JP2009123447A - 燃料電池およびそのセパレータ - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料ガスや酸化ガスの出口側マニホールドに溜まった水が凍結した場合にガスリークが発生するのを抑える。
【解決手段】セパレータ20の面を鉛直方向に一致させた場合における燃料ガスの出口側マニホールド16bと酸化ガスの出口側マニホールド15bを形成する輪郭のうちの下縁が、当該セパレータ20の外側よりも燃料ガス流路または酸化ガス流路35側の方が高くなるように傾斜している。燃料ガスの入口側マニホールド16aと酸化ガスの入口側マニホールド15aを形成する輪郭のうちの下縁が、当該セパレータ20の外側よりも燃料ガス流路または酸化ガス流路35側の方が低くなるように傾斜していることも好ましい。
【選択図】図3
【解決手段】セパレータ20の面を鉛直方向に一致させた場合における燃料ガスの出口側マニホールド16bと酸化ガスの出口側マニホールド15bを形成する輪郭のうちの下縁が、当該セパレータ20の外側よりも燃料ガス流路または酸化ガス流路35側の方が高くなるように傾斜している。燃料ガスの入口側マニホールド16aと酸化ガスの入口側マニホールド15aを形成する輪郭のうちの下縁が、当該セパレータ20の外側よりも燃料ガス流路または酸化ガス流路35側の方が低くなるように傾斜していることも好ましい。
【選択図】図3
Description
本発明は、燃料電池およびそのセパレータに関する。さらに詳述すると、本発明は、燃料電池を構成するセルおよびそのセパレータの構造の改良に関する。
一般に、燃料電池(例えば固体高分子型燃料電池)は電解質膜およびその両面に配した一対の電極からなる接合体(例えばMEA、MEGA)と、該接合体を挟持するセパレータとで構成されている。また、このようなセルが複数積層されていわゆる燃料電池スタックが形成されている。
このような燃料電池を構成するセパレータは、例えば、発電領域に形成された燃料ガス(例えば水素ガス)流路または酸化ガス(例えば空気)流路と、燃料ガス流路に燃料ガスを供給する燃料ガスの入口側マニホールドと、燃料ガス流路から燃料ガスを排出する燃料ガスの出口側マニホールドと、酸化ガス流路に酸化ガスを供給する酸化ガスの入口側マニホールドと、酸化ガス流路から酸化ガスを排出する酸化ガスの出口側マニホールドと、を備えている。また、このようなセパレータとして、マニホールドを形成する輪郭のうちの下縁がガス流路との連通路よりも低くなるように延長部を形成したもの、ガス流路とマニホールドの境界線を傾斜させたもの、等が開示されている(例えば特許文献1,2参照)。
特開2006−066225号公報
特開2006−147467号公報
しかしながら、マニホールドが上述のように各種形状となっていようとも、燃料ガスや酸化ガスの出口側マニホールドに溜まった水がソーク(燃料電池の停止状態下での放置)時に氷点下となって凍結してしまうと、セル間が拘束されてしまうおそれがある。さらに、このまま当該燃料電池スタックが例えば起動時におけるように熱膨張した際、氷が割れたり、氷がない箇所があったりといったことがあると、膨張に伴う変位が一箇所に集中し、この結果ガスリークが発生してしまうおそれがある。
そこで、本発明は、燃料ガスや酸化ガスの出口側マニホールドに溜まった水が凍結した場合にガスリークが発生するのを抑えることができる燃料電池およびそのセパレータを提供することを目的とする。
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。一般的に、燃料電池において上述のようにマニホールド内の水が凍結するとその後の熱膨張時にガスリークが生じるおそれがある。また、上述したように、従来技術の中には特有のマニホールドを備えたセパレータを提案しているものがあるが、これらセパレータはいずれも水が凍結した場合に生じうるガスリークに対応したものではない。これらの点につきさらに検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く着想を得るに至った。
本発明はかかる着想に基づくものであり、発電領域に形成された燃料ガス流路または酸化ガス流路と、燃料ガス流路に燃料ガスを供給する燃料ガスの入口側マニホールドと、燃料ガス流路から燃料ガスを排出する燃料ガスの出口側マニホールドと、酸化ガス流路に酸化ガスを供給する酸化ガスの入口側マニホールドと、酸化ガス流路から酸化ガスを排出する酸化ガスの出口側マニホールドと、を備えた燃料電池のセパレータにおいて、当該セパレータの面を鉛直方向に一致させた場合における燃料ガスの出口側マニホールドと酸化ガスの出口側マニホールドを形成する輪郭のうちの下縁が、当該セパレータの外側よりも燃料ガス流路または酸化ガス流路側の方が高くなるように傾斜しているというものである。
このような輪郭に形成された出口側マニホールドは、熱膨張が大きい電極(発電領域)に近い部位ほど高くなるように傾斜しているため、当該出口側マニホールド内の水が凍結してできる氷は、電極に近い部位ほど薄い形状となる。このため、出口側マニホールド内にて氷が生じたとしても、熱膨張が大きい電極に近い部位を起点として燃料電池セル間にて氷が割れやすい。したがって、熱膨張時における変位が分散されることとなり、変位の集中に起因したガスリークが発生するのを抑えることができる。
このような燃料電池のセパレータにおいては、当該セパレータの面を鉛直方向に一致させた場合における燃料ガスの入口側マニホールドと酸化ガスの入口側マニホールドを形成する輪郭のうちの下縁が、当該セパレータの外側よりも燃料ガス流路または酸化ガス流路側の方が低くなるように傾斜していることが好ましい。燃料ガスや酸化ガスの入口側マニホールドの場合には、ソーク(燃料電池の停止状態下での放置)の前、できるだけ水を燃料電池セル内に導入し、マニホールド内には水が残っていない状態とすることが望ましい。この点、本発明ではマニホールド輪郭の下縁が燃料ガス流路または酸化ガス流路に向けて低くなるように傾斜させているから、入口側マニホールド内の水を燃料電池セル内に導き入れやすい。
また、このようなセパレータを含む燃料電池においては、隣り合うセパレータとセパレータの間には、発電領域に設けられる膜−電極接合体の少なくとも一部を挟持する枠状部材が挿入されており、該枠状部材の縁のうち少なくとも一部の断面形状が傾斜していることが好ましい。こうした場合、少なくとも一部の断面形状が傾斜している分だけ厚みが均一でなくなる。したがって、ガスリークが特に懸念されるセルとセルとの間の部位において、氷ができた場合の当該氷の厚さを不均一として剛性を低下させることが可能である。
この場合、隣接する枠状部材の縁のうち少なくとも一部の断面形状が互いに異なる方向に傾斜していることが好ましい。また、一対のセパレータ間に挟まれた一対の枠状部材の縁がV字状となっていることがさらに好ましい。加えて、セパレータの縁が枠状部材の縁から突出していない構造であることが好ましい。
本発明にかかる燃料電池では、マニホールドを形成する輪郭のうち下縁が傾斜した部分の近傍にて枠状部材の縁の断面形状が傾斜している構造となっている。
本発明によれば、燃料ガスや酸化ガスの出口側マニホールドに溜まった水が凍結した場合にガスリークが発生するのを抑えることができる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4に本発明の実施形態を示す。以下に説明する実施形態においては、まず、燃料電池1を構成するセル(発電セル)2および複数のセル2が積層されてなる燃料電池スタックの概略構成について説明し、その後、セパレータ20および樹脂フレーム(枠状部材)40の具体的な構成について説明することとする。
図1に本実施形態における燃料電池1のセル2の概略構成、図2に燃料電池1の構造例を示す。図示するように構成されるセル2は、順次積層されてセル積層体3を構成している(図2参照)。また、このセル積層体3等で構成される燃料電池スタックは、例えばスタック両端を一対のエンドプレート7で挟まれ、さらにこれらエンドプレート7どうしを繋ぐようにテンションプレート8からなる拘束部材が配置された状態で積層方向への荷重がかけられて締結されている(図2参照)。
なお、このような燃料電池スタック等で構成される例えば固体高分子型の燃料電池1は、燃料電池車両(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)の車載発電システムにおいて利用可能なものであるがこれに限られることはなく、各種移動体(例えば船舶や飛行機など)やロボットなどといった自走可能なものに搭載される発電システム、さらには定置の発電システムにおいても利用することが可能である。
セル2に含まれる電解質としては、膜−電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)あるいは膜−電極−拡散層接合体(MEGA:Membrane Electrode & Gas Diffusion Layer Assembly)を用いることができる。例えば本実施形態では、膜−電極接合体(以下、MEAともいう)30を用いている(図1等参照)。
セル2は、MEA30、該MEA30を挟持する一対のセパレータ20(図1等においてはそれぞれ符号20a,20bで示している)等で構成されている(図1参照)。MEA30および各セパレータ20a,20bはおよそ矩形の板状に形成されている。また、MEA30はその外形が各セパレータ20a,20bの外形よりも小さくなるように形成されている。
MEA30は、高分子材料のイオン交換膜からなる高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ともいう)31と、電解質膜31を両面から挟む一対の電極(アノード側拡散電極およびカソード側拡散電極)32,33とで構成されている(図1参照)。電解質膜31は、各電極32,33よりも大きく形成されている。この電解質膜31には、その周縁部34を残した状態で各電極32,33が例えばホットプレス法により接合されている。
MEA30を構成する電極32,33は、その表面に付着された白金などの触媒を担持した例えば多孔質のカーボン素材(拡散層)で構成されている。一方の電極(アノード)32には燃料ガス(反応ガス)としての水素ガス、他方の電極(カソード)33には空気や酸化剤などの酸化ガス(反応ガス)が供給され、これら2種類の反応ガスによりMEA30内で電気化学反応が生じてセル2の起電力が得られるようになっている。
セパレータ20(20a,20b)はガス不透過性の導電性材料で構成されている。導電性材料としては、例えばカーボンや導電性を有する硬質樹脂のほか、アルミニウムやステンレス等の金属(メタル)が挙げられる。本実施形態のセパレータ20(20a,20b)の基材は板状のメタルで形成されているものであり(メタルセパレータ)、この基材の電極32,33側の面には耐食性に優れた膜(例えば金メッキで形成された皮膜)が形成されている。
また、セパレータ20a,20bの両面には、複数の凹部によって構成される溝状の流路が形成されている。これら流路は、例えば板状のメタルによって基材が形成されている本実施形態のセパレータ20a,20bの場合であればプレス成形によって形成することができる。このようにして形成される溝状の流路は、発電領域を形成する酸化ガスのガス流路35や同じく発電領域を形成する水素ガスのガス流路36、あるいは冷却水流路37を構成している。より具体的に説明すると、セパレータ20aの電極32側となる内側の面には水素ガスのガス流路36が形成され、その裏面(外側の面)には冷却水流路37が形成されている(図1参照)。同様に、セパレータ20bの電極33側となる内側の面には酸化ガスのガス流路35が形成され、その裏面(外側の面)には冷却水流路37が形成されている(図1参照)。例えば本実施形態の場合、隣接する2つのセル2,2に関し、一方のセル2のセパレータ20aの外面と、これに隣接するセル2のセパレータ20bの外面とを付き合わせた場合に両者の冷却水流路37が一体となり断面が例えば矩形あるいはハニカム形の流路が形成される構造となっている。
さらに、上述したように各セパレータ20a,20bは、少なくとも流体の流路をなすための凹凸形状が表面と裏面とで反転した関係になっている。より具体的に説明すると、セパレータ20aにおいては、水素ガスのガス流路36を形成する凸形状(凸リブ)の裏面が冷却水流路37を形成する凹形状(凹溝)であり、ガス流路36を形成する凹形状(凹溝)の裏面が冷却水流路37を形成する凸形状(凸リブ)である。さらに、セパレータ20bにおいては、酸化ガスのガス流路35を形成する凸形状(凸リブ)の裏面が冷却水流路37を形成する凹形状(凹溝)であり、ガス流路35を形成する凹形状(凹溝)の裏面が冷却水流路37を形成する凸形状(凸リブ)である。
また、セパレータ20a,20bの長手方向の端部付近(本実施形態の場合であれば、図1中向かって左側に示す一端部の近傍)には、酸化ガスの入口側のマニホールド15a、水素ガスの出口側のマニホールド16b、および冷却水の入口側のマニホールド17aが形成されている。これらマニホールド15a,16b,17aは、各セパレータ20a,20bに設けられた例えば略矩形ないしは台形、あるいは両端が半円形状の長細矩形の透孔によって形成されている(図1等参照)。さらに、セパレータ20a,20bのうち反対側の端部には、酸化ガスの出口側のマニホールド15b、水素ガスの入口側のマニホールド16a、および冷却水の出口側のマニホールド17bが形成されている。本実施形態の場合、これらマニホールド15b,16a,17bも略矩形ないしは台形、あるいは両端が半円形状の長細矩形の透孔によって形成されている(図1参照)。
上述のような各マニホールドのうち、セパレータ20aにおける水素ガス用の入口側マニホールド16aと出口側マニホールド16bは、セパレータ20aに形成されている入口側の連絡通路61および出口側の連絡通路62を介してそれぞれが水素ガスのガス流路36に連通している。同様に、セパレータ20bにおける酸化ガス用の入口側マニホールド15aと出口側マニホールド15bは、セパレータ20bに形成されている入口側の連絡通路63および出口側の連絡通路64を介してそれぞれが酸化ガスのガス流路35に連通している(図1参照)。さらに、各セパレータ20a,20bにおける冷却水の入口側マニホールド17aと出口側マニホールド17bは、各セパレータ20a,20bに形成されている入口側の連絡通路65および出口側の連絡通路66を介してそれぞれが冷却水流路37に連通している。ここまで説明したような各セパレータ20a,20bの構成により、セル2には、酸化ガス、水素ガスおよび冷却水が供給されるようになっている。ここで具体例を挙げておくと、セル2が積層された場合、例えば水素ガスは、セパレータ20aの入口側マニホールド16aから連絡通路61を通り抜けてガス流路36に流入し、MEA30の発電に供された後、連絡通路62を通り抜けて出口側マニホールド16bに流出することになる。
なお、本実施形態においては、冷却水の入口側マニホールド17aと出口側マニホールド17bとをそれぞれセパレータ20の冷却水流れ方向両側の一方寄りおよび他方寄りに配置している(図1参照)。すなわち、本実施形態においては冷却水の入口側マニホールド17aと出口側マニホールド17bをセパレータ20の対角線上に配置することとし、これによってセパレータ20に対し冷却水が全面的に行き渡りやすくなるようにしている。
第1シール部材13a、第2シール部材13bは必要に応じて設けられる(図1参照)。セパレータ20a,20b間に設けられる場合、これら第1シール部材13a、第2シール部材13bは、例えば、ともに複数の部材(例えば独立した小型の4つの矩形枠体と、流体流路を形成するための大きな枠体)で形成される(図1参照)。これらのうち、第1シール部材13aはMEA30とセパレータ20aとの間に設けられるもので、より詳細には、その一部が、電解質膜31の周縁部34と、セパレータ20aのうちガス流路36の周囲の部分との間に介在するように設けられる。また、第2シール部材13bは、MEA30とセパレータ20bとの間に設けられるもので、より詳細には、その一部が、電解質膜31の周縁部34と、セパレータ20bのうちガス流路35の周囲の部分との間に介在するように設けられる。
さらに、隣接するセル2,2のセパレータ20bとセパレータ20aとの間には、複数の部材(例えば独立した小型の4つの矩形枠体と、流体流路を形成するための大きな枠体)で形成された第3シール部材13cが設けられている(図1参照)。この第3シール部材13cは、セパレータ20bにおける冷却水流路37の周囲の部分と、セパレータ20aにおける冷却水流路37の周囲の部分との間に介在するように設けられてこれらの間をシールする部材である。
なお、第1〜第3シール部材13a〜13cとしては、隣接する部材との物理的な密着により流体を封止する弾性体(ガスケット)や、隣接する部材との化学的な結合により接着する接着剤などを用いることができる。例えば本実施形態では各シール部材13a〜13cとして弾性によって物理的にシールする部材を採用しているが、この代わりに上述した接着剤のような化学結合によってシールする部材を採用することもできる。
枠状部材(以下、樹脂フレームともいう)40は、MEA30とともにセパレータ20a,20b間に挟持される例えば樹脂からなる部材(以下、樹脂フレームともいう)である。例えば本実施形態では、薄い枠形状の樹脂フレーム40をセパレータ20a,20b間に介在させ、当該樹脂フレーム40によってMEA30の少なくとも一部、例えば周縁部34に沿った部分を表側と裏側から挟持するようにしている。このように設けられる樹脂フレーム40は、締結力を支持するセパレータ20(20a,20b)間のスペーサとしての機能、絶縁部材としての機能、セパレータ20(20a,20b)の剛性を補強する補強部材としての機能を発揮する。
続いて、燃料電池1の構成について簡単に説明する(図2参照)。本実施形態における燃料電池1は、複数のセル2を積層してなるセル積層体3を備え、当該セル積層体3の両端に位置するセル(端セル)2,2の外側に順次、断熱セル4、出力端子5a付のターミナルプレート5、インシュレータ(絶縁プレート)6およびエンドプレート7をさらに備えた構成となっている。セル積層体3に対しては、両エンドプレート7をつなぐように架け渡されたテンションプレート8によって積層方向への所定の圧縮力が加えられている。さらに、セル積層体3の一端側のエンドプレート7とインシュレータ6との間にはプレッシャプレート9とばね機構9aとが設けられており、セル2に作用する荷重の変動が吸収されるようになっている。
ターミナルプレート5は集電板として機能する部材であり、例えば鉄、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属で板状に形成されている。ターミナルプレート5のうち断熱セル4側の表面には、めっき処理等の表面処理が施されており、かかる表面処理により断熱セル4との接触抵抗が確保されている。めっきとしては、金、銀、アルミ、ニッケル、亜鉛、すず等を挙げることができ、例えば本実施形態では導電性、加工性および低廉性を勘案してすずめっき処理を施している。
インシュレータ6は、ターミナルプレート5とエンドプレート7等とを電気的に絶縁する機能を果たす部材である。このような機能を果たすため、かかるインシュレータ6は例えばポリカーボネートなどの樹脂材料により板状に形成されている。
エンドプレート7は、ターミナルプレート5と同様、各種金属(鉄、ステンレス、銅、アルミニウム等)で板状に形成されている。例えば本実施形態では銅を用いてこのエンドプレート7を形成しているがこれは一例に過ぎず、他の金属で形成されていても構わない。
続いて、燃料電池1を構成するセパレータ20および樹脂フレーム(枠状部材)40の具体的な構成について説明する(図3等参照)。
本実施形態のセパレータ20においては、当該セパレータ20の面を鉛直方向に一致させた場合に、水素ガスの出口側マニホールド16bと酸化ガスの出口側マニホールド15bを形成する輪郭のうちの下縁(あるいは当該下縁のうちの少なくとも一部)を、発電領域側(すなわち、当該セパレータ20の外側よりも水素ガスのガス流路(燃料ガス流路)36または酸化ガスのガス流路(酸化ガス流路)35に近い側)の方が高くなるように傾斜させている(図3参照)。ここで、セパレータ20の面を鉛直方向に一致させるとは、当該セパレータ20の面方向が鉛直方向となるように立てることをいい、特に、当該燃料電池1が想定される通常の使用状態に置かれた場合のことをいう。
このような輪郭に形成された各出口側マニホールド15b,16bは、熱膨張が大きい発電領域(MEA30と酸化ガスのガス流路35または水素ガスのガス流路36とが重畳している領域)に近い部位ほど高くなるように傾斜していることから、当該出口側マニホールド15b,16b内の水が凍結してできる氷Bは、当該発電領域に近い部位ほど高さ方向の厚みが薄い形状となる(図3参照)。このため、出口側マニホールド15b,16b内にて氷Bが生じたとしても(図3中の斜線部分参照)、熱膨張が大きい発電領域に近い部位(例えば図3中において符号Aで示す部位)を起点としてセル2とセル2との間にて氷Bが割れやすい。したがって、従来構造の場合(図5参照)よりも熱膨張時における変位が分散されることとなり、変位の集中に起因したガスリークが発生するのを抑えることができる。
また、本実施形態では、当該セパレータ20の面を鉛直方向に一致させた場合におけるマニホールド(水素ガスの入口側マニホールド16aと酸化ガスの入口側マニホールド15a)を形成する輪郭のうちの下縁(あるいは当該下縁のうちの少なくとも一部)を、当該セパレータ20の外周寄りよりも発電領域側(すなわち、水素ガスのガス流路36または酸化ガスのガス流路35に近い側)寄りの方が低くなるように傾斜させている(図3参照)。一般に、水素ガスや酸化ガスの入口側マニホールド15a,16aにおいては、ソーク(燃料電池1の停止状態下での放置)の前、できるだけ水をセル2内に導入し、これら入口側マニホールド15a,16a内には水が残っていない状態とすることが望ましい。この点、本実施形態ではこれら入口側マニホールド15a,16aの輪郭の下縁が発電領域側に向けて低くなるように傾斜させているから、従来構造の場合(図5参照)よりも、入口側マニホールド15a,16a内の水を当該セル2内に導き入れやすいという利点がある。これによれば、入口側マニホールド15a,16a内にて氷Bが凍結し、これに伴って熱膨張時に変位が集中してしまうという事態を抑えやすくなる。
さらに、本実施形態では、樹脂フレーム40の縁40aのうち少なくとも一部につき、その断面形状が傾斜するように形成している(図4参照)。こうした場合、断面形状が傾斜している分だけ、ガスリークが特に懸念されるセル2とセル2との間の部位において、氷Bができた場合の当該氷Bの厚さを不均一として剛性を低下させることが可能である。この場合において、さらに本実施形態では隣接する樹脂フレーム40の縁40aの断面形状が互いに異なる方向に傾斜するようにし、一対のセパレータ20,20間に挟まれた一対の樹脂フレーム40の縁40aを略V字状としている(図4参照)。これにより、本実施形態では当該樹脂フレーム40の周囲に氷Bができた場合にもこれら氷Bが割れやすくなるようにしている。
より詳細に説明すると、例えば従来構造だと樹脂フレーム40の縁40aの配置や配列に関して特に規定がないことがあり、例えば図6に示すように縁40aの位置が不揃いの場合もある。ところがこのような場合、当該縁40aの外側にできる氷Bの厚さもまちまちとなり(図7参照)、結果的に割れにくい氷Bとなることがある。この点、本実施形態の燃料電池1においては、セル2とセル2の間において氷Bの厚さが薄くなり(図4参照)、尚かつ、セパレータ20とフレーム樹脂40によって氷Bを隔てる壁が形成されることになるから、特に当該薄い部分にて従来よりも割れやすい氷Bとすることが可能である(図4参照)。
加えて、従来構造だとセパレータ20の端部が樹脂フレーム40の縁40aよりもさらに外側に突出していることがあり(図8参照)、このような場合、例えば図8中の矢印方向に熱膨張した場合、セパレータ20自体の剛性が十分でなく、氷Bが割れるに至らないことがある(図9参照)。この点、本実施形態の燃料電池1は、セパレータ20の縁40aが樹脂フレーム40の縁40aから突出していない構造であることから(図4等参照)、特に上述した略V字状の構造と相まって割れやすい氷Bとすることが可能である。
なお、上述のごとく樹脂フレーム40の縁40aを傾斜させる場合、マニホールド(例えば水素ガスの出口側マニホールド16b)を形成する輪郭のうち下縁が傾斜した部分の近傍にて当該樹脂フレーム40の縁40aを傾斜させることが好ましい(図3、図4参照)。こうすることにより、セパレータ20の面方向、およびこれに垂直な方向(セル積層方向)の両方向において三次元的に割れやすい氷Bができるようになる。また、仮に出口側マニホールド(酸化ガスの出口側マニホールド15b、水素ガスの出口側マニホールド16b)内に水が残ったとしてもこれに起因するガスリークを抑制するためには、入口側マニホールド(酸化ガスの入口側マニホールド15a、水素ガスの入口側マニホールド16a)においても、輪郭のうち下縁が傾斜した部分の近傍にて当該樹脂フレーム40の縁40aを傾斜させることが好ましい。なお、図では水素ガスの入口側マニホールド16aについてのみ示しているが(図4参照)、酸化ガスの入口側マニホールド15a、出口側マニホールド(酸化ガスの出口側マニホールド15b、水素ガスの出口側マニホールド16b)についても同様である。
上述のように、本実施形態の燃料電池1においては、各マニホールド15a,15b,16a,16bおよび樹脂フレーム40を特有の構造としたことにより、入口側マニホールド15a,16aにおいて水が溜まりにくくし、尚かつ氷点下となって水が凍結した場合にも当該氷Bの剛性を低下させて割れやすくなるようにしている。これによれば、燃料電池1が例えば起動時において熱膨張した際に膨張に伴う変位が集中するのを回避し、これによってガスリークが生じるのを抑えることが可能である。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では、樹脂フレーム40の縁40aのうち少なくとも一部につきその断面形状が傾斜するように形成することしたが、この場合における一部は、セパレータ20の面方向に沿った一部である場合と、セパレータ面に垂直な方向(セル積層方向)に沿った一部である場合の両方を含む。要は、氷Bの剛性を低下させうる形態であれば、樹脂フレーム40の縁40aのうちどの部分が傾斜した形状となっていても構わない。
1…燃料電池、15a…酸化ガスの入口側マニホールド、15b…酸化ガスの出口側マニホールド、16a…水素ガスの入口側マニホールド、16b…水素ガスの出口側マニホールド、20(20a,20b)…セパレータ、30…MEA(膜−電極接合体)、35…酸化ガスのガス流路(酸化ガス流路)、36…水素ガスのガス流路(燃料ガス流路)、40…樹脂フレーム(枠状部材)、40a…樹脂フレーム(枠状部材)の縁
Claims (8)
- 発電領域に形成された燃料ガス流路または酸化ガス流路と、前記燃料ガス流路に燃料ガスを供給する燃料ガスの入口側マニホールドと、前記燃料ガス流路から燃料ガスを排出する燃料ガスの出口側マニホールドと、前記酸化ガス流路に酸化ガスを供給する酸化ガスの入口側マニホールドと、前記酸化ガス流路から酸化ガスを排出する酸化ガスの出口側マニホールドと、を備えた燃料電池のセパレータにおいて、
当該セパレータの面を鉛直方向に一致させた場合における前記燃料ガスの出口側マニホールドと前記酸化ガスの出口側マニホールドを形成する輪郭のうちの下縁が、当該セパレータの外側よりも前記燃料ガス流路または前記酸化ガス流路側の方が高くなるように傾斜している
ことを特徴とするセパレータ。 - 当該セパレータの面を鉛直方向に一致させた場合における前記燃料ガスの入口側マニホールドと前記酸化ガスの入口側マニホールドを形成する輪郭のうちの下縁が、当該セパレータの外側よりも前記燃料ガス流路または前記酸化ガス流路側の方が低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
- 請求項1または2に記載のセパレータを含む燃料電池。
- 隣り合う前記セパレータとセパレータの間には、前記発電領域に設けられる膜−電極接合体の少なくとも一部を挟持する枠状部材が挿入されており、該枠状部材の縁のうち少なくとも一部の断面形状が傾斜している請求項3に記載の燃料電池。
- 隣接する前記枠状部材の縁のうち少なくとも一部の断面形状が互いに異なる方向に傾斜している請求項4に記載の燃料電池。
- 一対の前記セパレータ間に挟まれた一対の前記枠状部材の縁がV字状となっている請求項5に記載の燃料電池。
- 前記セパレータの縁が前記枠状部材の縁から突出していない構造である請求項6に記載の燃料電池。
- 前記マニホールドを形成する輪郭のうち下縁が傾斜した部分の近傍にて前記枠状部材の縁の断面形状が傾斜している構造の請求項4から7のいずれか一項に記載の燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007294764A JP2009123447A (ja) | 2007-11-13 | 2007-11-13 | 燃料電池およびそのセパレータ |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007294764A JP2009123447A (ja) | 2007-11-13 | 2007-11-13 | 燃料電池およびそのセパレータ |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2009123447A true JP2009123447A (ja) | 2009-06-04 |
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JP (1) | JP2009123447A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015060732A (ja) * | 2013-09-19 | 2015-03-30 | 本田技研工業株式会社 | 燃料電池 |
JP2015207505A (ja) * | 2014-04-23 | 2015-11-19 | トヨタ自動車株式会社 | 燃料電池 |
US9472824B2 (en) | 2012-12-28 | 2016-10-18 | Hyundai Motor Company | Fuel cell stack |
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2007
- 2007-11-13 JP JP2007294764A patent/JP2009123447A/ja active Pending
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