JP2009108394A - ニッケルで形成された被めっき表面の前処理に用いる活性化処理液及びその活性化処理液を用いた前処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強酸や強アルカリと接触すると容易に浸食される下地金属上に形成された、ニッケルで形成された被めっき表面の前処理に用いる活性化処理液を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、ニッケルで形成された被めっき表面を前処理する活性化処理液として、有機酸を含み、pHが1.0以上で4.0未満の酸性溶液を採用する。この活性化処理液を用いる前処理では、ニッケルで形成された被めっき表面と、液温を50℃以上とした活性化処理液とを、30秒〜120分の間接触させて処理する。また、この活性化処理液は、金属塩やキレート剤を含む活性化処理液とすれば、更に安定した前処理効果を得ることが出来る。
【選択図】なし
【解決手段】上記課題を解決するために、ニッケルで形成された被めっき表面を前処理する活性化処理液として、有機酸を含み、pHが1.0以上で4.0未満の酸性溶液を採用する。この活性化処理液を用いる前処理では、ニッケルで形成された被めっき表面と、液温を50℃以上とした活性化処理液とを、30秒〜120分の間接触させて処理する。また、この活性化処理液は、金属塩やキレート剤を含む活性化処理液とすれば、更に安定した前処理効果を得ることが出来る。
【選択図】なし
Description
本件発明は、ニッケルで形成された被めっき表面の前処理に用いる活性化処理液及びその活性化処理液を用いた前処理方法に関する。
近年の電子部品の軽薄短小化にともない、プリント配線板の高密度化が進行している。一方、軽量化を目的として、銅配線に替えてアルミニウム配線を、特に多層プリント配線板の中間層回路に採用する技術が特許文献1に開示されている。この様な多層プリント配線板では、層間接続のためスルーホールに銅めっきを施す。そして、特許文献1に開示の技術は、スルーホール内に露出したアルミニウム配線に対して、銅めっきが高い密着性を持つような製法及びプリント配線板を提供することを目的として、プリント配線板のアルミニウムに銅めっきするに当たって、前処理として無電解ニッケルめっきを行なっている。このとき、無電解ニッケルめっき法で形成されためっき皮膜が薄い場合には、ニッケル皮膜上へ無電解銅めっきを施すと、無電解銅めっき液は強アルカリ性であり、アルミニウムは両性金属であるため、無電解銅めっき液が無電解ニッケルめっき皮膜のマイクロポアや粒界などを経由してしみこみ、アルミニウム配線を浸食することがある。そして、アルミニウムの溶解反応で発生する水素ガスは、アルミニウムと無電解ニッケルめっき皮膜との間における剥離の原因となる。従って、特許文献1では、ニッケル皮膜の厚さを1.0μm〜5.0μmとして、アルミニウム表面のほぼ全面を覆い、無電解銅めっき液が、ニッケル皮膜のマイクロポアや粒界を経由してアルミニウムを浸食しないようにしている。
また、ニッケル皮膜の表面に更に金属めっきを施す際には、薄いニッケル皮膜における前記結晶粒界やマイクロポアに起因する問題の他に、表面酸化に起因する問題も起こり得る。即ち、ニッケルは酸化しやすい金属であり、イオン交換水で洗浄したり、低酸素濃度の不活性雰囲気で熱処理しても、その表面には酸化膜が形成されてしまう。この酸化膜は、その表面に更に金属めっきを施す際に、めっき皮膜同士の密着性を阻害する原因となることが多い。
そこで、特許文献2には、ニッケルめっき膜が形成された基板に他のめっきを施す前に、基板のニッケルめっきの最表面の酸化膜を容易に除去する、基板のニッケル面の前処理方法を提供することを目的として、ニッケルめっき膜が形成された基板を、水素ガスの気泡が散気した水酸化カリウムの水溶液に浸漬し、上記基板に水素ガスを吹きつけている。これにより、水酸化カリウムの水溶液中に溶解した水素ガスが、金属ニッケルの触媒作用により活性化し、酸化膜である酸化ニッケルが金属ニッケルに還元されるとしている。
また、特許文献3には、ニッケル−リンめっき膜表面上に欠陥の無いめっき膜を成膜するための前処理方法等を提供することを目的として、ニッケル−リンからなる第1のめっき膜を有する基板上に、ニッケルとリン及び/又はホウ素と、任意にV、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Mo、Pd、Sn、W及びReからなる群から選択される1種又はそれ以上の元素とを含む第2のめっき膜を無電解めっき法で形成する場合の、第1のめっき膜の前処理方法が開示されている。そして、この前処理方法は、前記基板上の第1のめっき膜表面の酸化膜を除去する活性化工程と、酸化膜を除去した第1のめっき膜表面を酸化する工程とを含むものである。更に、該方法を、磁気記録媒体用基板の製造方法、及び該製造方法で製造される磁気記録媒体用基板に適用しており、該第一のめっき膜は、アルミニウム合金上に形成している。
前述のように、ニッケル皮膜上に、更に金属めっきを施す場合には、該ニッケルめっき皮膜を備える下地金属を浸食せずに、ニッケル皮膜表面の酸化膜を除去し、後の金属めっき工程での下地金属の浸食も防止するため、ニッケル皮膜は厚めに形成しておくのが通常であった。
そして、特許文献2の実施例には、15℃〜18℃の1N水酸化カリウム水溶液に水素ガスを供給しながら、銅回路上に5μmのニッケル皮膜を備えるプリント配線板を1分間浸漬して酸化皮膜を除去したことが開示されている。同時に、特許文献2の比較例には、該プリント配線板に対して、10wt%の硫酸を用いて1分間と10分間の浸漬処理を行ない、1分間では酸化物の除去が不十分であり、10分間ではニッケルの溶出量が多いことが開示されている。即ち、特許文献2に開示の技術を用いると、ニッケル皮膜の減肉を抑制しつつ表面の酸化皮膜を除去することが出来る。しかし、通常のめっきなどの前処理として水素ガスを用いると、水素の爆発限界が広範囲の濃度領域にあるため、防爆設備とするための投資金額が大きくなる。一方、アルミニウムなどの両性金属下地上に形成されたニッケル皮膜が薄いと、1N水酸化カリウム水溶液は強アルカリであり、ニッケル皮膜の結晶粒界等を経由して下地金属を浸食する現象が現れる。
また、特許文献3の実施例には、アルミニウム合金上に形成された厚さ15μmのニッケル−リン合金皮膜の酸化膜を除去し、表面を1N〜6Nの塩酸で処理して活性化処理した例が開示されている。このとき、活性化処理の温度は10℃〜60℃が好ましいとしている。しかし、特許文献3が開示する60℃の6N塩酸を用いることは、ニッケル−リン合金皮膜の下地であるアルミニウム合金を溶解する能力を有する溶液を、ニッケル−リン合金皮膜の活性化処理に用いることでもある。このとき、ニッケル−リン合金皮膜が薄いと、該6N塩酸が、ニッケル−リン合金皮膜に存在するマイクロポアや結晶粒界を経由してアルミニウム合金に接触する。この様にしてアルミニウム合金の溶解が始まると、アルミニウム合金の浸食と、発生した水素ガスとの相互作用によって、ニッケル−リン合金皮膜に膨れが発生する場合がある。更に、溶解熱によって液温が上昇してゆくと、該アルミニウム合金の溶解は急激に進行し、大量の水素ガスが発生することになる。大量の水素ガスが発生すると、一般的な前処理設備では水素ガスの発生を意識していないため、水素爆発の危険性を伴う処理となる。即ち、特許文献3に開示の技術は、15μm厚さのニッケル合金層を備えているが故に適用が可能な方法であって、めっき皮膜の密着性を向上させる目的で形成するような、サブミクロンオーダー厚さのニッケル皮膜には適用出来ない技術である。
従って、強酸や強アルカリと接触すると容易に浸食される下地金属上に、極薄のニッケル皮膜が形成されている場合であっても、該下地金属を浸食せず、且つ、ニッケル皮膜の減肉を最小限とした、ニッケルで形成された被めっき表面の前処理に用いる活性化処理液が要求されていた。
そこで、鋭意研究の結果、本件発明者等は以下に示すニッケルで形成された被めっき表面の前処理に用いる活性化処理液を用いれば、前記課題を解決出来ることに想到したのである。
本件発明に係る活性化処理液: 本件発明に係る活性化処理液は、ニッケルで形成された被めっき表面を前処理する活性化処理液であって、有機酸を含み、pHが1.0以上で4.0未満の酸性溶液であることを特徴としている。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記有機酸は、カルボン酸、オキシカルボン酸、芳香族カルボン酸から選択された1種又は2種以上であることも好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記有機酸は、その濃度が5×10−5mol/L〜5mol/Lであることも好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、金属塩を含むものであることも好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記金属塩を構成する金属は、ニッケル、事後的に形成するめっき皮膜の構成に用いるのと同一の金属成分及びアルカリ金属から選択される1種又は2種以上であることも好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記金属塩を構成する金属としてニッケルを用いたときのニッケル濃度が1×10−3mol/L〜0.5mol/Lであることも好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、キレート剤を含むものであることも好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、EDTA又はその誘導体から選択された1種又は2種以上であることも好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記キレート剤としてEDTAを用いたときのEDTA濃度が1×10−3mol/L〜0.5mol/Lであることも好ましい。
本件発明に係るニッケルで形成された被めっき表面の前処理方法: 本件発明に係るニッケルで形成された被めっき表面の前処理方法は、該ニッケルで形成された被めっき表面と、液温を50℃以上とした該活性化処理液とを30秒〜120分の間接触させて処理することを特徴としている。
本件発明に係るニッケルで形成された被めっき表面へのめっき方法: 本件発明に係るニッケルで形成された被めっき表面へのめっき方法は、ニッケルで形成された被めっき表面の前処理方法を用いて前処理したニッケルで形成された被めっき表面へのめっき方法であって、該ニッケルで形成された被めっき表面に活性化処理液膜を備えたままめっき液に浸漬してめっきを施すことを特徴としている。
本件発明に係る活性化処理液は、ニッケルで形成された被めっき表面を前処理する活性化処理液であって、有機酸を含み、pHが1.0以上で4.0未満の酸性溶液である。そして、この活性化処理液を、ニッケルで形成された被めっき表面の前処理に用いれば、強酸や強アルカリと接触すると容易に浸食される下地金属上に形成された極薄のニッケル皮膜であっても、該下地金属を浸食しない。また、該ニッケル皮膜の減肉を最小限に抑えながら、その表面に形成されるめっき皮膜の析出形態に影響を与えない表面状態に、ニッケルで形成された被めっき表面を調整出来る。更に、該ニッケル皮膜に存在する結晶粒界を封孔する効果が得られるため、ニッケルで形成された被めっき表面に更にめっきを施す工程でも下地金属が保護される。
本件発明に係る活性化処理液の形態: 本件発明に係る活性化処理液は、ニッケルで形成された被めっき表面を前処理する活性化処理液であって、有機酸を含み、pHが1.0以上で4.0未満の酸性溶液である。ニッケルで形成された被めっき表面の活性化処理が、単に、表面に形成された酸化皮膜を除去することを目的とするのであれば、強酸を用いることが出来る。しかし、この場合には、特許文献3の比較例に開示のように、ニッケル皮膜の減肉が起こってしまう。また、強酸で処理した表面は活性が強く、特許文献3に開示のように、イオン交換水で処理すると酸化皮膜が形成されてしまう。そこで、本件発明では、有機酸を主成分として用い、酸性であっても活性化処理液のpHを1.0以上として、ニッケルで形成された被めっき表面に形成するめっき皮膜の析出形態に影響を与えない表面状態を、ニッケル皮膜の減肉を抑制しつつ調整する。即ち、調整後の表面状態とは、ニッケルで形成された被めっき表面にニッケル酸化物が残留していても、トンネル効果などにより電子の移動が可能であり、その表面に形成されるめっき皮膜の析出形態には影響を与えない状態である。そして、このpH領域であれば、ニッケル皮膜の下地が両性金属であっても、浸食される下地金属は、極微量である。また、有機酸を含むことにより、前記ニッケル皮膜に存在する結晶粒界を封孔する効果が得られ、活性化処理後に高pHの無電解銅めっき液等を用いても、下地金属が浸食されにくくなる。
一方、前記活性化処理液が酸性領域であっても、pHが高めになると、ニッケルの酸化皮膜の形態が、NiO2単独であったのが、Ni2O3やNi3O4などが共存することになる。Ni2O3やNi3O4などが共存するニッケルの酸化物層は、NiO2単独の場合に比べて安定であり、有機酸には溶解しにくい層である。従って、活性化処理液のpHは、Ni2O3等が形成され難い4未満とする。
上記から、本件発明に係る活性化処理液は、その溶液pHが1.5〜3.5の狭い範囲の酸性溶液とすることが、下地金属の浸食防止とニッケルの酸化皮膜に対する処理との両立を最適にするためにはより好ましい。そして、該活性化処理液は有機酸を主成分として含むため、強酸が主成分でpH調製した場合に比べると、pH緩衝液としての機能は備えている。更に、より好ましいpH範囲で、安定した活性化処理を施すためには、緩衝剤を含む活性化処理液とすることも出来る。緩衝剤を含む活性化処理溶液とする場合には、リン酸やホウ酸等を用い、緩衝作用が得られるように適量を添加する。しかし、ここで言う適量は、主成分として含む有機酸の種類や濃度の影響を受けるため、活性化処理液を予め調製し、実験的に緩衝剤を添加して最適な添加量を求めることが好ましい。
上記活性化処理剤の調製では、前記有機酸の所定量を市水やイオン交換水などに溶解する。有機酸源として有機酸そのものを用いて調製すると、活性化処理液のpHが所定範囲よりも低くなる場合がある。この場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などでpHを調製出来る。一方、有機酸源として有機酸の塩類を用いて調製すると、活性化処理液のpHが所定範囲よりも高くなる場合がある。この場合には、硫酸などでpHを調製出来る。活性化処理液の調製に緩衝剤を用いる場合には、活性化処理剤が含むべき成分の全てを溶解し、溶解後のpHが安定してからpH調製を行なう。活性化処理液が含む成分の配合組成が決まっている場合には、濃厚液を作成しておけば、活性化処理液の調製が容易になる。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記有機酸は、カルボン酸、オキシカルボン酸、芳香族カルボン酸から選択された1種又は2種以上であることも好ましい。ここで用いるカルボン酸、オキシカルボン酸や芳香族カルボン酸に特に限定は必要ないが、カルボン酸では酢酸、シュウ酸やマロン酸など、オキシカルボン酸としてはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸やマンデル酸など、芳香族カルボン酸としてはサリチル酸などが好適に使用出来る。そして、入手のし易さや取り扱いの安全性を考えると、各有機酸の塩類を用いても効果は同等であるためより好ましい。有機酸の塩類を用いる場合は、後述する金属塩の添加で好ましく用いられるカチオンを備える塩類から選択する。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記有機酸は、その濃度が5×10−5mol/L〜5mol/Lであることも好ましい。該活性化処理液は、ニッケル皮膜の溶解を抑制しつつ表面状態を調整するため、活性化処理液が含む有機酸の量は少なくても構わない。しかし、溶出したニッケルイオンを安定して溶解し、活性化処理液の寿命を長期化するためには、pH緩衝剤としての機能も発揮出来る濃度とすることが好ましい。この観点からすると、該有機酸濃度が5×10−5mol/Lを下回るとpHが不安定になり、安定した活性化処理が継続出来なくなる傾向が現れるため好ましくない。一方、該有機酸の濃度は、ニッケルの酸化皮膜に対する処理能力を有する濃度範囲であれば良く、上限は溶解度付近となる。しかし、5mol/Lを超える濃度としても、ニッケルで形成された被めっき表面の調整能力や、pH緩衝剤としての機能の向上はほとんど見られなくなるため、資源の無駄遣いである。従って、上記観点から、より効果的な活性化処理を実施するには、前記有機酸の濃度を1×10−4mol/L〜1mol/Lとすることがより好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、金属塩を含むものであることも好ましい。該活性化処理液は、有機酸のみを用いて建浴し、アンモニア水を用いてpH調製してあれば金属塩を含まないものではある。しかし、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いてpH調製すれば、アルカリ金属が混入する。そして、活性化処理を行なうと、ニッケルイオンが不可避的に混入してくる。また、ニッケル皮膜の下地金属がアルミニウム合金やマグネシウム合金等であれば、これらの金属も微量ではあっても混入してくる。
即ち、実操業においては、金属イオン、特にニッケルイオンの混入が不可避である。しかし、活性化処理液には、処理能力のバラツキを少なくして、安定した活性化処理を可能にすることが要求される。そして、活性化処理液中の金属イオン濃度が低いと、ニッケルで形成された被めっき表面からニッケルが溶出する際に、ニッケルで形成された被めっき表面近傍のニッケル濃度差に起因して電位のバラツキが発生することがある。すると、活性化処理を施した表面に無電解銅めっき等を施した場合にむらになることがある。この観点から、活性化処理液中の金属濃度むらは小さいことが好ましい。そして、建浴時点から金属塩を含ませておけば、不可避的に金属成分が混入しても、その濃度変動は小さくなり、部分的な濃度むらも小さくすることが出来る。しかし、含ませるべき金属塩の量は、活性化処理液が含む有機酸の量や種類、そしてその他の含有成分によって異なってくる。従って、実操業においては、最も安定した活性化処理操作が可能となるように、試行錯誤により金属塩の濃度範囲を設定することが好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記金属塩を構成する金属は、ニッケル、事後的に形成するめっき皮膜の構成に用いるのと同一の金属成分及びアルカリ金属から選択される1種又は2種以上であることも好ましい。ここで用いる金属塩は、活性化溶液に溶解可能であれば、どのような金属塩をも対象と出来る。しかし、前述のように、ニッケルは、ニッケルで形成された被めっき表面に活性化処理を施すことによって、不可避的に混入してくる金属成分である。従って、ニッケル塩を含むことがより好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記金属塩を構成する金属としてニッケルを用いたときのニッケル濃度が1×10−3mol/L〜0.5mol/Lであることも好ましい。このニッケル濃度は、活性化処理に伴って溶出するニッケルによる、濃度の変動を抑制することを目的としているため、保有液量や、特に攪拌条件で下限濃度が異なってくる。しかし、ニッケル濃度が1×10−3mol/Lを下回ると、激しい攪拌に起因して、ニッケルで形成された被めっき表面に液流模様が発生する場合があるため、好ましくない。一方、ニッケル濃度が0.5mol/Lを超えると、活性化処理液のpH調整が困難になる場合があるため、好ましくない。この観点から、より好ましいニッケル濃度範囲は、2×10−3mol/L〜0.2mol/Lである。
本件発明に係る活性化処理液においては、キレート剤を含むものであることも好ましい。キレート剤はニッケルで形成された被めっき表面近傍で溶解してくるニッケルイオンを固定し、表面電位を均一にする機能を発揮する。その結果、活性化処理を施したニッケルで形成された被めっき表面に、例えば無電解銅めっき等を施すと、むらの無い、均一なめっき銅表面を備えるようになる。そして、この効果は、キレート剤の機能を果たす有機酸を含む活性化処理液が本来有している機能でもある。しかし、ニッケルの酸化皮膜に対する処理能力とのバランスが常に良好であるとは考えにくい。ニッケルで形成された被めっき表面の酸化状態が常に一定であるとは限らないからである。また、ニッケル皮膜の下地金属や、ニッケル皮膜の厚さによっても、活性化処理液の組成を調整する必要がある。即ち、ニッケルの酸化皮膜に対する処理能力を優先して選択した有機酸を含む活性化処理剤の組成とする場合等も含め、キレート剤を含む活性化処理液とすることが、活性化処理後のニッケルで形成された被めっき表面に、均一なめっき金属皮膜を形成するためには好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記キレート剤はEDTA又はその誘導体から選択された1種又は2種以上であることも好ましい。EDTAは、化学分析にも用いられるものであり、ニッケルと安定した錯化合物を形成するため好ましい。
本件発明に係る活性化処理液においては、前記キレート剤としてEDTAを用いたときのEDTA濃度が1×10−3mol/L〜0.5mol/Lであることも好ましい。EDTA濃度が1×10−3mol/Lを下回ると、ニッケルイオンを活性化処理液中で固定する効果が乏しくなり、キレート剤として含ませた効果が発揮出来ないため好ましくない。一方、EDTA濃度が0.5mol/Lを超えて含むと、活性化処理液中の有機酸が処理出来る酸化ニッケル量を超えるニッケルイオンを処理する能力を備えることになる。即ち、キレート剤として機能しない成分が、該活性化処理液中に存在することになり、資源の無駄遣いである。従って、該活性化処理液が含む、有機酸の種類や濃度に関係なく調整するには、EDTA濃度は、2×10−3mol/L〜0.2mol/Lとすることがより好ましい。
本件発明に係るニッケルで形成された被めっき表面の前処理方法: 本件発明に係るニッケルで形成された被めっき表面の前処理方法においては、該ニッケルで形成された被めっき表面と、液温を50℃以上とした該活性化処理液とを30秒〜120分の間接触させて処理する。このニッケルで形成された被めっき表面の前処理方法で用いる該活性化処理液は、前述のように、ニッケル皮膜自身やその下地金属の浸食を抑制するため、酸化ニッケルを溶解する能力が大きいとは言えない組成を備える。従って、液温が50℃を下回ると反応速度が著しく低下し、ニッケルで形成された被めっき表面の活性化処理には長時間を要することになり好ましくない。
一方、液温の上限については有機酸の揮発や有機酸の金属塩の沈殿などに留意して設定すれば良く、特に設定する必要は無い。しかし、90℃を超えて維持することは、活性化処理を施す処理槽や付帯設備を構成する物品の材質に制約が大きくなると同時に、温度維持に必要なエネルギーコストが増大し、液温のバラツキも大きくなるために好ましくない。従って、反応速度が安定した温度領域で活性化処理を行なうためには、活性化処理液の液温は、60℃〜90℃とすることがより好ましい。
そして、処理時間が30秒を下回ると、如何に該活性化処理液の温度を高くして処理しても、ニッケルで形成された被めっき表面に処理むらが残ってしまう。その結果、このニッケルで形成された被めっき表面に更にめっきを施すと、めっき表面に色むらが見られるようになる。また、封孔処理に十分な効果が得られない場合もあるため、好ましくない。一方、処理時間が120分を超えて活性化処理を施しても、ニッケルで形成された被めっき表面における表面状態の調整はそれ以上進行せず、微量ではあっても、ニッケル皮膜の溶解のみが進行してしまう。また、キレート剤を含む場合には、キレート剤がニッケルで形成された被めっき表面に吸着し、ニッケルで形成された被めっき表面に色むらが発生することがあるため好ましくない。
本件発明に係るニッケルで形成された被めっき表面へのめっき方法: 本件発明に係るニッケルで形成された被めっき表面へのめっき方法においては、ニッケルで形成された被めっき表面の前処理方法を用いて前処理したニッケルで形成された被めっき表面に活性化処理液膜を備えたままめっき液に浸漬してめっきを施す。該活性化処理液は、その組成から明らかなように、ニッケルなどの金属イオンを高濃度では含まない。そして、前記特許文献3に開示の技術によれば、ニッケルで形成された被めっき表面を強酸を用いて活性化処理し、その後イオン交換水を用いて水洗すると、ニッケル表面は酸化する。そして、この酸化皮膜上にニッケルめっきを施すのであれば密着性は良好のようであるが、ニッケルで形成された被めっき表面上にめっきで形成する金属皮膜はニッケルに限らない。従って、活性化処理を施した後水洗せず、活性化処理液膜を備えたままめっき液に浸漬すれば、ニッケル表面は水洗や風乾による酸化が防止され、安定した表面状態を維持出来る。この様な操作を行なっても、該活性化処理液が含む金属イオンは少ないため、めっき液中に蓄積して悪影響を及ぼすことが無い。また、事後的に形成するめっき皮膜の構成に用いるのと同一の金属成分を活性化処理液に含ませておけば、影響は更に軽微になる。即ち、ニッケルで形成された被めっき表面上に更にニッケルめっきを施す場合には、ニッケルで形成された被めっき表面に付着した活性化処理液の影響は非常に小さい。また、高pH領域のめっき液を用いる場合などには、ニッケル皮膜の結晶粒界に対する封孔効果と相まって、より大きな下地金属の保護効果を発揮する。
ニッケル被めっき材の作成: 実施例1では、無電解ニッケルめっきを施したアルミニウム基材を作成し、活性化処理液で前処理を施すニッケル被めっき材として用いた。具体的には、厚さ0.3mmで25mm×30mmサイズの純アルミニウム基材(純度:99.85%)を用い、以下に記載の処理を順次施し、3μm厚さの無電解ニッケルで形成されためっき皮膜を備えるニッケル被めっき材を作成した。メルクリーナーSC−7001(メルテックス株式会社製)を用いた脱脂処理(液温70℃で30秒間浸漬)後30秒間水洗。メルプレートE−7121(メルテックス株式会社製)を用いたエッチング処理(室温で30秒間)後30秒間水洗。メルプレートコンディショナー7230(メルテックス株式会社製)を用いたコンディショニング(室温で20秒間)後30秒間水洗。メルプレートFZ−7350(メルテックス株式会社製)を用いた第1亜鉛置換処理(室温で20秒間)後30秒間水洗。20wt%の硝酸を用いた亜鉛剥離(室温で10秒間)後30秒間水洗。メルプレートFBZ(メルテックス株式会社製)を用いた第2亜鉛置換処理(室温で30秒間)後30秒間水洗。無電解ニッケルめっき液(メルプレート NI−869:メルテックス株式会社製)を用いた無電解ニッケルめっき(液温85℃で10分間浸漬)後30秒間水洗して風乾。以上の工程を纏めて図1に示す。このようにして作成したニッケル被めっき材を、実施例及び比較例を通して、共通で用いた。
活性化処理液の調製: 実施例1では、イオン交換水を用い、有機酸としてオキシカルボン酸であるクエン酸を0.5mol/L含む水溶液とし、苛性ソーダでpHを2.3に調整して活性化処理液1を調製した。この活性化処理液1の組成を、実施例2〜実施例8及び比較例で調製した活性化処理液の組成と併せて、後の表1に示す。
活性化処理: 容量1.0Lのビーカーに、前記活性化処理液1を1.0L入れ、液温を80℃としてマグネチックスターラーの回転数200rpmで攪拌した。この活性化処理液に、前記ニッケル被めっき材を、樹脂コーティングした鉄線で組んだラックに載せ、10分間浸漬してニッケルで形成された被めっき表面に活性化処理を施して水洗し、活性化処理済み基板1を得た。このときの活性化処理条件を、実施例2〜実施例8及び比較例で実施した活性化処理条件と併せて、後の表2に示す。
無電解銅めっき: 前記活性化処理済み基板1を、樹脂コーティングした鉄線で組んだラックに載せたまま、無電解銅めっき液(CuSO4・5H2O濃度が0.03mol/L、EDTA・2Na濃度が0.04mol/L、HCHO濃度が0.1mol/L、NaCN濃度が30mg/Lそしてα・α’−ビピリジル濃度が10mg/LでpHが12.5)に、液温60℃で60分間浸漬し、活性化処理済み基板1の表面に5μm厚さの無電解銅めっき皮膜を形成した。無電解銅めっき皮膜を形成した基板はイオン交換水で洗浄して風乾し、試験片1を得た。
活性化処理の効果の確認: 活性化処理の効果の確認は、試験片1を折り曲げて破断し、外側の破断面におけるめっき面の状態を、倍率が50〜1000倍のルーペを用いて観察した。具体的には、倍率200倍で異常の有無を観察し、異常部が存在する場合には、その異常部を倍率500倍で観察し、めっき面の状態を判定した。観察による外観の判定基準は、基材表面のアルミニウムとニッケルで形成されためっき皮膜との間で剥離が観察された場合には「膨れ有り」、ニッケルで形成された被めっき表面と無電解銅めっき皮膜との間で剥離が観察された場合には「剥がれ有り」とした。この基準で試験片1の折り曲げ破断面を評価した結果、膨れ及び剥がれ共に無しであった。評価結果を、実施例2〜実施例8及び比較例の評価結果と併せて、後の表2に示す。
実施例2では、実施例1で用いた活性化処理剤に、更にキレート剤としてEDTA2Naを0.1mol/L、金属塩としてNiSO4を0.1mol/L含む水溶液を調整し、苛性ソーダでpHを2.0に調整した活性化処理液2を用いた以外は、実施例1と同様にしてニッケル被めっき材に活性化処理を施した。この活性化処理液2の組成を、実施例1、実施例3〜実施例8及び比較例で調製した活性化処理液の組成と併せて、後の表1に示す。そして、活性化処理は実施例1と同様にして、活性化処理済み基板2を得た。活性化処理条件を、実施例1、実施例3〜実施例8及び比較例で実施した活性化処理条件と併せて、後の表2に示す。
上記にて得られた活性化処理済み基板2に、実施例1と同様の条件で無電解銅めっきを施し、試験片2を得た。そして、前記基準で試験片2の折り曲げ破断面を評価した結果、実施例1における試験片1と同様、膨れ及び剥がれ共に無しであった。評価結果を、実施例1、実施例3〜実施例8及び比較例の評価結果と併せて、後の表2に示す。
実施例3では、実施例2で用いた活性化処理剤のpHを3.0に調整した活性化処理液3を用いた以外は、実施例1と同様にしてニッケル被めっき材に活性化処理を施した。この活性化処理液3の組成を実施例1、実施例2、実施例4〜実施例8及び比較例で調製した活性化処理液の組成と併せて、後の表1に示す。そして、活性化処理は実施例1と同様にして、活性化処理済み基板3を得た。活性化処理条件を、実施例1、実施例2、実施例4〜実施例8及び比較例で実施した活性化処理条件と併せて、後の表2に示す。
上記にて得られた活性化処理済み基板3に、実施例1と同様の条件で無電解銅めっきを施し、試験片3を得た。そして、前記基準で試験片3の折り曲げ破断面を評価した結果、前記試験片1及び試験片2と同様、膨れ及び剥がれ共に無しであった。評価結果を、実施例1、実施例2、実施例4〜実施例8及び比較例の評価結果と併せて、後の表2に示す。
実施例4では、実施例1で用いたクエン酸に代えてオキシカルボン酸である酒石酸を用い、酒石酸濃度0.1mol/L、溶液pH2.0に調製した活性化処理剤4を用いた以外は、実施例1と同様にしてニッケル被めっき材に活性化処理を施した。この活性化処理液4の組成を実施例1〜実施例3、実施例5〜実施例8及び比較例で調製した活性化処理液の組成と併せて、後の表1に示す。そして、活性化処理は実施例1と同様にして、活性化処理済み基板4を得た。活性化処理条件を、実施例1〜実施例3、実施例5〜実施例8及び比較例で実施した活性化処理条件と併せて、後の表2に示す。
上記にて得られた活性化処理済み基板4に、実施例1と同様の条件で無電解銅めっきを施し、試験片4を得た。そして、前記基準で試験片4の折り曲げ破断面を評価した結果、前記試験片1〜試験片3と同様、膨れ及び剥がれ共に無しであった。評価結果を、実施例1〜実施例3、実施例5〜実施例8及び比較例の評価結果と併せて、後の表2に示す。
実施例5では、実施例1で用いたクエン酸に代えてオキシカルボン酸であるリンゴ酸を用い、リンゴ酸濃度0.1mol/L、溶液pH2.3に調製した活性化処理剤5を用いた以外は、実施例1と同様にしてニッケル被めっき材に活性化処理を施した。この活性化処理液5の組成を実施例1〜実施例4、実施例6〜実施例8及び比較例で調製した活性化処理液の組成と併せて、後の表1に示す。そして、活性化処理は実施例1と同様にして、活性化処理済み基板5を得た。活性化処理条件を、実施例1〜実施例4、実施例6〜実施例8及び比較例で実施した活性化処理条件と併せて、後の表2に示す。
上記にて得られた活性化処理済み基板5に、実施例1と同様の条件で無電解銅めっきを施し、試験片2を得た。そして、前記基準で試験片5の折り曲げ破断面を評価した結果、前記試験片1〜試験片4と同様、膨れ及び剥がれ共に無しであった。評価結果を、実施例1〜実施例4、実施例6〜実施例8及び比較例の評価結果と併せて、後の表2に示す。
実施例6では、実施例1で用いたクエン酸に代えてオキシカルボン酸であるグルコン酸を用い、グルコン酸濃度0.1mol/L、溶液pH2.4に調製した活性化処理剤6を用いた以外は、実施例1と同様にしてニッケル被めっき材に活性化処理を施した。この活性化処理液6の組成を実施例1〜実施例5、実施例7、実施例8及び比較例で調製した活性化処理液の組成と併せて、後の表1に示す。そして、活性化処理は実施例1と同様にして、活性化処理済み基板6を得た。活性化処理条件を、実施例1〜実施例5、実施例7、実施例8及び比較例で実施した活性化処理条件と併せて、後の表2に示す。
上記にて得られた活性化処理済み基板6に、実施例1と同様の条件で無電解銅めっきを施し、試験片6を得た。そして、前記基準で試験片6の折り曲げ破断面を評価した結果、前記試験片1〜試験片5と同様、膨れ及び剥がれ共に無しであった。評価結果を、実施例1〜実施例5、実施例7、実施例8及び比較例の評価結果と併せて、後の表2に示す。
実施例7では、実施例1で用いたクエン酸に代えてカルボン酸であるマロン酸を用い、マロン酸濃度0.1mol/L、溶液pH1.9に調製した活性化処理剤7を用いた以外は、実施例1と同様にしてニッケル被めっき材に活性化処理を施した。この活性化処理液7の組成を実施例1〜実施例6、実施例8及び比較例で調製した活性化処理液の組成と併せて、後の表1に示す。そして、活性化処理は実施例1と同様にして、活性化処理済み基板7を得た。活性化処理条件を、実施例1〜実施例6、実施例8及び比較例で実施した活性化処理条件と併せて、後の表2に示す。
上記にて得られた活性化処理済み基板7に、実施例1と同様の条件で無電解銅めっきを施し、試験片7を得た。そして、前記基準で試験片7の折り曲げ破断面を評価した結果、前記試験片1〜試験片6と同様、膨れ及び剥がれ共に無しであった。評価結果を、実施例1〜実施例6、実施例8及び比較例の評価結果と併せて、後の表2に示す。
実施例8では、実施例1で用いたクエン酸に代えてオキシカルボン酸であるマンデル酸を用い、マンデル酸濃度0.1mol/L、溶液pH2.2に調製した活性化処理剤8を用いた以外は、実施例1と同様にしてニッケル被めっき材に活性化処理を施した。この活性化処理液8の組成を実施例1〜実施例7及び比較例で調製した活性化処理液の組成と併せて、後の表1に示す。そして、活性化処理は実施例1と同様にして、活性化処理済み基板8を得た。活性化処理条件を、実施例1〜実施例7及び比較例で実施した活性化処理条件と併せて、後の表2に示す。
上記にて得られた活性化処理済み基板8に、実施例1と同様の条件で無電解銅めっきを施し、試験片8を得た。そして、前記基準で試験片8の折り曲げ破断面を評価した結果、前記試験片1〜試験片7と同様、膨れ及び剥がれ共に無しであった。評価結果を、実施例1〜実施例7及び比較例の評価結果と併せて、後の表2に示す。
比較例1: 比較例1では、図2に示す無電解銅めっき工程から活性化処理を省略し、実施例1と同様の条件でニッケル被めっき材に無電解銅めっきを施し、試験片11を得た。そして、前記基準で試験片11の折り曲げ破断面を評価した結果、試験片11には膨れが有り、剥がれは無かった。評価結果を、実施例1〜実施例8、比較例2及び比較例3の評価結果と併せて、後の表2に示す。
比較例2: 比較例2では、活性化処理剤12として、硝酸(10 vol%)を用い、液温を25℃として10分間ニッケル被めっき材に活性化処理を施し、活性化処理済み基板12を得た。このときの活性化処理液12の組成を実施例1〜実施例8及び比較例3で調製した活性化処理液の組成と併せて、後の表1に示す。また、活性化処理条件を、実施例1〜実施例8及び比較例3で実施した活性化処理条件と併せて、後の表2に示す。
上記にて得られた活性化処理済み基板12に、実施例1と同様の条件で無電解銅めっきを施し、試験片12を得た。そして、前記基準で試験片12の折り曲げ破断面を評価した結果、試験片12には膨れは無かったが、剥がれが有った。評価結果を、実施例1〜実施例8、比較例1及び比較例3の評価結果と併せて、後の表2に示す。
比較例3: 比較例3では、実施例2で用いた活性化処理剤のpHを、苛性ソーダで4.0に調整した活性化処理剤13を用いた。このときの活性化処理液13の組成を実施例1〜実施例8及び比較例2で調製した活性化処理液の組成と併せて、以下の表1に示す。
そして、活性化処理剤13を用いた以外は、実施例1と同様にしてニッケル被めっき材に活性化処理を施し、活性化処理済み基板13を得た。活性化処理条件を、実施例1〜実施例8及び比較例2で実施した活性化処理条件と併せて、以下の表2に示す。上記にて得られた活性化処理済み基板13に、実施例1と同様の条件で無電解銅めっきを施し、試験片13を得た。そして、前記基準で試験片13の折り曲げ破断面を評価した結果、試験片13には膨れが有り、剥がれも有った。評価結果を、実施例1〜実施例8、比較例1及び比較例2の評価結果と併せて、以下の表2に示す。
実施例と比較例1との対比: 実施例で用いた活性化処理剤では、有機酸濃度が0.1mol/L〜0.5mol/L、pHが1.9〜3.0、そして、EDTAと硫酸ニッケルの添加の有無にかかわらず、該活性化処理剤を用いて活性化処理を施したニッケルで形成された被めっき表面には、密着性が良好な無電解銅めっき皮膜が形成されている。しかし、活性化処理を施していないニッケルで形成された被めっき表面に無電解銅めっきを施した比較例1では、膨れ(Ni/Al間剥離)が発生している。従って、無電解銅めっき液がニッケル被めっき材が備えるニッケル皮膜の粒界を経由して基材表面のアルミニウムを浸食し、発生した水素ガスが膨れを引き起こしたと推測される。
実施例と比較例2との対比: 硝酸(10 vol%)を用いてニッケルで形成された被めっき表面に活性化処理を施した比較例2では、剥がれ(Cu/Ni間剥離)が発生している。従って、10 vol%という高濃度の硝酸を用いた前処理により、ニッケル被めっき材が備えるニッケル皮膜表面に酸化ニッケル皮膜が厚く形成され、無電解銅めっき皮膜との密着性を阻害したと推測される。
実施例と比較例3との対比: クエン酸を用い、EDTAと硫酸ニッケルの添加した活性化処理剤のpHを4.0にした活性化処理剤を用いてニッケルで形成された被めっき表面に活性化処理を施した比較例3では、膨れ(Al/Ni間剥離)と剥がれ(Cu/Ni間剥離)の両方が発生している。従って、該活性化処理剤を用いてニッケルで形成された被めっき表面に前処理を施しても、ニッケルで形成された被めっき表面の表面状態(酸化ニッケル皮膜)調整の効果も封孔効果も得られず、膨れと剥がれとが発生したと推測される。
上記から、有機酸を含む、pHが1.0以上で4.0未満の活性化処理剤を用いる、本件発明に係るニッケルで形成された被めっき表面の前処理は、強酸や高めのpHを備える活性化処理剤に比べ、前処理の効果が安定して得られることが明らかである。
本件発明に係る、有機酸を含むpHが1.0以上で4.0未満の酸性溶液である活性化処理液をニッケルで形成された被めっき表面の前処理に用いれば、強酸や強アルカリと接触すると容易に浸食される下地金属上に形成された極薄のニッケル皮膜であっても、該下地金属を浸食しない。また、ニッケル皮膜の金属層の減肉を最小限に抑えながら、その表面に形成されるめっき皮膜の析出形態に影響を与えない表面状態に調整出来る。更に、ニッケル皮膜に存在する結晶粒界を封孔する効果が得られるため、ニッケルで形成された被めっき表面に更にめっきを施す工程においても下地金属が保護される。従って、電気・電子用途、装飾用途を問わず、アルミニウム表面に銅めっきを施す場合など、銅めっき皮膜の密着性を良好にすることを目的として形成するニッケル皮膜を薄くしても、剥がれや膨れが発生せず、良好な銅めっき皮膜を形成出来る。
Claims (11)
- ニッケルで形成された被めっき表面を前処理する活性化処理液であって、
有機酸を含み、pHが1.0以上で4.0未満の酸性溶液であることを特徴とする活性化処理液。 - 前記有機酸はカルボン酸、オキシカルボン酸、芳香族カルボン酸から選択された1種又は2種以上である請求項1に記載の活性化処理液。
- 前記有機酸は、その濃度が5×10−5mol/L〜5mol/Lである請求項1又は請求項2に記載の活性化処理液。
- 金属塩を含む請求項1〜請求項3のいずれかに記載の活性化処理液。
- 前記金属塩を構成する金属は、ニッケル、事後的に形成するめっき皮膜の構成に用いるのと同一の金属成分及びアルカリ金属から選択される1種又は2種以上である請求項4に記載の活性化処理液。
- 前記金属塩を構成する金属としてニッケルを用いたときのニッケル濃度が1×10−3mol/L〜0.5mol/Lである請求項5に記載の活性化処理液。
- キレート剤を含む請求項1〜請求項6のいずれかに記載の活性化処理液。
- 前記キレート剤はEDTA又はその誘導体から選択された1種又は2種以上である請求項7に記載の活性化処理液。
- 前記キレート剤としてEDTAを用いたときのEDTA濃度が1×10−3mol/L〜0.5mol/Lである請求項8に記載の活性化処理液。
- 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の活性化処理液を用いた、ニッケルで形成された被めっき表面を前処理する方法であって、
該ニッケルで形成された被めっき表面と、液温を50℃以上とした該活性化処理液とを、30秒〜120分の間接触させて処理することを特徴とするニッケルで形成された被めっき表面の前処理方法。 - 請求項10に記載のニッケルで形成された被めっき表面の前処理方法を用いて前処理したニッケルで形成された被めっき表面へのめっき方法であって、
該ニッケルで形成された被めっき表面に活性化処理液膜を備えたままめっき液に浸漬してめっきを施すことを特徴とするニッケルで形成された被めっき表面へのめっき方法。
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JP2011029395A (ja) * | 2009-07-24 | 2011-02-10 | Hitachi Metals Ltd | 電子部品用複合ボールの製造方法 |
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-
2007
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