JP2009170273A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】接着剤のような樹脂材からの溶出物がガス拡散層や電解質膜に付着する等の事態を抑制する。
【解決手段】フレーム部材40のうち、ガス拡散層43(42)の平面部に接触する部分に該ガス拡散層43(42)に向かって突出する突起部41が形成されている。該突起部41により、フレーム部材40の面内、面直方向(面に沿った方向、面に垂直な方向)の空間(隙間)を埋めることが可能となり、従来はガス拡散層43(42)に接するように充填されていたポッティング材(例えばフレーム部材40とセパレータ20bとの間に介在するように充填されていた接着剤)を除去することが可能となる。また、これによれば、公差による隙間、及びこれに起因して生じることのあったガスのパスカットを抑制することが可能となる。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料電池に関する。さらに詳述すると、本発明は、燃料電池を構成するセル(燃料電池セル)の構造の改良に関する。
一般に、燃料電池(例えば固体高分子型燃料電池)は電解質膜およびその両面に配した一対の電極からなる接合体(例えばMEA、MEGA)と、該接合体を挟持する一対のセパレータとで構成されている。また、このようなセルが複数積層されていわゆる燃料電池スタックが形成されている。
このような燃料電池において、MEAを挟持する物材(樹脂フレーム)とプレスメタルセパレータの間、特に流路ターン部分の太リブ根元の空間に、部品公差による隙間が発生する場合がある。そこで、従来、当該部位を樹脂材(実際は接着剤を使用)で充填することで隙間を埋め(通常、ポッティング材と呼ばれている)、当該隙間をガスがショートカット(パスカット)するのを抑止している。
(例えば特許文献1参照)。
特開2006−019204号公報
しかしながら、接着剤や樹脂フレームからの溶出成分が燃料電池内の汚染(以下、コンタミともいう)の源となるおそれがある。すなわち、燃料電池内の環境下で樹脂材から溶出物が生じた場合に、該溶出物がGDLに付着して特性を変化させたり、電解質膜や触媒層に付着して取り込まれ、触媒活性の低下や電解質膜の特性低下(プロトン導電性の低下、電解質膜のシール性、強度の低下)をもたらしたりすることがある。
そこで、本発明は、接着剤のような樹脂材からの溶出物がガス拡散層や電解質膜に付着する等の事態を抑制できるようにした燃料電池を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。まず、燃料電池内のMEAに近い位置に樹脂材が充填される場合があるが、その場合、濃度の高い生成水や触媒と近接することによって樹脂材からの溶出が促進されてしまう可能性がある。これらの点につきさらに検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く着想を得るに至った。
本発明はかかる着想に基づくものであり、電解質膜と、該電解質膜の両面に形成された電極と、該電極に供給される反応ガスを拡散させるガス拡散層と、電解質膜、電極およびガス拡散層を挟持するセパレータと、ガス拡散層の周縁周辺に設けられるフレーム部材と、を備える燃料電池において、フレーム部材のうち、ガス拡散層の平面部に接触する部分に該ガス拡散層に向かって突出する突起部が形成されているというものである。
従来、例えばMEAを挟持する樹脂フレームとメタルセパレータとの間の公差を吸収して埋め、さらに空間を埋めるために利用されていた樹脂充填材として、実際には接着剤が使用されていることが多く、当該樹脂材からの溶出成分がコンタミ源となることがあったのは上述のとおりである(図4参照)。これに対し、本発明にかかる燃料電池の場合、セパレータにて電解質膜、ガス拡散層、フレーム部材等を挟持すると、フレーム部材に形成されている突起部がガス拡散層の一部を強く押圧した状態となる。こうした場合、当該フレーム部材の面内、面直方向(面に沿った方向、面に垂直な方向)の空間(隙間)を埋めることが可能となり、従来ガス拡散層に接するように充填されていたポッティング材(例えばフレーム部材とセパレータとの間に介在するように充填されていた接着剤)を除去することが可能となる。また、これによれば、公差による隙間、及びこれに起因して生じることのあったガスのパスカットを抑制することが可能となる。
本発明にかかる燃料電池において、フレーム部材は、電解質膜の周縁部分およびガス拡散層の周縁部分を挟持するように配置されている。
また、突起部は、ガス拡散層に食い込みうる先細形状となっていることが好ましい。この場合における突起部の好適な高さは、ガス拡散層の厚みよりも30乃至100μm少ない程度である。
突起部は、その少なくとも一部がガス拡散層の周縁に沿って連続する帯状に形成されたものであってもよい。あるいは、突起部は、ガス拡散層の周縁に沿って不連続に形成されたものであってもよい。
本発明によれば、特に接着剤のような樹脂材からの溶出物がガス拡散層や電解質膜に付着する等の事態を抑制することが可能となる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3に本発明の実施形態を示す。本発明にかかる燃料電池1は、電解質膜31と、該電解質膜31の両面に形成された電極32,33と、該電極32,33に供給される反応ガスを拡散させるガス拡散層42,43と、電解質膜31、電極32,33およびガス拡散層42,43を挟持するセパレータ20(20a,20b)と、ガス拡散層42,43の周縁周辺に設けられるフレーム部材40と、を備えるものである。また、このフレーム部材40のうち、ガス拡散層43(42)の平面部に接触する部分には該ガス拡散層43(42)に向かって突出する突起部41が形成されている。
以下に説明する実施形態においては、まず、燃料電池1を構成するセル(発電セル)2および複数のセル2が積層されてなる燃料電池スタックの概略構成について説明し、その後、フレーム部材40からの溶出物がガス拡散層42,43や電解質膜31に付着する等の事態を抑制するための構成について説明することとする。
図1に本実施形態における燃料電池1のセル2の概略構成を示す。図示するように構成されるセル2は、順次積層されてセル積層体3を構成している(図2参照)。また、このセル積層体3等で構成される燃料電池スタックは、例えばスタック両端を一対のエンドプレート7で挟まれ、さらにこれらエンドプレート7どうしを繋ぐようにテンションプレート8からなる拘束部材が配置された状態で積層方向への荷重がかけられて締結されている(図2参照)。
なお、このような燃料電池スタック等で構成される燃料電池1は、例えば燃料電池車両(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)の車載発電システムにおいて利用可能なものであるがこれに限られることはなく、各種移動体(例えば船舶や飛行機など)やロボットなどといった自走可能なものに搭載される発電システム、さらには定置の発電システムにおいても利用することが可能である。
セル2に含まれる電解質としては、膜−電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)あるいは膜−電極−拡散層接合体(MEGA:Membrane Electrode & Gas Diffusion Layer Assembly)を用いることができる。例えば本実施形態では、膜−電極−拡散層接合体(以下、MEGAともいう)30を用いている(図1等参照)。
セル2は、MEGA30、該MEGA30を挟持する一対のセパレータ20(図1等においてはそれぞれ符号20a,20bで示している)等で構成されている(図1参照)。MEGA30および各セパレータ20a,20bはおよそ矩形の板状に形成されている。また、MEGA30はその外形が各セパレータ20a,20bの外形よりも小さくなるように形成されている。
MEGA30は、高分子材料のイオン交換膜からなる高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ともいう)31と、電解質膜31を両面から挟んだ一対の電極(アノード側拡散電極およびカソード側拡散電極)32,33と(図1参照)、さらにガス拡散層42,43(図3参照)とを含む。電解質膜31は、各電極32,33よりも大きく形成されている。この電解質膜31には、その周縁部34を残した状態で各電極32,33が例えばホットプレス法により接合されている。
MEGA30を構成する電極32,33は、その表面に付着された白金などの触媒を担持した例えば多孔質のカーボン素材(拡散層32b,33b)で構成されている。一方の電極(アノード)32には燃料ガス(反応ガス)としての水素ガス、他方の電極(カソード)33には空気や酸化剤などの酸化ガス(反応ガス)が供給され、これら2種類の反応ガスによりMEGA30内で電気化学反応が生じてセル2の起電力が得られるようになっている。
ガス拡散層42,43は、電解質膜31に供給される反応ガスを適度に拡散させるように形成されている層である(図3参照)。例えば本実施形態におけるガス拡散層42,43は、電解質膜31(および電極32,33)よりも小さく形成されている。また、ガス拡散層42,43および電解質膜31(および電極32,33)は、その周辺部分(周縁に近い部分)をフレーム部材40によって挟持された状態となっている(図3参照)。
セパレータ20(20a,20b)はガス不透過性の導電性材料で構成されている。導電性材料としては、例えばカーボンや導電性を有する硬質樹脂のほか、アルミニウムやステンレス等の金属(メタル)が挙げられる。本実施形態のセパレータ20(20a,20b)の基材は板状のメタルで形成されているものであり(メタルセパレータ)、この基材の電極32,33側の面には耐食性に優れた膜(例えば金メッキで形成された皮膜)が形成されている。
また、セパレータ20a,20bの両面には、複数の凹部によって構成される溝状の流路が形成されている。これら流路は、例えば板状のメタルによって基材が形成されている本実施形態のセパレータ20a,20bの場合であればプレス成形によって形成することができる。このようにして形成される溝状の流路は、酸化ガスのガス流路35や水素ガスのガス流路36、あるいは冷却水流路37を構成している。より具体的に説明すると、セパレータ20aの電極32側となる内側の面には水素ガスのガス流路36が形成され、その裏面(外側の面)には冷却水流路37が形成されている(図1参照)。同様に、セパレータ20bの電極33側となる内側の面には酸化ガスのガス流路35が形成され、その裏面(外側の面)には冷却水流路37が形成されている(図1参照)。例えば本実施形態の場合、隣接する2つのセル2,2に関し、一方のセル2のセパレータ20aの外面と、これに隣接するセル2のセパレータ20bの外面とを付き合わせた場合に両者の冷却水流路37が一体となり断面が例えば矩形あるいはハニカム形の流路が形成される構造となっている。
さらに、上述したように各セパレータ20a,20bは、少なくとも流体の流路をなすための凹凸形状が表面と裏面とで反転した関係になっている。より具体的に説明すると、セパレータ20aにおいては、水素ガスのガス流路36を形成する凸形状(凸リブ)の裏面が冷却水流路37を形成する凹形状(凹溝)であり、ガス流路36を形成する凹形状(凹溝)の裏面が冷却水流路37を形成する凸形状(凸リブ)である。さらに、セパレータ20bにおいては、酸化ガスのガス流路35を形成する凸形状(凸リブ)の裏面が冷却水流路37を形成する凹形状(凹溝)であり、ガス流路35を形成する凹形状(凹溝)の裏面が冷却水流路37を形成する凸形状(凸リブ)である。
また、セパレータ20a,20bの長手方向の端部付近(本実施形態の場合であれば、図1中向かって左側に示す一端部の近傍)には、酸化ガスの入口側のマニホールド15a、水素ガスの出口側のマニホールド16b、および冷却水の入口側のマニホールド17aが形成されている。例えば本実施形態の場合、これらマニホールド15a,16b,17aは各セパレータ20a,20bに設けられた略矩形ないしは台形、あるいは両端が半円形状の長細矩形の透孔によって形成されている(図1等参照)。さらに、セパレータ20a,20bのうち反対側の端部には、酸化ガスの出口側のマニホールド15b、水素ガスの入口側のマニホールド16a、および冷却水の出口側のマニホールド17bが形成されている。本実施形態の場合、これらマニホールド15b,16a,17bも略矩形ないしは台形、あるいは両端が半円形状の長細矩形の透孔によって形成されている(図1参照)。
上述のような各マニホールドのうち、セパレータ20aにおける水素ガス用の入口側マニホールド16aと出口側マニホールド16bは、セパレータ20aに形成されている入口側の連絡通路61および出口側の連絡通路62を介してそれぞれが水素ガスのガス流路36に連通している。同様に、セパレータ20bにおける酸化ガス用の入口側マニホールド15aと出口側マニホールド15bは、セパレータ20bに形成されている入口側の連絡通路63および出口側の連絡通路64を介してそれぞれが酸化ガスのガス流路35に連通している(図1参照)。さらに、各セパレータ20a,20bにおける冷却水の入口側マニホールド17aと出口側マニホールド17bは、各セパレータ20a,20bに形成されている入口側の連絡通路65および出口側の連絡通路66を介してそれぞれが冷却水流路37に連通している。ここまで説明したような各セパレータ20a,20bの構成により、セル2には、酸化ガス、水素ガスおよび冷却水が供給されるようになっている。ここで具体例を挙げておくと、セル2が積層された場合、例えば水素ガスは、セパレータ20aの入口側マニホールド16aから連絡通路61を通り抜けてガス流路36に流入し、MEGA30の発電に供された後、連絡通路62を通り抜けて出口側マニホールド16bに流出することになる。
なお、本実施形態においては、冷却水の入口側マニホールド17aと出口側マニホールド17bとをそれぞれセパレータ20の冷却水流れ方向両側の一方寄りおよび他方寄りに配置している(図1参照)。すなわち、本実施形態においては冷却水の入口側マニホールド17aと出口側マニホールド17bをセパレータ20の対角線上に配置することとし、これによってセパレータ20に対し冷却水が全面的に行き渡りやすくなるようにしている。
第1シール部材13a、第2シール部材13bは必要に応じて設けられる(図1参照)。セパレータ20a,20b間に設けられる場合、これら第1シール部材13a、第2シール部材13bは、例えば、ともに複数の部材(例えば独立した小型の4つの矩形枠体と、流体流路を形成するための大きな枠体)で形成される(図1参照)。これらのうち、第1シール部材13aはMEGA30とセパレータ20aとの間に設けられるもので、より詳細には、その一部が、電解質膜31の周縁部34と、セパレータ20aのうちガス流路36の周囲の部分との間に介在するように設けられる。また、第2シール部材13bは、MEGA30とセパレータ20bとの間に設けられるもので、より詳細には、その一部が、電解質膜31の周縁部34と、セパレータ20bのうちガス流路35の周囲の部分との間に介在するように設けられる。
さらに、隣接するセル2,2のセパレータ20bとセパレータ20aとの間には、複数の部材(例えば独立した小型の4つの矩形枠体と、流体流路を形成するための大きな枠体)で形成された第3シール部材13cが設けられている(図1参照)。この第3シール部材13cは、セパレータ20bにおける冷却水流路37の周囲の部分と、セパレータ20aにおける冷却水流路37の周囲の部分との間に介在するように設けられてこれらの間をシールする部材である。
なお、第1〜第3シール部材13a〜13cとしては、隣接する部材との物理的な密着により流体を封止する弾性体(ガスケット)や、隣接する部材との化学的な結合により接着する接着剤などを用いることができる。例えば本実施形態では各シール部材13a〜13cとして弾性によって物理的にシールする部材を採用しているが、この代わりに上述した接着剤のような化学結合によってシールする部材を採用することもできる。なお、図3、図4においては接着剤からなる当該シール部材を符号13で示している。
フレーム部材(以下、樹脂フレームともいう)40は、MEGA30とともにセパレータ20a,20b間に挟持される例えば樹脂からなる部材(以下、樹脂フレームともいう)である。例えば本実施形態では、薄い枠形状の樹脂フレーム40をセパレータ20a,20b間に介在させ、当該樹脂フレーム40によってMEGA30の少なくとも一部、例えば周縁部34に沿った部分を表側と裏側から挟持するようにしている。このように設けられる樹脂フレーム40は、締結力を支持するセパレータ20(20a,20b)間のスペーサとしての機能、絶縁部材としての機能、セパレータ20(20a,20b)の剛性を補強する補強部材としての機能を発揮する。
続いて、燃料電池1の構成について簡単に説明する(図2参照)。本実施形態における燃料電池1は、複数のセル2を積層してなるセル積層体3を備え、当該セル積層体3の両端に位置するセル(端セル)2,2の外側に順次、断熱セル4、出力端子5a付のターミナルプレート5、インシュレータ(絶縁プレート)6およびエンドプレート7をさらに備えた構成となっている。セル積層体3に対しては、両エンドプレート7をつなぐように架け渡されたテンションプレート8によって積層方向への所定の圧縮力が加えられている。さらに、セル積層体3の一端側のエンドプレート7とインシュレータ6との間にはプレッシャプレート9とばね機構9aとが設けられており、セル2に作用する荷重の変動が吸収されるようになっている。
断熱セル4は例えば2枚のセパレータとシール部材とで断熱層が形成されているもので、発電に伴い生じる熱が大気等に放熱されるのを抑える役割を果たす。すなわち、一般に、セル積層体3の端部は大気との熱交換により温度が低くなりやすいことから、当該セル積層体3の端部に断熱層を形成することによって熱交換(放熱)を抑えることが行われている。このような断熱層としては、例えば、セル2におけるものと同様の一対のセパレータに、膜−電極アッセンブリの代わりとして導電板などの断熱部材10を挟み込んだ構成のものがある。この場合に用いられる断熱部材10は断熱性に優れるほど好適であり、具体的には例えば導電性多孔質シートなどが用いられる。また、このような断熱部材10の周囲をシール部材で封止することによって空気層が形成される。
ターミナルプレート5は集電板として機能する部材であり、例えば鉄、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属で板状に形成されている。ターミナルプレート5のうち断熱セル4側の表面には、めっき処理等の表面処理が施されており、かかる表面処理により断熱セル4との接触抵抗が確保されている。めっきとしては、金、銀、アルミ、ニッケル、亜鉛、すず等を挙げることができ、例えば本実施形態では導電性、加工性および低廉性を勘案してすずめっき処理を施している。
インシュレータ6は、ターミナルプレート5とエンドプレート7等とを電気的に絶縁する機能を果たす部材である。このような機能を果たすため、かかるインシュレータ6は例えばポリカーボネートなどの樹脂材料により板状に形成されている。
エンドプレート7は、ターミナルプレート5と同様、各種金属(鉄、ステンレス、銅、アルミニウム等)で板状に形成されている。例えば本実施形態では銅を用いてこのエンドプレート7を形成しているがこれは一例に過ぎず、他の金属で形成されていても構わない。
テンションプレート8は両エンドプレート7,7間を架け渡すようにして設けられているもので、例えば一対がセル積層体3の両側に対向するように配置される(図2参照)。テンションプレート8は、各エンドプレート7,7にボルト等で固定され、単セル2の積層方向に所定の締結力(圧縮力)を作用させた状態を維持する。このテンションプレート8の内側面(セル積層体3を向く面)には漏電やスパークが生じるのを防止すべく絶縁膜が形成されている。絶縁膜は、具体的には例えば当該テンションプレート8の内側面に貼り付けられた絶縁テープ、あるいは当該面を覆うように塗布された樹脂コーティングなどによって形成されている。
続いて、燃料電池1において、樹脂フレーム(フレーム部材)40からの溶出物がガス拡散層42,43や電解質膜31に付着する等の事態を抑制するための構成について説明する(図3参照)。
本実施形態の樹脂フレーム40は、MEGA30の電解質膜31の周縁部分およびガス拡散層42,43の周縁部分を挟持するように配置されている。また、上述したように、樹脂フレーム40のうち、ガス拡散層43(42)の平面部に接触する部分に、該ガス拡散層43(42)に向かって突出する突起部41が形成されている(図3参照)。突起部41は、ガス拡散層43(42)に食い込んだ状態となり、当該樹脂フレーム40が、ガス拡散層43(42)の面方向(MEGA30の面方向)へと相対的に移動するのを抑制する。
また本実施形態では、突起部41を、断面形状が略円錐形となるように形成している(図3参照)。また、当該突起部41の突出高さを、ガス拡散層43(42)の厚みよりも30乃至100μm少ない程度としている。ただしこれは突起部41の具体的形態の一例にすぎず、この他の形状(例えば角錐形状)であってもよい。また、突起部41は、複数が等間隔または所定の間隔で並ぶように形成されていてもよいし、連続して帯状に形成されていてもよく、あるいは途中の箇所で途切れるような略帯状に形成されていてもよい。要は、ガス拡散層43(42)に食い込みうる例えば先細形状であり、当該樹脂フレーム40の相対的な移動を抑制しうるものであれば突起部41の具体的な形態は特に限定されるものではない。
以上のように樹脂フレーム40の相対的な移動を抑制するようにした本実施形態の燃料電池1においては、従来はガス拡散層43(42)に接するように充填されていたポッティング材(一例として、樹脂フレーム40とセパレータ20b(20a)との間に介在するように充填されていた接着剤13)を除去することが可能となる(図3参照)。従来構造の場合、例えば接着剤13が、樹脂フレーム40とセパレータ20b(20a)との間の公差を吸収して埋め、さらに空間を埋める樹脂充填材(ポッティング材)として利用されていたが(図4参照)、本実施形態においては、セパレータ20a,20bで樹脂フレーム40を挟持する際、当該セパレータ20b(20a)との間に隙間が形成されないようにした状態で突起部41をガス拡散層43(42)に突き刺した状態とし、その後の当該樹脂フレーム40の移動を抑制することとし、樹脂フレーム40とセパレータ20b(20a)との間に樹脂充填材を設けなくても済むようにしている。
このように、本実施形態の燃料電池1においては、当該部位への樹脂充填を廃し、樹脂充填材が樹脂フレーム40に直接接触した構造となること(ポッティング材が設けられた構造となること)を回避しているので、当該樹脂充填材からの溶出成分がいわゆるコンタミ源となるのを抑制することができる。しかも、樹脂フレーム40の相対的な移動を抑制しているから、セパレータ20b(20a)と当該樹脂フレーム40との間の隙間に起因して生じることのあったいわゆるガスのパスカットをも抑制することが可能である。
ここで、接着剤13からなる樹脂充填材は、従来、特に太いリブ(例えばセパレータに太いターン形状の流体流路を形成するための凹凸)の根元部におけるセパレータ20b(20a)と樹脂フレーム40との隙間公差を吸収するために利用されている。本実施形態の燃料電池1は、このような太リブ部分で用いられるような樹脂充填材(ポッティング材)を廃しうる点で特に好適である。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態ではMEGA(膜−電極−拡散層接合体)30が用いられている場合を例示して説明したが、これがMEA(膜−電極接合体)であっても同様の作用効果を実現しうる。
本実施形態における燃料電池のセルの構造例を示す分解斜視図である。 燃料電池の構造例を示す側面図である。 本発明の概念を示す燃料電池のセルの部分側面図である。 従来構造のセルの部分側面を参考として示す図である。
符号の説明
1…燃料電池、20(20a,20b)…セパレータ、31…高分子電解質膜(電解質膜)、32…アノード側拡散電極(電極)、33…カソード側拡散電極(電極)、40…樹脂フレーム(フレーム部材)、41…(フレーム部材の)突起部、42,43…ガス拡散層

Claims (6)

  1. 電解質膜と、該電解質膜の両面に形成された電極と、該電極に供給される反応ガスを拡散させるガス拡散層と、前記電解質膜、電極およびガス拡散層を挟持するセパレータと、前記ガス拡散層の周縁周辺に設けられるフレーム部材と、を備える燃料電池において、
    前記フレーム部材のうち、前記ガス拡散層の平面部に接触する部分に該ガス拡散層に向かって突出する突起部が形成されている
    ことを特徴とする燃料電池。
  2. 前記フレーム部材は、前記電解質膜の周縁部分および前記ガス拡散層の周縁部分を挟持するように配置されている請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記突起部は、前記ガス拡散層に食い込みうる先細形状となっている請求項1または2に記載の燃料電池。
  4. 前記突起部の高さは、前記ガス拡散層の厚みよりも30乃至100μm少ないものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池。
  5. 前記突起部は、その少なくとも一部が前記ガス拡散層の周縁に沿って連続する帯状に形成されたものである請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池。
  6. 前記突起部は、前記ガス拡散層の周縁に沿って不連続に形成されたものである請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池。
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