JP2009099625A - 磁気ランダムアクセスメモリ、及びその初期化方法 - Google Patents

磁気ランダムアクセスメモリ、及びその初期化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁壁移動によって磁気記録層へのデータ書き込みを行い、且つ磁気記録層の磁気異方性が垂直方向である磁気ランダムアクセスメモリに対して、磁気記録層の磁化固定領域及び磁壁位置の初期化を容易に行うための技術を提供する。
【解決手段】本発明の磁気ランダムアクセスメモリは、垂直磁気異方性をもつ強磁性層である磁気記録層10と、ピン層30と、磁気記録層10とピン層30との間に設けられた非磁性のトンネルバリア層32とを具備する。磁気記録層10は、反転可能な磁化を有し、トンネルバリア層32を介してピン層30に接合される磁化反転領域13と、磁化反転領域13に接続され、磁化の向きが固定された磁化固定領域11a、11bを有している。磁化固定領域11a、11bは、その形状が互いに異なっている。
【選択図】図4B

Description

本発明は、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM: Magnetic Random Access Memory)に関しており、特に、書き込み動作において磁壁移動方式を採用するMRAMに関する。
MRAMは、高集積・高速動作の観点から有望な不揮発性メモリである。MRAMにおいては、TMR(Tunnel MagnetoResistance)効果、GMR(Giant MagnetoResistance)効果などの「磁気抵抗効果」を示す磁気抵抗素子がメモリセルとして利用される。磁気トンネル接合(MTJ; Magnetic Tunnel Junction)を有する磁気抵抗素子は、最も典型的な磁気抵抗素子である。磁気トンネル接合は、典型的には、2層の強磁性層と、それらに挟まれたトンネルバリア層とで構成される。その2層の強磁性層の一方は、磁化の向きが固定されたピン層(磁化固定層)であり、他方は、磁化の向きが反転可能なフリー層(磁化自由層)である。
MRAMにおいては、ピン層とフリー層の磁化の相対方向としてデータが記憶される。例えば、ピン層とフリー層の磁化が「反平行」である状態がデータ“1”に対応付けられ、ピン層とフリー層の磁化が「平行」である状態がデータ“0”に対応付けられる。メモリセルに対するデータの書き込みは、フリー層の磁化の向きを反転させることによって行われる。
データの読み出しには、磁気抵抗素子の抵抗値の変化が利用される。ピン層とフリー層の磁化の向きが“反平行”である場合のMTJの抵抗値(R+ΔR)は、磁気抵抗効果により、それらが“平行”である場合の抵抗値(R)よりも大きいことが知られている。MRAMは、このような磁気抵抗素子の抵抗値の変化を、電圧信号又は電流信号として読み取り、その電圧信号又は電流信号からメモリセルに記憶されているデータを識別する。
MRAMに対するデータの書き込み方法としては、「アステロイド方式」や「トグル方式」が知られている。アステロイド方式及びトグル方式では、電流磁界によってフリー層の磁化が反転される。これらの書き込み方式の不利な点は、メモリセルサイズにほぼ反比例して、フリー層の磁化を反転させるために必要な磁界(反転磁界)が大きくなる点である。これらの方式では、メモリセルが微細化されるにつれて、書き込み電流が増加する傾向にある。
微細化に伴う書き込み電流の増加を抑制することができる書き込み方式として、「スピン注入方式」が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。スピン注入方式では、強磁性層にスピン偏極電流(spin-polarized current)が注入され、その電流を担う伝導電子のスピンと強磁性層の磁気モーメントとの間の直接相互作用によって強磁性層の磁化が反転される;以下では、この現象を、「スピントランスファー(spin transfer)効果」ということがある。
特許文献2には、スピントランスファー効果を利用した磁気シフトレジスタが開示されている。この磁気シフトレジスタは、磁性体中の磁壁(domain wall)を利用して情報を記憶する。特許文献2の技術では、多数の領域に分けられた磁性体において、磁壁を通過するように電流が注入され、その電流により磁壁が移動する。各領域の磁化の向きが、記録データとして扱われる。このような磁気シフトレジスタは、例えば、大量のシリアルデータの記録に利用される。磁性体中の磁壁の移動は、非特許文献2にも報告されている。
このようなスピントランスファー効果による磁壁移動(Domain Wall Motion)を利用した磁壁移動方式のMRAMが、特許文献3、特許文献4に開示されている。特許文献3に記載されたMRAMのメモリセルの磁気抵抗素子は、磁化が固定されたピン層と、ピン層上に積層されたトンネル絶縁層と、トンネル絶縁層に積層された磁気記録層とを備える。磁気記録層は、フリー層と同様に、磁化の向きによってデータを記録する強磁性層である。しかしながら、後述されているように、磁気記録層は、磁化の向きが反転可能な部分と実質的に変化しない部分とを含んでいるため、フリー層ではなく磁気記録層と呼ぶことにする。
図1は、特許文献3に開示された磁気記録層の構造を示す平面図である。図1の磁気記録層100は、直線形状を有している。具体的には、磁気記録層100は、トンネル絶縁層及び磁化固定層と重なる磁化反転領域103と、磁化反転領域103に隣接して形成された一対の磁化固定領域101、102を有する。磁化反転領域103と磁化固定領域101、102との境界には、くびれ104が形成されている。磁化固定領域101、102には、互いに反対向きの固定磁化が付与されている。
磁化固定領域101、102には、それぞれ、電流供給端子105、106が接合されている。この電流供給端子105、106を介して、磁気記録層100の磁化反転領域103、及び磁化固定領域101、102を貫通する書き込み電流が流される。
図2は、磁気記録層の構造の他の例を示す平面図である;図2の構造は、例えば、非特許文献3に開示されている。図2の磁気記録層110は、U字型の形状を有している。具体的には、磁気記録層110は、磁化固定領域111、112、及び磁化反転領域113を有している。更にピン層130が、磁化反転領域113と対向するように配置されている。磁化固定領域111、112は、Y軸方向に延伸するように形成されており、その磁化の向きは同じ方向に固定されている。一方、磁化反転領域113は、X軸方向に延伸するように形成されており、反転可能な磁化を有している。従って、磁壁が、磁化固定領域111と磁化反転領域113との境界B1、あるいは、磁化固定領域112と磁化反転領域113との境界B2に形成される。磁化状態の初期化は、例えば、XY面内で斜め45度方向に十分大きな初期磁界を印加することによりおこなわれ、初期磁界を除いた後に、磁化固定領域の磁化が+Y方向、磁化反転領域の磁化が+X方向を向き、磁壁が境界B1に形成された状態が実現される。
磁化固定領域111、112には、それぞれ、電流供給端子115、116が接続されている。これら電流供給端子115、116を用いることにより、磁気記録層110に書き込み電流を流すことが可能である。その書き込み電流の方向に応じて、磁壁は磁化反転領域113の中を移動する。この磁壁移動により、磁化反転領域113の磁化方向を制御することができる。
しかしながら磁壁移動を利用したMRAMでは、書き込み電流の絶対値が比較的大きくなってしまうことが懸念される。非特許文献2のほかにも、磁壁移動の観測は数多く報告されているが、概ね磁壁移動には1×10A/cm付近の閾値電流密度を要している。この場合、例えば磁壁移動の起こる層の幅を100nm、膜厚を10nmとした場合でも書き込み電流は1mAとなる。これ以下に書き込み電流を低減するためには膜厚を薄くすればよいが、この場合には書き込みに要する電流密度は更に上昇してしまうことが知られている(例えば、非特許文献4参照)。
一方、磁気記録層として磁気異方性が基板面に垂直である垂直磁気異方性材料を用いた磁気抵抗素子においては、106A/cm台の閾値電流密度が観測されている(例えば、非特許文献5参照)。磁壁移動を利用したMRAMにおいては、磁気記録層として垂直磁気異方性材料を用いることにより、書き込み電流を低減できることが期待される。
図3Aは、垂直磁気異方性材料を用いた磁気記録層の構造例を示す平面図であり、図3Bは、断面図である。磁気記録層210は、トンネルバリア層を介してピン層に接合する磁化反転領域213と、磁化反転領域213に隣接して形成された一対の磁化固定領域211a、211bを有する。磁化反転領域213と磁化固定領域211a、211bとの境界には、くびれ215が形成されている。
図3A、図3Bに示されている磁気記録層210の一つの問題点は、製造工程において初期化を行うことが困難である点である。ここで初期化とは、(1)磁化固定領域211a、211bの磁化を所望の方向に向けること、及び、(2)磁壁を磁気記録層10の所望の位置に位置させることをいう。図3A、図3Bの一対の磁化固定領域211a、211bには、互いに反対向きの固定磁化が製造工程において付与されていなくてはならない。また、磁壁212a、212bは、くびれ215付近の位置にあるように初期化されなければならない。磁気記録層が面内方向に磁気異方性を有している場合(即ち、磁化が面内方向に向いている場合)、磁気記録層の形状として図2に示されているようなU字形状を採用すれば、外部磁界の印加によって磁化固定部の磁化方向と磁壁位置を所望の状態に初期化することが容易にできる。しかしながら、磁気記録層が膜面に垂直方向に磁気異方性を有している場合は、U字形状を採用しても、外部磁界によって初期化をおこなうことはできない。
特開2005−93488号公報 米国特許第6834005号 特開2005−191032号公報 特願2006−088068号 J.C. Slonczewski, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 159, L1-L7 (1996) Yamaguchi et al., Real-Space Observation of Current-Driven Domain Wall Motion in Submicron Magnetic Wires, PRL, Vol. 92, pp. 077205-1-4, 2004. Numata et al., "Magnetic Configuration of A New Memory Cell Utilizing Domain Wall Motion", Intermag 2006 Digest, HQ-03. Japanese Journal of Applied Physics, vol.45, No.5A, pp.3850-3853, (2006) Applied Physics Letters 90, 072508(2007)
本発明の目的は、磁壁移動によって磁気記録層へのデータ書き込みを行い、且つ磁気記録層の磁気異方性が垂直方向である磁気ランダムアクセスメモリに対して、磁気記録層の磁化固定領域及び磁壁位置の初期化を容易に行うための技術を提供することにある。
一の観点において、本発明の磁気ランダムアクセスメモリは、垂直磁気異方性をもつ強磁性層である磁気記録層と、ピン層と、前記磁気記録層と前記ピン層との間に設けられた非磁性のトンネルバリア層とを具備する。前記磁気記録層は、反転可能な磁化を有し、前記トンネルバリア層を介して前記ピン層に接合される磁化反転領域と、前記磁化反転領域に接続され、磁化の向きが固定された第1磁化固定領域と、前記磁化反転領域に接続され、磁化の向きが固定された第2磁化固定領域とを有している。前記第1磁化固定領域と前記第2磁化固定領域とは、その形状が異なっている。
他の観点において、本発明の初期化方法は、垂直磁気異方性をもつ強磁性層である磁気記録層と、ピン層と、前記磁気記録層と前記ピン層との間に設けられた非磁性のトンネルバリア層とを具備し、前記磁気記録層が、前記トンネルバリア層を介してピン層に接合される磁化反転領域と、第1境界において前記磁化反転領域に接続された第1磁化固定領域と、第2境界において前記磁化反転領域に接続された第2磁化固定領域とを有し、前記第1境界から前記第1磁化固定領域の内部への第1デピン磁界が前記第2境界から前記磁化固定領域への第2デピン磁界よりも小さい磁気ランダムアクセスメモリのための初期化方法である。本発明の初期化方法は、
(a)前記第1磁化固定領域と前記第2磁化固定領域の磁化を前記磁気記録層の膜面に垂直な第1方向に向け、前記磁化反転領域の磁化を前記第1方向と反対の第2方向に向けるステップと、
(b)前記第1デピン磁界より大きく、前記第2デピン磁界よりも小さい磁界を印加することにより前記第1磁化固定領域の磁化を前記第2方向に反転させるステップ
とを具備する。
本発明によれば、磁壁移動によって磁気記録層へのデータ書き込みを行い、且つ磁気記録層の磁気異方性が垂直方向である磁気ランダムアクセスメモリに対して、磁化固定部及び磁壁位置の初期化を容易に行うことができる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
(第1実施例)
1.磁気抵抗素子の構成
図4Aは、第1実施例のMRAMのメモリセルに集積化される磁気抵抗素子1の構造を示す平面図であり、図4Bは断面図である。図4Bに示されているように、磁気抵抗素子1は、磁気記録層10と、ピン層30と、トンネルバリア層32と、金属配線層31とを備えている。磁気記録層10及びピン層30は、強磁性体で形成され、トンネルバリア層32は、非磁性の絶縁体で形成される。トンネルバリア層32は、磁気記録層10とピン層30とに挟まれており、これら磁気記録層10、トンネルバリア層32、及びピン層30によって磁気トンネル接合(MTJ)が形成されている。
磁気記録層10は、その膜面に垂直な方向に磁気異方性を持つ。磁気記録層10の材料としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)のうちから選択される少なくとも一つ以上の材料を含むことが望ましい。さらに、磁気記録層10が白金(Pt)やパラジウム(Pd)を含むことで垂直磁気異方性を安定化することができる。これらに加え、磁気記録層10の材料にB、C、N、O、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Au、Smを添加することによって所望の磁気特性が発現されるように調整することができる。具体的には、磁気記録層10は、Co、Co−Pt、Co−Pd、Co−Cr、Co−Pt−Cr、Co−Cr−Ta、Co−Cr−B、Co−Cr−Pt−B、Co−Cr−Ta−B、Co−V、Co−Mo、Co−W、Co−Ti、Co−Ru、Co−Rh、Fe−Pt、Fe−Pd、Fe−Co−Pt、Fe−Co−Pd、Sm−Coで構成され得る。この他、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも一つの材料を含む層と、異なる層とが積層されることにより磁気記録層10に垂直方向の磁気異方性を発現させることもできる。具体的には、磁気記録層10として、Co/Pd、Co/Pt、Fe/Auの積層体が使用され得る。ピン層30も磁気記録層10と同様な材料を用い、垂直磁気異方性を持つことが望ましい。トンネルバリア層32は、Al膜やMgO膜のような絶縁体で形成される。トンネルバリア層32は、トンネル電流が流れる程度に膜厚が薄い。磁気記録層10、ピン層30の一部、特にトンネルバリア層32と接する部分に、CoFeやCoFeBなどの大きなTMR効果を発現させる材料を用いても良い。
書き込み動作、及び、読み出し動作におけるピン層30の磁化の向きの反転を防ぐために、ピン層30の保磁力Hcpは、磁気記録層10の保磁力Hcrよりも大きいことが望ましい。これは、磁気記録層10とピン層30の材料、及びその組成を変えることにより実現される。また、ピン層30のトンネルバリア層32とは反対側の面に反強磁性体層を積層することにより、反強磁性体層とピン層30との間に交換相互作用を発現させ、これにより、ピン層30の磁化を固定してもよい。さらに、ピン層30として、2層の強磁性層、及びそれらに挟まれた導電性の非磁性層からなるSAF(synthetic antiferromagnet)を使用することもできる。ここで、SAFの非磁性層の材料及び膜厚は、2層の強磁性層を反強磁性的に結合するように選択される;2層の強磁性層の磁化は互いに反平行になる。SAFの非磁性層としては、例えば、Ru膜、Cu膜などが用いられる。2つの強磁性層の磁化を等しくすれば、ピン層30からの漏洩磁界を抑制することができる。なお、後述のように、ピン層30から意図的に磁界を漏洩させ、ピン層30からの漏洩磁界を初期化の際に利用することもできる。
図4Aを参照して、磁気記録層10は、磁化固定領域11a、11bと磁化反転領域13とを有している。図4Bに示されているように、上述のピン層30は、磁化反転領域13に対向するように位置している。言い換えれば、磁化反転領域13の一部が、トンネルバリア層32を介してピン層30に接続されている。磁化固定領域11aには、電流供給端子14aが接続されており、磁化固定領域11bには電流供給端子14bが接続されている。後述されるように、電流供給端子14a、14bは、磁気記録層10に書き込み電流を流すために使用される。
磁化固定領域11a、11bの磁化は、互いに反平行な方向に固定される。図4Bの例では、磁化固定領域11aの磁化は、−Z方向(基板に対して垂直下向き)に固定され、磁化固定領域11bの磁化は、+Z方向(基板に対して垂直上向き)に固定されている。なお、「磁化が固定されている」とは、書き込み動作の前後で磁化の方向が変わらないことを意味する。書き込み動作中に、磁化固定領域11a、磁化固定領域11bの一部の磁化の方向が変化しても、書き込み動作終了後には元に戻る。
一方、磁化反転領域13の磁化の向きは、+Z方向と−Z方向との間で反転可能である。つまり、磁化反転領域13の磁化はピン層30の磁化と平行あるいは反平行になることが許される。図4Bのように磁化反転領域13の磁化の向きが−Z方向の場合、磁化反転領域13と磁化固定領域11aとが1つの磁区(magnetic domain)を形成し、磁化反転領域13と磁化固定領域11bとが別の磁区を形成する。つまり、磁化固定領域11bと磁化反転領域13の間の境界に磁壁(domain wall)が形成される。一方、磁化反転領域13の磁化の向きが+Z方向の場合、磁化固定領域11bと磁化反転領域13とが1つの磁区を形成し、磁化固定領域11aが別の磁区を形成する。つまり、磁化固定領域11aと磁化反転領域13の間の境界に磁壁が形成される。
配線層31は、ピン層30に電気的に接続されており、読み出し動作時に、磁気抵抗素子1にアクセスする際に用いられる。また、後述のように磁化固定領域11a、11bの磁化と、磁気記録層10における磁壁の位置を初期化する際に用いることができる。配線層31はCu、Al、Wなどにより形成される。
図5Aに示されているように、磁化固定領域11a、11bは、異なった形状を有している。これは後述するように、磁気記録層10の初期化を行う際に、磁壁が磁化反転領域13との境界B1、B2から磁化固定領域11a、11bの内部に動くためのデピン磁界を制御するためである。磁化固定領域11a、11bの形状は、デピン磁界Hd1、Hd2が異なるように決定される;ここで、デピン磁界Hd1とは、磁化反転領域13と磁化固定領域11aとの境界B1にピンニングされた磁壁が、デピンされて磁化固定領域11aの内部に移動する磁界であり、デピン磁界Hd2とは、磁化反転領域13と磁化固定領域11bとの境界B2にピンニングされた磁壁が、デピンされて磁化固定領域11bの内部に移動する磁界である。後述のように、デピン磁界Hd1、Hd2が異なるように磁化固定領域11a、11bの形状が決定されていることは、磁気記録層10の初期化を容易にするために重要である。磁化固定領域11a、11bの形状、及び、形状によるデピン磁界への影響の詳細については、後に詳細に説明する。
2.磁化固定領域の初期化
次に本実施例における、磁化固定領域11a、11bの初期化について説明する。上述されているように、磁化固定領域11a、11bの磁化を所望の方向に向け、更に、磁壁を磁気記録層10の所望の位置に位置させることをいう。磁化固定領域11a、11bの磁化は、最終的には、互いに反対方向に向けられなくてはならない。
初期化は、概略的には、下記のようにして行われる:
まず、磁化固定領域11a、11bの磁化が同一の方向に向けられ、更に、磁化反転領域13の磁化を磁化固定領域11a、11bの磁化と反対の方向に向けられる。この状態では、磁壁が磁化反転領域13と磁化固定領域11a、11bの境界B1、B2に位置している。続いて、磁化反転領域13の磁化と同一の方向の磁界が印加される。印加される磁界の大きさは、デピン磁界Hd1、Hd2の一方よりも大きく他方よりも小さくなるように選ばれる;上述のように、デピン磁界Hd1、Hd2が互いに相違していることに留意されたい。デピン磁界Hd1がデピン磁界Hd2よりも小さい場合には、磁界の印加によって磁壁が境界B1からデピンされて磁化固定領域11aの磁化が選択的に反転される;磁化固定領域11bの磁化は反転されない。一方、デピン磁界Hd2がデピン磁界Hd1よりも小さい場合には、磁界の印加によって磁壁が境界B2からデピンされて磁化固定領域11bの磁化が選択的に反転される;磁化固定領域11aの磁化は反転されない。いずれの場合でも、磁界の印加により、磁化固定領域11a、11bの磁化は互いに反対方向に向けられ、初期化が完了する。以下では、初期化において、磁化固定領域11aの磁化を−Z方向に向け、磁化固定領域11bの磁化を+Z方向に向ける場合について説明する。
図6は、本実施例における初期化動作の手順の一例を示す断面図である。最初に磁気記録層10の保磁力Hcrよりも十分大きな磁界を+Z方向に印加した後、それを取り除くことにより、磁気記録層10の全体の磁化が+Z方向に向けられる(ステップ1)。
次に−Z方向に磁界が印加され、磁化反転領域13の少なくとも一部の領域の磁化が−Z方向に反転される(ステップ2)。これにより、磁化反転領域13に、磁化が反転された逆磁区が形成される。このとき、逆磁区(磁化が反転された領域)の両側には磁壁12c、12dが形成される。さらに−Z方向の磁界を大きくしていくと、逆磁区は磁化反転領域13の全体に拡大し、磁壁12c、12dが磁化固定領域11aとの境界B1、及び、磁化固定領域11bとの境界B2にまで達する(ステップ3)。磁壁12c、12dは、磁化反転領域13と磁化固定領域11aとの形状の違い、あるいは、磁化反転領域13と磁化固定領域11bとの形状の違いにより境界B1、B2においてピンニングされる。
磁化固定領域11aの磁化を−Z方向に向けるためには、磁壁を磁化固定領域11aに進入させて磁化固定領域11aの磁化を反転する必要があり、このためには、境界B1にピンニングされた磁壁をデピンさせるために大きな磁界を印加することが必要である。ただし、過剰に大きな磁界を印加すると、+Z方向に向けられるべき磁化固定領域11bの磁化も−Z方向に反転されてしまう。
磁化固定領域11aの磁化のみを選択的に−Z方向に向けることを可能にするために、本実施例では、デピン磁界Hd1がデピン磁界Hd2よりも小さくなるようにデピン磁界Hd1、Hd2が調節されている。デピン磁界Hd1がデピン磁界Hd2よりも小さい場合、デピン磁界Hd1よりも大きくデピン磁界Hd2よりも小さい磁界を−Z方向に印加することにより、磁化固定領域11bの磁化のみを選択的に−Z方向に向けることができる(ステップ4)。このとき、磁化固定領域11a、11bの磁化は互いに反平行になり、磁化反転領域13と磁化固定領域11bの境界にのみ磁壁12bが形成され、初期化が実現される。
図5A〜図5Eに示されているように、本実施例では、デピン磁界Hd1、Hd2を相違させるために磁化固定領域11a、11bが異なる形状に形成されている。磁化固定領域11a、11bの形状によるデピン磁界Hd1、Hd2の制御としては、様々な手法がある。
一つの手法は、図5A、図5Bに示されているように、磁化固定領域11aの後退角θと、磁化固定領域の後退角θとを相違させ、これによりデピン磁界Hd1、Hd2を相違させることである。ここで、磁化固定領域11aの後退角θとは、磁化反転領域13のエッジ21の延長線と、エッジ21に接続する磁化固定領域11aのエッジ22とがなす角であり、磁化固定領域11bの後退角θとは、磁化反転領域13のエッジ21の延長線と、エッジ21に接続する磁化固定領域11bのエッジ22とがなす角である。
図7は、磁化固定領域11a、11bの後退角θ、θと、境界B1、B2にピンニングされた磁壁をデピンさせるのに必要なデピン磁界との関係を示すグラフである。図7のグラフは、マイクロマグネティクスシミュレーションによって得られている。ここで、磁化固定領域11a、11bが台形形状又は矩形であると仮定されている;後退角θ、θが90°である場合は、磁化固定領域11a、11bが矩形である場合に相当している。図5Aの構成では、磁化固定領域11aが台形形状であり、磁化固定領域11bが矩形である。一方、図5Bの構成では、磁化固定領域11a、11bの両方が台形形状である。図7の黒丸は、磁壁が境界B1、B2から磁化固定領域11a、11bの内部に移動する場合のデピン磁界を示しており、白四角は、磁壁が境界B1、B2から磁化反転領域13の内部に移動する場合のデピン磁界を示している。磁壁を磁化固定領域11a、11bの内部に移動させるためのデピン磁界は、磁壁を磁化反転領域13の内部に移動させるためのデピン磁界と比較して、数倍以上大きい。初期化動作においては、磁壁を境界B1、B2から磁化固定領域11a、11bの内部に移動させる場合のデピン磁界Hd1、Hd2が重要である。一方、書き込み動作では、磁壁を境界B1、B2から磁化反転領域13の内部に移動させる場合のデピン磁界が重要である。
図7に示されているように、磁化固定領域11a、11bの内部へのデピン磁界Hd1、Hd2は、後退角θ、θが小さくなるほど低下する。例えば、後退角が45度以下である場合、デピン磁界は、後退角が90度である場合のデピン磁界と比較して約70%以下になる。よって、磁化固定領域11aの後退角θを磁化固定領域11bの後退角θよりも小さくすることにより、デピン磁界Hd1をデピン磁界Hd2よりも小さくすることができる。上述のように、デピン磁界Hd1がデピン磁界Hd2よりも小さい場合、デピン磁界Hd1、Hd2の中間の磁界を−Z方向に印加することにより、磁化固定領域11aの磁化のみを選択的に反転することができる。例えば、図5Aのように、磁化固定領域11aの後退角θが20度、磁化固定領域11bの後退角θが90度の場合、後退角が90度である場合のデピン磁界の80%程度の磁界を印加することにより、磁化固定領域11aの磁化のみを選択的に反転することができる。
図7の白四角から理解されるように、磁壁を境界B1、B2から磁化反転領域13の内部に移動させる場合のデピン磁界は、後退角θ、θに余り依存しない。これは、磁壁を境界B1からB2に移動させるのに必要な書き込み電流と、磁壁を境界B2からB1に移動させるのに必要な書き込み電流とが大きく相違しないことを意味しており、書き換え電流の対称性を向上させるために有効である。
デピン磁界Hd1、Hd2を制御する他の手法は、図5Cに示されているように、境界B1、B2の近傍における磁化固定領域11a、11bの(Y軸方向における)幅W、Wを相違させることである。デピン磁界Hd1、Hd2は、主として境界B1、B2の近傍における磁化固定領域11a、11bの幅W、Wに依存する。磁化固定領域11a、11bの幅W、Wが小さい程、デピン磁界Hd1、Hd2は小さくなる。図5Cの構成では、磁化固定領域11aの幅Wを磁化固定領域11bの幅Wよりも狭くすることにより、デピン磁界Hd1がデピン磁界Hd2よりも小さくなるように調節されている。図5Cには、磁化固定領域11a、11bの幅がW、Wで一定であるような磁化固定領域11a、11bの形状が図示されているが、磁化固定領域11a、11bの幅は、一定でなくてもよい。
デピン磁界Hd1、Hd2を制御する更に他の手法は、図5Dに示されているように、磁化反転領域13のエッジ21A、21Bと磁化固定領域11aのエッジ22A、22Bの接続態様と、磁化反転領域13のエッジ21A、21Bと磁化固定領域11bのエッジ23A、23Bの接続態様とを相違させることである。詳細には、磁化固定領域11aについては、一方のエッジ22Aが磁化反転領域13のエッジ21Aに対して垂直であり、且つ、他方のエッジ22Bが磁化反転領域13のエッジ21Bに対して同一直線上にあるのに対し、磁化固定領域11bについては、両方のエッジ23A、23Bが、磁化反転領域13のエッジ21A、21Bに対して垂直である。このような構造によれば、デピン磁界Hd1がデピン磁界Hd2よりも小さくなる。具体的には、デピン磁界Hd1は、デピン磁界Hd2の約60%に低下する。
デピン磁界Hd1、Hd2を制御する更に他の手法は、図5Eに示されているように、磁化反転領域13と磁化固定領域11a、11bとの境界B1、B2の近傍に設けられたくびれ15a、15bの深さを調節することである。くびれ15a、15bの深さが浅いほど、デピン磁界は小さくなる。磁化反転領域13と磁化固定領域11aとの境界B1に設けられたくびれ15aの深さを、磁化反転領域13と磁化固定領域11bとの境界B2に設けられたくびれ15bの深さよりも浅くすることにより、デピン磁界Hd1をデピン磁界Hd2より小さくすることができる。
磁化固定領域11a、11bの形状の組み合わせは図5A〜図5Eに示された組み合わせに限定されない。例えば、磁化固定領域11a、11bの一方を、後退角を有する台形形状に形成し、他方をくびれを有する形状に形成してもよい。また、図5A〜図5Eでは、磁化固定領域11a、11bの各エッジは直線的に形成されているが、曲線状のなだらかな形状にしてもよい。
図5A〜図5Eでは、磁化固定領域11a、11bの平面形状が相違する場合が図示されているが、磁化固定領域11a、11bの立体形状(例えば、磁化固定領域11a、11bの膜厚)が相違していてもよい。磁化固定領域11a、11bの平面形状を相違させることは、フォトリソグラフィーにおけるパターニングの際に使用されるマスクをそのように設計することによって実現可能である。一方、磁化固定領域11a、11bの立体形状を相違させるためには、追加のフォトリソグラフィープロセスを行えばよい。
図6のステップ2において、磁化反転領域13の磁化の反転を促進するためにピン層30に接続された配線層31を利用することができる。図8は、配線層31を利用した初期化動作のステップ2’を示す断面図である。ステップ1、ステップ3、ステップ4は図6と同様である。ステップ1で磁気記録層10の磁化全体を+Z方向に向けた後、ステップ2’では、配線層31に初期化電流35が流される。初期化電流35が流れることによって発生するジュール熱により、配線層31に隣接した磁化反転領域13の一部分の温度が上昇する。この温度上昇により、当該部分の磁化及び異方性磁界は低下し、周囲からの反磁界により当該部分の磁化が反転する。磁化の反転を促進するために、初期化電流35を流すと同時に、図6のステップ2と同様に−Z方向に磁界を印加することもできる。
また、磁化反転領域13の磁化の反転を促進するために、ピン層30からの漏洩磁界を利用することもできる。図9は、ピン層30からの漏洩磁界を利用した初期化動作の一例を示す断面図である:ステップ3以降は図6と同様である。ステップ1において、−Z方向に充分に大きな磁界を印加することにより、ピン層30、磁化固定領域11a、11b、磁化反転領域13の磁化が−Z方向に向けられる。印加される磁界の大きさは、ピン層30の保磁力Hcp、及び、磁気記録層10の保磁力Hcrよりも大きくなるように調節される。ステップ2では、磁気記録層10の一部の磁化が+Z方向に向くように+Z方向に磁界が印加される。このとき、印加磁界が磁気記録層10の保磁力Hcrとピン層30の保磁力Hcpの中間であり、かつ、ピン層30からの漏洩磁界Hsと磁気記録層の保磁力Hcrの和よりも小さければ、図9に示されているように、磁化反転領域13の漏洩磁界がかかっている領域を除いた部分の磁化が+Z方向に向く。その後、図6のステップ3以降の手順で磁界印加をおこなうことにより、磁壁位置の初期化をおこなうことができる。即ち、−Z方向に磁界を印加することによって、磁化が反転された磁区が磁化反転領域13の全体に拡大される。これにより、磁壁が磁化固定領域11aとの境界B1、及び、磁化固定領域11bとの境界B2にまで達する(ステップ3)。更に、磁界が増大されてデピン磁界Hd1よりも大きくデピン磁界Hd2よりも小さい磁界が−Z方向に印加され、磁化固定領域11bの磁化のみが選択的に−Z方向に向けられる(ステップ4)。
図10に示されているように、図9のステップ2を2段階でおこなうこともできる。すなわち、ステップ1において、ピン層30、磁化固定領域11a、11b、磁化反転領域13の磁化が−Z方向に向けられた後、ステップ2aにおいて、磁気記録層10の全体の磁化が+Z方向に向くように、磁界が+Z方向に印加される。このときの印加磁界の大きさは、磁気記録層10の保磁力Hcrとピン層30の保磁力Hcpの中間で、かつ、ピン層30からの漏洩磁界36と磁気記録層10の保磁力Hcrの和よりも大きくなるように調節される。次にステップ2bにおいて、磁界が−Z方向に印加される、磁化反転領域13のうちの漏洩磁界がかかっている領域の磁化のみが−Z方向に反転される。このときの印加磁界の大きさは、磁気記録層10の保磁力Hcrからピン層30からの漏洩磁界Hsを減じた差よりも大きく、磁気記録層10の保磁力Hcrよりも小さくなるように設定される。ステップ2bでは、配線層31に電流を流し、そのジュール熱により磁化反転領域13の一部の温度を上昇させ、その反転を促進することもできる。その後、図6のステップ3以降の手順で磁界印加をおこなうことにより、磁壁位置の初期化をおこなうことができる。
3.書き込み動作、及び、読み出し動作
次に、磁気抵抗素子1に対するデータの書き込み原理を説明する。
図11は、図4で示された構造に対するデータの書き込み原理を示している。データ書き込みは、スピン注入を利用した磁壁移動方式で行われる。書き込み電流は、磁気抵抗素子1に形成されたMTJを貫通する方向ではなく、磁気記録層10の面内方向に流される。その書き込み電流は、電流供給端子14a、14bから磁気記録層10に供給される。磁化反転領域13とピン層30の磁化の向きが平行である状態が、データ“0”に対応付けられている。データ“0”状態において、磁化反転領域13の磁化の向きは−Z方向であり、磁壁DWは磁化固定領域11bとの境界に存在する。一方、磁化反転領域13とピン層30の磁化の向きが反平行である状態が、データ“1”に対応付けられている。データ“1”状態において、磁化反転領域13の磁化の向きは+Z方向であり、磁壁DWは磁化固定領域11aとの境界B1に存在する。
データ“1”の書き込み時、書き込み電流IW1が、磁化固定領域11aから磁化反転領域13を通って磁化固定領域11bに流される。この場合、磁化反転領域13には、磁化固定領域11bからスピン偏極電子が注入される。注入された電子のスピンは、磁化反転領域13と磁化固定領域11bの境界B2にある磁壁を磁化固定領域11aの方向に駆動する。その結果、磁化反転領域13の磁化の向きは、+Z方向へスイッチする。つまり、スピントランスファー効果により、磁化反転領域13の磁化が反転し、その磁化の向きが+Z方向に変わる。
一方、データ“0”の書き込み時、書き込み電流IW2が、磁化固定領域11bから磁化反転領域13を通って磁化固定領域11aに流される。この場合、磁化反転領域13には、磁化固定領域11aからスピン電子が注入される。その結果、磁化反転領域13の磁化が反転し、その磁化の向きが−Z方向に変わる。このように、磁気記録層10を面内方向に流れる書き込み電流IW1,IW2によって、磁化反転領域13の磁化の方向がスイッチされる。磁化固定領域11a、11bは、異なる方向のスピンを有する電子の供給源の役割を果たしている。
一方、データの読み出しは、下記の手順で行われる:データ読み出し時、読み出し電流は、ピン層30と磁化反転領域13との間を流れるように供給される。例えば、読み出し電流は、磁化固定領域11a、11bのいずれかから、磁化反転領域13及びトンネルバリア層32を経由して、ピン層30へ流れる。あるいは、読み出し電流は、ピン層30から、トンネルバリア層32及び磁化反転領域13を経由して、磁化固定領域11a、11bのいずれかへ流れる。その読み出し電流あるいは読み出し電位に基づいて、磁気抵抗素子の抵抗値が検出され、磁化反転領域13の磁化の向きがセンスされる。
(第2実施例)
図12Aは、第2実施例における磁気抵抗素子1Aの構成を示す平面図であり、図12Bは、断面図である。第2実施例の磁気抵抗素子1Aは、第1実施例の磁気抵抗素子1と同様に、磁気記録層10と、ピン層30と、トンネルバリア層32と、金属配線層31とを備えている。トンネルバリア層32は、磁気記録層10とピン層30に挟まれており、磁気記録層10、トンネルバリア層32、及びピン層30によって磁気トンネル接合(MTJ)が形成されている。磁気記録層10は、磁化固定領域11a、磁化固定領域11b、及び磁化反転領域13を有している。ピン層30は、この磁化反転領域13に対向するように位置している。言い換えれば、磁気記録層10の磁化反転領域13の一部が、トンネルバリア層32を介してピン層30に接合されている。磁化固定領域11a、11bには、それぞれ、電流供給端子14a、14bが接合されている。
第2実施例の磁気抵抗素子1Aと第1実施例の磁気抵抗素子1の相違点は、第2実施例の磁気抵抗素子1Aにおいては、磁化固定領域11aの上に、第2トンネルバリア層39、第2ピン層37、第2配線層38が順次に形成されている点にある。第2ピン層37及び第2配線層38は、磁化固定領域11aに対向するように設けられている。第2ピン層37及び第2配線層38は、以下に述べられているように、磁壁位置の初期化の際に磁化固定領域11aの磁化を反転させるために使用される。
図13は、本実施例における初期化の手順の一例を示す断面図である。本実施例における初期化では、まず、十分大きな磁界が+Z方向に印加された後、それを取り除くことにより、磁気記録層10の全体の磁化が+Z方向に向けられる(ステップ1)。次に第2配線層38に、初期化電流40が流される。初期化電流40が流されることにより発生するジュール熱により、第2配線層38に隣接した磁化固定領域11aの一部分の温度が上昇する。この温度上昇により、この部分の磁化及び異方性磁界は低下し、周囲からの反磁界により磁化が反転して逆磁区が形成される。逆磁区の両側には磁壁12c、12dが形成される(ステップ2)。磁化の反転を促進するために、初期化電流を印加すると同時に、−Z方向に磁界を印加してもよい。さらに−Z方向の磁界を印加していくと、逆磁区が磁化固定領域11aの全体に拡大し、一方の磁壁12dが磁化反転領域13との境界B1にまで達し、他方の磁壁12cは端面から抜ける(ステップ3)。印加磁界が、境界B1から磁化反転領域13の内部へ磁壁が移動するときのデピン磁界Hd1’よりも小さい場合、磁化反転領域13と磁化固定領域11aとの形状差により、境界B1において磁壁がピンニングされる。さらに磁界を−Z方向にデピン磁界Hd1’よりも大きく印加すると、磁壁が磁化反転領域13の中を移動し、磁化反転領域13と磁化固定領域11bとの境界B2に到達してピンニングされる(ステップ4)。磁壁位置の初期化状態としては、ステップ3の後の状態、ステップ4の後の状態のいずれも用いることができる。
図14は、本実施例における別の初期化動作のステップを示した断面図である。最初に十分大きな磁界を−Z方向に印加した後、それを取り除くことにより、磁気記録層10、ピン層30、及び第2ピン層37の磁化が−Z方向に向けられる(ステップ1)。続いてステップ2では、磁気記録層10の一部分のみが+Z方向に向くように+Z方向に磁界を印加する。このとき、印加磁界が磁気記録層10の保磁力Hcrとピン層30の保磁力Hcpの中間であり、かつ、ピン層30及び第2ピン層37からの漏洩磁界Hsと磁気記録層の保磁力Hcrの和よりも小さければ、図14に示されているように、磁化固定領域11a、11b及び磁化反転領域13のうち、漏洩磁界がかかっている領域(ピン層30、第2ピン層37の近傍の部分)を除いた部分の磁化が+Z方向に向く。これにより、ピン層30、第2ピン層37の近傍の部分に、逆磁区が形成される。その後、ステップ3において、−Z方向に磁化反転領域13と磁化固定領域11aの境界B1にある磁壁のデピン磁界よりも小さな磁界を印加することにより、磁壁位置を磁化反転領域13と磁化固定領域11bの境界B2に初期化することもできる。
なお、第2実施例では、図13、図14のいずれの初期化動作においても、2つの磁化固定領域11a、11bの形状を相違させ、磁壁のデピン磁界に差異をもたせることは必須ではないことに留意されたい。磁化固定領域11a、11bと磁化反転領域13の間の境界B1、B2に磁壁がピンニングされるように構成されていれば、磁化固定領域11a、11bの形状は任意に選択可能である。
(MRAMの構成)
上述された第1実施例、第2実施例の磁気抵抗素子1、1Aは、MRAMのメモリセルとして好適に使用される。図15は、MRAMの構成の一例を示している。図15において、MRAM60は、データの記録に用いられるメモリセル2がマトリックス状に配置されたメモリセルアレイ61を備えている。このメモリセルアレイ61には、磁気メモリセル2に加え、データ読み出しの際に参照されるリファレンスセル2rを備えている。リファレンスセル2rの構造は、メモリセル2と同じである。
各メモリセル2は、図4A、図4Bに示された第1実施例の磁気抵抗素子1に加え、選択トランジスタTR1、TR2を有している。選択トランジスタTR1のソース/ドレインの一方は、磁化固定領域11aの電流供給端子14aに接続され、他方は第1ビット線BL1に接続されている。選択トランジスタTR2のソース/ドレインの一方は、磁化固定領域11bの電流供給端子14bに接続され、他方は第2ビット線BL2に接続されている。選択トランジスタTR1、TR2のゲートはワード線WLに接続されている。磁気抵抗素子1のピン層30に接続されている金属配線層31は、一端が初期化電圧源70に接続され、他端が一端がグランド線71に接続されている。
ワード線WLは、Xセレクタ62に接続されている。Xセレクタ62は、データの書き込み・読み出しにおいて、アクセス対象のメモリセル2(以下、選択メモリセルという。)につながるワード線WLを選択ワード線として選択する。第1ビット線BL1はY側電流終端回路64に接続されており、第2ビット線BL2はYセレクタ63に接続されている。Yセレクタ63は、選択メモリセルにつながる第2ビット線BL2を選択第2ビット線として選択する。Y側電流終端回路64は、選択メモリセルにつながる第1ビット線BL1を選択第1ビット線として選択する。
Y側電流源回路65は、データ書き込み時、選択第2ビット線に対し、所定の書き込み電流(IW1、IW2)の供給又は引き込みを行う。Y側電源回路66は、データ書き込み時、Y側電流終端回路64に所定の電圧を供給する。その結果、書き込み電流(IW1,IW2)は、Yセレクタ63へ流れ込む、あるいは、Yセレクタ63から流れ出す。これらXセレクタ62、Yセレクタ63、Y側電流終端回路64、Y側電流源回路65、及びY側電源回路66は、磁気抵抗素子1に書き込み電流IW1、IW2を供給するための「書き込み電流供給回路」を構成している。
データ読み出し時、全ての第1ビット線BL1は”Open”(即ち、フローティング状態)に設定される。一方、第2ビット線BL2のうちの選択第2ビット線には読み出し電流負荷回路67によって所定の読み出し電流が流される。また、リファレンスセル2rにつながるリファレンス第2ビット線BL2rには、読み出し電流負荷回路67によって所定の電流が流される。センスアンプ68は、リファレンス第2ビット線BL2rの電位と選択第2ビット線の電位の差に基づいて、選択メモリセルからデータを読み出し、そのデータを出力する。
本実施例において、図8に示されているように、初期化動作において配線層31に初期化電流を印加する際には、初期化電圧源70に適当な電圧を印加すれば良い。なお、初期化動作はMRAM製造時に1回のみおこなえばよいので、初期化電圧源70をチップ内に設ける必要はない。外部の電圧源を初期化電圧源70として用い、MRAMチップには、初期化電圧源70に接続するための外部接続端子のみを形成することも可能である。
なお、図15のようにメモリセル2が配線層31に沿ってシリアルに並んでいると、配線抵抗が大きくなりすぎ、十分な電流が印加されない場合がある。これを防ぐためには図16、図17に示されているように配線層31をメッシュ状に形成することが有効である。
図12A、図12Bに示された第2実施例の磁気抵抗素子1Aも、MRAMに集積化することが可能である。この場合、配線層31に加え、第2配線層38がメモリセルアレイ61に設けられる。第2配線層38は、図16、図17の配線層31のように、メッシュ状に形成されることが好適である。
公知の磁気抵抗素子の磁気記録層の構造を示す平面図である。 公知の他の磁気抵抗素子の磁気記録層の構造を示す平面図である。 垂直磁気異方性を持つ磁気記録層の構造の一例を示す平面図である。 垂直磁気異方性を持つ磁気記録層の構造の一例を示す断面図である。 本発明の第1実施例における磁気抵抗素子の構造を示す平面図である。 本発明の第1実施例における磁気抵抗素子の構造を示す断面図である。 第1実施例における磁気記録層の構造の一例を示す平面図である。 第1実施例における磁気記録層の構造の他の例を示す平面図である。 第1実施例における磁気記録層の構造の更に他の例を示す平面図である。 第1実施例における磁気記録層の構造の更に他の例を示す平面図である。 第1実施例における磁気記録層の構造の更に他の例を示す平面図である。 第1実施例における磁気抵抗素子の初期化動作の一例を示す断面図である。 磁化固定領域の後退角とデピン磁界との関係を示すグラフである。 第1実施例における磁気抵抗素子の初期化動作の他の例を示す断面図である。 第1実施例における磁気抵抗素子の初期化動作の更に他の例を示す断面図である。 第1実施例における磁気抵抗素子の初期化動作の更に他の例を示す断面図である。 第1実施例における磁気抵抗素子の書き込み手順を示す断面図である。 本発明の第2実施例における磁気抵抗素子の構造を示す平面図である。 本発明の第2実施例における磁気抵抗素子の構造を示す断面図である。 第2実施例における磁気抵抗素子の初期化動作の一例を示す断面図である。 第2実施例における磁気抵抗素子の初期化動作の他の例を示す断面図である。 本発明の第1実施例の磁気抵抗素子がメモリセルに集積化されている磁気ランダムアクセスメモリの構成の一例を示すブロック図である。 本発明の第1実施例の磁気抵抗素子がメモリセルに集積化されている磁気ランダムアクセスメモリの構成の他の例を示すブロック図である。 本発明の第1実施例の磁気抵抗素子がメモリセルに集積化されている磁気ランダムアクセスメモリの構成の他の例を示すブロック図である。
符号の説明
1、1A:磁気抵抗素子
2:メモリセル
2r:リファレンスセル
10:磁気記録層
11a:磁化固定領域
11b:磁化固定領域
12b、12c、12d:磁壁
13:磁化反転領域
14a、14b:電流供給端子
15a、15b:くびれ
30:ピン層
31:配線層
32:トンネルバリア層
35:初期化電流
37:第2ピン層
38:第2配線層
39:第2トンネルバリア層
40:初期化電流
60:MRAM
61:メモリセルアレイ
62:Xセレクタ
63:Yセレクタ
64:Y側電流終端回路
65:Y側電流源回路
66:Y側電源回路
67:読み出し電流負荷回路
68:センスアンプ
70:初期化電圧源
100:磁気記録層
101:磁化固定領域
102:磁化固定領域
103:磁化反転領域
104:くびれ
105、106:電流供給端子
110:磁気記録層
111:磁化固定領域
112:磁化固定領域
113:磁化反転領域
115、116:電流供給端子
130:ピン層
210:磁気記録層
211a:磁化固定領域
211b:磁化固定領域
212a、212b:磁壁
213:磁化反転領域
215:くびれ
B1、B2:境界
DW:磁壁

Claims (19)

  1. 垂直磁気異方性をもつ強磁性層である磁気記録層と、
    ピン層と、
    前記磁気記録層と前記ピン層との間に設けられた非磁性のトンネルバリア層
    とを具備し、
    前記磁気記録層は、
    磁化が反転可能であり、前記トンネルバリア層を介してピン層に接合される磁化反転領域と、
    第1境界において前記磁化反転領域に接続され、磁化の向きが固定される第1磁化固定領域と、
    第2境界において前記磁化反転領域に接続され、磁化の向きが固定される第2磁化固定領域
    とを有し、
    前記第1磁化固定領域と前記第2磁化固定領域の形状が異なっている
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  2. 請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリであって、
    前記第1境界から前記第1磁化固定領域の内部への磁壁のデピン磁界と、前記第2境界から前記第2磁化固定領域の内部への磁壁のデピン磁界とが異なる
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  3. 請求項1又は2に記載の磁気ランダムアクセスメモリであって、
    前記磁化反転領域の第1エッジの延長線と、前記第1エッジに接続する前記第1磁化固定領域の第2エッジとがなす角である第1後退角と、前記第1エッジの延長線と、前記第1エッジに接続する前記第2磁化固定領域の第3エッジとがなす角である第2後退角とが異なる
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  4. 請求項1又は2に記載の磁気ランダムアクセスメモリであって、
    前記第1磁化固定領域の前記第1境界の近傍における幅と、前記第2磁化固定領域の前記第2境界の近傍における幅とが異なる
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  5. 請求項1又は2に記載の磁気ランダムアクセスメモリであって、
    前記磁化反転領域は、第1エッジ及び第2エッジを有し、
    前記第1磁化固定領域は、前記第1境界において前記第1エッジに接続する第3エッジと、前記第1境界において前記第2エッジに接続する第4エッジとを有し、
    前記第2磁化固定領域は、前記第2境界において前記第1エッジに接続する第5エッジと、前記第2境界において前記第2エッジに接続する第6エッジとを有し、
    前記第1磁化固定領域の前記第3エッジは、前記第1エッジと同一直線上にある一方で、前記第4エッジは、前記第2エッジと同一直線上になく、
    前記第2磁化固定領域の前記第5エッジは、前記第1エッジと同一直線上になく、且つ、前記第6エッジは、前記第2エッジと同一直線上にない
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  6. 請求項1又は2に記載の磁気ランダムアクセスメモリであって、
    前記磁気記録層には、前記第1境界及び前記第2境界にくびれが形成され、
    前記第1境界におけるくびれの深さが前記第2境界におけるくびれの深さと異なる
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の磁気ランダムアクセスメモリであって、
    前記第1磁化固定領域と前記第2磁化固定領域の磁化の方向が反平行である
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の磁気ランダムアクセスメモリであって、
    更に、前記ピン層に接続された配線を具備し
    前記配線は、グランド線に接続され、且つ、前記第1磁化固定領域及び前記第2磁化固定領域の初期化の際に初期化電圧を供給するための初期化電圧源に接続されている
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  9. 垂直磁気異方性をもつ強磁性層である磁気記録層と、
    ピン層と、
    前記磁気記録層と前記ピン層との間に設けられた非磁性のトンネルバリア層
    とを具備し、
    前記磁気記録層が、
    前記トンネルバリア層を介してピン層に接合される磁化反転領域と、
    第1境界において前記磁化反転領域に接続された第1磁化固定領域と、
    第2境界において前記磁化反転領域に接続された第2磁化固定領域
    とを有し、
    前記第1境界から前記第1磁化固定領域の内部への第1デピン磁界が前記第2境界から前記磁化固定領域への第2デピン磁界よりも小さい磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法であって、
    (a)前記第1磁化固定領域と前記第2磁化固定領域の磁化を前記磁気記録層の膜面に垂直な第1方向に向け、前記磁化反転領域の磁化を前記第1方向と反対の第2方向に向けるステップと、
    (b)前記第1デピン磁界より大きく、前記第2デピン磁界よりも小さい磁界を印加することにより前記第1磁化固定領域の磁化を前記第2方向に反転させるステップ
    とを具備する
    磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法。
  10. 請求項9に記載の磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法であって、
    前記(a)ステップは、
    (a1)前記磁気記録層の全体の磁化を前記第1方向に向けるステップと、
    (a2)前記磁化反転領域の一部分の磁化を前記第2方向に反転させて逆磁区を生成するステップと、
    (a3)前記逆磁区を前記磁化反転領域の全体に拡大するステップ
    とを備える
    磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法。
  11. 請求項10に記載の磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法であって、
    前記(a2)ステップにおいて、前記ピン層に接続された配線層に初期化電流が流される
    磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法。
  12. 請求項9に記載の磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法であって、
    前記(a)ステップは、
    (a4)前記ピン層の磁化と、前記磁気記録層の全体の磁化とを、前記第2方向に向けるステップと、
    (a5)前記磁気記録層の保磁力よりも大きく、前記磁気記録層の保磁力と前記ピン層の漏洩磁界との和よりも小さい磁界を前記第1方向に印加することにより、前記第1磁化固定領域と前記第2磁化固定領域の磁化を前記第1方向に向けると共に、前記磁化反転領域の前記ピン層に近接する一部分の磁化を前記第2方向に維持しながら、残りの部分の磁化を前記第1方向にむけ、これにより、前記一部分に逆磁区を生成するステップと、
    (a6)前記逆磁区を前記磁化反転領域の全体に拡大するステップ
    とを備える
    磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法。
  13. 請求項9に記載の磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法であって、
    前記(a)ステップは、
    (a7)前記ピン層の磁化を、前記第2方向に向けるステップと、
    (a8)前記磁気記録層の全体の磁化を前記第1方向に向けるステップと、
    (a9)前記磁気記録層の保磁力と前記ピン層の漏洩磁界との差より大きく、前記磁気記録層の保磁力よりも小さい磁界を前記第2方向に印加することにより、前記磁化反転領域の前記ピン層に近接する一部分の磁化を反転し、これにより、前記一部分に逆磁区を生成するステップと、
    (a10)前記逆磁区を前記磁化反転領域の全体に拡大するステップ
    とを備える
    磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法。
  14. 垂直磁気異方性をもつ強磁性層である磁気記録層と、
    ピン層と、
    前記磁気記録層と前記ピン層との間に設けられた非磁性のトンネルバリア層と、
    配線層
    とを具備し、
    前記磁気記録層は、
    反転可能な磁化を有し、且つ、前記トンネルバリア層を介して前記ピン層に接合される磁化反転領域と、
    第1境界において前記磁化反転領域に接続され、磁化の向きが固定された第1磁化固定領域と、
    第2境界において前記磁化反転領域に接続され、磁化の向きが固定された第2磁化固定領域
    とを有し、
    前記配線層は、前記第1磁化固定領域に対向するように配置された
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  15. 垂直磁気異方性をもつ強磁性層である磁気記録層と、
    ピン層と、
    前記磁気記録層と前記ピン層との間に設けられた非磁性のトンネルバリア層
    第2ピン層
    とを具備し、
    前記磁気記録層は、
    反転可能な磁化を有し、且つ、前記トンネルバリア層を介して前記ピン層に接合される磁化反転領域と、
    第1境界において前記磁化反転領域に接続され、磁化の向きが固定された第1磁化固定領域と、
    第2境界において前記磁化反転領域に接続され、磁化の向きが固定された磁化固定領域
    とを有し、
    前記第2ピン層は、前記第1磁化固定領域に対向するように設けられた
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  16. 垂直磁気異方性をもつ強磁性層である磁気記録層と、
    ピン層と、
    前記磁気記録層と前記ピン層との間に設けられた非磁性のトンネルバリア層と、
    配線層
    とを具備し、
    前記磁気記録層が、
    前記トンネルバリア層を介してピン層に接合される磁化反転領域と、
    第1境界において前記磁化反転領域に接続された第1磁化固定領域と、
    第2境界において前記磁化反転領域に接続された第2磁化固定領域
    とを有し、且つ、前記配線層が、前記第1磁化固定領域に対向するように配置された磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法であって、
    (a)前記磁気記録層の全体の磁化を第1方向に向けるステップと、
    (b)前記第1磁化固定領域の少なくとも一部を前記第1方向に反対の第2方向に反転して、逆磁区を生成するステップと、
    (c)磁界を印加することによって前記逆磁区を拡大し、前記第1磁化固定領域の全体の磁化を反転させるステップとを具備する
    磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法。
  17. 請求項16に記載の磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法であって、
    前記(b)ステップにおいて、前記第2配線層に電流が印加される
    磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法。
  18. 垂直磁気異方性をもつ強磁性層である磁気記録層と、
    第1ピン層と、
    前記磁気記録層と前記第1ピン層との間に設けられた非磁性のトンネルバリア層と、
    第2ピン層
    とを具備し、
    前記磁気記録層が、
    前記トンネルバリア層を介して前記第1ピン層に接合される磁化反転領域と、
    第1境界において前記磁化反転領域に接続された第1磁化固定領域と、
    第2境界において前記磁化反転領域に接続された第2磁化固定領域
    とを有し、
    前記第2ピン層が前記第1磁化固定領域に対向するように位置する磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法であって、
    (a)前記第1ピン層及び前記第2ピン層の磁化と、前記磁気記録層の全体の磁化とを、第1方向に向けるステップと、
    (b)前記磁気記録層の保磁力よりも大きく、前記磁気記録層の保磁力と前記第2ピン層の漏洩磁界との和よりも小さい磁界を前記第2方向に印加することにより、前記第2磁化固定領域の磁化を前記第2方向に向けると共に、前記第1磁化固定領域の前記第2ピン層に近接する部分の磁化を前記第1方向に維持しながら、残りの部分の磁化を前記第2方向にむけ、これにより、前記第2ピン層に近接する部分に第1逆磁区を生成するステップと、
    (c)磁界を前記第1方向に印加することにより、前記第1逆磁区を前記第1磁化固定領域の全体に拡大するステップ
    とを備える
    磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法。
  19. 請求項18に記載の磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法であって、
    前記(b)ステップでは、前記磁化反転領域の前記第1ピン層に近接する部分の磁化を前記第1方向に維持しながら、残りの部分の磁化が前記第2方向に向けられ、これにより、前記第1ピン層に近接する部分に第2逆磁区が生成され、
    前記(c)ステップでは、前記第2逆磁区が前記磁化反転領域の全体に拡大する
    磁気ランダムアクセスメモリの初期化方法。
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