JP2010027110A - 垂直磁気記録媒体および磁気記録再生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁性層の積層構造が安定化した記録再生特性の優れた垂直磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層、シード層、第1中間層、第2中間層、第1磁気記録層、第2磁気記録層、保護層をこの順で有する垂直磁気記録媒体において、第1中間層をRuを主成分とする合金とし、第2中間層はRuを含まないCoCr合金とし、第1磁気記録層と第2磁気記録層の間にRuを主成分とする合金層を設ける。また第1磁気記録層を、Ruを含む磁性合金とする。
【選択図】図1
【解決手段】非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層、シード層、第1中間層、第2中間層、第1磁気記録層、第2磁気記録層、保護層をこの順で有する垂直磁気記録媒体において、第1中間層をRuを主成分とする合金とし、第2中間層はRuを含まないCoCr合金とし、第1磁気記録層と第2磁気記録層の間にRuを主成分とする合金層を設ける。また第1磁気記録層を、Ruを含む磁性合金とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、垂直磁気記録媒体およびこの垂直磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置に関するものである。
近年、磁気ディスク装置、可撓性ディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、その重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特にMRヘッド、およびPRML技術の導入以来、面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMRヘッド、TuMRヘッドなども導入され1年に30〜40%ものペースで増加を続けている。
このように、磁気記録媒体については今後更に高記録密度化を達成することが要求されており、そのために磁気記録層の高保磁力化と高信号対雑音比(SNR)、高分解能を達成することが要求されている。これまで広く用いられてきた長手磁気記録方式においては、線記録密度が高まるにつれて、磁化の遷移領域の隣接する記録磁区同士がお互いの磁化を弱めあおうとする自己減磁作用が支配的になるため、それを避けるために磁気記録層をどんどん薄くして形状磁気異方性を高める必要がある。
その一方で、磁気記録層の膜厚を薄くしていくと、磁区を保つためのエネルギー障壁の大きさと熱エネルギーの大きさが同レベルに近づいて、記録された磁化量が温度の影響によって緩和される現象(熱揺らぎ現象)が無視できなくなり、これが線記録密度の限界を決めてしまうといわれている。
そのため、最近の磁気記録媒体では垂直磁気記録技術が用いられている。従来の長手磁気記録方式が、媒体を面内方向へ磁化させるのに対し、垂直磁気記録方式では媒体面に垂直な方向に磁化させることを特徴とする。このことにより、長手磁気記録方式で高線記録密度を達成する妨げとなる自己減磁作用の影響を回避することができ、より高密度記録に適していると考えられている。また垂直磁気記録方式では、長手磁気記録で問題となっている熱磁気緩和の影響も比較的少ないと考えられている。
垂直磁気記録媒体は、非磁性基板上にシード層、中間層、磁気記録層、保護層の順に成膜されるのが一般的である。また、保護層まで成膜した上で、表面に潤滑層を塗布する場合が多い。また、多くの場合、軟磁性裏打ち層とよばれる磁性膜がシード層の下に設けられる。中間層は磁気記録層の特性をより高める目的で形成される。またシード層は中間層、磁気記録層の結晶配向を整えると同時に磁性結晶の形状を制御する働きをすると言われている。
優れた特性を有する垂直磁気記録媒体を製造するためには、磁気記録層の結晶配向性の向上と結晶粒径の微細化が重要である。垂直磁気記録媒体においては、多くの場合、その磁気記録層としてCo合金材料が用いられ、結晶構造は六方最密構造をとる。六方最密構造の(002)結晶面が基板面に対して平行であること、換言するならば結晶c軸[002]軸が垂直な方向にできるだけ乱れなく配列していることが重要である。
磁気記録層の結晶をできるだけ乱れなくさせるため、垂直磁気記録媒体の中間層としては、従来磁気記録層と同様に六方最密構造をとる、Ruが用いられてきた。Ruの(002)結晶面上には、磁気記録層の結晶がエピタキシャル成長するため、結晶配向の良い磁気記録媒体が得られる(例えば、特許文献1参照)。
つまり、Ru中間層の(002)結晶面配向度を上げることにより、磁気記録層の配向も向上するため、垂直磁気記録媒体の記録密度の向上のためにはRuの(002)結晶配向度の改善が必要となる。ただし、アモルファスの裏打ち層上に直接Ruを成膜すると、優れた結晶配向性を得るためにはRuの膜厚が厚くなり、磁気記録媒体に記録する際に、非磁性のRuは軟磁性材料である裏打ち層のヘッドからの磁束の引っ張りを弱めてしまう。そこで、従来は裏打ち層とRu中間層の間に、面心立方構造の(111)結晶面配向するシード層を挿入する。(例えば、特許文献2参照)。面心立方構造のシード層は、5(nm)程度の薄膜でも高い結晶配向性が得られ、面心立方構造のシード層上のRuは、裏打ち層の上に直接成膜されたRuよりは薄い膜厚で、高い結晶配向性が得られる。
シード層上の中間層や磁気記録層の結晶粒径を微細化するもうひとつの方法として、中間層を、Ruなどの結晶粒部分とそれを取り囲む酸化物などの粒界部分から構成されるグラニュラ構造にすることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。この方法であれば、酸化物量を増やすことで中間層の粒界部分を多くして、これにより結晶粒径の微細化を図ることが可能となる。さらに中間層上にCoCrPt−SiO2のような酸化物磁気記録層を成膜すれば、中間層から磁気記録層までグラニュラ構造がつながり、磁性結晶粒の粒径微細化や酸化物の偏析が促進され、ノイズが減少することで記録再生特性の改善が期待される。
また、磁気記録媒体の記録再生特性を改善する方法として、磁気記録層を複数層で構成し、磁気記録層の間に非磁性結合層を設け、磁気記録層を反強磁性的に交換結合した反強磁性交換結合構造とすることが提案されている。これにより磁気記録層の熱安定性を良好とすることが開示されている。そしてこの非磁性結合層としてRuを用いることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、磁気記録媒体の記録再生特性、熱揺らぎ特性を向上させるため、CoCr系の磁気記録層にRu等を添加することが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2001−6158号公報
特開2005−190517号公報
特開2007−273057号公報
特開2004−310910号公報
APPLIED PHYSICS LETTERS,vol.89,pp.162504
以上のように、磁気記録媒体を製造するためには、その積層構造中にRu層やRuを含有する層が多数用いられ、これらの層は磁気記録媒体の電磁変換特性において重要な作用効果を有している。そのため、各層のRu含有量が変動した場合、これが磁気記録媒体の特性に及ぼす影響は甚大である。本願発明者の検討によると、基板上に、裏打ち層、シード層、中間層、磁気記録層、保護層を積層した磁気記録媒体においては、中間層に用いるRuが最もその量が多く、この中間層のRuが磁気記録層に拡散することを防ぐと、磁気記録媒体の記録再生特性を改善できることが明らかになった。すなわち、従来の磁気記録媒体では、中間層に用いられていたRuが磁気記録層まで拡散し、それにより磁気記録層の反強磁性交換結合構造等が乱れ、本来磁気記録層が有している記録再生特性を発揮できていなかったと考えられる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、中間層に用いられているRuの磁気記録層への拡散を防ぎ、これにより磁気記録媒体の記録再生特性を改善することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
(1)非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層、シード層、第1中間層、第2中間層、第1磁気記録層、第2磁気記録層、保護層をこの順で有する垂直磁気記録媒体であって、第1中間層はRuを主成分とする合金であり、第2中間層はRuを含まないCoCr合金であり、第1磁気記録層と第2磁気記録層の間にRuを主成分とする合金層を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
(2)第1磁気記録層はRuを含む磁性合金であることを特徴とする(1)に記載の垂直磁気記録媒体。
(3)第2中間層が、グラニュラ構造の非磁性層であり、このグラニュラ構造を構成する非磁性粒子が20at%〜50at%のCrを含み、グラニュラ構造を構成する粒界がAl,B,Bi,Ca,Cr,Fe,Hf,Mg,Mo,Nb,Ru,Si,Ta,Ti,W,Zrから選択される少なくとも1種類の元素の酸化物であり、第2中間層中の酸化物の濃度が8mol%〜20mol%の範囲内であることを特徴とする(1)または(2)に記載の垂直磁気記録媒体。
(4)第2中間層の酸化物がSiO2,Cr2O3,TiO2から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする(3)に記載の垂直磁気記録媒体。
(5)第2中間層の膜厚が0.5nm〜10nmの範囲内であることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
(6)垂直磁気記録媒体と、該垂直磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、垂直磁気記録媒体が(1)〜(5)の何れか1項に記載の垂直磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。
(1)非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層、シード層、第1中間層、第2中間層、第1磁気記録層、第2磁気記録層、保護層をこの順で有する垂直磁気記録媒体であって、第1中間層はRuを主成分とする合金であり、第2中間層はRuを含まないCoCr合金であり、第1磁気記録層と第2磁気記録層の間にRuを主成分とする合金層を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
(2)第1磁気記録層はRuを含む磁性合金であることを特徴とする(1)に記載の垂直磁気記録媒体。
(3)第2中間層が、グラニュラ構造の非磁性層であり、このグラニュラ構造を構成する非磁性粒子が20at%〜50at%のCrを含み、グラニュラ構造を構成する粒界がAl,B,Bi,Ca,Cr,Fe,Hf,Mg,Mo,Nb,Ru,Si,Ta,Ti,W,Zrから選択される少なくとも1種類の元素の酸化物であり、第2中間層中の酸化物の濃度が8mol%〜20mol%の範囲内であることを特徴とする(1)または(2)に記載の垂直磁気記録媒体。
(4)第2中間層の酸化物がSiO2,Cr2O3,TiO2から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする(3)に記載の垂直磁気記録媒体。
(5)第2中間層の膜厚が0.5nm〜10nmの範囲内であることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
(6)垂直磁気記録媒体と、該垂直磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、垂直磁気記録媒体が(1)〜(5)の何れか1項に記載の垂直磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。
本発明によれば、磁気記録層の積層構造を安定化することができるため、磁気記録媒体の記録再生特性を改善でき、高記録密度特性に優れた垂直磁気記録媒体を供することができる。
本発明の内容を具体的に説明する。
本発明の垂直磁気記録媒体10は、図1に示すように、非磁性基板1上に少なくとも軟磁性裏打ち層2、直上の膜の配向性を制御するシード層3及び第1中間層4、第2中間層5、磁化容易軸(結晶c軸)が基板に対し主に垂直に配向した第1磁気記録層6,第2磁気記録層8、保護層9を有する構造であり、第1中間層4はRuを主成分とする合金であり、第2中間層5はRuを含まないCoCr合金であり、第1磁気記録層と第2磁気記録層の間にRuを主成分とする合金層7を有することを特徴とする。この垂直磁気記録媒体10は、ECC媒体や、ディスクリートトラックメデイア、パターンメディア、熱アシスト媒体のような新しい垂直磁気記録媒体においても適用可能である。ここで「Ruを主成分とする」とは、Ruを50%以上含むことを意味し、またRuが100%の場合も含む。
本発明の垂直磁気記録媒体に使用される非磁性基板としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、アモルファスガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、サファイア、石英、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。中でもAl合金基板や結晶化ガラス、アモルファスガラス等のガラス製基板を用いられることが多い。ガラス基板の場合、ミラーポリッシュ基板やRa<1(Å)のような低Ra基板などが好ましい。軽度であれば、テクスチャが入っていても構わない。
磁気ディスクの製造工程においては、まず基板の洗浄・乾燥が行われるのが通常であり、本発明においても各層の密着性を確保する見地からもその形成前に洗浄、乾燥を行うことが望ましい。洗浄については、水洗浄だけでなく、エッチング(逆スパッタ)による洗浄も含まれる。また、基板サイズも特に限定しない。
次に、垂直磁気記録媒体の各層について説明する。
軟磁性裏打ち層は、多くの垂直磁気記録媒体に設けられているが、媒体に信号を記録する際、ヘッドからの記録磁界を導き、磁気記録層に対して記録磁界の垂直成分を効率よく印加する働きをする。材料としてはFeCo系合金、CoZrNb系合金、CoTaZr系合金などいわゆる軟磁気特性を有する材料ならば使用することができる。軟磁性裏打ち層は、アモルファス構造であることが特に好ましい。アモルファス構造とすることで、表面粗さ(Ra)が大きくなることを防ぎ、ヘッドの浮上量を低減することが可能となり、さらなる高記録密度化が可能となるためである。また、2層の軟磁性層間にRuなどの極薄い非磁性薄膜をはさみ、反強磁性結合を持たせたものも用いることができる。裏打ち層の総膜厚は20(nm)〜120(nm)程度であるが、記録再生特性とオーバーライト(OW)特性とのバランスにより適宜決定される。
本発明では、軟磁性裏打ち層の上に、直上の膜の配向性を制御するシード層および中間層をこの順で設ける。また中間層は複数層から構成し、基板側から第1中間層、第2中間層を含む構造とする。
本発明では、シード層として中間層材料の濡れ性の他に、中間層結晶の配向性を制御することが重要である。シード層としてアモルファスである材料を用いた場合は、シード層の膜厚を厚くすることでシード層の表面凹凸が小さくなり、中間層結晶の配向性が改善していくことが知られている。しかし、記録再生特性を向上させるためには、記録時にできるだけヘッドからの磁束を磁気記録層に引き込む必要があるため、非磁性であるシード層の膜厚を厚くすると磁気記録層と軟磁性材料である裏打ち層の距離が離れ、磁束の引き込みが弱まってしまう。そこで本発明のシード層としては、5(nm)以下の低膜厚においても中間層の結晶配向性が維持できる材料を用いることが好ましい。具体的には、空間群では体心立方構造に分類される組成でありながら、10(nm)程度の薄膜領域においてはアモルファス材料であることが知られているCr−Ti,Cr−Mn,Cr−Fe合金やTa合金が好ましい。
本発明の第1中間層としては、六方最密構造を有するRuまたはRu合金を用いる。 中間層の上に積層される磁気記録層の結晶配向性は、中間層の結晶配向性によりほぼ決定されるため、この中間層の配向制御は垂直磁気記録媒体の製造上極めて重要である。シード層材料に対する中間層材料の濡れ性があまり良くない場合、中間層の結晶配向を向上させるためには、中間層の初期成長部では成膜時のガス圧が低いことが好ましい。しかし、シード層結晶上の複数個の中間層結晶は、低ガス圧成膜のまま膜成長し続けると膜成長の途中で結晶粒同士の合体が起こる。合体した中間層の結晶上に磁気記録層の1個の結晶がエピタキシャル成長するため、結晶粒径が合体した中間層結晶粒径程度まで大きくなってしまう。このため本発明では、中間層を基板側から第1中間層、第2中間層とし、少なくとも2層の中間層を設けている。
本発明の第2中間層はその上に成膜される磁気記録層がエピタキシャル成長するため、六方最密構造をとるCoCr合金を用いる。本願発明で重要なのは、この第2中間層にRuを用いないことである。すなわち、本願発明の第2中間層は、磁気記録層をエピタキシャル成長させる役割を有すると共に、第1中間層のRuが磁気記録層に拡散し、このRuが磁気記録層の多層構造に含まれる薄いRu含有層を乱すことを防止する役割を有する。
本願発明では、第2中間層をグラニュラ構造の非磁性層とし、グラニュラ構造を構成する非磁性粒子が25at%〜50at%のCrを含む組成とし、グラニュラ構造を構成する粒界をAl,B,Bi,Ca,Cr,Fe,Hf,Mg,Mo,Nb,Ru,Si,Ta,Ti,W,Zrから選択される少なくとも1種類の元素の酸化物とし、第2中間層中の酸化物の濃度を8at%〜20at%の範囲内とすることにより、磁気記録層のエピタキシャル成長性を高め、また、第1中間層のRuが磁気記録層に拡散するのをより強固に防止することが可能となる。
また本願発明の第2中間層の酸化物は、SiO2,Cr2O3,TiO2から選択される少なくとも1種類を用いるのが上記効果を達成する上で好ましく、また、第2中間層の膜厚は0.5nm〜10nmの範囲内とするのが好ましい。
また、高ガス圧成膜により結晶粒間に空隙が生じることで結晶粒同士の合体を抑制することが可能となる。その場合の成膜ガス圧は1.5(Pa)以上とすることが好ましく、より好ましくは3(Pa)以上である。また、結晶粒の周りを酸化物や窒化物の粒界で囲む場合は、結晶粒同士の合体を抑制できるだけでなく粒界幅を太くすることで結晶粒の微細化することも可能である。本発明では、第2中間層の結晶粒同士の合体を抑制することで、1個の中間層結晶粒上に1個の磁気記録層の結晶粒がエピタキシャル成長し、磁気記録層の結晶の高密度化と粒径の微細化を両立すると共に、第1中間層のRuが磁気記録層に拡散するのを防止する。
本発明では、第1中間層および第2中間層は、六方最密構造の(002)結晶面配向しているのが好ましい。垂直磁気記録媒体においては多くの場合、その磁気記録層の結晶構造は六方最密構造をとるが、その(002)結晶面が基板面に対して平行であること、換言するならば結晶c軸[002]軸が垂直な方向にできるだけ乱れなく配列していることが重要である。これを評価する方法としてロッキングカーブの半値幅を用いることができる。はじめに、基板上に成膜した膜をX線回折装置にかけ、基板面に対して平行な結晶面を分析する。前述の中間層や磁気記録層のように六方最密構造をとる膜を試料が含有する場合、その結晶面に対応する回折ピークが観測される。Co系合金を用いた垂直磁気記録媒体の場合、六方最密構造のc軸[002]方向が基板面に垂直になるような配向をするので(002)面に対応するピークを観測することになる。次にこの(002)面を回折するブラッグ角を維持したまま光学系を基板面に対してスイングさせる。このときに光学系を傾けた角度に対して(002)結晶面の回折強度をプロットすると、ひとつの回折ピークを描くことができる。これをロッキングカーブと呼んでいる。このとき(002)結晶面が基板面に対して極めてよく平行にそろっている場合は鋭い形状のロッキングカーブが得られるが、逆に(002)結晶面の向きが広く分散しているとブロードなカーブが得られる。そこでロッキングカーブの半値幅、デルタ・シータ・50を垂直磁気記録媒体の結晶配向の良否の指標として用いることが多い。
本発明によれば、このデルタ・シータ・50の小さい垂直磁気記録媒体を容易に作製することができる。
磁気記録層は文字通り、実際に信号の記録がなされる層である。材料としてはCoCr、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtB−X、CoCrPtB−X−Y、CoCrPt−O、CoCrPtRu−O、CoCrPt−SiO2、CoCrPt−Cr2O3、CoCrPt−TiO2、CoCrPt−ZrO2、CoCrPt−Nb2O5、CoCrPt−Ta2O5、CoCrPt−B2O3、CoCrPt−WO2、CoCrPt−WO3、CoCrPt−RuO2などのCo系合金薄膜が使用されることが多い。特に、酸化物磁気記録層を用いる場合は、酸化物が磁性Co結晶粒の周りを取り囲んでグラニュラ構造をとることで、Co結晶粒同士の磁気的相互作用が弱まりノイズが減少する。最終的にはこの層の結晶構造、磁気的性質が記録再生を決定する。
本願発明の磁気記録層は、磁気記録層を複数層で構成し、磁気記録層の間にRuを主成分とする層(交換結合コントロール層)を0.2nm〜2nmの膜厚で設け、これにより磁気記録層間の交換結合の大きさをコントロールすること特徴とする。これにより磁気記録層の熱安定性を良好とすることができる。ここでRuを主成分とするとは、前述のように、Ruを50%以上含むことを意味し、またRuが100%の場合も含む。
また本願発明では、第1磁気記録層をRuを含む磁性合金とするのが好ましい。その理由は、磁性粒子中に非磁性元素を含有するため飽和磁束密度Msを下げ、反磁界を小さくできるためである。またRuはCoと同じく六方最密構造であり、Ru添加に伴い磁気記録層が六方最密構造を維持しやすく、高いKuを維持できるようになる。さらに本願発明において特に重要なのは、第1磁気記録層をRuを含む磁性合金とすることにより第1中間層からのRu拡散を適切にコントロールすることが可能となる点である。すなわち、磁気記録層にRuを添加することにより、磁気記録層が六方最密構造を維持しやすくなり、第1中間層からのRuの拡散を阻止することが可能となるからである。
本願発明では、第1磁気記録層へのRuの投入量を1at%〜10at%程度とするのが望ましい。その投入量の範囲内で、ヘッドの記録磁界や、他の記録層と組み合わせて、Ru投入量を決定する。
以上の各層の成膜には通常DCマグネトロンスパッタリング法またはRFスパッタリング法が用いられる。また基板に、RFバイアス、DCバイアス、パルスDCバイアスを印可し、スパッタリングガスとしては不活性ガスに加え、O2ガス、H2Oガス、H2ガス、N2ガスを用いることも可能である。そのときのスパッタリングガス圧力は各層ごとに特性が最適になるように適宜決定されるが、一般に0.1Pa〜30Pa程度の範囲にコントロールされる。またスパッタリングガス圧力は媒体の性能を見ながら調整される。
保護層はヘッドと媒体との接触によるダメージから媒体を保護するためのものであり、カーボン膜、SiO2膜などが用いられるが、多くの場合はカーボン膜が用いられる。保護膜の形成にはスパッタリング法、プラズマCVD法などが用いられるが、近年ではプラズマCVD法が用いられることが多い。またマグネトロンプラズマCVD法も可能である。膜厚は1(nm)〜10(nm)程度であり、好ましくは2(nm)〜6(nm)程度、さらに好ましくは2(nm)〜4(nm)である。
図2は、上記垂直磁気記録媒体を用いた垂直磁気記録再生装置80の一例を示すものである。図2に示す磁気記録再生装置は、磁気記録媒体10と、磁気記録媒体10を回転駆動させる媒体駆動部81と、磁気記録媒体10に情報を記録再生する磁気ヘッド82と、この磁気ヘッド82を磁気記録媒体10に対して相対運動させるヘッド駆動部83と、記録再生信号処理系84とを備えて構成されている。
記録再生信号処理系84は、外部から入力されたデ−タを処理して記録信号を磁気ヘッド82に送り、磁気ヘッド82からの再生信号を処理してデ−タを外部に送ることができるようになっている。
本発明の磁気記録再生装置に用いる磁気ヘッド82には、再生素子として異方性磁気抵抗効果(AMR)を利用したMR(MagnetoResisTance)素子だけでなく、巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子、トンネル効果を利用したTuMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
HD用ガラス基板をセットした真空チャンバをあらかじめ1.0×10−5(Pa)以下に真空排気した。
(実施例1)
HD用ガラス基板をセットした真空チャンバをあらかじめ1.0×10−5(Pa)以下に真空排気した。
次に、この基板上にスパッタリング法を用いて軟磁性裏打ち層85Co10Ta5Zr(at%、以下同じ。)を50(nm)、ガス圧0.6(Pa)のAr雰囲気中で成膜した。
次にシード層として、60Cr40Tiを5(nm)、さらに第1中間層としてRuをガス圧0.6(Pa)のAr雰囲気中でそれぞれ成膜した。第2中間層としては、グラニュラ構造の88(60Co40Cr)−12TiO2(組成物比はmol%、以下同じ。)を8(nm)、ガス圧5(Pa)のAr雰囲気中で成膜した。
さらに第1磁気記録層として、92(68Co10Cr16Pt6Ru)−8(SiO2)を60(nm)、Ru層を6(nm)、第2磁気記録層として、64Co21Cr14Pt1Bを70(nm)、保護層としてC膜を30(nm)成膜して垂直磁気記録媒体とした。
得られた垂直磁気記録媒体について、潤滑剤を塗布し、米国GUZIK社製リードライトアナライザ1632及びスピンスタンドS1701MPを用いて、記録再生特性の評価を行った。その後、Kerr測定装置により静磁気特性の評価をおこなった。また、磁気記録層のCo系合金の結晶配向性を調べるため、X線回折装置により磁気記録層のロッキングカーブの測定をおこなった。
それぞれの測定から実施例と比較例について、高信号雑音比(SNR)、保磁力(Hc)、デルタ・シータ・50の結果を表1に示した。いずれのパラメータも垂直磁気記録媒体の電磁変換特性を評価する場合に広く使われる指標である。なお、1Oeは約79A/mである。
(実施例2〜10)
実施例1と同様に磁気録媒体を製造し評価を行ったが、第2中間層の合金組成、膜厚を変化させた。表1に成膜条件および結果を示す。
実施例1と同様に磁気録媒体を製造し評価を行ったが、第2中間層の合金組成、膜厚を変化させた。表1に成膜条件および結果を示す。
(比較例1〜2)
実施例1と同様に磁気録媒体を製造し評価を行ったが、比較例1では第2中間膜を設けず、比較例2では第1磁気記録層と第2磁気記録層との間にRu層を設けなかった。表1に結果を示す。
実施例1と同様に磁気録媒体を製造し評価を行ったが、比較例1では第2中間膜を設けず、比較例2では第1磁気記録層と第2磁気記録層との間にRu層を設けなかった。表1に結果を示す。
表1から明らかなように、本願発明の磁気記録媒体はHcが高く、またデルタ・シータ・50も低く、SNRも優れていた。
1 非磁性基板
2 軟磁性裏打ち層
3 シード層
4 第1中間層
5 第2中間層
6 第1磁気記録層
7 RuまたはRu含有層
8 第2磁気記録層
9 保護層
10 磁気記録媒体
81 媒体駆動部
82 磁気ヘッド
83 ヘッド駆動部
84 記録再生信号系
2 軟磁性裏打ち層
3 シード層
4 第1中間層
5 第2中間層
6 第1磁気記録層
7 RuまたはRu含有層
8 第2磁気記録層
9 保護層
10 磁気記録媒体
81 媒体駆動部
82 磁気ヘッド
83 ヘッド駆動部
84 記録再生信号系
Claims (6)
- 非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層、シード層、第1中間層、第2中間層、第1磁気記録層、第2磁気記録層、保護層をこの順で有する垂直磁気記録媒体であって、第1中間層はRuを主成分とする合金であり、第2中間層はRuを含まないCoCr合金であり、第1磁気記録層と第2磁気記録層の間にRuを主成分とする合金層を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
- 第1磁気記録層はRuを含む磁性合金であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
- 第2中間層が、グラニュラ構造の非磁性層であり、このグラニュラ構造を構成する非磁性粒子が20at%〜50at%のCrを含み、グラニュラ構造を構成する粒界がAl,B,Bi,Ca,Cr,Fe,Hf,Mg,Mo,Nb,Ru,Si,Ta,Ti,W,Zrから選択される少なくとも1種類の元素の酸化物であり、第2中間層中の酸化物の濃度が8mol%〜20mol%の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体。
- 第2中間層の酸化物がSiO2,Cr2O3,TiO2から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項3に記載の垂直磁気記録媒体。
- 第2中間層の膜厚が0.5nm〜10nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
- 垂直磁気記録媒体と、該垂直磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、垂直磁気記録媒体が請求項1〜5の何れか1項に記載の垂直磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。
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JP2012238360A (ja) * | 2011-05-12 | 2012-12-06 | Fuji Electric Co Ltd | 垂直磁気記録媒体 |
JP2014078304A (ja) * | 2012-10-11 | 2014-05-01 | Showa Denko Kk | 磁気記録媒体、磁気記録媒体の製造方法および磁気記録再生装置 |
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