JP2009112880A - ハニカム構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】気孔径のバラツキが小さく、高い強度を有するハニカム構造体を製造することができるハニカム構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも炭化ケイ素粉末とバインダとを含む原料組成物を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を脱脂処理することによりハニカム脱脂体を作製し、さらに、上記ハニカム脱脂体を焼成処理することによりハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、上記脱脂処理は、脱脂温度250〜390℃、雰囲気中のO濃度5〜13体積%で行うことを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中に含有されるスス等のパティキュレートが環境や人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。
そこで、排ガス中のパティキュレートを捕集して、排ガスを浄化するフィルタとして多孔質セラミックからなるハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが種々提案されている。
そして、ハニカム構造体としては、高温耐熱性に優れるとの点から炭化ケイ素からなるハニカム構造体が提案されている。
従来、このような炭化ケイ素からなるハニカム構造体を製造する際には、例えば、まず、炭化ケイ素粉末とバインダと分散媒液等とを混合して原料組成物を調製する。そして、この原料組成物を連続的に押出成形し、押し出された成形体を所定の長さに切断することにより、角柱形状のハニカム成形体を作製する。
次に、得られたハニカム成形体を、マイクロ波乾燥や熱風乾燥を利用して乾燥させ、その後、所定のセルに目封じを施し、セルのいずれかの端部が封止された状態とした後、脱脂処理及び焼成処理を施し、ハニカム焼成体を製造する。
この後、ハニカム焼成体の側面にシール材ペーストを塗布し、ハニカム焼成体同士を接着させることにより、シール材層(接着材層)を介してハニカム焼成体が多数結束した状態のハニカム焼成体の集合体を作製する。次に、得られたハニカム焼成体の集合体に、切削機等を用いて円柱、楕円柱等の所定の形状に切削加工を施してハニカムブロックを形成し、最後に、ハニカムブロックの外周にシール材ペーストを塗布してシール材層(コート層)形成することにより、ハニカム構造体の製造を終了する。
このようにハニカム構造体の製造方法では、押出成形によりハニカム成形体を作製した後、ハニカム成形体に脱脂処理を施すこととなる。
このような脱脂処理としては、酸素含有率1〜10%の気流中で行なう方法や、空気雰囲気中で行なう方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開平10−167854号公報 特開2002−097076号公報
このような脱脂処理では、バインダや分散媒液等が分解、除去されることとなる。しかしながら、この脱脂処理において、脱脂処理を完全に進行させ、ハニカム成形体中の有機成分を完全に分解、除去してしまうと、脱脂処理されたハニカム成形体(ハニカム脱脂体)は、強度が低下し、自身の形状を保持することができなくなってしまい、焼成処理して得たハニカム焼成体にピンホール、クラック等が生じる原因となってしまう。また、脱脂処理において、ハニカム成形体中の有機成分を完全に分解除去してしまうと、ハニカム脱脂体の熱伝導性が低下し、脱脂処理後の焼成処理において、熱衝撃によりクラックが発生することがあった。
本発明者等は、上述した課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、所定の条件で脱脂処理を行なうことにより、ハニカム脱脂体の強度及び熱伝導性を確保することができることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明のハニカム構造体の製造方法は、少なくとも炭化ケイ素粉末とバインダとを含む原料組成物を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を脱脂処理することによりハニカム脱脂体を作製し、さらに、上記ハニカム脱脂体を焼成処理することによりハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
上記脱脂処理は、脱脂温度250〜390℃、雰囲気中のO濃度5〜13体積%で行うことを特徴とする。
上記ハニカム構造体の製造方法では、上記ハニカム脱脂体中のカーボンの含有量を0.5〜2.0重量%とすることが望ましい。
また、上記ハニカム構造体の製造方法では、上記ハニカム脱脂体中のSiOの含有量を1.9〜3.4重量%とすることが望ましい。
また、上記ハニカム構造体の製造方法では、上記ハニカム脱脂体中のSiOとカーボンの重量比を1.0を超え5.0以下とすることが望ましい。
また、上記ハニカム構造体の製造方法において、上記原料組成物中の炭素源材料の含有量を8〜18重量%とすることが望ましい。
また、上記ハニカム構造体の製造方法において、上記バインダは、250〜390℃で分解する化合物であることが望ましい。
本発明のハニカム構造体の製造方法では、脱脂処理を上記の条件で行なっているため、脱脂処理後、ハニカム脱脂体中にある程度、カーボンを残すことができ、上記ハニカム脱脂体は、所定の形状を維持することができる。そして、このようなハニカム脱脂体は、カーボンの存在により高い熱伝導性が確保され、焼成処理時において、炭化ケイ素の焼結が確実に進行するため、圧力損失が低く、高い強度を有するハニカム構造体を製造することができる。
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法について、工程順に説明する。
本発明のハニカム構造体の製造方法は、少なくとも炭化ケイ素粉末とバインダとを含む原料組成物を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を脱脂処理することによりハニカム脱脂体を作製し、さらに、上記ハニカム脱脂体を焼成処理することによりハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
上記脱脂処理は、脱脂温度250〜390℃、雰囲気中のO濃度5〜13体積%で行うことを特徴とする。
なお、本発明において、柱状とは、円柱状や角柱状に限定されず、その底面の形状は任意の形状であればよい。
ここでは、まず、図1、2に示したような、ハニカム焼成体110がシール材層(接着材層)101を介して複数個結束されてハニカムブロック103を構成し、さらに、このハニカムブロック103の外周にシール材層(コート層)102が形成されたハニカム構造体を製造する場合を例に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
ただし、本発明の製造方法で製造するハニカム構造体は、このような構成のハニカム構造体に限定されるわけではない。
図1は、本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2(a)は、図1に示したハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。
ハニカム構造体100では、図1に示すようにハニカム焼成体110がシール材層(接着材層)101を介して複数個結束されてハニカムブロック103を構成し、さらに、このハニカムブロック103の外周にシール材層(コート層)102が形成されている。
また、ハニカム焼成体110は、図2に示すように、長手方向(図2中、矢印aの方向)に多数のセル111が並設され、セル111同士を隔てるセル壁113がフィルタとして機能するようになっている。
即ち、ハニカム焼成体110に形成されたセル111は、図2(b)に示すように、排ガスの入口側又は出口側の端部のいずれかが封止材112により目封じされ、一のセル111に流入した排ガスは、必ずセル111を隔てるセル壁113を通過した後、他のセル111から流出するようになっており、排ガスがこのセル壁113を通過する際、パティキュレートがセル壁113部分で捕捉され、排ガスが浄化される。
本発明のハニカム構造体の製造方法では、まず、少なくとも炭化ケイ素粉末とバインダとを含む原料組成物を調製する。
上記炭化ケイ素粉末としては特に限定されないが、後の焼成処理を経て製造されたハニカム焼成体の大きさが、ハニカム脱脂体の大きさに比べて小さくなる場合が少ないものが望ましく、例えば、平均粒子径(D50)が0.3〜50μmの炭化ケイ素粉末100重量部と、平均粒子径(D50)が0.1〜1.0μmの炭化ケイ素粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが望ましい。
ハニカム構造体の気孔径等を調整するためには、焼成温度を調整する必要があるが、炭化ケイ素粉末の粒子径を調整することにより、気孔径を調整することができる。
なお、本明細書において、平均粒子径(D50)とは、体積基準のメジアン径のことをいう。
ここで、粒子径の具体的な測定法について簡単に説明する。粒子の大きさ(粒子径)は、一般的に、多数の測定結果を積算することにより、粒子径ごとの存在比率の分布として表される。この粒子径ごとの存在比率の分布を粒度分布という。粒度分布の測定法としては、例えば、体積基準での測定を原理とするレーザー回折・散乱法等を採用することができる。なお、このような方法では、粒子の形状を球状と仮定して粒度分布を測定する。そして、測定した粒度分布を累積分布に変換して、上記メジアン径(粉体の集合をある粒子径を中心に2つの群に分けたとき、粒子径が大きい側の群に存在する粒子の量と粒子径が小さい側に存在する粒子の量とが等量になる径)が算出される。
また、上記炭化ケイ素粉末の純度は、94〜99.5重量%であることが望ましい。
上記炭化ケイ素粉末の純度が上記範囲にあれば、炭化ケイ素焼結体を製造する際に焼結性に優れるのに対し、その純度が94重量%未満では、炭化ケイ素の焼結の進行が不純物により阻害されることがあり、99.5重量%を超えると、焼結性向上の効果はほとんど向上せず、製造したハニカム構造体の強度、耐久性等の特性も殆どかわらないにも関わらず、このような高純度の炭化ケイ素粉末とするには高コストを要するからである。
なお、本明細書において、炭化ケイ素粉末の純度とは、炭化ケイ素粉末中に炭化ケイ素分が占める重量%をいう。
通常、炭化ケイ素粉末と称しても、その粉末中には、炭化ケイ素粉末を製造する工程や保管する工程で、不可避的に粉末中に混在する不純物(不可避的不純物)が含まれることとなるからである。
また、上記炭化ケイ素粉末は、α型炭化ケイ素粉末であってもよいし、β型炭化ケイ素粉末であってもよいし、α型炭化ケイ素粉末とβ型炭化ケイ素粉末との混合物であってもよいが、α型炭化ケイ素粉末が望ましい。
α型炭化ケイ素粉末は、β型炭化ケイ素粉末に比べて安価であり、また、α型炭化ケイ素粉末を使用した場合のほうが、気孔径の制御がしやすく、均一な気孔径を有する炭化ケイ素焼結体を製造するのに適しているからである。
上記バインダは、250〜390℃で分解する化合物であることが望ましい。
このような化合物であれば、脱脂処理において確実に分解されることとなるからである。
上記バインダの具体例としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース類(分解温度:350〜370℃)、ポリエチレングリコール(分解温度:200〜250℃)等が挙げられる。これらのなかでは、セルロース類がより望ましい。保水力が高いため、成形処理時に原料組成物(原料組成物)から水が滲みだすことが少ないからである。
上記バインダの配合量は、通常、炭化ケイ素粉末100重量部に対して、1〜10重量部が望ましい。
上記原料組成物には、さらに、可塑剤、潤滑剤等が含まれていてもよい。
上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、グリセリン等が挙げられる。
また、上記潤滑剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。上記潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
これらの可塑剤や潤滑剤もまた、250〜390℃で分解するものを用いることが望ましい。上記可塑剤や潤滑剤も後述する炭素源材料となりうるからである。
上記原料組成物の具体的な調製方法としては、例えば、まず平均粒子径(D50)の異なる2種類の炭化ケイ素粉末とバインダとを乾式混合して混合粉末を調製し、これとは別に可塑剤、潤滑剤、水等を混合して混合液体を調製し、続いて、上記混合粉末と上記混合液体とを湿式混合機を用いて混合する方法等を用いることできる。
また、上記原料組成物には、必要に応じて、造孔剤が配合されていてもよい。
上記造孔剤としては、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーン、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられる。
また、ここで調製した原料組成物は、その温度が28℃以下であることが望ましい。温度が高すぎると、バインダがゲル化してしまうことがあるからである。
また、上記原料組成物中の水分の含有量は8〜20重量%であることが望ましい。
また、上記原料組成物中の炭素源材料の含有量は8〜18重量%であることが望ましい。
上記炭素源材料の含有量が8重量%未満では、後の脱脂処理を経て得たハニカム脱脂体の強度が不充分で、ハニカム脱脂体として所定の形状を維持することができず、後の焼成処理を経て得たハニカム焼成体において、ピンホール、クラック等が発生する場合があり、このようなピンホールやクラックの存在は、強度の低下や、気孔径のバラツキに繋がることがある。また、焼成処理において、気孔径が大きくならない場合がある。
一方、上記炭素源材料の含有量が18重量%を超えると、脱脂処理終了後、ハニカム脱脂体中に残留するカーボン量(以下、残炭量ともいう)が多くなりすぎ、炭化ケイ素の焼結が阻害され、その結果、気孔径のバラツキが生じる場合がある。
なお、上記炭素源材料とは、脱脂処理において熱分解され、カーボンとして残留しうる上記原料組成物中の配合物のことをいい、具体的には、バインダ、可塑剤、潤滑剤等が該当する。
次に、この原料組成物を押出成形法等により押出成形する。そして、押出成形により得られた成形体を切断機で切断することにより、図2(a)に示した柱状のハニカム焼成体110と同形状で、その端部が目封じされていない形状のハニカム成形体を作製する。
次に、上記ハニカム成形体に、必要に応じて、各セルのいずれか一方の端部に封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。
具体的には、セラミックフィルタとして機能するハニカム構造体を製造する場合には、各セルのいずれか一方の端部を目封じする。
また、上記ハニカム成形体を目封じする前には、必要に応じて、乾燥処理を施してもよく、この場合、上記乾燥処理は、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、減圧乾燥機、誘電乾燥機、凍結乾燥機等を用いて行えばよい。
上記封止材ペーストとしては特に限定されないが、後工程を経て形成される封止材の気孔率が30〜75%となるものが望ましく、例えば、上記原料組成物と同様のものを用いることができる。
上記封止材ペーストの充填は、必要に応じて行えばよく、上記封止材ペーストを充填した場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体をセラミックフィルタとして好適に使用することができ、上記封止材ペーストを充填しなかった場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体を触媒担持体として好適に使用することができる。
次に、ハニカム成形体に脱脂処理を施すことによりハニカム脱脂体を作製する。
上記脱脂処理は、脱脂温度250〜390℃、雰囲気中のO濃度5〜13体積%で行なう。
上記脱脂温度が、250℃未満では、ハニカム脱脂体中の残炭量が多くなりすぎ、後の焼成処理における炭化ケイ素の焼結の進行が阻害されることとなり、製造したハニカム焼成体は、気孔径にバラツキが生じ、また、強度に劣ることとなる。
一方、上記脱脂温度が390℃を超えると、残炭量が少なくなりすぎ、ハニカム脱脂体が所定の形状を維持できなくなる場合がある。また、残炭量が少なすぎると、ハニカム脱脂体の熱伝導性が低下するため、ハニカム脱脂体に焼成処理を施した際に、局所的にハニカム脱脂体の温度が上昇し、熱衝撃によりクラックが発生することがある。そして、このようなクラックが発生した場合、製造したハニカム焼成体において、強度が不充分となる。
上記脱脂温度は、250〜350℃がより望ましい。脱脂温度がこの範囲にあれば、より高い強度を有するハニカム構造体を製造することができるからである。
上記雰囲気中のO濃度が5体積%未満では、炭素源材料の分解、除去が進行しにくく、ハニカム脱脂体中の残炭量が多くなりすぎ、後の焼成処理における炭化ケイ素の焼結の進行が阻害されることとなり、焼成処理を経たハニカム焼成体は、気孔径が設計値(使用した炭化ケイ素粉末の平均粒子径及び焼成条件から予想される気孔径)まで大きくならず、また、ネック(炭化ケイ素粒子の結合部)が形成されず、強度に劣ることとなる。
一方、上記雰囲気中のO濃度が13体積%を超えると、ハニカム脱脂体中に残留するカーボン量が少なくなり、ハニカム脱脂体の強度が低下し、形状の維持や取り扱いが困難となるからである。
このような脱脂処理により作製されたハニカム脱脂体において、ハニカム脱脂体中に含まれるカーボンの含有量(残炭量)は、0.5〜2.0重量%であることが望ましい。
上記残炭量が0.5重量%未満では、ハニカム脱脂体が所望の形状を維持することができない場合があり、また、製造したハニカム焼成体の強度が不充分となる場合がある。一方、2.0重量%を超えると、炭化ケイ素の焼結の進行が阻害され、ハニカム焼成体において、気孔径にバラツキが生じたり、圧力損失が大きくなったりする場合があるからである。
上記ハニカム脱脂体中の残炭量を調整するには、上述したように、原料組成物の組成(炭素原材料の含有量)を調整したり、脱脂条件(脱脂温度、雰囲気中のO濃度)を調整したりすることとなる。
また、上記ハニカム脱脂体において、ハニカム脱脂体は、1.9〜3.4重量%のSiOを含有することが望ましい。
本発明のハニカム構造体の製造方法は、既に説明しているように、ハニカム脱脂体を作製する際に所定の条件で脱脂処理を行なうことにより、カーボンを含有するハニカム脱脂体を作製する工程を有することに特徴がある。そして、このようなカーボンを含有するハニカム脱脂体を作製することは、上述した効果を享受することができる点で有用である。
しかしながら、カーボンを含有するハニカム脱脂体に焼成処理を施し、ハニカム焼成体を作製する場合、下記のような不都合が生じるおそれがある。
即ち、ハニカム脱脂体中に含有されるカーボンは、焼成処理の際に優れた効果を発揮する一方、焼成処理の際に、炭化ケイ素粉末同士の間に介在することにより、炭化ケイ素の焼結を阻害するとの不都合を生じるおそれがある。
そのため、ハニカム脱脂体中に含有されるカーボンは、焼成処理の際にはハニカム脱脂体の熱伝導性を向上させるとの役割を果たしつつ、最終的には、ハニカム脱脂体中から消失させることが望ましいのである。
そこで、本発明のハニカム構造体の製造方法では、ハニカム脱脂体中のカーボンを焼成処理において除去すべく、ハニカム脱脂体中に1.9〜3.4重量%のSiOを含有させることが望ましいのである。
上記ハニカム脱脂体がSiOを含有する場合、焼成処理において、SiOとカーボンとの間で下記反応式(1)に示す反応が進行し、ハニカム脱脂体中からカーボンが除去されることとなる。
Figure 2009112880
なお、上記反応式(1)に示した反応は、温度が高ければ高いほど右側(COガスを発生する側)に進行する。
従って、焼成処理の初期(雰囲気温度上昇期)においては、ハニカム脱脂体中にカーボンが残留しており、カーボンが存在していない場合に比べて、このカーボンの存在に起因してハニカム脱脂体は優れた熱伝導性を有することとなり、上記ハニカム脱脂体は、その一部が局所的に昇温することなく、全体の温度が上昇することとなり、熱衝撃によるクラックの発生を防止することができる。
一方、ハニカム脱脂体の温度が、所定の温度まで上昇すると、上記反応式(1)に示した反応の進行にともない、ハニカム脱脂体中のカーボンが、COガスとなって除去され、炭化ケイ素の焼結が確実に進行することとなる。
上記SiOの含有量が1.9重量%未満では、SiOの含有量が少なすぎて、ハニカム脱脂体中に含有されるカーボンを除去することができず、炭化ケイ素の焼結が均一に進行しにくくなり、その結果、ハニカム焼成体の気孔径にバラツキが生じたり、製造したハニカム構造体の圧力損失が大きくなったりする場合がある。一方、上記SiOの含有量が3.4重量%を超えると、炭化ケイ素の焼結が進行しすぎて、気孔径が大きくなり、その結果、ハニカム焼成体の強度が低下する場合がある。
なお、ハニカム脱脂体中のSiOの含有量を調整する方法としては、例えば、原料組成物中にSiO粉末を別途添加する方法や、所望量のSiOを不純物として含有する炭化ケイ素粉末を使用する方法等を用いることができる。
また、不純物としてSiOを多量に含有する炭化ケイ素粉末に、純化処理を施すことにより、含有するSiOの量を調整した炭化ケイ素粉末を使用する方法を用いてもよい。
なお、上記純化処理とは、炭化ケイ素粉末をHSO水溶液や、NaOH水溶液で洗浄することにより、SiOを除去する処理をいう。
また、炭化ケイ素粉末の製造では、通常、石油コークスとケイ石とを電気炉で焼いて炭化ケイ素のインゴットを作り、このインゴットを粉砕することにより所定の粒子径を有する炭化ケイ素粉末を製造している。ここで、粉砕時間を調整することによっても炭化ケイ素粉末中のSiO量を調整することができる。具体的には、粉砕時間を長くすることにより、SiO量を多くすることができる。
さらに、上記ハニカム脱脂体中のSiOとカーボンの重量比は、1.0を超え5.0以下であることが望ましい。
SiOとカーボンの重量比が1.0以下では、製造したハニカム構造体において、圧力損失が大きくなったり、気孔径にバラツキが生じたりする場合があり、一方、5.0を超えると、製造したハニカム焼成体において、強度が不充分となる場合がある。
次に、脱脂処理されたハニカム成形体に所定の条件(例えば、1400〜2300℃)で焼成処理を施すことにより、複数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設され、上記セルのいずれか一方の端部が封止された柱状のハニカム焼成体を製造する。
次に、ハニカム焼成体の側面に、シール材層(接着材層)となるシール材ペーストを均一な厚さで塗布し、このシール材ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返し、所定の大きさのハニカム焼成体の集合体を作製する。
上記シール材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機繊維及び/又は無機粒子とからなるもの等が挙げられる。
上記無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機バインダのなかでは、シリカゾルが望ましい。
上記有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
上記無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等からなるセラミックファイバ等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機繊維のなかでは、アルミナファイバが望ましい。
上記無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を挙げることができ、具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素からなる無機粉末等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化ケイ素が望ましい。
さらに、上記シール材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
上記バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等を挙げることができる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
次に、このハニカム焼成体の集合体を加熱してシール材ペーストを乾燥、固化させてシール材層(接着材層)とする。
次に、ダイヤモンドカッター等を用い、ハニカム焼成体がシール材層(接着材層)を介して複数個接着されたハニカム焼成体の集合体に切削加工を施し、円柱形状のハニカムブロックを作製する。
そして、ハニカムブロックの外周に上記シール材ペーストを用いてシール材層(コート層)を形成することで、ハニカム焼成体がシール材層(接着材層)を介して複数個接着された円柱形状のハニカムブロックの外周部にシール材層(コート層)が設けられたハニカム構造体を製造することができる。
なお、本発明の製造方法で製造するハニカム構造体の形状は、円柱形状に限定されず、角柱形状、楕円柱形状等、任意の柱状体であればよい。
その後、必要に応じて、ハニカム構造体に触媒を担持させる。上記触媒の担持は集合体を作製する前のハニカム焼成体に行ってもよい。
触媒を担持させる場合には、ハニカム構造体の表面に高い比表面積のアルミナ膜を形成し、このアルミナ膜の表面に助触媒、及び、白金等の触媒を付与することが望ましい。
上記ハニカム構造体の表面にアルミナ膜を形成する方法としては、例えば、Al(NO等のアルミニウムを含有する金属化合物の溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法、アルミナ粉末を含有する溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
上記アルミナ膜に助触媒を付与する方法としては、例えば、Ce(NO等の希土類元素等を含有する金属化合物の溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
上記アルミナ膜に触媒を付与する方法としては、例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液([Pt(NH(NO]HNO、白金濃度4.53重量%)等をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
また、予め、アルミナ粒子に触媒を付与して、触媒が付与されたアルミナ粉末を含有する溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法で触媒を付与してもよい。
ここまで、本発明のハニカム構造体の製造方法として、図1、2(a)に示したような複数のハニカム焼成体がシール材層(接着材層)を介して結束された構成を有するハニカム構造体(以下、集合型ハニカム構造体ともいう)の製造方法について説明したが、本発明の製造方法により製造するハニカム構造体は、円柱形状のセラミックブロックが1つのハニカム焼成体から構成されているハニカム構造体(以下、一体型ハニカム構造体ともいう)であってもよい。
一体型ハニカム構造体を製造する場合は、まず、押出成形により成形するハニカム成形体の大きさが、集合型ハニカム構造体を製造する場合に比べて大きい以外は、集合型ハニカム構造体を製造する場合と同様の方法を用いて、ハニカム成形体を作製する。
次に、集合型ハニカム構造体の製造と同様に、必要に応じて、乾燥処理や封止材ペーストの充填を行う。
その後、集合型ハニカム構造体の製造と同様の条件にて、ハニカム成形体に脱脂処理を施し、ハニカム脱脂体を作製する。
さらに、ハニカム脱脂体に焼成処理を施すことにより、ハニカム焼成体からなるハニカムブロックを作製し、必要に応じて、シール材層(コート層)の形成を行うことにより、一体型ハニカム構造体を製造することができる。また、上記一体型ハニカム構造体にも、上述した方法で触媒を担持させてもよい。
以上、説明した本発明のハニカム構造体の製造方法では、気孔径のバラツキが小さく、高い強度を有するハニカム構造体を製造することができる。
また、ここまでは主に、セラミックフィルタとして好適に使用することができるハニカム構造体を例に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明したが、本発明のハニカム構造体の製造方法においては、上述したように封止材ペーストを充填せずにハニカム構造体を製造してもよく、封止材でセルの端部を目封じしなかったハニカム構造体は、触媒担持体として好適に使用することができる。
以下に実施例を掲げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
平均粒子径10μmのα型炭化ケイ素粉末(粉末中のSiO含有量:1重量%)250kgと、平均粒子径0.5μmのα型炭化ケイ素粉末(粉末中のSiO含有量:4重量%)100kgと、有機バインダ(メチルセルロース/分解温度350℃)20kgとを混合し、混合粉末を調製した。
平均粒子径は、本実施例を含め全ての実施例及び比較例においてレーザー回折・散乱法を用いて測定した。
次に、別途、潤滑剤(日本油脂社製 ユニルーブ/分解温度230℃)12kgと、可塑剤(グリセリン/分解温度290℃)5kgと、水65kgとを混合して液体混合物を調製し、この液体混合物と混合粉末とを湿式混合機を用いて混合し、原料組成物を調製した。
次に、搬送装置を用いて、この原料組成物を押出成形機に搬送し、押出成形機の原料投入口に投入した。
そして、押出成形により、セルの端部が封止されていない以外は、図2(a)に示した形状と同様の形状の成形体を作製した。
次に、マイクロ波と熱風とを併用した乾燥機を用いて上記ハニカム成形体を乾燥させ、次に、上記原料組成物と同様の組成の封止材ペーストを所定のセルに充填した。
さらに、再び乾燥機を用いて乾燥させた後、封止材ペーストが充填されたハニカム成形体を、脱脂温度350℃、雰囲気中のO濃度9体積%、脱脂時間1.1時間の条件で脱脂することにより、ハニカム脱脂体を作製した。
本工程で作製したハニカム脱脂体は、脱脂体中のカーボン含有量は0.6重量%であり、脱脂体中のSiO含有量は2.5重量%であり、脱脂体中のSiOとカーボンの重量比は、4.17である。
なお、本工程で作製したハニカム脱脂体中のカーボン含有量は、燃焼容量法(JIS R 6124参照)により測定した。
即ち、ハニカム脱脂体の全重量を測定した後、ハニカム脱脂体1gを切り出し測定試料とした。次に、この試料中の遊離炭素を酸素気流中で燃焼させて二酸化炭素とし、これを酸素と共にビュレットに捕集して全ガスの体積を測定し、次に、二酸化炭素を吸収除去した後、残留ガスの体積を測定し、その体積の減少量から遊離炭素を定量した。その後、この定量値からハニカム脱脂体中のカーボン量を算出した。
また、ハニカム脱脂体中のSiO含有量は、中和滴定法(JIS R 6124参照)により測定した。
即ち、ハニカム脱脂体の全重量を測定した後、ハニカム脱脂体1gを切り出し測定試料とした。次に、この試料にふっ化水素酸(ふっ化カリウム含有)と塩酸とを加えて加熱し、遊離SiOをけいふっ化カリウムとして沈殿させ、これを熱水で溶解し、0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液で滴定してSiOを定量した。その後、この定量値からハニカム脱脂体中のSiO量を算出した。
続いて、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間で焼成を行うことにより、気孔率が40%、その大きさが34.3mm×34.3mm×150mm、セルの数(セル密度)が46.5個/cm、セル壁の厚さが0.25mmの炭化ケイ素焼結体からなるハニカム焼成体を製造した。
次に、平均繊維長20μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性のシール材ペーストを用いてハニカム焼成体を多数接着させ、さらに、120℃で乾燥させ、続いて、ダイヤモンドカッターを用いて切断することにより、シール材層(接着材層)の厚さ1mmの円柱状のハニカムブロックを作製した。
次に、無機繊維としてシリカ−アルミナファイバ(平均繊維長100μm、平均繊維径10μm)23.3重量%、無機粒子として平均粒子径0.3μmの炭化ケイ素粉末30.2重量%、無機バインダとしてシリカゾル(ゾル中のSiOの含有率:30重量%)7重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%及び水39重量%を混合、混練してシール材ペーストを調製した。
次に、上記シール材ペーストを用いて、ハニカムブロックの外周部に厚さ0.2mmのシール材ペースト層を形成した。そして、このシール材ペースト層を120℃で乾燥して、外周にシール材層(コート層)が形成された直径143.8mm×長さ150mmの円柱状のハニカム構造体を作製した。
(実施例2〜8、比較例1〜4)
表1に示した組成の原料組成物を使用し、脱脂温度及び雰囲気中のO濃度を表2に示す条件に変更して脱脂処理を行った以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を製造した。
Figure 2009112880
Figure 2009112880
(実施例9〜26)
原料組成物中の炭素源材料の含有量、ハニカム脱脂体中のカーボン含有量及びSiO含有量が表3、4に示す値となるように、原料の配合量、脱脂条件を変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を製造した。
Figure 2009112880
Figure 2009112880
実施例及び比較例において、ハニカム焼成体を作製した後、10個のハニカム焼成体について、下記の方法で3点曲げ強度試験を行った。結果を表5に示した。
即ち、JIS R 1601を参考に、インストロン5582を用い、スパン間距離:135mm、スピード1mm/minで3点曲げ試験を行い、各ハニカム焼成体の曲げ強度(MPa)を測定した。
また、実施例及び比較例において、ハニカム焼成体を作製した後、ハニカム焼成体に形成された気孔径を下記の方法により測定した。結果を表5に示した。
即ち、JIS R 1655に準じ、水銀圧入法による細孔分布測定装置(島津製作所社製、オートポアIII 9405)を用い、ハニカム焼成体10個について、それぞれの中央部分を1cmの幅の立方体となるように切断してサンプルとし、水銀圧入法により、細孔直径0.2〜500μmの範囲で細孔分布を測定し、そのときの平均細孔径を(4V/A)として計算し、平均細孔径とその標準偏差を算出した。
また、実施例及び比較例において製造したハニカム構造体について、その圧力損失を測定した。結果を表5に示した。なお、サンプル数は10個とした。
上記ハニカム構造体の圧力損失は、それぞれ1000N・m/hの流量で初期圧力損失を測定した。
Figure 2009112880
実施例1〜4及び比較例1、2の結果より、ハニカム構造体の製造方法における脱脂温度は、250〜390℃が望ましいことが明らかとなった。
図3は、実施例1〜4及び比較例1、2における脱脂温度とハニカム構造体の平均気孔径及び圧力損失との関係を示すグラフであり、図4は、実施例1〜4及び比較例1、2における脱脂温度とハニカム焼成体の曲げ強度との関係を示すグラフである。
ハニカム構造体の製造方法において、脱脂温度を250〜390℃とすることにより、圧力損失が低く、ハニカム焼成体が充分な曲げ強度(25MPa以上)を有するハニカム構造体を製造することができるのに対し、脱脂温度が250℃未満では、ハニカム構造体(ハニカム焼成体)の気孔径に大きなバラツキが生じ、また、その曲げ強度が大きく低下(20MPa未満)することが明らかとなった。一方、脱脂温度が390℃を超えると、曲げ強度が大きく低下(20MPa未満)することが明らかとなった(表5、図3、4参照)。
また、特に脱脂温度を250〜350℃とすることにより、ハニカム焼成体の曲げ強度が30MPa以上の高い曲げ強度を有するハニカム構造体を製造することができることが明らかとなった(表5、図4参照)。
なお、本実施例で作製した形状(大きさ:34.3mm×34.3mm×150mm、セル密度:46.5個/cm、セル壁の厚さ:0.25mm)のハニカム焼成体では、曲げ強度が23MPa以上であれば一応製品として使用可能な水準にあり、25MPa以上であれば充分な強度を有しており、30MPa以上であれば極めて高品質であると考えられる。
また、実施例5〜8及び比較例3、4の結果より、ハニカム構造体の製造方法における脱脂処理中の雰囲気のO濃度は、5〜13体積%が望ましいことが明らかとなった。
図5は、実施例5〜8及び比較例3、4における脱脂処理中の雰囲気のO濃度と、ハニカム構造体の平均気孔径及び圧力損失との関係を示すグラフであり、図6は、実施例5〜8及び比較例3、4における脱脂処理中の雰囲気のO濃度と、ハニカム焼成体の曲げ強度との関係を示すグラフである。
ハニカム構造体の製造方法では、脱脂処理中の雰囲気のO濃度を5〜13体積%とすることにより、気孔径の揃った均一な気孔を備え、圧力損失が低く、ハニカム焼成体が高い曲げ強度を有するハニカム構造体を製造することができるのに対し、上記O濃度が5体積%未満では、製造したハニカム焼成体の気孔径が大きくならず、また、ハニカム焼成体の曲げ強度が大きく低下し(20MPa未満)、上記O濃度が13体積%を超えると、ハニカム焼成体の曲げ強度が大きく低下する(20MPa未満)ことが明らかとなった(表5、図5、6)。
また、ハニカム構造体の製造方法では、原料組成物中の炭素源材料の含有量を8〜18重量%とすることが望ましいことが明らかとなった。
上記炭素源材料の含有量がこの範囲にあれば(実施例1、10〜12参照)、圧力損失が低く、高い曲げ強度を有するハニカム構造体を製造することができる。
これに対し、上記炭素源材料の含有量が8重量%未満では、曲げ強度が不充分となったり(実施例9参照)、気孔径にバラツキが生じたりする場合があり(実施例15参照)、上記炭素源材料の含有量が18重量%を超えると、気孔径のバラツキが生じる傾向にある(実施例24、26参照)。
また、ハニカム構造体の製造方法では、ハニカム脱脂体中のカーボンの含有量は0.5〜2.0重量%が望ましく、ハニカム脱脂体中のSiOの含有量は、1.9〜3.4重量%が望ましく、さらに、ハニカム脱脂体中のSiOとカーボンの重量比は、1.0を超え5.0以下が望ましいことが明らかとなった。
ハニカム脱脂体中のカーボン量及びSiO量がこの範囲にあれば、気孔径の揃った均一な気孔を備え、ハニカム焼成体が高い曲げ強度を有するハニカム構造体を製造することができる(実施例16、17、19、20、22、23参照)。
一方、ハニカム脱脂体中のカーボンの含有量が0.5重量%未満では、ハニカム焼成体の曲げ強度が低下する傾向にあり(実施例13、14参照)、上記カーボンの含有量が2.0重量%を超えると、気孔径のバラツキが大きくなったり、圧力損失が大きくなる場合がある(実施例25、26参照)。
また、ハニカム脱脂体中のSiOの含有量が1.9重量%未満では、気孔径のバラツキが大きくなったり、ハニカム構造体の圧力損失が大きくなる場合がある(実施例15参照)。
一方、ハニカム脱脂体中のSiOの含有量が3.4重量%を超えると、気孔径が大きくなり、強度が低下する場合がある(実施例18、21参照)。
なお、実施例24、26のように、ハニカム脱脂体中のSiOの含有量が3.4重量%を超えても強度が低下するとは限らない。
また、ハニカム脱脂体中のSiOとカーボンの重量比が1.0以下では、圧力損失が大きくなったり、気孔径のバラツキが大きくなったりする傾向にある(実施例15、25参照)。
一方、ハニカム脱脂体中のSiOとカーボンの重量比が5.0を超えると、曲げ強度が小さくなる傾向にある(実施例13、14参照)。
本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。 (a)は、図1に示したハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。 実施例1〜4及び比較例1、2における脱脂温度とハニカム構造体の平均気孔径及び圧力損失との関係を示すグラフである。 実施例1〜4及び比較例1、2における脱脂温度とハニカム焼成体の曲げ強度との関係を示すグラフである。 実施例5〜8及び比較例3、4における脱脂処理中の雰囲気のO濃度と、ハニカム構造体の平均気孔径及び圧力損失との関係を示すグラフである。 実施例5〜8及び比較例3、4における脱脂処理中の雰囲気のO濃度と、ハニカム焼成体の曲げ強度との関係を示すグラフである。
符号の説明
100 ハニカム構造体
101 シール材層(接着材層)
102 シール材層(コート層)
103 ハニカムブロック
110 ハニカム焼成体
111 セル
112 封止材
113 セル壁

Claims (6)

  1. 少なくとも炭化ケイ素粉末とバインダとを含む原料組成物を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、前記ハニカム成形体を脱脂処理することによりハニカム脱脂体を作製し、さらに、前記ハニカム脱脂体を焼成処理することによりハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
    前記脱脂処理は、脱脂温度250〜390℃、雰囲気中のO濃度5〜13体積%で行うことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
  2. 前記ハニカム脱脂体中のカーボンの含有量を0.5〜2.0重量%とする請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
  3. 前記ハニカム脱脂体中のSiOの含有量を1.9〜3.4重量%とする請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
  4. 前記ハニカム脱脂体中のSiOとカーボンの重量比を1.0を超え、5.0以下とする請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
  5. 前記原料組成物中の炭素源材料の含有量を8〜18重量%とする請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
  6. 前記バインダは、250〜390℃で分解する化合物である請求項1〜5のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
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