JP2009126388A - 車両用運動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、電動モータ等によって左右輪を独立に駆動する車両の運動状態を制御する車両用運動制御装置において、横力センサを用いて車両の走行運動状態を迅速に制御しつつ、操舵制御装置と駆動力制御装置の制御を適切に行なうことにより、車両の走行運動性能等を適切に向上することができる車両用運動制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】S9では、操舵角変化後の実タイヤ横力を検出する。ここでは、タイヤ横力センサ4で、操舵した前輪に生じた実際のタイヤ横力を検出する。
そして、S10では、目標横力と実タイヤ横力との差を算出する。目標横力と実タイヤ横力との差を算出することで、車体にヨーモーメントが生じる前段階で、車両の旋回状態を素早く予測する。
【選択図】図3

Description

この発明は、車両用運動制御装置に関し、特に、電動モータ等によって左右輪を独立に駆動する車両の運動状態を制御する車両用運動制御装置に関する。
従来より、車両の運動状態を制御するものとして、下記特許文献1に記載された車両の走行制御装置が知られている。
この車両の走行制御装置においては、操舵制御装置と駆動力制御装置とを備えており、これらの制御装置の制御介入時期を、車両の走行状態が不安定な場合と車両の走行状態が安定な場合とで変更するように構成している。こうすることで、操舵制御装置と駆動力制御装置とを備えた車両において、車両の走行運動を効果的に制御することができる。
また、この走行制御装置では、車両に生じたヨーモーメント等の状態量をヨーレイトセンサ等で検出して、フィードバック制御によって制御を行っている。
一方、下記特許文献2に記載された車両の測定装置では、車輪を支持する車軸に、歪みゲージ等を設けて、車輪に作用する横方向の荷重、すなわち、「横力」を検出する横力センサを開示している。
特開2003−175749号公報 特開平4−331336号公報
ところで、近年、エンジンに代わり、電動モータ等によって左右輪を独立に駆動する車両が多く提案されている。このような電動モータ等によって左右輪を独立に駆動すると、左右輪の駆動差を迅速に発生することができるという利点がある。
こうした電動モータ駆動の車両においても、前述の特許文献1で記載されたような操舵制御装置と駆動力制御装置を備えて、車両の運動状態を適切に制御することが考えられる。
もっとも、特許文献1の走行制御装置においては、ヨーレイトセンサを用いてフィードバック制御を行なっているため、車両に実際にヨーモーメントが発生した後に制御を行なうことになり、制御の迅速性という観点では、充分ではなかった。
そこで、特許文献2に記載された横力センサ等を用いて、車輪の横力を検出することで、ヨーモーメントが車両に生じる前段階で、予め迅速に車両の運動状態を制御することが考えられる。
しかし、単に、横力センサを用いて車両の運動状態を制御しても、「操舵制御装置」と「駆動力制御装置」を有するものでは、この二つの制御装置をどのように制御すれば、車両の運動状態等を適切に向上できるか不明であった。
そこで、本発明は、電動モータ等によって左右輪を独立に駆動する車両の運動状態を制御する車両用運動制御装置において、横力センサを用いて車両の走行運動状態を迅速に制御しつつ、操舵制御装置と駆動力制御装置の制御を適切に行なうことにより、車両の走行運動性能等を適切に向上することができる車両用運動制御装置を提供することを目的とする。
この発明の車両用運動制御装置は、左右輪を独立して制駆動する電動モータを備える制駆動力制御装置と、車輪の操舵角を制御する操舵制御装置とを備え、ドライバーの旋回要求に応じて該制駆動力制御装置と該操舵制御装置を制御する車両用運動制御装置であって、ハンドル舵角に応じて車両の目標ヨーモーメントを算出する目標ヨーモーメント算出手段と、目標ヨーモーメントから目標横力を算出する目標横力算出手段と、車輪に発生する横力を検出する横力検出手段と、該横力検出手段で検出した横力が目標横力に一致するように、前記制駆動力制御装置と前記操舵制御装置を制御するものである。
上記構成によれば、目標横力算出手段で目標横力を算出し、この目標横力に対して、横力検出手段で検出した横力が一致するように、制駆動制御装置と操舵制御装置とを制御することになる。
このため、ヨーレイトセンサを用いてフィードバック制御を行なうものより、迅速に制御を行なうことが可能となり、制駆動制御装置と操舵制御装置による制御を、各装置の利点をそれぞれ生かして、車両の運動状態等を高めることができる。
この発明の一実施態様においては、操舵開始時に前記操舵制御装置を制御して、車輪を転舵するように設定し、前記目標横力に、検出した横力が足りない場合に、前記制駆動力制御装置を制御して、左右輪に駆動力差が生じるように設定したものである。
上記構成によれば、まず、操舵制御装置により車輪が転舵されて、目標横力に足りない場合には、制駆動力制御装置によって左右輪に駆動力差が生じることになる。
このため、初めに車輪に横滑り角がついて、確実に横力が発生してから、制駆動力制御装置による制御がなされるため、横力を検出した制御をより適切に行なうことができる。
よって、横力検出手段を利用した車両の運動制御をより適切に行なうことができる。
この発明の一実施態様においては、バッテリー充電量を検出する充電量検出手段を備え、バッテリー充電量が所定値以下である場合には、前記制駆動力制御装置による制御量を増加するように設定したものである。
上記構成によれば、バッテリー充電量が所定値以下の少ない場合には、制駆動力制御装置による制御量を増加させて、制動力による回生エネルギーを増加させることができる。
このため、旋回に必要なヨーモーメントを発生させながらバッテリー充電量を増加させることができる。
よって、車両の旋回性能を高めつつ、バッテリー充電量を確保して車両の走行性能を高めることができる。
この発明の一実施態様においては、車輪の操舵角が所定値以下である場合には、前記制駆動力制御装置による制御量を増加するように設定したものである。
上記構成によれば、車輪の操舵角が少ない場合には、制駆動力制御装置による制御量を増加することで、駆動力差によるヨーモーメントが早期に発生することになる。
このため、車輪に横滑り角を生じさせることなく、早期に、車両にヨーモーメントを発生させることができる。
よって、小舵角時の応答性を向上することができ、車両の旋回性能を向上することができる。
この発明の一実施態様においては、車両速度を検出する車速検出手段を備え、車速が所定値以下の際には、前記操舵制御装置による制御量を増加するように設定したものである。
上記構成によれば、低速の場合には、操舵制御装置による制御量を増加することで、駆動力差によるヨーモーメントが発生しにくい低速時には、車輪に横滑り角をつけて横力を発生させ、確実にヨーモーメントを発生させることができる。
このため、低速時においても、確実に車両にヨーモーメントを発生させることができ、車両の旋回状態を制御することができる。
よって、低速時の車両に、確実にヨーモーメントを発生させて、車両の旋回性能を向上することができる。
この発明によれば、ヨーレイトセンサを用いてフィードバック制御を行なうものより、迅速に制御を行なうことが可能となり、制駆動制御装置と操舵制御装置による制御を各装置の利点をそれぞれ生かして、車両の運動状態等を高めることができる。
よって、電動モータ等によって左右輪を独立に駆動する車両の運動状態を制御する車両用運動制御装置において、横力センサを用いて車両の運動状態を迅速に制御しつつ、操舵制御装置と駆動力制御装置の制御を適切に行なうことにより、車両の運動状態等を適切に向上することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は本発明の実施形態に係る車両用運動制御装置を採用した自動車の概略模式図、図2は車両用運動制御装置のシステムブロック図、図3は車両用運動制御装置の制御方法を説明するメインフローチャート、図4は低車速時サブルーチンのフローチャート、図5は小舵角時サブルーチンのフローチャート、図6は低電圧時サブルーチンのフローチャート、図7(a)はタイヤに横滑り角がついた場合のタイヤ横力及び制駆動力を説明する図、(b)は制駆動力とタイヤ横力とのスリップ率の変化に伴う関係を示したグラフ、図8(a)は操舵変化による車両のヨーモーメントについて説明する模式図、(b)は駆動力差による車両のヨーモーメントについて説明する模式図である。
図1に示すように、自動車1には複数のセンサとアクチュエータを設置している。
まず、センサとしては、車両速度を検出する車速センサ2と、ハンドルHの舵角量や舵角速度を検出するハンドル舵角センサ3と、タイヤTのタイヤ横力を検出するタイヤ横力センサ4と、電動モータMの制駆動力を検出する制駆動力センサ5と、バッテリーBの電圧量を検出するバッテリー電圧センサ6とを備えている。
一方、アクチュエータとしては、前輪操舵アクチュエータ(AFS:アクティブ・フロント・ステアリング)7と、制駆動力アクチュエータ(電動モータM)8…とを備えている。
これらのセンサ(2,3,4,5,6)とアクチュエータ(7,8…)は、図2のブロック図に示すように、中央に設けた中央情報処理装置10(以下、CPU)にそれぞれ連結されており、各センサ(2,3,4,5,6)は各検出信号をCPU10に送信して、各アクチュエータ(7,8…)はCPU10から送信された作動信号で、所定の作動を行なうように構成している。
まず、車速センサ2は車両速度信号をCPU10に送信しており、ハンドル舵角センサ3はドライバーの操舵状態である操舵量や操舵速度等の操舵信号をCPU10に送信している。また、タイヤ横力センサ4は旋回時等にタイヤTに作用する横方向(略車幅方向)の力、すなわち、タイヤ横力の信号をCPU10に送信しており、制駆動力センサ5は電動モータMで出力する制駆動力の制駆動力信号をCPU10に送信している。また、バッテリー電圧センサ6はバッテリーBの電圧信号等をCPU10に送信している。
一方、前輪操舵アクチュエータ7は、CPU10から送信される舵角制御信号を受信するように構成している。また、制駆動力アクチュエータ8は、CPU10から送信される制駆動力制御信号を受信するように構成している。
各アクチュエータ(7,8)の作動について簡単に説明すると、前輪操舵アクチュエータ7は、前輪T1のタイロッドに連結されており、前輪T1の左右輪の舵角量を自由に制御して、前輪T1の操舵角を変化するようにしている。制駆動力アクチュエータ8は、車輪の駆動力及び制動力を制御しており、4つの車輪の制駆動力を、独立に制御している。
なお、この制駆動力アクチュエータ8は、駆動時には、バッテリーBから電力の供給を受けて車輪を駆動して、制動時には、車輪から回転を受けて電力を発生して、バッテリーBに電力を蓄電(回生)するようにしている。
なお、具体的には、図示しないが、この制駆動力アクチュエータ8は、アクセルペダルとブレーキペダルからの信号を受けて、車輪に対して制駆動力を付与するようにしている。
CPU10は、次に示す制御フローによって、車両の走行運動状態を制御している。
図3は、この実施形態の車両用運動制御装置の制御方法を説明するメインフローチャートである。
まず、S1では、各種信号を読み込む。これらの信号は、前述した各種センサ(2,3,4,5,6)から読み込む。
次に、S2では、操舵があったか否かの判定を行なう。操舵がないと判断した場合(NO判定)には、そのままエンドに移行して、次の制御に備える。一方、操舵があったと判断した場合(YES判定)には、S3に移行する。
S3では、車速が20km/h以上か否かの判定を行なう。車速が20km/h以上でない場合(NO判定)には、低速サブルーチンに移行する。一方、車速が20km/h以上の場合(YES判定)には、低速サブルーチンには移行せず、S4に移行する。なお、低速サブルーチンについては後述する。
S4では、舵角変化量がα(例えば、5°)以上か否かの判定を行なう。そこで、舵角変化量がα以上でない場合(NO判定)には、小舵角時サブルーチンに移行する。一方、舵角変化量がα以上であれば、S5に移行する。なお、この小舵角時サブルーチンについても後述する。
S5では、バッテリー電圧がβ(例えば、11V)以上か否かの判定を行なう。バッテリー電圧がβ以上でない場合とは、バッテリーBの充電量が減少した状態であり、バッテリー上がりの危険が大きい場合である。そこで、バッテリー電圧がβ以上でない場合(NO判定)には、低電圧時サブルーチンに移行する。一方、バッテリー電圧がβ以上であれば、S6に移行する。なお、この低電圧時サブルーチンについても、後述する。
以上のステップを経ることで、比較的高速時に、舵角をある程度大きく操舵し、バッテリー充電量も充分に確保している場合に、S6に移行することになる。
S6では、操舵角に応じて目標ヨーモーメントを算出する。具体的には、舵角量、車速、車両重量、及び舵角速度等の各要素を加味して、車両が理想的な旋回状態が得られるように目標ヨーモーメントを算出する。
次に、S7では、この目標ヨーモーメントから目標横力を算出する。この目標横力は、各車輪ごとに求めて、各4つの車輪の横力の合計によって、車両の目標ヨーモーメントが得られるように、各輪ごとに目標横力の値に決定する。
そして、S8では、前輪操舵アクチュエータ7を制御する。具体的には、前輪操舵アクチュエータ7によって、前輪T1のタイロッドをストロークさせることで、前輪T1の操舵角をそれぞれ変化させる。このように、前輪T1の操舵角を変化させることで、前輪T1に横滑り角をつけて、前輪T1にタイヤ横力を発生させる。
S9では、操舵角変化後の実タイヤ横力を検出する。ここでは、タイヤ横力センサ4で、操舵した前輪T1に生じた実際のタイヤ横力を検出する。
次に、S10では、目標横力と実タイヤ横力との差を算出する。目標横力と実タイヤ横力との差を算出することで、車体にヨーモーメントが生じる前段階で、車両の旋回状態を素早く予測する。
その次に、S11では、このタイヤ横力の差がγ(例えば1N)以上か否かの判定を行なう。ここで、γ以上ないと判断した場合(NO判定)には、そのままエンドに移行して、次の制御に備える。すなわち、γという不感帯を設定して、目標横力と実タイヤ横力との差がγ以内であれば、所望のタイヤ横力がタイヤに発生していると擬制して、次の制御に備えるのである。
一方、γ以上であると判断した場合(YES判定)には、所望のタイヤ横力が発生していないため、S13に移行して、タイヤ横力の差から必要駆動力差を算出する。
具体的には、タイヤ横力が大きく足りない場合には、車両のヨーモーメントが大きくなるように、左右の駆動力差が大きくなるよう必要駆動力差を算出して、タイヤ横力が大きくなりすぎている場合には、逆に車両のヨーモーメントが小さくなるように、左右の駆動力差を逆に内輪側を大きくなるよう必要駆動力差を算出する。
そして、S13では、S12で求めた必要駆動力差で、制駆動力アクチュエータ8を制御する。こうして、前輪操舵アクチュエータ7だけでは得られない目標ヨーモーメントを、制駆動力アクチュエータ8による駆動力差によるヨーモーメントを加算することで得ることができる。
以上のメインフローによって、車両の旋回時の運動状態を制御する。
ここで、車両に発生するヨーモーメントについて、図7と図8を利用して説明する。
まず、図7(a)に示すように、タイヤTの接地面には、周知のように摩擦円Cが発生しており、この摩擦円Cの中でタイヤTの制駆動力(前後力)とタイヤ横力をバランスして発生させることで、車両の運動性能を高めることができる。なお、この摩擦円Cの径は、路面μや接地荷重によって変化して、車両の走行状態で時々刻々変化するものである。
この図に示すように、車両の進行方向に対して、タイヤTを転舵することで、タイヤTには横滑り角θが生じる。この横滑り角θが生じることで、タイヤTには、タイヤ横力Fが生じる。
このタイヤ横力Fが発生した状態で、タイヤTに制動力Fを与えることができるが、両者を合算した合計ベクトルFTOが摩擦円C内にあれば、タイヤTの滑り(タイヤ横力と制駆動力の飽和)は生じず、タイヤ横力Fを得つつも、その際に得られる制動力Fを最大限に得ることができる。
(b)では、この制駆動力とタイヤ横力におけるスリップ率の変動に伴った変化特性のグラフを示している。
このグラフに示すように、駆動力は、スリップ率が増加するにしたがい一旦増加するものの、その後徐々に減少する(実線で示す特性ライン)。一方、タイヤ横力は、スリップ率0の時が最も大きく、スリップ率が増加するにしたがい一気に減少して、その後、徐々に減少する(破線で示す特性ライン)。このグラフから、制駆動力もタイヤ横力も、スリップ率に応じて増減することがわかる。
また、この駆動力やタイヤ横力の特性ラインは、タイヤの横滑り角によっても変化して、駆動力は横滑り角の増加に伴って減少し、タイヤ横力は横滑り角の増加に伴って増加する。このことから、制駆動力とタイヤ横力は、横滑り角の増加に伴い、逆方向に増減することがわかる。
こうしたことから、タイヤ横力や制駆動力で同一の値を維持しつつも、「スリップ率(タイヤの回転差=駆動力差)」と「横滑り角」を変化させることで、車両側の要求(旋回性能を高める要求や、回生エネルギーを増加させる要求等)を満足させることができることが分かる。
図8(a)は、前輪を操舵して横滑り角をつけることで、車両に対してヨーモーメントを生じさせた状態の模式図である。この図に示すように、前輪T1に横滑り角θがつくことで、前輪T1に大きなタイヤ横力が発生して、車両前部が旋回方向(図面では左側)に向くようなヨーモーメントYMが重心廻りに発生することが分かる。
一方、図8(b)は、左右の駆動輪に駆動力差を生じさせて、車両に対してヨーモーメントを生じさせた状態の模式図である。この図に示すように、この場合も、旋回外輪である一方側の車輪(図面では右側車輪)の駆動力を、他方側の車輪の駆動力よりも大きくすることで、車輪の推進力が一方側の方が高まり、車両前部が旋回方向(図面では左側)に向くようなヨーモーメントYMが重心廻りに発生することが分かる。
このように、「横滑り角」を制御した場合も、「制駆動力」を制御した場合も共に、車両にヨーモーメントを発生させることができるため、本実施形態では、前輪操舵アクチュエータ7と制駆動力アクチュエータ8を相互に制御することで、所望のヨーモーメントを、車両に生じさせるようにしているのである。
本実施形態のメインフローチャートでは、最初に前輪操舵アクチュエータ7で前輪T1を操舵して、目標横力が得られない場合に補助的に制駆動力アクチュエータ8で、駆動力差が生じるように制御している。
これは、タイヤ横力を検出して制御を行なう場合に、早期に前輪T1のタイヤ横力を検出することができるため、こうした順序で制御を行なうようにしているのである。
次に、図4に示す、低車速時サブルーチンについて説明する。
メインフローのS3で車速が20km/h以上でないと判断(NO判定)した場合に、この低車速時サブルーチンに移行する。
S21では、操舵角に応じた目標ヨーモーメントを算出する。この目標ヨーモーメントは、メインフローにおける算出と異なり、低車速時独自の目標ヨーモーメントとして算出する。例えば、操舵量と操舵速度からだけで目標ヨーモーメントを算出することが考えられる。
S22では、目標ヨーモーメントから目標舵角量を算出する。低車速時には、タイヤ横力が大きくならないため、目標横力を算出することなく、直接、前輪T1の舵角量を算出しているのである。
S23では、目標舵角で前輪操舵アクチュエータ7を制御する。この制御は、フィードフォワード制御であるため、そのままの目標舵角値で前輪を操舵する。
その後、S24では、左右均等で制駆動力アクチュエータ8を制御する。低車速時には、駆動力差によるヨーモーメントが生じにくいため、このように、制駆動力アクチュエータ8を左右均等で制御するようにしている。
以上のステップ終了後は、図3のメインフローに戻り、次に制御に備えるようにしている。
このように、低車速時サブルーチンでは、駆動力差でヨーモーメントを発生させることなく、前輪T1の操舵角を変化させることだけで、車両にヨーモーメントが発生するようにしている。
これは、低車速時においては、駆動力差によるヨーモーメントが発生しにくいため、舵角量を変化させる制御を中心に制御をしているからである。
次に、図5に示す、小舵角時サブルーチンについて説明する。
メインフローのS4で、舵角変化量がα以上でないと判断(NO判定)した場合に、この小舵角時サブルーチンに移行する。
S31では、操舵角に応じた目標ヨーモーメントを算出する。この目標ヨーモーメントも、メインフローにおける算出と異なり、小舵角時における目標ヨーモーメントとして算出する。特に、中立位置での極小舵角では、目標ヨーメントを逆位相に算出して、車両の走行時のフラツキを防止するようにしてもよい。
S32では、目標ヨーモーメントから目標横力を算出する。この目標横力の算出は、メインフローと同様にしてもよい。
S33では、目標横力から必要駆動力差を算出する。この小舵角時サブルーチンでは、まず、制駆動力アクチュエータ8による駆動力差でヨーモーメントを発生させるため、必要駆動力差を算出する。
そして、S34では、この必要駆動力差で制駆動力アクチュエータ8を制御する。ここで、最初に制駆動力アクチュエータ8で車輪に駆動力差を生じさせることで、車両には、瞬時にヨーモーメントが発生することになり、旋回性能の応答性を高めることができる。
S35では、駆動力差制御後の実タイヤ横力を検出する。ここでも、タイヤ横力センサ4で、前輪と後輪に生じた実際のタイヤ横力を検出する。
次に、S36では、目標横力と実タイヤ横力との差を算出する。目標横力と実タイヤ横力との差を算出することで、車両旋回に必要なタイヤ横力が各車輪に発生していているかを判断する。
S37では、このタイヤ横力の差がω(例えば0.5N)以上か否かの判定を行なう。ここで、ω以上ないと判断した場合(NO判定)には、そのままリターンに移行して、図3のメインフローに戻り、次の制御に備える。すなわち、ここでも、ωという不感帯を設定して、目標横力と実タイヤ横力との差がω以内であれば、所望のタイヤ横力がタイヤに発生していると擬制して、次の制御に備えるのである。
一方、ω以上であると判断した場合(YES判定)には、所望のタイヤ横力が発生していないため、S38に移行して、タイヤ横力の差から補足駆動力差を算出する。
具体的には、タイヤ横力が大きく足りない場合には、車両のヨーモーメントがもう少し大きくなるように、さらに、左右の駆動力差が大きくなるように、補足駆動力差を算出するのである。
そして、S39では、S38で求めた必要駆動力差で、制駆動力アクチュエータ8を制御する。こうして、さらに制駆動力アクチュエータ8による駆動力差によるヨーモーメントを増加するようにしている。
以上のステップ終了後は、図3のメインフローに戻り、次に制御に備えるようにしている。
このように、小舵角時サブルーチンでは、前輪の操舵角を変化させることなく、制駆動力アクチュエータ8による駆動力差制御だけで、車両にヨーモーメントを発生させるようにしている。
これは、小舵角時においては、ヨーモーメント発生の応答性が高い制駆動力制御を主に行なうことで、車両の旋回性能を高められるからである。
最後に、図6に示す、低電圧時サブルーチンについて説明する。
メインフローのS5で、バッテリー電圧がβ以上でないと判断(NO判定)した場合に、この低電圧時サブルーチンに移行する。
S41では、操舵角に応じた目標ヨーモーメントを算出する。この目標ヨーモーメントは、メインフローにおける算出と同様にしてもよい。
S42では、目標ヨーモーメントから目標横力を算出する。この目標横力の算出も、メインフローと同様にしてもよい。
S43では、目標横力から必要駆動力差を算出する。この低電圧時サブルーチンでは、積極的に制駆動力アクチュエータ8で駆動力差を発生させることで、制動力をかけた制駆動力アクチュエータ8で発電を行い、回生エネルギーを発生させるようにしている。このため、まず、目標横力から必要駆動力差を算出するようにしているのである。
S44では、この必要駆動力差で制駆動力アクチュエータ8を制御する。ここでは、制駆動力アクチュエータ8を制御して、車輪に駆動力差を生じさせることで、制動側の制駆動力アクチュエータ8で発電を行なうことができる。また、瞬時にヨーモーメントが発生するために、旋回性能の応答性も高めることができる。
S45では、駆動力差制御後の実タイヤ横力を検出する。ここでも、タイヤ横力センサ4で、前輪と後輪に生じた実際のタイヤ横力を検出する。
S46では、目標横力と実タイヤ横力との差を算出する。目標横力と実タイヤ横力との差を算出することで、旋回に必要なタイヤ横力が各車輪に発生しているかを判断する。
S47では、このタイヤ横力の差がδ(例えば0.3N)以上か否かの判定を行なう。ここで、δ以上ないと判断した場合(NO判定)には、そのままリターンに移行して、図3のメインフローに戻り、次の制御に備える。
すなわち、ここでも、δという不感帯を設定して、目標横力と実タイヤ横力との差がδ以内であれば、所望のタイヤ横力がタイヤに発生していると擬制して、次の制御に備えるのである。
もっとも、このδは、前述のγ、ωの値より小さく設定している。それは、低電圧時サブルーチンの場合、回生エネルギーを発生させることが中心に制御されることで、旋回性能が悪化するおそれが大きいため、この不感帯の幅を小さくすることで、旋回制御の目標ヨーモーメントに、できるだけ近接させて、旋回性能を高めるためである。
一方、δ以上であると判断した場合(YES判定)には、所望のタイヤ横力が発生していないため、S48に移行して、タイヤ横力の差から必要操舵角を算出する。
具体的には、タイヤ横力が足りない場合には、車両のヨーモーメントがもう少し大きくなるように、必要操舵角を大きく算出して、タイヤ横力が多い場合には、車両のヨーモーメントが小さくなるように、必要操舵角を小さく又は逆位相になるように算出するのである。
そして、S49では、S48で求めた必要操舵角で、前輪操舵アクチュエータ7を制御する。こうして、駆動力差制御だけでは得られない目標ヨーモーメントを、前輪操舵アクチュエータ7によるヨーモーメントを加算して得ることができる。
以上のステップ終了後は、図3のメインフローに戻り、次に制御に備えるようにしている。
このように、低電圧時サブルーチンでは、駆動力差制御を中心におこなって、回生エネルギーを発生させるように制御しつつも、車両に旋回に必要なヨーモーメントを発生させるようにしている。
これは、低電圧時においては、バッテリー上がりのおそれが大きいため、バッテリーBの充電量を増加するため、回生エネルギーを増加させるニーズが高いからである。
次に、このように構成された本実施形態の作用効果について説明する。
この実施形態の車両用運動制御装置は、ハンドルH舵角に応じて車両の目標ヨーモーメントを算出して、この目標ヨーモーメントから目標横力を算出し、タイヤ横力センサ4で検出したタイヤ横力がこの目標横力に一致するように、制駆動力アクチュエータ8と前輪操舵アクチュエータ7を制御している。
これにより、ヨーレイトセンサを用いてフィードバック制御を行なうものよりも、迅速に制御を行なうことが可能となり、制駆動力アクチュエータ8と前輪操舵アクチュエータ7によるヨーモーメントを発生させる制御を、各装置の利点をそれぞれ生かして、車両の運動状態等を高めることができる。
よって、電動モータMによって左右輪を独立に駆動する車両の運動状態を制御する車両用運動制御装置において、タイヤ横力センサ4を用いて車両の運動状態を迅速に制御しつつ、前輪操舵アクチュエータ7と制駆動力アクチュエータ8の制御を適切に行なうことにより、車両の運動状態等を適切に向上することができる。
また、この実施形態では、メインフローの制御において、操舵開始時に前輪操舵アクチュエータ7を制御することで、前輪T1を転舵するように設定し、目標横力を検出したタイヤ横力が発生していない場合に、制駆動力アクチュエータ8を制御して、左右輪に駆動力差が生じるように設定している。
これにより、まず、前輪操舵アクチュエータ7により前輪T1が転舵されて、目標横力を発生していない場合に、制駆動力アクチュエータ8で左右輪に駆動力差を生じさせることになる。
このため、初めに前輪T1に横滑り角がついて、確実にタイヤ横力が発生してから、制駆動力アクチュエータ8で制御がなされるため、タイヤ横力を検出してフィードバック制御を行なう制御を、より適切に行なうことができる。
よって、タイヤ横力を検出して行なう車両の運動制御を、より適切に行なうことができる。
また、この実施形態では、低電圧時サブルーチンにおいて、バッテリー電圧がβ以下である場合には、制駆動力アクチュエータ8の制御を中心に行なうようにしている。
これにより、バッテリー充電量がβ以下の少ない場合には、制駆動力アクチュエータ8の制御量を増加させて、制動力による回生エネルギーを増加させることができる。
このため、旋回に必要なヨーモーメントを発生させながらバッテリー充電量を増加させることができる。
よって、車両の旋回性能を高めつつ、バッテリー充電量を確保して車両の走行性能を高めることができる。
また、この実施形態では、小舵角時サブルーチンにおいて、操舵量がα以下である場合には、制駆動力アクチュエータ8の制御だけでヨーモーメントを発生するようにしている。
これにより、車輪の操舵量が少ない場合には、制駆動力アクチュエータ8による制御だけで、駆動力差によるヨーモーメントが早期に発生することになる。
このため、車輪に横滑り角を生じさせることなく、早期に、車両にヨーモーメントを発生させることができる。
よって、小舵角時の応答性を向上することができ、車両の旋回性能を向上することができる。
また、この実施形態では、低車速時サブルーチンにおいて、車速が20km/h以下の際には、前輪操舵アクチュエータ7の制御だけでヨーモーメントを発生するようにしている。
これにより、低速の場合には、前輪操舵アクチュエータ7による制御だけで、車輪に横滑り角をつけて横力を発生させ、確実にヨーモーメントを発生させることができる。
このため、低速時においても、確実に車両にヨーモーメントを発生させることができ、車両の旋回状態を制御することができる。
よって、低速時の車両に、確実にヨーモーメントを発生させて、車両の旋回性能を向上することができる。
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明の操舵制御装置は、実施形態の前輪舵角アクチュエータ7に対応し、
以下、同様に、
制駆動力制御装置は、制駆動力アクチュエータ8に対応し、
目標ヨーモーメント算出手段は、中央情報処理装置(CPU)10に対応し、
目標横力算出手段は、中央情報処理装置(CPU)10に対応し、
横力検出手段は、タイヤ横力センサ4に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車両用運動制御装置に適用する実施形態を含むものである。
本実施形態では、4つの車輪の制駆動力を、電動モータMで制御するようにしているが、その他に前輪二輪又は後輪二輪の制駆動力を、電動モータMで制御するようにしてもよい。また、操舵アクチュエータも、前輪だけではなく、後輪にも設定するようにしてもよい。
さらに、ヨーレイトセンサを追加設定することで、ヨーレイト信号を取り込んで制御を行なうように構成してもよい。
実施形態に係る車両用運動制御装置を採用した自動車の概略模式図。 車両用運動制御装置のシステムブロック図。 車両用運動制御装置の制御方法を説明するメインフローチャート。 低車速時サブルーチンのフローチャート。 小舵角時サブルーチンのフローチャート。 低電圧時サブルーチンのフローチャート。 (a)タイヤに横滑り角がついた場合のタイヤ横力及び制駆動力を説明する図、(b)制駆動力とタイヤ横力とのスリップ率の変化に伴う関係を示したグラフ。 (a)操舵変化による車両のヨーモーメントについて説明する模式図、(b)駆動力差による車両のヨーモーメントについて説明する模式図。
符号の説明
1…自動車
2…車速センサ
3…ハンドル舵角センサ
4…タイヤ横力センサ
5…制駆動力センサ
6…バッテリー電圧センサ
7…前輪操舵アクチュエータ
8…制駆動力アクチュエータ(電動モータM)
10…中央情報処理装置(CPU)

Claims (5)

  1. 左右輪を独立して制駆動する電動モータを備える制駆動力制御装置と、車輪の操舵角を制御する操舵制御装置とを備え、ドライバーの旋回要求に応じて該制駆動力制御装置と該操舵制御装置を制御する車両用運動制御装置であって、
    ハンドル舵角に応じて車両の目標ヨーモーメントを算出する目標ヨーモーメント算出手段と、
    目標ヨーモーメントから目標横力を算出する目標横力算出手段と、
    車輪に発生する横力を検出する横力検出手段と、
    該横力検出手段で検出した横力が目標横力に一致するように、前記制駆動力制御装置と前記操舵制御装置を制御する
    車両用運動制御装置。
  2. 操舵開始時に前記操舵制御装置を制御して、車輪を転舵するように設定し、
    前記目標横力に、検出した横力が足りない場合に、前記制駆動力制御装置を制御して、左右輪に駆動力差が生じるように設定した
    請求項1記載の車両用運動制御装置。
  3. バッテリー充電量を検出する充電量検出手段を備え、
    バッテリー充電量が所定値以下である場合には、前記制駆動力制御装置による制御量を増加するように設定した
    請求項1又は2記載の車両用運動制御装置。
  4. 車輪の操舵角が所定値以下である場合には、前記制駆動力制御装置による制御量を増加するように設定した
    請求項1〜3いずれか記載の車両用運動制御装置。
  5. 車両速度を検出する車速検出手段を備え、
    車速が所定値以下の際には、前記操舵制御装置による制御量を増加するように設定した
    請求項1〜4いずれかに記載の車両用運動制御装置。

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