JP2009097047A - プラスチック成形金型用鋼およびプラスチック成形金型 - Google Patents

プラスチック成形金型用鋼およびプラスチック成形金型 Download PDF

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Abstract

【課題】従来鋼種に比較して、鋼材の製造性が良く、金型に適用した際に、耐摩耗性、鏡面性に優れ、耐食性が良好なプラスチック成形金型用鋼、また、これを用いたプラスチック成形金型を提供すること。
【解決手段】質量%で、C:0.350%以上0.570%以下、Si:0.10%以上0.50%以下、Mn:0.10%以上1.00%以下、Cu:0.05%以上0.20%以下、Ni:0.05%以上0.30%以下、Cr:10.00%以上14.00%未満、Mo:0.20%未満、V:0.01%以上0.10%以下、N:0.080%以上0.150%以下、O:0.0100%以下、Al:0.0500%以下、C+N:0.500%以上0.650%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなるプラスチック成形金型用鋼とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチック成形金型用鋼およびプラスチック成形金型に関するものである。
近年、様々な分野において、プラスチック成形品が使用されている。一般に、プラスチック成形品は、例えば、射出成形用金型、プレス金型などのプラスチック成形金型を用いて、所望形状に成形される。
従来、プラスチック成形金型の汎用鋼種としては、例えば、SUS420J2、SUS440C、SKD11などが知られている。
なお、SUS420J2は、質量%で、C:0.26〜0.40%、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Cr:12.00〜14.00%の化学成分を含有する鋼である。
また、SUS440Cは、質量%で、C:0.95〜1.20%、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Cr:16.00〜18.00%の化学成分を含有する鋼である。
また、SKD11は、質量%で、C:1.40〜1.60%、Si:0.40%以下、Mn:0.60%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:11.00〜13.00%、Mo:0.80〜1.20%、V:0.20〜0.50%の化学成分を含有する鋼である。
他のプラスチック成形金型用鋼としては、例えば、特許文献1に、重量%で、C:0.80%以下、Si:0.01%以上1.40%未満、Mn:0.05%以上2.0%以下、Ni:0.005%以上1.00%以下、Cr:13.0%以上20.0%以下、Mo+1/2W:0.20%以上4.0%以下、V:0.01%以上1.00%以下、N:0.36%以上0.80%以下、O:0.02%以下、および、Al:0.80%以下を含み、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなるプラスチック成形金型用鋼が開示されている。
この特許文献1には、上記鋼の製法として、上記化学成分となるように秤量した各種原料を、加圧炉にて溶解してインゴット(鋼塊)を鋳造し、インゴットを熱間鍛造する点が記載されている。
特開2007−9321号公報
しかしながら、従来の鋼は、プラスチック成形金型の材料として、以下の点で改良の余地があった。
すなわち、プラスチック材料中には、主成分樹脂に加えて、成形品の強度を向上させるなどの観点から、ガラス繊維などが添加される場合がある。この種の添加剤は、金型を摩耗させるため、金型寿命を低下させる原因になる。
近年、プラスチック成形品は、小型化を図るために薄肉化が図られており、強度向上のために上記添加剤が多量に添加される傾向にある。それ故、金型の摩耗が顕著に発生しやすい状況になっている。
しかし、汎用鋼種のSUS420J2は、C、Nが少なく、熱処理を行っても十分な硬さが得られない。そのため、金型の摩耗量が多くなり、耐摩耗性が悪いといった問題があった。
次に、プラスチック成形品は、筐体など、外観が重要視される部位に適用されることが多い。そのため、これを成形するための金型には、成形品に良好な表面肌を付与できるように、優れた鏡面性が要求される。
しかし、汎用鋼種のSUS440Cは、Cを多く含有している。そのため、溶製法により製造すると、粗大な炭化物が析出する。粗大な炭化物は、金型研磨時などに金型表面から脱落し、凹部などを生じさせやすく、金型の鏡面性を低下させるといった問題があった。
次に、金型には、良好な型メンテナンス性が要求される。そのため、金型は、型メンテナンス性を確保するに足りるだけの耐食性を有していることが望ましい。
しかし、汎用鋼種のSKD11は、Cを多く含有している。そのため、Crを含んだ炭化物が生成し、Crが消費されやすい。それ故、型メンテナンス上必要とされる程度の耐食性をも満足することができないといった問題があった。
これらの汎用鋼種に対し、特許文献1のプラスチック成形金型用鋼は、耐摩耗性、鏡面性、耐食性に優れた鋼材ではある。
しかし、特許文献1の鋼は、インゴット製造時に、加圧炉が必要になる。これは、Nを多く含むため、インゴット製造時に加圧を十分に行わないと、Nブローによりインゴット中に多数のボイドが発生し、その後の熱間鍛造が困難となって、健全な鋼が製造できないためである。また、上記ボイドは、割れや亀裂の原因にもなる。
このように、特許文献1の鋼は、特別な装置が必要になるなど、製造上の自由度が小さく、製造性に劣るといった問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来鋼種に比較して、鋼材の製造性が良く、金型に適用した際に、耐摩耗性、鏡面性に優れ、耐食性が良好なプラスチック成形金型用鋼を提供することにある。また、これを用いたプラスチック成形金型を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係るプラスチック成形金型用鋼は、質量%で、C:0.350%以上0.570%以下、Si:0.10%以上0.50%以下、Mn:0.10%以上1.00%以下、Cu:0.05%以上0.20%以下、Ni:0.05%以上0.30%以下、Cr:10.00%以上14.00%未満、Mo:0.20%未満、V:0.01%以上0.10%以下、N:0.080%以上0.150%以下、O:0.0100%以下、Al:0.0500%以下、C+N:0.500%以上0.650%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなることを要旨とする。
ここで、上記プラスチック成形金型用鋼は、質量%で、B:0.0005%以上0.0020%以下をさらに含有していても良い。
また、上記プラスチック成形金型用鋼は、質量%で、Nb:0.001%以上0.300%以下、Ta:0.001%以上0.300%以下、Ti:0.20%以下、および、Zr:0.001%以上0.300%以下から選択される1種または2種以上の元素をさらに含有していても良い。
また、上記プラスチック成形金型用鋼は、質量%で、Se:0.001%以上0.300%以下、Te:0.001%以上0.300%以下、Ca:0.002%以上0.100%以下、Pb:0.001%以上0.200%以下、および、Bi:0.001%以上0.300%以下から選択される1種または2種以上の元素をさらに含有していても良い。
一方、本発明に係るプラスチック成形金型は、上述のプラスチック成形金型用鋼を材料として用いており、硬さが55HRC以上であることを要旨とする。
本発明に係るプラスチック成形金型用鋼は、上記化学組成にしたことにより、従来鋼種に比較して、鋼材の製造性が良く、金型に適用した際に、耐摩耗性、鏡面性に優れ、耐食性が良好である。
とりわけ重要な元素について言及すると、本発明に係るプラスチック成形金型用鋼は、Nの含有量を低減しているので、インゴット製造時に、非加圧下であってもNブローが抑制でき、ボイドの少ないインゴットが得られる。そのため、その後に熱間鍛造や熱間圧延を行いやすく、健全な鋼を製造することができる。
また、C+Nの含有量を特定範囲内でバランスさせているので、焼入れ焼戻しを行って金型に適用した際に、十分な硬度が得られ、優れた耐摩耗性を発揮することができる。
また、Cの含有量を低減しているので、粗大な炭化物が析出し難く、金型の鏡面性を向上させることができる。
また、Cの含有量を低減しているので、Crを含んだ炭化物の生成量が少なく、Crの消費が抑制され、型メンテナンスに必要な程度で、良好な耐食性を確保することができる。
本発明に係るプラスチック成形金型は、上記プラスチック成形金型用鋼を用いており、硬さが特定の値以上である。
そのため、耐摩耗性に優れ、型の耐久性を向上させることができる。また、鏡面性に優れることから、表面肌の良好なプラスチック成形品を成形することができる。また、耐食性が良好であることから、型メンテナンス性の向上に寄与することができる。
以下に、本発明の一実施形態に係るプラスチック成形金型用鋼(以下、「本金型用鋼」ということがある。)、プラスチック成形金型(以下、「本金型」ということがある。)について詳細に説明する。
1.本金型用鋼
本金型用鋼は、以下のような元素を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなる。その添加元素の種類、成分割合および限定理由などは、以下の通りである。なお、成分割合の単位は、質量%である。
・C:0.350%以上0.570%以下
Cは、強度、耐摩耗性を確保するのに必要な元素であって、Cr、Mo、W、V、Nbなどの炭化物形成元素と結合して炭化物を生成する元素である。また、Cは、焼入れ時に母相中に固溶し、マルテンサイト組織化することによって硬度を確保するのに必要な元素でもある。
本金型用鋼では、Nの含有量を低下させていることもあり、硬度を確保し、十分な耐摩耗性を得るなどの観点から、C含有量の下限を0.350%以上とする。
しかし、C含有量が過剰になると、上記炭化物形成元素と結合しやすくなって多量のCrやMoを含む炭化物が析出し、母相のCr、Moの固溶量が低下し、耐食性が低下する。そのため、C含有量の上限を0.570%以下とする。
・Si:0.10%以上0.50%以下
Siは、主に脱酸剤、または、窒素添加のための窒化合金として添加される。その効果を得るため、Si含有量の下限を0.10%以上とする。
しかし、Si含有量が過剰になると、熱間加工性や靱性が低下する。これを防止する観点から、Si含有量の上限を0.50%以下とする。
・Mn:0.10%以上1.00%以下
Mnは、焼入れ性を向上させる元素として添加される。また、不可避的にSが含有された場合に、Mnは、靱性の低下を抑制するのに有効である。その効果を得るため、Mn含有量の下限を0.10%以上とする。
しかし、Mn含有量が過剰になると、熱間加工性が低下する。これを防止する観点から、Mn含有量の上限を1.00%以下とする。
・Cu:0.05%以上0.20%以下
Cuは、オーステナイトを安定化させる元素である。その効果を得るため、Cu含有量の下限を0.05%以上とする。
しかし、Cu含有量が過剰になると、残留オーステナイト量が増加し、金型寸法の経年変化を引き起こす原因となる。また、熱間加工性も低下させる。これを防止する観点から、Cu含有量の上限を0.20%以下とする。
・Ni:0.05%以上0.30%以下
Niは、オーステナイト生成元素である。その効果を得るため、Ni含有量の下限を0.05%以上とする。
しかし、Ni含有量が過剰になると、残留オーステナイト量が増加し、金型寸法の経年変化を引き起こす原因となる。これを防止する観点から、Ni含有量の上限を0.30%以下とする。
・Cr:10.00%以上14.00%未満
Crは、耐食性を向上させる元素である。その効果を得るため、Cr含有量の下限を10.00%以上とする。
しかし、Cr含有量が過剰になると、焼入れ温度でのオーステナイトのC固溶量、N固溶量が少なくなり、硬度が確保し難くなる。これを防止する観点から、Cr含有量の上限を14.00%未満とする。
・Mo:0.20%未満
Moは、原料のスクラップなどから不可避に添加される。Moを必要以上に取り除くことは製造コストの上昇を招く。したがって、Mo含有量の上限を0.20%未満とする。
・V:0.01%以上0.10%以下
Vは、Nの溶解量を増加させる元素である。その効果を得るため、V含有量の下限を0.01%以上とする。
しかし、V含有量が過剰になると、粗大な炭窒化物が生成しやすくなり、鏡面性が低下する。これを防止する観点から、V含有量の上限を0.10%以下とする。V含有量の上限は、好ましくは、0.05%以下である。
・N:0.080%以上0.150%以下
Nは、侵入型元素であり、マルテンサイト組織の硬さを向上させるのに寄与する。同じ侵入型元素であるCに比べ、γ安定化能が大きい。また、Nは、固溶状態で耐食性の向上に寄与する。その効果を得るため、N含有量の下限を0.080%以上とする。
しかし、N含有量が過剰になると、凝固中における窒素の濃化により、窒素ガス噴出の限界を超えてしまう。そのため、非加圧下でのインゴット製造時に、インゴット中に多数のボイドを生じやすくなり、鋼の製造性が低下する。これを防止する観点から、N含有量の上限を0.150%以下とする。
・O:0.0100%以下
Oは、溶鋼中に不可避的に含まれる元素である。但し、Oが過剰になると、Si、Alと粗大な酸化物を生じ、これが介在物となって、靱性、鏡面性を低下させる。これを防止する観点から、O含有量の上限を0.0100%以下とする。
・Al:0.0500%以下
Alは、Siと同様に脱酸剤として添加される元素である。但し、Al含有量が過剰になると、粗大な窒化物が生じやすくなり、鏡面性が低下する。これを防止する観点から、Al含有量の上限を0.0500%以下とする。
・C+N:0.500%以上0.650%以下
C+N(C含有量とN含有量との和)は、硬さを確保し、十分な耐摩耗性を得ることと、粗大な炭窒化物の生成を抑制し、鏡面性を確保することとをバランスさせるのに必要な条件である。焼入れ温度で固溶したC+Nの量は、焼入れ後のマルテンサイト組織の硬度に関与する。また、高温焼戻しでの2次硬化量にも関与する。焼入れ温度で固溶できなかったC、Nは、炭窒化物として存在する。そのため、粗大な炭化物に成長し、鏡面性を低下させる。結晶粒の粗大化を抑制するのに必要な炭窒化物量よりも多く炭窒化物が存在していると、鏡面性を低下させるデメリットが大きくなる。
硬さを確保し、十分な耐摩耗性を得るため、C含有量とN含有量との和の下限を0.500%以上とする。
一方、粗大な炭窒化物の生成を抑制し、鏡面性を確保するため、C含有量とN含有量との和の上限を0.650%以下とする。
本金型用鋼は、上述した必須元素に加えて、さらに、以下の元素から選択される1種または2種以上の元素を任意に含んでいても良い。各元素の成分割合、限定理由などは、以下の通りである。
・B:0.0005%以上0.0020%以下
Bは、焼割れを抑制するのに有効な元素である。その効果を得るため、B含有量の下限を0.0005%以上とする。
しかし、B含有量が過剰になると、粗大な窒化物が生成しやすくなり、鏡面性が低下する。これを防止する観点から、B含有量の上限を0.0020%以下とする。
・Nb:0.001%以上0.300%以下、Ta:0.001%以上0.300%以下、Ti:0.20%以下、Zr:0.001%以上0.300%以下
Nb、Ta、Ti、Zrは、C、Nと結合して炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化を抑制し、鏡面性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るため、Nb含有量の下限は0.001%以上とする。同様に、Ta含有量の下限は0.001%以上とする。Ti含有量の下限は特に限定されない。Zr含有量の下限は0.001%以上とする。
しかし、Nb、Ta、Ti、Zrの各含有量が過剰になると、被削性の劣化を招く。これを防止する観点から、Nb含有量の上限は0.300%以下とする。同様に、Ta含有量の上限は0.300%以下とする。Ti含有量の上限は0.20%以下とする。Zr含有量の上限は0.300%以下とする。
・Se:0.001%以上0.300%以下、Te:0.001%以上0.300%以下、Ca:0.002%以上0.100%以下、Pb:0.001%以上0.200%以下、Bi:0.001%以上0.300%以下
Se、Te、Ca、Pb、Biは、被削性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るため、Se含有量の下限は0.001%以上とする。同様に、Te含有量の下限は0.001%以上とする。Ca含有量の下限は0.002%以上とする。Pb含有量の下限は0.001%以上とする。Bi含有量の下限は0.001%以上とする。
しかし、Se、Te、Ca、Pb、Biの各含有量が過剰になると、靱性の低下を招く。これを防止する観点から、Se含有量の上限は0.300%以下とする。同様に、Te含有量の上限は0.300%以下とする。Ca含有量の上限は0.100%以下とする。Pb含有量の上限は0.200%以下とする。Bi含有量の上限は0.300%以下とする。
本金型用鋼の化学成分については、以上の通りである。本金型用鋼は、鏡面性を向上させるなどの観点から、含まれる炭窒化物の粒径は、好ましくは、4.0μm以下であると良い。
なお、炭窒化物の粒径とは、仕上げ研磨した試料の測定面を腐食液により腐食し、この測定面を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡などで観察し、観察される炭窒化物の総数の90%以上がその値以下となる粒径の代表値を指す。
本金型用鋼は、最終的に金型として使用されるときに、熱処理等によって55HRC以上の硬さを発揮できれば良い。したがって、本金型用鋼は、最終的な金型となる前の段階では、切削、ドリル加工、タップ加工などの金型加工に支障のない硬さを備えておれば良い。
材料硬度が過度に高ければ、特殊な工具などが必要になったり、工具寿命が低下するなどの支障が発生することがある。また、材料硬度が過度に低ければ、切り屑が連なり、分断されないなどの支障が発生することがある。
上記を考慮した上で、本金型用鋼は、金型加工時に硬度が低い方が良いため、例えば、球状化焼鈍しなどがなされていても良い。この場合、球状化焼鈍し後の硬さは、好ましくは、20HRC未満であると良い。
但し、切り屑の破砕性が悪い場合には、本金型用鋼は、金型加工に適した硬さに調整する観点から、プレハードン処理されていても良い。この場合、プレハードン硬さは、好ましくは、30HRC以上40HRC以下であると良い。
次に、本金型用鋼の製造方法の一例について説明する。
上述した組成を有する鋼を非加圧下にて溶解し、インゴットを鋳造する。この際、溶解炉としては、真空誘導炉、大気誘導炉など、非加圧の溶解炉を適用することができる。本金型用鋼では、Nの含有量を低減しているので、インゴット製造時に、非加圧下であってもNブローが抑制でき、ボイドの少ないインゴットが得られる。
次いで、得られたインゴットを、熱間鍛造および/または熱間圧延して必要な寸法の鋼材に調整する。本金型用鋼では、ボイドの少ないインゴットが得られるため、熱間鍛造や熱間圧延を行いやすく、割れや亀裂が抑制され、健全な鋼を製造することができる。
次いで、上記熱間加工後、必要に応じて、1種または2種以上の熱処理を行う。熱処理の種類としては、焼入れ焼戻し、サブゼロ処理、球状化焼鈍しなどを挙げることができる。
焼入れ焼戻しは、具体的には、例えば、1000〜1200℃で0.5〜1.5時間加熱後、油冷して焼入れをし、その後、必要に応じて、例えば、−196℃もしくは−76℃で0.5〜1時間サブゼロ処理を行い、その後、200〜700℃で0.5〜1.5時間加熱後、空冷して焼戻しをする方法などを例示することができる。
また、球状化焼鈍しは、具体的には、例えば、850〜900℃で3〜5時間加熱後、10〜20℃/時間の速度で600℃付近まで炉冷し、その後空冷する方法などを例示することができる。
2.本金型
本金型は、上述した本金型用鋼を材料として用いている。
ここで、本金型用鋼は、その硬さが55HRC以上である。55HRC以上の硬さは、例えば、上述した化学成分を有する本金型用鋼を最適な温度、時間で焼入れ焼戻しすれば、付与することができる。
なお、本金型の硬さは、金型素材(母材)そのものについてロックウェルCスケールにより測定される硬さであり、冷間加工による加工硬化や各種表面処理の影響を受けていない部分から測定される。
本金型の硬さは、耐摩耗性を付与するなどの観点から、好ましくは、56HRC以上、より好ましくは、58HRC以上である。なお、本金型の硬さの上限は、特に限定されるものではない。
本金型は、例えば、本金型用鋼を金型粗加工し、硬さが55HRC以上となるように焼入れ焼き戻しを行い、金型精加工などを行えば、製造することができる。
なお、本金型の形状は、プラスチック成形品に付与したい形状に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
表1に示す化学組成の鋼を真空誘導炉(非加圧下)で溶製した後、50kgのインゴットを各2個ずつ鋳造した。
鋳造後の各2個ずつのインゴットのうち、一つは切断してボイドの面積率を調査し、残りの一つは、熱間鍛造し、60mm角の棒材を製造した。なお、ボイドの面積率は、インゴット中心部をスライスしたものを研磨し、100倍にて60視野を光学顕微鏡により撮影し、画像解析を行うことにより測定した。
表1に、実施例および比較例に係る鋼の化学組成を示す。なお、比較例1に係る鋼は、汎用鋼種のSUS420J2、比較例2に係る鋼は、汎用鋼種のSUS440C、比較例3に係る鋼は、汎用鋼種のSKD11である。比較例4〜6は、N含有量が比較的多く、C+Nの値も本願の規定外である従来鋼である。また、表2に、インゴットのボイド面積率と熱間鍛造の可否の結果を示す。
Figure 2009097047
Figure 2009097047
表2によれば、以下のことが分かる。すなわち、比較例4〜6に係る鋼は、Nを多く含むため、非加圧下でインゴットを製造すると、Nブローによりインゴット中に多数のボイドが発生し、その後の熱間鍛造が困難となって、健全な鋼が製造できなかった。したがって、これらの鋼は、製造上の自由度が小さく、製造性に劣ると言える。
これら比較例4〜6に係る鋼に対し、実施例1〜8に係る鋼、比較例1〜3に係る鋼は、何れもインゴット製造時にボイドが発生し難く、製造性に優れていることが確認できた。
そこで、以下の評価については、比較例4〜6に係る鋼を除き、実施例1〜8に係る鋼、比較例1〜3に係る鋼について行った。
すなわち、上述した各棒材について焼き鈍しを行い、得られた棒材から硬さ測定、耐摩耗性、鏡面性、耐食性の評価に用いる試験片を切り出し、各種評価を行った。
<硬さ>
各棒材から1辺10mmの立方体のブロックを切り出し、表3に示す熱処理を行った後に測定面と接地面を#400まで研磨した後、ロックウェルCスケールにより硬さを測定した。
<耐摩耗性>
ピンオンディスク摩擦摩耗試験機を用いて耐摩耗性を評価した。すなわち、各棒材からピンφ8mm×2本を切り出し、表3に示す熱処理を行った。ディスクは、S45Cより切り出した。試験条件は、すべり速度1.6m/s、すべり距離5000m、押し付け荷重10.5kgf、潤滑油なしとした。試験前後にピンの重量を測定し、これより摩耗重量を測定した。本評価では、比較例3に係る鋼(SKD11)の摩耗量を100とした場合における、実施例に係る鋼および残りの比較例に係る鋼の摩耗重量比を示している。
<鏡面性>
各棒材から50mm×45mm×12mmの板材を加工し、表3に示す熱処理を行った後、機械研磨により#14000まで研磨し、試験片を作製した。得られた試験片について、JIS B0633に準拠して表面粗さRzmaxを測定した。
また、鏡面性に関連するデータとして、各鋼における炭窒化物の粒径を以下の要領で測定した。
すなわち、各棒材から1辺15mmの立方体のブロックを切り出し、表3に示す熱処理を行った後、測定面を#1500まで研磨した。次いで、1μmのダイヤモンドペーストを用いてバフ研磨し、仕上げ研磨を行った。次いで、ビレラ腐食液を使用して測定面を腐食した。次いで、光学顕微鏡により測定面を撮影(400倍で10視野)し、観察される炭窒化物の総数の90%以上がその値以下となる粒径の値を代表値として求めた。
<耐食性>
各棒材からφ15mm×60mmの丸棒を加工し、表3に示す熱処理を行った後、仕上げ加工により表面を#400相当にした。次いで、JIS Z 2371に準拠して塩水噴霧試験を行い、発錆状態を確認した。
ここでは、錆が発生しなかったもの、僅かに錆が発生したもの、錆が発生したが全面には至らなかったたものをいずれも良好と、全面に錆が発生したものを不良と判断した。本願では、型メンテナンスに必要な程度で、良好な耐食性を確保できれば良いためである。
Figure 2009097047
Figure 2009097047
表4を相対比較すれば、以下のことが分かる。すなわち、比較例1に係る鋼(SUS420J2)は、とりわけ、C+Nの含有量が本願の規定範囲外である。そのため、熱処理を行っても十分な硬さが得られず、摩耗量が多いことが分かる。
比較例2に係る鋼(SUS440C)は、本願の規定範囲に比べ、とりわけ、C含有量が多い。そのため、溶製法により製造すると、粗大な炭化物が析出し、研磨時にこれが表面から脱落するなどし、鏡面性が悪かった。
比較例3に係る鋼(SKD11)は、本願の規定範囲に比べ、とりわけ、C含有量が多い。そのため、型メンテナンス上必要とされる程度の耐食性をも満足することができなかった。これは、炭化物が生成し、Crが消費されやすかったためである。また、炭化物により、鏡面性も悪かった。
上述した比較例1〜3、さらに比較例4〜6に係る鋼に対し、実施例1〜8に係る鋼は、何れも、鋼材の製造性が良く、金型に適用した際に、優れた耐摩耗性、鏡面性が得られ、良好な耐食性が得られることが確認できた。
以上、本発明の実施形態、実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態、実施例に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.350%以上0.570%以下、
    Si:0.10%以上0.50%以下、
    Mn:0.10%以上1.00%以下、
    Cu:0.05%以上0.20%以下、
    Ni:0.05%以上0.30%以下、
    Cr:10.00%以上14.00%未満、
    Mo:0.20%未満、
    V :0.01%以上0.10%以下、
    N :0.080%以上0.150%以下、
    O :0.0100%以下、
    Al:0.0500%以下、
    C+N:0.500%以上0.650%以下
    を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなることを特徴とするプラスチック成形金型用鋼。
  2. 質量%で、
    B :0.0005%以上0.0020%以下
    をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形金型用鋼。
  3. 質量%で、
    Nb:0.001%以上0.300%以下、
    Ta:0.001%以上0.300%以下、
    Ti:0.20%以下、および、
    Zr:0.001%以上0.300%以下
    から選択される1種または2種以上の元素をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック成形金型用鋼。
  4. 質量%で、
    Se:0.001%以上0.300%以下、
    Te:0.001%以上0.300%以下、
    Ca:0.002%以上0.100%以下、
    Pb:0.001%以上0.200%以下、および、
    Bi:0.001%以上0.300%以下
    から選択される1種または2種以上の元素をさらに含有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のプラスチック成形金型用鋼。
  5. 請求項1から4の何れかに記載のプラスチック成形金型用鋼を材料として用いており、
    硬さが55HRC以上であることを特徴とするプラスチック成形金型。
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