JP2009121518A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Daisaku Shiraishi
大作 白石
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Abstract

【課題】メインポンプ12の他に電動ポンプ171を備えて、エンジン1の自動停止中には電動ポンプ171から作動油を供給するようにした自動変速機10の制御装置において、エンジン1の停止に伴い一時的に油温が上昇しても、油圧供給系における故障の誤判定を阻止して、制御に不用な制約が加わらないようにする。
【解決手段】エンジン1の自動停止中に油温センサ206によって検出した油温が所定温度未満であれば(ステップS5でNO)、油圧スイッチ160からの信号に基づいて故障判定を行う(S6〜S8)一方、検出した油温が所定温度以上であれば(S5でYES)油圧スイッチ160からの信号に基づく故障判定は行わず、エンジン1の再始動を待ってタービン回転センサ205により検出される回転数の変化率に基づいて、故障判定を行う(S15〜S17)。
【選択図】 図9

Description

本発明は、車両等に搭載される自動変速機の制御装置に関し、より詳しくは所謂アイドルストップのようにエンジンを自動停止する場合の自動変速機のオイルポンプ制御の技術分野に属する。
従来より、燃費やエミッションの低減、騒音や振動の抑制等を目的として、渋滞や信号待ちのような一時的な車両の停車期間に所定のエンジン停止条件が満たされるとエンジンを自動で停止し(所謂アイドルストップ)、その後に所定のエンジン始動条件が満たされると自動で再始動するようにした低公害型車両・環境対応型車両が知られている。
このような車両では、エンジンが自動停止すると、それにより駆動されている自動変速機のオイルポンプも停止することから、この自動変速機の油圧制御回路における作動油圧が低下し、例えば1速等、所定の変速段のままでフォワードクラッチ(前進用摩擦要素)が解放されてしまい、クリープ力が得られなくなるとともに、エンジンの再始動時には、急激に立ち上がる作動油圧が供給されることによってフォワードクラッチの締結ショックが発生するという不具合がある。
この点につき、エンジン駆動の機械式ポンプをメインポンプとし、これとは別にモータ駆動の電動式のオイルポンプをサブポンプとして備えて、エンジンの自動停止中はその電動ポンプにより作動油圧を生成し、これをフォワードクラッチに供給することによって、これをトルクの伝達が可能な締結状態ないし締結直前状態に維持しておくことが検討されている(例えば特許文献1を参照)。
但し、そうして電動ポンプによって作動油圧を供給するようにした場合は、その電動ポンプを始めとして給電系や制御系等の電気的な故障も起こり得るので、フォワードクラッチへの作動油の供給系において従来以上に様々な故障の発生が危惧される。
そこで、本願の出願人は、先の特許出願(特許文献2として公開済み)において、フォワードクラッチへの作動油の供給油路に油圧スイッチを配設し、エンジンが自動で停止した後に油圧スイッチがオフ(非作動状態)になれば、前記電動ポンプ等、フォワードクラッチへの作動油の供給系に何らかの故障があると判定するようにした自動変速機の制御装置を提案している。
特開2003−262264号公報 特開2006−170399号公報
ところで、一般にアイドルストップ中の車両は、走行風等による冷却効果が得られないばかりか、エンジンの停止に伴いウォータポンプも停止して、ラジエータとの間の冷却水の循環が行われなくなることから、エンジン及び自動変速機の双方において作動油の温度が上昇しやすい。
とりわけ急な上り坂のような負荷の大きい走行の後にアイドルストップしたた場合は、トルクコンバータによって激しく攪拌されて高温になっている作動油(通常、ATFと兼用する)の温度が一時的に上昇し、その粘性の低下によって漏れが多くなることから、油圧も低下することがある。そうなると、前記従来例(特許文献2)のような油圧に基づく故障判定では誤判定を生ずる虞れがあり、故障と誤判定した場合はエンジンや自動変速機の制御に不用の制約が加えられて、利便性が大きく損なわれることになる。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アイドルストップ等の際に一時的に作動油温が上昇しても、電動ポンプを含む油圧供給系に関する故障の誤判定が行われることを阻止して、制御に不用な制約が加わることを防止することにある。
前記の目的を達成するために本発明では、センサによって検出した作動油温が所定以上に高いときには、油圧スイッチによる故障の判定を行わないようにした。
すなわち、請求項1の発明は、油圧源としてエンジン駆動のメインポンプとモータ駆動の電動ポンプとを備え、車両の停車時にエンジンが自動停止されたときに、所定の前進用摩擦要素に前記電動ポンプから作動油を供給するようにした自動変速機の制御装置を対象とする。
そして、前記前進用摩擦要素に作動油を供給するための供給油路には、作動油圧が所定値以上になると非作動状態から作動状態に切り換わる油圧スイッチを配設し、前記作動油の温度に関する値を検出する油温検出手段と、エンジンの自動停止中に油温検出手段による検出油温が所定温度未満であれば、前記油圧スイッチの状態に基づいて、電動ポンプから前進用摩擦要素への作動油の供給系に関する故障判定を行う一方、検出油温が前記所定温度以上であれば故障判定を行わない第1の故障判定手段と、を備える構成とする。
前記の構成では、停車時の変速段で締結される所定の前進用摩擦要素(例えば上述のフォワードクラッチ)への作動油の供給油路に油圧スイッチが設けられており、エンジンが自動停止されたときに作動油温が所定温度未満であれば、前記油圧スイッチの状態に基づいて、即ち油圧スイッチが作動状態にあるか否かによって、電動ポンプからの作動油の供給系に故障があるか否かの判定が第1の故障判定手段により行われる。
尚、そうして故障が判定されれば、例えば、そのことを乗員に報知するとともに、直ちにエンジンの自動停止を強制終了する(つまりエンジンを直ちに強制的に自動始動してメインポンプを駆動させる)等の対策を講じることで、電動ポンプでは十分な油圧が生成できず、その結果、前進用摩擦要素を締結状態に維持することができない場合に起こる、エンジン再始動時のフォワードクラッチの締結ショックの発生を未然に防ぐことができる。
一方、前記エンジンの自動停止中に作動油温が所定温度以上であって、上述したように誤判定の生じる虞れがあるときには、前記油圧スイッチの状態に基づく故障判定は行われないので、故障の誤判定に起因してエンジンや自動変速機の制御に不用の制約が加わることはなくなり、これによる利便性の低下を未然に防止することができる。
好ましいのは、前記自動変速機が、エンジンからの入力を流体伝動装置(例えば上述のトルクコンバータ)を介して前進用摩擦要素に伝達するものである場合に、そうして流体伝動装置から入力する前進用摩擦要素への入力回転数を検出する入力回転数センサと、所定の状態で前記入力回転数センサによって検出される入力回転数の変化状態に基づいて、電動ポンプから前進用摩擦要素への作動油の供給系に関する故障判定を行う第2の故障判定手段と、を備えることである(請求項2)。この第2の故障判定手段により、少なくとも検出油温が所定温度以上のときに故障判定を行うようにすれば、油温が高くて第1の故障判定手段による故障判定を行えないときでも信頼性の高い故障判定を行える。
より具体的に第2の故障判定手段は、エンジンの自動停止中に油温検出手段によって検出された油温が所定温度以上であれば、その再始動時における入力回転数の変化率に基づいて故障判定を行うものとすればよく(請求項4)、こうすれば、前進用摩擦要素の滑りによってエンジン回転が吹け上がり、流体伝動装置から前進用摩擦要素への入力回転数が所定以上に大きく変化することに基づいて、故障を正確に判定できる。
また、好ましいのは、前進用摩擦要素が解放され所定の他の摩擦要素が締結されている変速段から、該前進用摩擦要素が締結され前記他の摩擦要素が解放されている別の変速段への変速時に、該前進用摩擦要素の締結用油圧を増加させる一方、前記他の摩擦要素の締結用油圧を減少させて、当該前進用摩擦要素の締結用油圧の増加に伴い油圧スイッチが非作動状態から作動状態になったときに、前記他の摩擦要素の締結用油圧を急減させる変速制御手段を備えることである(請求項3)。
すなわち、車両の走行中に自動変速機の変速段を変更するときには、前進用摩擦要素の締結と他の摩擦要素の解放とを同期させて行う必要があり、これらの摩擦要素の掛け替えタイミングを計るために通常、油圧スイッチが設けられているところ、この油圧スイッチを利用して上述した故障判定を行うようにすれば、部品点数の増加を回避して、コストアップを抑制できる。
以上のように本発明に係る自動変速機の制御装置によると、アイドルストップ等、エンジンの自動停止中に自動変速機の作動油温を検出し、それが所定値未満であれば、油圧スイッチからの信号に基づいて作動油供給系の故障を判定することができ、故障時には適切な対策を講じることができる。一方、作動油温が所定値以上で誤判定の虞れがあれば、前記油圧スイッチによる故障判定は行わないことで故障の誤判定を確実に阻止し、これによる制御の不用な制約を未然に防止することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
−自動変速機の全体構成 −
図1に示すように、本実施形態に係る自動変速機10は、エンジン1に出力軸2を介して連結されたトルクコンバータ20(流体伝動装置)と、該トルクコンバータ20の出力により駆動される2つの遊星歯車機構30,40と、該遊星歯車機構30,40の動力伝達経路を切り換える複数の摩擦要素51〜55及びワンウェイクラッチ56とを有し、Dレンジの1〜4速、Sレンジの1〜3速、Lレンジの1〜2速、及びRレンジの後退速が実現可能に構成されている。
トルクコンバータ20は、エンジン出力軸2に連結されたコンバータケース21と、該ケース21内に固設されたポンプ22と、該ポンプ22に対向配置されたタービン23と、変速機ケース11にワンウェイクラッチ24を介して支持されたステータ25と、前記ケース21とタービン23との間に設けられたロックアップクラッチ26とを有し、前記タービン23の回転がタービンシャフト27を介して遊星歯車機構30,40に出力されるように構成されている。そして、トルクコンバータ20の反エンジン側に、コンバータケース21を介してエンジン出力軸2により駆動されるオイルポンプ、すなわち機械式のメインポンプ12が配置されている。
遊星歯車機構30,40は、サンギヤ31,41と、該サンギヤ31,41に噛み合う複数のピニオン32…32,42…42と、該ピニオン32…32,42…42を支持するピニオンキャリヤ33,43と、ピニオン32…32,42…42に噛み合うリングギヤ34,44とを有する。
そして、タービンシャフト27と第1遊星歯車機構30のサンギヤ31との間にフォワードクラッチ51(前進用摩擦要素)が介設され、タービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のサンギヤ41との間にリバースクラッチ52が介設され、タービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43との間に3−4クラッチ53が介設されている。2−4ブレーキ54は第2遊星歯車機構40のサンギヤ41を固定する。第1遊星歯車機構30のリングギヤ34と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43とが連結され、これらと変速機ケース11との間にローリバースブレーキ55とワンウエイクラッチ56とが並列に配置されている。第1遊星歯車機構30のピニオンキャリヤ33と第2遊星歯車機構40のリングギヤ44とが連結され、これらに出力ギヤ13が接続されている。出力ギヤ13と中間伝動機構60を構成するアイドルシャフト61上の第1中間ギヤ62とが噛み合い、アイドルシャフト61上の第2中間ギヤ63と差動装置70の入力ギヤ71とが噛み合って、前記出力ギヤ13の回転が差動装置70のデフケース72に入力され、差動装置70を介して左右の車軸73,74が駆動される。
表1に、各摩擦要素51〜55及びワンウェイクラッチ56の作動状態と変速段との関係を示す。図2には変速歯車機構30,40周辺の具体的構成を示す。図示のように変速機ケース11にタービン回転センサ205が取り付けられている。
Figure 2009121518
−油圧制御系の構成−
図3に示すように、この自動変速機10の油圧制御回路100には、メインポンプ12の吐出圧を調整して所定のライン圧を生成するレギュレータバルブ101が備えられている。また、本実施形態の自動変速機10にはメインポンプ12とは別に、モータ172により駆動されるオイルポンプ、すなわち電動式のサブポンプ171が備えられている。この電動ポンプ171及びポンプモータ172は、具体的には、変速機ケース11の外壁に組み付けられている。
電動ポンプ171は、オイルパン170内に貯留した作動油をメインポンプ12と共用のストレーナから吸い上げ、導入油路173及び逆止弁174を介してレギュレータバルブ101に供給する。図1〜3には示さないが、ストレーナには一体的に油温センサ206(図4を参照)が配設されていて、ここから吸い込まれる作動油の温度を計測する油温検出手段を構成している。このことで自動変速機10内の平均的な作動油温を比較的正確に検出することができる。
レギュレータバルブ101で生成されたライン圧はメインライン140を経由してマニュアルバルブ102に供給される。マニュアルバルブ102は運転者のシフト操作に連動してレンジを切り換えて、D,S,Lの各前進レンジではライン圧を第1出力ライン141及び第2出力ライン142に出力し、Rレンジでは第1出力ライン141及び第3出力ライン143に出力し、Nレンジでは第3出力ライン143に出力する。
油圧制御回路100には、さらに、ローリバースバルブ103、バイパスバルブ104、3−4シフトバルブ105、ロックアップコントロールバルブ106、ソレノイドリレーバルブ107及びレデューシングバルブ108と、2つのオンオフソレノイドバルブ(SVと略記する)111,112、3つのデューティソレノイドバルブ(DSVと略記する)121〜123及びリニアソレノイドバルブ(LSVと略記する)131とが備えられている。
また、油圧制御回路100には、フォワードクラッチ51に締結用油圧を供給するためのフォワードクラッチライン151、リバースクラッチ52に締結用油圧を供給するためのリバースクラッチライン152、3−4クラッチ53に締結用油圧を供給するための3−4クラッチライン153、2−4ブレーキ54の締結室に油圧を供給するためのサーボアプライライン154、同じく解放室に油圧を供給するためのサーボリリースライン155、ローリバースブレーキ55に締結用油圧を供給するためのローリバースブレーキライン156、及びフォワードクラッチライン151から分岐して3−4シフトバルブ105に至る分岐ライン157が形成されている。
そして、フォワードクラッチライン151に油圧スイッチ160が設けられている。この油圧スイッチ160は、フォワードクラッチ51への締結用油圧、すなわちフォワードクラッチ油圧Pfdが上昇して、所定値である第1の油圧PfdH以上になると非作動状態(オフ:OFF)から作動状態(オン:ON)に切り換わる。但し、この油圧スイッチ160は、ハンチング防止のために本来的に有するヒステリシス特性によって、フォワードクラッチ油圧Pfdが、前記第1の油圧PfdHより低い第2の油圧PfdLよりも低くなったときに、非作動状態に切り換わる。ここで、第1の油圧PfdHは、本実施形態では、フォワードクラッチ51がトルク伝達可能な締結状態になるような油圧に設定されている。
図4に示すように、本実施形態に係る車両には、エンジン1と自動変速機10とを統括して制御する統括コントロールユニット200が搭載されている。このコントロールユニット200は、車速を検出する車速センサ201、エンジン1のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ202、運転者により選択されたシフト位置(レンジ)を検出するシフト位置センサ203、エンジン1の出力回転を検出するエンジン回転センサ204、トルクコンバータ20の出力回転を検出するタービン回転センサ205、作動油温を検出する前記油温センサ206、及び前記油圧スイッチ160等からの信号を入力し、その入力結果に基いて、エンジン1の運転制御を行うとともに、前記した油圧制御回路100の第1、第2SV111,112、第1〜第3DSV121〜123、及びLSV131を駆使しての変速制御や、エンジン1の自動停止及び自動再始動の際の電動ポンプ171(ポンプモータ172)の駆動制御等を行う。
表2に、SV111,112及びDSV121〜123の作動状態と変速段との関係を示す。表中、(○)は、SV111,112及びDSV121〜123が上流側(ポンプ12,171側)の油路と下流側(摩擦要素51〜55側)の油路とを連通させていることを示し、(×)は、上流側の油路を遮断して下流側の油路をドレンさせていることを示す。
Figure 2009121518
−変速制御の一例−
次に、4−2シフトダウン変速を例に取り、本実施形態における変速制御について具体的に説明する。まず、4速では、表2に示したように、第1SV111と第1DSV121と第2DSV122とが作動する。これにより、図5に示すように、バイパスバルブ104のスプールが右(図面上、以下同様)に位置し、3−4シフトバルブ105のスプールが右に位置して、3−4クラッチ53に締結用油圧が供給され、2−4ブレーキ54の締結室にサーボアプライ圧が供給されて、3−4クラッチ53及び2−4ブレーキ54が締結されている(表1参照)。このとき、フォワードクラッチ51にはフォワードクラッチ油圧Pfdが供給されず、フォワードクラッチ51は解放されている。
一方、2速では、表2に示したように、第1DSV121と第3DSV123とが作動する。これにより、図6に示すように、バイパスバルブ104のスプールが右に位置し、3−4シフトバルブ105のスプールが左に位置して、2−4ブレーキ54の締結室にサーボアプライ圧が供給され、フォワードクラッチ51にフォワードクラッチ油圧Pfdが供給されて、2−4ブレーキ54及びフォワードクラッチ51が締結されている(表1参照)。このとき、3−4クラッチ53には締結用油圧が供給されず、3−4クラッチ53は解放されている。したがって、この4−2シフトダウン変速は、フォワードクラッチ51が解放され3−4クラッチ53が締結された変速段から、フォワードクラッチ51が締結され3−4クラッチ53が解放された変速段への変速、つまり摩擦要素51,53の掛け替えを伴う変速である。
図7のタイムチャートに示すように、時刻t1に変速指令が出力されると、3−4クラッチ油圧(3−4クラッチ53への締結用油圧)P34をP34−1まで低減させる。これにより、3−4クラッチ53がスリップ状態に移行し、トルクコンバータ20のタービン回転Ntが変速前回転Nt1から上昇し始める。また、フォワードクラッチ油圧PfdをPfd−1まで増加させる。これにより、フォワードクラッチ51がトルク伝達可能な締結状態の直前の状態に移行する。
時刻t2にタービン回転NtがNt2まで上昇すると、3−4クラッチ油圧P34をいったんP34−2まで増加させる。これにより、タービン回転Ntが変速後回転Nt3を超えることが抑制される。また、フォワードクラッチ油圧Pfdを本格的に立ち上げる。そして、時刻t3にフォワードクラッチ油圧PfdがPfd−2まで上昇すると、3−4クラッチ油圧P34を急減させる。ここで、前記フォワードクラッチ油圧Pfd−2は、フォワードクラッチ51がトルク伝達可能な締結状態となる油圧に設定されている。これにより、フォワードクラッチ51と3−4クラッチ53との掛け替えが達成される。
その場合に、前記時刻t3に油圧スイッチ160がオフからオンに切り換わる。つまり、前述の第1の油圧PfdHが掛け替え判定用油圧Pfd−2に設定されて、油圧スイッチ160は、フォワードクラッチ51と3−4クラッチ53との掛け替えタイミングを計るために用いられているのである。
前記したように4−2シフトダウン変速は、フォワードクラッチ51(前進用摩擦要素)が解放され3−4クラッチ53(他の摩擦要素)が締結されている変速段から、フォワードクラッチ51が締結され3−4クラッチ53が解放されている別の変速段への変速であり、その際に、フォワードクラッチ51及び3−4クラッチ53の各々の締結用油圧を制御するコントロールユニット200は、変速制御手段として機能することになる。
−アイドルストップの制御−
次に、本発明の特徴として、アイドルストップのためのエンジン1及び自動変速機10の(特に電動ポンプ171の)制御の一例を説明する。まず、車両停車時の変速段である1速では、表2に示したように、第3DSV123のみが作動する。これにより、図8に示すように、3−4シフトバルブ105のスプールが左に位置して、フォワードクラッチ51にフォワードクラッチ油圧Pfdが供給され、フォワードクラッチ51が締結されている(表1参照)。この状態でエンジン1が自動停止すると、エンジン1で駆動されるメインポンプ12が停止して、フォワードクラッチ油圧Pfdが抜けてしまうから、エンジン1の自動停止中は、電動ポンプ171をモータ駆動して生成したフォワードクラッチ油圧Pfdをフォワードクラッチライン151に導入して、フォワードクラッチ51をトルク伝達可能な締結状態ないし締結直前状態に維持するようにする。
また、そうして電動ポンプ171の作動によりフォワードクラッチライン151に作動油圧Pfdを供給しながら、基本的にはそのフォワードクラッチライン151において油圧スイッチ160が作動状態(オン:ON)にあるか非作動状態(オフ:OFF)にあるかによって、電動ポンプ171等、フォワードクラッチライン151への油圧の供給系に故障があるかどうか判定する。
以下、図9のフローチャート及び図10のタイムチャートを参照して、より具体的に説明する。まず、図9のフローにおいてスタート後のステップS1では各種信号を入力し、続くステップS2で、エンジン1の自動停止条件が成立したかどうか判定する。ここで、自動停止条件は、例えば、シフト位置がD,S,Lの前進レンジにあり、車両が停止状態にあり(車速がほぼゼロであり)、ブレーキスイッチ(フットブレーキ又はパーキングブレーキ)がオンであり、かつアクセルがオフである状態が、所定時間継続したとき等、予め設定されたものである。
そして、前記自動停止条件が成立していなければ(NO)リターンする一方、成立すれば(YES)エンジン自動停止フラグがオンになり、ステップS3において電動ポンプ171の駆動を開始するとともに、ステップS4において、例えば燃料噴射の停止及び火花点火の停止によりエンジン1を自動停止する(図10の時刻t1)。
ここで、電動ポンプ171への制御信号は、エンジン自動停止期間中の目標フォワードクラッチ油圧Pfdoを実現するようなモータデューティ値Doを出力しており、その目標フォワードクラッチ油圧Pfdoは、フォワードクラッチ51がトルク伝達可能な締結状態ないし締結直前状態となる油圧に、例えば上述した第1の油圧PfdHと第2の油圧PfdLとの間の油圧に設定される。また、モータデューティ値Dは油温が高いほど大きくされる。これは、油温が高いほど作動油の粘性が低くなって作動油の漏れ量が多くなるからである。
そうしてエンジン1の自動停止に伴い、メインポンプ12からの油圧が低下するとともに、電動ポンプ171からの油圧が立ち上がることになるが、この油圧の立ち上がりには遅れがあるので、図10に実線で示すように、フォワードクラッチ油圧Pfdは一瞬、急低下した後は緩やかに低下して、その後、目標値Pfdoに収束するようになる(時刻t1〜t3)。
続いて、ステップS5では、油温センサ206の信号に基づいて作動油温が所定値以上かどうか判定する。この所定値は、前記したように温度上昇に伴い作動油の漏れ量が多くなる結果として、油圧スイッチ160の作動状態に基づく故障判定に誤りを生じるような温度であり、具体的な数値は実験等により予め設定されている。そして判定がYESで誤判定の虞れがあるときには、後述のステップS13に進む一方、判定がNOで誤判定の虞れがなければステップS6に進んで、油圧スイッチ160が作動状態(ON)かどうか判別する。
その判定は、エンジン回転数Neが所定のエンジン停止判定回転Nexよりも低くなった後に行われる。停止判定回転Nexは、エンジン1の停止が確実視されるエンジン回転数(例えば200〜300rpm等)であって、これよりもエンジン回転数Neが低くなったときは(時刻t2〜)実質的にメインポンプ12による油圧の影響がなくなるので、電動ポンプ171からの作動油の供給系における故障の有無を正確に判定できる。
図10に実線で示すように、伝動ポンプ171から正常に油圧が供給されていて、フォワードクラッチ油圧Pfdが目標値Pfdoに維持されていれば、油圧スイッチ160は作動状態になり、ステップS6でYESと判定し、正常と判定する(ステップS7)。その後は、エンジン1の再始動を待って(ステップS8,S9)、時刻t4で再始動されれば、これによりメインポンプ12からの油圧が立ち上がるのに同期させて、電動ポンプ171を停止させ(ステップS10)、しかる後にリターンする。
すなわち、エンジン1の再始動は、例えば、ブレーキスイッチ(フットブレーキ又はパーキングブレーキ)がオフとなったとき、又はアクセルがオンとなったとき等に行われ、再始動に伴い(時刻t4)エンジン回転数Neが立ち上がるとともに、フォワードクラッチ油圧Pfdがメインポンプ12の駆動によって目標油圧Pfdoから上昇し始める。その油圧Pfdの立ち上がりと同期するように所定のタイミングでモータデューティ値Dをゼロにして、電動ポンプ171の駆動を終了する。
一方、電動ポンプ171を含めた油圧の供給系に何らかの故障があるときには、図10に破線で示すように、フォワードクラッチ油圧Pfdがエンジン1の停止に伴い目標値Pfdoよりも低くなってゆく(t1〜t3)。そして、それが第2の油圧PfdLを下回ったとき、油圧スイッチ160が非作動状態(オフ:OFF)になって(時刻t3)、前記ステップS6でNO、即ち故障と判定して(ステップS11)ステップS12に進み、直ちに電動ポンプ160は停止し、エンジン1を強制的に再始動させて、しかる後にリターンする。
つまり、前記のように判定された故障は、電動ポンプ171の故障や油圧スイッチ160の異常等、様々な故障が考えられ、いずれにしても、電動ポンプ171で十分高い油圧Pfdが生成できずにフォワードクラッチ51を締結状態に維持できない可能性があるから、直ちにエンジン1を始動してメインポンプ12を駆動させるという対策を講じるのである。尚、これ以外にも、警報装置207(図4参照)を作動させて乗員に故障を報知するのが好ましい。
これに対し、前記ステップS5にて作動油温が所定値以上である(YES)と判定した場合は、前記のような油圧スイッチ160の状態に基づく故障の判定は行わない。そして、前記の如く乗員のブレーキやアクセル等の操作に応じてエンジン1が再始動されるのを待って(ステップS13,S14)、このときにタービン回転センサ205により検出されるトルクコンバータ20の出力回転数の変化に基づいて、故障を判定する。
すなわち、何らかの故障によってフォワードクラッチ51が解放されているか、或いは解放気味になっていてその滑りが大きくなるときには、図10において時刻t4から破線で示すように再始動時にエンジン1が急に吹け上がって、自動変速機10におけるタービン回転数も所定以上に急激に立ち上がるようになる。よって、ステップS15にてタービン回転数の変化率が所定値以上と判定し(YES)、ステップS16にて故障と判定し、続くステップS18にて電動ポンプ171を停止させた後に、リターンする。警報装置207を作動させて乗員に異常のあることを報知するようにしてもよい。
前記図9のフローのステップS5,S6〜S8によって、エンジン1の自動停止中に油温センサ206によって検出された油温が所定温度未満であれば、油圧スイッチ160の状態に基づいて、電動ポンプ171からの作動油の供給系に関する故障判定を行う一方、検出油温が前記所定温度以上であれば故障判定を行わない第1の故障判定手段が構成されている。
また、ステップS15〜S17によって、エンジン再始動時にタービン回転センサ205により検出されるフォワードクラッチ51への入力回転数の変化率に基づいて、電動ポンプ171からの作動油の供給系に関する故障判定を行う第2の故障判定手段が構成されている。換言すれば、前記のような制御を行うコントロールユニット200が、第1及び第2の故障判定手段としても機能することになる。
したがって、この実施形態に係る自動変速機の制御装置によると、エンジン駆動のメインポンプ12とモータ駆動の電動ポンプ171とを備えて、車両の停車時にエンジン1が自動停止されたときには電動ポンプ171からフォワードクラッチライン151へ作動油を供給するようにしたものにおいて、そうして自動変速機の作動油温を検出し、それが所定値未満であれば、フォワードクラッチライン151に設けた油圧スイッチ160からの信号に基づいて、電動ポンプ171を含む作動油供給系の故障を判定することができ、故障を検出したときには適切な対策を講じることができる。
一方、エンジン1の自動停止中に自動変速機10の作動油温が所定値以上に高くなっていて、故障と誤判定する虞れがあれば、前記油圧スイッチ160の信号に基づく故障判定は行わないことで、故障の誤判定に起因するエンジン1や自動変速機10の制御の不用な制約を未然に防止することができる。
また、その場合には、乗員のブレーキやアクセル操作に応じてエンジン1が再始動するときに、トルクコンバータ20のタービン回転数の変化率に基づいて故障を判定するようにしているので、前記のように作動油温が高くて、油圧に基づく故障判定を行えないときでも、信頼性の高い故障判定を行える。
さらに、この実施形態では、油圧スイッチ160は本来、自動変速機10の変速制御において前記フォワードクラッチ51と例えば3−4クラッチ53との掛け替えタイミングを計るためのものであり、これを前記の故障判定のためにも兼用することで、部品点数の増加を回避して、コストアップを抑制できる。
尚、本発明に係る自動変速機の制御装置は、以上、述べた実施形態の構成に限定されることなく、その他の種々の構成をも包含する。例えば、自動変速機10の所定の前進用摩擦要素はフォワードクラッチ51に限定されず、それ以外のクラッチやブレーキであってもよい。
また、自動変速機10はトルクコンバータ20を備えるものに限定されない。この場合、第2の故障判定手段は、所定の前進用摩擦要素への入力回転数の変化状態に基づいて、前記の実施形態と同様に故障を判定することができる。前記実施形態のように油圧スイッチ160を兼用しなくてもよいことは勿論である。
また、図9に示す制御フローのステップS5において油温所定値以上であるYESと判定した場合、同フローのステップS13〜S18に進む代わりに、そのままリターンするようにしてもよい。
さらに、同フローの冒頭で、例えばステップS2の後に別のステップを設け、過去の故障判定の履歴が残されていない場合に限り、ステップS3に進んでエンジン1の自動停止を行うようにすることもできる。
また、本発明は、前記実施形態で説明したアイドルストップの場合に限定されず、例えばハイブリッド車においてエンジンを自動で停止させ、再始動させる場合にも適用可能である。
以上のように、本発明は、所謂アイドルストップを行う車両において、電動ポンプを含む油圧供給系に関する故障の誤判定を阻止し、これにより制御に不用な制約が加わることを防止できるものであり、産業上の利用可能性はある。
本発明の実施の形態に係る車両の動力伝達経路を示す骨子図である。 車両の自動変速機の要部の具体的構成を示す展開図である。 同自動変速機の油圧制御回路図である。 車両のエンジン及び自動変速機の制御システム図である。 4速の状態を示す油圧制御回路の部分図である。 2速の状態を示す油圧制御回路の部分図である。 4−2シフトダウン変速制御のタイムチャートである。 1速の状態を示す油圧制御回路の部分図である。 アイドルストップの際のエンジン及び自動変速機(特に電動ポンプ)の制御の一例を示すフローチャートである。 同タイムチャートである。
符号の説明
1 エンジン
10 自動変速機
12 メインポンプ
51 フォワードクラッチ(前進用摩擦要素)
53 3−4クラッチ(他の摩擦要素)
151 フォワードクラッチライン(作動油の供給油路)
160 油圧スイッチ
171 電動ポンプ
200 コントロールユニット(変速制御手段、第1及び第2の故障判定手段)
205 タービン回転センサ(入力回転数センサ)

Claims (4)

  1. 油圧源としてエンジンにより駆動されるメインポンプとモータにより駆動される電動ポンプとを備え、車両の停車時にエンジンが自動停止されたときは、所定の前進用摩擦要素に前記電動ポンプから作動油を供給するようにした自動変速機の制御装置であって、
    前記前進用摩擦要素に作動油を供給するための供給油路には、作動油圧が所定値以上になると非作動状態から作動状態に切り換わる油圧スイッチが配設され、
    前記作動油の温度に関する値を検出する油温検出手段と、
    エンジンの自動停止中に前記油温検出手段によって検出された油温が所定温度未満であれば、前記油圧スイッチの状態に基づいて、電動ポンプから前進用摩擦要素への作動油の供給系に関する故障判定を行う一方、検出油温が前記所定温度以上であれば故障判定を行わない第1の故障判定手段と、を備えていることを特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 自動変速機は、エンジンからの入力が流体伝動装置を介して前進用摩擦要素に伝達されるように構成され、
    前記流体伝動装置から前進用摩擦要素への入力回転数を検出する入力回転数センサと、
    所定の状態で前記入力回転数センサによって検出される入力回転数の変化状態に基づいて、電動ポンプから前進用摩擦要素への作動油の供給系に関する故障判定を行う第2の故障判定手段と、を備え、
    少なくとも検出油温が所定温度以上のときに前記第2の故障判定手段によって故障判定を行う、請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前進用摩擦要素が解放され所定の他の摩擦要素が締結されている変速段から、該前進用摩擦要素が締結され前記他の摩擦要素が解放されている別の変速段への変速時に、該前進用摩擦要素の締結用油圧を増加させる一方、前記他の摩擦要素の締結用油圧を減少させて、当該前進用摩擦要素の締結用油圧の増加に伴い油圧スイッチが非作動状態から作動状態になったときに、前記他の摩擦要素の締結用油圧を急減させる変速制御手段を備えている、請求項1又は2のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
  4. 第2の故障判定手段は、エンジンの自動停止中に油温検出手段によって検出された油温が所定温度以上であると、その再始動時における入力回転数の変化率に基づいて故障判定を行う、請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
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