JP2009114416A - インクジェットインク用ポリマー組成物及びインクジェットインク - Google Patents

インクジェットインク用ポリマー組成物及びインクジェットインク Download PDF

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Abstract

【課題】光沢性、印字濃度、耐擦性、及び耐水性が良好であるため印字品質に優れ、また、印字安定性に優れるインクジェットインクの材料であるインクジェットインク用ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】(a)ジエン系化合物に由来する構造単位を含有するジエン系重合体をスルホン化して得られる第一の重合体、及び、(b)エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を乳化重合させて得られる第二の重合体、を含有するインクジェットインク用ポリマー組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェットインク用ポリマー組成物及びインクジェットインクに関する。更に詳しくは、光沢性、印字濃度、耐擦性、及び耐水性が良好であるため印字品質に優れ、また、印字安定性に優れるインクジェットインクの材料であるインクジェットインク用ポリマー組成物に関する。
紙、高分子、金属などの基材にインクジェット方式により記録する方法は、コンピューターなどのプリンターなどに採用され、近年、急速に普及している。インクジェット方式による記録方式は、インクの微小液滴を飛翔させ、この微小液滴を紙などの基材、具体的には記録シートに付着させて、画像、文字などの記録を行うものである。このようなインクジェット方式による記録方式は、高速、低騒音であり、多色化が可能であり、また、記録パターンの融通性が大きく、更に、現像−定着が不要などの特徴がある。そして、多色インクジェット記録方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較しても遜色のないものが得られるようになってきた。
インクジェット方式に用いられるインクジェットインクは、例えば、顔料系インク組成物を含有したものが知られており、この顔料系インク組成物は、染料系インク組成物と比較して耐光性や耐ガス性に優れる。しかし、印刷物は、室内に限らず屋外に設置されることがあるため、太陽光や外気、例えば、オゾン、窒素酸化物、硫黄酸化物などに晒される。そのため、屋外に設置されることを考慮すると、更に耐光性及び耐ガス性に優れたインク組成物の開発が求められている。
このような要求に対して、顔料系インク組成物に、スルホン酸基を有する重合体からなる樹脂を添加することによって、紙、高分子、金属などの基材に対するインクの印字定着性、光沢性、耐光性、及び耐オゾン性が優れるインク組成物が報告されている(例えば、特許文献1、2)。
特開平11−217525号公報 特開2004−162043号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載されたインク組成物は光沢性等に優れるものの、各種基材に印刷した印刷物の耐擦性、及び耐水性が未だ十分ではなかった。そのため、光沢性、印字濃度、耐擦性、及び耐水性の全ての特性が良好であるため印字品質に優れ、また、印字安定性に優れるインクジェットインクの材料であるインク組成物、即ち、インクジェットインク用ポリマー組成物の開発が切望されている。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、光沢性、印字濃度、耐擦性、及び耐水性が良好であるため印字品質に優れ、また、印字安定性に優れるインクジェットインクの材料であるインクジェットインク用ポリマー組成物、及び、インクジェットインクを提供することにある。
本発明によれば、以下に示すインクジェットインク用ポリマー組成物及びインクジェットインクが提供される。
[1](a)ジエン系化合物に由来する構造単位を含有するジエン系重合体をスルホン化して得られる第一の重合体、及び、(b)エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を乳化重合させて得られる第二の重合体、を含有するインクジェットインク用ポリマー組成物。
[2]前記(a)第一の重合体が、前記ジエン系重合体を水素添加して水素添加物を得、得られた前記水素添加物をスルホン化して得られるものである前記[1]に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
[3]前記ジエン系重合体が、芳香族化合物に由来する構造単位を更に含有する前記[1]または[2]に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
[4]前記(a)第一の重合体が乳化分散した水系エマルジョンと、前記(b)第二の重合体と、を混合して得られる前記[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
[5]前記(b)第二の重合体が、(c)連鎖移動剤の存在下で重合して得られるものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
[6]前記(b)第二の重合体が、(d)親水性基、疎水基、及びラジカル反応性基を含有する反応性乳化剤の存在下で乳化重合して得られるものである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
[7]前記エチレン性不飽和結合を有するモノマーが、(メタ)アクリル系モノマー、及びスチレンよりなる群から選択される少なくとも1種である前記[1]〜[6]のいずれかに記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
[8]前記水系エマルジョン中に乳化分散して存在している前記(a)第一の重合体の平均粒子径が10〜200nmである前記[4]〜[7]のいずれかに記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
[9]前記(a)第一の重合体と、前記(b)第二の重合体が乳化分散した水系エマルジョンと、を混合して得られ、前記水系エマルジョン中に乳化分散して存在している前記(b)第二の重合体の平均粒子径が10〜100nmである前記[1]〜[8]のいずれかに記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
[10]前記[1]〜[9]のいずれかに記載のインクジェットインク用ポリマー組成物と、染料及び顔料よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、水と、を含むインクジェットインク。
本発明のインクジェットインク用ポリマー組成物は、(a)ジエン系化合物に由来する構造単位を含有するジエン系重合体をスルホン化して得られる第一の重合体、及び、(b)エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を乳化重合させて得られる第二の重合体、を含有するものであるため、光沢性、印字濃度、耐擦性、及び耐水性が良好であるため印字品質に優れ、また、印字安定性に優れるインクジェットインクの材料として用いることができる。
本発明のインクジェットインクは、本発明のインクジェットインク用ポリマー組成物を含むものであるため、光沢性、印字濃度、耐擦性、及び耐水性が良好であるため印字品質に優れ、また、印字安定性に優れる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良などが加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
[1]インクジェットインク用ポリマー組成物:
本発明のインクジェットインク用ポリマー組成物の一の実施形態は、(a)ジエン系化合物に由来する構造単位を含有するジエン系重合体をスルホン化して得られる第一の重合体、及び、(b)エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を乳化重合させて得られる第二の重合体、を含有するものである。
このようなインクジェットインク用ポリマー組成物は、(a)第一の重合体及び(b)第二の重合体が、良好な皮膜透明性、皮膜形成性、耐水性、顔料粒子の結着性、水系中での良好な分散安定性などを有するため、光沢性、印字濃度、耐擦性、及び耐水性が良好であり、印字品質に優れる。また、印字安定性に優れる。そのため、インクジェットインクの材料として好適に用いることができる。特に、水系インクジェットインクの材料として用いると、紙・OHPなどのメディア(基材)に対する印字濃度、光沢性、耐擦性、及び印字安定性に優れるインクジェットインクを得ることができる。
[1−1](a)第一の重合体:
本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物に含有される(a)第一の重合体は、ジエン系化合物に由来する構造単位を含有するジエン系重合体(以下、「ベースポリマー」と記す場合がある)をスルホン化して得られるものである。
このような(a)第一の重合体は、良好な皮膜透明性、皮膜形成性、顔料粒子の結着性を有するため、本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物は、光沢性、印字濃度、耐擦性を有する。また、(a)第一の重合体は、親水性の高いスルホン酸基を有するため、水系エマルジョン中での安定分散が可能であり、水系エマルジョン中であっても凝集体を形成し難い。そのため、本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物を含有するインクジェットインクがノズルで詰まってしまうことが抑制され、印字安定性も優れるという効果がある。
ジエン系重合体は、ジエン系化合物に由来する構造単位を含有するものであり、このような構造単位を形成するためのジエン系化合物としては、例えば、十分な重合性を有し、かつ、工業的に入手しやすいことから、炭素数4〜10のジエン系化合物であることが好ましく、炭素数4〜8のジエン系化合物であることが更に好ましく、炭素数4〜6のジエン系化合物であることが特に好ましい。
ジエン系化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ペンタジエン、イソプレン、1,2−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,2−ヘプタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、2,3−ヘプタジエン、2,5−ヘプタジエン、3,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、分岐した炭素数4〜7の各種脂肪族、脂環族ジエン類などが挙げられる。なお、これらは単独でまたは2種以上を用いることができる。これらの中でも、皮膜透明性、皮膜形成性、及び顔料粒子の結着性が高い(a)第一の重合体を得ることができることから、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
ベースポリマー中のジエン系化合物に由来する構造単位の含有割合は、全構造単位に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。上記含有割合が20質量%未満であると、皮膜形成性が低下し十分な耐擦性が得られないおそれがある。
ベースポリマーは、ジエン系化合物に由来する構造単位以外に、その他のモノマー(X)に由来する構造単位を含有する共重合体であってもよい。その他のモノマー(X)に由来する構造単位を形成するためのその他のモノマー(X)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルスチレンなどの芳香族化合物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヘチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸i−ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルアミド、酢酸ビニル、プロピロン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物、モノアルキレステル、モノアミド類、アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ブチルアミノエチルアクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル、アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミノなどのエチレン性不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド、(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系化合物、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和脂肪族グリシジルエステルなどが挙げられる。なお、これら他のモノマーは、単独でまたは2種以上を用いることができる。これらの中でも、ジエン系化合物との共重合が比較的容易であることから、芳香族化合物が好ましく、スチレンが特に好ましい。
ベースポリマー中のその他の構造単位の含有割合は、全構造単位に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。上記含有割合が80質量%超であると、皮膜形成性が低下し十分な耐擦性が得られないおそれがある。
その他のモノマー(X)を使用する場合、ジエン系化合物の使用量は、全重合性単量体(ジエン系化合物及びその他のモノマー(X))の総量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。ジエン系化合物の使用量が0.5質量%未満であると、(a)第一の重合体中に導入されるスルホン酸(塩)基の含有量が十分でなくなるおそれがある。
ベースポリマーは、例えば、ジエン系化合物、及び、その他のモノマー(X)を溶剤に加え、ラジカル重合開始剤、またはアニオン重合開始剤の存在下で、−100〜150℃、好ましくは0〜130℃、0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間重合させ、溶剤を留去することによって得ることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどを挙げることができる。また、アニオン重合開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、ナトリウムナフタレン、金属ナトリウムなどを挙げることができる。
このようにして得られるベースポリマーは、例えば、イソプレン単独重合体、ブタジエン単独重合体などであってもよく、ランダム型、AB型やABA型などのブロック型などであってもよい。ランダム型やブロック型のベースポリマーとしては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ブタジエン−スチレン−ブタジエン三元ブロック共重合体、これらの水素添加物、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体などが挙げられる。これらの中でも、芳香族系重合体ユニットと共役ジエン系重合体ユニットとを有するブロック共重合体、及びこれらの水素添加物が好ましく、具体的には、イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ブタジエン−スチレン−ブタジエン三元ブロック共重合体、これらの水素添加物が好ましい。
ベースポリマーの重量平均分子量(以下、「Mw」と記す場合がある)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、3,000〜500,000であることが更に好ましく、5,000〜400,000であることが特に好ましい。Mwが1,000未満であると、耐擦性が低下し、また、耐水性が悪くなるおそれがある。一方、1,000,000超であると、スルホン化に際し、ベースポリマーがゲル化する等の問題が生じるおそれがある。ここで、本明細書において、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によるポリスチレン換算の値である。
本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物に含有される(a)第一の重合体は、上記ジエン系重合体(ベースポリマー)をスルホン化して得られるものであり、ジエン系重合体をスルホン化する方法としては、例えば、日本科学会編集、新実験講座(14巻 III、1773頁)、特開平2−227403号公報に記載された方法などを挙げることができる。具体的には、ベースポリマーにスルホン化剤を加えて、ベースポリマー中のジエン系化合物に由来する構造単位の二重結合及びベースポリマー中に芳香族環を有する場合には芳香族環とスルホン化剤とを反応させ、反応生成物を得、この反応生成物に水または塩基性化合物を加えてスルホン化物を得る方法を挙げることができる。
スルホン化剤としては、例えば、無水硫酸、無水硫酸と電子供与性化合物との錯体、硫酸、クロルスルホン酸、発煙硫酸、亜硫酸水素塩(例えば、Na塩、K塩、Li塩)などを挙げることができる。
電子供与性化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類;ピリジン、ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィドなどのスルフィド類;アセトニトリル、エチルニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル化合物などが挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサンが好ましい。
スルホン化剤の使用量は、ベースポリマー中のジエン系化合物に由来する構造単位及び芳香族化合物に由来する構造単位の総量1モルに対して、無水硫酸換算で0.005〜1.5モルであることが好ましく、0.01〜1.0モルであることが更に好ましい。0.005モル未満であると、スルホン化率が十分でないため、種々の性能が発現しないおそれがある。一方、1.5モル超であると、未反応の無水硫酸が多くなるため、アルカリで中和すると、多量の硫酸塩を生じて純度が低下するおそれがある。
ベースポリマーとスルホン化剤とを反応させる際には、上記スルホン化剤以外に、このスルホン化剤に不活性な溶媒を用いることができる。このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;液体二酸化イオウ、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤が挙げられる。なお、これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を使用することができる。
ベースポリマーとスルホン化剤とを反応させる際の反応温度は、−70〜200℃であることが好ましく、−30〜50℃であることが更に好ましい。−70℃未満であると、スルホン化反応が遅くなるおそれがある。一方、200℃超であると、副反応を起こし、生成物が黒色化または不溶化するおそれがある。
ベースポリマーとスルホン化剤とを反応させて得られる反応生成物に、水または塩基性化合物を加えると、ベースポリマー中の二重結合が開環し、スルホン酸(塩)が結合した単結合になるか、または、二重結合が開環せずに残こり、水素原子がスルホン酸(塩)と置換するため、ベースポリマーをスルホン化することができる。
塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、アミルリチウム、プロピルナトリウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、プロピルマグネシウムアイオダイド、ジエチルマグネシウム、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機金属化合物;アンモニア水、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、アニリン、ジメチルエタノールアミン、アミノメチルプロパノ−ル、ピペラジンなどのアミン類;ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、亜鉛などの金属化合物等を挙げることができる。これらの塩基性化合物は、単独でまたは2種以上を使用することができる。これらの塩基性化合物の中でもは、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムが更に好ましい。
塩基性化合物の使用量は、スルホン化に使用したスルホン化剤1モルに対して、2モル以下であることが好ましく、1.3モル以下であることが更に好ましい。上記使用量が2モル超であると、純度が低下して耐擦性、印字安定性などの特性が悪化するおそれがある。
なお、塩基性化合物は、水溶液として使用してもよいし、この塩基性化合物に不活性な有機溶媒に溶解した有機溶媒溶液として使用してもよい。この有機溶媒としては、上述したスルホン化剤に不活性な溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を使用することができる。
塩基性化合物を水溶液または有機溶媒溶液として使用する場合、塩基性化合物の濃度は、1〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることが更に好ましい。また、塩基性化合物を反応させる際の反応温度は、−30〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることが更に好ましく、50〜100℃であることが特に好ましい。また、常圧、減圧、または加圧下のいずれでもよい。反応時間は、0.1〜24時間であることが好ましく、0.5〜5時間であることが更に好ましい。
本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物に含有される(a)第一の重合体は、ベースポリマーをスルホン化した後、水及び有機溶媒を除去することによって得ることができる。
このようにして得られた(a)第一の重合体中のスルホン酸(塩)基の含有量は、0.1〜3.5ミリモル/gであることが好ましく、0.2〜3ミリモル/gであることが更に好ましく、0.5〜2.5ミリモル/g、であることが特に好ましい。上記含有量が0.1ミリモル/g未満であると、水系エマルジョン中における(a)第一の重合体の粒径が大きくなりすぎるおそれがある。一方、3.5ミリモル/g超であると、耐水性が低下するおそれがある。なお、赤外線吸収スペクトルのスルホン基の吸収を確認することによって、(a)第一の重合体の構造を確認することができる。または、核磁気共鳴スペクトルを用いることによって、(a)第一の重合体の構造を確認することができる。また、(a)第一の重合体中の組成比は、元素分析などにより算出することができる。
また、本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物に含有される(a)第一の重合体としては、ジエン系重合体を水素添加して水素添加物を得、得られた水素添加物をスルホン化したもの、即ち、ベースポリマー中のジエン系化合物に由来する構造単位の二重結合の一部または全部を水素添加して水素添加物を得、得られた水素添加物をスルホン化したものを用いてもよいし、ベースポリマーをスルホン化してスルホン化物を得、得られたスルホン化物を水素添加して得られるものを用いてもよい。水素添加は、従来公知の方法によって行うことができ、例えば、特開平5−222115号公報に記載されているような水添触媒を用いて水素添加する方法などを挙げることができる。
なお、ベースポリマー中のジエン系化合物に由来する構造単位の二重結合の一部または全部を水素添加して水素添加物を得、得られた水素添加物をスルホン化する場合、このスルホン化は、ジエン系化合物に由来する構造単位中の二重結合またはその他の構造単位、特に芳香族化合物に由来する構造単位に対して行われてもよい。
また、本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物は、(a)第一の重合体が乳化分散した水系エマルジョンと、(b)第二の重合体と、を混合して得られるものであることが好ましい。このように(a)第一の重合体が乳化分散している水系エマルジョン、即ち、乳化物を用いることによって、耐擦性及び耐水性が向上するという効果がある。
(a)第一の重合体を水系エマルジョン中に乳化分散させる方法は、ベースポリマーを有機溶剤系でスルホン化した後、有機溶剤/水溶液から、水を残したまま有機溶剤を除去する方法、(a)第一の重合体を有機溶剤に溶解した後、水を加え、その後、有機溶剤を除去する方法(以下、「再乳化」と記す場合がある)などを挙げることができる。
再乳化に使用する有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤などを挙げることができる。これら溶剤は、単独でまたは2種以上を使用してもよい。
有機溶剤の使用量は、(a)第一の重合体100質量部に対して、20〜5,000質量部であることが好ましく、50〜2,000質量部であることが更に好ましい。20質量部未満であると、安定な水系エマルジョンが得られないおそれがある。一方、5,000質量部超であると、生産性が悪くなるおそれがある。
また、再乳化に使用される水の量は、(a)第一の重合体100質量部に対して、50〜10,000質量部であることが好ましく、100〜5,000質量部であることが更に好ましい。50質量部未満であると、安定な水系エマルジョンが得られないおそれがある。一方、10,000質量部超であると、生産性が悪くなるおそれがある。
再乳化に際しては、界面活性剤を更に用いることもできる。この界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテルなどの非イオン系界面活性剤、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ロジン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルピリジジニウムクロライドなどのカチオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を使用することもできる。
界面活性剤は、(a)第一の重合体を溶解させた有機溶剤溶液中に、溶解または分散させてもよいし、予め水中に溶解または分散させたものを使用してもよい。界面活性剤の使用量は、(a)第一の重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。10質量部超であると、水系エマルジョンの純度が低下するおそれがある。
水系エマルジョン中に乳化分散している(a)第一の重合体は、平均粒子径が、10〜200nmであることが好ましく、30〜100nmであることが更に好ましい。上記平均粒子径が10nm未満であると、水系インクの粘度が高くなり印字安定性が悪化するおそれがある。一方、200nm超であると、造膜性が低下するため耐擦性が低下するおそれがある。ここで、本明細書において「平均粒子径」とは、動的光散乱法によって測定される値である。なお、平均粒子径は、(a)第一の重合体の分子量を調整することや乳化剤量を調整することによって調節することができる。
[1−2](b)第二の重合体:
本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物に含有される(b)第二の重合体は、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を乳化重合させて得られるものである。
このような(b)第二の重合体を含有することによって、より疎水性の高い強靭な皮膜を形成するため、耐擦性のみではなく、耐水性も向上するという効果がある。
エチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、(a)第一の重合体を得るために用いるジエン系化合物及びその他のモノマー(X)と同様のものを好適に用いることができる。これらの中でも、スチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル系モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。
モノマー成分は、エチレン性不飽和結合を有するモノマー以外に、その他のモノマー(Y)を含有することができる。その他のモノマー(Y)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸などを好適に用いることができる。
その他のモノマー(Y)の含有割合は、モノマー成分に対して、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましく、2〜5質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が0.5質量%未満であると、水に対して安定な乳化物が得られないそれがある。一方、20質量%超であると、粘度が上昇して印字安定性が低下するおそれがある。
(b)第二の重合体は、例えば、エチレン性不飽和結合を有するモノマー及びその他のモノマー(Y)を含有するモノマー成分に水を加え、乳化剤及びラジカル重合開始剤の存在下で、5〜100℃、0.1〜10時間、好ましくは2〜5時間の条件で乳化重合させ、安定な乳化物として得ることができる。
より具体的には、(b)第二の重合体は、モノマー成分としてエチレン性不飽和結合を有するモノマー100質量部、(a)反応性乳化剤0.5〜5質量部、水100〜5,000質量部、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて(a)反応性乳化剤以外の乳化剤や有機溶剤を混合して混合物を得、得られた混合物を重合温度5〜100℃、好ましくは30〜90℃、重合時間0.1〜10時間の条件で乳化重合させて得ることができる。
乳化剤としては、例えば、陰イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、両性イオン乳化剤、水溶性ポリマーなどが挙げられる。
陰イオン性乳化剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステル塩などが挙げられる。
非イオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、糖鎖を親水基とするアルキルエーテルなどを挙げることができる。
陽イオン性乳化剤としては、例えば、アルキルピリジニルクロライド、アルキルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。両性イオン乳化剤としては、例えば、ラウリルベタインなどを挙げることができる。
これらの乳化剤の中でも、(d)反応性乳化剤を使用することが好ましい。ここで、本明細書において「(d)反応性乳化剤」とは、親水性基と疎水性基とラジカル反応性基とを含み、乳化重合可能な程度の乳化能を有し、かつ、ラジカル重合可能である化合物を意味する。このような(d)反応性乳化剤を用いると、他の乳化剤に比べて使用量を低減することができる。また、(d)反応性乳化剤を使用すると、反応液中に余剰の乳化剤が生じ難いという利点がある。また、(d)反応性乳化剤の有する親水性基によって、(b)第二の重合体とインクジェットインク中のその他の成分との相溶性が向上される。そのため、インクジェットインクの印字濃度、耐擦性、光沢性が優れる。
親水基としては、例えば、硫酸エステル基、カルボン酸基、ポリオキシエチレン基などが挙げられる。これらの親水基の中でも、硫酸エステル基、ポリオキシエチレン基が好ましい。なお、(d)反応性乳化剤は、親水基として硫酸エステル基とポリオキシエチレン基の両方を有するものが好ましい。
疎水性基としては、炭素数が5〜20の脂肪族アルキル基または芳香族基が好ましく、炭素数が8〜15の脂肪族アルキル基が更に好ましい。ラジカル反応性基としては、例えば、アクリル基、メタアクリル基、アリルオキシ基、メタアリルオキシ基、プロペニル基などのエチレン性不飽和基が挙げられる。これらの中でも、アリルオキシ基、プロペニル基が好ましい。
(d)反応性乳化剤の具体例としては、下記一般式(1)〜(6)で表される化合物を挙げることができる。なお、下記一般式(1)〜(6)中、Rは炭素数5〜20の脂肪族アルキル基または芳香族基であり、nは5〜40の整数である。
Figure 2009114416
Rは、炭素数5〜20の脂肪族アルキル基であり、炭素数7〜15の脂肪族アルキル基であることが好ましい。また、Rは、炭素数5〜20の芳香族基であり、炭素数6〜18の芳香族基であることが好ましい。nは5〜40の整数であり、7〜30の整数であることが好ましく、10〜20の整数であることが更に好ましい。
親水基がアニオン性官能基である(d)反応性乳化剤の市販品としては、全て商品名で、ラテムルS−180A(花王社製)、エレミノールJS−2(三洋化成社製)、アクアロンKH−10、アクアロンHS−10、アクアロンBC−10(第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業社製)などを好適に使用できる。
親水基が非イオン性官能基である(d)反応性乳化剤の市販品としては、全て商品名で、アクアロンRS−20(第一工業製薬社製)、アデカリアソープER−20(旭電化工業社製)などを好適に使用できる。
なお、親水基がカチオン性官能基である(d)反応性乳化剤も好適に使用することができる。また、(d)反応性乳化剤は、単独でまたは2種以上を使用してもよい。
乳化剤の使用量は、水系エマルジョン中の粒子の粒子径によって適宜選択することができるが、モノマー成分100質量部に対して、0.5〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることが更に好ましい。0.5質量部未満であると、乳化が十分でなく、また、重合反応時の安定性が低下するおそれがある。一方、5質量部超であると、泡立ちが生じるおそれがある。
乳化剤は、重合系に一括添加、回分的添加、連続的添加、または回分的添加と連続的添加を組み合わせて添加することができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどの有機ハイドロパーオキサイド類からなる酸化剤と、含糖ピロリン酸処方/スルホキシレート処方の混合処方の還元剤との組み合わせであるレドックス系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2−カルバモイルアザイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物などを挙げることができる。これらの中でも、水溶性という観点から、過硫酸塩が好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、0.05〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることが更に好ましい。上記使用量が0.05質量部未満であると、重合が十分に進まないおそれがある。一方、20質量部超であると、純度が低下し、各種インク特性が低下するおそれがある。
また、(b)第二の重合体は、乳化剤及びラジカル重合開始剤に加えて、(c)連鎖移動剤の存在下で、エチレン性不飽和結合を有するモノマー及びその他のモノマー(Y)を乳化重合させて得られるものであることが好ましい。
(c)連鎖移動剤を用いることによる作用は明らかではないが、(b)第二の重合体の末端に(c)連鎖移動剤が結合することによって、(b)第二の重合体とインクジェットインクの他の成分との相溶性を向上させると思われる。
(c)連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン、1,1−ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマーなどの炭化水素類;及びアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテンなどを挙げることができる。なお、これらは単独でまたは2種以上を使用することもできる。これらの中でも、連鎖移動剤としての作用高く、重合体の末端に導入し易いため、メルカプタン類、キサントゲンジスルフィド類、チウラムジスルフィド類、四塩化炭素、1,1−ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー、2−エチルヘキシルチオグリコレートが好ましい。
(c)連鎖移動剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜7質量部であることが更に好ましく、0.2〜5質量部であることが特に好ましく、0.3〜3質量部であることが最も好ましい。上記使用量が0.1質量部未満であると、印刷物の光沢性の向上効果が十分に得られないおそれがある。一方10質量部超であると、耐擦性が不良となるおそれがある。
乳化重合の反応温度は、5〜100℃であることが好ましく、30〜90℃であることが更にこのましい。上記反応温度が5℃未満であると、重合が十分に進まないおそれがある。一方、100℃超であると、重合体の凝集が生じ、安定な乳化物が得られないおそれがある。反応時間は、0.1〜10時間であることが好ましく、2〜5時間であることが更に好ましい。上記反応時間が0.1時間未満であると、重合が十分に進まないおそれがある。一方、10時間超であると、重合体の凝集が生じ、安定な乳化物が得られないおそれがある。
本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物は、(a)第一の重合体と、(b)第二の重合体が乳化分散した水系エマルジョンと、を混合して得られるものであることが好ましい。(b)第二の重合体が乳化分散した水系エマルジョン、即ち、乳化物を用いることによって、耐水性、印字安定性が向上するという効果がある。
水系エマルジョン中に乳化分散している(b)第二の重合体は、平均粒子径が、10〜100nmであることが好ましく、30〜70nmであることが更に好ましい。上記平均粒子径が10nm未満であると、重合安定性が著しく低下するおそれがある。一方、100nm超であると、貯蔵安定性が不足するおそれがある。また、融着により薄く均一な被膜を形成することが困難になるおそれがある。更に、インクジェットインク中の他の成分との相溶性が低下するおそれがある。なお、平均粒子径は、(b)第二の重合体の分子量を調整することや乳化剤量を調整することによって調節することができる。
(b)第二の重合体の重量平均分子量は、1万〜20万であることが好ましく、2万〜15万であることが更に好ましく、3万〜10万であることが特に好ましく、3万〜7万であることが最も好ましい。このように、(b)第二の重合体は、比較的低分子量であることが好ましい。(b)第二の重合体の重量平均分子量は低い方が、インク乾燥時に、系の粘度の上昇が抑えられ、印字物表面の平滑性が発現することから、光沢性が向上する。上記重量平均分子量が1万未満であると、造膜後の重合体の強度が十分ではなく、耐擦性が低下するおそれがある。一方、20万超であると、インク粘度が高くなり光沢性または印字安定性が低下するおそれがある。なお、重量平均分子量は、重合開始剤種類の量と種類を適宜選択することよって調整することができ、または、(d)連鎖移動剤を使用することなどによって調整することができる。
[1−3]その他の重合体:
本実施形態のインクジェットインク用ポリマー組成物は、(a)第一の重合体及び(b)第二の重合体以外に、その他の重合体を含有することもできる。その他の重合体としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
[2]インクジェットインク:
本発明のインクジェットインクの一実施形態は、本発明のインクジェットインク用ポリマー組成物と、染料及び顔料よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、水と、を含むものである。
このように本発明のインクジェットインク用ポリマー組成物を含むことによって、皮膜透明性、皮膜形成性、耐水性、顔料粒子の結着性が優れるため、光沢性、印字濃度、耐擦性、及び耐水性が良好であり、印字品質に優れる。また、水系エマルジョン中での良好な分散安定性を有するため印字安定性に優れる。
本実施形態のインクジェットインクに含まれるインクジェットインク用ポリマー組成物の含有割合は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.3〜10質量%であることが更に好ましく、0.5〜5質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が0.1質量%未満であると、十分な印字品質が得られないおそれがある。一方、20質量%超であると、印字安定性が低下するおそれがある。
本実施形態のインクジェットインクに含まれる染料としては、酸性染料、直接染料、塩基性染料等の水溶性染料を使用することができる。具体的には、C.I.ダイレクトイエロー −12、−26、−86、−87、−130、−142C.I.ダイレクトレッド −13、−17、−23、−31、−62、−79、−81、−240、−242、−243C.I.ダイレクトブルー −78、−86、−90、−199C.I.ダイレクトブラック −19、−22、−38、−154、−168C.I.アシッドイエロー −23、−25C.I.アシッドレッド −37、−52、−254、−289C.I.アシッドブルー −9、−254C.I.アシッドブラック −52、−172、−208C.I.フードブラック −2等を挙げることができる。これらの中でも、水溶性という観点から水溶性染料が好ましい。
インクジェットインク中の染料の含有割合は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.3〜10質量%であることが更に好ましい。染料の含有割合が0.1質量%未満であると、十分な印字濃度が得られないおそれがある。一方、20質量%超であると、インクの印字安定性が低下するおそれがある。
本実施形態のインクジェットインクに含まれる顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料などの多環式顔料や、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、蛍光顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラックなどが挙げられる。
顔料の市販品としては、カーボンブラックとして、全て商品名で、三菱化学社製のNo.2300、No.900、HCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B、コロンビア社製のRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700などが、キャボット社製のRegal 400R、同330R、同660R、Mogul L、同700、Monarch 800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400、デグッサ社製のColor Black FW1、同FW2V、同FW18、同FW200、Color Black S150,同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同140U、Special Black 6、同5、同4A、同4等を挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を使用してもよい。
また、インクジェットインクのうち、イエローインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185などを挙げることができる。これらの中でも、C.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
インクジェットインクのうち、マゼンタインク及びライトマゼンタインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド、5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、15:1、112、122、123、168、184、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19などを挙げることができる。これらの中でも、C.I.ピグメントレッド122、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
インクジェットインクのうち、シアンインク及びライトシアンインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60、C.I.バットブルー4、60等を挙げることができる。これらの中でも、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらの顔料は、単独でまたは2種以上を使用することができる。
本実施形態のインクジェットインクに含まれる顔料は、公知のアニオン系、カチオン系、またはノニオン系の分散剤によって分散された状態で使用されることが好ましいが、その表面に親水性基を有することによって水に自己分散が可能である自己分散顔料であってもよい。この自己分散顔料が有する親水性基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ノニオン基などが挙げられる。
インクジェットインク中の顔料の含有割合は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることが更に好ましい。顔料の含有割合が0.1質量%未満であると、印字濃度が十分でなくなるおそれがある。一方、20質量%超であると、インクジェットインク中に分散する。
顔料の平均粒子径は、30〜300nmであることが好ましく、50〜200nmであることが更に好ましい。顔料の平均粒子径が30nm未満であると、耐光性が低下するおそれがある。一方、300nm超であると、インクの保存安定性が低下するおそれがある。
本実施形態のインクジェットインクに含まれる水の含有割合は、インクジェットインクが、インクジェット印刷に際して、適正な粘度及び表面張力を有するような割合であることが好ましい。具体的には、インクジェットインクの粘度は、25℃で、15×10−3Pa・s以下であることが好ましく、10×10−3Pa・s以下であることが更に好ましい。一方、15×10−3Pa・s超であると、印字安定性が低下するおそれがある。ここで、本明細書において、粘度とは、E型粘度計を用いて、25℃の条件にて測定した値である。
また、インクジェットインクの表面張力は、25℃で、20〜70ダイン/cmであることが好ましく、25〜60ダイン/cmであることが更に好ましく、30〜40ダイン/cmであることが特に好ましい。上記表面張力が20ダイン/cm未満であると、泡立ち等により印字安定性が低下するおそれがある。一方、70ダイン/cm超であると、基材に印字した場合に、はじきが生じ易く、印字品質が低下するおそれがある。ここで、本明細書において、表面張力とは、表面張力計(協和界面科学株式会社製の「CBVP−Z」)を用いて、25℃の条件にて測定した値である。
本実施形態のインクジェットインクは、本発明のインクジェットインク用ポリマー組成物、染料及び顔料よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物、及び水以外に、公知の添加剤を添加することもできる。この添加剤としては、例えば、分散剤、浸透剤、多価アルコールなどの湿潤剤、消泡剤、各種界面活性剤などの表面張力調整剤、キレート剤、酸素吸収剤などを挙げることができる。
分散剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩などのアニオン系界面活性剤、脂肪族アミン、4級アンモニウム塩、などのカチオン系界面活性剤、ベタイン型化合物などの両性界面活性剤、ポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル型などのノニオン系界面活性剤、セルロース系高分子、リグニンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物塩、スチレン−マレイン酸共重合物塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
浸透剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトール類、アセチレンアルコ−ル及びその誘導体などの多価アルコールエーテル類、アルコール類、アセテート類、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、トリエタノールアミンなどの含窒素化合物類などが挙げられる。
これらの中でも、炭素数が5〜10のアルキル基を有するアルコール化合物であることが好ましい。具体的には、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどが挙げられる。なお、これら化合物のアルキル基は直鎖でも分岐していても良い。これらのアルコール化合物の中でも、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルが好ましい。なお、これらアルコール化合物は、単独でまたは2種以上を使用することもできる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例及び比較例中の各種の評価は、下記の方法により行った。
[平均粒子径]
大塚電子社製の粒子径測定装置「hotal PAR−III(商品名)」を用いて測定する。なお、表1、2中、「粒子径(nm)」と示す。
[重量平均分子量]
測定装置として「SC8010(GPC)」(東ソー社製)、カラムとして有機溶媒系GPCカラム「G4000HXL(商品名)」(東ソー社製)、検出器として示差屈折率計を用い、温度40℃、溶媒をテトラヒドロフラン、流速を1,000μl/分として測定する。なお、表1、2中、「Mw」と示す。
[水素添加率]
重合体を四塩化炭素溶媒に溶解し、270MHZ、H−NMRスペクトルから測定する。なお、表1中、「水添率(%)」と示す。
[スルホン酸(塩)基の含有量]
スルホン酸(塩)の含有量は、(a)第一の重合体の20%水溶液または水分散液を調製した後、透析膜(半井化学薬品社製、Cellulose Diolyzer Tubing−VT351)を用いて、低分子物を除去して精製物を得る。この精製物を陽イオン交換樹脂(オルガノ社製、アンバーライトIR−118(H))を用いてイオン交換し、完全に酸型にしたものを、1/2モル/gのNaOH水溶液を用いて滴定により測定する。
[光沢性]
まず、調製したインクジェットインクをセイコーエプソン社製のインクジェットプリンタ「EM930」(商品名)のインクカートリッジに充填し、セイコーエプソン社製の写真用紙(PM写真用紙(光沢紙))に印字し、印字物を得る。その後、この印字物の印字部分(以下、「印字層」と記す場合がある)について光沢計「Micro−Haze Plus(商品名)」(BYK−Gardner社製)を用いて、20度光沢を測定する。評価基準は、光沢値が120を超える場合を「◎」とし、光沢値が110〜120である場合を「○」とし、光沢値が100〜110未満である場合を「△」とし、光沢値が100未満である場合を「×」とする。
[印字濃度]
上記[光沢性]で得られた印字物について、マクベス濃度計を用いて印字部分の光学濃度(OD値)を測定する。
[耐擦性]
Rotary Abrasinon Tester(東洋精機社製)を用いて、上記[光沢性]で得られた印字物の表面に、PM写真用紙(商品名)(セイコーエプソン社製)をその裏面が接するように載置するとともに300gの荷重をかける。この状態で、印字物を20rpmで20回転させ、印字物表面の傷の付き具合を評価する。評価基準は、印字層に傷及び印字層の剥離がほとんどない場合を「○」とし、印字層に傷又は印字層の剥離が一部ある場合を「△」とし、印字層に傷又は印字層の剥離が大きくある場合を「×」とする。
[耐水性]
上記[光沢性]で得られた印字物を10分間、水中に浸漬する。浸漬後、室温で24時間、乾燥する。浸漬前の印字物と乾燥後の印字物のOD値を上記[印字濃度]の評価と同様にして測定し、乾燥後のOD値と浸漬前のOD値との比(RO)を算出する。評価基準は、ROが0.95以上である場合を「○」とし、ROが0.9以上0.95未満である場合を「△」とし、ROが0.9未満である場合を「×」とする。
[印字安定性]
セイコーエプソン社製のインクジェットプリンター「EM930(商品名)」を用いて「PM写真用紙(商品名)」(セイコーエプソン社製)に、12cm×20cmの大きさで、調製したインクジェットインクをベタ印字する。このベタ印字を100枚連続して行う。評価基準は、100枚のうちの、インクのかすれ及び印字不良があるものが2枚以下である場合を「○」とし、100枚のうちの、インクのかすれ及び印字不良があるものが3枚以上7枚以下である場合を「△」とし、100枚のうちの、インクのかすれ及び印字不良があるものが8枚以上である場合を「×」とする。
(合成例1)
(1)まず、ガラス製反応容器にジオキサン500gを入れ、これに無水硫酸47.1gを内温を25℃に保ちながら添加し、2時間攪拌して、無水硫酸−ジオキサン錯体を得た。(2)次に、別のガラス製反応容器に、表1に示す組成により合成したイソプレン−スチレン共重合の固形分量100gをジオキサン400gに溶解させて溶解物を得た。この溶解物中に上記(1)で得られた無水硫酸−ジオキサン錯体の全量を、内温を25℃に保ちながら2時間撹拌しつつ添加してスルホン化溶液を得た。その後、別のフラスコに、水500g、水酸化ナトリウム23.6gを入れて水酸化ナトリウム水溶液を得た。この水溶液に上記スルホン化溶液の全量を、内温を50℃に保ちながら攪拌しつつ添加した。添加後1時間攪拌した後、1000gの水を加え、全溶剤及び水の一部を共沸により除去して(a)第一の重合体を含む水溶液を得た。この水溶液の固形分濃度は、15%であった。
Figure 2009114416
(合成例2)
(1)まず、ガラス製反応容器にジオキサン500gを入れ、これに無水硫酸14.8gを、内温を25℃に保ちながら添加し、2時間攪拌して、無水硫酸−ジオキサン錯体を得た。(2)次に、別のガラス製反応容器に、表1に示す組成により合成したブタジエン−スチレン共重合体の固形分量100gをジオキサン400gに溶解させて溶解物を得た。この溶解物中に上記(1)で得られた無水硫酸−ジオキサン錯体の全量を、内温を25℃に保ちながら2時間撹拌しつつ添加してスルホン化溶液を得た。その後、別のフラスコに、水500g、水酸化ナトリウム7.4gを入れて水酸化ナトリウム水溶液を得た。この水溶液に、上記スルホン化溶液の全量を、内温を50℃に保ちながら攪拌しつつ添加した。添加後1時間攪拌した後、1000gの水を加え、全溶剤及び水の一部を共沸により除去して(a)第一の重合体を含む水系エマルジョン(再乳化物)を得た。この水系エマルジョンの固形分濃度は、15%であった。
(合成例3)
(1)まず、ガラス製反応容器に1,2−ジクロルエタン500gを入れ、これに無水硫酸14.8gを内温を25℃に保ちながら添加し、2時間攪拌して、無水硫酸−ジオキサン錯体を得た。(2)次に、別のガラス製反応容器に、表1に示す組成により合成したブタジエン−スチレン共重合体の水素添加物の固形分量100gを1,2−ジクロルエタン400gに溶解させて溶解物を得た。この溶解物中に上記(1)で得られた無水硫酸−ジオキサン錯体の全量を、内温を25℃に保ちながら2時間撹拌しつつ添加してスルホン化溶液を得た。その後、別のフラスコに、水500g、水酸化ナトリウム7.4gを入れて水酸化ナトリウム水溶液を得た。この水溶液に、上記スルホン化溶液の全量を、内温を50℃に保ちながら攪拌しつつ添加した。添加後1時間攪拌した後、1000gの水を加え、全溶剤及び水の一部を共沸により除去して(a)第一の重合体を含む水系エマルジョン(再乳化物)を得た。この水系エマルジョンの固形分濃度は、15%であった。
(合成例4)
(1)まず、ガラス製反応容器に1,2−ジクロルエタン500gを入れ、これに無水硫酸11.8gを内温を25℃に保ちながら添加し、2時間攪拌して、無水硫酸−ジオキサン錯体を得た。(2)次に、別のガラス製反応容器に、表1に示す組成により合成したイソプレン−スチレン共重合体の水素添加物の固形分量100gを1,2−ジクロルエタン400gに溶解させて溶解物を得た。この溶解物中に上記(1)で得られた無水硫酸−ジオキサン錯体の全量を、内温を25℃に保ちながら2時間撹拌しつつ添加してスルホン化溶液を得た。その後、別のフラスコに、水500g、水酸化ナトリウム7.4gを入れて水酸化ナトリウム水溶液を得た。この水溶液に、上記スルホン化溶液の全量を、内温を50℃に保ちながら攪拌しつつ添加した。添加後1時間攪拌した後、1000gの水を加え、全溶剤及び水の一部を共沸により除去して(a)第一の重合体を含む水系エマルジョン(再乳化物)を得た。この水系エマルジョンの固形分濃度は、15%であった。
なお、表1中、IPはイソプレンを示し、BDはブタジエンを示す。また、表1中、「ST/IPランダム共重合体のIPユニットのスルホン化物」は、スチレンに由来する構造単位及びイソプレンに由来する構造単位からなるランダム共重合体の、主としてイソプレンに由来する構造単位がスルホン化されたものを示し、「ST/BDブロック共重合体のBDユニットのスルホン化物」は、スチレンに由来する構造単位及びブタジエンに由来する構造単位からなるブロック共重合体の、主としてブタジエンに由来する構造単位がスルホン化されたものを示し、「ST/BDブロック共重合体の水添物のSTユニットのスルホン化物」は、スチレンに由来する構造単位及びブタジエンに由来する構造単位からなるブロック共重合体に水素添加した水素添加物の、スチレンに由来する構造単位がスルホン化されたものを示し、「ST/IPランダム共重合体の水添物のSTユニットのスルホン化物」は、スチレンに由来する構造単位及びイソプレンに由来する構造単位からなるランダム共重合体に水素添加した水素添加物の、スチレンに由来する構造単位がスルホン化されたものを示す。表1の「水溶液」は、(a)第一の重合体が水に溶解している場合を示し、「水分散液」は、(a)第一の重合体が水に溶解せずに分散して存在している場合を示す。
(合成例5)
500mLビーカーに、水200g、アクリル酸2g、硫酸エステル系の反応性乳化剤(「アクアロンKH−10」(商品名)、第一工業製薬社製)1g、スチレン(表1中、「ST」と示す)50g、ブチルアクリレート(表1中、「BA」と示す)50g、及び、連鎖移動剤として2−エチルヘキシルチオグリコレート2gを仕込み、100rpmで10分間撹拌してモノマー乳化液を調製した。1Lセパラブルフラスコに、水200gを仕込み、180rpmで撹拌しつつ60℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム2gを添加して70℃に昇温した。重合温度を75℃に保持した状態で3時間かけて、モノマー乳化液を逐次添加して重合を行った。その後、80℃に昇温して1時間熟成させ、冷却後、室温時のpHが7.0となるように10%アンモニア水溶液を添加した。その後、固形分濃度が15%となるように水で希釈して、(b)第二の重合体を含有するポリマーエマルジョンを調製した。
このポリマーエマルジョン中の(b)第二の重合体は、平均粒子径及び重量平均分子量(Mw)を、上述した[平均粒子径]及び[重量平均分子量]の評価方法に従って測定した。評価結果を表2に示す。表2中、2−EHAは2−エチルヘキシルアクリレートを示し、MMAはメチルメタクリレートを示し、CHMAはシクロヘキシルメタクリレートを示し、EAはエチルアクリレート示し、アクアロンKH−10は第一工業製薬社製の反応性乳化剤「アクアロンKH−10」(商品名)を示す。
Figure 2009114416
(合成例6〜10)
表2に示す配合量とした以外は、合成例5と同様にして(b)第二の重合体を含有するポリマーエマルジョンを調製した。ポリマーエマルジョン中の(b)第二の重合体の平均粒子径及び重量平均分子量(Mw)を、上述した[平均粒子径]及び[重量平均分子量]の評価方法に従って測定した。評価結果を表2に示す。
(実施例1)
(インクジェットインクの調製)
まず、顔料(「カーボンブラック:MA100」(三菱化学社製))15g、顔料分散剤として分散樹脂(スチレン−アクリル酸共重合体)7.5g、及び水77.5gを混合して混合物を得、得られた混合物をジルコニアビーズ(直径0.3mm、混合物の1.5倍量を使用する)とともにダイヤモンドファインミル(三菱重工業社製)を用いて2時間撹拌して分散させた。その後、ジルコニアビーズを取り除き、顔料としてカーボンブラックを含むスラリー(顔料スラリー)を得た。
次に、表3に示すように、顔料スラリー15g、(a)第一の重合体の濃度を15%に調整した合成例2の(a)第一の重合体を含む水分散液3g、(b)第二の重合体の濃度を15%に調整した合成例5の(a)第二の重合体を含む水分散液3g、トリエチレングリコールモノブチルエーテル10g、及び、グリセリン10g、及び、水59gを常温で20分間攪拌して混合した。その後、10μmのメンブランフィルターでろ過し、インクジェットインクを調製した。
Figure 2009114416
調製したインクジェットインクについて、上述した[光沢性]、[印字濃度]、[耐擦性]、[耐水性]、及び[印字安定性]の各評価を行った。評価結果を表4に示す。
Figure 2009114416
(実施例2〜10、比較例1〜8)
表4に示す(a)第一の重合体及び(b)第二の重合体を使用した以外は、実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。調製したインクジェットインクについて、上述した[光沢性]、[印字濃度]、[耐擦性]、[耐水性]、及び[印字安定性]の各評価を行った。評価結果を表4に示す。
表4から明らかなように、実施例1〜9のインクジェットインクは、比較例1〜3のインクジェットインクに比べて、光沢性、印字濃度、耐擦性、及び耐水性が良好であるため印字品質に優れ、また、印字安定性に優れていることが確認できた。
比較例1のインクジェットインクは、(a)第一の重合体及び(b)第二の重合体のいずれも含んでいないため、耐擦性及び耐水性が良好でなく、比較例2のインクジェットインクは、(b)第二の重合体を含んでいないため、耐擦性及び耐水性が良好でなく、比較例3のインクジェットインクは、(a)第一の重合体を含んでいないため、耐擦性及び暗示安定性が良好でない。
本発明のインクジェットインク用ポリマー組成物は、インクジェット方式によるプリンターなどのインクの材料として好適に用いることができる。
本発明のインクジェットインクは、インクジェット方式によるプリンターなどのインクとして好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. (a)ジエン系化合物に由来する構造単位を含有するジエン系重合体をスルホン化して得られる第一の重合体、及び、
    (b)エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含有するモノマー成分を乳化重合させて得られる第二の重合体、を含有するインクジェットインク用ポリマー組成物。
  2. 前記(a)第一の重合体が、前記ジエン系重合体を水素添加して水素添加物を得、得られた前記水素添加物をスルホン化して得られるものである請求項1に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
  3. 前記ジエン系重合体が、芳香族化合物に由来する構造単位を更に含有する請求項1または2に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
  4. 前記(a)第一の重合体が乳化分散した水系エマルジョンと、前記(b)第二の重合体と、を混合して得られる請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
  5. 前記(b)第二の重合体が、(c)連鎖移動剤の存在下で重合して得られるものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
  6. 前記(b)第二の重合体が、(d)親水性基、疎水基、及びラジカル反応性基を含有する反応性乳化剤の存在下で乳化重合して得られるものである請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
  7. 前記エチレン性不飽和結合を有するモノマーが、(メタ)アクリル系モノマー、及びスチレンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
  8. 前記水系エマルジョン中に乳化分散して存在している前記(a)第一の重合体の平均粒子径が10〜200nmである請求項4〜7のいずれか一項に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
  9. 前記(a)第一の重合体と、前記(b)第二の重合体が乳化分散した水系エマルジョンと、を混合して得られ、前記水系エマルジョン中に乳化分散して存在している前記(b)第二の重合体の平均粒子径が10〜100nmである請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェットインク用ポリマー組成物と、
    染料及び顔料よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
    水と、を含むインクジェットインク。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010280801A (ja) * 2009-06-04 2010-12-16 Konica Minolta Holdings Inc 水性インクジェットインクおよびインクジェット記録方法

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