JP2009121607A - 電磁クラッチ - Google Patents

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Abstract

【課題】部品点数を減らし、組み立てが容易な電磁クラッチを提供する。
【解決手段】モータによって回転駆動されるウォームホイール2と、電磁コイル5を有するロータ4と、ウォームホイール2の側に取り付けられ、電磁コイル5への電力供給時にロータ4に吸着されて当該ロータ4と一体回転するアーマチャ3とを備え、アーマチャ3に板バネ部材10を取り付けるとともに、アーマチャ3をウォームホイール2の側に付勢しつつアーマチャ3をウォームホイール2に保持するよう、ウォームホイール2と板バネ部材10とを係合してある。
【選択図】図3

Description

本発明は、モータによって回転駆動されるウォームホイールと、電磁コイルを有するロータと、前記ウォームホイールの側に取り付けられ、前記電磁コイルへの電力供給時に前記ロータに吸着されて当該ロータと一体回転するアーマチャとを備えた電磁クラッチに関する。
車両用ドアの開閉装置等に使用される電磁クラッチとして、例えば、ウォームギア、ウォームホイール、アーマチャ、板バネ部材、ロータ、電磁コイル等を備えたものが従来から知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1の電磁クラッチは、ウォームホイールとアーマチャとの間に板バネ部材を介在させている。ウォームホイール、板バネ部材、及びアーマチャの固定は、それらを互いにピンでカシメたり、ネジ締結によって行われる。この電磁クラッチにおいて、電磁コイルに電力が供給されていないときは、板バネ部材は弾性力でアーマチャをウォームホイール側に引き寄せる。その結果、アーマチャとロータとの間に隙間が形成され、電磁クラッチは切断状態となる。これは、車両用ドアとモータとが直結していない状態である。従って、手動で車両用ドアを開閉する場合でも、少ない負荷で操作することができる。一方、電磁コイルに電力を供給すると、電磁コイルから発生する磁力によってアーマチャがロータに吸着し、電磁クラッチは接続状態となる。従って、このときにモータを駆動すると、その駆動力は、ウォームギア、ウォームホイール、板バネ部材、アーマチャ、及びロータを介して、車両用ドアの開閉機構に伝達される。従って、車両用ドアの自動開閉が可能となる。
板バネ部材の代わりとして、ウォームホイールとアーマチャとの間にウェーブワッシャ(弾性体)を介在させた電磁クラッチを備える車両用ドアの開閉装置もあった(例えば、特許文献2を参照)。
特許文献2の車両用ドアの開閉装置に使用されている電磁クラッチは、ウォームホイール側の切欠きにアーマチャ側の係止部を係合させている。この電磁クラッチでは、アーマチャはウォームホイールに対して回転軸方向に相対移動可能である。電磁クラッチが非給電状態にあるとき、ウォームホイールとアーマチャとの間にあるウェーブワッシャは、振動による騒音の発生を防止するため、アーマチャをロータ側に当接するように押し付ける。電磁クラッチを給電状態にすると、磁力によってアーマチャにはロータ側に引き寄せられる力が作用し、アーマチャはロータにより強く当接する。つまり、特許文献2の車両用ドアの駆動装置では、電磁クラッチの給電状態/非給電状態に関係なく、常にアーマチャがロータに当接した状態となる。ただし、電磁クラッチが非給電状態のときは、アーマチャのロータに対する当接力はそれ程強くないため、車両用ドアの開閉操作を手動で行うと、アーマチャはロータに対して滑りながら相対回転する。
実開平5−71463号公報 特開2004−324171号公報
ところで、車両用ドアの開閉装置等に使用する電磁クラッチを製造するにあたっては、軽量化やコスト削減のため、構成する部品点数を減らし、組み立てを容易にすることが要望されている。
この点について、特許文献1の電磁クラッチは、ウォームホイール、板バネ部材、及びアーマチャを互いにカシメたり、ネジ締結によって固定するものであるため、多くのカシメピンやネジ類が必要となる。また、組み立てに際して工具が必要となる。さらに、カシメピンやネジ類等を使用するに伴い、電磁クラッチを構成する部品点数や製造工数も増加する。これらの理由から、特許文献1の電磁クラッチは、製造に際して時間と手間が掛かり、製造コストも高くなる。
一方、特許文献2の車両用ドアの開閉装置に使用される電磁クラッチは、ウェーブワッシャを介在させた状態でウォームホイールとアーマチャとを係合する構成であるため、特許文献1の電磁クラッチとは異なり、組み立てに際してカシメピンやネジ類は不要である。ところが、この電磁クラッチは、ウォームホイール側の切欠きにアーマチャ側の係止部を係合させるのみの単純な固定形態であるため、ウォームホイールとアーマチャとの遊び(ガタ量)が大きくなる。このため、ウォームホイールとアーマチャとの間で駆動力の伝達に遅れが生じ、制御条件によっては車両用ドアの開閉時に不具合が発生する場合がある。例えば、異物の挟み込み検知を行う場合においては、検出時間に時間がかかる。
また、この電磁クラッチは、背景技術の欄でも説明したように、電磁クラッチの給電状態/非給電状態に関係なく、常にアーマチャがロータに当接した状態となるため、車両用ドアを手動で開閉操作する場合において、アーマチャとロータとの擦れによる異音が発生し易いという問題もある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を減らし、組み立てが容易な電磁クラッチを提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、ウォームホイールとアーマチャとの間での駆動力の伝達の遅れを防止し、車両用ドアの動作時において優れた静粛性を実現することにある。
本発明に係る電磁クラッチの特徴構成は、モータによって回転駆動されるウォームホイールと、電磁コイルを有するロータと、前記ウォームホイールの側に取り付けられ、前記電磁コイルへの電力供給時に前記ロータに吸着されて当該ロータと一体回転するアーマチャとを備え、前記アーマチャに板バネ部材を取り付けるとともに、前記アーマチャを前記ウォームホイールの側に付勢しつつ前記アーマチャを前記ウォームホイールに保持するよう、前記ウォームホイールと前記板バネ部材とを係合してあることにある。
本構成の電磁クラッチでは、アーマチャをウォームホイールに保持するに際し、カシメピンやネジ等の固定部材を用いずに、アーマチャに取り付けた板バネ部材とウォームホイールとを係合させている。従って、電磁クラッチを構成する部品点数が削減され、結果として製造コストを低減することができる。
本発明に係る電磁クラッチにおいて、前記板バネ部材に形成された係合爪を前記ウォームホイールに形成された係合孔に係合させて、前記アーマチャを前記ウォームホイールに弾性付勢しつつ保持してもよい。
本構成の電磁クラッチであれば、板バネ部材に形成された係合爪とウォームホイールに形成された係合孔との係合は、特殊な工具等を必要とせず、手作業で行うことができるので、電磁クラッチを比較的簡単に組み立てることができる。
さらに、上記係合を行った状態では、板バネ部材によってアーマチャがウォームホイールの側に弾性付勢されつつ保持されているので、電磁コイルに電力を供給していない非給電時には、アーマチャはロータから確実に引き離される。このため、車両用ドアを手動で開閉操作する場合でも、アーマチャとロータとの擦れによる異音が発生することはなく、少ない力で操作することができる。また、アーマチャは板バネ部材によってウォームホイールの側に引き寄せられるので、振動による接触音等も発生しない。
本発明に係る電磁クラッチにおいて、前記板バネ部材が前記ウォームホイールの回転方向に沿って弾性力を発揮する当接部を備えるとともに、前記ウォームホイールが前記当接部を内嵌する被当接部を備えてもよい。
本構成の電磁クラッチであれば、板バネ部材に設けた当接部がウォームホイールの回転トルクの一部を負担するので、ウォームホイール側からアーマチャ側への駆動力の伝達が良好になる。
また、この当接部はウォームホイールの回転方向の衝撃を吸収することができるので、例えば、振動による接触音や、駆動・停止に際しての打音の発生をより確実に抑制することができる。
本発明に係る電磁クラッチにおいて、前記アーマチャに対する前記ウォームホイールの相対回転を所定角度に抑制する回転抑制部材を、前記アーマチャと前記ウォームホイールとに亘って設けてもよい。
モータがウォームホイールを回転させると、ウォームホイールの被当接部と板バネ部材の当接部とが回転方向において弾性的に当接し、次いでアーマチャに回転駆動力が伝達される。ところが、ウォームホイールがアーマチャに対して過剰に相対回転すると、板バネ部材が弾性変形可能な領域を超えて塑性変形するおそれがある。
そこで、本構成の電磁クラッチでは、アーマチャとウォームホイールとの間に回転抑制部材を設けてある。これにより、ウォームホイールがアーマチャに対して過剰に相対回転するような場合でも、ウォームホイールの相対回転が所定角度に抑制されるので、板バネ部材の塑性変形を防止することができる。
また、ウォームホイールとアーマチャとは回転抑制部材を介して確実に当接するので、一旦両者が当接すれば、その後は回転駆動力の伝達速度に遅れは生じない。つまり、初期の伝達速度の遅延を最小限に抑制することができる。
本発明に係る電磁クラッチにおいて、前記板バネ部材の外径を前記アーマチャの外径より大きく形成し、前記板バネ部材の周囲に前記アーマチャの側に折り曲げた鍔部を設けてもよい。
本構成の電磁クラッチであれば、アーマチャの一面及び側面が板バネ部材によって覆われるので、ウォームホイールに塗布されているグリース等がアーマチャに付着することはない。このため、電磁クラッチの摩擦面が保護され、車両用ドア側への回転駆動力の伝達が確実に行われる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態および図面に記載される構成に限定されるものではなく、これらと均等な構成も含む。
図1は、本発明の電磁クラッチを採用した車両用ドアの開閉装置の平面図である。図2は、車両用ドアの開閉装置の側面図である。図3及び図4は、車両用ドアの開閉装置の要部断面図である。
〔車両用ドアの開閉装置の全体構成〕
図1〜4に示すように、本発明の電磁クラッチ1を採用した車両用ドアの開閉装置Aは、ギア側カバー部材91と給電部側カバー部材92とからなるカバー部材9の内部に、車両用ドアの駆動源である電動モータM、電動モータMに直結されたウォームギア103、ウォームギア103と噛合するウォームホイール2、ウォームホイール2と一体回転するアーマチャ3、アーマチャ3と協同で電磁クラッチ1を構成する電磁コイル5を内蔵したロータ4、ロータ4の回転を伝達するクラッチシャフト100、電磁コイル5に対して電力を供給する給電部S、及び電磁クラッチ1を接続/切断するように給電部Sを制御する制御部Eを備えている。
〔電磁クラッチの構成〕
先ず、電磁クラッチ1の構成について説明する。図5は、ウォームホイール2へのアーマチャ3の取付態様を示す分解図である。図6は、ウォームホイール2へのアーマチャ3の取付部を示す要部拡大断面図である。図7は、電磁クラッチ1の分解斜視図である。
アーマチャ3は、鉄などの磁力により吸着可能な材質で構成される。ロータ4は、電磁コイル5に通電した際に、アーマチャ3に対して磁力による吸着力が発生するように、磁性材料で構成される。ロータ4は、ウォームホイール2と同一の回転軸心周りに回転可能である。アーマチャ3及びロータ4は、給電部側カバー部材92に収容される。
ロータ4には、図7に示すように、アーマチャ3との対向面の外周付近に沿って電磁コイル5が巻回されたボビン50を収納する環状の凹部41が形成される。この凹部41は、底部から上方に行くに従って、凹部41の内周壁部42の内径が小さくなるように、内周壁部42が傾斜して形成される。一方、凹部41の外周壁部43は略垂直に立設される。従って、底部から上方に行くに従って、凹部41の幅が大きくなる。
このロータ4において、磁場の通過面積が、外周壁部43の側と内周壁部42の側とで等しくなるように、外周壁部43のアーマチャ3と対向する端面43aの面積と、内周壁部42のアーマチャ3と対向する端面42aの面積とが等しく設定される。つまり、端面42aの周方向に垂直な方向の幅が、端面43aの周方向に垂直な方向の幅よりも大きく設定される。
また、この種の電磁クラッチ1では、回転トルクを一定に保つために、アーマチャ3とロータ4との当接部位を一定に保つ必要がある。一方で、ロータ4の全体をアーマチャ3に当接させるよう構成すると、製造誤差等により製品ごとに当接部位が異なり、回転トルクがばらつく可能性がある。
そこで、このロータ4では、ロータ4の外周部近傍の所定領域のみがアーマチャ3と当接するように構成される。具体的には、外周壁部43が内周壁部42よりも高く形成され、アーマチャ3を吸着した際に、外周壁部43の端面43aのみがアーマチャ3と当接する。このような構成とすることにより、アーマチャ3とロータ4との当接部位を一定に保ち、回転トルクを一定に保つことができる。
また、アーマチャ3とロータ4とを周方向において均一に当接させる必要があり、ロータ4のアーマチャ3との当接部位には研磨加工が施される。このとき、アーマチャ3との当接部位が、端面43aのみであるので、研磨加工が必要な部位を減少させることができ、製造コストを削減することができる。
ボビン50は、図7に示すように、樹脂製で円環形状を有し、外周部の両側の端部に沿ってフランジ部が立設され、両フランジ部の間に電磁コイル5が巻回される。本実施形態では、ボビン50は、凹部41の形状に合わせて、周方向に垂直な方向の断面視でテーパ形状を有する。
また、ボビン50には、ロータ4に固定するための突起部52、及び電磁コイル5に電力を供給する端子部53が設けられる。図7に示すように、ロータ4の凹部41に電磁コイル5を巻回したボビン50が収納される。このとき、ボビン50の突起部52が凹部41の底部に形成された穴部44aに挿入されるとともに、端子部53が、凹部41の底部に形成された穴部44bに挿入されて、電磁コイル5がロータ4に一体回転可能に固定される。突起部52及び端子部53は、穴部44a,44bを介してロータ4の裏面から突出して延在する。
〔電磁クラッチの動作〕
次に、電磁クラッチ1の動作について、図3及び図4を参照して説明する。
図3は、電磁クラッチ1が切断状態にある場合を示す。給電部Sから電磁コイル5に対して電力供給が行われていない非給電時では、アーマチャ3は板バネ部材10によってウォームホイール2の側に弾性付勢(弾性保持)されている。このため、アーマチャ3とロータ4との間には隙間が存在し、電磁クラッチ1は切断状態となる。この切断状態では、図示しない車両用ドアは電動モータMに直結していないので、手動での開閉操作を少ない力で容易に行うことができる。また、アーマチャ3とロータ4との擦れによる異音が発生することもない。さらに、アーマチャ3は板バネ部材10によってウォームホイール2の側に引き寄せられているので、振動による接触音(いわゆる、カタカタ音)等も発生しない。
図4は、電磁クラッチが接続状態にある場合を示す。給電部Sから電磁コイル5に対して電力供給が行われる給電時では、電磁コイル5から磁力が発生し、アーマチャ3がロータ4に強力に吸着される。これにより、アーマチャ3とロータ4との間の隙間がなくなり、電磁クラッチ1は接続状態となる。この接続状態において電動モータMを駆動すると、その駆動力は、ウォームギア103、ウォームホイール2、板バネ部材10、アーマチャ3、ロータ4、クラッチシャフト100を順に伝わり、最終的に図示しない車両用ドアの開閉機構に到達して車両用ドアの開閉が行われる。
〔ウォームホイールへのアーマチャの取り付け構造〕
本発明の電磁クラッチ1は、ウォームホイール2へのアーマチャ3の取付状態を工夫したことにより、「部品点数の低減」、及び「組み立ての容易化」を達成する。
図5及び図6に示すように、アーマチャ3は、板バネ部材10を介してウォームホイール2に取り付けられる。アーマチャ3と板バネ部材10とはカシメピン40で固定される。ウォームホイール2には、複数の係合孔21(図5に示す実施形態では3つの貫通孔)が形成されている。アーマチャ3に固定される板バネ部材10には、前記複数の係合孔21に対応する位置に複数の係合爪11(図5に示す実施形態では3つの鍵状突片)が形成されている。ここで、板バネ部材10の側の係合爪11をウォームホイール2の側の係合孔21に貫通させて係合する。これにより、アーマチャ3はウォームホイール2に吊り下げられた状態で取り付けられる。また、この状態においては、アーマチャ3は板バネ部材10によってウォームホイール2の側に弾性付勢されつつ保持されている。このため、アーマチャ3はロータ4から確実に引き離される。また、係合爪11と係合孔21とが係合することにより、ウォームホイール2の側からアーマチャ3の側へ回転駆動力が伝達される。
本発明の電磁クラッチ1は、このような係合爪11と係合孔21とによる係合によって、ウォームホイール2へのアーマチャ3の固定を行うものであるため、別途固定部材を準備する必要がない。従って、カシメピンやネジ締結によってウォームホイール2とアーマチャ3との固定を行っていた従来の電磁クラッチと比較して、構成部品の点数を低減することができ、結果として製造コストを低減することができる。また、上記の係合は、特殊な工具等を必要とせず、手作業で行うことができるので、比較的簡単に組み立てることができる。
また、本発明の電磁クラッチ1においては、振動による接触音等を抑制する工夫が施されている。図5に示すように、ウォームホイール2には、複数の被当接部22(図5に示す実施形態では3つの角型凹部)が形成されている。板バネ部材10には、前記複数の被当接部22に対応する位置に複数の当接部12(図5に示す実施形態では3つの湾曲突片対)が形成されている。ここで、板バネ部材10の側の当接部12をウォームホイール2の側の被当接部22に挿入すると、図6に示すように。各湾曲突片対12a,12bは、各角型凹部の内壁のうちウォームホイール2の回転方向において対向する二つの壁面22a,22bに対して弾性的に当接する。
この当接形態においては、当接部12はウォームホイール2の回転トルクの一部を負担することになる。このため、ウォームホイール2の側からアーマチャ3の側への駆動力の伝達が良好になる。例えば、入力された駆動力に対する応答速度が向上する。
また、当接部12はウォームホイール2の回転方向の衝撃を吸収することができる。その結果、例えば、振動による接触音や、駆動・停止に際しての打音の発生をより確実に抑制することができる。
〔回転抑制部材による回転駆動力の伝達構造〕
電動モータMがウォームギア103を介してウォームホイール2を回転させると、ウォームホイール2の被当接部22と板バネ部材10の当接部12とが回転方向において弾性的に当接し、次いでアーマチャ3に回転駆動力が伝達される。ところが、ウォームホイール2がアーマチャ3に対して過剰に相対回転すると、板バネ部材10が弾性変形可能な領域を超えて塑性変形するおそれがある。例えば、板バネ部材10の当接部12が過大な力を受けて塑性変形すると、ウォームホイール2とアーマチャ3との間で回転方向の隙間(遊び)が生じ、異音の原因となる。また、板バネ部材10の係合爪11が塑性変形した場合には、ウォームホイール2に対するアーマチャ3の取付状態が変化し、電磁クラッチ1の接続/切断操作に悪影響を及ぼすこともある。
そこで、このような問題を回避すべく、本発明の電磁クラッチ1では、アーマチャ3とウォームホイール2との間に亘って回転抑制部材を設けることができる。例えば、図5に示すように、ウォームホイール2の側のクラッチシャフト100の貫通部に径方向で厚みを異ならせた凹凸部材41を設ける。一方、アーマチャ3には前記凹凸部材41を受入可能な切欠部41を形成する。凹凸部材41の凹凸形状は、ウォームホイール2がアーマチャ3に対して所定角度以上相対回転しようとする前、すなわち、ウォームホイール2の過剰な相対回転によってアーマチャ3に取り付けた板バネ部材10が塑性変形する前に、ウォームホイール2の側の凹凸部材41がアーマチャ3の切欠部42に当接するような形状に設定されている。これにより、ウォームホイール2がアーマチャ3に対して所定角度以上に相対回転するような過剰な回転駆動力が入力された場合でも、ウォームホイール2の相対回転が抑制されるので、板バネ部材10の塑性変形を防止することができる。また、この場合、ウォームホイール2とアーマチャ3とは凹凸部材41を介して確実に当接するので、一旦両者が当接すれば、その後は回転駆動力の伝達速度に遅れは生じない。つまり、初期の伝達速度の遅延を最小限に抑制することができる。
なお、例えば、板バネ部材10に所定以上の厚みを持たせることにより、板バネ部材10のみでウォームホイール2の回転駆動力を負担できる場合には、上述した回転抑制部材を設ける必要はない。
〔電磁クラッチの汚れ防止構造〕
通常、ウォームホイール2には潤滑のためのグリースが塗布されている。ところが、このグリースがアーマチャ3に付着すると、アーマチャ3とロータ4とが接続されたときにロータ4の摩擦面にグリースが付着し、回転駆動力の伝達に悪影響を及ぼすおそれがある。
そこで、本発明の電磁クラッチ1では、図5に示すように、アーマチャ3に取り付ける板バネ部材10の外径を当該アーマチャ3の外径より大きく形成し、板バネ部材10の周囲に当該アーマチャ3の側に折り曲げた鍔部13を設けている。これにより、アーマチャ3の一面及び側面が板バネ部材10によって覆われることになるので、ウォームホイール2に塗布されているグリースがアーマチャ3に付着することはない。このため、電磁クラッチ1を構成するロータ4の摩擦面が保護され、車両用ドア側への回転駆動力の伝達が確実に行われる。
〔給電部の構成〕
次に、電磁コイル5への給電を行う給電部Sの構成について説明する。
図8は、給電部Sの分解図である。図9は、給電部Sの内部平面図である。図10は、給電部Sの給電部側カバー部材92への固定状態を示す斜視図である。
給電部Sは、制御部E(図1を参照)を介して電源(図示せず)に電気的に接続された一対のスリップリング87,88と、電磁コイル5に電気的に接続された一対のブラシ部材76とを接触させることによって、電磁コイル5への電力の供給が行われる。つまり、電磁コイル5(ロータ4)の回転に伴い、ブラシ部材76がスリップリング87,88の上を摺動することにより、電磁コイル5(ロータ4)の回転位相に拘らず電磁コイル5に電力が供給される。
図8に示すように、給電部Sは、上述のスリップリング87,88及びブラシ部材76に加えて、給電部側カバー部材92に固定される固定枠体、及びロータ4とともに一体回転する回転枠体等を備える。固定枠体は、スリップリング87,88を固定するスリップリング固定部材8である。回転枠体は、ブラシ部材76を固定するブラシ固定部材7である。スリップリング固定部材8とブラシ固定部材7とは、スリップリング87,88とブラシ部材76とを対向させた状態で、互いに相対回転可能であるとともに、軸方向の抜止めがされてユニット化される。
スリップリング固定部材8のブラシ固定部材7との対向面には、ウォームホイールと同一の回転軸心を中心とした同心円状に配置された二つの環状の凹部83,84が形成され、夫々の凹部83,84にスリップリング87,88が固定される。夫々の凹部83,84の側部には、スリップリング87,88の爪部87a,88aを挿入する円弧状のスリット83b,84bが形成される。本実施形態では、小径の凹部83の内周側にスリット83bが形成され、大径の凹部84の外周側にスリット84bが形成される。これらスリット83b,84bは、夫々ブラシ固定部材7との対向面の側に開口する開口部83a,84aと連通するとともに、対向面の裏面にも連通する。また、対向面の側には、スリップリング固定部材8の内周に沿って内周壁部81が形成され、外周に沿って外周壁部82が形成される。内周壁部81の外周面及び外周壁部82の内周面には、ブラシ固定部材7との間の抜けを防止するための円弧形状の複数の抜止突起81a,82aが周方向に沿って形成される。一方、対向面の裏面側には、給電部側カバー部材92に形成された穴部92aに係合する係合部86、及び給電部側カバー部材92に形成された穴部92eに挿入されて給電部Sの回転方向の位相決めをする位相決め突起85が形成される。
ブラシ固定部材7のスリップリング固定部材8との対向面には、ブラシ部材76を取り付ける固定部74が形成される。固定部74は、ブラシ固定部材7の径方向に延在するスリット74a、このスリット74aの径方向内側端部近傍に周方向に沿って延在するスリット74bを有する。また、この固定部74は、スリット74aの径方向外側端部の近傍に周方向に延在して設けられた突起部74d及び、スリット74aに対向して径方向に延在して設けられた突起部74cを有する。また、固定部74の近傍に、後述するブラシ部材76の端子部76bが挿入される穴部75が形成される。夫々のブラシ部材76に対応して固定部74及び穴部75が形成される。
また、ブラシ固定部材7には、内周壁部72及び外周壁部73が形成される。内周壁部72の内周側及び外周壁部73の外周側には、ブラシ固定部材7とスリップリング固定部材8との間で軸方向の抜止めをする環状の抜止突起72a,73aが形成される。
さらに、図10に示すように、ブラシ固定部材7の前記対向面の裏面には、ロータ4を一体回転可能に保持する凹状のロータ保持部71が形成される。
ブラシ部材76は、導電性の弾性材料で形成され、スリップリング87,88に接触するブラシ部76a、コイルボビン50に形成された端子部53に接触する端子部76b、及びブラシ固定部材7に取り付けられる被固定部76cを備える。
また、この給電部Sは、スリップリングとして小径のスリップリング87と大径のスリップリング88との2つのスリップリングを備える。これら二つのスリップリング87,88が同心状に配置されて一方が電源の一方の極に接続され、他方が他方の極に接続される。これらのスリップリング87,88は、導電性を有する弾性材料で形成され、ブラシ部材76が摺接する環状部と、当該環状部から径方向に突出する爪部87a,88aとを備える。爪部87a,88aは、周方向に沿って複数(本実施形態では3つ)設けられ、これらのうち一つの爪部87a,88aには、端子部87b,88bが、当該爪部87a,88aの先端部を屈曲して形成される。これら端子部87b,88bは、後述する導電部材92cを介して電源と電気的に接続される。また、本実施形態では、大径のスリップリング88では外径側に爪部88aが形成され、小径のスリップリング87では爪部87bが内径側に形成される。
次に、給電部Sの組付けについて説明する。
先ず、スリップリング固定部材8へのスリップリング87,88の取り付けについて説明する。図8に示すように、スリップリング87,88の爪部87a,88aを、上方から開口部83a,84aに挿入し、スリップリング87,88を回転させることにより、爪部87a,88aがスリット83b,84bに挿入される。このとき、爪部87a,88aを折り返して形成した端子部87b,88bがスリットから裏面の側へ突出する。
なお、スリップリング87,88は、スリップリング固定部材8にインサート成形にて固定してもよい。
次に、ブラシ固定部材7へのブラシ部材76の取り付けについて説明する。図8に示すように、被固定部76cをスリット74a及び突起部74cに沿って径方向外側から径方向内側に向かってスライド移動させ、被固定部の径方向内側端面部をスリット74bに係合させる。また、被固定部76cの弾性変形により被固定部76cの径方向外側端部に突起部74dを乗り越えさせて、76cの端面と突起部74dの端面とを当接させる。これにより、スリット76a及び突起部74cにより被固定部76cの周方向の移動が規制され、スリット76bと突起部74bにより被固定部76cの径方向の移動が規制され、ブラシ固定部材7にブラシ部材76が取り付けられる。この状態で、図10に示すように、端子部76bが穴部75に挿入され、ロータ保持部71の側に突出する。
なお、ブラシ部材76は、ブラシ固定部材7にインサート成形にて固定してもよい。
次に、ブラシ固定部材7とスリップリング固定部材8との組み付けについて説明する。図8に示すように、ブラシ固定部材7をスリップリング固定部材8の内周壁部81と外周壁部82との内部へ挿入することにより、ブラシ固定部材7とスリップリング固定部材8とがユニット化される。ここで、ブラシ固定部材7の抜止突起72aと抜止突起73aとの間隔が、スリップリング固定部材8の抜止突起81aと抜止突起82aとの間隔よりやや大きく設定されている。樹脂の弾性変形により抜止突起72aと抜止突起81aとを、及び抜止突起73aと抜止突起82aとを互いに乗り越えさせる。これにより、ブラシ部材76のブラシ部をスリップリング87,88に接触させた状態で、ブラシ固定部材7とスリップリング固定部材8とがユニット化される。
ブラシ固定部材7とスリップリング固定部材8とは、相対回転可能である一方、軸方向の移動が制限される。従って、ブラシ固定部材7とスリップリング固定部材8とは、ブラシ部材76の付勢力(弾性力)により、互いに離間する方向に付勢されるが、抜止突起72a,73aと抜止突起81a,82aとにより抜けが防止される。このため、ブラシ固定部材7はスリップリング固定部材8に対して傾きのない略平行な姿勢に維持される。その結果、給電部Sがコンパクトな形状に収まり、電磁クラッチ1全体の小型化に寄与することになる。
ここで、図9に示すように、ブラシ部材76のブラシ部76aが、スリップリング87,88の同一の直径上に配置されるように構成することが好ましい。このように構成することにより、電磁クラッチ1を組み立てるに際し、各部材を適正な姿勢で組み付けることができる。
なお、スリップリング87,88に対するブラシ部材76の配置は、厳密にロータ4の中心部(回転軸心)を挟んで対向していなくても、ブラシ固定部材7がブラシ部材76によって全体的に持ち上げられる状態であれば、多少のずれは許容される。
また、ブラシ部材76の弾性力は、電磁クラッチの個体差に起因してロータ4の高さ位置に多少のズレが生じた場合でも、そのズレを吸収してスリップリング87,88に当接可能な程度に設定されている。
上述のようにユニット化された給電部Sは、電磁クラッチ1に組み付けられる。図10に示すように、給電部Sのスリップリング固定部材8が、給電部側カバー部材92の内部に取り付けられる。給電部側カバー部材92の内部には、溝部92bが形成され、この溝部92bには、給電部側カバー部材92の外部の端子部92dから延在する導電部材92cが設けられている。この導電部材92cは、給電部側カバー部材92にインサート成形にて固定してもよい。
スリップリング固定部材8に形成された係合部86が給電部側カバー部材92に形成された穴部92aに係合して、スリップリング固定部材8が固定される。このとき、スリップリング固定部材8に形成された位相決め突起85が給電部側カバー部材92に形成された穴部92eに挿入されることにより、導電部材92cとスリップリング87,88の端子部87b、88bとの回転位相とが一致する。これにより、導電部材92cとスリップリング87,88とが互いに接触し、電気的に接続される。
また、給電部Sのブラシ固定部材7の側のロータ保持部71にロータ4が固定される。このとき、ロータ4から突出する突起部52が穴部71aに挿入されて、ブラシ固定部材7とロータ4とが一体回転可能に固定される。さらに、ロータ4から突出する端子部53が、穴部75に挿入されて、端子部53とブラシ部材76の端子部76bとが電気的に接続される。
給電部Sのうち、スリップリング固定部材8は、給電部側カバー部材92に固定されるとともに、ブラシ固定部材7はロータ4と一体回転可能である。これにより、ロータ4の回転時には、ブラシ部材76がスリップリング87,88上を摺動して、電磁コイル5に電力が供給される。
上述したように、スリップリング固定部材8とブラシ固定部材7とは、軸方向に所定範囲で相対移動可能である。従って、相対移動により、装置全体の組み付け誤差を吸収する。一方、ブラシ部材76は、弾性材料で構成されているので、スリップリング87,88に押し付けられることにより、スリップリング固定部材8とブラシ固定部材7とを、互いに離間する方向に付勢する。これにより軸方向のガタが防止される。
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、板バネ部材10の側に係合爪11を形成し、ウォームホイール2の側に係合孔21を形成したが、これとは反対に、板バネ部材10の側に係合孔を形成し、ウォームホイール2の側に係合爪を形成しても構わない。この場合、板バネ部材10を適切な厚みに形成し、板バネ部材10の係合孔の位置に対応するアーマチャ3の表面部分に係合爪の先端部を突出させるための凹部空間を設ければよい。
(2)上記実施形態では、回転抑制部材として、ウォームホイール2の側のクラッチシャフト貫通部に径方向で厚みを異ならせた凹凸部材41を設けたが、アーマチャ3に対するウォームホイール2の過剰な相対回転を抑制するものであれば、回転抑制部材の形状及び設置箇所は限定されない。例えば、ウォームホイール2の外周付近に突起部を設け、当該突起部を受け入れる孔部をアーマチャ3の側に設けることも可能である。
(3)上記実施形態では、板バネ部材10に形成した係合爪11、当接部12、及びウォームホイール2に形成した係合孔21、被当接部22の数を全て3個にしているが、夫々2個又は4個以上としても構わない。また、係合爪11及び係合孔21の組数と当接部12及び被当接部22の組数とが異なっていても構わない。
(4)上記実施形態では、給電部Sのうち、スリップリング固定部材8は、給電部側カバー部材92に固定されるとともに、ブラシ固定部材7はロータ4と一体回転可能としたが、ブラシ固定部材7を給電部側カバー部材92に固定するとともに、スリップリング固定部材8をロータ4に組み付ける逆の配置としても構わない。
本発明の電磁クラッチを採用した車両用ドアの開閉装置の平面図 車両用ドアの開閉装置の側面図 車両用ドアの開閉装置の要部断面図 車両用ドアの開閉装置の要部断面図 ウォームホイールへのアーマチャの取付態様を示す分解図 ウォームホイールへのアーマチャの取付部を示す要部拡大断面図 電磁クラッチの分解斜視図 給電部の分解図 給電部の内部平面図 給電部の給電部側カバー部材への固定状態を示す斜視図
符号の説明
1 電磁クラッチ
2 ウォームホイール
3 アーマチャ
4 ロータ
5 電磁コイル
10 板バネ部材
11 係合爪
12 当接部
13 鍔部
21 係合孔
22 被当接部
41 凹凸部材(回転抑制部材)
M 電動モータ

Claims (5)

  1. モータによって回転駆動されるウォームホイールと、
    電磁コイルを有するロータと、
    前記ウォームホイールの側に取り付けられ、前記電磁コイルへの電力供給時に前記ロータに吸着されて当該ロータと一体回転するアーマチャとを備え、
    前記アーマチャに板バネ部材を取り付けるとともに、前記アーマチャを前記ウォームホイールの側に付勢しつつ前記アーマチャを前記ウォームホイールに保持するよう、前記ウォームホイールと前記板バネ部材とを係合してある電磁クラッチ。
  2. 前記板バネ部材に形成された係合爪を前記ウォームホイールに形成された係合孔に係合させて、前記アーマチャを前記ウォームホイールに弾性付勢しつつ保持する請求項1に記載の電磁クラッチ。
  3. 前記板バネ部材が前記ウォームホイールの回転方向に沿って弾性力を発揮する当接部を備えるとともに、前記ウォームホイールが前記当接部を内嵌する被当接部を備えている請求項1又は2に記載の電磁クラッチ。
  4. 前記アーマチャに対する前記ウォームホイールの相対回転を所定角度に抑制する回転抑制部材を、前記アーマチャと前記ウォームホイールとに亘って設けてある請求項1〜3の何れか一項に記載の電磁クラッチ。
  5. 前記板バネ部材の外径を前記アーマチャの外径より大きく形成し、前記板バネ部材の周囲に前記アーマチャの側に折り曲げた鍔部を設けてある請求項1〜4の何れか一項に記載の電磁クラッチ。
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