JP2009121306A - 可変動弁機構を備える内燃機関およびその制御装置 - Google Patents

可変動弁機構を備える内燃機関およびその制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】この発明は、可変動弁機構を備える内燃機関およびその制御装置に関し、可変動弁機構のみの制御によって、低負荷時、始動時、または冷間時での燃焼の安定化を良好に実現可能とすることを目的とする。
【解決手段】第1吸気弁64が配置された第1吸気ポート60を備える。第2吸気弁66が配置された第2吸気ポート62を備える。第1吸気ポート60を、第2吸気ポート62に比して、スワールの生成能力の高いポートとして構成する。要求される作用角が小さくなるほど、第2吸気弁66のリフト量よりも第1吸気弁64のリフト量が小さくなる開弁特性を備える吸気可変動弁機構40を備える。
【選択図】図5

Description

この発明は、可変動弁機構を備える内燃機関およびその制御装置に関する。
従来、例えば特許文献1には、スワールの生成を制御するスワールコントロールバルブと吸気弁の閉じ時期を調整可能な可変動弁機構とを備えるディーゼルエンジンの燃焼制御装置が開示されている。この従来の制御装置は、低負荷領域においては、スワールコントロールバルブによりスワールを弱めるとともに、可変動弁機構により吸気弁の閉じ時期を吸気下死点付近に制御することにより実圧縮比を高めるようにしている。上記従来の制御装置では、以上のような制御によって、低圧縮比としたときに燃焼が不安定となる低負荷域での低温予混合燃焼を安定させるようにしている。
特開平11−315739号公報 特開2000−192820号公報 特開2004−36566号公報 特開2000−328968号公報 特開2007−56701号公報
上述したように、上記特許文献1に記載された手法では、低負荷域において燃焼の安定化を図るためには、スワールコントロールバルブおよび可変動弁機構という2つのアクチュエータの制御が必要となる。つまり、上記特許文献1には、可変動弁機構のみを用いて、低負荷域において燃焼の安定化を実現する手法については記載されていない。そのような燃焼の安定化を可変動弁機構のみの制御によって実現可能となれば便宜である。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、可変動弁機構のみの制御によって、低負荷時、始動時、または冷間時での燃焼の安定化を良好に実現可能とする可変動弁機構を備える内燃機関およびその制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、第1吸気弁が配置された第1吸気ポートと、
第2吸気弁が配置された第2吸気ポートと、
前記第1吸気弁と前記第2吸気弁とを異なる開弁特性で駆動可能な吸気可変動弁機構とを備え、
前記吸気可変動弁機構は、要求される作用角が小さくなるほど、前記第1吸気弁のリフト量と前記第2吸気弁のリフト量との差が大きくなる開弁特性を備えていることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記吸気可変動弁機構は、前記開弁特性として、前記第1吸気弁および第2吸気弁の作用角が180°CA付近の作用角にあるときに、前記第1吸気弁のリフト量と前記第2吸気弁のリフト量との差が確保される開弁特性を備えていることを特徴とする。
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記吸気可変動弁機構は、
カム軸に固定された駆動カムと前記第1吸気弁との間に介在する部材であって、前記第1吸気弁をリフト方向に押圧する第1揺動カム面と、前記駆動カムと対向して形成された第1スライド面とを有し、前記駆動カムの押圧力を前記第1吸気弁に伝達する第1揺動部材と、
前記駆動カムと前記第2吸気弁との間に介在する部材であって、前記第2吸気弁をリフト方向に押圧する第2揺動カム面と、前記駆動カムと対向して形成された第2スライド面とを有し、前記駆動カムの押圧力を前記第2吸気弁に伝達する第2揺動部材と、
前記第1揺動部材および前記第2揺動部材と前記駆動カムとの間に挟まれるように配置され、前記第1スライド面、前記第2スライド面、および前記駆動カムのカム面に接触する中間ローラと、
前記第1スライド面、前記第2スライド面、および前記駆動カムに対する前記中間ローラの位置を変更可能とする制御機構と、を含むものであって、
前記第1スライド面のプロフィールと前記第2スライド面のプロフィールとを異ならしめることによって、要求される作用角が小さくなるほど、前記第1吸気弁のリフト量と前記第2吸気弁のリフト量との差が大きくなる前記開弁特性が与えられていることを特徴とする。
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、前記第1吸気ポートは、前記第2吸気ポートに対して、スワールの生成能力の高い吸気ポートであって、
前記吸気可変動弁機構は、前記開弁特性として、要求される作用角が小さくなるほど、前記第2吸気弁のリフト量よりも前記第1吸気弁のリフト量が小さくなる開弁特性を備えていることを特徴とする。
また、第5の発明は、第4の発明において、排気弁の閉じ時期を調整可能とする排気可変動弁機構と、
低負荷時、始動時、または冷間時には、前記排気可変動弁機構を用いて、前記排気弁の閉じ時期を遅角側に制御する排気遅角制御手段と、
を更に備えることを特徴とする。
第1の発明によれば、第1吸気弁および第2吸気弁の作用角の調整と一緒に、2つの吸気ポート間の通気特性を変えることができる。つまり、本発明によれば、第1吸気弁および第2吸気弁の作用角の調整と一緒に、スワールの生成特性を変更することができるようになる。その結果、本発明のような開弁特性を備える吸気可変動弁機構を用いて、内燃機関の低負荷時、始動時、または冷間時(以下、「低負荷時等」と略することがある)において、第1吸気弁および第2吸気弁の作用角が小さくなるような制御を行うこととすれば、当該低負荷時等において、スワールが低下するようなスワールの生成特性を得ることが可能となる。これにより、低負荷時等において、冷却損失を低減することができ、燃焼の安定化を図ることが可能となる。
第2の発明によれば、第1吸気弁および第2吸気弁の開き時期を排気上死点付近に設定することとすれば、要求される作用角が比較的小さくなった状況下において、第1吸気弁のリフト量と第2吸気弁のリフト量との差を大きく確保しつつ、更に、第1吸気弁および第2吸気弁の閉じ時期を吸気下死点近傍に設定することが可能となる。つまり、本発明によれば、第1吸気弁および第2吸気弁の作用角の調整と一緒に、スワールの生成特性を変更することができるという上述した第1の発明による効果とともに、内燃機関の実圧縮比を良好に高めることが可能となる。その結果、本発明のような開弁特性を備える吸気可変動弁機構を用いて、内燃機関の低負荷時等において、第1吸気弁および第2吸気弁の作用角が180°CA付近の作用角となるような制御を行うこととすれば、当該低負荷時等において、スワールの低下を図りつつ、良好な圧縮端温度を確保することが可能となる。これにより、低負荷時等において、上記第1の発明に比して、燃焼の安定化を更に良好に図ることができる。
第3の発明によれば、吸気弁の開弁特性を連続的に変更可能な機械式の吸気可変動弁機構において、第1スライド面のプロフィールと第2スライド面のプロフィールとを異ならしめることによって、要求される作用角がより小さくなるほど、第1吸気弁のリフト量と第2吸気弁のリフト量との差が大きくなるような上記開弁特性を得ることが可能となる。
第4の発明によれば、要求される作用角が小さい領域において、スワールの生成能力の高い第1吸気ポートを流通する吸入空気量を少なくすることができ、これにより、当該領域において、スワール比を良好に低減することが可能となる。
第5の発明によれば、バルブオーバーラップ期間が十分に長く設定されるようになる。その結果、吸気行程の開始初期に、排気ポートから排気ガスを筒内に逆流させることで、そのような排気ガスの流れと吸気側からのスワール流とを干渉させることができる。これにより、筒内に生成されるスワールを十分に抑制することが可能となる。更に、内部EGRガス量の増加による吸気温度の上昇効果を得ることもできる。このため、低負荷時等における燃焼の安定化の効果を更に良好に高めることができる。
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、内燃機関10を備えている。内燃機関10は、4サイクルのディーゼルエンジン(圧縮着火式内燃機関)である。内燃機関10の各気筒には、燃料を筒内に直接噴射するインジェクタ12が設置されている。各気筒のインジェクタ12は、共通のコモンレール14に接続されている。図示しない燃料タンク内の燃料は、サプライポンプ16によって所定の燃圧まで加圧されて、コモンレール14内に蓄えられ、コモンレール14から各インジェクタ12に供給される。
内燃機関10の排気通路18は、排気マニホールド20により枝分かれして、各気筒の排気ポート68、70(図2参照)に接続されている。本実施形態の内燃機関10は、ターボ過給機22を備えている。排気通路18は、ターボ過給機22の排気タービンに接続されている。また、排気通路18におけるターボ過給機22の下流側には、排気ガスを浄化するための排気浄化装置24が設けられている。
内燃機関10の吸気通路26の入口付近には、エアクリーナ28が設けられている。エアクリーナ28を通って吸入された空気は、ターボ過給機22の吸気圧縮機で圧縮された後、インタークーラ30で冷却される。インタークーラ30を通過した吸入空気は、吸気マニホールド32により、各気筒の吸気ポート60、62(図2参照)に分配される。
インタークーラ30と吸気マニホールド32との間には、吸気絞り弁34が設置されている。また、エアクリーナ28の下流近傍には、吸入空気量を検出するエアフローメータ36が設置されている。また、吸気絞り弁34の下流側には、吸気通路26内の圧力を検出する吸気圧力センサ38が設置されている。
また、図1に示すシステムは、各気筒の吸気弁64、66(図2参照)の開弁特性を変更可能とする吸気可変動弁機構40と、排気弁72、74(図2参照)の開弁特性を変更可能とする排気可変動弁機構42とを備えている。より具体的には、吸気可変動弁機構40は、気筒当たり2つ配置された吸気弁64、66(図2参照)のそれぞれを異なる開弁特性で連続的に変更可能な機構である。吸気可変動弁機構40の詳細な構成については、図3乃至図5を参照して後述する。
また、排気可変動弁機構42は、排気弁72、74の開閉時期をリフト量および作用角一定のままで変更できる機能(位相可変機能)を備えているものとする。そのような機能は、例えば、排気弁72、74の開閉時期を制御するためのVVT機構(図示省略)を備えることによって実現することができる。
また、本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50には、上述した各種のセンサに加え、エンジン回転数を検出するためのクランク角センサ52やアクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ54等が接続されているとともに、上述した各種のアクチュエータが接続されている。ECU50は、それらのセンサ信号や情報に基づき、所定のプログラムに従って各アクチュエータを駆動させることにより、内燃機関10の運転状態を制御する。
[吸排気ポート周りの構成]
図2は、図1に示す内燃機関10における吸排気ポート周りの具体的な構成を説明するための図である。
図2に示すように、内燃機関10は、2つの吸気ポート60、62を備えている。第1吸気ポート60および第2吸気ポート62には、それぞれ第1吸気弁64および第2吸気弁66が配置されている。また、内燃機関10は、2つの排気ポート68、70を備えている。第1排気ポート68および第2排気ポート70には、それぞれ第1排気弁72および第2排気弁74が配置されている。尚、図2中の各ポート60等に付された矢印は、各ポート60等から筒内にガスが導入される際の当該ガスの流れの方向を示している。
第1吸気ポート60は、第2吸気ポート62よりも、スワールの生成能力の高いポート、言い換えれば、スワールの生成を主として担うポート(主流ポート)として構成されている。より具体的には、そのようなスワールの生成能力の高いポートは、例えば、第1吸気ポート60をタンジェンシャルポートとして構成することによって実現することができる。そのようなタンジェンシャルポートとして構成された第1吸気ポート60によれば、図2に示すように、第1吸気ポート60がシリンダの接線方向に沿っているので、筒内に効果的にスワールを生成することができる。
また、図2に示すように、第1排気ポート68は、当該第1排気ポート68から筒内に逆流するガスの流線が、第1吸気ポート60から筒内に導入されるガスによる吸気スワール流の流線と衝突するように構成されている。このような第1排気ポート68の構成によれば、第1排気ポート68から筒内への排気ガスの逆流が生ずる条件下において、筒内に逆流する排気ガスによって吸気スワール流を弱めることが可能となる。
[吸気可変動弁機構の構成]
図3は、図1に示す吸気可変動弁機構40の具体的構成を説明するための斜視図である。
本実施形態の吸気可変動弁機構40の構成は、図4を参照して後述するように、第1スライド面110のプロフィールと第2スライド面112のプロフィールとを異ならしめている点を除き、例えば、国際出願の国際公開番号WO 2006/132059 号公報に詳述された可変動弁機構と同様である。このため、当該公報に記載された可変動弁機構と同一の部分については、ここでは、その概略のみを示すこととし、その詳細な説明を省略または簡略するものとする。
図3に示すように、本吸気可変動弁機構40のカム軸80には、1気筒当たり2つの駆動カム82、84が設けられている。そして、一方の駆動カム82を中心として左右対称に2つの吸気弁64、66が配置されている。第1駆動カム82と第1吸気弁64との間には、第1駆動カム82の回転運動に第1吸気弁64のリフト運動を連動させる第1可変機構86が設けられている。また、第1駆動カム82と第2吸気弁66との間には、第1駆動カム82の回転運動に第2吸気弁66のリフト運動を連動させる第2可変機構88が設けられている。また、もう一方の駆動カム84と第1吸気弁64との間には、第2駆動カム84の回転運動に第1吸気弁64のリフト運動を連動させる固定動弁機構90が設けられている。
(第1可変機構および第2可変機構の詳細構成)
図3に示すように、可変機構86、88では、ロッカーアーム92は吸気弁64、66によって支持されている。可変機構86、88は、第1駆動カム82とロッカーアーム92との間に介在し、第1駆動カム82の回転運動とロッカーアーム92の揺動運動との連動状態を連続的に変化させるようになっている。
これらの可変機構86、88は、以下に説明するように、制御軸94、制御アーム96、リンクアーム98、揺動カムアーム(第1揺動カムアーム100、第2揺動カムアーム102)、および中間ローラ(カムローラ104、第1アームローラ106、および第2アームローラ108)を主たる構成部材として構成されている。
揺動カムアーム100、102は、制御軸94に揺動可能に支持されている。第1揺動カムアーム100における第1駆動カム82に対向する側には、第1アームローラ106に接触する第1スライド面110が形成されており、第2揺動カムアーム102における第1駆動カム82に対向する側には、第2アームローラ108に接触する第2スライド面112が形成されている。
図4は、吸気可変動弁機構40を図3中の矢視Aの方向から見た図である。より具体的には、図4は、第1駆動カム82のベース円部がカムローラ104に接触しているとき、すなわち、揺動カムアーム100、102に対して第1駆動カム82の押圧力が作用していないときの図である。
図4に示すように、スライド面110、112は、ともに、中間ローラ104等が制御軸94の軸中心側から揺動カムアーム100、102の先端側に向かって移動するほど、第1駆動カム82との間隔が徐々に広がるような曲面で形成されている。
本吸気可変動弁機構40では、第1吸気弁64を駆動するための第1揺動カムアーム100に設けられた第1スライド面110と、第2吸気弁66を駆動するための第2揺動カムアーム102に設けられた第2スライド面112とが異なるプロフィールとなるように設定されている。より具体的には、本実施形態では、第1スライド面110のプロフィールと第2スライド面のプロフィールとを異ならせることで、図4に示すように、第1駆動カム82の押圧力が揺動カムアーム100、102に作用していないときの第1揺動カムアーム100(太線)と第2揺動カムアーム102(細線)の姿勢を異ならせている。つまり、本実施形態では、2つの揺動カムアーム100、102間で、スライド面110、112とそれぞれの揺動カム面114との相対的な関係を異ならせている。更に、本吸気可変動弁機構40では、スライド面110、112上における中間ローラ104等の位置が揺動カムアーム100、102の先端側に移動するほど、2つの揺動カムアーム100、102間の姿勢の差が大きくなるように、スライド面110、112のプロフィールが調整されている。
また、スライド面110、112の反対側には、揺動カム面114がそれぞれ形成されている。揺動カム面114は、揺動カムアーム100、102の揺動中心からの距離が一定となるように形成された非作用面114aと、非作用面114aから離れた位置ほど制御軸94の軸中心からの距離が遠くなるように形成された作用面114bとで構成されている。
また、揺動カムアーム100、102のスライド面110、112と第1駆動カム82の周面との間には、上述した中間ローラとして、カムローラ104、第1アームローラ106、および第2アームローラ108が配置されている。より具体的には、カムローラ104は、第1駆動カム82の周面と接触し、また、第1アームローラ106および第2アームローラ108は、それぞれ第1スライド面110および第2スライド面112に接触するように配置されている。これらの中間ローラ104等は、ともに前述のリンクアーム98の一端に回転可能に取り付けられている。リンクアーム98の他端は、制御軸94に固定された制御アーム96に回転可能に取り付けられている。そして、制御軸94は、図示しないアクチュエータによって回転駆動される。
上述した吸気可変動弁機構40の構成によれば、制御軸94の回転角度を変化させると、スライド面110、112上におけるアームローラ106、108の位置が変化し、リフト動作時の揺動カムアーム100、102の揺動範囲が変化する。より具体的には、制御軸94を図4における反時計回り方向に回転させると、スライド面110、112上におけるアームローラ106、108の位置が揺動カムアーム100、102の先端側に移動する。そうすると、第1駆動カム82の押圧力が伝達されることで揺動カムアーム100、102が揺動動作を開始した後に、現実にロッカーアーム92が押圧され始めるまでに要する揺動カムアーム100、102の回転角度は、制御軸94が図4における反時計回り方向に回転するほど大きくなる。つまり、吸気可変動弁機構40によれば、制御軸94を図4における反時計回り方向に回転させることにより、吸気弁64、66の作用角およびリフト量を小さくすることができ、また、制御軸94をその逆の方向に回転させることにより、吸気弁64、66の作用角およびリフト量を大きくすることができる。
また、本吸気可変動弁機構40は、第1吸気弁64のリフト運動の連動先を、第1可変機構86と固定動弁機構90との間で選択的に切り替えることができるようになっている。このような機能を有する本吸気可変動弁機構40によれば、第1吸気弁64のリフト運動の連動先として第1可変機構86が選択されている場合には、カム軸80の回転運動は、第1駆動カム82からカムローラ104および第1アームローラ106を介して第1揺動カムアーム100の第1スライド面110に伝達されるとともに、第1駆動カム82からカムローラ104および第2アームローラ108を介して第2揺動カムアーム102の第2スライド面112に伝達される。従って、この場合は、制御軸94の回転に連動させて、第1吸気弁64および第2吸気弁66の作用角およびリフト量が後述する図5に示す特性となるように制御することができる(両弁可変制御)。
更に、本吸気可変動弁機構40によれば、第1吸気弁64のリフト運動の連動先として固定動弁機構90が選択されている場合には、カム軸80の回転運動が第2駆動カム84から大リフトアーム116を介して第1揺動カムアーム100に伝達される。この場合の第1吸気弁64の開弁特性は、第2駆動カム84、大リフトアーム116および第1揺動カムアーム100の形状及び位置関係によって機械的に決まり、制御軸94の回転角度に関係なく常に一定の開弁特性に固定される。つまり、この場合には、第1吸気弁64のリフト量および作用角を例えば十分に大きなリフト量および作用角に固定させつつ、もう一方の第2吸気弁66の開弁特性を制御軸94の回転角度の調整によって可変制御することが可能になる(片弁固定制御)。
また、中間ローラ104等が制御軸94により近い位置とされるほど、第1駆動カム82がカムローラ104を押圧し始めるタイミング(すなわち、揺動カムアーム100、102の揺動開始タイミング)が遅れることになる。この現象は、吸気弁64、66の開弁タイミングを遅角させる要因となる。一方、既述した通り、中間ローラ104等が制御軸94により近い位置とされるほど、揺動カムアーム100、102によってロッカーアーム92を押圧し始めるタイミングが早くなることになる。この現象は、上記の現象とは逆に、吸気弁64、66の開弁タイミングを進角させる要因となる。このため、本吸気可変動弁機構40によれば、上記の2つの要因を考慮して、各構成要素の形状や位置関係を決定することにより、開弁タイミングを一定としつつ、吸気弁64、66の作用角およびリフト量を連続的に変更することが可能となる。
図5は、吸気可変動弁機構40を用いて両弁可変制御が実行された際のバルブリフト量とバルブ作用角との関係を表した図である。
本吸気可変動弁機構40によれば、両弁可変制御の実行時には、既述したように、スライド面110、112上における中間ローラ104等の位置が揺動カムアーム100、102の先端側に移動するほど、吸気弁64、66の作用角およびリフト量を小さくすることができる。
更に、上述したように、本吸気可変動弁機構40では、2つのスライド面110、112を異なるプロフィールに設定している。このような設定によれば、図4に示すように、小作用角制御領域において、2つの揺動カムアーム100、102の姿勢を異ならせることができる。その結果、第1駆動カム82の押圧力が揺動カムアーム100、102に作用した際に、当該2つの揺動カムアーム100、102間で、吸気弁64、66のリフト動作の態様を異ならせることができる。これにより、小作用角制御領域において、第1揺動カムアーム100により駆動される第1吸気弁64のリフト量が、第2揺動カムアーム102により駆動される第2吸気弁66のリフト量よりも小さくすることができるようになる。
また、本実施形態では、上述したように、スライド面110、112上における中間ローラ104等の位置が揺動カムアーム100、102の先端側に移動するほど、2つの揺動カムアーム100、102間の姿勢の差が大きくなるように、スライド面110、112のプロフィールが調整されている。このため、本吸気可変動弁機構40によれば、制御軸94の回転角度の調整によって吸気弁64、66の作用角が小さくなるほど、図5に示すように、第2吸気弁66のリフト量の減少量に対する第1吸気弁64のリフト量の減少量を大きくすることが可能となる。また、このような吸気弁64、66の開弁特性が得られることで、次のような効果を奏することができるようになる。すなわち、吸気弁64、66の作用角の調整と一緒に、2つの吸気ポート60、62間の通気特性を変えることができ、これにより、スワールの生成特性を変更することができるようになる。更に、本実施形態では、第1吸気ポート60を、第2吸気ポート62よりもスワールの生成能力の高いポートとしている。このため、上記開弁特性によれば、要求される作用角が小さい領域において、スワールの生成能力の高い第1吸気ポート60を流通する吸入空気量を少なくすることができ、これにより、当該領域において、スワール比を良好に低減することが可能となる。更に付け加えると、このような開弁特性は、図6を参照して後述する制御に用いるうえで好適なものである。
また、図5に示す本吸気可変動弁機構40の上記開弁特性では、吸気弁64、66の作用角が180°CA付近の作用角となるときに、第1吸気弁64と第2吸気弁66との間で、リフト量に十分な差を与えることができるようになっている。このような開弁特性によれば、吸気弁64、66の開き時期が排気上死点付近となるように内燃機関10を構成するようにすれば、吸気弁64、66の閉じ時期が吸気下死点付近となるような作用角の制御領域において、第1吸気弁64と第2吸気弁66との間で、リフト量に十分な差を与えることができるようになる。このような構成によれば、吸気弁64、66の作用角の調整と一緒に、スワールの生成特性を変更可能としつつ、更に、小作用角に制御された領域において、内燃機関10の実圧縮比を高めることができるようになる。更に付け加えると、このような設定についても、図6を参照して後述する制御に用いるうえで好適なものである。
[実施の形態1の特徴的な制御]
ところで、従来から、ディーゼル機関の圧縮比を例えば16以下にするというように低圧縮比化することによって、ディーゼル機関のポンプ仕事の低減を図ることで、燃費の改善を図る試みがなされている。本実施形態の内燃機関10も、圧縮比が16以下とされたディーゼル機関であるものとする。このような低圧縮比化されたディーゼル機関では、圧縮比が低いことで、燃料噴射量の少ない状況下である始動時や低負荷時や、ディーゼル機関の暖機がなされていない冷間時において、燃焼が不安定となり、また、未燃HCが多く排出されるという問題があった。その理由は、圧縮端温度が低下することと、低負荷時や始動時のように燃料噴射量が少ない状況下では自着火ができなかったり、火炎が立ち消えしてしまうためである。
また、低負荷時や始動時のように燃料噴射量が少ない状況下において、スワールが強くなるような設定とされていると、気流がシリンダへの熱伝導を促進し、圧縮空気の温度を低下させてしまう。また、特に、ディーゼル機関が暖機していない冷間時では、スワールが強くなるような設定とされていると、圧縮空気の温度がシリンダヘッドやシリンダブロック等への冷却損失として奪われて低下してしまう。このような理由によっても、低負荷時、始動時、或いは冷間時においてスワールが強められていると、燃焼が不安定となり、また、未燃HCが多く排出されるという問題があった。
図6は、本発明の実施の形態1において実行される吸排気弁64等の特徴的な制御を説明するためのバルブリフトカーブである。
本実施形態のシステムでは、上記図3乃至図5を参照して以上説明した吸気弁64、66の開弁特性を得ることのできる吸気可変動弁機構40に対して、図6に示すような制御を適用することとしている。
先ず、燃料噴射量の多い中高負荷時では、図6中に破線で表した波形のように、第1吸気弁64および第2吸気弁66の双方のリフト量を十分に高めた状態で使用するとともに、吸気弁64、66の閉じ時期が吸気下死点よりも十分に遅角されたタイミングとなるように、十分に大きな作用角を使用するようにしている。
これに対し、燃料噴射量の少ない低負荷時および始動時や、内燃機関10の暖機がなされていない冷間時(以下、「低負荷時等」と略することがある)では、吸気弁64、66の作用角として、上記中高負荷時よりも小さな作用角域を使用するようにしている。より具体的には、作用角が180°CA程度となる作用角域を使用するようにしている。このような吸気弁64、66の設定によれば、低負荷時等において、スワールの生成能力の高い第1吸気ポート60を開閉するための第1吸気弁64のリフト量を、他方の第2吸気ポート62を開閉するための第2吸気弁66のリフト量よりも小さくすることが可能となる。その結果、スワールの生成能力の高い第1吸気ポート60を流通する吸入空気量を減らすことで、低負荷時等において、スワール比を低減することができるようになる。これにより、冷却損失の低減を図ることができ、圧縮空気の温度低下を防止することができる。
更に、図6に示す吸気弁64、66の設定によれば、低負荷時等において、吸気弁64、66の閉じ時期を吸気下死点付近とすることができる。これにより、低負荷時等において、実圧縮比を良好に確保することができ、良好な圧縮端温度を確保できるようになる。以上のように、図6に示す設定によれば、吸気可変動弁機構40の制御のみによって、低負荷時等において、未燃HCの排出が少なく、安定した燃焼を実現することが可能となる。尚、図6に示す吸気弁64、66の設定では、吸気弁64、66の開き時期については、運転領域に関係なく、排気上死点付近とされている。
また、図6に示す排気弁72、74の設定では、図6中に太線で表した低負荷時等の排気弁72、74の閉じ時期は、図6中に細線で表した中高負荷時の排気弁72、74の閉じ時期に対して遅角されるようになる。このような排気弁72、74の閉じ時期の遅角制御を上述した吸気側の制御と組み合わせることとすれば、バルブオーバーラップ期間が十分に長く設定されるようになる。その結果、吸気行程の開始初期に、排気ポート68、70から排気ガスを筒内に逆流させることで、そのような排気ガスの流れと吸気側からのスワール流とを干渉させることが可能となる。これにより、筒内に生成されるスワールを十分に抑制することが可能となる。更に、内部EGRガス量の増加による吸気温度の上昇効果を得ることもできる。このため、低負荷時等における燃焼の安定化の効果を更に良好に高めることができる。
図7は、上記図6に示す設定を用いた吸排気弁64等の制御を実現するために、ECU50が実行するルーチンのフローチャートである。
図7に示すルーチンでは、先ず、内燃機関10の運転状態が低負荷時、始動時、または冷間時であるか否かが判別される(ステップ100)。
その結果、内燃機関10の運転状態が低負荷時、始動時、または冷間時の何れかに該当すると判定された場合には、吸気弁64、66の作用角が180°CA程度となるように、吸気可変動弁機構40の制御が実行される(ステップ102)。次いで、十分なバルブオーバーラップ期間を設定できるように、排気可変動弁機構42を用いて、排気弁72、74の閉じ時期が排気上死点後の所定時期にまで遅角される(ステップ104)。
ところで、上述した実施の形態1においては、流通する吸入空気量が多くなるほどスワールが強くなる特性を有する第1吸気ポート60をスワールの生成能力の高いポートとして備えるようにし、低負荷時等において、当該第1吸気ポート60を開閉する第1吸気弁64のリフト量を他方の第2吸気ポート62を開閉する第2吸気弁66のリフト量よりも小さくしている。しかしながら、本発明の対象となる吸気ポートはこのような構成に限定されるものではない。すなわち、例えば、スワールの生成能力の高い吸気ポートとして、当該吸気ポートを開閉する吸気弁のリフト量が比較的低く、これにより当該吸気ポートを流通する吸入空気量が比較的少ないときにスワールが強くなる特性を有する吸気ポートを備えている場合であれば、上述した実施の形態1の構成とは逆に、低負荷時等において、本発明の吸気可変動弁機構の機能によって吸気弁のリフト量が高められる側の吸気ポートとして、そのようなスワールの生成能力の高い方の吸気ポートを適用するようにしてもよい。
尚、上述した実施の形態1においては、第1揺動カムアーム100が前記第3の発明における「第1揺動部材」に、第2揺動カムアーム102が前記第3の発明における「第2揺動部材」に、制御軸94、制御アーム96、およびリンクアーム98が前記第3の発明における「制御機構」に、それぞれ相当している。
また、ECU50が上記ステップ100および104の処理を実行することにより前記第5の発明における「排気遅角制御手段」が実現されている。
本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。 図1に示す内燃機関における吸排気ポート周りの具体的な構成を説明するための図である。 図1に示す吸気可変動弁機構の具体的構成を説明するための斜視図である。 吸気可変動弁機構を図3中の矢視Aの方向から見た図である。 吸気可変動弁機構を用いて両弁可変制御が実行された際のバルブリフト量とバルブ作用角との関係を表した図である。 本発明の実施の形態1において実行される吸排気弁の特徴的な制御を説明するためのバルブリフトカーブである。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
符号の説明
10 内燃機関
18 排気通路
26 吸気通路
40 吸気可変動弁機構
42 排気可変動弁機構
50 ECU(Electronic Control Unit)
60 第1吸気ポート
62 第2吸気ポート
64 第1吸気弁
66 第2吸気弁
68 第1排気ポート
70 第2排気ポート
72 第1排気弁
74 第2排気弁
80 カム軸
82 第1駆動カム
84 第2駆動カム
86 第1可変機構
88 第2可変機構
90 固定動弁機構
92 ロッカーアーム
94 制御軸
96 制御アーム
98 リンクアーム
100 第1揺動カムアーム
102 第2揺動カムアーム
104 カムローラ
106 第1アームローラ
108 第2アームローラ
110 第1スライド面
112 第2スライド面
114 揺動カム面

Claims (5)

  1. 第1吸気弁が配置された第1吸気ポートと、
    第2吸気弁が配置された第2吸気ポートと、
    前記第1吸気弁と前記第2吸気弁とを異なる開弁特性で駆動可能な吸気可変動弁機構とを備え、
    前記吸気可変動弁機構は、要求される作用角が小さくなるほど、前記第1吸気弁のリフト量と前記第2吸気弁のリフト量との差が大きくなる開弁特性を備えていることを特徴とする可変動弁機構を備える内燃機関。
  2. 前記吸気可変動弁機構は、前記開弁特性として、前記第1吸気弁および第2吸気弁の作用角が180°CA付近の作用角にあるときに、前記第1吸気弁のリフト量と前記第2吸気弁のリフト量との差が確保される開弁特性を備えていることを特徴とする請求項1記載の可変動弁機構を備える内燃機関。
  3. 前記吸気可変動弁機構は、
    カム軸に固定された駆動カムと前記第1吸気弁との間に介在する部材であって、前記第1吸気弁をリフト方向に押圧する第1揺動カム面と、前記駆動カムと対向して形成された第1スライド面とを有し、前記駆動カムの押圧力を前記第1吸気弁に伝達する第1揺動部材と、
    前記駆動カムと前記第2吸気弁との間に介在する部材であって、前記第2吸気弁をリフト方向に押圧する第2揺動カム面と、前記駆動カムと対向して形成された第2スライド面とを有し、前記駆動カムの押圧力を前記第2吸気弁に伝達する第2揺動部材と、
    前記第1揺動部材および前記第2揺動部材と前記駆動カムとの間に挟まれるように配置され、前記第1スライド面、前記第2スライド面、および前記駆動カムのカム面に接触する中間ローラと、
    前記第1スライド面、前記第2スライド面、および前記駆動カムに対する前記中間ローラの位置を変更可能とする制御機構と、を含むものであって、
    前記第1スライド面のプロフィールと前記第2スライド面のプロフィールとを異ならしめることによって、要求される作用角が小さくなるほど、前記第1吸気弁のリフト量と前記第2吸気弁のリフト量との差が大きくなる前記開弁特性が与えられていることを特徴とする請求項1または2記載の可変動弁機構を備える内燃機関。
  4. 前記第1吸気ポートは、前記第2吸気ポートに対して、スワールの生成能力の高い吸気ポートであって、
    前記吸気可変動弁機構は、前記開弁特性として、要求される作用角が小さくなるほど、前記第2吸気弁のリフト量よりも前記第1吸気弁のリフト量が小さくなる開弁特性を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の可変動弁機構を備える内燃機関。
  5. 排気弁の閉じ時期を調整可能とする排気可変動弁機構と、
    低負荷時、始動時、または冷間時には、前記排気可変動弁機構を用いて、前記排気弁の閉じ時期を遅角側に制御する排気遅角制御手段と、
    を更に備えることを特徴とする請求項4記載の可変動弁機構を備える内燃機関の制御装置。
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