JP2009116964A - 垂直磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置 - Google Patents

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正人 福島
Gohei Kurokawa
剛平 黒川
Yuzo Sasaki
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Abstract

【課題】垂直磁気記録層の粒径の微細化及び垂直配向性の向上、並びに磁気記録媒体の耐食性を向上させると共に、高密度の情報の記録再生が可能な垂直磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】非磁性基板1上に、少なくとも裏打ち層2と下地膜4と中間層5と少なくとも酸化物を含むグラニュラ磁性層を有する垂直磁気記録層6とを有する垂直磁気記録媒体10の製造方法であって、前記垂直磁気記録層6を構成する前記グラニュラ磁性層を形成後、前記グラニュラ磁性層の表面に不活性ガスを照射することを特徴とする垂直磁気記録媒体10の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、垂直磁気記録媒体の製造方法及びこの垂直磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置に関するものである。
近年、磁気ディスク装置、可撓性ディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、その重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特にMRヘッド、およびPRML技術の導入以来、面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMRヘッド、TuMRヘッドなども導入され1年に約100%ものペースで増加を続けている。
このように、磁気記録媒体については今後更に高記録密度化を達成することが要求されており、そのために磁気記録層の高保磁力化と高信号対雑音比(S/N比)、高分解能を達成することが要求されている。これまで広く用いられてきた長手磁気記録方式においては、線記録密度が高まるにつれて、磁化の遷移領域の隣接する記録磁区同士がお互いの磁化を弱めあおうとする自己減磁作用が支配的になるため、それを避けるために磁気記録層をどんどん薄くして形状磁気異方性を高めてやる必要がある。
その一方で、磁気記録層の膜厚を薄くしていくと、磁区を保つためのエネルギー障壁の大きさと熱エネルギーの大きさが同レベルに近づいてきて、記録された磁化量が温度の影響によって緩和される現象(熱揺らぎ現象)が無視できなくなり、これが線記録密度の限界を決めてしまうといわれている。
このような中、長手磁気記録方式の線記録密度改良に答える技術として最近ではAFC(Anti Ferromagnetic Coupling)媒体が提案され、長手磁気記録で問題となる熱磁気緩和の問題を回避しようという努力がなされている。
また、今後一層の面記録密度を実現するための有力な技術として注目されているのが垂直磁気記録技術である。従来の長手磁気記録方式が、媒体を面内方向へ磁化させるのに対し、垂直磁気記録方式では媒体面に垂直な方向に磁化させることを特徴とする。このことにより、長手磁気記録方式で高線記録密度を達成する妨げとなる自己減磁作用の影響を回避することができ、より高密度記録に適していると考えられている。また一定の磁性層膜厚を保つことができるため、長手磁気記録で問題となっている熱磁気緩和の影響も比較的少ないと考えられている。
垂直磁気記録媒体は、非磁性基板上に下地層、中間層、磁気記録層、保護層の順に成膜されるのが一般的である。また、保護層まで成膜した上で、表面に潤滑層を塗布する場合が多い。また、多くの場合、軟磁性裏打ち層とよばれる磁性膜が下地層の下に設けられる。中間層は磁気記録層の特性をより高める目的で形成される。また下地層は中間層、磁気記録層の結晶配向を整えると同時に磁性結晶の形状を制御する働きをするといわれている。
優れた特性を有する垂直磁気記録媒体を製造するためには、磁気記録層の結晶構造が重要である。すなわち、垂直磁気記録媒体においては、多くの場合その磁気記録層の結晶構造は六方最密充填構造(hcp構造)をとるが、その(002)結晶面が基板面に対して平行であること、換言するならば結晶c軸[002]軸が垂直な方向にできるだけ乱れなく配列していることが重要である。
また、非特許文献1に示すように、S.H.Liouらは、磁性結晶を非磁性相で分離した、いわゆるグラニュラ磁性層を提案している。グラニュラ磁性層は、磁性粒間の磁気的相互作用が微弱であり、かつ、磁性結晶粒を微細化できるため極めて低ノイズの磁性層を達成できる。
さらに、特許文献1には、グラニュラ磁性層に起因する腐食を防止するため、グラニュラ磁性層表面を水素プラズマで還元処理することが記載されている。
特開2006−127619号公報 S.H.Liou and C.L.Chien ,Appl.Phys.Lett.52(6),8 Feb.,1988
上述のように、グラニュラ磁性層の採用により、より高密度の情報の記録再生が可能となった。しかしながら、グラニュラ磁性層を構成するCo原子等はマイグレーションを起こしやすく、高温高湿の環境下で磁気記録媒体の表面に拡散し腐食を生じさせる場合があった。ここで特許文献1に記載されているように、グラニュラ磁性層の表面を水素プラズマで還元処理しCo原子等のマイグレーションを防ぐ方法も考えられる。しかしながら、当該方法で用いる水素原子は磁性層の内部に拡散し、磁気特性を変えてしまうおそれがある。また、水素プラズマの制御は難しく、グラニュラ磁性層の内部まで還元してしまう場合がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、垂直磁気記録層の耐食性を向上させた垂直磁気記録媒体の製造方法及び垂直磁気記録媒体、並びに磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下に掲げた。
(1)非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層と下地膜と中間層と少なくとも酸化物を含むグラニュラ磁性層を有する垂直磁気記録層とを有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、前記垂直磁気記録層を構成する前記グラニュラ磁性層を形成後、前記グラニュラ磁性層の表面に不活性ガスを照射することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
(2)前記不活性ガスが、Ar,He,Xeからなる群から選ばれた何れか1種以上のガスであることを特徴とする(1)に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(3)前記不活性ガスが、イオンガン、誘導結合プラズマ(ICP)、反応性イオンプラズマ(RIE)からなる群から選ばれた何れかの方法によって照射されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法
(4)(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された垂直磁気記録媒体。
(5)垂直磁気記録媒体と、該垂直磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、前記垂直磁気記録媒体が、(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された垂直磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。
本発明によれば、垂直磁気記録層の耐食性を向上させた垂直磁気記録媒体の製造方法及び垂直磁気記録媒体、並びに磁気記録再生装置を提供することができる。
先ず、本発明の実施形態の一例である垂直磁気記録媒体について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態の垂直磁気記録媒体の断面模式図を示す。
本実施形態の垂直磁気記録媒体10は、図1に示すように、非磁性基板1上に少なくとも軟磁性裏打ち層(裏打ち層)2と、下地層4及び中間層5からなる配向制御層3と、垂直磁気記録層6と、保護層7と、潤滑剤層8とが形成され、概略構成されている。尚、図1は本実施形態の垂直磁気記録媒体10の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の垂直磁気記録媒体10の寸法関係とは異なる場合がある。以下に、先ず、垂直磁気記録媒体10の各層について詳細に説明する。
<非磁性基板>
非磁性基板1は、特に限定されるものではなく、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、アモルファスガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、サファイア、石英、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。より好ましくは、Al合金基板や結晶化ガラス、アモルファスガラス等のガラス製基板である。また、非磁性基板1としてガラス製基板を用いる場合では、ミラーポリッシュ基板や表面粗さ(Ra)が1(Å)未満である低Ra基板などがより好ましい。なお、軽度であれば、テクスチャが入っていても構わない。
<軟磁性裏打ち層>
軟磁性裏打ち層(裏打ち層)2は、FeCo系合金、CoZrNb系合金、CoTaZr系合金などいわゆる軟磁気特性を有する材料から構成される軟磁性膜であり、媒体に信号を記録する際、ヘッドからの記録磁界を導き、垂直磁気記録層6に対して記録磁界の垂直成分を効率よく印加する働きをする。また、軟磁性裏打ち層2は、アモルファス(非結晶質)構造であることが特に好ましい。軟磁性裏打ち層2をアモルファス構造とすることで、表面粗さ(Ra)が大きくなることを防ぎ、ヘッドの浮上量を低減することが可能となり、さらなる高記録密度化が可能となる。さらに、軟磁性裏打ち層2は、単層のみでなく、2層の間にRuなどの極薄い非磁性薄膜をはさむことで、軟磁性層同士を反強磁性結合(AFC)させたものを適用することもできる。なお、軟磁性裏打ち層2の総膜厚は、20(nm)〜120(nm)程度とすることが好ましく、記録再生特性とオーバーライト(OW)特性とのバランスにより適宜決定することができる。
<配向制御層>
配向制御層3は、軟磁性裏打ち層2の上に設けられており、配向制御層3の直上の膜の配向性を制御する。また、配向制御層3は複数層から構成されており、本実施形態の配向制御層3は、非磁性基板1側から下地層4、中間層5が積層されて構成されている。
(下地層)
下地層4の材料としては、Taや(111)面配向する面心立方構造(fcc構造)を有する金属または合金(例えばNi、Ni−Nb、Ni−Ta、Ni−V、Ni−W、Ptなど)を用いることができる。また、軟磁性裏打ち層2が微結晶又は非晶質構造をとる場合であっても、材料や成膜条件によって配向制御層3の表面粗さ(Ra)が大きくなることがあるため、軟磁性裏打ち層2と配向制御層3との間に非磁性の非晶質層を成膜することで配向制御層3の表面粗さ(Ra)を下げて、垂直磁気記録層6の結晶配向性を向上させることができる。
(中間層)
中間層5は、下地層4の上に設けられている。中間層5の材料としては、垂直磁気記録層6と同様の六方最密充填構造(hcp構造)であるRuやRe、又はそれらの合金、或いはそれらの酸化物を用いることができる。また、中間層5は、垂直磁気記録層6の配向を制御する働きをするため、六方最密充填構造(hcp構造)である材料に限定されるものではなく、垂直磁気記録層6の配向を制御できる材料であれば用いることができる。
<磁気記録層>
垂直磁気記録層6は、少なくとも酸化物を含むグラニュラ磁性層を有する。また、垂直磁気記録層6は、実際に信号の記録がなされる層であり、磁化容易軸(結晶c軸)が非磁性基板1に対して主に垂直に配向している。したがって、最終的には垂直磁気記録層6の結晶構造および磁気的性質が記録再生を決定する。
垂直磁気記録層6の構成材料としては、CoCr,CoCrPt,CoCrPtB,CoCrPtB−X,CoCrPtB−X−Y,CoCrPt−O,CoCrPt−SiO,CoCrPt−Cr,CoCrPt−TiO,CoCrPt−ZrO,CoCrPt−Nb,CoCrPt−Ta,CoCrPtTiOなどのCo系合金薄膜が例示される。なお、上記の構成材料中のXは、Ru、W等を示しており、Yは、Cu、Mg等を示している。
特に、垂直磁気記録層6の構成材料としてO,SiO,Cr,TiO,ZrO,Nb,Taなどの酸化物とCoCrPtなどのCo合金とを含む磁性層(酸化物磁性層)を用いる場合は、非磁性である酸化物が、強磁性であるCo結晶粒の周りを取り囲んでグラニュラ構造を採用することが好ましい。これにより、Co結晶粒同士の磁気的相互作用が弱まり、ノイズを減少することができる。本実施形態では、垂直磁気記録層6は、少なくとも1層が酸化物を含むグラニュラ磁性層が形成されて構成されることを必要とする。
<保護層>
保護層7は、磁気ヘッドと垂直磁気記録媒体10との接触によるダメージから垂直磁気記録媒体10を保護するために設けられている。保護層7の材質としては、カーボン膜、SiO膜などが好ましく、特にカーボン膜が好ましい。
<潤滑剤層>
潤滑剤層8には、従来公知の材料、例えばパーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いるのが好ましい。
次に、図1に示す垂直磁気記録媒体10の製造方法の一例について説明する。
図1に示す垂直磁気記録媒体10の製造方法は、基板の洗浄工程と磁性層の形成工程と不活性ガスの照射工程と保護層の形成工程とから概略構成されている。以下、各工程について説明する。
<基板の洗浄工程>
磁気ディスクの製造工程においては、まず基板の洗浄・乾燥が行われるのが通常であり、本実施形態においても各層の密着性を確保する見地からもその形成前に洗浄、乾燥を行うことが望ましい。基板の洗浄工程では、非磁性基板1の洗浄方法は、水洗浄に限定されるものではなく、エッチング(逆スパッタ)による洗浄も含まれる。また、基板サイズも特に限定されるものではない。
<磁性層の形成工程>
磁性層の形成工程においては、非磁性基板1のデータ記録領域上に、軟磁性裏打ち層2と下地層4と中間層5と垂直磁気記録層6とからなる磁性層を順次積層して形成する。
軟磁性裏打ち層2、下地層4、中間層5、垂直磁気記録層6の各層の成膜には通常DCマグネトロンスパッタリング法またはRFスパッタリング法が用いられる。また、RFバイアス、DCバイアス、パルスDC、パルスDCバイアス、Oガス、HOガス、Hガス、Nガスを用いることも可能である。
成膜時のスパッタリングガス圧力は各層ごとに特性が最適になるように適宜決定することができ、一般には0.1〜30(Pa)程度の範囲で制御され、垂直磁気記録媒体10の性能を見ながら調整される。
なお、垂直磁気記録層6をグラニュラ構造とするために、中間層5の成膜ガス圧を高くして中間層5の表面に凹凸をつけることが好ましい。これにより、垂直磁気記録層6を構成する酸化物を含む磁性層の酸化物が中間層5の表面の凹部分に集まるため、垂直磁気記録層6がグラニュラ構造となる。一方、中間層5の成膜ガス圧を高くすると中間層5の結晶配向性が悪化すると共に表面粗さが大きくなりすぎる恐れがある。このため、中間層5を低ガス圧成膜層及び高ガス圧成膜層の二層構造として順次形成することが好ましい。これにより、中間層5の配向性の維持と表面凹凸の形成とを両立させることができる。
<不活性ガスの照射工程>
本実施形態では、垂直磁気記録層6の形成後に、垂直磁気記録層6を構成する酸化物を含むグラニュラ磁性層(酸化物磁性層)に対して不活性ガスを照射することを特徴とする。不活性ガスの照射によって、酸化物磁性層の表面に不活性元素が侵入することによりCo合金からなるCo結晶粒(以下、Co結晶粒という)の移動が抑制されるため、Co結晶粒のマイグレーション等が抑制されると考えられる。また、酸化物磁性層の活性な表面が除去されることによりCo結晶粒のマイグレーション等が抑制されると考えられる。これらにより、垂直磁気記録層6が安定し、高温多湿環境下においてもCo結晶粒のマイグレーション等の発生が抑制されると考えられる。
不活性ガスには、Ar,He,Xeからなる群から選ばれた何れか1種以上のガスを用いることが好ましい。上記の元素は化学的に安定であり、Co結晶粒のマイグレーション等の抑制効果が高いため好ましい。
不活性ガスの照射方法には、イオンガン、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、反応性イオンプラズマ(RIE;Reactive Ion Plasma)からなる群から選ばれた何れかの方法を用いることが好ましく、照射量の多さの点でICP又はRIEを用いることがより好ましい。
誘導結合プラズマ(ICP)は、気体に高電圧をかけることによってプラズマ化し、さらに高周波数の変動磁場によってそのプラズマ内部に渦電流によるジュール熱を発生させることによって得られる高温のプラズマである。誘導結合プラズマは電子密度が高いため、広い面積の磁性膜に対して高い効率で磁気特性の改質をすることができる。
反応性イオンプラズマ(RIE)は、プラズマ中にSF、CHF、CF、CCl等の反応性ガスを加えた反応性の高いプラズマである。このため、磁性膜の磁気特性の改質をより高い効率で実現することができる。
<保護層の形成工程>
保護層7の形成には、スパッタリング法、プラズマCVD法などが用いることが可能であり、プラズマCVD法が特に好ましい。さらに、マグネトロンプラズマCVD法を用いることも可能である。また、保護層7の膜厚は、1〜10(nm)の範囲であり、好ましくは2〜6(nm)の範囲、さらに好ましくは2〜4(nm)の範囲である。
潤滑剤層8の形成には、例えばディッピング法、スピンコート法等の従来公知の方法を用いることができる。また、潤滑剤層8の膜厚は、通常1〜4(nm)の範囲である。
以上のようにして、図1に示す垂直磁気記録媒体10を製造することができる。
<磁気記録再生装置>
次に、上記の垂直磁気記録媒体10を用いた磁気記録再生装置について説明する。
図2は、上記垂直磁気記録媒体10を用いた磁気記録再生装置の一例を示すものである。磁気記録再生装置100は、図2に示すように、上述した構成を有する垂直磁気記録媒体10と、垂直磁気記録媒体10を回転駆動させる媒体駆動部101と、垂直磁気記録媒体10に情報を記録再生する磁気ヘッド102と、この磁気ヘッド102を垂直磁気記録媒体10に対して相対運動させるヘッド駆動部103と、記録再生信号処理系104とを備えて構成されている。
記録再生信号処理系104は、外部から入力されたデ−タを処理して記録信号を磁気ヘッド102に送り、磁気ヘッド102からの再生信号を処理してデ−タを外部に送ることができるようになっている。
本実施形態の磁気記録再生装置100に用いる磁気ヘッド102には、再生素子として異方性磁気抵抗効果(AMR)を利用したMR(Magneto Resistance)素子だけでなく、巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子、トンネル効果を利用したTuMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
以上説明したように、本実施形態の垂直磁気記録媒体10の製造方法によれば、垂直磁気記録層6を構成する酸化物を含むグラニュラ磁性層(酸化物磁性層)に対して不活性ガスを照射することによって、酸化物磁性層の表面に不活性元素が侵入することによりCo合金からなるCo結晶粒(以下、Co結晶粒という)の移動が抑制されるため、Co結晶粒のマイグレーション等が抑制されると考えられる。また、酸化物磁性層の活性な表面が除去されることによりCo結晶粒のマイグレーション等が抑制されると考えられるこれらにより、垂直磁気記録層6が安定し、高温多湿環境下においてもCo結晶粒のマイグレーション等の発生が抑制されると考えられる。
したがって、本実施形態の垂直磁気記録媒体10の製造方法によれば、垂直磁気記録層6の耐食性が優れると共に高記録密度特性に優れた垂直磁気記録媒体10を製造することができる。また、本実施形態の製造方法によって製造された垂直磁気記録媒体10を適用した磁気記録再生装置100を提供することができる。
また、本実施形態の垂直磁気記録媒体10は、今後のさらなる記録密度の向上が期待されるECC媒体、ディスクリートトラックメデイア、パターンメディア等の新しい垂直記録媒体において適用することができる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例)
HD用ガラス基板をセットした真空チャンバをあらかじめ1.0×10−5(Pa)以下に真空排気した。
次に、この基板上にスパッタリング法を用いて、軟磁性裏打ち層としてCo28FeZrを50(nm)の膜厚となるように、また下地層として面心立方構造(fcc構造)をとるNiFeを5(nm)の膜厚となるように、ガス圧0.6(Pa)のAr雰囲気中でそれぞれ成膜した。
次に中間層として、Ruをガス圧0.6(Pa)のAr雰囲気中で10(nm)成膜した後、ガス圧を10(Pa)に上げてさらに10(nm)成膜した。
垂直磁気記録層は、ガス圧2(Pa)のAr雰囲気中で主記録層―補助記録層の順に成膜した。主記録層として90(Co12Cr18Pt)−10(SiO)を10(nm)の膜厚となるように成膜した。上記の90(Co12Cr18Pt)―10(SiO)における90−10はモル比を示す。さらに上記の12,18,3は、それぞれCrが12モル%、Ptが18モル%、Ruが3モル%、Coが残部であることを示す。
次に、保護層としてカーボン膜(C膜)を成膜し、さらに潤滑剤層として、パーフルオロポリエーテル(PFPE)をディップ法により15(Å)の厚さに塗布した。
次に、不活性ガスの照射は、Arを用いて磁性層の表面にArプラズマを照射した。Arプラズマの照射には、Arガスの流量:5(sccm)、圧力:0.014(Pa)、加速電圧:300(V)、電流密度:0.4(mA/cm)、処理時間:5,15,25(sec)の照射条件を用いた。ここで、Arプラズマの処理時間:5,15,25(sec)で処理された垂直磁気記録媒体をそれぞれ実施例1,2,3とした。
(比較例)
実施例1,2,3と同様の製造条件を用いて磁気記録媒体を製造した。ここで磁性膜のArプラズマ照射を行わなかった垂直磁気記録媒体を比較例とした。
(電磁変換特性評価)
実施例及び比較例として製造したそれぞれの磁気記録媒体について、スピンスタンドを用いて電磁変換特性の評価を行った。具体的には、評価用の磁気ヘッドには、記録用に垂直記録ヘッド、再生用にTuMRヘッドを用い、750kFCIの信号を記録したときのSNR値を測定した。その測定結果を表1及び図3に示す。
Figure 2009116964
表1及び図3に示すように、磁性膜にAr照射を行わなかった比較例に対して、Ar照射を行った実施例1,2,3では電磁変換特性(SN比)が大幅に改善していることを確認できた。
(耐環境性評価)
実施例及び比較例として製造したそれぞれの磁気記録媒体について耐環境性評価を行った。具体的には、磁気記録媒体を温度80℃、湿度80%の環境下に48時間放置し、磁気記録媒体の表面に生ずるコロージョンの調査を行った。
具体的には、3%硝酸水溶液を各磁気記録媒体表面に100(μL)ずつ10箇所滴下し、この磁気記録媒体をシャーレで覆って1時間放置した後、ピペットで液滴を回収し、この液滴に含まれるコバルト(Co)を定量分析した。合計で1000(μL)の液滴に含まれるCo量を表1及び図4に示す。
表1及び図4に示すように、磁性膜にAr照射を行わなかった比較例に対して、Ar照射を行った実施例1,2,3ではコバルト(Co)の溶出量が少ないことから、耐食性が向上していることを確認できた。
図1は、本発明の実施形態を示す垂直磁気記録媒体の断面模式図である。 図2は、本発明の実施形態を示す磁気記録再生装置の斜視図である。 図3は、本発明の実施例を示す電磁変換特性評価結果を示す図である。 図4は、本発明の実施例を示す耐環境性評価結果を示す図である。
符号の説明
1・・非磁性基板、2・・・軟磁性裏打ち層、3・・・配向制御層、4・・・下地層、5・・・中間層、6・・・垂直磁気記録層、7・・・保護層、8・・・潤滑剤層、10・・・垂直磁気記録媒体、100・・・磁気記録再生装置、101・・・媒体駆動部、102・・・磁気ヘッド、103・・・ヘッド駆動部、104・・・記録再生信号系

Claims (5)

  1. 非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層と下地膜と中間層と少なくとも酸化物を含むグラニュラ磁性層を有する垂直磁気記録層とを有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記垂直磁気記録層を構成する前記グラニュラ磁性層を形成後、前記グラニュラ磁性層の表面に不活性ガスを照射することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
  2. 前記不活性ガスが、Ar,He,Xeからなる群から選ばれた何れか1種以上のガスであることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
  3. 前記不活性ガスが、イオンガン、誘導結合プラズマ(ICP)、反応性イオンプラズマ(RIE)からなる群から選ばれた何れかの方法によって照射されることを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された垂直磁気記録媒体。
  5. 垂直磁気記録媒体と、該垂直磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、前記垂直磁気記録媒体が、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された垂直磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。
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JP (1) JP2009116964A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012146385A (ja) * 2011-01-07 2012-08-02 Showa Denko HD Singapore Pte Ltd 垂直磁気記録媒体の製造方法

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