以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
車載モータ、特に大きな電流が流れる車載モータには、車載モータの駆動により発生した電磁ノイズ(電磁波)が、車載モータに駆動電力を供給する電源ケーブルを介して外部に漏れないように、電磁シールドが施されている。電磁ノイズは、たとえばラジオノイズの一因となる。電磁シールドは、電源ケーブルに対して施されるが、電源ケーブルの取付作業性の観点から柔軟性が要求されることから、絶縁被覆電線を金属編組で覆う方法が採用されている。この場合、金属編組の端部を車載モータの外郭に隙間なく固定し、絶縁被覆電線を金属編組によって隙間なく覆う必要がある。このような電磁シールド構造を実現するためには、たとえば特開2002−344190号公報に開示されているような固定接続技術の採用が必要である。
電動パワーステアリング装置に搭載され、操舵用の回転動力を発生する電動パワーステアリング用モータには大きな回転動力が要求される。このため、低電圧の車載電源を駆動電源とする電動パワーステアリング用モータには大きな電流が供給されるので、電磁シールドが必須である。特にラジオと近距離の車室内に電動パワーステアリング用モータが配置されるコラム式の電動パワーステアリング装置では、電磁ノイズの対策として電磁シールドが重要になる。
電動パワーステアリング用モータの電磁シールド構造としては、前述と同じように、特開2002−344190号公報に開示されているような固定接続技術を導入し、金属編組の端部をモータ外郭に隙間なく固定することが考えられる。しかし、小型で搭載スペースに制限がある電動パワーステアリング用モータにとって、特開2002−344190号公報に開示されているような固定接続技術は、金属編組の端部とモータ外郭との接続部が大きくなり過ぎるので不向きである。したがって、電動パワーステアリング用モータに適した電磁シールド構造が望まれる。
本実施例では、上記課題を解決すべき課題の一つとする。本実施例では、電動パワーステアリング用モータに適した電磁シールド構造を実現するために、モータに駆動電力を供給する電源ケーブルの絶縁被覆電線を覆う金属編組をモータ外郭に電気的に接続でき、かつモータ外郭を接地できる構成としている。具体的に本実施例では、電源ケーブルの絶縁被覆電線を覆う金属編組の端部にケーブル側導電性部材を取り付けるとともに、モータ外郭の外側にモータ側導電性部材を取り付け、モータ側導電性部材にケーブル側導電性部材を固定している。また、本実施例では、接地されたステアリング装置にモータ外郭を電気的に接続するための接地用導電性部材をモータ外郭の外側に取り付けている。さらに、本実施例では、導電性カバーをモータ側導電性部材に固定し、導電性カバー,モータ側導電性部材,ケーブル側導電性部材、およびモータ外郭によって、ケーブル側端子とモータ側端子との接続端子部を取り囲むようにしている。そして、本実施例では、接地されたステアリング装置に接地用導電性部材を電気的に接続して、金属編組,導電性カバー,モータ側導電性部材,ケーブル側導電性部材、およびモータ外郭のそれぞれを接地し、電磁シールドを構成している。
モータ側導電性部材は、ケーブル側端子とモータ側端子との端子接続部をモータ外郭に支持するための台座を導電性部材により形成すればよい。接地用導電性部材は、ステアリング装置に対して電動パワーステアリング用モータを固定するための固定部を導電性部材により形成すればよい。このようにすれば、新たな導電性部材の追加や、モータ構造の大幅な変更を伴うことがない。
本実施例では、電動パワーステアリング用モータから駆動電力供給側に向かって延びる電源ケーブル上、かつモータ外郭の外側の電源ケーブルの根元部分、すなわちモータ外郭の外側に形成された端子部(ケーブル側端子とモータ側端子との接続端子部)に電磁シールドが形成される。
本実施例によれば、モータ側導電性部材とケーブル側導電性部材とを用いて金属編組とモータ外郭とを隙間なく接続できるとともに、モータ外郭の外側の電源ケーブルの根元部分、すなわちモータ外郭の外側に形成された端子部(ケーブル側端子とモータ側端子との接続端子部)を利用して、電動パワーステアリング用モータの大きさに適したコンパクトな電磁シールドを構成できる。
したがって、本実施例によれば、小型で搭載スペースなどに制限がある電動パワーステアリング用モータに適した電磁シールドを提供できる。
以下、図1〜図17を用いて、本発明の実施例である電動パワーステアリング用モータの構成及び動作について説明する。
最初に、図1及び図2を用いて、本実施例の電動パワーステアリング用モータの構成について説明する。
図1は、本実施例の電動パワーステアリング用モータの構成を示す横断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図2(A)は全体の断面図を示し、図2(B)は要部の断面図を示している。
電動パワーステアリング用モータ(以下、「EPSモータ」と称する)100は、ステータ110と、このステータ110の内側に回転可能に支持されたロータ130とを備えた、表面磁石型の同期電動機である。EPSモータ100は、バッテリ−を備えた車載電源、例えば14ボルト系電源(バッテリーの出力電圧が12ボルト)あるいは24ボルト系電源若しくは42ボルト系電源(バッテリーの出力電圧36ボルト)又は48ボルト系電源から供給される電力で駆動される。
ステータ110は、珪素鋼板を積層した磁性体で形成されたステータコア112と、ステータコア112のスロット内に保持されたステータコイル114とを備えている。ステータコア112は、図2を用いて後述するように、円環状のバックコアと、このバックコアとは分離して作られ、その後、バックコアに機械的に固定された複数のティースとから構成される。複数のティースには、それぞれ、ステータコイル114が巻回されている。ステータコイル114は分布巻あるいは集中巻の方式で巻かれている。
ステータコイル114を分布巻とすると弱め界磁制御に優れ、また、リラクタンストルクの発生にも優れる。EPSモータとしては、モータの小型化や巻線抵抗の低減がたいへん重要である。ステータコイル114を集中巻とすることにより、ステータコイル114のコイルエンド長を短くできる。これにより、EPSモータ100の回転軸方向の長さを短くすることができる。また、ステータコイル114のコイルエンドの長さを短くできるので、ステータコイル114の抵抗を小さくでき、モータの温度上昇を抑えることができる。また、コイル抵抗を小さくできることから、モータの銅損を小さくできる。したがって、モータへの入力エネルギーの内、銅損によって消費される割合を小さくでき、入力エネルギーに対する出力トルクの効率を向上することができる。
EPSモータは上述のごとく車両に搭載された電源により駆動される。上記電源は出力電圧が低い場合が多い。電源端子間にインバータを構成するスイッチング素子や上記モータ、その他電流供給回路の接続手段が等価的に直列回路を構成し、上記回路においてそれぞれの回路構成素子の端子電圧の合計が上記電源の端子間電圧になるので、モータに電流を供給するためのモータの端子電圧は低くなる。このような状況でモータに流れ込む電流を確保するにはモータの銅損を低く押えることが極めて重要である。この点から車両に搭載される電源は50ボルト以下の低電圧系が多く、ステータコイル114を集中巻とすることが望ましい。特に12ボルト系電源を使用する場合は極めて重要である。
また、EPSモータはステアリングコラムの近傍に置かれる場合、ラックアンドピニオンの近傍に置かれる場合などがあるが、何れも小型化が要求される。また、小型化された構造でステータ巻線を固定することが必要であり、巻線作業が容易なことも重要である。分布巻に比べ集中巻は巻線作業,巻線の固定作業が容易である。
ステータコイル114のコイルエンドはモールドされている。EPSモータはコギングトルクなどのトルク変動をたいへん小さく押えることが望ましく、ステータ部を組み上げてからステータ内部を再度切削加工することがある。このような機械加工により、切削紛が発生する。この切削紛がステータコイルのコイルエンドに入り込むのを防止することが必要であり、コイルエンドのモールドが望ましい。コイルエンドは、ステータコイル114の複数の部位のうち、ステータコア112の軸方向両端部から軸方向に突出した部位を指す。尚、本実施例では、ステータコイル114のコイルエンドを覆ったモールド樹脂と、フレーム150との間に空隙が設けられているが、フレーム150,フロントフランジ152F及びリアフランジ152Rと接触する位置まで充填してもよい。こうすることにより、ステータコイル114からの発熱を、コイルエンドからモールド樹脂を介して直接、フレーム150,フロントフランジ152F及びリアフランジ152Rに伝達して外部に放熱できるので、空気を介して熱伝達する場合に比べてステータコイル114の温度上昇を低減することができる。
ステータコイル114は、U相,V相,W相の3相から構成され、それぞれ複数の単位コイルから構成される。複数の単位コイルは、図3を用いて後述するように、3相の各相毎に、図示の左側に設けられた結線リング116によって結線されている。結線リング116はバスバー117に電気的に接続され、バスバー117はモータ外部でパワーケーブル172に接続される。
EPSモータは大きなトルクが要求される。例えば車の走行停止状態、あるいは走行停止に近い運転状態でステアリングホイール(ハンドル)が早く回転されると操舵車輪と地面との間の摩擦抵抗のため、上記モータには大きなトルクが要求される。このときには大電流がステータコイルに供給される。この電流は条件により異なるが50アンペア以上の場合がある。70アンペアあるいは150アンペアの場合も考えられる。このような大電流を安全に供給でき、また上記電流による発熱を低減するために結線リング116とバスバー117を用いることはたいへん重要である。上記結線リング116とバスバー117を介してステータコイルに電流を供給することにより接続抵抗を小さくでき、銅損による電圧降下を押えることができる。このことにより、大電流の供給が容易になる。またインバータの素子の動作に伴う電流の立ち上がり時定数が小さくなる効果がある。
ステータコア112とステータコイル114は、樹脂(電気的な絶縁性を有するもの)により一体にモールドされ、一体に形成されてステータSubAssyを構成している。この一体成形されたステータSubAssyは、アルミなど金属で形成された円筒状のフレーム150の内側に圧入されて固定された状態でモールド成形される。尚、一体成形されたステータSubAssyは、ステータコイル114がステータコア112に組み込まれた状態でモールド成形され、この後、フレーム150に圧入されるか、もしくは、フレーム150に圧入後リアフランジ152Rに組み付けて、その後、モールド成形されてもよい。
自動車に搭載されるEPSは色々な振動が加わる。また、車輪からの衝撃が加わる。また、気温変化の大きい状態で利用される。摂氏マイナス40度の状態も考えられ、また、温度上昇により100度以上も考えられる。さらに、モータ内に水が入らないようにしなければならない。このような条件でステータがフレーム150に固定されるためには、筒状フレーム150の少なくともステータ鉄心の外周部には螺子穴以外の穴が設けられていない、円筒金属にステータ部(SubAssy)を圧入することが望ましい。また、圧入後さらにフレーム150の外周から螺子止めしてもよい。圧入に加え回止を施すことが望ましい。
ロータ130は、珪素鋼板を積層した磁性体からなるロータコア132と、このロータコア132の表面に接着剤によって固定された複数の永久磁石であるマグネット134と、マグネット134の外周に設けられた非磁性体からなるマグネットカバー136を備えている。マグネット134は、希土類磁石であり、例えば、ネオジウムからなる。ロータコア132は、シャフト138に固定されている。ロータコア132の表面に接着剤により複数のマグネット134が固定されるとともに、その外周側をマグネットカバー136で覆うことにより、マグネット134の飛散を防止している。上記マグネットカバー136はステンレス鋼(俗称SUS)で構成されているが、テープを巻きつけても良い。ステンレス鋼の方が製造が容易である。上述のごとくEPSモータは振動や熱変化が極めて大きく破損し易い永久磁石を保持するのに優れている。また上述のとおり、仮に破損しても飛散を防止できる。
円筒形状のフレーム150の一方の端部には、フロントフランジ152Fが設けられている。フレーム150とフロントフランジ152FとはボルトB1により固定されている。また、フレーム150の他方の端部には、リアフランジ152Rが圧入されている。このリアフランジ152Rはかしめや螺子止めなどによってフレーム150に組み付けられてもよい。フロントフランジ152F及びリアフランジ152Rには、それぞれ、軸受154F,154Rが取り付けられている。これらの軸受154F,154Rにより、シャフト138及び、このシャフト138に固定されたステータ110が回転自在に支承されている。
フロントフランジ152Fには円環状の突出部(或いは延出部)が設けられている。フロントフランジ152Fの突出部は軸方向に突出したものであり、フロントフランジ152Fのコイルエンド側の側面からコイルエンド側に延出している。フロントフランジ152Fの突出部の先端部は、フレーム150にフロントフランジ152Fを固定した際、フロントフランジ152F側のコイルエンドのモールド材とフレーム150との間に形成された空隙内に挿入されるようになっている。また、コイルエンドからの放熱を向上させるために、フロントフランジ152Fの突出部は、フロントフランジ152F側のコイルエンドのモールド材と密に接触していることが好ましい。
リアフランジ152Rには円筒状の窪みが設けられている。リアフランジ152Rの窪みはシャフト138の中心軸と同心のものであり、フレーム150の軸方向端部よりも軸方向内側(ステータコア112側)に入り込んでいる。リアフランジ152Rの窪みの先端部は、リアフランジ152R側のコイルエンドの内径側まで延びて、リアフランジ152R側のコイルエンドと径方向に対向している。リアフランジ152Rの窪みの先端部には軸受154が保持されている。シャフト138のリアフランジ152R側の軸方向端部は軸受154よりもさらに軸方向外方(ロータコア132側とは反対側)に延びて、リアフランジ152Rの窪みの開口部近傍或いは開口部よりも若干軸方向外方に突出する位置まで至っている。
リアフランジ152Rの窪みの内周面とシャフト138の外周面との間に形成された空間にはレゾルバ156が配置されている。レゾルバ156はレゾルバステータ156Sとレゾルバロータ156Rを備えており、軸受154Rよりも軸方向外側(ロータコア132側とは反対側)に位置している。レゾルバロータ156Rはシャフト138の一方の端部(図示左側の端部)にナットN1によって固定されている。レゾルバステータ156Sは、レゾルバ押さえ板156BがネジSC1によってリアフランジ152Rに固定されることにより、リアフランジ152Rの窪みの内周側に固定され、レゾルバロータ156Rと空隙を介して対向している。レゾルバステータ156Sとレゾルバロータ156Rによりレゾルバ156を構成し、レゾルバロータ156Rの回転をレゾルバステータ156Sによって検出することにより、複数のマグネット134の位置を検出できる。さらに具体的に説明すると、レゾルバは、外周表面が凹凸状(例えば楕円形状或いは花びら形状)であるレゾルバロータ156Rと、2つの出力用コイル(電気的に90°ずれている)及び励磁用コイルがコアに巻かれたレゾルバステータ156Sとを有する。励磁用コイルに交流電圧を印加すると、2つの出力用コイルには、レゾルバロータ156Rとレゾルバステータ156Sとの間の空隙の長さの変化に応じた交流電圧が、回転角度に比例する位相差をもって発生する。このように、レゾルバは、位相差をもった2つの出力電圧を検知するためのものである。ロータ130の磁極位置は、検知された2つの出力電圧の位相差から位相角を求めることによって検出できる。リアフランジ152Rの外周には、レゾルバ156を覆うようにして、リアホルダ158が取り付けられている。
結線リング116によって接続されたU相,V相,W相の各相には、バスバー117と、金属編組に覆われたケーブル162と、ケーブル162の先端に取り付けられたケーブルターミナル163を介して、外部のバッテリーから電力が供給される。バスバー117は結線リング116に溶接され、モータ外部の端子台118まで引き出される。端子台118はフレーム150に直接組みつけられている。
ケーブル162は、その先端に取り付けられたケーブルターミナル163がバスバー117に溶接されて取り付けられている。また、ケーブル162は、絶縁被覆に覆われたものであり、3本まとめて一つの金属編組165で覆われており、金属編組165の先端にはモータと接続するためのシェル166が取り付けられている。バスバー117とケーブルターミナル163の接続部はカバー119で覆われ、カバー119はシェル166とともに、端子台118にネジ留めされている。本実施例では、ケーブル162,ケーブルターミナル163,金属編組165およびシェル166によって、EPSモータのパワーケーブル(電源ケーブル)172が構成されている。
レゾルバステータ156Sから検出された磁極位置信号は、信号ケーブル173により外部に取り出される。リアフランジ152Rにはリアホルダ158が取り付けられ、レゾルバ156を保護し、EPSモータ100を密閉している。結線リング116とバスバー117の一部分は、コイルエンドと共にモールド材M1によってモールドされている。
次に、ステータ110及びロータ130の構成を図2に基づいてさらに具体的に説明する。
図2は、図1のA−A矢視図である。図2(B)は、図2(A)のP部の拡大断面図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
最初に、ステータ110の構成について説明する。図1に示したステータコア112は、円環状のバックコア112Bと、このバックコア112Bとは分離して構成された複数のティース112Tとから構成される。バックコア112Bは、珪素鋼板などの磁性体の薄板をプレス成形により打ち抜き、それを積層した構成となっている。
本実施例では、ティース112Tは、それぞれ独立した12個のティース112T(U1+),112T(U1−),112T(U2+),112T(U2−),112T(V1+),112T(V1−),112T(V2+),112T(V2−),112T(W1+),112T(W1−),112T(W2+),112T(W2−)から構成されている。それぞれのティース112T(U1+),…,112T(W2−)には、ステータコイル114(U1+),114(U1−),114(U2+),114(U2−),114(V1+),114(V1−),114(V2+),114(V2−),114(W1+),114(W1−),114(W2+),114(W2−)が集中巻で巻回されている。
ここで、ステータコイル114(U1+)と、ステータコイル114(U1−)とは、コイルを流れる電流の向きが逆方向となるように巻回されている。ステータコイル114(U2+)と、ステータコイル114(U2−)とも、コイルを流れる電流の向きが逆方向となるように巻回されている。また、ステータコイル114(U1+)と、ステータコイル114(U2+)とは、コイルを流れる電流の向きが同一方向となるように巻回されている。ステータコイル114(U1−)と、ステータコイル114(U2−)とも、コイルを流れる電流の向きが同一方向となるように巻回されている。ステータコイル114(V1+),114(V1−),114(V2+),114(V2−)の電流の流れ方向の関係、及びステータコイル114(W1+),114(W1−),114(W2+),114(W2−)の電流の流れ方向の関係も、U相の場合と同様である。
12個のティース112T及びステータコイル114は、同様に製作されるため、ここでは、ティース112T(U1+)及びステータコイル114(U1+)を例にして、その組立工程について説明する。ステータコイル114(U1+)は、ティース112T(U1+)に巻回した形状となるように、予め成形されている成形コイルである。この成形コイルとなっているステータコイル114(U1+)は、ボビン112BOとともに、成形されている。ボビン112BOと成形されたステータコイル114(U1+)の一体物を、ティース112T(U1+)の後端側からはめ込む。ティース112T(U1+)の先端部、すなわち、ロータ130と面する側は円周方向に拡大しているため、ボビン112BOとステータコイル114(U1+)は、この拡大部においてストッパとなり、係止される。ティース112T(U1+)の後端側には、バックコア112Bの内周側に形成された凹部112BKとハメアイ形状の凸部112TTが形成されている。成形されたステータコイル114(U1+)が巻回されたティース112T(U1+)の凸部112TTを、バックコア112Bの凹部112BKに圧入して、ティース112T(U1+)がバックコア112Bに固定される。他のティース112T(U1−),…,112T(W2−)に対して、ステータコイル114(U1−),…,114(W2−)を取り付ける工程及び、ティース112T(U1−),…,112T(W2−)をバックコア112Bに固定する工程も同様である。
バックコア112Bに、ステータコイル114が装着された12個のティース112Tを固定し、バックコア112Bの外周側の複数箇所をフレーム150の内周側に圧入した状態で、ステータコア112とステータコイル114とを熱硬化性樹脂MRにより一体モールド成形し、ステータSubAssyを構成する。尚、本実施例では、ステータコア112にステータコイル114を組み込んだものをフレーム150に圧入した状態で、ステータコア112とステータコイル114とを一体モールドする場合について説明したが、ステータコア112にステータコイル114を組み込んだ状態で、ステータコア112とステータコイル114とを一体モールドし、その後、ステータコア112をフレーム150に圧入するか、もしくは、フレーム150に圧入後リアフランジ152Rに組み付けて、その後、モールド成形されてもよい。
モールド材によるモールド成形にあたっては、ステータコア112と、ステータコア112の軸方向端部から軸方向に突出するステータコイル114のコイルエンド部を、図示省略した治具とフレーム150によって囲むように、図示省略した治具を、ステータコア112とステータコア112とフレーム150からなる構造体に対して取り付け、図示省略した治具とフレーム150によって囲まれている中に流体状のモールド材を注入し、コイルエンド部,ステータコイル114と結線リング116との隙間,結線リング116とバスバー117の隙間,ステータコア112の隙間,ステータコイル114の隙間,ステータコア112とステータコイル114との間の隙間及びステータコア112とフレーム150との間の隙間にモールド材を充填し、モールド材を固化させ、モールド材が固化したら、図示省略した治具を取り外す。
モールド成形したステータSubAssyの内周面、すなわちティース112T(U1−),…,112T(W2−)の先端部であって、ロータ130と径方向に対向する面側には切削加工が施されている。これにより、ステータ110とロータ130とのギャップのバラツキを低減して、ステータ110の内径真円度をさらに向上させている。また、モールド成形により一体化することにより、モールドしない場合に比べて、ステータコイル114に通電することにより発生する熱の放熱性をよくすることができる。また、モールド成形することにより、ステータコイルやティースの振動を防止することもできる。
例えば、ロータ130のロータコアの外周と、ステータ110のティースの内周の間のギャップを、3mm(3000μm)としたとき、バックコア112Bの製作誤差,ティース112Tの製作誤差や、バックコア112Bとティース112Tと圧入組み立てた時の組み付け誤差等により、内径真円度は、±30μm程度生じる。この真円度は、ギャップの1%(=30μm/3000μm)に相当するため、この内径真円度によってコギングトルクが発生する。しかし、モールド成形した後、内径を切削加工することにより、内径真円度に基づくコギングトルクを低減することができる。コギングトルクを低減することにより、ステアリングの操舵感を向上することができる。
フレーム150の内側には凸部150Tが形成されている。バックコア112Bの外周には、凸部150Tと対応するように凹部112BO2が形成されている。その詳細については、図2(B)に示すとおりである。凸部150Tと凹部112BO2は、相互に異なる曲率を有して係合しあう係合部IPを構成しており、軸方向に連続して形成されかつ周方向に間隔をあけて8個設けられている。係合部は圧入部を兼ねている。すなわちフレーム150にステータコア112を固定する場合、係合部の凸部150Tの突端面と凹部112BO2の底面とが圧接するように、フレーム150の凸部150Tにバックコア112Bの凹部112BO2を圧入する。このように、本実施例は、部分圧入によってフレーム150にステータコア112を固定している。この圧入によって、フレーム150とステータコア112との間には微細な空隙が形成される。本実施例では、ステータコア112とステータコイル114とをモールド材M1によってモールドする際、フレーム150とステータコア112との間に形成された空隙にモールド材RMを同時に充填している。また、係合部は、フレーム150に対してステータコア112が周方向に回転することを防止するための回り止め部を兼ねている。
このように、本実施例では、フレーム150にステータコア112を部分的に圧入しているので、フレーム150とステータコア112との間のすべりを大きくしかつ剛性を小さくできる。これにより、本実施例では、フレーム150とステータコア112との間における騒音の減衰効果を向上させることができる。また、本実施例では、フレーム150とステータコア112との間の空隙にモールド材を充填しているので、騒音の減衰効果をさらに向上させることができる。
なお、凸部150Tと凹部112BO2とを非接触として、両者を回り止めとしてのみ用い、この凸部150Tと凹部112BO2の部分以外のフレーム150の内周面に対してバックコア112Bの外周面を圧入するように構成してもよい。この場合、凸部150Tは軸方向に連続して形成される必要はなく、半球状の凸形状でよい、また、個数も1個で十分である。
また、ステータコイル114(U1+),114(U1−)と、114(U2+),114(U2−)とは、ステータ110の中心に対して、対称位置に配置されている。すなわち、ステータコイル114(U1+)と114(U1−)は隣接して配置され、また、ステータコイル114(U2+)と114(U2−)も隣接して配置されている。さらに、ステータコイル114(U1+),114(U1−)と、ステータコイル114(U2+),114(U2−)とは、ステータ110の中心に対して、線対称に配置されている。すなわち、シャフト138の中心を通る破線C−Cに対して、ステータコイル114(U1+)と、ステータコイル114(U2+)とが線対称に配置され、また、ステータコイル114(U1−)と、114(U2−)とが線対称に配置されている。
ステータコイル114(V1+),114(V1−)と、114(V2+),114(V2−)も同様に線対称に配置され、ステータコイル114(W1+),114(W1−)と、114(W2+),114(W2−)とも線対称に配置されている。
また、同相の隣接するステータコイル114は1本の線で連続して巻回されている。すなわちステータコイル114(U1+)と114(U1−)とは、1本の線を連続して巻回し、2つの巻回コイルを構成し、それぞれ、ティースに挿入して、ティースに巻回した構成となっている。ステータコイル114(U2+)と114(U2−)も、1本の線で連続して巻回されている。ステータコイル114(V1+)と114(V1−),ステータコイル114(V2+)と114(V2−),ステータコイル114(W1+)と114(W1−),ステータコイル114(W2+)と114(W2−)も、それぞれ、1本の線で連続して巻回されている。
このような線対称配置と、隣接する2つの同相のコイルを1本の線で巻回することにより、図4を用いて後述するように、各相同士、また異相を結線リングで結線する際に、結線リングの構成を簡単にすることができる。
次に、ロータ130の構成について説明する。
ロータ130は、磁性体からなるロータコア132と、このロータコア132の表面に接着剤によって固定された10個のマグネット134(134A,134B,134C,134D,134E,134F,134G,134H,134I,134J)と、マグネット134の外周に設けられたマグネットカバー136を備えている。ロータコア132は、シャフト138に固定されている。
マグネット134は、その表面側(ステータのティース112Tと対向する側)をN極とすると、その裏面側(ロータコア132に接着される側)がS極となるように、半径方向に着磁されている。また、マグネット134は、その表面側(ステータのティース112Tと対向する側)をS極とすると、その裏面側(ロータコア132に接着される側)がN極となるように、半径方向に着磁されているものもある。そして、隣接するマグネット134は、着磁された極性が周方向に交互になるように着磁されている。例えば、マグネット134Aの表面側がN極に着磁されているとすると、隣接するマグネット134B,134Jの表面側はS極に着磁されている。すなわち、マグネット134A,134C,134E,134G,134Iの表面側がN極に着磁されている場合、マグネット134B,134D,134F,134H,134Jの表面側は、S極に着磁されている。
また、マグネット134は、それぞれ、断面形状がかまぼこ型の形状となっている。かまぼこ形状とは、周方向において、左右の半径方向の厚さが、中央の半径方向の厚さに比べて薄い構造のことである。このようなかまぼこ型の形状とすることにより、磁束分布を正弦波状とでき、EPSモータを回転させることによって発生する誘起電圧波形を正弦波状とすることができ、脈動分を低減することができる。脈動分を小さくできることにより、ステアリングの操舵感を向上できる。なお、リング状の磁性体に着磁してマグネットを構成するとき、着磁力を制御することにより、磁束分布を正弦波状類似のものとしてもよいものである。
ロータコア132には、同心円上に大きな直径の10個の貫通穴132Hと、その内周側に小さな直径の5個の窪み132Kとが形成されている。ロータコア132は、SUSなどの磁性体の薄板をプレス成形により打ち抜き、それを積層した構成となっている。窪み132Kは、プレス成形時に薄板をかしめることにより形成する。複数の薄板を積層する際に、この窪み132Kを互いに嵌合して位置決めを行っている。貫通穴132Hは、イナーシャを低減するためであり、この132H穴によりロータのバランスを向上できる。マグネット134の外周側は、マグネットカバー136により覆われており、マグネット134の飛散を防止している。なお、バックコア112Bとロータコア132は、同じ薄板から同時にプレス打ち抜きにより成形される。
なお、窪み132Kを設けず、複数の薄板を積層後、溶接することによってロータコア132を構成してもよい。
以上説明したように、本実施例のロータ130は、10個のマグネット134を備えており、10極である。また、前述したように、ティース112Tは12個であり、隣接するティースの間に形成されるスロットの数は、12個である。すなわち、本実施例のEPSモータは、10極12スロットの表面磁石型の同期電動機となっている。
なお、マグネット134を軸方向に2分割し20個のマグネットによってロータ130を構成してもよい。この場合、ロータコア132も軸方向で2分割することによって、ロータ130にスキューを施すことができる。ロータ130にスキューを施すことにより、EPSモータ100の振動や騒音を削減できる。
ここで、図3を用いて、ACモータにおける極数Pとスロット数Sとの関係について説明する。
図3は、ACモータの極数Pとスロット数Sの関係の説明図である。
図3において、横線によるハッチングを施した組合せが、3相のACモータ(ブラシレスモータ)として、取り得る極数Pとスロット数Sの組合せである。すなわち、3相ACモータとしては、2極3スロット,4極3スロット,4極6スロット,6極9スロット,8極6スロット,8極9スロット,8極12スロット,10極9スロット,10極12スロット,10極15スロットの組合せが成立する。この中で、左斜線と右斜線を施した組合せの10極12スロットが本実施例によるモータの極数とスロット数である。なお、左斜め斜線を施した8極9スロットと10極9スロットとについては、後述する。また、図1に示したEPSモータは、外径が85φと小型のモータであり、このような小型モータにおいては、極数Nが12以上のモータは実現できないため、図示を省略している。
ここで、2極3スロット,4極3スロット,4極6スロット,6極9スロット,8極6スロット,8極12スロット,10極15スロットのモータは、その特性が近似するものであり、ここでは、6極9スロットのものを代表例として説明する。
6極9スロットのACモータに対して、本実施例の10極12スロットのモータは、磁石磁束の利用率が高くできる。すなわち、6極9スロットのACモータにおける巻線係数(巻線の利用率)kwは0.87であり、スキュー係数ksは0.96であるので、磁石磁束の利用率(kw・ks)は、「0.83」となる。一方、本実施例の10極12スロットのモータでは、巻線係数kwは0.93であり、スキュー係数ksは0.99であるので、磁石磁束の利用率(kw・ks)は、「0.92」となる。したがって、本実施例の10極12スロットのモータでは、磁石磁束の利用率(kw・ks)を高くすることができる。
また、コギングトルクの周期は、極数Pとスロット数Sの最小公倍数となるため、6極9スロットのACモータにおけるコギングトルクの周期は、「18」となり、本実施例の10極12スロットのモータでは、「60」とできるため、コギングトルクを低減することができる。
さらに、内径真円度の誤差によるコギングトルクも小さくできるものである。すなわち、6極9スロットのACモータにおける内径真円度の誤差によるコギングトルクを、「3.7」とすると、本実施例の10極12スロットのモータでは、「2.4」とできるため、内径真円度の誤差によるコギングトルクを低減することができる。さらに、本実施例では、モールド成形したステータSubAssyの内径を切削加工して、内径真円度を向上させた結果、さらに、内径真円度の誤差によるコギングトルクを低減することができる。
ここで、図4を用いて、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるコギングトルクの実測値について説明する。
図4は、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるコギングトルクの実測値の説明図である。
図4(A)は、角度(機械角)が0〜360°の360°の範囲について実測したコギングトルク(mNm)を示している。図4(B)は、図4(A)に示したコギングトルクの高調波成分を各時間次数毎に分離して、波高値(mNm)示したものである。時間次数「60」は、前述したように、10極12スロットのモータにおけるコギングトルクの周期であり、発生するコギングトルクはほぼ0になっている。時間次数「12」は、10極のマグネットの界磁力のバラツキによるものである。マグネットとして、上述したように、かまぼこ型のマグネットを使用することにより、界磁力のバラツキによるコギングトルクも1.4まで低減できている。時間次数「10」は、12スロットのステータの各ティースのバラツキによるものである。モールド成形後の切削加工により内径真円度を向上させる結果、ティースのバラツキによるコギングトルクも2.6まで低減できている。
時間次数「0」は、DC成分であり、いわゆるロストルク(回転数がほぼ零のとき発生する摩擦トルク)である。ロストルクも26.3mNmと低減できているので、ステアリングから手を離した場合でも、ステアリングが直進方向に戻ろうとする復元力に対して、ロストルクの方が小さいため、ステアリングの復元性が向上する。
以上のように、各コギングトルク成分を低減できた結果、図4(A)に示すように、コギングトルクは、9mNmまで低減できている。EPSモータの最大トルクは4.5Nmであるため、コギングトルクは0.2%(=9mNm/4.5Nm)(定格の3/1000以下)と小さくできている。また、ロストルクも、0.57%(=26.3mNm/4.5Nm)と小さくできている。
本実施例のEPSモータ100は、車載のバッテリー(例えば出力電圧12V)を電源とするモータである。EPSモータ100の取り付け位置は、ステアリングの近傍やステアリングの回転力を車輪に伝達するラック&ピニオンギアのラックの近傍に配置される。従って、取り付け位置の制限から小型化する必要がある。その一方では、ステアリングをパワーアシストするために大トルク(例えば、4.5Nm)を必要とする。
必要とされるトルクをAC100Vを電源とするACサーボモータで出力しようとすると、モータ電流は5A程度でよい。しかし、本実施例のようにDC14VをDC/AC変換した14Vの交流で駆動する場合、同じ程度の体積で、同じ程度のトルクを出力するためには、モータ電流を70A〜100Aとする必要がある。このような大電流を流すため、ステータコイル114の直径は1.6φと大径とする必要がある。このとき、ステータコイル114の巻回数は、14ターン(T)としている。ステータコイル114の巻回数は、ステータコイル114の線径にもよるが、例えば、9〜21Tである。ステータコイル114の直径は1.8φとしたとき、ターン数は9Tとなる。ここで、1.8φのコイルに対して、1.6φのコイルを巻回した方が占積率を、例えば、75%まで向上することができる。占積率を大きくできるため、導体の電流密度を相対的に小さくできる。その結果、銅損を低減でき、モータの温度上昇を抑え、さらに、回転数−トルク特性を向上できる。なお、最近の車両では、42Vのバッテリーを搭載する電動車両などがあるが、この場合、モータ電流を小さくすることができるため、ステータコイル114の巻回数は20〜30Tとなる。
隣接するティース112Tにおいて、ティース112Tの先端(ロータ130と面する側)の拡大部の間隔W1(例えば、ティース112T(U1−)とティース112T(W1−)の先端の拡大部の間隔W1(最も周方向に近接する部位の周方向間隔))は、1mmとしている。このように、ティースの間隔を狭くすることにより、コギングトルクを低減することができる。しかも、モータに振動が加えられたとしても、間隔W1よりもステータコイル114の線形が太いため、ティースの間から、ロータ側にステータコイル114が抜け落ちることを防止できる。隣接するティースの間隔W1は、例えば、ステータコイル114の線径以下の0.5mm〜1.5mmが好適である。このように、本実施例では、隣接するティースの間隔W1を、ステータコイル114の線径以下としている。
次に、図5及び図6を用いて、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるステータコイルの結線関係について説明する。
図5は、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるステータコイルの結線図である。図6(A)は、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるステータコイルの結線状態を示す側面図であり、図6(B)は、図6(A)からホルダHの図示を省略したステータコイルの結線状態を示す側面図である。なお、図6(A)は、図1のB−B矢視図である。また、図2と同一符号は、同一部分を示している。
図5において、コイルU1+は、図2に示したティース112T(U1+)を示している。コイルU1−,U2+,U2−,V1+,V1−,V2+,V2−,W1+,W1−,W2+,W2−も、それぞれ、図2に示したティース112T(U1−),…,112T(W2−)を示している。
本実施例のステータコイルは、U相,V相,W相を、デルタ(Δ)結線としている。また、各相は、それぞれ並列回路を構成している。すなわち、U相について見ると、コイルU1+とコイルU1−の直列回路に対して、コイルU2+とコイルU2−の直列回路を並列接続している。ここで、コイルU1+とコイルU1−とは、前述したように、1本の線を連続的に巻回してコイルを構成している。また、V相,W相についても、同様である。
結線方法をデルタ結線とすることにより、スター結線に比べて端子電圧を低くすることができる。例えば、U相の直並列回路の両端電圧をEとするとき、端子電圧はEであるが、スター結線では、√3Eとなる。端子電圧を低くできるため、コイルのターン数を大きくでき、線径の細い線を使用できる。また、並列回路とすることにより、4コイルが直列の場合に比べて、各コイルに流す電流を小さくできる点からも、線径の細い線を使用することができるので、占積率を高くすることができ、また、曲げやすく、製作性も良好となる。
次に、図5及び図6を用いて、結線リングによる3相及び各相毎の結線方法について説明する。
図5に示すように、コイルU1−,U2−,V1+,V2+は、結線リングCR(UV)により接続される。コイルV1−,V2−,W1+,W2+は、結線リングCR(VW)により接続される。コイルU1+,U2+,W1−,W2−は、結線リングCR(UW)により接続される。以上のように結線すれば、3相デルタ結線とすることができる。
そこで、図6(A),(B)に示すように、3つの結線リングCR(UV),CR(VW),CR(UW)を用いる。結線リングCR(UV),CR(VW),CR(UW)は、大電流を流すことができるように、バスバータイプの結線板を円弧状に曲げ加工して用いている。各結線リングは、同一形状を有している。例えば、結線リングCR(UV)は、小半径の円弧と、大半径の円弧を接続した形状となっている。他の結線リングCR(VW),CR(UW)も同一構成である。これらの結線リングCR(UV),CR(VW),CR(UW)は、周方向に120度ずらした状態で、ホルダHにより保持されている。なお、結線リングCR(UV),CR(VW),CR(UW)とホルダHとの関係については、図7及び図8を用いて後述する。
結線リングCR(UV)は、加締め部CU(V1+)にてステータコイル114(V1+)の端部T(V1+)と接続され、加締め部CU(U1−)にてステータコイル114(U1−)の端部T(U1−)と接続され、加締め部CU(V2+)にてステータコイル114(V2+)の端部T(V2+)と接続され、加締め部CU(U2−)にてステータコイル114(U2−)の端部T(U2−)と接続される。
同様にして、結線リングCR(VW)は、加締め部CU(W1+)にてステータコイル114(W1+)の端部T(W1+)と接続され、加締め部CU(V2−)にてステータコイル114(V2−)の端部T(V2−)と接続され、加締め部CU(W2+)にてステータコイル114(W2+)の端部T(W2+)と接続され、加締め部CU(V1−)にてステータコイル114(V1−)の端部T(V1−)と接続される。さらに、結線リングCR(WU)は、加締め部CU(U2+)にてステータコイル114(U2+)の端部T(U2+)と接続され、加締め部CU(W2−)にてステータコイル114(W2−)の端部T(W2−)と接続され、加締め部CU(U1+)にてステータコイル114(U1+)の端部T(U1+)と接続され、加締め部CU(W1−)にてステータコイル114(W1−)の端部T(W1−)と接続される。
ステータコイル端部T(U1+)は、ティース112T(U1+)に巻回されたステータコイル114(U1+)の一方の端部である。ステータコイル端部T(U1−)は、ティース112T(U1−)に巻回されたステータコイル114(U1−)の一方の端部である。ステータコイル114(U1+)とステータコイル114(U1−)とは、前述したように、1本の線で連続的にコイルを形成しているため、2つのコイル114(U1+),114(U1−)に対して、2つの端部T(U1+),T(U1−)が存在する。ステータコイル端部T(U2+),T(U2−),T(V1+),T(V1−),T(V2+),T(V2−),T(W1+),T(W1−),T(W2+),T(W2−)は、それぞれ、ステータコイル114(U2+),…,(W2+)の一方の端部である。
ステータコイル端部T(U1−),T(U2−),T(V1+),T(V2+)は、結線リングCR(UV)により接続され、これにより、図5に示したコイルU1−,U2−,V1+,V2+の結線リングCR(UV)による接続が行われる。ステータコイル端部T(V1−),T(V2−),T(W1+),T(W2+)は、結線リングCR(VW)により接続され、これにより、図5に示したコイルV1−,V2−,W1+,W2+の結線リングCR(VW)による接続が行われる。ステータコイル端部T(W1−),T(W2−),T(U1+),T(U2+)は、結線リングCR(UW)により接続され、これにより、図5に示したコイルU1+,U2+,W1−,W2−の結線リングCR(UW)による接続が行われる。
以上のようにして、3相の結線リングCR(UV),CR(VW),CR(UW)は同一の形状としているので、金型が1種類になり、金型費の低減が図られる。
次に、図7及び図8を用いて、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおける結線リングの構成について説明する。
図7は、本実施例の電動パワーステアリング用モータに用いる結線リングの構成を示す斜視図である。図8は、本実施例の電動パワーステアリング用モータに用いる結線リングとホルダの関係を示す分解斜視図である。なお、図6と同一符号は、同一部分を示している。
前述したように、3つの結線リングCR(UV),CR(VW),CR(UW)は同一形状であるため、図7では、結線リングCR(UV)を例にして示している。
図7に示すように、結線リングCR(UV)は、4カ所のU字型の加締め部CU(V1+),CU(U1−),CU(V2+),CU(U2−)を備えている。加締め部CUは、ステータコイル114の端部と、ヒュージングを行って電気的に接合される。この接続の方法としては、かしめ,溶接,ろう付け,はんだ付け、などを用いることができる。
また、結線リングCR(UV)の中央部には、モータ軸方向への突出部CT(UV)がある。突出部CT(UV)には、後述するように、バスバーBB(U)の一端が接続され、外部からの電力の供給を受ける。加締め部CU(V1+),CU(U1−)は、突出部CT(UV)の一方の側に設けられ、加締め部CU(V2+),CU(U2−)は、突出部CT(UV)の他方の側に設けられている。結線リングCR(UV)の導体部に必要な断面積は数の多い側の加締め部CUの数で決まるので、このように突出部CT(UV)の両側に同数の加締め部CUをもつことにより、突出部CT(UV)の両側の加締め部CUの数が異なる場合とくらべて、結線リングCR(UV)の導体部に必要な断面積を小さくすることができる。
突出部CT(UV)の先端は、図に示すように更に小さな突起が3つに分かれている。また、図9を用いて後述するように、バスバーBBの接合する側の一端も同様の形状となっている。これは溶接に必要な熱量を小さくし、溶接作業を安定して行うためである。
次に、図8に示すように、樹脂製のホルダHには、予め、3つの溝GR(UV),GR(VW),GR(WU)が形成されている。ホルダHに形成された3つの溝GR(UV),GR(VW),GR(WU)は、それぞれ同一形状であるとともに、周方向に120度ずれた位置に形成されている。3つの結線リングCR(UV),CR(VW),CR(UW)は、それぞれ、溝GR(UV),GR(VW),GR(WU)に収納されることで位置決めされる。
図6(A)に示したように、回転電機のロータの中心から、それぞれ半径方向に見た場合、同一半径方向には、U字型加締め部CUはそれぞれ1つずつ配置されている。したがって、ステータコイルの端部と加締め部CUとをヒュージングにより接続する際、他の加締め部は、ヒュージング作業の際に干渉しないようになっている。
次に、図9を用いて、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるバスバーの構成について説明する。
図9(A)は、本実施例の電動パワーステアリング用モータに用いるバスバーの中の導体の構成を示す斜視図である。図9(B)は、本実施例の電動パワーステアリング用モータに用いるバスバーの構成を示す斜視図である。
図9(A)に示すように、バスバーBB(U),BB(V),BB(W)は、銅板或いは銅合金等からなる伝導性金属板材を、プレス装置で打ち抜いて制作される。バスバーBB(U),BB(V),BB(W)は、それぞれ、一方の端部TA(U),TA(V),TA(W)と、他方の端部TB(U),TB(V),TB(W)とを備えている。一方の端部TA(U),TA(V),TA(W)は、図示のように配置されたとき、互いに平行となる。他方の端部TB(U),TB(V),TB(W)は、図示のように配置されたとき、120度ずつ位置がずれている。
図9(A)に示すようにバスバーBB(U),BB(V),BB(W)を位置決めした状態で、モールドBBMに埋設することで、図9(B)示すバスバー117が製造される。モールドBBMの材料は、PPSであるが、他にもPBTなどの材料が利用できる。
モールドBBMは、バスバーBB(U),BB(V),BB(W)間の絶縁と、バスバーBB(U),BB(V),BB(W)と結線リングCR(UV),CR(VW),CR(UW)との絶縁と、バスバーBB(U),BB(V),BB(W)とフレーム150との絶縁の役目を果たしている。
バスバーBB(U),BB(V),BB(W)の他方の端部TB(U),TB(V),TB(W)は、フレーム150内部で結線リングCR(UV),CR(VW),CR(UW)と溶接される。バスバーBB(U),BB(V),BB(W)の一方の端部TA(U),TA(V),TA(W)は、後述するようにモータ外部でパワーケーブル162に接続された端子163と溶接される。
バスバーBB(U),BB(V),BB(W)によって配線をフレーム150の外部に引き出すことで、パワーケーブル162の取り付けを後工程にすることができ、ティース内径の切削の作業を容易にする。
次に、図10ないし図14を用いて、本実施例の電動パワーステアリング用モータの電磁シールドの構成について説明する。
図10は、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるフレームと端子台とバスバーの位置関係を示す分解斜視図である。図11は、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるパワーケーブル接続部の構成を示す分解斜視図である。図12は、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるパワーケーブルと端子台との溶接部を示す平面図である。図13は、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるカバー取り付け後の外観を示す斜視図である。図14は、本実施例の電動パワーステアリング用モータにおけるカバーを取り付けるネジの位置を示す平面図である。なお、図1〜図9と同一符号は、同一部分を示している。
フレーム150のリア側端部の周壁の一部には切欠部150aが形成されている。切欠部150aは矩形開口部(周面を正面から見た場合)であり、リア側先端から軸方向をフロント側(ステアリング装置に対するモータの固定側)に向かって、周方向の幅よりも短くなるように切削され、周方向の一端から他端までのモータの中心に対する開き(弧)の角度が直角よりも小さくなるように切削されている。フレーム150はモータ外郭あるいはモータ筐体を構成要素の一つである。モータ外郭あるいはモータ筐体の構成要素としてはフロントフランジ(あるいはフロントブラケット)152F,リアフランジ(あるいはリアブラケット)152Rなどもある。モータ外郭あるいはモータ筐体は導電性部材によって製作されており、フロントフランジ152Fが設けられた固定部152FEがステアリング装置(コラム式電動パワーステアリング装置ではステアリングコラム)にボルトにより固定されると、ステアリング装置と電気的に接続され、ステアリング装置を介して接地される。本実施例では、固定部152FEがステアリング装置との電気的な接続部を兼ねている。
切欠部150aが形成されたフレーム150の部位には端子台118が組み付けられている。端子台118は、フレーム150と同じ導電性部材から製作され、バスバー117のターミナルTAとパワーケーブル172の端子163との接続端子部をフレーム150に支持するために設けられており、軸方向リア側に座面が向くようにフレーム150に取り付けられる平板状の台座118aと、切欠部150aが形成されたフレーム150の部位の軸方向端部に嵌着されて台座118aをフレーム150に支持する支持部118cとを備えている。支持部118cは、切欠部150aが形成されたフレーム150の部位の周方向両端部に係合される支柱118bを備えている。支柱118bは台座118aの座面からリア側に向かって軸方向に延びている。台座118aの座面側とは反対側(軸方向フロント側)の面(裏面)には、ネジ孔を有する固定部118dが形成されている。固定部118dは、台座118aの裏面から軸方向フロント側に突出するように台座118aの周方向両端部に設けられており、台座118aの裏面に対して対角状(お互いのネジ孔の軸がずれるよう)に配置されている。
なお、本実施例では、端子台118とフレーム150とを別体にした場合を例に挙げて説明する。端子台118とフレーム150とは一体であっても構わないが、製作性を考慮すると、別体式が好ましい。
端子台118にはバスバー117が組み付けられている。台座118aの座面上にはバスバー117のターミナルTA部分が、フレーム150の切欠部150aから外部に引き出された状態でバスバー117のモールド樹脂BBM(絶縁樹脂)を介して載置されている。バスバーBB側とターミナルTA側との境界にあるモールド樹脂BBM部分には支柱118bとの係合部が形成されている。バスバー117は、その係合部が支柱118bに係合されることにより端子台118に固定される。
なお、本実施例では、モールド樹脂BBMによってモールドされたバスバー117を例に挙げて説明する。樹脂と、バスバーBBおよびターミナルTAとを別部品としても構わないが、作業性を考慮すると、モールド式バスバーが好ましい。
パワーケーブル(あるいは電源ケーブル)172は、EPSモータが交流式であることから、絶縁被覆された3本のケーブル162を備えている。ケーブル162のそれぞれの先端には、ターミナルTAと溶接により接続されるケーブルターミナル163が取り付けられている。3本のケーブル162は、ケーブルターミナル163を含む端部が露出するよに、一つの金属編組165によって覆われている。金属編組165はケーブル162の保護と同時にケーブル162の電磁シールドを構成している。金属編組165の先端部分にはシェル166が接続されている。金属編組165はシェル166に対して加締められている。シェル166は、端子台118にネジ留めによって固定されることによって金属編組165と端子台118とを電気的に接続するとともに、金属編組165を端子台118に固定する。シェル166の先端は、台座118aの座面側をフレーム150側とは反対側の側面から塞ぐように形成されているとともに、台座118aを周方向両側から挟み込んだ状態で固定部118dにネジ留め固定される固定部166aが設けられている。固定部118dのネジ孔と対応する、固定部166aの部位には、ネジが貫通する貫通孔が形成されている。
ターミナルTAおよびケーブルターミナル163のそれぞれの溶接部位には、図12に示すように、小さな3つの突起が形成されている。このように、両ターミナルの溶接部位に3つの突起を設けるのは、溶接に必要な熱量を小さくし、溶接作業を安定して行うためである。ターミナルTAにケーブルターミナル163を溶接する際、両ターミナルの突起は、フレーム150の周方向に沿った台座118aの幅方向に平行に並べられる。このように、両ターミナルの突起を平行に並べるのは、突起を直角に並べた場合に比べて両ターミナルの接続部分を小さく構成するためである。両ターミナルの突起の接続には、加締め,ろう付け,ネジ留めなどを用いてもよい。
台座118aの座面側において、シェル166,フレーム150および端子台118によって覆われていない部分は導電性のカバー119によって覆われている。カバー119は、台座118aの座面側の上面、およびフレーム150の周方向に沿った台座118aの幅方向の側面を覆っている。台座118aの座面側において、フレーム150の周方向に沿った台座118aの幅方向の側面を覆う、カバー119の部位には、固定部118dにネジ留め固定され、ネジが貫通する貫通孔が形成された固定部119aが形成されている。
本実施例では、固定部118dに対して、固定部166aおよび固定部119aがネジによって共締めされるようになっている。また、本実施例では、フレーム150の周方向に沿った台座118aの幅方向両端において、固定部118dの位置がフレーム150の径方向に対してずれているので、固定部166aおよび固定部119aが固定部118dにネジによって固定された後、ネジを回転軸としてシェル166およびカバー119が回転することがない。すなわち固定部118dの位置ずらしは、シェル166およびカバー119の回転止めになっている。
本実施例によれば、シェル166,フレーム150,端子台118およびカバー119を電気的に接続してそれらをステアリング装置を介して接地できるとともに、ターミナルTAとケーブルターミナル163との接続端子部を隙間なく取り囲むことができる。これにより、電磁シールドを形成できる。本実施例の電磁シールドは、フレーム150の外周側のパワーケーブル172の根元部分、すなわちモータ端子部(ターミナルTAとケーブルターミナル163との接続端子部)を利用した状態で形成されるので、電磁シールドの形成にあたって新たなスペースを必要とせず、かつ電動パワーステアリング用モータの大きさに適したコンパクトな構成にできる。
したがって、本実施例によれば、小型で搭載スペースなどに制限がある電動パワーステアリング用モータに適した電磁シールドを提供できる。
次に、図15を用いて、ステータ110の他の構成例について説明する。
図15は、図1のA−A矢視図である。なお、図2と同一符号は、同一部分を示している。
図2に示したステータ110においては、ステータコア112は、円環状のバックコア112Bと、このバックコア112Bとは分離して構成された複数のティース112Tとから構成されている。それに対して、本例では、12個のT字形状のティース一体型分割バックコア112(U1+),112(U1−),112(U2+),112(U2−),112(V1+),112(V1−),112(V2+),112(V2−),112(W1+),112(W1−),112(W2+),112(W2−)から構成されている。すなわち、図2における円環状のバックコア112Bは、周方向に12分割された形状となっている。そして、この分割されたバックコアの部分に、それぞれティースが一体型となった形状となっている。ティース一体型分割バックコア112(U1+),…,112(W2−)は、それぞれ、珪素鋼板などの磁性体の薄板をプレス成形により打ち抜き、それを積層した構成となっている。なお、ロータ130の構成は、図2と同様である。
ティース一体型分割バックコア112(U1+),…,112(W2−)のティース部には、図2と同様に、それぞれ独立した12個のティースそれぞれのティース112T(U1+),…,112T(W2−)には、ステータコイル114(U1+),114(U1−),114(U2+),114(U2−),114(V1+),114(V1−),114(V2+),114(V2−),114(W1+),114(W1−),114(W2+),114(W2−)が集中巻で巻回されている。ステータコイル114(U1+),…,114(W2−)の巻回方向等は、図2と同様である。
ティース一体型分割バックコア112(U1+),…,112(W2−)に、それぞれ、ステータコイル114(U1+),…,114(W2−)を巻回する。次に、ティース一体型分割バックコア112(U1+),…,112(W2−)の周方向の端面に形成された凹部と嵌合形状の凸部とを圧入して、ステータ110の組立が完了する。次に、バックコア112Bの外周側の複数箇所をフレーム150の内周側に圧入した状態で、ステータコア112とステータコイル114とを熱硬化性樹脂MRにより一体モールド成形し、ステータSubAssyを構成する。尚、本実施例では、ステータコア112にステータコイル114を組み込んだものを、フレーム150に圧入した状態で、ステータコア112とステータコイル114とを一体モールドする場合について説明したが、ステータコア112にステータコイル114を組み込んだ状態で、ステータコア112とステータコイル114とを一体モールドし、その後、ステータコア112をフレーム150に圧入されるか、もしくは、フレーム150に圧入後リアフランジ152Rに組み付けて、その後、モールド成形されてもよい。
モールド材によるモールド成形にあたっては、ステータコア112と、ステータコア112の軸方向端部から軸方向に突出するステータコイル114のコイルエンド部を、図示省略した治具とフレーム150によって囲むように、図示省略した治具を、ステータコア112とステータコア112とフレーム150からなる構造体に対して取り付け、図示省略した治具とフレーム150によって囲まれている中に流体状のモールド材を注入し、コイルエンド部,ステータコア112の隙間,ステータコイル114の隙間,ステータコア112とステータコイル114との間の隙間及びステータコア112とフレーム150との間の隙間にモールド材を充填し、モールド材を固化させ、モールド材が固化したら、図示省略した治具を取り外す。
モールド成形したステータSubAssyの内周面、すなわち、ティース一体型分割バックコア112(U1+),…,112(W2−)のティース部の先端部であって、ロータ130と径方向に対向する面側には切削加工が施されている。これにより、ステータ110とロータ130とのギャップのバラツキを低減して、ステータ110の内径真円度をさらに向上させている。また、モールド成形により一体化することにより、モールドしない場合に比べて、ステータコイル114に通電することにより発生する熱の放熱性をよくすることができる。また、モールド成形することにより、ステータコイルやティースの振動を防止することもできる。また、モールド成形した後、内径を切削加工することにより、内径真円度に基づくコギングトルクを低減することができる。コギングトルクを低減することにより、ステアリングの操舵感を向上することができる。
フレーム150の内側には凸部150Tが形成されている。バックコア112Bの外周には、凸部150Tと対応するように凹部112BO2が形成されている。凸部150Tと凹部112BO2は、相互に異なる曲率を有して係合しあう係合部IPを構成しており、軸方向に連続して形成されかつ周方向に間隔をあけて8個設けられている。係合部は圧入部を兼ねている。すなわちフレーム150にステータコア112を固定する場合、係合部の凸部150Tの突端面と凹部112BO2の底面とが圧接するように、フレーム150の凸部150Tにバックコア112Bの凹部112BO2を圧入する。このように、本実施例は、部分圧入によってフレーム150にステータコア112を固定している。この圧入によって、フレーム150とステータコア112との間には微細な空隙が形成される。本実施例では、ステータコア112とステータコイル114とをモールド材M1によってモールドする際、フレーム150とステータコア112との間に形成された空隙にモールド材RMを同時に充填している。また、係合部は、フレーム150に対してステータコア112が周方向に回転することを防止するための回り止め部を兼ねている。
このように、本実施例では、フレーム150にステータコア112を部分的に圧入しているので、フレーム150とステータコア112との間のすべりを大きくしかつ剛性を小さくできる。これにより、本実施例では、フレーム150とステータコア112との間における騒音の減衰効果を向上させることができる。また、本実施例では、フレーム150とステータコア112との間の空隙にモールド材を充填しているので、騒音の減衰効果をさらに向上させることができる。
なお、凸部150Tと凹部112BO2とを非接触として、両者を回り止めとしてのみ用い、この凸部150Tと凹部112BO2の部分以外のフレーム150の内周面に対してバックコア112Bの外周面を圧入するように構成してもよい。この場合、凸部150Tは軸方向に連続して形成される必要はなく、半球状の凸形状でよい、また、個数も1個で十分である。
なお、以上の説明は、10極12スロットのEPSモータについて説明したものであるが、次に、図3に左斜め斜線を施した8極9スロットと10極9スロットのEPSモータについて説明する。
6極9スロットのACモータに対して、8極9スロットと10極9スロットのモータは、磁石磁束の利用率が高くできる。すなわち、6極9スロットのACモータにおける磁石磁束の利用率(kw・ks)は、前述したように、「0.83」となる。一方、8極9スロットと10極9スロットのモータでは、巻線係数kwは0.95であり、スキュー係数ksは1.00であるので、磁石磁束の利用率(kw・ks)は、「0.94」となる。したがって、本実施例の8極9スロットと10極9スロットのモータでは、磁石磁束の利用率(kw・ks)を高くすることができる。
また、コギングトルクの周期は、極数Pとスロット数Sの最小公倍数となるため、6極9スロットのACモータにおけるコギングトルクの周期は、「18」となり、8極9スロットと10極9スロットのモータでは、「72」とできるため、コギングトルクを低減することができる。
さらに、内径真円度の誤差によるコギングトルクも小さくできるものである。すなわち、6極9スロットのACモータにおける内径真円度の誤差によるコギングトルクを、「3.7」とすると、8極9スロットと10極9スロットのモータでは、「1.4」とできるため、内径真円度の誤差によるコギングトルクを低減することができる。さらに、モールド成形したステータSubAssyの内径を切削加工して、内径真円度を向上させる結果、さらに、内径真円度の誤差によるコギングトルクを低減することができる。
なお、8極9スロットと10極9スロットのモータにおいては、図5において説明したような10極12スロットのEPSモータのように、例えば、U相について見ると、コイルU1+とコイルU1−の直列回路に対して、コイルU2+とコイルU2−の直列回路を並列接続する構成はとりえず、コイルU1+,コイルU1−,コイルU2+,コイルU2−を直列接続する必要がある。
次に、図16を用いて、本実施例の電動パワーステアリング用モータを用いた電動パワーステアリングのシステム構成について説明する。
図16は、本実施例の電動パワーステアリング用モータを用いた電動パワーステアリングの構成を示すシステム構成図である。
ステアリングSTを回転させると、その回転駆動力は、ロッドROを介して、マニュアルステアリングギアSTGにより減速して、左右のタイロッドTR1,T2に伝達し、左右の車輪WH1,WH2に伝達され、左右の車輪WH1,WH2を舵取りする。
本実施例によるEPSモータ100は、マニュアルステアリングギアSTGの近傍に取り付けられており、ギアGEを介して、その駆動力をマニュアルステアリングギアSTGに伝達する。ロッドROには、トルクセンサTSが取り付けられており、ステアリングSTに与えられた回転駆動力(トルク)を検出する。制御装置200は、トルクセンサTSの出力に基づいて、EPSモータ100の出力トルクが目標トルクとなるようにEPSモータ100への通電電流を制御する。制御装置200及びEPSモータ100の電源は、バッテリーBAから供給される。
なお、以上の構成は、EPSモータをラック&ピニオンギアの近傍に備えるラック型のパワーステアリングであるが、ステアリングの近傍(ステアリングコラムと呼ばれる機構部分)にEPSモータを備えるコラム型のパワーステアリングに対しても、本実施例のEPSモータ100は同様に適用できるものである。
次に、図17を用いて、本実施例の電動パワーステアリング用モータを制御する制御装置の構成について説明する。
図17は、本実施例の電動パワーステアリング用モータを制御する制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
図17示すように、制御装置200は、インバータとして機能するパワーモジュール210と、パワーモジュール210を制御する制御モジュール220とを備えている。バッテリーBAからの直流電圧は、インバータとして機能するパワーモジュール210によって3相交流電圧に変換され、EPSモータ100のステータコイル114に供給される。
制御モジュール220の中のトルク制御221は、トルクセンサTSによって検出されたステアリングSTのトルクTfと、目標トルクTsとからトルクTeを算出し、これにPI制御(P:比例項、I:積分項)等によってトルク指令、即ち、電流指令Isとロータ130の回転角θ1を出力する。
位相シフト回路222は、エンコーダEよりのパルス、即ち、ロータの位置情報θを、トルク制御回路(ASR)221からの回転角θ1の指令に応じて位相シフトして出力する。正弦波・余弦波発生器2223は、ロータ130の永久磁石磁極の位置を検出するレゾルバ156と、位相シフト回路222からの位相シフトされたロータの位置情報θに基づいて、ステータコイル114の各巻線(ここでは3相)の誘起電圧を位相シフトした正弦波出力を発生する。位相シフト量は、零の場合でもよい。
2相−3相変換回路224は、トルク制御回路(ASR)221からの電流指令Isと正弦波・余弦波発生器223の出力に応じて、各相に電流指令Isa,Isb,Iscを出力する。各相はそれぞれ個別に電流制御系(ACR)225A,225B,225Cを持ち、電流指令Isa,Isb,Iscと電流検出器からの電流検出信号Ifa,Ifb,Ifcに応じた信号を、インバータ(パワーモジュール210)に送って各相電流を制御する。この場合、各相合成の電流は、界磁磁束に直角、あるいは位相シフトした位置に常に形成される。