JP2009096139A - 発泡成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】装置や金型の改造を行うことなく、ゲート付近のシルバーストリークの発生が少なく外観が良好な発泡成形体を製造することが可能な発泡成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】発泡剤と、熱可塑性樹脂と、を射出機1バレル内でスクリュ110の回転により混練して可塑化し熱可塑性樹脂組成物を製造する可塑化工程と、熱可塑性樹脂組成物にかかる圧力を低下させる減圧工程と、熱可塑性樹脂組成物を、一対の金型間に形成される金型キャビティに供給する供給工程と、金型キャビティに供給された熱可塑性樹脂組成物を発泡させる発泡工程と、を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は熱可塑性樹脂を発泡させて得られる発泡成形体の製造方法に関する。
近年ドアトリムやインストルメントパネル等の自動車内装部品として、熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられている。特に軽量化という観点から、発泡成形体が用いられている。このような発泡成形体の製造方法としては、溶融樹脂を金型間に供給し、固化層を形成するまで冷却した後、キャビティ容積を拡大して得られる製造方法が知られている。しかしながら、発泡成形体の表面にシルバーストリークが発生し、外観不良となってしまうことがある。
上記発泡成形体の外観不良を解決する方法として、熱可塑性樹脂を可塑化した後、スクリュを強制的に停止させ、可塑化した熱可塑性樹脂の圧力を保持する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、特許文献2には、捨てキャビティを設け、まず捨てキャビティに樹脂の充填を開始した後、主キャビティに樹脂を充填開始することが提案されている。更に、特許文献3には、仮想ゲートを設定しておき、仮想ゲートの開放信号により樹脂の内圧を高めてから本ゲートを開放することが提案されている。
特開2004−188711 特開2003−220621 特開2003−220622
しかしながら特許文献1に記載の方法では、金型に設けられたゲートを開くタイミングと射出機から熱可塑性樹脂の供給が開始され、樹脂圧力が高まるまでのタイムラグがあるために、ゲートが開いた瞬間に可塑化された熱可塑性樹脂がゲートから滲みだし、外観不良となることがある。また、特許文献2や特許文献3の方法では、可塑化された熱可塑性樹脂の樹脂圧力が高められた状態で本ゲートが開かれるため、ゲートが開いた瞬間から高圧で樹脂が供給されるため、シルバーストリークの発生は抑制される。しかしながら捨てキャビティを設けるのはコストがかかり、仮想ゲートを設ける場合も条件幅が狭くなるだけでなく、樹脂圧力が高圧となり危険を伴う。
以上の課題に鑑み、本発明は装置や金型の改造を行うことなく、ゲート付近のシルバーストリークの発生が少なく外観が良好な発泡成形体を製造することが可能な発泡成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、熱可塑性樹脂を金型キャビティに供給する前において、可塑化された前記熱可塑性樹脂にかかる圧力を低下させることにより、本発明の課題を達成し得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には以下の通りである。
本発明は、発泡剤と、熱可塑性樹脂と、を射出機のシリンダ内に設けられたスクリュの回転により混練して可塑化し熱可塑性樹脂組成物を製造する可塑化工程と、前記熱可塑性樹脂組成物にかかる圧力を低下させる減圧工程と、前記熱可塑性樹脂組成物を、一対の金型間に形成される金型キャビティに供給する供給工程と、前記金型キャビティに供給された前記熱可塑性樹脂組成物を発泡させる発泡工程と、を有する発泡成形体の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、装置や金型の改造を行わなくてもゲート付近のシルバーストリークの発生が少なく外観が良好な発泡成形体を製造することが可能となる。
本発明に係る発泡成形体の製造方法は、可塑化工程と、減圧工程と、供給工程と、発泡工程と、を有する。以下、各工程について図を用いて順に説明する。なお、同じ符号は同じ部材を示し、その説明を省略する。
<発泡成形体の製造方法及び発泡成形体>
〔可塑化工程〕
可塑化工程は、発泡剤と、熱可塑性樹脂と、を射出機のシリンダ内に設けられたスクリュの回転により混練して可塑化し、熱可塑性樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物という)を製造する工程である。
熱可塑性樹脂の可塑化は、図1に記載されているように、一般的に用いられるインライン式スクリュを備えた射出機1を用いて行うことが好ましい。射出機1は、シリンダ11とホッパー13を備えるものであり、シリンダ11の内部にはスクリュ110が設けられている。そしてシリンダ11の先端部には、樹脂組成物12を射出するためのノズル111が設けられている。
この射出機1を用いて、所定の背圧をかけた状態でスクリュ110を回転させることで熱可塑性樹脂を可塑化させ、発泡剤と混合してシリンダ11先端部に樹脂組成物12を貯留する。このときの温度は、使用する熱可塑性樹脂の種類によって異なるが、170℃〜270℃であることが好ましく、190℃〜260℃であることがより好ましい。
また、発泡剤は予め熱可塑性樹脂と混合していても、ホッパー13に投入する際に混合しても、可塑化の途中で混合してもよい。
また物理発泡剤を用いる場合には、射出機1のノズル又はシリンダ11本体内に注入する方法が挙げられるが、シリンダ内に注入する方が均一に混合、分散、溶解させることができ、好ましい。
〔減圧工程〕
減圧工程は、樹脂組成物にかかる圧力を低下させる工程である。この減圧工程を設けることにより、シリンダ11先端部に貯留された樹脂組成物12にかかる過剰な圧力を減少することが可能となる。これによって得られる発泡成形体のシルバーストリークの発生を抑制することが可能となる。
圧力を低下させる方法としては、具体的にはスクリュ110にかかる背圧を低下させたり、スクリュ110を一定量後退させる方法等が挙げられる。中でも簡便性の観点から、スクリュ110を一定量後退させる方法が好ましい。
スクリュ110を後退させる距離は、可塑化された樹脂組成物12中に溶解した発泡ガスが抜けない圧力まで減圧できる量であることが好ましい。具体的には、減圧工程後の樹脂組成物の体積が、減圧工程前の体積の1.01倍〜1.1倍となる程度の量であることが好ましく、1.03倍〜1.08倍となる程度の量であることがより好ましい。減圧工程後の樹脂組成物12の体積を、減圧工程前の体積の1.01倍以上とすることにより、樹脂組成物にかかる圧力を十分に減圧することができ、金型キャビティに供給する前に、樹脂組成物12がノズル111から滲み出すことを防止することが可能となる。これにより、得られる発泡成形体の外観形状を良好にすることが可能となる。また、減圧工程後の樹脂組成物の体積を、減圧工程前の体積の1.1倍以下とすることにより、樹脂組成物中に溶解させたガスの抜けを防止することが可能となる。これにより得られる発泡成形体の発泡状態を良好なものとすることが可能となる。
減圧工程前の樹脂組成物の体積は、図2に記載されているように、射出機1のスクリュ径dと、可塑化工程直後の計量ストロークh(ノズル111の根元からスクリュ110の先端までの距離)から求めることができる。同様に、減圧工程後の樹脂組成物の体積は、上記スクリュ径dと、減圧工程直後の計量ストロークh´(ノズル11の根元から減圧工程直後のスクリュ110の先端までの距離)から求めることができる。
なお、スクリュ110を後退させる際は、可塑化された樹脂組成物12の貯留量のバラツキを抑制するために、スクリュ110を回転させずに後退させることが好ましい。また、スクリュ110を後退させた後は、スクリュ110に所定の背圧をかけて動かないように制御することが好ましい。
またスクリュ110を後退させて樹脂組成物12を減圧するタイミングは、スクリュ110の回転により、シリンダ11の先端部に樹脂組成物12を貯留した後であれば、特に制限はない。
そしてスクリュ110の回転及び後退によってシリンダ11の先端に貯留される樹脂組成物12の容量は、用いる射出機1の最大射出容量の20%〜90%であることが好ましい。最大射出容量の20%以上とすることにより、シリンダ11内における樹脂組成物12の滞留時間が長くなることによって発泡剤が分解されるのを防止することが可能となる。その結果、得られる発泡成形体にシルバーストリーク等の外観不良や発泡不良等の発生を防止することが可能となる。また、貯留される樹脂組成物12の容量を90%以下とすることにより、例えばシリンダ11に貯留される樹脂組成物12の貯留量の変更等の製造条件の変更に十分に対応可能となる。
なお、スクリュ110を回転及び前進/後退させる駆動源は油圧であっても電動であっても構わないが、応答性や位置制御性に優れる電動式がより好ましい。
〔供給工程〕
供給工程は、熱可塑性樹脂組成物を、一対の金型間に形成される金型キャビティに供給する工程である。上記減圧工程を経てシリンダの先端に貯留される樹脂組成物は、金型キャビティ内に供給される。本発明で使用する金型の形状は特に限定されないが、複雑な形状や大型成形体への適用が容易であるという点で、後述のような金型を用いることが好ましい。
図3は、本発明に係る方法で好ましく使用される金型2を示した図である。この金型20は、雄型22及び雌型21の雌雄一対からなる。雄型22には、金型キャビティ23を形成する面に、樹脂供給口222が設けられ、この樹脂供給口222を通じて樹脂組成物12が金型キャビティ23内に供給される。
上記雄型22及び雌型21の両金型は、図4に記載されているように、雄型22がプレス装置4の固定盤41に固定されている。一方、雌型22は、可動盤42に固定されている。この可動盤42は、駆動装置43により、固定盤41に固定された雄型22と勘合する方向(本実施形態では図に向かって上下方向)に動くことにより型締めを行う。なお、駆動装置42の駆動源は油圧であっても電動機であってもよいが、応答性や位置精度に優れる電動機がより好ましい。また、型締めの方向は図に向かって左右方向であってもよい。
図3に戻って、射出機に貯留された樹脂組成物12は、雄型22樹脂供給路221及び樹脂供給口222を通じて金型キャビティ23内に供給される。樹脂組成物12の供給及び供給量の調整は、バルブゲート223の開閉により行われる。バルブゲート223の開閉は、その端部に設けられた油圧駆動又はエアー駆動のゲート駆動装置224に接続され、供給/停止の動作を任意に制御できるようになっている。
樹脂供給口222は雌雄いずれか一方もしくは両方の金型の金型キャビティ23を形成する面に設けられ、その設置場所や数は発泡成形体の形状や大きさによって適宜決定される。
樹脂組成物12の供給は、減圧工程後20秒以内であることが好ましく、10秒以内であることがより好ましい。樹脂組成物12の供給を減圧工程後20秒以内とすることにより、シリンダ内で樹脂組成物12が長時間滞留することを防止することが可能となる。これにより、得られる発泡成形体にシルバーストリーク等の外観不良や発泡不良等が発生することを防止することが可能となる。
金型キャビティ23内への樹脂組成物12の充填は、所定のキャビティクリアランスにおいて両金型を閉じた状態での射出充填による方法であってもよいし、開放状態にある両金型キャビティ23に樹脂組成物12を供給した後、両金型の型締め動作によって充填してもよい。このうち、より外観が良好な発泡成形体を得るには、両金型を閉じた状態での射出充填する方法が好ましい。射出充填による場合、発泡前の成形体厚みより小さいキャビティクリアランスあるいは発泡前の成形体厚みになるように両金型を閉じた状態で樹脂組成物を供給することができる。このとき、予め金型キャビティ23内を0.1MPa〜10MPa程度の加圧流体で満たしておいてもよいし、金型キャビティ23内を真空状態としてもよい。
発泡前の成形体の厚みより、小さいキャビティクリアランスになるように両金型を閉じた状態で樹脂組成物12の供給を開始する場合、供給開始時のキャビティクリアランスは、金型キャビティ23の容積が、樹脂組成物の発泡前の容積に対して通常5容量%以上、100容量%未満となる範囲であることが好ましく、30容量%以上、100容量%未満であるであることがより好ましい。
樹脂組成物12の供給が進むにつれて、キャビティクリアランスは拡大され、所要量の樹脂組成物12の供給が完了する。この時点で、供給した樹脂組成物12の容積と金型キャビティ23の容積とが略等しくなり、金型キャビティ23内に樹脂組成物が充填される。前記のキャビティクリアランスの拡大は、拡大量を制御しながら金型が取り付けられたプレス装置等によって積極的に行ってもよいし、供給される樹脂組成物12の供給圧力を利用して拡大してもよい。
この際、樹脂組成物12の供給が完了した時点で樹脂組成物12の容量よりもキャビティ容積が大きくなることがあるが、この場合には、所定のキャビティクリアランスになるように型締めを行うことで金型キャビティ23内に樹脂組成物12が充填される。
発泡前の成形体厚みと同じキャビティクリアランスになるように両金型を位置させた状態で樹脂組成物12を供給して金型キャビティ23内に充填する場合には、通常の射出成形における場合と同様に、樹脂組成物12の供給開始から供給完了までキャビティクリアランスを発泡前の成形体厚みと同じになるように保持しておけばよい。
樹脂組成物12の供給が長時間にわたって行われると、供給中の樹脂組成物12の温度低下が生じるため、樹脂組成物12の供給は速やかに行われることが好ましい。このため、射出率は好ましくは400cc/秒以上であり、500cc/秒以上であることがより好ましい。この時の射出時間は0.5秒〜5秒程度であることがより好ましい。
また、金型2の型締め動作により樹脂組成物12を金型キャビティ23内に充填する方法としては、キャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みよりも大きくなるように金型2を開放した状態で所要量の樹脂組成物12を供給した後、キャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みと同じになるように型締めして充填する方法や、キャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みより大きくなるように両金型を開放した状態で樹脂組成物12の供給を開始し、樹脂組成物12を供給しつつ型締めを開始して、樹脂組成物12の供給完了と同時又は供給完了後にキャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みと同じになるように型締めを行う方法が挙げられる。
このような方法により樹脂組成物12が充填された金型キャビティ23は、高圧状態に保たれ、殆ど空隙が存在しない状態にある。この状態で、キャビティを形成する面に接する樹脂組成物12の表面を固化させてスキン層を形成させるが、金型温度は一般に使用する熱可塑性樹脂の融点又は軟化点よりも低い温度に設定されているため、この状態を保持して冷却を行うと、供給された樹脂組成物12はキャビティを形成する面に接する表面部分から固化を開始し、やがて空隙の殆どないスキン層が形成される。
金型の温度は、用いる熱可塑性樹脂により適宜決定されるが、通常20℃〜80℃程度であり、30℃〜60℃程度であることが好ましい。この場合の冷却時間は0.1秒〜5秒程度である。
〔発泡工程〕
発泡工程は、金型キャビティに供給された樹脂組成物を発泡させる工程である。発泡方法としては、ショートショット法やコアバック法等が挙げられる。このうち金型キャビティを拡大して樹脂組成物を発泡させるコアバック法であることが好ましい。このような発泡方法を用いることにより、供給された樹脂組成物中に閉じ込められていた気泡核が膨張しながら発泡層を形成すると同時に、全体として金型の拡大方向、すなわち厚み方向に厚みを増して、より高い発泡倍率を実現することができる。
図5は、コアバック法により樹脂組成物を発泡させる様子を示した図である。金型キャビティ23に樹脂組成物12を供給した後、雌型21を動かして(図に向かって上の矢印方向)金型キャビティ23を拡大する。これにより樹脂組成物12中に閉じ込められていた気泡核が膨張して発泡成形体が形成される。
雌型21の稼動は、図4に記載のプレス装置4の駆動装置43によって可動盤42を移動させることにより行われる。雌型21を可動させる距離は、得られる発泡成形体の発泡倍率によって異なるが、通常0.5mm〜5mm程度であり、0.01mm〜0.1mm単位で制御される。
金型キャビティ23を発泡成形体の厚み方向に拡大した後、キャビティクリアランスが発泡後の発泡成形体厚みになった時点で金型の拡大動作を停止し、キャビティクリアランスをこの厚みに保持しつつ、得られる発泡成形体が変形しない程度まで冷却する。
このとき、キャビティクリアランスを一旦発泡成形体の最終的な厚みより大きくなるように金型キャビティ23を拡大した後、発泡層を形成する樹脂組成物12の一部がまだ溶融状態にある間に発泡成形体の最終的な厚みになるまで型締めを行ってもよい。これにより、得られる発泡成形体表面とキャビティを形成する面との密着性をより向上させることができ、キャビティを形成する面の形状をより忠実に再現するとともに、冷却効率を上げることもできる。このときの型締め動作は、機械的に制御して行ってもよいし、雌型21の自重により金型キャビティを縮小することによって行ってよい。
冷却が完了した後、図6に示すように金型2を完全に開放し、最終成形体である発泡成形体3を金型2より取り出せば、表面にスキン層を有し、その内部に発泡層を有する発泡成形体3を得ることができる。
本発明に係る方法により得られる発泡成形体3は、図7に示すように、表面に殆ど空隙を有さないスキン層31と、空隙を有する発泡コア層32とから構成されている。発泡成形体3の発泡倍率は1.1倍以上であり、好ましくは1.3倍以上である。また、発泡倍率の最大値は特に限定されないが、強度低下を防止するために10倍以下が好ましく、より好ましくは8倍以下である。この発泡成形体3の意匠面側には各種シボ模様や柄模様等の凹凸模様が施されていてもよい。凹凸の溝深さは通常10μm〜500μm、好ましくは50μm〜200μmである。ここで、意匠面とは通常、発泡成形体3の表面の片側を示すが、発泡成形体3の両側が意匠面となっても構わない。
また、その意匠面の一部に1種類又はそれ以上の種類の表皮材が貼合一体化されていてもよく、表皮材が貼合される場所については特に制限されることはない。表皮材を貼合一体化する方法としては発泡成形体3を製造した後に、接着剤で接着してもよいし、発泡成形体3を製造時に同時に基材と融着又は表皮材の裏面に樹脂を含浸させることにより貼合一体化してもよい。
また、この発泡成形体3は、軽量でかつ外観が好ましいため、その意匠面を塗装等の表面処理をせずに使用でき、自動車内装部品又は外装部品、二輪車部品、家具や電気製品の部品、建材等として幅広く使用することができ、とりわけ、自動車内装部品として有用である。
〔熱可塑性樹脂〕
本発明に係る方法に用いられる熱可塑性樹脂としては、圧縮成形、射出成形、押出成形等で通常使用される樹脂が挙げられる。例えばポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の一般的な熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM等)の熱可塑性エラストマー、これらの混合物、あるいはこれらを用いたポリマーアロイ等が挙げられる。この中でも特にコストや機械的強度、成形性等の面からメルトフローレートが40g/10分〜500g/10分のポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
また、これらの熱可塑性樹脂には、必要に応じて通常使用されるガラス繊維、各種の無機もしくは有機フィラー等の充填材が配合されていてもよく、通常使用される各種の顔料、滑材、帯電防止剤、安定剤等の各種添加材が配合されていてもよい。
また、本発明に係る方法により製造された発泡成形体が表皮材を有している場合、その表皮材としては、例えば、モケットやトリコット等の織物や編み物、ニードルパンチカーペット等の不織布、金属フォイル、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーのシートやフィルム等が挙げられる。
不織布を構成する繊維としては、例えば、綿、毛、絹、麻等の天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維が挙げられる。不織布は、単一種の繊維から構成されていても、2種以上の繊維から構成されていてもよい。
合成樹脂のシートやフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂やポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのシートやフィルムが挙げられ、基材樹脂として使用される熱可塑性樹脂との融着性が良好なものが好ましく使用される。
これらの表皮材は、発泡層や裏打ち層を有する多層表皮材であってもよい。
発泡層としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、軟質又は半硬質のポリウレタン発泡体等が挙げられる。また、裏打ち層としては、例えば、不織布、合成樹脂シートやフィルム等が挙げられる。
なお、これらの多層表皮材は、熱可塑性樹脂からなる基材部分との接着性の観点から、熱可塑性樹脂との熱融着性が良好なものや表皮材裏面に溶融状熱可塑性樹脂が含浸して基材樹脂との接着が可能なもの等が好ましく使用される。
〔発泡剤〕
本発明の製造方法に用いられる発泡剤は、特に限定されるものではなく、化学発泡剤、物理発泡剤等の公知のものを使用することができる。
化学発泡剤は、用いる熱可塑性樹脂の溶融温度以下では分解せず、熱可塑性樹脂の溶融温度以上で分解又は反応するものであれば特に限定されず、無機化合物であっても、有機化合物であってもよく、2種以上を併用してもよい。
無機化合物としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、炭酸アンモニウム等が挙げられる。
有機化合物としては、例えば、ポリカルボン酸、アゾ化合物、スルホンヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、イソシアネート化合物等が挙げられる。
ポリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)等が挙げられる。
スルホンヒドラジド化合物としては、例えば、p−メチルウレタンベンゼンスルホニルヒドラジド、2,4−トルエンジスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
ニトロソ化合物としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等が挙げられる。
物理発泡剤としては、例えば、窒素、二酸化炭素等の不活性ガス、ブタン、ペンタン等のフロン系以外の揮発性有機化合物等が挙げられる。物理発泡剤は2種以上を併用してもよく、化学発泡剤と物理発泡剤を併用してもよい。
本発明の製造方法に用いられる発泡剤に不活性ガスが含まれる場合、不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等、対象となる樹脂に対し反応性を示さず、樹脂を劣化させる恐れのない、常温常圧でガス状の無機物質であることが好ましい。これらは、単独でも、2種類以上を併用してもよい。これらの中で、二酸化炭素、窒素、これらの混合物は安価であり安全性が高いため、好ましく用いられ、超臨界状態の二酸化炭素、超臨界状態の窒素、及びこれらの混合物が好ましく用いられる。超臨界状態の物理発泡剤を用いることにより、熱可塑性樹脂と物理発泡剤とをより均一に混合・分散することが可能となる。
本発明の製造方法に用いられる発泡剤の添加量は、化学発泡剤及び物理発泡剤共に熱可塑性樹脂に対し、0.05質量部〜10質量部添加することが好ましく、さらに0.1質量部〜8質量部添加することがより好ましい。
〔実施例〕
熱可塑性樹脂として住友ノーブレンAU891E4(住友化学社製、MFR 80g/10分)、発泡剤マスターバッチとしてセルマイクMB3274(三協化成社製)を樹脂100質量部に対して2質量部、着色マスターバッチ(黒)を樹脂100質量部に対して3質量部添加した樹脂組成物を用いた。
スクリュ径120mmの射出装置、及び、金型として、寸法600mm×800mm、樹脂供給口を2点有する金型を用いた。
背圧を1MPaとしてスクリュの回転によりシリンダの先頭から140mmまで可塑化・計量した後、スクリュを回転させずに148mmまで8mm後退させ溶融状熱可塑性樹脂の圧力を減圧した。減圧工程前後の樹脂組成物の体積は、減圧工程前が約1580ccであり、減圧工程後が約1670ccであった(約1.06倍)。その後、射出機内の発泡剤を含んだ溶融状熱可塑性樹脂を金型キャビティ内に供給し、金型キャビティ容積を拡大して発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体はゲート上にシルバーストリークのない外観良好なもので、かつ、発泡状態も良好であった。
なお、成形条件は以下の通りである。
樹脂温度:230℃
金型温度:50℃
樹脂供給開始時の金型キャビティクリアランス:1.5mm
樹脂供給完了時の金型キャビティクリアランス:2.0mm
金型キャビティ容積拡大後のキャビティクリアランス:3.0mm
樹脂供給完了後から金型キャビティ容積拡大までの時間:1秒
金型キャビティ容積拡大後の冷却時間:30秒
〔比較例1〕
スクリュの回転のみで148mmまで可塑化・計量したこと以外は実施例と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体は発泡状態は良好であったが、ゲート上にリング状のシルバーストリークが見られ、外観の悪いものであった。
〔比較例2〕
スクリュの回転により133mmまで可塑化・計量した後、スクリュを回転させずに148mmまで15mm後退させたこと以外は実施例と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体はゲート上の外観は良好であったものの、それ以外の部分にシルバーストリークが見られ、外観の悪いものであり、発泡状態も悪いものであった。
本発明に係る製造方法において使用される射出機の一部を示した図である。 減圧工程の様子を示した図である。 本発明に係る製造方法において好ましく使用される金型を示した図である。 供給工程の様子を示した図である。 発泡工程の様子を示した図である。 金型から発泡成形体を取り出す工程を示した図である。 本発明に係る製造方法により製造される発泡成形体の断面を示した図である。
符号の説明
1 射出機
11 シリンダ
110 スクリュ
111 ノズル
12 樹脂組成物
13 ホッパー
2 金型
21 雌型
22 雄型
23 金型キャビティ
221 樹脂供給路
222 樹脂供給口
223 バルブゲート
224 ゲート駆動装置
3 発泡成形体
31 スキン層
32 コア層
4 プレス装置
41 固定盤
42 可動盤
43 駆動装置

Claims (4)

  1. 発泡剤と、熱可塑性樹脂と、を射出機のシリンダ内に設けられたスクリュの回転により混練して可塑化し熱可塑性樹脂組成物を製造する可塑化工程と、
    前記熱可塑性樹脂組成物にかかる圧力を低下させる減圧工程と、
    前記熱可塑性樹脂組成物を、一対の金型間に形成される金型キャビティに供給する供給工程と、
    前記金型キャビティに供給された前記熱可塑性樹脂組成物を発泡させる発泡工程と、を有する発泡成形体の製造方法。
  2. 前記減圧工程は、前記スクリュを後退させる工程である請求項1に記載の発泡成形体の製造方法。
  3. 前記減圧工程後の前記熱可塑性樹脂組成物の体積は、前記減圧工程前の体積の1.01倍〜1.1倍である請求項1又は2に記載の発泡成形体の製造方法。
  4. 前記供給工程は、前記減圧工程終了後20秒以内に行われるものである請求項1から3いずれかに記載の発泡成形体の製造方法。
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