成物は、(B)成分及び(C)成分をそれぞれ単独を使用したものであり、比較例2の共重合体ラテックス組成物は、虐待試験が劣り、比較例3の共重合体ラテックス組成物は、殺菌性が劣ることが確認された。比較例4の共重合体ラテックス組成物は、(B)成分及び(C)成分以外のものを用いているため、虐待試験の結果が劣ることが確認された。
表3から明らかなように、実施例1〜4の共重合体ラテックス組成物は、比較例1〜4の共重合体ラテックス組成物に比べて、腐敗しにくく、十分な期間の保存が可能であることが確認できた。また、粘度の低下などの品質の劣化が生じ難いことが確認できた。
本発明の共重合体ラテックス組成物は、接着剤組成物、塗料、紙加工用、繊維加工用、土木建築用、木工用、及び、バインダーなどのアスファルト改質用の材料として好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. (A)芳香族ビニル単量体に由来する構造単位、及び、共役ジエン系単量体に由来する構造単位を含有する共重合体を含む共重合体ラテックスと、
    (B)前記(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、1.0×10−3〜5.0×10−2質量部配合される2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、
    (C)前記(A)共重合体ラテックス100質量部に対して、2.0×10−4〜1.0×10−2質量部配合されるオクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、
    を含有する共重合体ラテックス組成物。
  2. 前記(C)オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと前記(B)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの配合比((C):(B))が、質量比で、1:2〜1:50である請求項1に記載の共重合体ラテックス組成物。
  3. 前記(A)共重合体ラテックスに含まれる前記共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、アクリルアミド、及びメタアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも一種に由来する構造単位を更に含有する請求項1または2に記載の共重合体ラテックス組成物。
  4. 前記(A)共重合体ラテックスに含まれる前記共重合体が、スチレン・ブタジエン共重合体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の共重合体ラテックス組成物。
  5. 前記(A)共重合体ラテックスに含まれる共重合体が、カルボキシル基によって変性されたスチレン・ブタジエン共重合体である請求項1〜4のいずれか一項に記載の共重合体ラテックス組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013211246A (ja) * 2012-02-29 2013-10-10 Jsr Corp 電極用バインダー組成物、電極用スラリー、電極、および蓄電デバイス

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