JP2009086423A - 光拡散性フィルム - Google Patents

光拡散性フィルム Download PDF

Info

Publication number
JP2009086423A
JP2009086423A JP2007257389A JP2007257389A JP2009086423A JP 2009086423 A JP2009086423 A JP 2009086423A JP 2007257389 A JP2007257389 A JP 2007257389A JP 2007257389 A JP2007257389 A JP 2007257389A JP 2009086423 A JP2009086423 A JP 2009086423A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
light
film
layer
resin
light diffusing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007257389A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5076791B2 (ja
Inventor
Jun Inagaki
潤 稲垣
Yasushi Sasaki
靖 佐々木
Yoshitomo Ikehata
良知 池畠
Mutsuo Nishi
睦夫 西
Yoshinori Saimiya
芳紀 斎宮
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyobo Co Ltd filed Critical Toyobo Co Ltd
Priority to JP2007257389A priority Critical patent/JP5076791B2/ja
Publication of JP2009086423A publication Critical patent/JP2009086423A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5076791B2 publication Critical patent/JP5076791B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Optical Elements Other Than Lenses (AREA)
  • Liquid Crystal (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

【課題】二軸延伸フィルム本来の優れた耐熱性、機械的強度および厚み精度を維持しながら、優れた光線透過率と高い光拡散性を有し、かつ加熱処理後のカールの発生が抑制された光拡散性フィルムを提供する。
【解決手段】結晶性ポリエステルからなる支持層と、該支持層の少なくとも片面に共押出し法で積層された光拡散層を有する二軸延伸積層フィルムからなる光拡散性フィルムであって、光拡散層は、融点が235〜255℃である結晶性ポリエステルを50〜99質量部と該ポリエステルに非相溶な光拡散性添加剤を1〜50質量部含み、光拡散性フィルムは、面配向度(ΔP)が0.080〜0.160であり、全光線透過率が85%以上、ヘーズが30%以上であり、光拡散面の十点平均粗さ(SRz)が2.7〜10.0μmであることを特徴とする光拡散性フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶ディスプレイのバックライトユニット、照明装置等に用いられる光拡散性フィルムに関する。さらに詳しくは、二軸延伸フィルム本来の優れた耐熱性、機械的強度および厚み精度を有し、かつ優れた光線透過率と高い光拡散性とを有する光拡散性フィルムに関する。
近年、液晶ディスプレイの技術進歩は目覚しく、パソコンやテレビ、携帯電話等の表示装置として広く用いられている。これらの液晶ディスプレイは、液晶表示ユニット単独では発光機能を有していないため、その裏面にバックライトユニットを設置することで表示が可能になっている。
バックライトユニットには種々の方式があるが、2種に大別される。一般的に最も多い方式は、内部照光方式あるいは直下型といわれる方式で、光源が照光面の内側にある方式である。この方式では多数の冷陰極線管等の光源を照光面の直下に配置することができるため、後述するエッジライト方式と比較して、極めて高い輝度が得られ、また光損失が小さいという特徴を有している。そのため、大型液晶TVなど大型で、かつ高い輝度が必要な液晶ディスプレイでは、直下型方式が多く用いられている。
しかしながら、直下型方式では、ひとつの画面において光源の直上に当たる位置と、そうでない位置とで大きな輝度差を生じやすく、輝度ムラとして認識されやすいという問題がある。このため、光出射面には有機、無機の微粒子などの光拡散性物質を添加した厚さ数mmのアクリルやポリカーボネートなどからなる光拡散板、及び必要に応じて、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に光拡散加工を施した光拡散性フィルムが設置され、輝度ムラの低減が図られている。
もう一方の方式は、エッジライト型といわれる方式で、光源が照光面の外に配置され、照光面である透明なアクリル樹脂板などからなる導光板の一辺あるいは二辺に蛍光ランプ(多くは冷陰極放電管)等の略線状発光体を密着させ、反射体からなるランプカバーを設けて導光板内に光を導入する方式である。この方式は、前述の直下型バックライトユニットと比較して、消費電力が小さい、小型・薄型化が可能であるという特徴を有している。そのため、ノート型パソコン等の小型ディスプレイ等、特に薄型化、軽量化が要求される場合には、エッジライト型のバックライトユニットが広く用いられている。
エッジライト型バックライトユニットの導光板に求められる必要な機能は、端部より入射した光を前方に送る機能と、送られた光を液晶表示素子側に出射する機能である。前者の機能は、使用する材料および界面反射特性に応じて決まり、後者の機能は、全反射条件を回避する導光板表面の形状に応じて決まる。この全反射条件を回避する導光板表面の形状に関して、導光板表面に白色の拡散材を形成する方法と導光板表面にレンチキュラーあるいはプリズムのフレネル形状を形成する方法が知られている。
しかしながら、これらの形状が形成された導光板から出射された光は、その形状に応じた不均一な光の分布を有している。従って、高品位の画像を得るために導光板上に光拡散性フィルムを設置し、光拡散層を通過する光を拡散、散乱させ、光出射面の輝度を均一にするよう試みられている。
これらのバックライトユニットには、さらにその正面輝度を向上させるため、光拡散性フィルムを透過して出射する光をできるだけ正面方向に集めるように、集光シートが用いられる場合がある。この集光シートは、表面にプリズム状やウェーブ状、ピラミッド状等の微小な凹凸が多数並んだ透明シートであり、光拡散性フィルムを透過した出射光を屈折させて正面に集め、照射面の輝度を向上させるようになっている。このような集光シートは、上記光拡散性フィルムの表面側(液晶ユニット側)に、1枚もしくは2枚重ねて使用される。
さらに、集光シートの配設によって生じた輝度ムラや集光シートの欠陥を拡散、散乱させて目立たなくするため、上記集光シートの表面側(液晶ユニット側)にも、光拡散性フィルムを配設する場合がある。
そして、前記バックライトユニットを構成する各部材(光拡散板、導光板、光拡散性フィルム、集光シート等)には、光の損失を抑えて光の利用効率を向上させるために、光線透過率の高い材料が求められている。
一方、これらの部材は一般に基材フィルムに機能層が積層された構成からなり、これらの部材を、粘着剤を介して貼り合わせて複合化している。これらの部材の数を削減することにより、異なる屈折率を有する部材間の界面において光が反射する回数を低減させることができる。そのため、部材の数を削減することは、光の利用効率を高める上でも有効である。一方、単一の基材フィルム自体に他の機能(例えば、光拡散性)を付与する試みも検討されている。
バックライトユニットに用いられる光拡散性フィルムとしては、例えば、透明熱可塑性樹脂をシート状に成形後、表面に物理的に凹凸を付ける加工を施して得られたフィルムや、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に微粒子を含有した透明樹脂からなる光拡散層をコーティングして得られたフィルムが開示されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
特開平4−275501号公報 特開平6−59108号公報
特に、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に微粒子を含有した透明樹脂からなる光拡散層をコーティングして得られたものは光線透過率が高く、かつ優れた光拡散性を有しており、また二軸延伸ポリエステルフィルムの特徴である優れた耐熱性、機械的強度、さらには優れた厚み均一性を併せ持つことから、広く採用されている。
しかしながら、この方法では、基材フィルムと光拡散層との線膨張係数の違いにより、光拡散性フィルムが加熱された際に、カールを生じやすいという問題がある。この問題は特に近年の大型液晶TVなど、大型でかつ極めて高い輝度が必要な、直下型バックライトユニットを採用する液晶ディスプレイにおいて、重要な問題となりつつある。なぜなら、光拡散性フィルムが大面積化すればする程、線膨張係数の異なる層の界面の面積が大きくなり、光拡散性フィルムが加熱された際に、カールが顕著になるからである。さらに、ディスプレイが高輝度化すればする程、光源の消費電力、即ちバックライトユニットの発熱量もより大きくなり、よりカールが発生しやすく状況になっている。また、この方法では後加工により光拡散層が形成されており、低コスト化の市場要求に関しても不利である。
カールの発生を抑制する手段としては、基材フィルムの光拡散層の表面に、数μmから数十μmの厚みでハードコート層(非光拡散性層)が形成されており、光拡散層を挟んだ両面で線膨張応力をバランスさせるという策がとられる場合がある。しかしながら、このようなハードコート層の厚みは本来不要なものであって、光拡散性フィルムに不要な厚みの増大と製造コストの増大を招く原因となっている。さらに、表裏の線膨張応力をバランスさせる対策にも限界があり、先に述べた大画面、高輝度ディスプレイにおいては、不十分な効果しか得られない。
一方、光拡散性フィルムと集光シート等、他の光学機能性フィルムとの一体化によるバックライトユニット部品の数の削減や製造工程の簡略化のように、低コスト化を目的として、二軸延伸ポリエステルフィルム自体に光拡散性を持たせる試みも多く提案されている。そして、優れた耐熱性、機械的強度、さらには優れた厚み均一性を併せ持つ二軸延伸ポリエステルフィルム自体に光拡散性を持たせようとするアプローチは、前記加熱カールの問題解決に結びつくものである。従って、その工業的価値は非常に大きい。
しかしながら、これまでに提案されてきた二軸延伸ポリエステルフィルム自体に光拡散性を持たせる試みは何れも、二軸延伸ポリエステルフィルムが本来有している特長の何れかを損なうものであるか、光線透過率や光拡散性といった光拡散性フィルムが具備すべき特性を損なうものであり、実用化には至っていない。例えば、特許文献3には、フィルム内部に添加された光拡散性添加剤と、その周りに発生したボイドにより光拡散性を付与した、プリズムシート用光散乱性二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。
特開2005−181648号公報
この方法では、特許文献3に開示されたフィルムは 優れた耐熱性、機械的強度、優れた厚み均一性といった、二軸延伸ポリエステルフィルムが本来有している特長を有しているものと推定されるが、光拡散性が層の内部に存在する気泡により付与されているので、光線透過率が低いという問題がある。なぜなら、フィルムの二軸延伸工程において発生した気泡(ボイド)は、フィルム表面に対して平行な平板状の形態を有しているため、これを光拡散性フィルムとしてバックライトユニットに用いた場合には、照光面から出射した光を後方散乱させて光線透過率を損なってしまうからである。実際に、実施例において示されている全光線透過率は、最も高いものでも85.3%に過ぎない。
また、基材フィルムがポリエチレンテレフタレートからなり、光拡散層を構成する樹脂として、融点が200℃以下の低融点ポリエステル樹脂を用いた、多層タイプの二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている(例えば、特許文献4を参照)。
特開2001−272508号公報
上記方法においては、光拡散剤の周囲に発現し、かつ透明性を阻害するボイドの抑制に配慮がなされている。そのため、光線透過率と光拡散性とのバランスは、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に、微粒子を含有する透明樹脂からなる光拡散層をコーティングして得られる、従来の光拡散性フィルムのそれらに匹敵する。
しかしながら、特許文献4に記載の方法で得られる光拡散性フィルムは、基材層を構成するポリエステル樹脂(PETホモポリマー)と光拡散層を構成するポリエステル樹脂(非晶性ポリエステル樹脂)との間に、大きな融点差、および結晶性の違いがある。その結果、得られた二軸延伸フィルムは、光拡散層と基材フィルム間の線膨張係数が異なるため、二軸延伸フィルム自体が熱処理時にカールしやすくなる。そのため、後加工工程での熱処理によりカールが生じる場合や、液晶ディスプレイの使用環境(温度)によってカールが生じる場合があり、バックライトユニットにおける光出射面の輝度が不均一になる可能性がある。
また、融点が210℃以下の共重合ポリエステルまたは非結晶性ポリエステルを構成樹脂として、該構成樹脂に非相溶の粒子や熱可塑性樹脂よりなる光拡散性添加剤を配合した光拡散性層を中間層として、その両面にポリエチレンテレフタレートよりなる平滑な表面を形成する結晶性ポリエステル樹脂層を積層したフィルムが開示されている(例えば、特許文献5〜11を参照)。
特開2001−324606号公報 特開2002−162508号公報 特開2002−182013号公報 特開2002−196113号公報 特開2002−372606号公報 特開2004−219438号公報 特開2004−354558号公報
上記方法は特許文献4とは異なり、フィルムの構造が対象構造になっているので、該特許文献4で生ずる非対称構造によるカールの発生に関しては改善されている。しかし、融点や結晶性が大きく異なる樹脂を構成成分にしているために、製造条件等の変動によるカールの発生増大の要因を内在している。また、上記方法は積層フィルムの総厚みの80%以上が非結晶性ポリエステル樹脂からなる層よりなるので、結晶性二軸延伸ポリエステルフィルム本来の特徴である、耐熱性、機械的強度、厚み均一性などの優れた特性が損なわれてしまう。その結果、高温での加工や高温環境での使用において、著しい寸法変化や平面性の悪化を生じ、バックライトユニットにおける光出射面の輝度を均一にするという、光拡散性フィルムの本来目的が達成できない。
また、特定粒子径の球状または凸レンズ状の粒子を配合した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが開示されている(例えば、特許文献12を参照)。
特開2002−37898号公報
上記文献には、ポリエステルの原料としてポリエチレンテレフタレートを用いつつ、88%の全光線透過率と68%の拡散透過率を有するフィルムが実施例1に開示されている。また、実施例5においては、85%の全光線透過率と63%の拡散透過率を有するフィルムが開示されている。これらの光線透過率は、前記の二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に微粒子を含有した透明樹脂からなる光拡散層をコーティングして得られたものに匹敵する優れた特性値である。
しかし、これらのフィルムの耐熱性、機械的強度、厚み精度等の基本的な特性は何ら開示されておらず、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム本来の特徴である耐熱性、機械的強度および高い厚み精度が得られる蓋然性も、全く認められない。なぜなら、これらのフィルムは厚み200μmの未延伸フィルムを縦、横、両方向に3.0倍ずつ、すなわち面積倍率9.0倍で延伸することによって得られたフィルムであるにも関わらず、その厚みは50μmであり、延伸前後の厚み比率から計算される実際の面積延伸倍率は4.0倍に過ぎない。
つまり、縦延伸時に生じる幅収縮や横延伸時に発生する幅方向の延伸倍率の分布、さらには熱処理時の寸法変化等の影響により、設定した延伸倍率と実際の延伸倍率とが著しく乖離してしまったものと考えられる。そして、実際の面積延伸倍率が4倍程度の延伸では、たとえ優れた光線透過率が得られたとしても、二軸延伸フィルム本来の特徴である耐熱性、機械的強度および高い厚み精度を達成することは、到底、不可能である。
以上の状況より、二軸延伸フィルム自体に光拡散性を持たせる方法では、二軸延伸フィルムの特徴である耐熱性、機械的強度および高い厚み精度を維持した上で、光線透過率と光拡散性を両立させる、という総合的な品質の点から、透明基材フィルムに光拡散層を後加工する方法には及ばない。
一方、特許文献12では、光拡散層が結晶性ポリエステル樹脂(PETホモポリマー
からなり、延伸速度を遅くすることで、ボイドの発生を抑制し、光線透過率と光拡散性の両立させた光拡散フィルムが開示されている。
特開2007−196682号公報
特許文献12では、内部拡散による寄与が高いため、一定以上の光拡散性を発揮させる為には、フィルム全体に占める光拡散層の厚み比率を高める必要があるが、バックライトユニットの軽量化、薄型化が望まれている。そのため、より効率の高い光拡散性が求められる場面では、特許文献12では光拡散層の厚み比率に限界があった。
上述のように、工程の簡略化や低コスト化の点からインラインにより、基材フィルムに光拡散性を付与することが好ましい。しかしながら、非相溶光拡散性添加剤により拡散性を付与する場合は、ボイドの発生により光線透過率が低下し、基材フィルム本来の機能が果たせない。また、ボイドの発生を抑制するために非晶性のポリエステル樹脂を用いると、基材フィルムが本来有するべき耐熱性や耐溶剤性が得られない。さらに、支持層に結晶性ポリエステル樹脂、光拡散層に非晶性のポリステル樹脂を用いて作製した光拡散性二軸延伸ポリエステルフィルムは、バイメタル構造によりカールの発生が起きる。
そこで、上記の課題に鑑み、二軸延伸フィルム本来の優れた耐熱性、機械的強度および厚み精度等を有し、かつ全光線透過率と光拡散性を両立し、さらにバイメタル構造に由来する加熱カールの発生が抑制された光拡散性フィルムを提供することを目的に、本願出願人が先に行ったのが特願2007−87769(先願発明1)、特願2007−191907(先願発明2)である。
近年、バックライトユニットのコストを抑制させるため、直下型バックライトユニットでは、全体の輝度を維持したまま、設置する冷陰極線管を少なくしたり、冷陰極線管の間隔を広げたりする工夫がなされている。先願発明1、先願発明2の光拡散性フィルムの種々の利用形態を検討したところ、前述したような、冷陰極線管を少なくしたり、冷陰極線管の間隔を広げたりしたバックライトユニットでも有効に光拡散性を発揮するような光拡散性フィルムが求められる場合があった。本発明の目的は、先願発明1、先願発明2の光拡散性フィルムの優れた特性を幅広い利用形態で活用できるようにすること、特により高い光拡散性が求められる場合でも、優れた表示特性を示すことにある。
本願発明者らは、上記課題を解決する為、鋭意検討した結果、光拡散層の表面凹凸構造に着目し、表面凹凸構造の突起高さを制御することが、光拡散性に良好であることを見出し、本願発明に至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
本発明における第1の発明の光拡散性フィルムとは、結晶性ポリエステルからなる支持層と、該支持層の少なくとも片面に共押出し法で積層された光拡散層を有する二軸延伸積層フィルムからなる光拡散性フィルムであって、光拡散層は、融点が235〜255℃である結晶性ポリエステルを50〜99質量部と該ポリエステルに非相溶な光拡散性添加剤を1〜50質量部含み、光拡散性フィルムは、面配向度(ΔP)が0.080〜0.160であり、全光線透過率が85%以上、ヘーズが30%以上であり、光拡散層表面の十点平均粗さ(SRz)が2.7〜10.0μmであることを特徴とする光拡散性フィルムである。
また、第2の発明は、前記光拡散性添加剤が、該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂であることを特徴とする前記光拡散性フィルムである。
第3の発明は、前記光拡散性添加剤が環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン系共重合樹脂のいずれかから選択された熱可塑性樹脂であることを特徴とする前記光拡散性フィルムである。
第4の発明は、前記光拡散層の表面に、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、またはアクリル樹脂を少なくとも1種以上を主成分とする塗布層を有することを特徴とする前記光拡散性フィルムである。
第5の発明は、前記光拡散性フィルムであって、前記光拡散層とは反対側の面に、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、またはアクリル樹脂を少なくとも1種以上を主成分とする塗布層を有することを特徴とする、集光シート基材用の光拡散性フィルムである。
本発明の光拡散性フィルムは、結晶性の高いポリエステルよりなる二軸延伸フィルムであるため、二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた耐熱性、耐溶剤性を有している。また、本発明の光拡散層に特定の樹脂組成を採用するとともに、面配向度を特定範囲内に制御し、表面突起形状を高度に制御することによって、光線透過率と優れた光拡散性とを、いづれも高レベルで両立している。
さらに、本発明の光拡散性フィルムは、支持層および光拡散層がいずれも結晶性ポリエステルを主原料とする多層構造よりなるので、バイメタル構造に由来する加熱カールの発生が抑制されているとともに、二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた耐熱性、機械的強度および厚み精度を有している。
本発明は、加熱によるカールの発生が抑制され、かつ二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた力学的特性を有し、さらに全光線透過率と光拡散性を両立した光拡散性フィルムを提供するものである。上記特性の両立を図るために、本願発明者らは、特にフィルムの面配向度と、ボイドの発生の関係に、ならびに光拡散層の構成と表面構造の発現に着目し、鋭意検討を行った。その結果、本願発明者らは下記(1)〜(7)に述べる手段を講じることで、本発明に至った。そこで、まずこれら達成手段の特徴について説明する。なお、上記特性を両立するためには下記(1)〜(7)の手段の内の特定のいずれかのみが有効に寄与したというものではなく、(1)〜(7)の手段を組み合わせて用いることにより始めて上記特性を両立が可能になったものと考えられる。
(1)光拡散層の樹脂融点の制御
(2)支持層の構成樹脂と光拡散層の基材樹脂との融点差の制御
(3)光拡散層の積層構成の制御
(4)光拡散層の厚みの制御
(5)延伸温度と熱処理温度条件の制御
(6)延伸速度の制御
(7)光拡散性添加剤の軟化温度の制御
(1)光拡散層(A層)の樹脂融点の制御
本発明の光拡散性フィルムは、結晶性ポリエステルからなる支持層(B層)を有し、融点が235〜255℃である結晶性ポリエステルと該非相溶性の光拡散性添加剤との配合組成物からなる光拡散層(A層)とを有する。ここで、結晶性ポリエステルとは融点を有するポリエステルのことをいう。融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。示差走査型熱量計を用いて測定した場合に、融点として明確な結晶融解熱ピークが観測されるポリエステルであれば、結晶性ポリエステルにふくまれる。
フィルムの耐熱性、機械的強度、厚み精度の点からすれば、樹脂の融点は高いほど望ましい。しかしながら、樹脂の融点が高い場合は、延伸時に伴い発生する延伸応力が増加するため、樹脂中に非相溶な添加剤があるとボイド(空洞)が発生しやすくなり、全光線透過率が低下する。ボイドの発生のし易さは、後述のように延伸条件によっても影響を受けるが、作製されたフィルムの面配向度と強い関連性がある。面配向度は延伸後のフィルムに形成された高分子鎖の配向状態を示し、かかる配向状態が高いほど力学的強度は強くなるが、フィルム内に発生するボイドも多くなる。そのため、フィルムの面配向度を低下させ、ボイドの発生を抑えるには、光拡散層(A層)を構成する樹脂の融点は一定範囲内で制御することが望ましい。光拡散層(A層)を構成する共重合成分を含む結晶性ポリエステルの融点の下限は235℃が好ましく、さらに好ましくは240℃が好ましい。融点が235℃以上であれば、望ましい耐熱性、機械的強度および厚み精度が発揮できる程度の配向係数を得ることができる。また、光拡散層(A層)を構成する共重合成分を含む結晶性ポリエステルの融点の上限は255℃が好ましく、250℃がさらに好ましい。融点が255℃以下であれば、光拡散層(A層)内でのボイドの発生が抑制されるため好ましい。
(2)支持層(B層)の構成樹脂と光拡散層(A層)の基材樹脂との融点差の制御
本発明の光拡散性フィルムは結晶性ポリエステルからなる支持層(B層)を有する。フィルムとして所定の耐熱性、機械的強度、厚み精度を得るためには、支持層(B層)を構成する結晶性ポリエステルの融点は高い方が好ましい。しかし、支持層(B層)と光拡散層(A層)との2層を構成する樹脂の融点差が大きい場合は、バイメタル構造に起因するカールが生じ易くなる。そのため、支持層(B層)を構成する結晶性ポリエステルと光拡散層(A層)を構成する結晶性ポリエステルとの融点差は、25℃以内であることが好ましく、20℃以内であることがより好ましく、10℃以内であることがさらに好ましく、8℃以内がよりさらに好ましく、5℃以内であることが特に好ましい。融点差が25℃以内であれば、バイメタル構造によるカールの発生が実用範囲以内に抑制することができる。なお、光拡散層(A層)を構成する樹脂の融点は上記範囲が望ましいことから、支持層(B層)を構成する結晶性ポリエステルの融点の上限は、270℃が望ましい。
支持層(B層)および光拡散層(A層)を構成する結晶性ポリエステルの融点は、共重合成分を導入することにより制御することができる。特に、本発明では、光拡散層(A層)の構成する結晶性ポリエステルに所定量の共重合成分を導入することが望ましい。共重合成分をポリエステル中に導入することにより、二軸延伸フィルムの面配向度を制御することができ、光線透過率と光拡散性を高度に両立することが可能となる。しかしながら、共重合成分を過大に導入すると、ポリエステルの融点が低下し、二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた特性が得られなくなるので、注意が必要である。共重合成分の導入量は、芳香族ジカルボン成分全体、あるいはグリコール成分全体に対し、3モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは5モル%以上、よりさらに好ましくは7モル%以上、特に好ましくは8モル%以上である。共重合成分の含有量が3モル%より大きい場合には、ボイドの発生が抑制され、光線透過率と光拡散性を高度に両立しやすくなるので好ましい。一方、共重合成分の導入量の上限としては、上記成分に対して20モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは18モル%以下、特に好ましくは15モル%以下である。共重合成分の含有量が20モル%を以下である場合は、二軸延伸ポリエステルフィルムの力学的特性が実用範囲になる程度の融点が得られるので好ましい。なお、本発明で使用可能な共重合成分の組成については、後述する。
(3)光拡散層(A層)の積層構成の制御
本発明の光拡散性フィルムは、前記結晶性ポリエステルからなる支持層(B層)の少なくとも片面に、融点が235〜255℃である結晶性ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の光拡散性添加剤との配合組成物からなる光拡散層(A層)が共押出し法で積層された多層構造よりなることが重要である。
光拡散層(A層)での光の拡散は、フィルムの表面の凹凸構造に起因する散乱と、フィルムの内部構造に起因する散乱に分かれる。ボイドなどの内部構造による光の散乱は後方散乱を伴う為、高い全光線透過率が得られない。一方、表面構造による光の散乱は、全光線透過率を大きく低下することなく、高い光拡散性を得ることができる。しかし、光拡散層(A層)で有効な表面ヘーズを達成するためには、バイメタル状の構造に伴うカール発生や、光拡散性添加剤によるボイド発生を回避することは困難であった。本発明では、(1)から(7)に開示する手段をとることにより、加熱カールやボイドの発生を抑制しながら、かつ、良好な表面凹凸構造を有するフィルムを提供することが可能になった。すなわち、本発明の光拡散性フィルムは、上記の多層構造を採用することで、非相溶な光拡散性添加剤に起因する光拡散層(A層)表面の凹凸構造により光拡散性を付与するとともに、フィルムの内部での光散乱(内部拡散)を抑制して高い全光線透過率を達成することができる。これにより、高い光透過性と優れた光拡散性の両立をはかることができる。
(4)光拡散層(A層)の厚みの制御
本発明の光拡散性フィルムは支持層(B層)と光拡散層(A層)を有するが、本発明の光拡散性フィルムを得るためには、光拡散層(A層)の厚さが重要である。光拡散層(A層)の表面拡散は表面凹凸が大きい程、高くなる傾向にある。そのため、光拡散層(A層)の添加剤の粒径は大きい方が望ましい。
一方、光拡散層(A層)の厚みが、非相溶の添加剤の粒径を相当程度上回ると、効果的に表面凹凸構造を形成しにくくなる。そのため、光拡散層(A層)の厚みを厚くすると、表面凹凸形成が減少し、表面拡散が低下する。また、光拡散層(A層)の厚みに従い、光拡散層(A層)の内部構造に起因する内部拡散が高くなり、全光線透過率が低下する。高い全光線透過率と光拡散性の両立を図る為には、光拡散層(A層)の厚みを所定以下の範囲に制御することが望ましい。そのため、光拡散層(A層)の厚みの上限は、30μmが好ましく、25μmがさらに好ましく、20μmがよりさらに好ましい。
また、光拡散層(A層)のフィルム全体厚み(A+B)に対する比率が高くなると、バイメタル構造によるカールの発生が生じ易くなるだけでなる。さらに、支持層(B層)に比べて相対的に融点の低い光拡散層(A層)の比率が増すため、フィルム全体として厚み斑が生じやすくなり、表面平滑性が損なわれる。また、光拡散層(A層)は共重合成分を多く含む場合、フィルム全体として配向係数が低下し、力学的特性が低下する。一方、光拡散層(A層)のフィルム全体厚みに対する比率が小さいと、光拡散層(A層)中の添加剤が、フィルムの表面にブリードアウトする場合や、脱落する場合がある。よって、光拡散層(A層)のフィルム全体厚みに対する比率は所定の範囲に制御することが望ましく、2〜25%の範囲が好ましい。光拡散層(A層)のフィルム全体厚み(A+B)に対する比率の下限は、2%が好ましく、3%がさらに好ましく、4%が特に好ましい。一方、光拡散層(A層)のフィルム全体厚みに対する比率の上限は、25%が好ましく、20%がさらに好ましく、15%が特に好ましい。
(5)延伸温度と熱処理温度条件の制御
フィルムの力学的特性や光学特性は製膜条件によっても制御することができる。フィルムの延伸温度を高くすると、延伸応力が低下するので、面配向度が低くなり、ボイドの発生が抑制される。また、非相溶の光拡散性添加剤による表面凹凸も形成されやくなるので、全光線透過率と光拡散性の両立の点からは、高温で延伸することが望ましい。また、熱処理を高温で行うと、ボイドが消失し、内部ヘーズを低くすることができ、さらに、熱寸法変化率も小さくなり、熱処理でのカールが生じ難くなる。しかしながら、延伸温度を高くすると、フィルムの厚み変動が大きくなり、厚み斑などが発生して、フィルム本来の力学的特性が得られ難い。本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムにおいて、優れた力学的特性と、全光線透過率と光拡散性の両立を図る為には、樹脂特性や要求特性に応じた製膜条件、特に延伸時の温度と熱処理時の温度を適宜に制御することが望ましい。
フィルムの二軸延伸に同時二軸延伸機を用いる場合、その好ましい延伸温度は85℃〜115℃である。延伸温度(最高温度)が115℃を超える場合には、フィルムの面配向度を0.080以上に制御することが困難になる。さらに、フィルムの厚み精度等の均一性も低下する。一方、延伸温度(最高温度)が85℃未満の場合には、フィルムの面配向度を0.160以下に均一制御することが困難になる。なお、より好ましい延伸温度は87℃〜105℃、さらに好ましい延伸温度は90℃〜100℃である。
(6)延伸速度の制御
本発明の光拡散性フィルムは、表面拡散に有効な表面凹凸構造を持たせる為には、光拡散層に含まれる非相溶の光拡散性添加剤の粒径は大きい方が好ましい。しかし、光拡散性添加剤の粒径は大きくなると、フィルム延伸工程においてボイドが発生しやすくなる。かかる、ボイドの発生を抑制するには、延伸条件によっても制御することができる。すなわち、本発明では、延伸速度を遅くすることでボイドの発生を抑制することが重要である。本発明における二軸延伸は、縦、横両方向の延伸をいずれも80%/秒未満の延伸速度で行うことが望ましい。本発明における延伸速度とは、単位時間当たりのフィルムの変形率を、未延伸フィルムの寸法を基準として表したものであり、縦方向、及び横方向の延伸速度(単位:%/秒)は、それぞれ下記式によって定義される。
縦方向延伸速度(%/秒)=フィルム走行時の加速度(m/秒/秒)
÷未延伸フィルムの速度(m/秒)×100
横方向延伸速度(%/秒)=1秒間当たりの幅変化率(m/秒)
÷未延伸フィルムの幅(m)×100
縦方向、及び横方向の、延伸開始から延伸終了までの全ての延伸を、80%/秒未満の延伸速度で、面配向度を制御し、ボイドの発生を抑制しながら、光拡散性に有効な凹凸構造を形成させることができる。その結果、全光線透過率が高く、光拡散性に優れ、二軸延伸ポリエステルフィルム本来の耐熱性、機械的強度とを併せ持つ光拡散性二軸延伸フィルムを、優れた厚み精度で製造することが可能となる。
一方、縦、横、何れかの方向における最大延伸速度が80%/秒を超える場合には、延伸温度設定や延伸倍率設定の如何によらず、フィルムの面配向度を0.160以下に制御することが困難となり、光拡散性に有効な凹凸構造が形成されず、全光線透過率と光拡散性とのバランスがとれなくなる。あるいはフィルムの厚み精度等の均一性が著しく悪化する。
一方、延伸速度の下限は制限されないが、延伸速度を必要以上に遅くすると、工業的規模でのフィルムの生産において、フィルムの生産性が低下する、あるいは過剰な設備投資が必要となるため好ましくない。したがって、本発明においては、延伸開始から延伸終了の間の最高延伸速度を、5%/秒以上とすることが好ましく、さらには、10%/秒以上とすることが好ましい。
(7)光拡散性添加剤の軟化温度の制御
光拡散層表面に起因する光拡散性能を高めるためには、表面凹凸の突起形状の突起高さを高くすることが望ましい。光拡散層の表面突起を高くするためには、結晶性ポリエステルに分散している非相溶の光拡散性添加剤の形状を球形に近づけることが望ましい。光拡散性添加剤として熱可塑性樹脂を用いた場合、溶融共押出しにより積層された光拡散層中の非相溶樹脂は、溶融押出し後、未延伸のシート状に冷却された状態では球形に極近い形状である。しかし、その後の延伸工程では、フィルムに延伸応力が働くため、フィルム内部の非相溶樹脂が押しつぶされ、偏平な形状に変形する場合があり、特にフィルム表面に近いほど偏平化が起こり易い。そのため、光拡散性添加剤が好適な表面凹凸構造を形成させるためには、延伸温度下においても、延伸応力に抗する程度の硬度を有することが必要である。よって、光拡散性添加剤として熱可塑性樹脂を用いる場合は、熱可塑性樹脂が軟化する温度は延伸温度よりも高いことが望ましい。すなわち、光拡散性添加剤として非晶性の透明熱可塑性樹脂を用いた場合、かかる樹脂のガラス転移温度と延伸温度の温度差は、好ましくは2℃以上、より好ましくは3℃以上、さらに好ましくは4℃以上であり、20℃以上であれば特に好ましい。光拡散性添加剤として非晶性の透明熱可塑性樹脂を用いた場合、当該樹脂のガラス転移点と延伸温度の温度差は、高いほど好ましいが、溶融押出しで樹脂をろ過処理することを考慮すると、かかる温度差は200℃以下であることが望ましい。
さらに、バイメタル構造による加熱カールを抑制する手段としては、上記(1)から(4)に記載される達成手段以外にも、押し出し時の表裏冷却の冷却速度差によるフィルム厚み方向の結晶化度を始め、予熱、延伸、冷却、巻き取り等の各工程でフィルム表裏の構造差を発生させ、必然的な構造差と補完しあってカール値をゼロに近づける方法等を適用するのができる。
具体的には、延伸時のフィルム裏表の延伸温度を制御することができる。より低温で延伸された面は反対面よりもポリエステルの分子配向が強化される。そのため、フィルムの線膨張係数が低下する。この挙動を利用して、フィルム表裏での線膨張係数を制御し、カールを制御することができる。
さらに、本発明の光拡散性フィルムの構成、および特性について、以下に詳述する。
(原料)
(1)支持層(B層)の樹脂構成
本発明で支持層(B層)の原料として用いることができる結晶性ポリエステルとは、示差走査型熱量計を用いた測定にて明確な結晶融解熱ピーク(融点)が観察せれるポリエステルであれば、何ら制限されることなく任意である。
ここで、ポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。これらのポリエステルは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる直重法のほか、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合させるエステル交換法か、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させるなどの方法によって製造することができる。
前記のポリエステルの代表例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレートが挙げられる。前記のポリエステルはホモポリマーであってもよく、第三成分を共重合したものであってもよい。ポリエステル系樹脂の共重合体としては、エチレンテレフタレート単位、あるいはエチレン−2,6−ナフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であるポリエステルが好ましい。なかでも、本発明に用いられる結晶性ポリエステルとしては、耐熱性、透明性、耐溶剤性の点からポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート系共重合体が好適に使用できる。
また、前記のポリエステルには、全光線透過率を高くするため、滑り性を付与する目的で使用される粒子を実質的に含有させないことが好ましい。前記の「粒子を実質的に含有させず」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を前記ポリエステル中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
(2)光拡散層(A層)の基材樹脂構成
本発明の光拡散層(A層)に用いることができる融点が235〜255℃である結晶性ポリエステルとしては、上記の結晶性ポリエステルを基本骨格として、第3成分(共重合成分)が主鎖中に導入された共重合成分を含む結晶性ポリエステルが好適に使用でき、その構造、分子量、及び組成は限定されず任意である。
また、前記の共重合成分を含む結晶性ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールの少なくとも1種を含むグリコール成分とから構成される共重合ポリエステルを、原料の一部あるいは全部に用いることが好ましい。
分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールなどが例示される。また、脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
これらのなかでも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。さらに、本発明においては、上記のグリコール成分に加えて1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールを共重合成分とすることが、より好ましい実施態様である。これらのグリコールを共重合成分として、前述の範囲で導入し、使用することは、本発明の光拡散性フィルムの特性を付与するために好適であり、さらに、光拡散層内のボイドを低減させ、光線透過率と光拡散性を高度に両立させる点からも好ましい。
さらに、必要に応じて、前記の共重合成分を含む結晶性ポリエステルに下記のようなジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分を1種又は2種以上を共重合成分として併用してもよい。
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とともに併用することができる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(2)シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(3)シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(4)p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
一方、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールとともに併用することができる他のグリコール成分としては、例えばペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ダイマージオール等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、さらにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合させることもできる。
前記ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
前記ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
本発明の光拡散性フィルムは、前記共重合ポリエステルをそのままフィルム原料として用いてもよいし、共重合成分が多い共重合ポリエステルをホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)とブレンドして、共重合成分量を調整しても構わない。
特に、後者のブレンド法を用いてフィルムを製造することによって、共重合ポリエステルのみを用いた場合と同等の光拡散性と全光線透過率を両立しながら、高融点(耐熱性)を有する、共重合成分を含む結晶性ポリエステルを調整することができる。
また、異なる2種類の結晶性ポリエステルを溶融混合して、両者のエステル交換反応を利用して、主鎖中に第3成分(共重合成分)を導入する方法を採用しても良い。特に、前記共重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステル(例えば、ポリテトラメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート)を少なくとも1種以上ブレンドして、本発明の光拡散層の樹脂原料として使用することは、ボイド低減の点からもさらに好ましい。
(3)光拡散性添加剤
本発明で用いられる光拡散性添加剤としては、上記ポリエステルに非相溶の材料であって、下記のような材料を使用することが好ましい。また、光拡散性添加剤は下記種類の中から1種を用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
(3−1)ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂
本発明で用いる光拡散性添加剤としては、ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂が最も好ましい。すなわち、結晶性ポリエステルと熱可塑性樹脂との非相溶性を活用して延伸フィルムの製造工程(溶融、押出し工程)において結晶性ポリエステルからなるマトリックス中に該ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂からなるドメインを分散形成させ、光拡散性添加剤として活用する。
本発明に用いることができる、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン単位を含むオレフィン共重合体(環状オレフィンコポリマー)などを含む環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等のポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル樹脂、及びこれらを主たる成分とする共重合体、またはこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
それらの中でも特に、非晶性の透明ポリマーを用いることが、高い光線透過性を有する光拡散性フィルムを製造するために好ましい。なかでも、環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン系共重合樹脂がより好ましい。これらの樹脂は、一般的にガラス転移点が高く、拡散層の表面突起形成においてより好適である。
(3−2)非溶融性ポリマー粒子
本発明の光拡散性添加剤として用いることができる非溶融性ポリマー粒子は、融点測定装置(例えば、スタンフォード・リサーチ・システム社製MPA100型)を用いて、30℃から350℃まで10℃/分で昇温した際に、融解による流動変形が起こらない粒子であれば、特にその組成は限定されない。例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂および有機シリコーン系樹脂などが挙げられる。非溶融性ポリマー粒子の平均粒径は、0.5〜50μmが好ましい。また、非溶解性ポリマー粒子は1種類でも良いし、2種類以上使用しても良い。
(3-3)無機粒子
光拡散性添加剤として用いることができる無機粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、カオリナイト、タルクなどが挙げられる。無機粒子の平均粒子系は、0.5〜50μmが好ましい。また、無機粒子は1種類でも良いし、2種類以上使用しても良い。
なお、粒子の平均粒径の測定は下記方法により行う。
粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmになるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径を測定し、その平均値を平均粒径とする。
(3−5)光拡散性添加剤の混合比率
本発明の光拡散性フィルムにおける光拡散層は、結晶性ポリエステルを50〜99質量部と該ポリエステルに非相溶性の光拡散性添加剤を1〜50質量部含む組成物からなる。
結晶性ポリエステル(a)と該ポリエステルに非相溶性の光拡散性添加剤(b)の混合比率は、(a)/(b)=70/30〜98/2(質量部)が好ましく、さらに好ましくは75/25〜95/5(質量部)、特に好ましくは80/20〜93/7である。
光拡散性添加剤の混合比率が2質量部未満の場合には、ヘーズを30%以上にすることが困難になる。一方、光拡散性添加剤の混合比率が40質量部を超える場合には、光拡散性添加剤の周りのボイドの数や大きさが増大してヘーズが大きくなり、全光線透過率を85%以上にすることが困難になる。
(4)層構成
本発明の光拡散性フィルムの層構成は、上記のように2層構造であっても構わないし、必要により3層以上の多層構造としても良い。
本発明の光拡散性フィルムを、プリズムシートの下面の光拡散性シートとして用いる場合には、支持層(B層)の両面に光拡散層(A層)を共押出し積層することで、表面凹凸で生じる光拡散効果をフィルムの両面で得ることができるので、高い光線透過率を維持しつつ、さらに高いヘーズを有する光拡散性フィルムを得ることができる。
また、本発明の光拡散性フィルムをプリズムシート上面の光拡散性シートとして用いる場合には、プリズムシートと対面する表面には平滑性が求められるので、光拡散層(A層)を支持層(B層)の片面に設けた構成とすればよい。
本発明の光拡散性フィルムにプリズム加工を施し、光拡散性フィルムとプリズムシートとの一体化を図るためには、上記光拡散層(A層)を支持層(B層)の片面に設けた構成として、該構成の平滑面である支持層(B層)表面にプリズム加工を施すことが、本発明の光拡散性フィルムが有する特徴を有効に活用することができる好ましい実施形態である。この場合、支持層(B層)の平滑面には、プリズムを構成するアクリル樹脂との密着性を向上させるために塗布層を施すことが好ましい。
本発明の光拡散性フィルム全体の厚みは、強度の点から、50〜500μmが好ましく、70〜400μmがより好ましく、90〜250μmがさらに好ましい。
(光拡散性フィルムの特性)
本発明の光拡散性フィルムは、面配向度(ΔP)が0.080〜0.160であり、かつ全光線透過率が85%以上、へーズが30%以上、光拡散層表面の十点平均粗さ(SRz)が2.7〜10.0μmであることが重要である。
面配向度(ΔP)は、0.100〜0.150がより好ましく、0.110〜0.140がさらに好ましい。面配向度(ΔP)が0.160を超えた場合は、光拡散層(A)表面の凹凸が低下(平坦化)し、表面凹凸によって生じる光拡散効果が著しく低下してしまう。また、面配向度(ΔP)が0.160を超える場合、用いる光拡散性添加剤の種類にもよるが、光拡散性添加剤の周りに発生するボイドの数や大きさが増大して内部散乱が大きくなり、全光線透過率が低下する傾向にある。何れにしろ、面配向度(ΔP)が0.160を超える場合には、全光線透過率と光拡散性のバランスが取れなくなるので好ましくない。
一方、面配向度が0.080未満では、二軸延伸フィルムとしての特徴がなくなり、機械的な強度が著しく低下するので好ましくない。また、フィルムの厚み均一性も悪化する。
本発明の光拡散性フィルムにおける全光線透過率の好ましい下限は86%、より好ましい下限は88%である。一方、全光線透過率の好ましい上限は98%である。
また、本発明の光拡散性フィルムにおけるヘーズの好ましい下限は30%、さらに好ましい下限は32%である。一方、ヘーズの好ましい上限は100%である。
次に、本発明の光拡散性フィルムの耐熱性、機械的強度および厚み精度について説明する。なお、以下に述べる特性は、本発明の結果として得られる効果を説明するものであって、本発明を制約するものではない。
本発明の光拡散性フィルムは、その150℃における寸法変化率が縦方向及び横方向とも3%以内であることが好ましい。より好ましくは2%以内、更に好ましくは1.5以内である。寸法変化率が3%を超えた場合は、高温での加工や高温環境での使用において、著しい寸法変化や平面性の悪化を生じ、バックライトユニットにおける光出射面の輝度を均一にするという、光拡散性フィルムの本来目的が達成できなくなるので好ましくない。
また、本発明の光拡散性フィルムは、その引張り強さが縦方向及び横方向とも100MPa以上であることが好ましい。引張強さの好ましい下限は110MPa、さらに好ましい下限は135MPaである。引張強さが110MPa未満では、二軸延伸フィルムの力学的強度が不十分となり、フィルムの加工工程で割れ、破れ、折れ等の不具合を生じやすくなるので好ましくない。
また、本発明の光拡散性フィルムは、厚み斑が10%以下であることが好ましい。5.0%以下がより好ましく、4.0%以下がさらに好ましく、3.5%以下が特に好ましい。該厚み斑は小さい方が望ましいが、厚み斑を0.1%以下とすることは技術的難度が高く、かつ実用上の品質としては大きな差異が見られないので、厚み斑の下限値は0.1%でも構わない。
フィルムの厚み斑が10%を超える場合は、フィルムをロール上に巻き上げた時に、シワやコブを生じやすく、光拡散性フィルムの平面性が損なわれる。その結果、バックライトユニットにおける光出射面の輝度が不均一化するため、光拡散性フィルムの本来の目的が達成できなくなるので好ましくない。
また、本発明の光拡散性フィルムは、無荷重の状態で、100℃で30分間加熱処理した後のカール値が20mm以下であることが好ましい。より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下、よりさらに好ましくは3.5mm以下、特に好ましくは3.0mmである。
フィルムを加熱処理した後のカール値が20mmを超える場合は、例えば、光拡散性フィルムとして最終製品に組み込む場合の無緊張下での作業時のハンドリング性が悪化するので好ましくない。また、高温での加工や高温環境での使用において、光拡散性フィルムの歪の発生に繋がり、バックライトユニットにおける光出射面の輝度を均一にするという、光拡散性フィルムの本来目的が達成できなくなるので好ましくない。
本発明の光拡散フィルムの光拡散層表面の十点平均粗さ(SRz)は、2.7μm以上であることが好ましい。十点平均粗さ(SRz)が2.7μm以上であれば、十分な表面凹凸が形成され、表面構造に起因する光拡散に良好である。十点平均粗さ(SRz)は、4μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。十点平均粗さ(SRz)は大きい方が望ましいが、十点平均粗さ(SRz)を10%以上とすることは技術的難度が高く、また、突起の大きさと共に、フィルム内部にボイドが発現し、透明性の低下が見られるので、光拡散フィルムの実用上、十点平均粗さ(SRz)の上限は10%である。なお、本発明の十点平均粗さ(SRz)はJIS・B0601に準じて求めることができる。
(二軸延伸フィルムの製造)
本発明において、光拡散性フィルムに上記特性を付与する方法は限定されないが、以下の方法で実施するのが好ましい実施態様である。
以下、本発明の光拡散性フィルムの好適な製造方法について、光拡散層(A)の原料として共重合成分を含む結晶性ポリエステル(以下、単にポリエステルと略す)、支持層(B層)の原料としてポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETと略す)のペレットを用いた代表例について詳しく説明するが、当然これに限定されるものではない。
上記のペレットを移送するには通常、所定の配管を用いて空送で行うが、この際の空気は埃混入防止のため、HEPAフィルターを用い、清浄化された空気を用いることが好ましい。この際に用いるHEPAフィルターは公称濾過精度0.5μm以上の埃を95%以上カットの性能を有するフィルターを用いることが好ましい。
まず、フィルム原料として、ポリエステル及びポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂と、PETとを、それぞれ真空乾燥あるいは熱風乾燥によって、水分率が100ppm未満となるように乾燥する。次いで、各原料を計量、混合して押し出し機に供給し、シート状に溶融押出を行う。さらに、溶融状態のシートを、静電印加法を用いて、表面温度10〜50℃に制御された金属製の回転ロール(チルロール)に密着させ、さらに必要に応じて反対面から冷風を吹き付けて冷却固化し、未延伸PETシートを得る。
この際、押出機の溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度を280〜290℃、その後のポリマー管、ダイまでの樹脂温度を270〜295℃に制御することが、劣化物等の異物の発生を抑制するために好ましい。
また、溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れ好適である。高精度濾過を行う上で、溶融樹脂の温度が280℃より低い場合、濾圧が上昇するため、原料樹脂の吐出量を低くするなどの対応が必要となり、生産性が低下する。
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による光学欠点の少ないフィルムを得る上で重要な工程である。なお、本発明では、光拡散性発現物質としてポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を用いることで、上記のような高精度濾過が可能となる。
光拡散層(A)と支持層(B)とを共押出し積層するためには、2台以上の押出し機を用いて、各層の原料を押出し、多層フィードブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて両層を合流させ、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。あるいは多層フィードブロックを用いる代わりにマルチマニホールドダイを用いても良い。
また、本発明の光拡散性フィルムにおいては、少なくとも一方の表面に塗布層を有していることが好ましく、さらには両面に塗布層を有していても構わない。好ましい乾燥後塗布量は、0.005〜0.20g/mの範囲である。フィルム表面に塗布層を設けることによって、フィルム表面での反射光の発生を抑制して、全光線透過率をさらに高めることができる。また、光拡散層とは反対面にプリズム加工やハードコート加工を施す場合には、塗布層を設けることで易接着性を付与することができる。
この場合、上記の方法によって得られた未延伸フィルムに塗布層を設けた後、同時二軸延伸を行う。また、逐次延伸法で行う場合、縦または横方向に一軸延伸したフィルムに易接着層を設けた後、直交方向に延伸し、二軸延伸を行う。
塗布液を未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法から選択することが出来、例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられ、これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
塗布層を構成する樹脂は、光拡散性フィルム用途において、他の部材などとのより優れた接着性を確保する観点から、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂よりなる群から選択される1種以上を主成分とするものであることが好ましい。また、これらの樹脂は、フィルム表面での反射光の発生を抑制するという観点からも推奨される。なお、易接着層における上記「主成分」とは、該層を構成する樹脂100質量%中、上に列挙した樹脂の少なくとも1種が50質量%以上であることを意味する。
なお、フィルムの透明性を高くするために、支持層(B)中に粒子を含有させないか、透明性を阻害しない程度に少量しか含有させないと、フィルムの易滑性が不十分となりハンドリング性が悪化する場合がある。そのため、上記の塗布層には、易滑性付与を目的とした粒子を添加しても構わない。これらの粒子には、透明性を確保するために可視光線の波長以下の極めて平均粒径が小さい粒子を用いることが重要である。
上記の粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデンなどの無機粒子;架橋高分子粒子;シュウ酸カルシウムなどの有機粒子などが挙げられる。塗布層を、上記共重合ポリエステル樹脂を主体として形成する場合には、シリカが特に好ましい。シリカは、ポリエステルと屈折率が比較的近いため、より透明性に優れた光拡散性フィルムを確保し得る点で最も好適である。
塗布層に含有させる上記粒子は、平均粒径(SEM観察粒子径)が0.005〜1.0μmであることが、光拡散性フィルムの透明性、ハンドリング性、耐スクラッチ性確保の点から好ましい。粒子の平均粒径の上限は、透明性の点から、0.5μmであることがさらに好ましく、特に好ましくは0.2μmである。また、粒子の平均粒径の下限は、ハンドリング性と耐スクラッチ性の点から、0.03μmであることがさらに好ましい。
なお、上記の粒子の平均粒径の測定は下記方法により行う。
粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径を測定し、その平均値を平均粒径とする。また、塗布層に含有する粒子の平均粒径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で塗布フィルムの断面を撮影し、塗布層の断面に存在する粒子の最大径を求める。凝集体からなる粒子の平均粒径は、塗布フィルムの塗布層の断面を、光学顕微鏡を用いて倍率200倍で300〜500個撮影し、その最大径を測定する。
塗布層の粒子の含有量は、塗布層の構成成分全量に対して、0.1〜60質量%であることが、光学用積層フィルムの透明性、密着性、ハンドリング性、耐スクラッチ性確保の点から好ましい。粒子の含有量の上限は、透明性と密着性の点から50質量%であることがさらに好ましく、特に好ましくは40質量%である。また、粒子の含有量の下限は、ハンドリング性と耐スクラッチ性の点から1質量%がさらに好ましい。
上記粒子は2種類以上を併用してもよく、同種の粒子で粒径の異なるものを配合してもよいが、いずれにしても、粒子全体の平均粒径、および合計の含有量が上記範囲を満足することが好ましい。
次に、上記の方法で得られた未延伸フィルムを同時二軸延伸または逐次二軸延伸し、次いで熱処理を行う。
上記の二軸延伸は、縦、横、両方向に2.8倍以上の延伸倍率で行うことが望ましい。なお、本発明で定義する延伸倍率とは、フィルムが実際に延伸された実延伸倍率のことである。この延伸倍率は各延伸工程前後での単位面積あたりの質量変化率や、格子状の倍率マーカーを未延伸フィルムに記入することによって把握することができる。縦方向または横方向のいずれかの延伸倍率が2.8倍未満の場合は、二軸延伸フィルム本来の優れた耐熱性と機械的強度が得られない。また、フィルムの厚み均一性が著しく悪化する。本発明における好ましい延伸倍率の下限は2.9倍、より好ましい下限は3.0倍、最も好ましい下限は3.1倍である。また、延伸倍率の好ましい上限は6.0倍である。
また、本発明における二軸延伸は、縦、横両方向の延伸をいずれも80%/秒未満の延伸速度で行うことが望ましい。一般的に行われる逐次二軸延伸法において、縦方向の延伸はロール方式の延伸機が用いられる。しかしながら、ロール方式の延伸は極めて延伸速度が早く、本発明の効果を得ることが困難である。
上記のような縦方向及び横方向の延伸速度に制御することが可能な二軸延伸機としては、クリップによってフィルム両端を把持した状態でテンターに導き、クリップ間の幅およびクリップの搬送速度を制御することにより、縦・横両方向に連続延伸可能な機構を備えたテンター方式の同時二軸延伸機が好適である。当該機能を有する設備であれば、そのクリップ搬送機構は任意であり、特に制約されるものではないが、パンタグラフ方式やリニアモーター方式、或いはスクリュー方式等、従来公知の装置を採用することができる。
なお、フィルムの二軸延伸に際し、その延伸温度や熱処理温度、時間等の細部条件は、マトリックスポリマーの特性やフィルムに要求される特性、例えば屈折率等の光学特性、力学的特性、寸法変化率等の熱的特性、所望の結晶化度、等に応じて適宜選択することが可能であり、特に制約されるものではない。
但し、ポリエステルをマトリックスポリマーとして用い、かつフィルムの二軸延伸に同時二軸延伸機を用いる場合、その好ましい延伸温度は90℃〜115℃である。また、フィルムの熱処理温度は200℃以上250℃以下の範囲が好ましく、熱処理時間は10秒以上100秒以下の範囲が好ましい。また、熱処理と同時または熱処理後に、縦方向および/または横方向の緩和処理を施してもかまわない。
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
[評価方法]
(1)ポリエステル樹脂の固有粘度
JIS K 7367−5に準拠し、溶媒としてフェノール(60質量%)と1,1,2,2−テトラクロロエタン(40質量%)の混合溶媒を用い、30℃で測定した。
(2)結晶融解熱量および融点
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220型示差走査型熱量計を用いて求める。窒素雰囲気下、サンプルを300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷し、その10mgを20℃/分の速度で昇温させ、示差熱分析を行った。結晶融解熱量は、JIS−K7121−1987、9・1項に定義される融解ピーク温度(Tpm)、補外融解開始温度(Tim)および補外融解終了温度(Tem)とを囲むDSC曲線を積分して求めた。
(3)溶融粘度
樹脂温度285℃、剪断速度100/秒における溶融粘度を、フローテスター(島津製作所製、CFT−500)を用いて測定した。なお、剪断速度100/秒での溶融粘度の測定は、剪断速度を100/秒に固定して行うことが困難であるため、適当な荷重を用いて、100/秒未満の任意の剪断速度および当該速度よりも大きい任意の剪断速度で溶融粘度を測定し、縦軸に溶融粘度、横軸に剪断速度をとり、両対数グラフにプロットした。上記の2点を直線で結び、内挿により剪断速度100/秒での溶融粘度(単位:Pa・s)を求めた。
(4)フィルムの厚み斑
縦方向に連続したテープ状サンプル(横方向5cm×縦方向1m)を採取し、(株)セイコー・イーエム製電子マイクロメータ、ミリトロン1240を用いて、1cmピッチで100点の厚みを測定する。測定値から、厚みの最大値(dmax)、最小値(dmin)、平均値(d)を求め、下記式にて厚み斑(%)を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。なお、縦方向とは延伸の流れ方向(機械方向、もしくは長手方向)といい、横方向とはそれに垂直な方向(幅方向)をいう。
厚み斑(%)=((dmax−dmin)/d)×100
(5)ヘーズ、全光線透過率
ヘーズ(曇価)、全光線透過率は、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。フィルム試料片は、支持層(B)面を入射光側に配置し、光拡散層(A)面を出射光側に配置して測定した。
(6)引張強さ
JIS C 2318−1997 5.3.3(引張強さ及び伸び率)に準拠して測定した。
(7)寸法変化率
JIS C 2318−1997 5.3.4(寸法変化)に準拠して測定した。
(8)面配向度(ΔP)
JIS K 7142−1996 5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(nx)、幅方向の屈折率(ny)、厚み方向の屈折率(nz)を測定し、下記式によって面配向度(ΔP)を算出した。
ΔP={(nx+ny)−2nz}÷2
(9)カール値
フィルムを縦方向に100mm、横方向に100mmに枚葉状に切り出し、無荷重の状態で、100℃で30分間加熱処理した後、フィルムの凸部を下にして水平なガラス板上に静置し、ガラス板と立ち上がったフィルム4隅の下端との垂直距離を、定規を用いて測定し、この4箇所の測定値の最大値を求めた。カール値とした。サンプルは3点準備し、繰り返し測定を行い、得られた3つの最大値の平均値を求めて、カール値とした。なお、前記垂直距離の測定では、垂直距離が1mm以下の場合は0.5mmの精度で、垂直距離が1mmを超える場合には1mmの精度で測定した。
(10)十点平均粗さ(SRz)
フィルムの表面を触針式三次元表面粗さ計(株式会社小坂研究所社製、SE−3AK)を用いて、針の半径2μm、荷重30mg、針のスピード0.1mm/秒の条件下で、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mm、Z測定倍率5000倍で、測定長1mmにわたって測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(株式会社小坂研究所社製、TDA−21)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、即ちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に、前記解析装置を用いて、十点平均粗さSRzを求めた。SRzの単位は、いずれもμmである。なお、測定は光拡散面について3回行い、それらの平均値を採用した。
[実施例1]
(1)PET樹脂(M1)の製造
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部及びトリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kgf/cm、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、濾過粒子サイズ5μm(初期濾過効率:95%)のナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたPET樹脂(M1)は、融点が257℃、固有粘度が0.616dl/g、Sb含有量が144ppm、Mg含有量が58ppm、P量が40ppm、カラーL値が56.2、カラーb値が1.6であり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。
(2)共重合ポリエステル樹脂(M2)の製造
芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及びネオペンチルグリコール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.74dl/gの共重合ポリエステル樹脂(M2)を(M1)の作製方法に準じて作製した。
(3)塗布液(M3)の調製
ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量19,500、ガラス点移転60℃の共重合ポリエステル系樹脂(A)を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を7.5質量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液(第一工業製薬製、エラストロンH−3)を11.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を39.8質量部およびイソプロピルアルコールを37.4質量部、それぞれ混合した。
さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(M3)を調整した。
(3)光拡散性フィルムの製造
光拡散層(A)の原料として、PET(M1)67質量部と、PET(M2)30質量部と、ガラス転移温度が160℃の環状オレフィンコポリマー(Topas Advanced Polymers社製、TOPAS6015)3質量部とをペレット混合し、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2に供給した。また、B層の原料としてPET(M1)を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機1に供給した。押出機2、及び押出機1に供給された各原料を、押出機の溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃、その後のポリマー管では275℃とし、2層合流ブロックを用いて積層し、口金よりシート状に溶融押し出した。なお、A層とB層との厚み比率は、10対90となるように、各層のギアポンプを用いて制御した。また、前記のフィルターには、いずれもステンレス焼結体の濾過粒子サイズ10μmの濾材(初期濾過効率:95%)を用いた。また、口金の温度は、押し出された樹脂温度が275℃になるように制御した。
そして、押し出した樹脂を、表面温度30℃の冷却ドラム上にキャスティングして静電印加法を用いて冷却ドラム表面に密着させて冷却固化し、厚さ約1.2mmの未延伸フィルムを作成した。このとき、B層面を冷却ドラムに接する面とした。
次いで、得られた未延伸フィルムの片面(B層面)に塗布液(M3)塗布方法にはリバースロール法を採用し、塗布液(M3)を濾過粒子サイズ5μm(初期濾過効率:95%)のフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過を行ったものを、乾燥後塗布量が0.1g/mとなるように塗布した。その後、2ゾーンに分かれた乾燥炉にて、第1ゾーンは温度100℃、風速20m/秒、10秒間で、第2ゾーンは温度70℃、風速20m/秒、10秒間にて塗布面を乾燥した。
次いで、塗布層を有する未延伸フィルムを、95℃の熱風で40秒間予熱した後、50%/秒の一定延伸速度で、縦、及び横方向に、3.5倍ずつ同時二軸延伸した。次いで220℃の熱風で10秒間の熱処理を施し、室温まで冷却して光拡散フィルムを作製した。
(4)光拡散性フィルムの特性
本実施例1で得られた光拡散性フィルムの特性を表1に示す。表1から分かる通り、本発明の方法で得られる光拡散性フィルムは、延伸フィルム本来の優れた耐熱性を有しており、かつ優れた光線透過率と光拡散性とを有していることが分かる。
[実施例2]
実施例1において、未延伸フィルムの両面に塗布層を設けた。塗布液には、実施例1と同じものを用いた。また、B層面側の塗布、乾燥方法は実施例1記載の方法によって行った。但し、A層面側の塗布方法にはワイヤーバー法を採用し、乾燥後塗布量が0.1g/mとなるように塗布し、塗布後、直ちに同時二軸延伸機に導いた。その他の製造条件は、実施例1と全く同じ方法により、光拡散フィルムを作製した。本実施例2で得られた光拡散性フィルムの特性を表1に示す。本実施例2で得られたフィルムは、実施例1よりもさらに全光線透過率が向上しており、光拡散性フィルムとして優れた特徴を有していることが分かる。
[実施例3]
実施例1の方法において、光拡散層(A層)の原料として、PET(M1)64質量部と、PET(M2)30質量部と、ガラス転移温度が160℃の環状オレフィンコポリマー(Topas Advanced Polymers社製、TOPAS6015)6質量部とをペレット混合して用い、熱処理温度を240℃、熱処理時間を20秒間にする以外は、実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを作製した。本実施例3で得られた光拡散性フィルムの特性を表1に示す。
[実施例4]
実施例1の方法において、光拡散層(A層)の原料として、PET(M1)67質量部と、PET(M2)30質量部と、ガラス転移温度が145℃の環状オレフィンコポリマー(三井化学株式会社製、APL6015T)3質量部とをペレット混合し用いる以外は、実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを作製した。本実施例4で得られた光拡散性フィルムの特性を表1に示す。
[実施例5]
実施例1の方法において、光拡散層(A層)の原料として、PET(M1)63質量部と、PET(M2)27質量部、ガラス転移点が99℃、溶融粘度が147Pa・sのポリスチレン(日本ポリスチ社製G797N)10質量部とをペレット混合したものを用いる以外は、実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを作製した。本実施例5で得られた光拡散性フィルムの特性を表1に示す。
[実施例6]
(5)共重合ポリエステル樹脂(M4)
芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及びシクロヘキサンジメタノール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.60dl/g、溶融粘度197Pa・sの結晶性共重合ポリエステル樹脂(M5)を作製した。
実施例1において、共重合成分、その含有率(グリコール成分全量に対する共重合成分のモル比率)、およびポリスチレンの含有量が表1に示した組成となるように、樹脂M1、M4、およびガラス転移点が99℃、溶融粘度が147Pa・sのポリスチレン(日本ポリスチ社製G797N)を用いてA層、B層の原料配合を調整した。上記以外は実施例1と同様の方法により、光拡散性フィルムを作製した。本実施例6で得られたフィルムの特性を表1に示す。
[比較例1]
実施例1の方法において、光拡散層(A層)の原料として、PET(M1)90質量部と、ガラス転移点が99℃、溶融粘度が147Pa・sのポリスチレン(日本ポリスチ社製G797N)10質量部とをペレット混合したものを用いること意外は、実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを作製した。本比較例1で得られた光拡散性フィルムの特性を表2に示す。
[比較例2]
実施例1の方法において、光拡散層(A層)の原料として、PET(M1)94質量部と、ガラス転移温度が160℃の環状オレフィンコポリマー(Topas Advanced Polymers社製、TOPAS6015)6質量部とをペレット混合したものを用いること以外は、実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを作製した。本比較例2で得られた光拡散性フィルムの特性を表2に示す。
[比較例3]
実施例1の方法において、光拡散層(A層)の原料として、PET(M1)90質量部と、ガラス転移温度が160℃の環状オレフィンコポリマー(Topas Advanced Polymers社製、TOPAS6015)10質量部とをペレット混合したものを用いること以外は、実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを作製した。本比較例2で得られた光拡散性フィルムの特性を表2に示す。
[比較例4]
実施例3の方法において得られた未延伸フィルムを、以下の方法に従い二軸延伸した。まず、75℃に加熱したロール群でフィルムを余熱した後、非接触の赤外線ヒータを用いてフィルムを96℃まで加熱して、周速が異なるロール間で3.4倍に縦延伸を施した。このとき、低速ロール/フィルム接点と高速ロール/フィルム接点の距離は200mmであり、低速ロール周速は12m/分とした。ロール間のフィルム速度を、低速ロール周速と高速ロール周速の中間値で代表させるとロール間のフィルム速度は26.4m/分となり、ロール間の通過時間は約0.45秒となる。したがって、0.45秒間に3.4倍、即ち240%の延伸を施したことになり、その延伸速度は約530%/秒となる。
次いで、上記の縦延伸フィルムの両端をクリップで把持し、横延伸を行った。横延伸温度は135℃、横延伸倍率は3.7倍、横延伸速度は25%/秒で一定とした。次いで、230℃で15秒間の熱処理を行い、60℃まで冷却する過程で幅方向に2.5%の緩和処理を施した。次いで、フィルムの両端を把持していたクリップを開放し、フィルムの両端をトリミングしてロール状に巻き取り、光拡散フィルムを作製した。本比較例4で得られた光拡散性フィルムの特性を表2に示す。
[参考例1]
(6)ポリスチレンマスターバッチ(M5)
ガラス転移点が99℃、溶融粘度が147Pa・sのポリスチレン(日本ポリスチ社製G797N)30質量部と、上記のPET(M1)70質量部とをペレット混合したものを、ベント式二軸押出機に供給、混練して溶融押出し、得られたストランドを冷却、切断して、ポリスチレンマスターバッチ(M5)を調製した。
光拡散層(B)の原料として、PET(M1)67質量部と、ポリスチレンマスターバッチ(M2)33質量部とで混合し、(A)層と(B)層との厚み比率を80対20とした以外は、実施例1に従って未延伸シートを作製し、さらに、延伸工程を115℃で、縦方向に3.2倍、横方向に3.7倍の延伸倍率で同時二軸延伸し、熱処理工程を、230℃で17.5秒間の熱処理で施し、さらに、15秒間をかけて60℃まで冷却する過程で、縦および横方向に3%の緩和処理を行った以外は、実施例1に従って光拡散性フィルムを作製した。本参考例1で得られた光拡散性フィルムの特性を表2に示す。十点平均高さ(SRz)については、厚み斑が大きかったため測定できなかった。
Figure 2009086423
Figure 2009086423
本発明の光拡散性フィルムは、液晶ディスプレイ用、特に直下型バックライトユニットを採用する大型の液晶ディスプレイ用の光拡散性フィルムとして使用することができる。また、その片面にプリズム加工を施すことにより、光拡散性フィルムと集光シートを一体化し、バックライトユニット部品点数の削減、製造工程の簡略化、低コスト化を促進することが出来る。

Claims (5)

  1. 結晶性ポリエステルからなる支持層と、該支持層の少なくとも片面に共押出し法で積層された光拡散層を有する二軸延伸積層フィルムからなる光拡散性フィルムであって、光拡散層は、融点が235〜255℃である結晶性ポリエステルを50〜99質量部と該ポリエステルに非相溶な光拡散性添加剤を1〜50質量部含み、光拡散性フィルムは、面配向度(ΔP)が0.080〜0.160であり、全光線透過率が85%以上、ヘーズが30%以上であり、光拡散層表面の十点平均粗さ(SRz)が2.7〜10.0μmであることを特徴とする光拡散性フィルム。
  2. 前記光拡散性添加剤が、該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散性フィルム。
  3. 前記光拡散性添加剤が環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン系共重合樹脂のいずれかから選択された熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の光拡散性フィルム。
  4. 前記光拡散層の表面に、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、またはアクリル樹脂を少なくとも1種以上を主成分とする塗布層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散性フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散性フィルムであって、前記光拡散層とは反対側の面に、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、またはアクリル樹脂を少なくとも1種以上を主成分とする塗布層を有することを特徴とする、集光シート基材用の光拡散性フィルム。
JP2007257389A 2007-10-01 2007-10-01 光拡散性フィルム Active JP5076791B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007257389A JP5076791B2 (ja) 2007-10-01 2007-10-01 光拡散性フィルム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007257389A JP5076791B2 (ja) 2007-10-01 2007-10-01 光拡散性フィルム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009086423A true JP2009086423A (ja) 2009-04-23
JP5076791B2 JP5076791B2 (ja) 2012-11-21

Family

ID=40659898

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007257389A Active JP5076791B2 (ja) 2007-10-01 2007-10-01 光拡散性フィルム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5076791B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010224447A (ja) * 2009-03-25 2010-10-07 Teijin Dupont Films Japan Ltd 光学用積層フィルム
JP2011025473A (ja) * 2009-07-23 2011-02-10 Teijin Dupont Films Japan Ltd 光反射板用白色フィルム
JP5161973B2 (ja) * 2008-10-30 2013-03-13 帝人デュポンフィルム株式会社 光学用積層フィルム
JP2017052932A (ja) * 2015-09-08 2017-03-16 王子ホールディングス株式会社 半透明性延伸フィルム

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07186335A (ja) * 1993-12-27 1995-07-25 Toray Ind Inc 二軸配向熱可塑性樹脂フイルム
JPH0855507A (ja) * 1994-08-12 1996-02-27 Dainippon Printing Co Ltd 面光源、それを用いた表示装置、及びそれらに用いる光拡散シート
JPH09211207A (ja) * 1996-02-01 1997-08-15 Nitto Denko Corp 光コントロールフィルム
JP2002182013A (ja) * 2000-12-12 2002-06-26 Toray Ind Inc 積層光拡散性フィルム
JP2004230894A (ja) * 2003-01-28 2004-08-19 Mitsubishi Polyester Film Gmbh ポリエステルフィルム及びその製造方法
JP2005181648A (ja) * 2003-12-19 2005-07-07 Mitsubishi Polyester Film Copp プリズムシート用光散乱性ポリエテルフィルム
JP2007293316A (ja) * 2006-03-31 2007-11-08 Toyobo Co Ltd 光拡散性フィルム

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07186335A (ja) * 1993-12-27 1995-07-25 Toray Ind Inc 二軸配向熱可塑性樹脂フイルム
JPH0855507A (ja) * 1994-08-12 1996-02-27 Dainippon Printing Co Ltd 面光源、それを用いた表示装置、及びそれらに用いる光拡散シート
JPH09211207A (ja) * 1996-02-01 1997-08-15 Nitto Denko Corp 光コントロールフィルム
JP2002182013A (ja) * 2000-12-12 2002-06-26 Toray Ind Inc 積層光拡散性フィルム
JP2004230894A (ja) * 2003-01-28 2004-08-19 Mitsubishi Polyester Film Gmbh ポリエステルフィルム及びその製造方法
JP2005181648A (ja) * 2003-12-19 2005-07-07 Mitsubishi Polyester Film Copp プリズムシート用光散乱性ポリエテルフィルム
JP2007293316A (ja) * 2006-03-31 2007-11-08 Toyobo Co Ltd 光拡散性フィルム

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5161973B2 (ja) * 2008-10-30 2013-03-13 帝人デュポンフィルム株式会社 光学用積層フィルム
JP2010224447A (ja) * 2009-03-25 2010-10-07 Teijin Dupont Films Japan Ltd 光学用積層フィルム
JP2011025473A (ja) * 2009-07-23 2011-02-10 Teijin Dupont Films Japan Ltd 光反射板用白色フィルム
JP2017052932A (ja) * 2015-09-08 2017-03-16 王子ホールディングス株式会社 半透明性延伸フィルム

Also Published As

Publication number Publication date
JP5076791B2 (ja) 2012-11-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4196306B2 (ja) 光拡散性フィルム
JP4257619B2 (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
KR101084903B1 (ko) 광확산성 필름
JP4702280B2 (ja) 光拡散性フィルム
JP4780242B2 (ja) 光拡散性ポリエステルフィルム
JP4715510B2 (ja) 光拡散性フィルム
JP2009145450A (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP4352348B2 (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP5076791B2 (ja) 光拡散性フィルム
JP4370539B1 (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP4715511B2 (ja) 光拡散性フィルム
JP5163085B2 (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP5157724B2 (ja) 光拡散性フィルム
JP2009145449A (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP5696356B2 (ja) 光拡散性ポリエステルフィルム
JP2009143040A (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP2011133872A (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
TWI451973B (zh) 光擴散性聚酯薄膜
JP4370538B1 (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP5114661B2 (ja) 光拡散性フィルムおよびその製造方法
JP4370537B2 (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP2009139889A (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP2009139890A (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム
JP2010032863A (ja) 光拡散性フィルム
JP2009143039A (ja) 表面光拡散性ポリエステルフィルム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100823

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20111212

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120221

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120420

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120731

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120813

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150907

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5076791

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150907

Year of fee payment: 3

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350