JP2009143039A - 表面光拡散性ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐熱性、機械的強度および厚み精度等を有し、かつ全光線透過率と光拡散性を両立し、さらにバイメタル構造に由来する加熱カールの発生が抑制され、また、液晶ディスプレイに使用したときのモアレやシンチレーションの発生が抑制され、かつ、後加工性にも優れた表面光拡散性ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】Δnabが0.015以上0.060以下であって、(1)結晶性ポリエステル50〜99質量部と該ポリエステルに非相溶性の添加剤1〜50質量部との配合組成物からなる光拡散層とを有し、(2)面配向係数ΔPが0.08〜0.16であり、(3)表面ヘーズが15%以上、(4)内部ヘーズが表面ヘーズ未満、(5)引張強さが100MPa以上、(6)S(3)が30%以上50%未満であって、4方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、いずれも0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であり、幅方向の熱収縮率(HS150)の差が0.1%以下であることを特徴とする表面光拡散性ポリエステルフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、大画面かつ高輝度の液晶ディスプレイのバックライトユニット、照明装置等に用いられる光拡散性フィルムに関する。さらに詳しくは、光拡散性と光線透過率を両立し、かつ温度変化に伴うカールの発生が小さく、かつ優れた加工性を有するフィルムで、具体的には種々の熱加工工程を用いて処理するフィルムにおいて、熱加工工程を通過した時に長手方向の熱収縮差が幅方向で少なくフィルムの蛇行が起きず、フィルムの切断加工時に切り口にヒゲなどの発生が異物となったり、平面性の崩れがその基材フィルムとして品質上問題が生じることがない、光学用のフィルムに使用する場合に好適な表面光拡散性ポリエステルフィルムに関する。
近年、液晶ディスプレイの技術進歩は目覚しく、パソコンやテレビ、携帯電話等の表示装置として広く用いられている。特に近年では、液晶ディスプレイの各種用途で高精細化が進んでおり、特にテレビ用途では、ハイビジョン放送の普及に伴い、従来は大画面液晶テレビでの採用が中心であった横1920×縦1080ドットのいわゆるフルHD表示が可能な液晶パネルが比較的小型の画面サイズの液晶テレビにも採用されるようになってきており、高精細化の要求がますます高まっている。これらの液晶ディスプレイは、液晶表示ユニット単独では発光機能を有していないため、その裏面にバックライトユニットを設置して表示が可能になっている。
バックライトユニットには種々の方式があるが、2種に大別される。一般的に最も多い方式は、直下型といわれる方式で、光源が照光面の内側にある方式である。この方式では多数の冷陰極線管等の光源を照光面の直下に配置することができるため、極めて高い輝度が得られ、また光損失が小さいという特徴を有している。そのため、大型液晶TVなど大型で、かつ高い輝度が必要な液晶ディスプレイに多く用いられている。
もう一方の方式は、エッジライト型といわれる方式で、光源が照光面の外に配置され、照光面に配置された透明なアクリル樹脂板などからなる導光板の一辺あるいは二辺に蛍光ランプ(多くは冷陰極放電管)等の略線状発光体を密着させ、反射体からなるランプカバーを設けて導光板内に光を導入する方式である。この方式は、消費電力が小さく、小型・薄型化が可能であるという特徴を有している。そのため、ノートブック型パソコン等の小型ディスプレイ等、特に薄型化、軽量化が要求される用途に広く用いられている。
エッジライト型バックライトユニットの導光板に求められる機能は、端部より入射した光を前方に送る機能と、送られた光を液晶表示素子側に出射する機能である。前者の機能は、使用する材料および界面反射特性に応じて決まる。また、後者の機能は、全反射条件を回避する導光板表面の形状に応じて決まる。この導光板表面の形状の形成方法として、導光板表面に白色の拡散材を付与する方法と導光板表面にレンチキュラーあるいはプリズムのフレネル形状を付与する方法が知られている。しかしながら、これらの表面形状えお有する導光板から出射された光は、その形状に起因する不均一な分布を示す。したがって、高品位の画像を得るために導光板上に光拡散性フィルムを設置し、導光板から出射した光を拡散、散乱させ、照光面の輝度を均一にする工夫がなされている。
これらのバックライトユニットには、さらにその正面輝度を向上させるため、光拡散性フィルムを透過した光をできるだけ正面方向に集めるように、プリズムシート、あるいはレンズシートと呼ばれる集光機能を有するシートが用いられる場合がある。このシートの表面にはプリズム状やウェーブ状、ピラミッド状等の微小な凹凸が多数並んでおり、光拡散性フィルムを透過した出射光を屈折させて正面に集め、照光面の輝度を向上させる。この様なプリズムシートは、前記光拡散性フィルムの表面側に、1枚もしくは2枚重ねで配設され使用される。
さらに、上記プリズムシートの配設によって生じた輝度ムラやプリズムシートの欠陥を目立たなくする(隠蔽性を向上させる)ため、プリズムシートの表面側にも、光拡散性フィルムを配設する場合がある。
上記のようなバックライトユニットに用いられる光拡散性フィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に微粒子を含有した透明樹脂からなる光拡散層をコーティングして得られたもの(例えば、特許文献1、2を参照)が主流となっている。
特開平6−59108号公報 特許第3698978号明細書
しかしながら、この方法では、基材フィルムの片面にコーティングにより光拡散層を設ける必要があるため、光拡散層と基材フィルムとの線膨張係数の違いにより、光拡散性フィルムがバイメタル状の構造となり、加熱によるカールを生じやすいという問題がある。この問題は特に近年の大型液晶TVなど、大型でかつ極めて高い輝度が必要な、直下型バックライトユニットを採用する液晶ディスプレイにおいて、重要な問題となりつつある。光拡散性フィルムが大面積化すればする程、カールが顕著になるからであり、さらにディスプレイが高輝度化すればする程、光源の消費電力、即ちバックライトユニットの発熱量が大きくなるからである。
この問題を解決するためにはバイメタルの解消を図る必要がある。一般には、基材フィルムの光拡散層の表面に、数μmから数十μmの厚みでハードコート層(非光拡散性層)が形成されており、光拡散層を挟んだ両面で線膨張応力をバランスさせるという策がとられている。
しかしながら、前記ハードコート層の厚みは本来不要なものであって、光拡散性フィルムに不要な厚みの増大と製造コストの増大を招く原因となっている。さらに、表裏の線膨張応力をバランスさせる対策にも限界があり、先に述べた大画面、高輝度ディスプレイにおいては、不十分な効果しか得られない。
また、近年では、バックライトユニット部品点数の削減や製造工程の簡略化、低コスト化を目的として、光拡散性フィルムと他の光学機能性フィルムとを一体化する検討も多くなされている。
例えば、第1面及び第2面の2つの主表面を有する板状の透光性基材の第1面側にプリズム列が形成されており、上記基材の第2面側に多数の透光性ビーズを含む光拡散層が形成されていることを特徴とする、プリズムシート(特許文献3参照)が開示されている。
また、光拡散剤を混練した熱可塑性樹脂層から成る光拡散層と、光拡散剤を混練し無い熱可塑性樹脂層の表面にプリズム形状が形成されたプリズム形状形成層の少なくとも2層を積層して成る液晶表示装置用レンズシート(特許文献4参照)が開示されている。
さらに、フィルム内部に添加された光散乱剤と、その周りに発生したボイドにより光拡散性を付与した、プリズムシート用光散乱性二軸延伸ポリエステルフィルム(特許文献5参照)が開示されている。
特開平9−281310号公報 特許第3732253号明細書 特開2005−181648号公報
しかしながら、特許文献3に開示された方法では、レンズ作用を有する透光性ビーズが光の入射面側に設置されるため、いわゆる逆拡散状態となり、正面輝度が大きく低下するという問題がある。そのため、この方法では十分な輝度と光拡散性を付与することはできない。
一方、特許文献4や特許文献5に開示された方法では、基材内部の光散乱物質により光拡散性が付与されているので、一部の入射光が後方散乱を生じ、光線透過率が低下するという問題がある。
また、近年では、優れた耐熱性、機械的強度、厚み均一性を併せ持つ二軸延伸ポリエステルフィルム自体に光拡散性を持たせようとするアプローチも多くなされている。本質的に単一の材料からなるポリエステルフィルムに光拡散性を持たせることは、前記加熱カールの問題解決や、拡散シートとプリズムシート機能の一体化にも道を開くものであり、その工業的価値は非常に大きい。
しかしながら、これまでに提案されてきた二軸延伸ポリエステルフィルム自体に光拡散性を持たせる試みは何れも、二軸延伸ポリエステルフィルムが本来有している特長(耐熱性、機械的強度など)の何れかを損なうものであるか、光線透過率や光拡散性といった光拡散性フィルムが具備すべき特性を損なうものであり、実用化には至っていない。
例えば、前記特許文献5に開示されたフィルムは、優れた耐熱性、機械的強度、優れた厚み均一性といった、二軸延伸ポリエステルフィルムが本来有している特長を有しているものと推定されるが、光拡散性が層の内部に存在する気泡により付与されているので、光線透過率が低いという問題がある。フィルムの二軸延伸工程において発生した気泡(ボイド)は、フィルム表面に対して平行な平板状の形態を有する。そのため、光拡散性フィルムとしてバックライトユニットに用いた場合には、照光面から出射した光の多くが後方散乱し、光線透過率が損なわれる。実際に、実施例で示されている全光線透過率は、最も高いものでも85.3%に過ぎない。
また、微粒子を含む光拡散層の構成ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)にイソフタル酸成分を25mol%共重合させた非晶性ポリエステルを用いた内部光拡散性フィルムと、その少なくとも片面に積層されたPETフィルムからなる積層光拡散性フィルム(特許文献6参照)が開示されている。
特開2001−272508号公報
上記方法においては、ボイドの消滅に配慮がなされているので、光線透過率が改善されている。しかしながら、この方法においても光拡散性がフィルム内部の光散乱によって付与されている点は同じであり、やはり入射光の後方散乱に伴う光線透過率の低下は避けられない。
また、特許文献6のフィルムでは、基材層の構成樹脂(PETホモポリマー)と光拡散層の構成樹脂(非晶性ポリエステル)との結晶性が著しく異なる。その結果、得られた二軸延伸フィルム自体がバイメタル状の構造となり、加熱により二軸延伸フィルム自身がカールが生じ易い。そのため、後加工工程での熱処理や、液晶ディスプレイの使用環境(温度)によってカールが生じる場合がある。
また、融点が210℃以下、または非晶性のポリエステルを構成樹脂として、該構成樹脂に非相溶の粒子や熱可塑性樹脂よりなる光拡散性添加剤を配合した光拡散性層を中間層として、その両面に結晶性ポリエステル樹脂層を積層したフィルムが開示されている(特許文献7〜13参照)。
特開2001−324606号公報 特開2002−162508号公報 特開2002−182013号公報 特開2002−196113号公報 特開2002−372606号公報 特開2004−219438号公報 特開2004−354558号公報
これらの方法では、フィルムの構造が表裏対象になっているので非対称構造によるカールの発生に関しては、ある程度改善されている。しかしながら光拡散性中間層と表面層との間に大きな結晶性の違いがあることに変わりはなく、若干の層厚み変動や表裏の物性変動等によって、温度変化時の平面性が著しく悪化する問題を内在している。
また、これらの方法では、フィルムの大部分が非晶性、あるいは著しく結晶性が乏しいポリエステルによって構成されているため、二軸延伸フィルム本来の優れた耐熱性、機械的強度および厚み均一性は得られない。
また、特定粒子径の球状または凸レンズ上の粒子を配合した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが開示されている(特許文献14参照)。
特開2002−37898号公報
特許文献14には、ポリエステルの原料としてポリエチレンテレフタレートを用いつつ、88%の全光線透過率と68%の拡散透過率を有するフィルムが実施例に開示されている。さらに、85%の全光線透過率と63%の拡散透過率を有するフィルムが開示されている。しかし、これらのフィルムの耐熱性、機械的強度、厚み精度等の基本的な特性は何ら開示されておらず、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム本来の特徴である耐熱性、機械的強度および高い厚み精度が得られる蓋然性も、全く認められない。
なぜなら、これらのフィルムは厚み200μmの未延伸フィルムを縦、横、両方向に3.0倍ずつ、すなわち面積倍率9.0倍で延伸することによって得られたフィルムであるにも関わらず、その厚みは50μmであり、延伸前後の厚み比率から計算される実際の面積延伸倍率は4.0倍に過ぎない。つまり、縦延伸時に生じる幅収縮や横延伸時に発生する延伸倍率分布、さらには熱処理時の寸法変化等の影響により、延伸設備の設定倍率と実際の延伸倍率とが著しく乖離してしまったものと考えられる。そして、実際の面積延伸倍率が4倍程度の延伸では、たとえ優れた光線透過率が得られたとしても、二軸延伸フィルム本来の特徴である耐熱性、機械的強度および高い厚み精度を達成することは、到底、不可能である。
上述のように、バイメタル状のフィルム基材は液晶ディスプレイ用バックライトユニットの大型化、高出力化に伴いカールが生じ易いという問題が顕在化しつつあり、上記問題を解決するにはオフラインコートによる方法によらずに実延伸フィルムそのものを用いることが望ましい(特許文献1、2)。しかし、二軸延伸フィルムそのものに光拡散性を持たせる方法では、光拡散性粒子によるボイドの発生が避けられず、全光線透過率が低下する問題があった(特許文献3、4、5)。ボイドの発生を回避する方法として、従来なされていた樹脂性状や延伸条件の変更ではカールの問題が解決せず(特許文献6)、あるいはフィルムの力学的強度が低下するという問題があった(特許文献7−14)。すなわち、二軸延伸フィルムの力学特性と光学特性とは二律背反の関係にあるため、いずれの特性も満足するフィルムは得られていなかった。そのため、総合品質において、透明基材フィルムに光拡散層を後加工により付与する従来の方法に及ばず、上記方法が実用化するには至っていなかった。
また、光拡散性ポリエステルフィルムの種々の利用形態を検討した結果、特に高精細化、高輝度化が進んだフルHDタイプの液晶ディスプレイにおいては、光拡散フィルムと組み合わされるレンズシートやプリズムシートの形状やピッチその他に様々な工夫が施されてきていることが明らかとなった。また、高精細な液晶パネルでは画素ピッチが極めて小さくなっている。
上述のような問題に鑑み、二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた耐熱性、機械的強度および厚み精度等を有し、かつ全光線透過率と光拡散性を両立し、さらにバイメタル構造に由来する加熱カールの発生が抑制されるとともに、幅広い利用形態において優れた表示特性を示す表面光拡散性ポリエステルフィルムを提供することを目的に本願発明者らが先に行ったのが先願発明(I)(特願2007−316713号)である。
先願発明(I)は、加熱によるカールの発生が抑制され、かつ二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた力学的特性を有し、さらに全光線透過率と光拡散性を両立した表面光拡散性ポリエステルフィルムを提供するものである。上記特性の両立を図るために、本願発明者らは、特にフィルムの面配向係数と、内部ヘーズと表面ヘーズの関係、さらには、光拡散層の表面凹凸構造の制御に着目し、鋭意検討を行った。その結果、本願発明者らは後述する〔1〕〜〔8〕に述べる手段を講じることで、かかる二律背反の特性を両立し、さらに、幅広い利用形態で活用できること、特に、様々なレンズシートやプリズムシート、液晶パネルとの組み合わせにおいて優れた表示特性を示すことを見出し、先願発明(I)に至った。
先願発明(I)の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、支持層および光拡散層がいずれも結晶性ポリエステルを主原料とする多層構造よりなるので、バイメタル構造に由来する加熱カールの発生が抑制されているとともに、二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた耐熱性、機械的強度および厚み精度を有していた。
また、先願発明(I)の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、共重合成分を含む結晶性ポリエステルを光拡散層の主原料とし、さらにフィルム全体の面配向係数が特定範囲内に制御されているので、光拡散層中に添加された非相溶性の添加剤の周囲に実質的にボイドが発生することなく、かつ、光拡散層表面に凹凸構造を有している。そのため、優れた表面光拡散性と高い光線透過率とを併せ持っていた。
さらに、先願発明(I)の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、光拡散層表面の凹凸構造が好適に制御されていることで、幅広い利用形態で活用でき、特に、様々なレンズシートやプリズムシート、液晶パネルとの組み合わせにおいて優れた表示特性を示していた。
一方で、先願発明(I)の表面光拡散性ポリエステルフィルムは二軸延伸ポリエステルフィルムであり、未延伸のフィルム原反が回転速度に差を設けたロール間で長手方向に延伸された後に、テンター内でフィルムの端部を把持された状態で幅方向に延伸され、熱固定されることによって製造される。この場合、フィルムの幅方向の端部際では熱固定時に長手方向の緩和ができないため、フィルム幅方向の位置によっては長手方向の熱収縮率に差異が生じる。したがって、ミルロールの端縁際に相当するスリットロールでは、幅方向の片端縁際の熱収縮率(長手方向の熱収縮率)が他端縁際の熱収縮率よりも大きくなる。このようなスリットロールを利用すると、後加工時の熱処理工程や、レンズ加工時のUV硬化性樹脂の発熱等でフィルムに蛇行や波打ち、しわが生じ、フィルムの通過性が悪化する。場合によっては、フィルムが機台の枠やその他で擦れて傷がつく。また、フィルムが傷付かないようにする為に、後加工条件を調整することは非常に手間がかかる作業である。上記の理由から、ミルロールの端縁際以外のスリットロールしか光学用途として、後加工条件を調整せずに、利用することができなかった。
また、後加工コストの低減のために幅広のスリットロールの需要が増加してきている。広幅のスリットロールを採取するためにはミルロールの幅を広くすることが望ましい。しかしながら、ミルロールの幅を広くすると、熱固定の際に幅方向での温度を均一に保つのが難しくなる。つまり、位置的にも時間的にも温度の変動幅が大きくなる。それゆえ、ミルロールの幅を広くするためには、熱風吹き出し量等を微調整して、熱固定装置の幅方向における温度の均一性を保つ必要がある。ところが、熱風吹き出し量等の微調整する場合であっても、後加工でのフィルムの通過性を改善するために十分なレベルにまでフィルム端縁部の熱収縮率差を低減させることはできない。
これまで、出願人は、フィルムの幅方向における熱収縮率の差を低減する方法として、以下の手段によりフィルムの幅方向の温度を中央部から端部にかけて高くすることで、端部際の緩和量を中央部分の緩和量に近づける方法を提案している(特許文献14)。すなわち、フィルムの熱固定工程において、(1)フィルムの進行方向に対して一定間隔で上下に配置させたプレナムダクト(熱風の吹き出し口)に連続的な遮蔽板を被せること、(2)その遮蔽板の幅がフィルム進行方向側にしたがって徐々に拡がっていること。
特開2001−138462号公報
さらに、出願人は、フィルムの幅方向における熱収縮率の差を低減する方法として、フィルムの熱固定工程において、5本のプレナムダクトに不連続な遮蔽板を取り付け、各プレナムダクトから単位時間当たりに吹き出す熱風の量を一定にし、プレナムダクトから吹き出す風速を増加させることで端部に当たる熱風量を増加させる方法を開示している(特許文献15)。
特開2002−79638公報
しかしながら、特にディスプレイ用フィルム分野においては生産性向上の点から後加工のラインスピードが向上することが予測され、それに対応して高温の後加工でも好適に使用しうるようなフィルムが必要であると考えられた。プレナムダクトに連続的な遮蔽板を被せるだけの特許文献1の方法では、後加工(塗工および乾燥)における熱処理が120℃程度での通過性はある程度改善されるものの、フィルム端部際のフィルムの緩和はいまだ不十分である。すなわち、上記方法では、160℃程度の熱処理を比較的長時間(10〜60秒)に亘って行った場合(ハードコート膜の形成など)の通過性はさほど改善されない。それゆえ、高温で長時間での後加工をする場合には、条件を調整せざるを得ないが、かかる調整ができない場合もある。
加えて、特許文献1の方法では、熱固定ゾーンにおける温度の乱調が生じるため、1,000m以上の長尺なフィルム(ミルロール)を製造する場合は、フィルムの幅方向における熱収縮率の差が大きい部分が生じる。
また、特許文献2の方法では、各プレナムダクトの風量は一定であるので、各プレナムダクト毎に風速が異なるため、熱固定装置内で乱流が生じる。従って、熱固定ゾーンにおける温度に大きな不均一性が生じており不都合である。また、遮蔽板による幅方向の熱収縮率の差を低減する効果は満足できるレベルではなかった。
また、本発明のフィルムを得るためには、縦延伸を施したフィルムに横延伸を行う必要がある。ところが幅方向に延伸する場合には、幅方向での力の伝達が横延伸機内の端部と中央部で異なる。即ち、端部は横延伸を実施するために把持部で掴まれていて、動きが制限されているが、中央部は長手方向に動くことが可能な状態である。この状態では丁度、1本のロープを左右に引っ張った状態と同じ様に懸垂線の曲線を描く。横延伸の場合は長手方向でその懸垂線の形状は延伸初期から延伸後期で刻々と変化をしていく。この変化は例えば横延伸の始まる前のフィルムシートに長手方向に垂直に(幅方向に平行に)フィルムシートの表面に速乾性のインクで線を入ことで可視化することが出来る。横延伸初期はその線は流れ方向の後側に凸に見え、延伸が進むとある所で一直線になり、その後に流れ方向に凹となって見える。
この横延伸の挙動により従来の延伸条件では幅方向の物性の差が生じ、フィルムを使用する時に機台中央部分から採取したフィルムは問題が生じ無いが機台の端部(フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率とそれに90度の角度をなす方向の屈折率との差異Δnabが0.015以上0.060以下)から採取したフィルムではフィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向の力学特性に違いが有る。このことにより、フィルムの切断性が幅方向で異なり、切断時に幅方向でフィルムに掛かる切断力が実質異なるために切り口にヒゲなどの発生を生じてしまう。特に厚みが70μm以上となるとヒゲの発生が枚葉で処理される加工フィルムの厚物(70μm以上)で改善する必要があった。
本発明の目的は、上記の表面光拡散性ポリエステルフィルムの問題点を解消し、後加工時の熱処理工程におけるフィルムの通過性がロール全長に亘って良好であり、さらには、フィルムの切断性を改善し、切断時のヒゲの発生が抑制された表面光拡散性ポリエステルフィルム、及びその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成することができる本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムおよびその製造方法は、以下の構成からなる。
すなわち、本発明の内、請求項1に記載された発明の構成は、フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率とフィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の屈折率との差異であるΔnabが0.015以上0.060以下である、二軸配向ポリエステルフィルムよりなり、下記要件(1)〜(9)を満たすことを特徴とする表面光拡散性ポリエステルフィルムである。
(1)結晶性ホモポリエステル、または共重合成分を含む結晶性ポリエステルからなる支持層と、該支持層の少なくとも片面に共押出法で積層された、融点が235〜255℃である共重合成分を含む結晶性ポリエステル50〜99質量部と該ポリエステルに非相溶性の添加剤1〜50質量部との配合組成物からなる光拡散層とを有すること。
(2)下記式で定義されるフィルムの面配向係数ΔPが0.08〜0.16であること。
ΔP=(nx+ny)/2 − nz
ここで、nx、ny、nzは夫々、長手方向の屈折率、幅方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表す。
(3)表面ヘーズが15%以上であること。
(4)内部ヘーズが表面ヘーズ未満であること。
(5)引張強さが縦方向及び横方向とも100MPa以上であること。
(6)下記式で定義され、フィルムの光拡散性を示すS(3)が30%以上50%未満であること。
S(3)=I(3)/I(0)×100
ここで、I(3)、I(0)は夫々、透過光強度のうち拡散角度が3度の値と0度の値を表す。
(7)フィルムの巻取方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの幅方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、いずれも0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であること。
(8)フィルムの幅方向の長さが70cm以上のフィルムについて、フィルム幅方向に均等に5分割し、各5分割したフィルムの幅方向における中央部より切り出した5つの試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求めたときに、それらのHS150の最大値と最小値の差が0.1%以下であること。
(9)前記5つの試料のHS150が、いずれも0.7%以上2.0%以下であること。
請求項2に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、全光線透過率が86%以上で、かつ、くし幅2mmにおける像鮮明度が40%以下であることを特徴とする。
請求項3に記載された発明の構成は、請求項1および請求項2に記載された発明において前記光拡散性ポリエステルフィルムの光拡散層側と支持層側の両方の面に、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、またはアクリル樹脂を少なくとも1種以上を主成分とする塗布層を有することを特徴とする。
請求項4に記載された発明の構成は、請求項1、2および請求項3に記載された表面光拡散性ポリエステルフィルムがプリズムシート用であって、光拡散層とは反対面に、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、またはアクリル樹脂を少なくとも1種以上を主成分とする塗布層を有することを特徴とする。
請求項5に記載された発明の構成は請求項1から4に記載の表面光拡散性ポリポリエステルフィルムの厚みが70μm以上400μm以下であることを特徴とする。
請求項6に記載された発明の構成は、請求項1から5に記載された表面光拡散性ポリエステルフィルムを製造するための製造方法であって、押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸シートを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸シートを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程とを含んでおり、その横延伸工程が、下記要件(10)〜(14)を満たし、その熱固定工程が、下記要件(15)〜(17)を満たす熱固定装置において行われることを特徴とする。
(10)横延伸工程において、連続する温度区分域の設定温度の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)では5℃以上20℃以下であること
(11)横延伸工程における延伸において1.8倍を通過する温度域が100℃以上160℃未満であること
(12)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)と次の後半部分の最初の温度区分領域の間では5℃以上40℃以下であること
(13)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)では5℃以上30℃以下であること
(14)横延伸工程における延伸において最終延伸倍率に到達する温度域が160℃以上220℃未満であること
(15)熱風を吹き出す幅広な複数のプレナムダクトが、フィルムの進行方向に対して上下に対向して配置されていること
(16)前記複数のプレナムダクトに熱風の吹き出し口を遮蔽するための遮蔽板が取り付けられていること
(17)前記各遮蔽板のフィルムの進行方向における寸法が、フィルムの進行方向における各プレナムダクトの吹き出し口の寸法と略同一に調整されており、前記各遮蔽板のフィルムの幅方向における寸法が、フィルムの進行方向に対して次第に長くなるように調整されていること
請求項7に記載された発明の構成は、請求項6に記載された表面光拡散性ポリエステルフィルムの製造方法であって、二軸延伸工程がフィルムを縦方向に延伸した後に横方向に延伸するものであるとともに、その横延伸を行うゾーンと熱固定装置との間に、風の吹き付けを実行しない中間ゾーンを設けたことを特徴とする。
請求項8に記載された発明の構成は、請求項6または請求項7に記載された表面光拡散性ポリエステルフィルムの製造方法であって、熱固定装置が、複数の熱固定ゾーンに分割されているとともに、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下となるように設定されていることを特徴とする。
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、加熱によるカールの発生が抑制され、かつ二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた力学的特性を有し、さらに全光線透過率と光拡散性を両立するという二律背反する課題の解決に加えて、さらに改良された表面凹凸構造を実現することにより、様々なレンズシートやプリズムシート、液晶パネルと組み合わせて使用された時にもモアレやシンチレーションといった表示品質の低下を防止できるという効果をも実現している。
さらに、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、80〜180℃での高温加工時において工程通過性が良く、しかも、フィルムの切断加工時に切り口にヒゲなどの発生を抑え、枚葉で使用される基材フィルムとしても良好である。
本発明は、加熱によるカールの発生が抑制され、かつ二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた力学的特性を有し、さらに全光線透過率と光拡散性を両立し、加えて、様々なレンズシートやプリズムシート、液晶パネルと組み合わせて使用された時にも、モアレや、いわゆるシンチレーションと呼ばれる色ちらつきといった表示品質の低下を防止できるとともに、後加工時の優れた加工性を有するという効果をも実現する表面光拡散性ポリエステルフィルムならびにその製造方法を提供するものである。上記特性の実現を図るために、本願発明者らは、特にフィルムの面配向係数と、内部ヘーズと表面ヘーズの関係、光拡散層の表面凹凸構造に加えて、フィルムの熱収縮率のムラにまでも着目し、鋭意検討を行った。その結果、本願発明者らは下記〔1〕〜〔10〕に述べる手段を講じることで、かかる特性を実現することを見出し、本発明に至った。そこで、まずこれら達成手段の特徴について説明する。なお、上記特性を実現するためには下記〔1〕〜〔10〕の手段の内の特定のいずれかのみが有効に寄与したというものではなく、〔1〕〜〔10〕の手段を組み合わせて用いることにより始めて上記特性の実現が可能になったものと考えられる。
〔1〕光拡散層の樹脂融点の制御
〔2〕融点差の制御
〔3〕光拡散層の積層構成の制御
〔4〕光拡散層の厚みの制御
〔5〕光拡散層構成樹脂の固有粘度の制御
〔6〕基材ポリマーと非相溶樹脂の溶融粘度差の制御
〔7〕延伸温度と熱処理温度条件の制御
〔8〕光拡散層の表面凹凸構造の制御
〔9〕横延伸時の延伸倍率パターンと延伸温度パターンの制御
〔10〕熱固定工程におけるフィルムの加熱状態の制御
〔1〕光拡散層(B)の樹脂融点の制御
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、結晶性ホモポリエステル、または共重合成分を含む結晶性ポリエステルからなる支持層(A)を有し、共重合成分を含む結晶性ポリエステルと該非相溶性の添加剤との配合組成物からなる光拡散層(B)とを有する。ここで、結晶性ポリエステル/結晶性ホモポリエステルとは融点を有するポリエステル/ホモポリエステルのことをいう。融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。示差走査型熱量計を用いて測定した場合に、融点として明確な結晶融解熱ピークが観測されるポリエステル/ホモポリエステルであれば、結晶性ポリエステル/結晶性ホモポリエステルにふくまれる。
フィルムの耐熱性、機械的強度、厚み精度の点からすれば、樹脂の融点は高いほど望ましい。しかしながら、樹脂の融点が高い場合は、延伸時に伴い発生する延伸応力が増加するため、樹脂中に非相溶粒子があるとボイド(空洞)が発生しやすくなり、全光線透過率が低下する。ボイドの発生のし易さは、後述のように延伸条件によっても影響を受けるが、作製されたフィルムの面配向係数と強い関連性がある。面配向係数は延伸後のフィルムに形成された高分子鎖の配向状態を示し、かかる配向状態が高いほど力学的強度は強くなるが、フィルム内に発生するボイドも多くなる。そのため、フィルムの面配向度を低下させ、ボイドの発生を抑えるには、光拡散層(B)を構成する樹脂の融点は一定範囲内で制御することが望ましい。光拡散層(B)を構成する共重合成分を含む結晶性ポリエステルの融点の下限は235℃が好ましく、さらに好ましくは240℃が好ましい。融点が235℃以上であれば、望ましい耐熱性、機械的強度および厚み精度が発揮できる程度の配向係数を得ることができる。また、光拡散層(B)を構成する共重合成分を含む結晶性ポリエステルの融点の上限は255℃が好ましい。融点が255℃以下であれば、光拡散層(B)内でのボイドの発生が抑制されるため好ましい。
〔2〕融点差の制御
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは結晶性ホモポリエステル、または共重合成分を含む結晶性ポリエステルからなる支持層(A)を有する。フィルムとして所定の耐熱性、機械的強度、厚み精度を得るためには、支持層(A)を構成する結晶性ポリエステル/結晶性ホモポリエステルの融点は高い方が好ましい。しかし、支持層(A)と光拡散層(B)との2層を構成する樹脂の融点が大きい場合は、バイメタル構造に起因するカールが生じ易くなる。そのため、支持層(A)を構成する結晶性ポリエステル/結晶性ホモポリエステルと光拡散層(B)を構成する結晶性ポリエステルとの融点差は、25℃以内であることが好ましく、20℃以内であることがより好ましく、10℃以内であることがさらに好ましく、5℃以内であることが特に好ましい。融点差が25℃以内であれば、バイメタル構造によるカールの発生が実用範囲以内に抑制することができる。なお、光拡散層(B)を構成する樹脂の融点が上記範囲が望ましいことから、支持層(A)を構成する結晶性ポリエステル/結晶性ホモポリエステルの融点の上限は、270℃が望ましい。
支持層(A)および光拡散層(B)を構成する結晶性ポリエステルの融点は、共重合成分を導入することにより制御することができる。特に、本発明では、光拡散層(B)の構成する結晶性ポリエステルに所定量の共重合成分を導入することが望ましい。共重合成分をポリエステル中に導入することにより、二軸延伸フィルムの面配向係数を制御することができ、光線透過率と光拡散性を高度に両立することが可能となる。しかしながら、共重合成分を過大に導入すると、ポリエステルの融点が低下し、二軸延伸ポリエステルフィルム本来の優れた特性が得られなくなるので、注意が必要である。共重合成分の導入量は、芳香族ジカルボン成分全体、あるいはグリコール成分全体に対し、3モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは5モル%以上、特に好ましくは8モル%以上である。共重合成分の含有量が3モル%より大きい場合には、ボイドの発生が抑制され、光線透過率と光拡散性を高度に両立しやすくなるので好ましい。一方、共重合成分の導入量の上限としては、上記成分に対して20モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは18モル%以下、特に好ましくは15モル%以下である。共重合成分の含有量が20モル%を以下である場合は、二軸延伸ポリエステルフィルムの力学的特性が実用範囲になる程度の融点が得られるので好ましい。なお、本発明で使用可能な共重合成分の組成については、後述する。
〔3〕光拡散層(B)の積層構成の制御
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、前記結晶性ホモポリエステルまたは、共重合成分を含む結晶性ポリエステルからなる支持層(A)の少なくとも片面に、前記共重合成分を含む結晶性ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の添加剤との配合組成物からなる光拡散層(B)が共押出し法で積層された多層構造よりなることが重要である。
光拡散層(B)での光の拡散は、フィルムの表面構造に起因する散乱と、フィルムの内部構造に起因する散乱に分かれる。前記散乱は表面ヘーズとして、後記散乱は内部ヘーズとして評価できる。ボイドなどの内部構造による光の散乱は後方散乱を伴う為、高い全光線透過率が得られない。一方、表面構造による光の散乱は、全光線透過率を大きく低下することなく、高い光拡散性を得ることができる。しかし、光拡散層(B)で有効な表面ヘーズを達成するためには、バイメタル状の構造に伴うカール発生を回避することは困難であった。本発明では、(1)から(7)に開示する手段をとることにより、加熱カールの発生を抑制しながら、かつ、表面ヘーズの高いフィルムを提供することが可能になった。すなわち、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、上記の多層構造を採用することで、非相溶性添加剤に起因する光拡散層(B)表面の凹凸構造により光拡散性を付与するとともに、フィルムの内部での光散乱(内部ヘーズ)を抑制して高い全光線透過率を達成することができる。これにより、高い光透過性と光拡散性の両立をはかることができる。
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムをプリズムシートとして用いる場合には、支持層(A)の片面に光拡散層(B)を積層したフィルムを基材とし、光拡散層(B)の反対面にプリズム構造を付与することで好適に用いることができる。本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムの層構成は、上記のように2層構成であっても構わないし、本発明の効果が得られるならば、必要により3層以上の多層構成としても良い。平坦な透明部材に表面が平坦な(凹凸構造を有さない)フィルムを重ねると、ニュートンリングが発生し、視認性が低下することがある。そのため、発明のフィルムを単独で光拡散性シートとして用いる場合には、導光板やプリズムシートと重ね合わせによるニュートンリングの発生を防止するため、支持層(A)の両面に光拡散層(B)を積層することが好ましい。なお、本発明で使用可能な非相溶の添加剤の組成については、後述する。
〔4〕光拡散層(B)の厚みの制御
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは支持層(A)と光拡散層(B)を有するが、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得るためには、光拡散層(B)の厚さが重要である。光拡散層(B)の表面ヘーズは表面凹凸が大きい程、高くなる傾向にある。そのため、光拡散層(B)の添加剤の粒径は大きい方が望ましい。表面ヘーズに有効な粒径を得るためには、光拡散層(B)の厚みの下限は3μm以上であることが好ましく、4μmがさらに好ましく、特に好ましくは5μmである。
一方、光拡散層(B)の厚みが、非相溶の添加剤の粒径を相当程度上回ると、効果的に表面凹凸構造を形成しにくくなり。そのため、光拡散層(B)の厚みを厚くすると、表面凹凸形成が減少し、表面ヘーズが低下する。また、光拡散層(B)の厚みに従い、光拡散層(B)の内部構造に起因する内部ヘーズが高くなり、全光線透過率が低下する。高い全光線透過率と光拡散性の両立を図る為には、光拡散層(B)の厚みを所定以下の範囲に制御することが望ましい。そのため、光拡散層(B)の厚みの上限は、50μmが好ましく、30μmがさらに好ましく、特に好ましくは20μmである。
また、光拡散層(B)のフィルム全体厚み(A+B)に対する比率が高くなると、バイメタル構造によるカールの発生が生じ易くなるだけでなる。さらに、支持層(A)に比べて相対的に融点の低い光拡散層(B)の比率が増すため、フィルム全体として厚み斑が生じやすくなり、表面平滑性が損なわれる。また、光拡散層(B)は共重合成分を多く含むので、フィルム全体として配向係数が低下し、力学的特性が低下する。一方、光拡散層(B)のフィルム全体厚みに対する比率が小さいと、光拡散層(B)中の添加剤が、フィルムの表面にブリードアウトする場合や、脱落する場合がある。よって、光拡散層(B)のフィルム全体厚みに対する比率は所定の範囲に制御することが望ましく、2〜50%の範囲が好ましい。光拡散層(B)のフィルム全体厚みに対する比率の下限は、2%が好ましく、3%がさらに好ましく、4%が特に好ましい。一方、光拡散層(B)のフィルム全体厚みに対する比率の上限は、50%が好ましく、35%がさらに好ましく、20%が特に好ましい。
〔5〕光拡散層(B)構成樹脂の固有粘度の制御
本発明では光拡散層(B)を共押出法により付与することを特徴とする。本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは光学用途を目的とするので、異物による光学欠点は少ない方が好ましく、共押出法で樹脂を供給する場合はメルトラインに異物除去フィルターを設けることが望ましい。異物除去フィルターに樹脂を通過させには、一定の押出圧を要するが、樹脂の固有粘度が低い場合は、溶融樹脂の押出時の吐出安定性が低下するため安定は製膜が難しくなる。また、樹脂の固有粘度が低い場合は、得られる光拡散層(B)の面配向係数が低くなり、フィルムの力学的強度が低下する。そのため、光拡散層(B)を構成する共重合成分を含む結晶性ポリエステルの固有粘度は高い方が好ましいと考えられた。ところが、本発明者は該ポリエステルの固有粘土と表面ヘーズとの間に以下に述べる驚くべき関連性を見出した。
該結晶性ポリエステルの固有粘度が高くなると、溶融攪拌での剪断力が増加する。そのため、該結晶性ポリエステルとそれに非相溶の添加剤を押出機内で攪拌混合すると、該結晶性ポリエステルの固有粘度が高くなる程、溶融攪拌での剪断力が増加し、添加剤の分散性が高まる。これは、溶媒の剪断力により添加剤が細粒化することによるものと考えられる。すると、添加剤の粒径が小さくなり、光拡散層(B)表面に良好な凹凸構造を付与する程度に有効な分散径が得られず、表面ヘーズが低下する。そのため、光拡散層(B)の力学的強度と良好な光特性の両立を図るには、光拡散樹脂層を構成する共重合成分を含む結晶性ポリエステルの固有粘度は所定の範囲に制御することが好ましいことがわかった。
該結晶性ポリエステルの固有粘度の下限としては、0.50dl/gが好ましく、0.52dl/gがさらに好ましい。固有粘度が0.50dl/g未満では、メルトラインに異物除去用フィルターを設けた場合、溶融樹脂の押出時における吐出安定性が低下する傾向がある。また、該結晶性ポリエステルの固有粘度の上限としては、0.61dl/gが好ましく、0.59dl/gがさらに好ましい。固有粘度が0.61dl/gを超える場合は、前記添加剤のポリエステル中の分散径が小さくなり、光拡散性が低下する傾向がある。
〔6〕基材ポリマーと非相溶樹脂の溶融粘度差の制御
本発明者は光拡散層(B)を構成する該結晶性ポリエステルと非相溶性の添加剤との溶融粘度差と、フィルムの表面ヘーズとの間に以下に述べる関連性を有することを見出した。本発明では光拡散層(B)中の非相溶の添加剤により表面凹凸が形成され、所定の表面ヘーズが得られる。光拡散層(B)を構成する共重合成分を含む結晶性ポリエステルと非相溶の添加剤とは、押出機内で攪拌混合される。非相溶性の添加剤の態様としては熱可塑性樹脂が好ましいが、該結晶性ポリエステルの溶融粘度と該添加剤の溶融粘度が同程度の場合、二成分は容易に分散し、該添加剤は細粒化する。該添加剤の分散径が小さくなると、光拡散層(B)表面に良好な凹凸構造が得られず、表面ヘーズが低下する。そのため、本発明では、光拡散層(B)を構成する共重合成分を含む結晶性ポリエステルと非相溶の添加剤との溶融粘度差が大きい方が好ましい。該溶融粘度差は、35Pa・s以上が好ましく、40Pa・s以上がさらに好ましい。溶融粘度差が35Pa・s以上では、添加剤のポリエステル中の添加剤が良好な分散径を有し、良好な光拡散性が得られる。
〔7〕延伸温度と熱処理温度条件の制御
フィルムの力学的特性や光学特性は製膜条件によっても制御することができる。フィルムの延伸温度を高くすると、延伸応力が低下するので、配向係数が低くなり、ボイドの発生が抑制される。また、非相溶性の添加剤による表面凹凸も形成されやくなるので、全光光線透過率と光拡散性の両立の点からは、高温で延伸することが望ましい。また、熱処理を高温で行うと、ボイドが消失し、内部ヘーズを低くすることができ、さらに、熱寸法変化率も小さくなり、熱処理でのカールが生じ難くなる。しかしながら、延伸温度を高くすると、フィルムの厚み変動が大きくなり、厚み斑などが発生して、フィルム本来の力学的特性が得られ難い。本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムにおいて、優れた力学的特性と、全光線透過率と光拡散性の両立を図る為には、樹脂特性や要求特性に応じた製膜条件、特に延伸時の温度と熱処理時の温度を適宜に制御することが望ましい。
本発明の光拡散性ポリエステルフィルムを、ポリエステル樹脂を延伸して作製する場合、120℃から160℃の温度範囲内で延伸を行うことが望ましく、235から250℃の温度範囲内で熱処理を行うことが望ましく、5秒から100秒の範囲内で熱処理を行うことが望ましい。また、熱処理と同時または熱処理後に、縦方向または横方向の緩和処理を施してもかまわない。
〔8〕光拡散層の表面凹凸構造の制御
先願発明(I)の光拡散性ポリエステルフィルムは上記手段〔1〕〜〔7〕が相互に関連することにより達成された。しかしながら近年の液晶ディスプレイの高精細化、高輝度化などの高機能化の要求の高まりの中では、光拡散性フィルムと組み合わされるレンズフィルムやプリズムフィルム、液晶パネルの仕様の変更、改良も盛んに行われており、光拡散性フィルムには、これら部材との様々な組み合わせにおいて優れた表示性能を維持することが要求されるようになっている。
光拡散性フィルムとレンズフィルムやプリズムフィルム、液晶パネルなどとの組み合わせによる種々の使用形態で、表示性能においてしばしば問題となるのがモアレやシンチレーションである。光拡散性フィルムが原因となるモアレは、光拡散性フィルムを透過して出射する光に明暗のムラすなわち配光ムラがあり、さらにその配向ムラに周期性がある場合に、その周期性のピッチとレンズシートのレンズパターンやプリズムシートのプリズムパターン、液晶パネルの画素などの周期構造のピッチが干渉することにより生じると考えられる。また、シンチレーションは光拡散性フィルムの配光ムラが液晶パネルに組み込まれるカラーフィルターの色画素の一部に重なり、色画素の輝度を変化させることにより生じると考えられる。モアレやシンチレーションといった問題は液晶ディスプレイの高精細化、高輝度化に伴い、レンズパターン、プリズムパターン、液晶パネルの画素などの構造ピッチが小さくなることでより顕著になりやすいことが予想される。
先願発明(I)の表面光拡散性フィルムにおいても、組み合わせるレンズシートやプリズムシート、液晶パネルによっては、配光ムラによるモアレやシンチレーションを生じる可能性が考えられた。表面光拡散性フィルムにおける配光ムラは、光拡散層表面の凹凸構造が不均一となることで生じる。
先願発明(I)において、光拡散層(B)を構成する基材ポリマーと非相溶性の添加剤とは押出機内で撹拌混合された。このような製法においては、基材ポリマーと非相溶性の添加剤を押出機内で撹拌混合する際に、添加剤粒子の分散状態、分布状態が均一化するのに十分な溶融、撹拌混合が行えない場合や、さらに添加剤粒子の再凝集による粒径の増大が不均一で、均一な粒径への収束が起こりにくい状態となる場合も起こりうる。このように不均一な添加剤粒子を含んだ光拡散層(B)を有するフィルムを延伸・熱処理した場合には、光拡散層内における添加剤粒子の分布状態の不均一や、粒径の不均一により、光拡散層表面の凹凸構造の不均一を生じやすい。
上記に鑑み、上記〔1〕〜〔7〕の方策を取りつつ、さらに上記で示したような光拡散層(B)中の添加剤粒子の不均一をも防止し得る方策を鋭意検討した結果、以下の方法により解決するに至った。すなわち、光拡散層(B)を構成する基材ポリマーの全部または一部と、非相溶性添加剤をあらかじめ押出機を用いて溶融混合した予備混練マスターペレットとし、この予備混錬マスターペレット(および残りの基材ポリマー)をさらに押出機を用いて撹拌混合して基材層(A)と積層共押出ししてフィルムを形成する。このようにして形成したフィルムの光拡散層(B)では、非相溶性添加剤は先願発明(I)に比べて均一に基材ポリマー中に分散し、その粒径の均一性も先願発明(I)に比べて優れている。したがって、このフィルムを延伸、熱処理することにより、その光拡散層(B)表面には凹凸構造の不連続やうねりといったムラが少ない均一な凹凸構造が形成される。上記〔1〕〜〔7〕の条件制御との組み合わせにおいて、光拡散層(B)の表面凹凸構造の均一さは、表面光拡散性ポリエステルフィルムの光拡散特性に反映される。本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムの下記式で表される光拡散性S(3)は30%以上50%未満である。S(3)がこの範囲の表面光拡散性ポリエステルフィルムを液晶ディスプレイの拡散フィルムとして使用した場合、レンズシートやプリズムシート、液晶パネルとの様々な組み合わせにおいて、モアレやシンチレーションといった問題の発生を抑制することができる。S(3)が30%よりも小さい場合、表面凹凸構造のムラにより、使用するレンズシートやプリズムシート、液晶パネルの組み合わせによってはモアレやシンチレーションを生じるため好ましくない。S(3)を50%より大きくした場合、I(3)に対するI(0)の相対値は必然的に小さくなり、その結果バックライトユニットにおける正面輝度が低下してしまうため好ましくない。
S(3)=I(3)/I(0)×100
ここで、I(3)、I(0)は夫々、透過光強度のうち拡散角度が±3度の値と0度の値を表す。
〔9〕横延伸時の延伸温度パターンの制御
表面光拡散性ポリエステルフィルムの切断加工時におけるヒゲの発生などの問題は、フィルムの巻き取り方向に対して斜め方向の配向特性の違いによる力学特性の違いによって生じる。斜め方向の配向特性の違いは、フィルムの横延伸時における幅方向の力の伝達が横延伸機内フィルムの端部と中央部で異なることで生じる。横延伸時の幅方向の力の伝達の差を小さくするには、延伸温度を高くすることが有効であるが、単純に延伸温度を高くするとフィルムの厚み斑の悪化を招く問題があった。横延伸時のフィルムの厚み斑の悪化を抑制しつつ、横方向の力の伝達の差を小さく抑え、斜め方向の配向特性を適正化し、切断加工時におけるヒゲの発生を抑制することは、横延伸時の延伸温度パターン制御に関するまったく新しい方法により達成できる。横延伸時の延伸温度パターンの新しい制御方法については後に詳述する。
〔10〕熱固定工程におけるフィルムの加熱状態の制御
表面光拡散性ポリエステルフィルムの後加工時における工程通過性などの加工性の問題は、フィルム内の幅方向および長さ方向のフィルムの熱収縮率の変動によって生じる。幅方向および長さ方向のフィルムの熱収縮率の変動は、フィルムの熱固定工程において熱固定装置内における温度の分布が適正でないことで生じる。後加工時の加工性の向上は、フィルムの熱固定工程において熱工程装置内における温度の分布を適正化し、幅方向および長さ方向のフィルムの熱収縮率の変動を所定の範囲に抑制することで達成できる。熱工程装置内の温度分布の適正化の手段ならびにフィルムの熱収縮率の変動の適正な範囲については後に詳述する。
請求項1記載の要件(1)を達成するためには、上記手段〔1〕〜〔3〕の条件制御を実施することにより達成することが可能である。
請求項1記載の要件(2)を達成するためには、上記手段〔4〕〜〔7〕の条件制御を実施することにより達成することが可能である。
請求項1記載の要件(3)を達成するためには、上記手段〔3〕〜〔7〕の条件制御を実施することにより達成することが可能である。
請求項1記載の要件(4)を達成するためには、上記手段〔3〕〜〔7〕の条件制御を実施することにより達成することが可能である。
請求項1記載の要件(5)を達成するためには、上記手段〔1〕〜〔4〕、〔7〕の条件制御を実施することにより達成することが可能である。
請求項1記載の要件(6)を達成するためには、上記手段〔1〕〜〔8〕の条件制御を実施することにより達成することが可能である。
請求項1記載の要件(7)〜(9)を達成するためには、上記手段〔7〕、〔9〕〜〔10〕の条件制御を実施することにより達成することが可能である。
本発明では、上記〔1〕〜〔10〕の手段が相互に関連して、所定の効果が得られると考える。しかし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、上述した方法と異なった方法で達成することも可能である。さらに、本発明の光拡散性ポリエステルフィルムを得るための構成、および特性について、以下に詳述する。
(原料)
本発明でフィルム原料として用いる結晶性ホモポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。これらのポリエステルは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる直重法のほか、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合させるエステル交換法か、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させるなどの方法によって製造することができる。
前記のポリエステルの代表例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレートが挙げられる。前記のポリエステルはホモポリマーであってもよく、実質的にその結晶性を阻害しない範囲で、第三成分を共重合したものであってもよい。これらのポリエステルの中でも、エチレンテレフタレート単位、あるいはエチレン−2,6−ナフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であるポリエステルが好ましい。
また、本発明に用いることができる共重合成分を含む結晶性ポリエステルとは、上記の結晶性ホモポリエステルを基本骨格として、第3成分(共重合成分)が主鎖中に導入されたポリエステルのことであり、その構造、分子量、及び組成は限定されず任意である。
また、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールの少なくとも1種を含むグリコール成分とから構成される共重合ポリエステルを、原料の一部あるいは全部に用いることが好ましい。
分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールなどが例示される。また、脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
これらのなかでも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。さらに、本発明においては、上記のグリコール成分に加えて1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールを共重合成分とすることが、より好ましい実施態様である。これらのグリコールを共重合成分として、前述の範囲で導入し、使用することは、前記の特性を付与するために好適であり、さらに、光拡散層内のボイドを低減させ、光線透過率と光拡散性を高度に両立させる点からも好ましい。
さらに、必要に応じて、前記のポリエステルに下記のようなジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分を1種又は2種以上を共重合成分として併用してもよい。
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とともに併用することができる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(2)シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(3)シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(4)p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
一方、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールとともに併用することができる他のグリコール成分としては、例えばペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ダイマージオール等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、前記ポリエステルに、さらにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合させることもできる。
前記ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
前記ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
本発明の光拡散性ポリエステルフィルムは、前記共重合ポリエステルをそのままフィルム原料として用いてもよいし、共重合成分が多い共重合ポリエステルをホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)とブレンドして、共重合成分量を調整しても構わない。
特に、後者のブレンド法を用いてフィルムを製造することによって、共重合ポリエステルのみを用いた場合と同等の光拡散性と全光線透過率を両立しながら、高融点(耐熱性)を有する、共重合成分を含む結晶性ポリエステルを調整することができる。
また、異なる2種類の結晶性ポリエステルを溶融混合して、両者のエステル交換反応を利用して、主鎖中に第3成分(共重合成分)を導入する方法を採用しても良い。特に、前記共重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステル(例えば、ポリテトラメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート)を少なくとも1種以上ブレンドして、本発明の光拡散性ポリエステルフィルムの原料として使用することは、ボイド低減の点からもさらに好ましい。
なお、前記支持層(A)を構成するポリエステルには、実質的に粒子を含有させないことが好ましい。また、光拡散層を構成する結晶性共重合ポリエステルには、後述する添加剤以外の粒子を実質的に含有させないことが好ましい。上記の「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。このように不純物の無い、クリーンなポリエステル原料を用いることで、液晶ディスプレイにおける光学欠点の発生を抑制することができる。
(添加剤<表面凹凸付与剤>)
本発明における添加剤は、光拡散層表面に凹凸を付与し、表面光拡散性能を発現させる目的で添加される。光拡散層に入射(光拡散層からの出射)する光は、フィルム表面に付与された凹凸によって、ランダムな方向に屈折・拡散され、表面光拡散性が発現する。上記添加剤は、ポリエステルに非相溶性の材料であれば何ら制限されるものではなく任意であるが、下記のような材料を使用することが好ましい。
(ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂)
本発明において用いることができる最も優れた添加剤は、前記ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂である。すなわち、ポリエステルと熱可塑性樹脂との非相溶性を活用して、二軸延伸フィルムの製造工程(溶融・押し出し工程)において、ポリエステルからなるマトリックス中に該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂からなるドメインを分散形成させ、表面凹凸形成剤として活用する技術である。この技術を用いることにより、フィルムの溶融・押し出し工程において高精度のフィルターで異物を濾過し、液晶ディスプレイ用フィルムとして必要なクリーン度を達成することができる。
これに対し、後述する非溶融性のポリマー粒子や無機粒子を添加剤として用いる場合には、フィルムの製造工程において使用できるフィルターの目開きの細かさに限界があり、高精度で異物を除去することが困難となる。さらに、ポリマー粒子や無機粒子を用いた場合には、粒子とポリエステルとの界面にボイドを発生しやすく、光拡散性と全光線透過率を高度に両立することが困難である。
前記添加剤として用いることができるポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂としては、例えば以下の材料が挙げられる。即ち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、各種環状オレフィン系ポリマー等のポリオレフィン、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等のポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル樹脂、及びこれらを主たる成分とする共重合体、またはこれらの樹脂の混合物等である。
その中でも特に、非晶性の透明ポリマーを用いることが、高い光線透過率を有するフィルムを製造するために好ましい。これに対し、結晶性ポリマーを添加剤として用いた場合には、結晶性ポリマーが白濁してフィルムの内部ヘーズが大きくなり、光線透過率が低下する恐れがある。
本発明に用いることができる非晶性の透明ポリマーとしては、例えば以下のものが挙げられる。即ち、ポリスチレン(PS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体(MS樹脂)、環状オレフィン系ポリマー、メタクリル樹脂、PMMA、等が例示される。
これらの中でも、ポリエステルからなるマトリックスに対して、ポリマーの表面張力が近い非晶性の透明ポリマーを選択することが、ボイド低減の点からも、さらに好ましい。このような表面張力がポリエステルに近い非晶性の透明ポリマーとしては、ポリスチレン(PS樹脂)、PMMA等が例示される。
(非溶融性ポリマー粒子)
本発明の添加剤として用いることができる非溶融性ポリマー粒子は、30℃から350℃まで10℃/分で昇温した際に、融解による流動変形が起こらない粒子であれば、その組成は限定されない。例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂および有機シリコーン系樹脂等が挙げられる。粒子の形状は、球状もしくは楕円状が好ましい。また、該粒子は細孔を有していてもよいし、無くてもよい。さらに、両者を併用してもよい。
上記の非溶融性ポリマー粒子の平均粒径は、0.1〜50μmが好ましい。上記の非溶融性ポリマー粒子の平均粒径の下限は、0.5μmがより好ましく、特に好ましくは5μmである。良好な光拡散効果を発揮するには、上記の非溶融性ポリマー粒子の平均粒径が0.1μm以上であることが好ましい。
一方、上記の非溶融性ポリマー粒子の平均粒径の上限は、30μmがより好ましく、特に好ましくは20μmである。上記の非溶融性ポリマー粒子の平均粒径が50μmを超える場合、フィルム強度や全光線透過率が低下しやすくなる。該非溶融性ポリマー粒子は、できる限りシャープな粒度分布を有する粒子を用いることが好ましい。
上記の非溶融性ポリマー粒子は、1種類でもよいし、2種類以上使用してもよい。シャープな粒度分布を有し(粒子の粒径が均一であることを意味する)、かつ平均粒径の異なる複数の非溶融性ポリマー粒子を併用することは、フィルムの欠点となる粗大粒子の混入が抑制できるので、好ましい実施形態である。
(無機粒子)
添加剤として用いることができる無機粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、カオリナイト、タルク等が挙げられる。
上記無機粒子の平均粒子径は、通常0.1〜50μmが好ましい。0.5〜30μmがより好ましく、1〜20μmがさらに好ましい。平均粒径が0.1μm未満では良好な光拡散効果が得られない。逆に、50μmを超える場合はフィルム強度の低下等に繋がるので好ましくない。該無機粒子の粒度分布はできる限りシャープなものを用いるが好ましい。粒度分布を広げる必要が生じた場合は、シャープな粒度分布の粒子を複数数配合して対応することが好ましい。該対応によりフィルムの欠点となる粗大粒子径の粒子の混入を抑制することができる。
上記の無機粒子の形状は限定されないが、実質的に球状あるいは真球状が好ましい。また、該粒子は無孔または多孔タイプのいずれでもよい。さらに、両者を併用してもよい。
本発明に用いる添加剤は、上記の3種の中の1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(添加剤の混合比率)
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムにおける光拡散層は、前記共重合成分を含む結晶性ポリエステル50〜99質量部と該ポリエステルに非相溶性の添加剤1〜50質量部との配合組成物からなる。両者の好ましい配合比率は、ポリエステル75〜98質量部と添加剤2〜25質量部との配合であり、さらに好ましくはポリエステル80〜97質量部と添加剤3〜20質量部との配合である。
そして、上記添加剤の混合比率が1質量部未満の場合には、添加剤によるフィルム表面の凹凸形成能力が不足し、十分な表面光拡散性能が得られない。一方、添加剤の混合比率が50質量部を超える場合には、添加剤/ポリエステル界面での光散乱が増大するとともに、ポリエステルの延伸応力が増大して添加剤の周りにボイドを生じやすくなる。その結果、光拡散層の内部ヘーズが大きくなり、全光線透過率が低下する傾向にある。さらに、フィルムの二軸延伸時に添加剤が脱落しやすく、該脱落物が異物の原因となりうる。
[光拡散性ポリエステルフィルムの特性]
(面配向係数)
本発明の光拡散性ポリエステルフィルムは、面配向係数(ΔP)が0.08〜0.16であることが重要である。面配向係数(ΔP)の下限は、0.09がより好ましく、特に好ましくは0.10である。一方、面配向係数(ΔP)の上限は、0.15がより好ましく、特に好ましくは0.14である。
面配向係数(ΔP)が0.16以下では、光拡散層(B)表面の凹凸が有効に形成され、表面凹凸によって生じる光拡散効果(表面ヘーズ)が発揮されるので望ましい。
また、面配向係数(ΔP)が0.16を超える場合、用いる添加剤の種類にもよるが、添加剤の周りに発生するボイドの数や大きさが増加する傾向にある。そのため、内部散乱(内部ヘーズ)が大きくなり、全光線透過率が低下する傾向にある。何れにしろ、面配向係数(ΔP)が0.16以下の場合では、全光線透過率と光拡散性の両立が図れる。
一方、面配向係数が0.08以上では、二軸延伸フィルムとしての特徴が発揮され、耐熱性、機械的強度、厚み均一性などが良好であり、加熱カールの発生が抑制される。
面配向係数を上記範囲内に制御する方法は任意であるが、例えば、前記共重合成分を含む結晶性ポリエステル中への共重合成分の比率を調整することにより制御することが可能である。光拡散層中、または支持層(A)中の共重合成分の比率を多くすれば、面配向係数は低下する、また、共重合成分の比率を小さくすれば面配向係数を上昇させることができる。好ましい共重合成分の比率は、前記の通りである。
また、ポリマーブレンド、あるいは共重合によって、前記共重合成分を含む結晶性ポリエステルのガラス転移点を制御してもかまわない。ガラス転移点を低下させれば、後述する二軸延伸工程での配向が低下し、面配向係数を低下させることができる。また、光拡散層に用いる原料ポリエステルの固有粘度を低下させても、同様の効果が得られる。好ましい固有粘度は、前記の通りである。
さらに、後述する二軸延伸条件の調整によっても、ある程度、面配向係数を制御することが可能である。面配向係数を低下させるためには、縦延伸または横延伸の延伸温度を高く設定するか、延伸倍率を低く設定する、あるいは熱処理温度を高めに設定すればよい。好ましい二軸延伸条件については後述する。
(光学的特性)
次に、本発明においては、表面ヘーズが15%以上、かつ内部ヘーズが表面ヘーズ未満であることを特徴とする。表面ヘーズは、光拡散層の表面凹凸に由来する特性である。そのため、フィルム表面から光が出射する際に、またはフィルム表面に光が入射する際に、光拡散層の表面凹凸で光が屈折することにより表面ヘーズが高くなる。したがって、表面ヘーズと全光線透過率とは基本的に無関係である。そのため、表面ヘーズを高くすることにより、全光線透過率の低下を抑制した状態で、光拡散性を高めることができる。
一方、内部ヘーズは、フィルム内部での光散乱に由来する特性である。そのため、入射光の後方散乱の影響により全光線透過率が低下する。したがって、優れた光拡散性と、高い全光線透過率を有する光拡散性ポリエステルフィルムを製造するためには、表面ヘーズを高くするとともに、内部ヘーズを極力小さくすることが有効な手段である。
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムの表面ヘーズは15以上である。表面ヘーズの好ましい下限は、20%であり、さらに好ましい下限は25%、特に好ましい下限は30%である。表面ヘーズが15%以上であれば、導光板の印刷柄や、冷陰極管のランプ像に対して有効な拡散効果が発揮され、光拡散性フィルムとして有効な光拡散性能が得られる。
一方、表面ヘーズの好ましい上限値は60%であり、より好ましい上限値は70%、さらに好ましい上限は80%である。表面へーズが80%以下であれば、内部ヘーズが抑制され、全光線透過率が高くなる傾向がある。
また、内部ヘーズは、表面ヘーズ未満であることが重要である。内部ヘーズの上限値は、好ましくは40%、より好ましくは30%、さらに好ましくは20%、特に好ましくは10%である。
内部ヘーズが表面ヘーズと同じ、もしくは表面ヘーズを超える場合には、フィルムの光拡散機能の主体を内部ヘーズが担うこととなり、フィルム内部で、(後方散乱を伴う)光散乱を生じ、全光線透過率が大きく低下する。一方、内部ヘーズの下限は1%が好ましい。内部ヘーズが1%未満のフィルムでは、十分な表面ヘーズが得られない傾向がある。
また、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、86%以上の全光線透過率であることが望ましい。より好ましい光線透過率の下限値は87%であり、さらに好ましい下限値は88%である。
また、光拡散性フィルムの光拡散性能は、例えば像鮮明度によって定量的に評価することができる。像鮮明度とは、フィルムを通して蛍光ランプなどの光源を見た場合の鮮明さを示す指標であり、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」像鮮明度に準拠して測定する通常の方法で評価された像鮮明度である。像鮮明度が小さい程、隠蔽性が良好であり、光拡散性能が優れていることを表す。
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムでは、光学くし幅が2mmの透過法において、40%以下の像鮮明度を得ることが可能である。より好ましい像鮮明度の上限値は20%、さらに好ましい上限値は15%である。なお、像鮮明度は小さければ小さいほど良いが、必要以上に像鮮明度を低下させようとすると、内部ヘーズが高くなり、全光線透過率が低下する。本発明において、像鮮明度の下限値は1%が好ましく、より好ましくは3%である。
また、光拡散性フィルムの光拡散性能は、例えば村上色彩技術研究所製ゴニオフォトメーターGP−200を用いた透過光強度によってさらに定量的に評価することができる。透過光強度のうち0度の値をI(0)、N度の値をI(N)とし、下記の計算式で求められる透過光強度比をS(N)としたとき、例えばN=1度のときのS(1)の値が大きいと、0度の透過光の周辺に拡散された透過光が多くなるため、フィルムを通して見える像の鮮明性を低下することができ、良好な隠蔽性が得られる。さらに、表面凹凸構造のムラが少ない表面光拡散性フィルムは、小さな周期の表面凹凸構造が密に形成され、このような表面凹凸構造のフィルムではN=3度のときのS(3)の値が大きい傾向が認められる。本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムではS(1)が75%以上かつ、S(3)が30%以上の値を得ることが可能である。S(1)の値が75%よりも小さいと、光拡散性が低下し、良好な隠蔽性が得られないため好ましくない。また、S(3)の値が30%よりも小さいと、組み合わせるレンズシート、プリズムシート、液晶パネル等によってはモアレやシンチレーションといった問題を生じるため好ましくない。
S(N)=I(N)/I(0)×100
なお、透過光強度比は大きければ大きいほど光拡散性に優れるが、必要以上に透過光強度比を大きくしようとするとI(0)が低下する場合が多く、その結果バックライトユニットにおける正面輝度は低下してしまう。本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムにおいてはS(1)の上限値は99%が好ましく、より好ましくは95%である。さらに好ましくは85%である。同じ理由により、S(3)の上限値は50%が好ましく、より好ましくは45%である。さらに好ましくは40%である。
(力学的特性)
また、本発明において、フィルムの原料として結晶性ポリエステルを用いているので、二軸延伸フィルム本来の優れた機械的強度、及び優れた厚み精度を得ることができる。
フィルムの引張強さの下限は、好ましくは100MPa、さらに好ましくは130MPa、特に好ましくは160MPaである。引張強さが100MPa以上では、二軸延伸フィルムの力学的強度が発揮され、フィルムの加工工程で割れ、破れ、折れ、裂け等の不具合を生じ難くなる。
また、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、厚み斑が5.0%以下であることが好ましい。
フィルムの厚み斑が5.0%以下の場合は、フィルムをロール上に巻き上げた時に、シワやコブを生じ難く、平面性が保持される。その結果、バックライトユニットにおける光出射面の輝度が均一になり、光拡散性フィルムの本来目的が達成できる。
また、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、無荷重の状態で、100℃で30分間加熱処理した後のカール値が5mm以下であることが好ましい。
カール値が5mm以下の場合は、例えば、光拡散性フィルムとして最終製品に組み込む場合の無緊張下での作業時のハンドリング性が良好になる。また、高温での加工や高温環境での使用においても、フィルムの歪発生が抑制され、バックライトユニットにおける光出射面の輝度を均一にするという、光拡散性フィルムの本来目的が達成できる。
カールの抑制に関しては、前述の通り、支持層(A)と光拡散層(B)との融点差を制御することによって調整可能であるが、さらに、押し出し時の表裏冷却の冷却速度差によるフィルム厚み方向の結晶化度を始め、予熱、延伸、冷却、巻き取り等の各工程で付与されるフィルム表裏の構造差に起因するカールを制御するために、積極的にフィルム表裏の構造差を発生させ、必然的な構造差と補完しあってカール値をゼロに近づける方法等を適用することが好ましい。
具体的には、縦延伸や横延伸などの延伸工程及び熱処理工程で、フィルム表裏の温度又は熱量を異なる値とすることによって、フィルム表裏の配向度を独立して制御し、フィルム表裏の構造や物性が両立する条件を採用することにより、ゼロカールの製膜が実現する。
また、カールが全幅にわたって低い状態で安定的に生産されるための基本的要件として、厚み斑の少ない延伸処方を用いることも重要である。
より具体的には、製膜直後の縦方向カールについては、縦延伸時のフィルム裏表の構造差を制御し、横方向のカールは横延伸及び熱固定時にフィルム裏表の構造差を制御することで、逆方向の内部歪を作りこみ、必然的に発生するフィルム表裏の構造差による内部歪と両立させ、カールを抑制することが好ましい。
また、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムの厚みは任意であり、特に制限されないが、25〜500μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは75〜350μmの範囲である。
[Δnab
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、一旦広幅に製造されたミルロールを所定の個数にスリットしたスリットロールに由来するものであり、Δnab(巻き取られたフィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率と巻き取られたフィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の屈折率との差異(絶対値))が、すべての領域において0.015以上0.060以下であるものに限定される。すなわち、Δnabが0.015を下回るスリットロールでは、上記した“歪み(すなわち、幅方向における物性差)”の問題が生じない。また、Δnabが0.060を上回るように歪んだスリットロールでは、本発明の要件を満たすようにTS/TE等を調整することが困難である。
[TS/TE]
本発明において、破断強度(TS)とは、フィルムが破断するのに必要な応力であり、具体的には、フィルムに引張力を徐々に加えていき、フィルムが破断した時の力を求め、これを単位面積あたりの応力に換算した値(単位:MPa)で表す。破断伸度(TE)とは、フィルムが破断するまでに伸びた割合(伸び率)であり、具体的には、フィルムに引張力を加えていったときにフィルムが破断するまでに伸びた長さを、元の長さで除した値(単位:%)で示す。本発明において、破断強度(TS)、破断伸度(TE)はJIS K 7127に準じて測定し、具体的には以下の方法により行う。すなわち、幅12.7mm、長さ200mmのフィルム試験片をサンプリングし、フィルム試験片を引張試験機(例えば、ORIENTEC社製、テンシロンRTC−125A)にセットし、温度23℃、湿度65%RHの環境下において、チャック間距離100mm、引取り速度200mm/minで伸張し、フィルム試験片の破断時の伸び、および破断に要した荷重の測定値から破断強度(TS)、破断伸度(TE)を算出する。
破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比(TS/TE)とフィルムの切断加工性とは以下のような関係を有する。すなわち、TS/TEが大きいフィルムは破断強度が強く、伸度が少ないフィルムを意味する。このような特性を有するフィルムは、脆く腰がないフィルムとなり、切断加工時において切断面が毛羽立ち、ヒゲや切屑が発生し易い。一方、TS/TEが小さいフィルムは破断強度が小さく、伸度が大きいフィルムを意味する。このような特性を有するフィルムは、粘りがあり腰の強いフィルムとなり、切断加工時においても切断面に荒れが少なく、断裁性(切断加工性)が良い。また、フィルムの部位によりTS/TE比が異なる場合は、同じ剪断力に対しても部位により切断加工性に差が生じ、その差によって切断面のズレ、ヒゲが発生し易くなる。そのため、TS/TE比は等方性を有することが最も望ましい。以上のことから、切断加工性においてはTS/TE比が小さく、部位によるTE/TE比の変動が小さいフィルムが好ましい。
本発明のフィルムは、フィルムの巻取方向(MD方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの幅方向(TD方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向(A方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向(B方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、いずれも0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であることを特徴とする。TS/TE比の上限は、2.6(MPa/%)が好ましく、2.4(MPa/%)がより好ましく、2.2(MPa/%)がさらに好ましい。MD方向、TD方向、A方向、B方向とも、TS/TE比が2.6(MPa/%)以下であれば、フィルムの切裁性もよく、切断加工に好適である。TS/TE比の下限は、0.6(MPa/%)が好ましく、0.9(MPa/%)がさらに好ましい。TS/TE比が0.6(MPa/%)以上であると、フィルムが力学的に変型しにくく好適である。また、TS/TE比がMD方向、TD方向、A方向、B方向とも上記範囲内であれば、TS/TE比に起因する剪断ズレが生じにくく、切断面のズレやヒゲの発生が抑えられ、断裁性に優れる。なお、フィルムのTS/TE比が上記範囲のフィルムを得るための好ましい製膜方法については後述する。
(熱収縮率)
また、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、後述する方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部から切り出した5つのフィルム試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求め、それらの最大値と最小値の差が0.1%以下であることが必要である。
上記HS150の最大値と最小値の差が、0.1%以下であると、後加工におけるフィルムの通過性が良好となり好ましい。また、各切り出し部における熱収縮率差は、0.08%以下であるとより好ましく、0.06%以下であると特に好ましい。なお、各切り出し部におけるHS150の最大値と最小値の差は、低いほど好ましいが、設計上、0.05%が下限であると考えられる。
熱収縮率の測定に使用するフィルム試料は、次の手順によって設けた5個の切り出し部から切り出す。
(1)上記Δnabが0.015以上0.060以下である幅方向の長さが70cm以上のフィルムを均等に5分割する。
(2)各分割した5つのフィルムのそれぞれについて幅方向の中央部に切り出し部を設ける。
(3)各切り出し部からフィルム巻き取り方向にそって、幅20mm、長さ250mmの試料フィルムを切り出し5つのフィルム試料を切り出す。
さらに、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、上記した方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部から切り出した5つのフィルム試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求めたときに、すべての切り出し部における両端縁の試料のHS150が、いずれもいずれも0.7%以上2.0%以下であることが必要である。
各切り出し部から切り出したフィルム試料のHS150の値が2.0%以下であると、後加工におけるフィルムの通過性が良くなるので好ましい。また、各切り出し部から切り出したフィルム試料のHS150の値は、1.5%以下であるとより好ましく、0.4%以下であると特に好ましい。なお、各切り出し部から切り出したフィルム試料のHS150の値は、低いほど好ましいが、生産性の点から、0.7%が下限であると考えている。
(二軸延伸フィルムの製造)
本発明において、前記の特性を満足させる方法として、例えば、以下の製造方法を用いることが好ましい。
以下、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムの好適な製造方法について、光拡散層(B)の原料である共重合成分を含む結晶性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート共重合体(以下、単にポリエステルと略称することもある)のペレットを用いた代表例について詳しく説明する。
まず、フィルム原料として、ポリエステルと、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂をそれぞれ、真空乾燥あるいは熱風乾燥によって、水分率が100ppm未満となるように乾燥する。次いで、各原料を計量、混合して押し出し機に供給し、シート状に溶融押出を行う。さらに、溶融状態のシートを、静電印加法を用いて、表面温度10〜50℃に制御された金属製の回転ロール(チルロール)に密着させ、さらに反対面から冷風を吹き付けて冷却固化し、未延伸PETシートを得る。本発明においては、各原料のうち、非相溶添加剤については、基材ポリマーの全部または一部と、非相溶性添加剤をあらかじめ押出機を用いて溶融混合した予備混練マスターペレットとして用いることが重要である。
この際、押出機の溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度を220〜290℃、その後のポリマー管、ダイまでの樹脂温度を210〜295℃に制御することが、劣化物等の異物の発生を抑制するために好ましい。
光拡散層(B)と支持層(A)とを共押出し積層するためには、2台以上の押出し機を用いて、各層の原料を押出し、多層フィードブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて両層を合流させ、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。あるいは多層フィードブロックを用いる代わりにマルチマニホールドダイを用いても良い。
また、本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムにおいては、少なくとも一方の表面に塗布層を有していることが好ましく、さらには両面に塗布層を有していることが好ましい。光拡散層の表面に塗布層を設けることによって、フィルム表面での反射光の発生を抑制して、全光線透過率をさらに高めることができる。また、光拡散層とは反対面に塗布層を設け、該塗布層の表面にプリズムシート加工やハードコート加工を施す場合には、易接着性を付与することができる。
この場合、前記の方法によって得られた未延伸フィルムに塗布層を設けた後、二軸延伸を行う。同時二軸延伸法でも逐次二軸延伸法によっても良いが、逐次延伸法で行う場合、縦または横方向に一軸延伸したフィルムに易接着層を設けた後、直交方向に延伸し、二軸延伸を行う。
塗布層を形成する場合に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好適である。これらの塗布液としては例えば、特許3567927号公報、特許3589232号公報、特許3589233号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル溶液、アクリル溶液、ポリウレタン溶液等が挙げられる。塗布層はこれら塗布液を縦方向の一軸延伸ポリエステルフィルムの片面または両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な塗布層の塗布量は、0.05〜0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、得られる積層フィルムと機能層との密着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。基材フィルムの両面に塗布層を設ける場合は、両面の塗布層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、積層フィルムの用途に応じて、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。塗布層には易滑性を付与するために微粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が塗布層から脱落しやすくなる他透明性が低下する。塗布層に含有させる粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子粒子が挙げられる。これらの粒子の中でも、塗布層の樹脂成分と屈折率が比較的近いため、高い透明性を有するフィルムを得やすいという点から、シリカ粒子が好適である。また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
さらに、上記の方法で得られた未延伸フィルムを、以下に示す方法で長手方向(縦方向)に延伸し、その縦延伸後のフィルムを幅方向に以下に示す方法で横延伸し、以下に示す方法で熱固定処理することによって本発明のフィルムを得ることが可能となる。以下、本発明のフィルムを得るための好ましい製膜方法について、従来のフィルムの製膜方法との差異を考慮しつつ詳細に説明する。
<従来の延伸方法の問題点>
未延伸フィルムは、上記の如くシート状の溶融樹脂を金属冷却ロールに巻き付けることによって形成される。その際に、金属冷却ロール形状の不均一性、溶融樹脂の吐出量の変動等の要因によって、未延伸フィルムには少なからず厚み斑が形成されてしまう。かかる厚み斑を低減するために従来から様々な試みがなされているが、未延伸フィルムの厚み斑を完全になくすことは、現状では不可能である。したがって、最終的に厚み斑の良好なフィルムを得るためには、未延伸フィルムにおける厚み斑を延伸工程において如何にして増幅させないか、が大きなポイントとなる。
縦延伸工程においては公知の方法により、縦延伸を行って良く、縦延伸を一段、二段、あるいは多段延伸で行うことが出来る。その倍率は総合延伸倍率が2.8〜4.5の間で行って良い。総合延伸倍率が2.8倍未満だと縦厚みの変動が大きくなり、3倍以上が好ましい。また、総合延伸倍率が4.5倍を超える場合には横延伸工程で破断が発生しやすくなる。3.9倍以下が好ましい。
また、本発明のフィルムを得るためには、縦延伸を施したフィルムに横延伸を行う必要がある。ところが幅方向に延伸する場合には、幅方向での力の伝達が横延伸機内の端部と中央部で異なる。即ち、端部は横延伸を実施するために把持部で掴まれていて、動きが制限されているが、中央部は長手方向に動くことが可能な状態である。この状態では丁度、1本のロープを左右に引っ張った状態と同じ様に懸垂線の曲線を描く。横延伸の場合は長手方向でその懸垂線の形状は延伸初期から延伸後期で刻々と変化をしていく。この変化は例えば横延伸の始まる前のフィルムシートに長手方向に垂直に(幅方向に平行に)フィルムシートの表面に速乾性のインクで線を入ことで可視化することが出来る。横延伸初期はその線は流れ方向の後側に凸に見え、延伸が進むとある所で一直線になり、その後に流れ方向に凹となって見える。
この横延伸の挙動により従来の延伸条件では幅方向の物性の差が生じ、フィルムを使用する時に機台中央部分から採取したフィルムでは問題が生じ無いが機台の端部(フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率とそれに90度の角度をなす方向の屈折率との差異Δnabが0.015以上0.060以下)から採取したフィルムではフィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向の配向特性に違いが有る。このことがフィルムの切断時に斜め方向の力学挙動により切断性に影響を生じる。この為に厳しい要求がなされる枚葉で処理される加工フィルムの厚物(70μm以上)にとって改善する必要があった。
本発明者らは、上記した従来の延伸方法が有する問題点を解消すべく、どうすればフィルムに幅方向の熱収縮率差に起因する熱加工工程における張力による歪を発生することなく、また、フィルムの斜め方向(ab方向)の配向特性によるフィルムの切断性への影響のきわめて少ないフィルムを作ることが出来るか鋭意検討した。その結果、以下のような横延伸工程の延伸条件を従来とは全く異なる条件で行うことに、さらに、熱固定ゾーンに遮蔽板を用いて幅方向の熱収縮率差を少なくすることにより、フィルムに熱斑がなく、熱加工時に、熱収縮率差による加工張力による歪を内在させなく、次工程での加工適正のきわめて優れた、切断性の良いフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
<本発明のフィルムの製造方法の横延伸工程・熱固定処理工程での特徴>
縦延伸工程を経たフィルムは次いでテンター内で横延伸処理がなされる。テンター内は(イ)縦延伸を施されたフィルムを横方向に延伸する為にフィルムを延伸に適した温度まで昇温する予熱部分と、(ロ)昇温されたフィルムを横方向に延伸する延伸部分、(ハ)引き続き縦及び横延伸による歪を低減する熱処理を施す熱固定処理部分、(ニ)横方向の歪を更に低減する緩和処理部分、(ホ)最後に熱の掛かったフィルムをガラス転移点(Tg)以下に冷却する冷却部分、に区分できる。テンター側部には、チェーンにつながれたクリップを走行させるレールが設置されており、フィルムはクリップに保持された状態でテンター内を走行する。
(イ)の予熱部分では、フィルムの上部および/もくしは下部に設置されたプロナムダクトから噴出す熱風によりフィルム温度が昇温する。フィルムは昇温により膨張するが、かかる膨張相当分による弛みが生じないように、フィルム端部を保持するクリップの走行レールは僅かな幅方向の拡がりが施されている。こうして、プレナムダクトから噴出する風の風圧によりフィルムのバタツキを抑え、熱風が均一にフィルム表面に当たる様に工夫している。
(ロ)の延伸部分ではフィルムを横方向に延伸する為に、フィルム全体の長手方向の進行に対してクリップチェーンは斜め方向に向かってフィルム幅方向に拡がるように設置される。端部をクリップで保持されたフィルムは進行に伴い、幅方向に引っ張られて横方向の延伸が施される。フィルムの延伸倍率はクリップチェーンの走行レールの拡がりの程度(角度と距離)に応じて決定される。
(ハ)の熱固定部分ではフィルムが縦方向及び、横方向に延伸された際に生じた歪を低減する為に、フィルムに高温の熱を掛け、歪を除去している。この部分の温度により主として縦方向の熱収縮率の大きさが決定される。
(ニ)の緩和処理部分は横方向の歪を更に低減する為に、クリップチェーンの走行レール幅を幅方向に縮めるなどの処理により、幅方向の歪を除去している。この処理の程度(温度及び緩和率)に応じて主として横方向の熱収縮率は決まる。
(ホ)の冷却部分ではフィルムをTg以下に冷却し、(ハ)、(ニ)の歪を低減した状態でフィルムを室温付近で取り出す様に冷却している。
それぞれの部分は上記の様な役割を担っているが、本発明では(ロ)の延伸部分では、二軸延伸フィルムが持つ幅方向の全方位の物性の均一化と厚み斑の低減の両立を意図し、(ハ)の熱固定処理部分では縦方向の熱収縮率が均一になるように意図している。
(ロ)の延伸部分ではフィルムは、進行方向に対して斜め方向に設置されたクリップチェーンの走行レールに従い、横方向に延伸される。延伸過程でフィルムの両端はクリップによって把持され、固定される。しかし、クリップから離れた領域、特にフィルムの中央領域では両端部分に比べて自由度が高い。このように力学的自由度に局所的な差がある中で、フィルム全体としては力の作用が均衡した状態で、延伸が施される。また、フィルムは幅方向以外にも、長手方向の力のバランスも均衡した状態にあり、熱固定部分からの影響も受けている。これらの力作用の関係は、幅方向において端部が固定された懸垂線様の状態で均衡している。この力の作用をフィルム中央部で観察すると、延伸初期ではフィルム進行方向に向かって進める様に作用し、延伸後期では中央部が進行方向に対して遅れる様に作用する。この様な力の作用によって、いわゆるボウイング現象が観察される。
この力の作用の結果、フィルム端部の物性は巻取方向と45度の方向の特性と、それと直角の方向の特性とで差が生じることとなる。この特性のうち、配向特性の状態に起因する破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比TS/TEの差が切断加工特性に影響すると考えられる。
一般的に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなるフィルムの引張試験を行うと、所定の歪み量に達するまで、応力が略一定の割合で増加し、所定の歪み量に達すると、歪み量が増加しても応力が増加しないプラトーな領域が出現する(なお、かかる引張初期における応力が飽和する点を降伏点という)。そして、そのようなプラトーな領域が出現した後に、再度、歪み量の増加に伴って応力が増加する領域が出現し(かかる降伏点後に応力が再度立ち上がり始める点を立ち上がり点という)、応力が二次的に増加した後に破断する、という傾向を示す。このような、応力と歪みの曲線をS−S曲線という。
上記物性差を小さくする為に、横方向の延伸温度を単純に高温に設定すると、延伸が「S−S曲線におけるプラトーな領域に相当する歪み量を与えるような延伸」に相当し、フィルムに厚み斑が生じる恐れがあった。さらに、横方向の延伸温度を高くすると、予熱領域との温度の差異が大きくなり、テンター内の温度状態に乱れが生じることによる厚み斑も生じる恐れがあった(なお、フィルムのΔnabが0.015未満の場合は比TS/TEの差は切断加工性に影響を与える程、大きくならない)。フィルムにこのよう厚み斑が生じると、近年ますます精密化する後加工工程では使用に耐えない。ところが、驚くべきことに、以下の様に横延伸倍率と温度の関係を適性化する事により、厚み斑が良好で切断加工性の良好なものが得ることが可能になることを見出した。
(1)横延伸工程の温度区分域の温度の制御
横延伸工程において、テンター内は通常、複数の温度区分域が設けられているが、本発明のフィルムを得るためには、連続する各温度区分域の設定温度差を延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)までは5℃以上20℃以下とし、後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)は5℃以上30℃以下とする必要がある。一方、1.8倍を含む温度区分領域と次の温度区分領域での温度差は5℃以上40℃以下とするのが好ましい。
上記温度範囲で制御することが好ましい理由としては以下のように考えている。すなわち、横延伸工程の延伸前半では、フィルムの引っ張り特性のS−Sカーブの延伸応力増大域で延伸が行なわれるため、温度斑による影響が生じやすい。そのため、上記のように延伸前半での隣接する温度区分域の温度差は低く抑えることが望ましい。また、横延伸工程の延伸後半では、延伸温度を比較的高温に設定するため、フィルムの延伸応力が低下する。よって、延伸後半での隣接する温度区分域の温度差は前半よりも大きくすることができる。さらに、横延伸工程の中間ではS−S曲線のプラトーな領域に相当するため、他の温度区分域に比べ温度変化に対して影響が受けがたく、他の温度区分域よりも大きな温度差が許容される。このように、本発明ではS−S曲線に応じて上記のごとく温度区分域間の温度差を制御する。
また、これらの温度設定は、フィルムの進行方向に向かって段階的に設定温度を上げることが好ましい。テンター内では、フィルムの進行に伴って随伴流が発生するので、フィルム進行方向にそって上流から下流への空気の流れが生じる。そのため、連続する2つの温度区分域で設定温度に差がある場合、温度区分域の境界で温度の乱れが生じる。設定温度の差が大きい場合は、テンター内の温度の分布の乱れが大きくなり、フィルムの延伸状態に乱れが生じ、厚み斑の要因となる。そこで、連続する各温度区分域の設定温度を一定範囲に設定し、幅方向、長手方向のフィルム温度が安定化することとした。これにより、テンター内の横延伸部分の温度の乱れに起因するフィルムの厚み斑が低減することができる。本発明のフィルムを得るための前記設定温度差の下限は5℃以上、好ましくは10℃以上とすることが望ましい。設定温度差が5℃未満の場合は、最終温度区域の設定温度を後述の設定温度にすることが難しくなる。また、前記設定温度差の上限は1.8倍を含む温度区分領域までは20℃以下が必要である。一方、延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率までは30℃以下が必要である。一方、1.8倍を含む温度区分領域とその次の温度区分領域間は40℃以下、好ましくは30℃以下とすることが望ましい。設定温度差が40℃超の場合は、フィルムの厚みの乱れとなり、上記効果が得られない。
予熱部分(イ)から延伸部分(ロ)の最初の温度区分との連続する2つの温度区分域においても、設定温度差を5℃以上40℃以下にすることが好ましい。予熱部分では、延伸が可能な温度程度になるようにフィルムを温める必要がある。そのため延伸部分の温度を高温に設定する場合は、フィルムの温度は縦延伸の延伸温度〜縦延伸の延伸温度+15℃程度が好ましい。なお、予熱部分の設定温度は予熱部分の長手方向の長さとフィルムを走行させる速度とフィルムの厚みに応じて制御することが望ましい。
(2)横延伸工程の延伸前半での温度の制御
横延伸工程の初期の部分ではフィルムの温度は予熱部分で昇温された後、横延伸工程の延伸前半では、フィルムの引っ張り特性のS−Sカーブの延伸応力増大域で延伸が行なわれる。本発明のフィルムを得るためには、横延伸工程の前半部分の温度域を100℃以上160℃未満とし、比較的低温で横延伸を行うことが好ましい。設定温度を100℃未満とすると、フィルムが破断し易くなり、好ましくない。また、設定温度を160℃以上とすると、延伸条件が「S−S曲線におけるプラトーな領域に相当する歪み量を与えるような延伸」に相当するだけでなく、予熱部分との温度の差異が大きくなり、テンター内の温度バランスが不安定となり、厚み斑が生じ易くなり好ましくない。なお、後述のごとく、延伸前半から後半に掛けて温度は高める方向で設定することが望ましい。しかしながら、延伸前半で複数の温度区分域による段階的な温度設定を設けることが困難な場合には、延伸前半と後述する延伸後半の領域間で、目的の効果を得る為に温度差を調整しても良い。
ここで延伸前半の意味する所は、横延伸工程の前半領域でなされる延伸であり、S−Sカーブの延伸応力増大域で行われる延伸である。具体的には、横延伸倍率が1.8倍を含む区分領域をいう。延伸前半の延伸倍率はその全区分領域数に依存する。例えば、最終の横延伸倍率が4倍の場合、全区分領域数が3の時は2.0倍となり、全区分領域数が4の時は2.5倍となる。本発明では、1.8倍を含む区分領域における設定温度を100℃以上160℃未満として比較的低温での延伸を行う。
(3)横延伸工程の最終到達部での温度の制御
本発明のフィルムを得るためには、横延伸工程の最終到達部をの温度域を160℃以上220℃未満とし、比較的高温に設定することが好ましい。高温に設定することで前述のTS/TE比の差異が小さくなり、断裁性を良好にすることができる。また、延伸後半の温度を高温に設定することで、先述したように光拡散層内のボイドの発生を抑えることができる。
ここで延伸後半の意味する所は、横延伸工程の後半領域でなされる延伸であり、具体的には横延伸倍率が1.8倍を含む区分領域の次の区分領域から最終到達倍率までである。延伸後半の延伸倍率は、その全区分領域数に依存する。例えば、最終の横延伸倍率が4倍の場合、全区分領域数が3の時は2.0倍から、全区分領域数が4の時は2.5倍からとなる。そして、前半の倍率を含めた最終倍率は、3倍以上5倍未満、好ましくは4.8倍未満、より好ましくは4.4倍と設定することができる。例えば、最終の横延伸倍率が4倍で、横延伸ゾーンを3段とする場合のプロセス条件は以下のようになる。1段目の倍率は1.0〜2.0倍、2段目の倍率は2.0〜3.0倍、3段目の倍率は3.0倍〜4.0倍となり、1段目のゾーンが延伸の前半部となる。温度の設定は予熱ゾーンの最終温度を105℃とし、最終倍率到達区間の温度を165℃とすると、1ゾーン目は110〜145℃、2ゾーン目は145〜160℃とするのが好ましい。但し、製膜速度など設定によっては2ゾーンの温度設定であっても可能である。
本発明のフィルムは、上記の様な高度に制御された横延伸を実施することにより得ることができる。上記横延伸工程により、巻取方向と45度の方向とそれに90度をなす方向とのTS/TE比の差が小さくなったのは、以下のようなメカニズムによると考えている。横延伸工程では前述のように横方向および長手方向のフィルム全体において力作用が均衡した状態にあり、長手方向では延伸初期ではフィルム進行方向に向かって進める様に作用し、延伸後期では中央部が進行方向に対して遅れる様に作用する。ここで、横延伸の最終到達部の延伸温度を高温に設定すると、横延伸工程の最終の延伸張力が下がる。これにより、フィルムの長手方向にそって熱固定部分から伝播する力の作用の影響が緩和され、長手方向で作用する力の歪が緩和されたと考えられる。さらに、巻取方向(MD方向)とそれに90度をなす方向(TD方向)の配向特性は縦延伸と横延伸の倍率を適度に採用することにより得ることができる。即ち、本発明の場合、縦方向の全体倍率は2.8〜4.5倍であるが、横延伸倍率はその縦倍率より0.3〜0.5倍高い倍率が横厚みの均一性から好ましく適用できるが余り横延伸倍率を大きくすると横の配向特性が縦に比較して大きくなり過ぎる場合がある。
一方、横方向の力作用については以下のように考えられる。フィルム中央部では進行方向での力しか作用しないため、フィルムに掛かる力作用は長手方向に対して左右対称になる。これに対して、フィルム端部ではクリップに保持された状態で斜め方向に進行し、進行方向だけでなく、斜め方向の力が加わる。そのため、フィルム端部の力作用は進行方向に対して左右対称にならない。TS/TE比の差を小さくするためには、この力作用を左右対称に近づける必要がある。これには、横延伸工程を高温行い、フィルムにかかる延伸張力を小さくすることが有効である。ただし、単に延伸工程を高温で行うと、厚み斑が生じる恐れがある。そこで、横延伸工程の前半では、延伸温度を比較的低くすることで、厚み斑の生じにくい「S−Sカーブの延伸応力の増加する領域」で延伸を行い、厚みが均一化されてきた状態で、今度は延伸温度を高くし、横方向の延伸応力を低くして全体の力の作用のバランスにより、延伸を行うこととした。これにより、厚みの斑を増加させずに、巻取方向(MD方向)と巻取り方向に45度(A方向)、巻取方向と90度(TD方向)および巻取方向に135度(B方向:A方向に90度)をなす方向の破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比TS/TEの差異を小さくすることが可能となったと考えられる。
なお、フィルムの縦延伸工程において、上記した(1)〜(3)の手段を用いることにより、フィルムにフィルムの厚み斑の低減と、縦延伸と横延伸の配向特性を勘案した倍率を採用することにより、巻取方向(MD方向)と巻取り方向に45度(A方向)、巻取方向と90度(TD方向)および巻取方向に135度(B方向:A方向に90度)をなす方向の破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比TS/TEの差異のの低減の両立を図ることが可能となったと考えられる。なお、上記した(1)〜(3)の手段の内の特定の何れかのみが、フィルムの厚み斑低減、熱斑の低減およびTS/TE比の差異の低減に有効に寄与するものではなく、(1)〜(3)の手段を組み合わせて用いることにより、非常に効率的にフィルムの厚み斑低減、TS/TE比の差異の低減が可能になるものと考えられる。
<熱固定処理工程でのプレナムダクトの工夫>
通常、延伸後のフィルムの熱固定処理は、長尺状の熱風吹き出し口を有する複数本のプレナムダクトを長手方向に垂直に配置した熱固定装置内で実施される。このような熱固定装置では、加熱効率を良くするために、「熱風の循環」が行われる。熱固定装置に設置された循環ファンにより熱固定装置内の空気を吸引し、その吸引した空気を温調して、再度、プレナムダクトの熱風吹き出し口から排出される。このようにして、「熱風の吹き出し→循環ファンによる吸引→吸引した空気の温調→熱風の吹き出し」の「熱風循環」が行われる。
また、上述したように、フィルムの幅方向における熱収縮率差(片端縁際のHS150と他端縁際のHS150との差)は、熱固定を行う際にフィルム端縁部の緩和が不十分であるために発生する。図1に示すように、熱固定処理において各プレナムダクト3,3・・の熱風吹き出し口2,2・・の中央部分に連続した大型の遮蔽板Sを被せる方法(特開2001−138462号公報参照)によって、短尺のフィルムを後加工で比較的低温(例えば。120℃)で処理する場合の通過性は改善される。しかし、長尺のフィルムにおける通過性や、後加工での熱処理を高温(例えば、160℃)で行った場合の通過性は、改善されない。
本発明者らは、図1に示す方法では何故「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」が改善されないのかを理解するため、熱固定装置内における現象の解析を詳細に行った。その結果、複数本のプレナムダクトに跨るような連続した大型の遮蔽板をプレナムダクトの熱風吹き出し口に被せると、遮蔽板により熱風の流れが制限され、上記した「熱風の循環」がスムーズに行われず、熱固定装置内で温度の乱調(温度のハンチング現象)が生じることを突き止めた。
本発明者らは、上記した「温度のハンチング現象」によりフィルム端部際の熱緩和が不十分になる為に、「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」が悪くなるのではないかと推測した。そこで、本発明者らは、「熱風の循環」をスムーズにするとで、「長尺のフィルムにおける通過性」および「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」を改善できるのではないかと考えた。そして、熱固定装置の温度風量条件、遮蔽板の被覆態様、および後加工におけるフィルムの通過性の三者の関係を把握すべく試行錯誤した結果、フィルム製造の際に、下記(1)の手段を講じることにより、「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」が改善される傾向が見られた。そして、その知見に基づいて、本発明者らが、さらに試行錯誤した結果、下記(1)の手段を講じた上で、下記(2),(3)の手段を講じることにより、後加工における通過性の良好なフィルムを得ることが可能となることを見出し、本発明を案出するに至った。
(1)熱固定装置におけるプレナムダクトの温度・風量の調節
(2)熱固定装置におけるプレナムダクトの熱風吹き出し口の遮断条件の調整
(3)延伸ゾーンと熱固定装置との間における加熱の遮断
以下、上記した各手段について順次説明する。
(1)熱固定装置におけるプレナムダクトの温度・風量の調節
熱固定工程では加温・冷却を段階的に行うために、一般に、熱固定装置は温度の異なるいくつかの区分(熱固定ゾーン)に分かれている。本発明のフィルムの製造においては、熱固定装置の隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下となるように、各プレナムダクトから吹き出される熱風の温度、風量を調節することが不可欠である。たとえば、熱固定装置が第1〜3の熱固定ゾーンに分割されている場合には、第1ゾーン−第2ゾーン間における温度差と風速差との積、第2ゾーン−第3ゾーン間における温度差と風速差との積のいずれもが、250℃・m/s以下となるように調節される。このように、熱風の温度、風量を調節することによって、「熱風の循環」がスムーズになる。後述する不連続な遮蔽板を熱風吹き出し口に取り付る方法と組み合わせると、「温度のハンチング現象」が効果的に抑制される。これにより初めて、後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性が良好な長尺のフィルムを得ることが可能となる。
隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が250℃・m/s以下であると(たとえば、隣接し合う熱固定ゾーン同士の温度差が20℃となるように設定するとともに、隣接し合う熱固定ゾーン同士の風速差が10m/sとなるように設定する)、熱固定装置における「熱風の循環」がスムーズに行われ、「温度のハンチング現象」を効果的に抑制することができるので好ましい。加えて、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が250℃・m/s以下であると、フィルムの通過により生じる随伴流として上流の熱固定ゾーンから下流の熱固定ゾーンへと流れ込む空気の温度差が小さくなる。そのため、下流の熱固定ゾーンの幅方向における温度が安定する為、好ましい。また、当該温度差と風速差との積は、200℃・m/s以下であると好ましく、150℃・m/s以下であるとより好ましい。また、特許文献2のように、各プレナムダクトの風量を一定にし、各プレナムダクトの風速を異なるようにすると「温度のハンチング現象」が起こる。本発明では、各ゾーン内での風速を一定にすることで、「温度のハンチング現象」を効果的に抑制する。
(2)熱固定装置におけるプレナムダクトの遮断条件の調整
本発明のフィルムの製造においては、複数のプレナムダクトに跨る大きな遮蔽板を取り付けるのではなく、図2に示すように、個々のプレナムダクト3,3・・の熱風吹き出し口(ノズル)2,2・・を一つずつ遮蔽するように棒状の遮蔽板S,S・・を取り付ける必要がある。このような不連続な遮蔽板を用いることで、「熱風の循環」がスムーズに行われる。また、同一の長さの遮蔽板を各プレナムダクトに取り付けるのではなく、熱固定装置の入口から出口(フィルムの通過方向)にかけて遮蔽板の長さを次第に長くするのが好ましい(図1参照)。このように、長さを調整することで、フィルム端縁部に曝される熱風温度が調整され、フィルム端縁部の歪みの解消が促される。なお、遮蔽板の材質は、熱固定装置の温度に耐えることができ、かつ、フィルムを汚したり、フィルムを粘着させたりしないものであればよいが、熱膨張の点からプレナムダクトと同一の材料を用いるのが好ましい。また、遮蔽板によるフィルム端縁部の熱収縮率差を本発明の程度に抑えるためには、遮蔽板の数は多い方が好ましく、15枚以上にすることが望ましい。
(3)延伸ゾーンと熱固定装置との間における加熱の遮断(中間ゾーンの設置)
二軸延伸フィルムは、通常、縦−横延伸された後に、熱固定処理される。本発明のフィルムの製造においては、縦−横延伸されるゾーンと熱固定処理される熱固定装置との間に、積極的な熱風の吹き付けを行わない中間ゾーンを設置することが望ましい。これにより、延伸ゾーンと熱固定装置との間で、完全に加熱の遮断が行われる。より具体的には、延伸ゾーンおよび熱固定装置をフィルム製造時と同一条件にした状態で、延伸ゾーンと熱固定装置との間に短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、延伸ゾーンおよび熱固定装置の熱風を遮断するのが好ましい。なお、そのような中間ゾーンは、ハウジングによって囲われていても良いし、連続的に製造されるフィルムが露出するように設けられていても良い。かかる中間ゾーンにおける熱風の遮断が十分になされると、熱固定装置中における遮蔽板による遮蔽効果が発揮され、後加工時における良好なフィルムの通過性が得られるようになり好ましい。
上述した通り、上記した(1)〜(3)までの方法を採用することにより、熱固定装置における「熱風の循環」がスムーズに実行され、「温度のハンチング現象」を抑えることが可能となり、その結果、幅方向の端部際で長手方向の緩和を十分に促すことができ、「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」を改善することが可能となる。なお、上記説明においては、プレナムダクトを設置した熱固定装置において「熱風の循環」をスムーズに実行させて「温度のハンチング現象」を抑える方法を示した。上記説明は、生産レベルにおいて如何にフィルムに熱エネルギーを付与すれば本発明のフィルムが得られるか、という技術的思想を開示したものであるが、当業者であれば、かかる技術的思想を上記した方法と異なった方法により容易に実施することができ、異なった方法で本発明のフィルムを得ることができる。すなわち、別のタイプの熱固定装置であっても、「熱風の循環」をスムーズに実行させて「温度のハンチング現象」を抑えた上で、幅方向の端部際で長手方向に十分に緩和させるに足る熱エネルギーをフィルムに付与することにより、本発明のフィルムの如く「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」の改善されたフィルムを得ることが可能である。
次に実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
[評価方法]
(1)固有粘度
JIS K 7367−5に準拠し、溶媒としてフェノール(60質量%)と1,1,2,2−テトラクロロエタン(40質量%)の混合溶媒を用い、30℃で測定した。
(2)結晶融解熱量、融点およびガラス転移温度
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220型示差走査型熱量計を用いて求める。窒素雰囲気下、樹脂サンプルを300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷し、粉砕した樹脂サンプル10mgを20℃/分の速度で昇温させ、示差熱分析を行った。結晶融解熱量は、JIS−K7121−1987、9・1項に定義される融解ピーク温度(Tpm)、補外融解開始温度(Tim)および補外融解終了温度(Tem)とを囲むDSC曲線を積分して求めた。また、該融解ピーク温度(Tpm)を融点とした。さらに、JIS−K7121−1987、9・3項に基づいて、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
(3)溶融粘度
樹脂サンプルの粘度は、JIS K 7199「プラスチック−キャピラリーレオメータ及びスリットダイレオメータによるプラスチックの流れの特性試験方法」、5.1.3項の方法A(キャピラリーダイ)に準拠して測定した。東洋精機製キャピログラフ1Bにて、φ1mm、L/D=10のキャピラリーダイを用い、270℃に保ったシリンダ内に、乾燥した樹脂サンプルを充填し、約1分間溶融した後、せん断速度608.0sec−1下で溶融粘度を測定した。なお、複数の樹脂を基材ポリマーとして用いる場合、前記基材ポリマーの溶融粘度は、予め複数の樹脂サンプルを十分に混合した後、シリンダに充填し、上記と同様の方法にて溶融粘度を測定した。
(4)フィルムの厚み斑
横延伸方向に3m、縦延伸方向に5cmの長さの連続したテープ状サンプルを巻き取り、フィルム厚み連続測定機(アンリツ株式会社製)にてフィルムの厚みを測定し、レコーダーに記録する。チャートより、厚みの最大値(dmax)、最小値(dmin)、平均値(d)を求め、下記式にて厚み斑(%)を算出した。なお、横延伸方向の長さが3mに満たない場合は、つなぎ合せて行う。なお、つないだ部分については上記データ解析からは削除する。
厚み斑(%)=((dmax−dmin)/d)×100
測定は3回行い、その平均値を求め、下記の基準により評価した。
○:厚み斑が5%以下
×:厚み斑が5%を超える
(5)ヘーズ、全光線透過率
フィルム試験片のヘーズ(曇価)および全光線透過率はJIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して測定した。フィルム試験片のフィルム長手方向を鉛直方向に、光拡散層(B)面を光源側に向けて設置し、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いて測定した。
(6)内部ヘーズ、全ヘーズ、表面ヘーズ
フィルム試験片の両面にセダー油を塗布し(塗布量:片面につき20±10g/m)、ヘーズが1.0%未満の高透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、東洋紡績社製、A4300、厚さ100μm)2枚で挟み合わせたものを、内部ヘーズ測定用試料とした。また、該高透明ポリエチレンテレフタレートフィルム2枚を、セダー油を介して重ね合わせたものを、ブランク試料とした。
次いで、内部ヘーズ測定用試料と、ブランク試料のヘーズを、(5)記載の方法によって測定した。そして、内部ヘーズ測定用試料のヘーズ値から、ブランク試料のヘーズ値を差し引き、内部ヘーズを求めた。また、(5)記載の方法により測定したフィルム試験片単体でのヘーズを全ヘーズとし、全ヘーズ値から内部ヘーズ値を差し引き、表面ヘーズを求めた。
(7)像鮮明度
JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」像鮮明度に準拠して透過法により測定した。フィルム試験片はフィルム長手方向を鉛直方向とし、光拡散層(B)の面を光源側に向けて測定した。測定器には、スガ試験機社製ICM‐1T型写像性測定器を用いた。
(8)光拡散性
光拡散性は村上色彩技術研究所製ゴニオフォトメーターGP−200を用いて測定した。光源はハロゲンランプ(12V,50W)を用い、光源を出た光はコンデンサーレンズ、ピンホール、コリメーターを通じて水平な平行光として試料ホルダーの方向に取り出した後、透過率1%のNDフィルターで減光して使用した。光源光束絞りは10.5mm、受光器の受光絞りは9.1mmとした。試料のフィルムの光拡散層の面を光源側とし、フィルム主面が光源光束と垂直になるように、かつ、フィルムのMD方向が上下となるようにフィルム試験片を試料ホルダーにセットした。試料フィルムに入射した光はフィルムの反対側に透過し、受光器に達して強度が測定される。光源光束を同軸上に延長した方向を0度とし、受光器を光源光束の光軸とフィルムの入射面の交点を中心として水平方向に回転させて、0.1度ステップで−80度から+80度の範囲で透過光強度を測定した。
上記方法で測定した角度0度の透過光強度をI(0)、角度±N度の透過光強度をI(N)とした場合に下記の計算式で求められる透過光強度比S(N)〔%〕を光拡散性の指標とした。本発明では、光拡散フィルムを通して観察される像の鮮明性との相関が認められる値としてS(1)を、また、液晶ディスプレイに組み込んだときのモアレやシンチレーションの発生との相関が認められる値としてS(3)を用いた。
S(N)=I(N)/I(0)×100
(9)配光ムラ
光拡散フィルムの配光ムラは以下の方法で評価した。光拡散フィルムを光拡散層を上向きにしてスライドガラスに乗せ、さらにカバーガラスを重ねて固定した。この光拡散フィルムを光学顕微鏡(対物5倍、対眼10倍)を用いて透過光源で観察を行い、光拡散フィルムの上面に焦点を合わせたときに、明暗の分布状態が均一なものを○、不均一なものを×とした。
(10)引張強さ
JIS C 2318−1997 5.3.3(引張強さ及び伸び率)に準拠して測定した。
(11)面配向係数(ΔP)
JIS K 7142−1996 5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源として基材層側表面を測定面として、アッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(nx)、幅方向の屈折率(ny)、厚み方向の屈折率(nz)を測定し、下記式によって面配向係数(ΔP)を算出した。
ΔP=(nx+ny)/2−nz
(12)カール値
フィルムを長手方向に100mm、幅方向に50mmに枚葉状に切り出し、無荷重の状態で、100℃で30分間加熱処理した後、フィルムの凸部を下にして水平なガラス板上に静置し、ガラス板と立ち上がったフィルム4隅の下端との垂直距離を最小目盛り0.5mm単位で定規を用いて測定し、この4箇所の測定値を平均値を求めた。3つのフィルム試験片について同様の測定を行い、この平均値をカール値とし、下記の基準により評価した。
○:カール値が5mm以下
×:カール値が5mm以上
(13)Δnab
試料フィルムのフィルム巻取方向に平行な両端縁から50mm以内の位置および中央の位置からそれぞれフィルム試験片を採取した。フィルム試験片を23℃、65%RHの環境下で2時間以上放置した後に、各試料サンプルについて、基材層側表面を測定面として、アタゴ社製の「アッベ屈折計4T型」を用い、フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率(n)と、フィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向(すなわち、上記した45度の角度をなす方向と90度の角度をなす方向)の屈折率(n)とを測定した。これら2つの屈折率の差異の絶対値をΔnabとし、Δnab=│n―n│により算出した。フィルムの両端縁部、および中央部のΔnabがいずれも0.015以上0.060以下であることを確認し、最も大きい値を表中のΔnabとした。なお、本発明においてフィルムの巻取り方向は、フィルムの長手方向もしくは縦方向ともいう。
(14)破断強度[TS]、破断伸度[TE]
フィルムの巻取方向と幅方向と巻取り方向に対し45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向でサンプル幅12.7mm、長さ200mmのサンプルを採り、温度23℃、湿度65%RHの環境下において、引張試験機(ORIENTEC社製、テンシロンRTC−125A)を用いて、チャック間距離100mm、引取り速度200mm/minで伸張し、破断強度 (MPa)、破断伸度(%)を求める。
(15)[フィルムの断裁性]
ギロチンカッタによりフィルムを切断し、その断裁性を評価する。断裁性とは、例えばハサミやカッターで切る際の切り易さで、切り口の滑らかさが良好な事を言う。切断方法によりその切れ性は変わるが、押し切り方法の断裁機(コクヨ社製、DN−1N)を用いて、200mmの長さにわたって切断し、その切り口の様子を目視で観察した。切断試験は30回行い、その様子によって以下のように評価した。
判定
○:切り屑も発生せず、切り口ヒゲも発生しない。
△:切り屑もしくは切り口ヒゲが1〜10回発生。
×:切り屑もしくは切り口ヒゲが11回以上発生。
(16)フィルムの熱収縮率(HS−150)
Δnabが0.015以上0.060以下である幅方向の長さが70cm以上のフィルムを均等に5分割する。各分割した5つのフィルムのそれぞれについて幅方向の中央部に切り出し部を設ける。各切り出し部からフィルム巻き取り方向にそって、幅20mm、長さ250mmの試料フィルムを切り出し5つのフィルム試料を切り出す。前記で切り出した幅20mm、長手方向の長さ250mmの試料に200mm間隔で標線を印し、150℃に調節した加熱オーブンに入れ、JIS C−2318に準拠して、熱収縮量の測定を実施した。フィルムの平均熱収縮率は幅方向の計5つの試料サンプルの熱収縮率の平均値として算出した。また、その最大値と最小値の差を熱収縮率差とする。
(17)加工フィルムの平面性
Δnabが0.015以上0.060以下であるロール状フィルムを用い、コータで下方及び上方の空気流吹き出し口の間隔が38cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、搬送張力2000kPa、温度160℃で16秒間で通過させ、加工のモデルフィルムを得た。冷却は、50℃の冷却ロールを用いてフィルムを20℃/秒の速度で冷却した後、ロール上に巻き取り、ロールに巻いた7日経過後にロールからフィルムを引き出しフィルムの平面性を観察した。すなわち、温度25℃、湿度65%の室内で100cm幅の加工モデルフィルムを約3mの長さにしてフィルム長手方向に二人で軽く長手方向と幅方向に引っ張りながら持ちフィルムに写る反射する像を見てタルミが無いかを見る。
判定
○:タルミの無いもの
×:タルミの有るもの。
(18)フィルムの通過性
熱処理後のフィルムの平面性を下記方法により評価した。熱処理工程として、2本のロールの間隔が1,900mmであるコーターを用い、温度を100℃あるいは160℃、炉内張力を100Nに設定した。次いで、ロール間隔が2,000mmになるよう2本のロールを水平に配置し、さらに2本のロールの中央位置に、ロール上面の共通接線から30mm下の位置に上面が位置されるように鉄棒を配置した。熱処理工程を通過させたフィルムを98Nの張力下で2本のロール間を通過させた。フィルムを通過させた際に、鉄棒にフィルムが接触しない場合は○とし、鉄棒に接触した場合には×とした。これらの工程は連続して行ない、フィルムが鉄棒に接触したか否かの確認は目視にて行った。
実施例1
(1)結晶性ホモポリエステル樹脂(M1)の製造
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸(86.4質量部)及びエチレングリコール(64.4質量部)からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモン(0.017質量部)及びトリエチルアミン(0.16質量部)を添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kgf/cm、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物(0.071質量部)、次いでリン酸トリメチル(0.014質量部)を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル(0.012質量部)、次いで酢酸ナトリウム(0.0036質量部)を添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、所定の固有粘度になるまで、285℃で重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、濾過粒子サイズ5μm(初期濾過効率:95%)のナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られた結晶性ホモポリエステル樹脂(M1)は、結晶融解熱が35mJ/mg、融点が256℃、固有粘度が0.56dl/g、溶融粘度が91Pa・s、Sb含有量が144ppm、Mg含有量が58ppm、P含有量が40ppm、カラーL値が56.2、カラーb値が1.6であった。また、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。
(2)共重合ポリエステル樹脂(M2)の製造
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及びネオペンチルグリコール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.59dl/g、溶融粘度が121Pa・s、の共重合ポリエステル樹脂(M2)を(M1)の作製方法に準じて作製した。
(3)ポリスチレン(M3)
溶融粘度が147Pa・sのポリスチレン樹脂(PS)を使用した。
(4)非相溶性添加剤予備混練マスターペレット(MB1)の調製
135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した結晶性ホモポリエステル樹脂(M1)70.0重量%およびポリスチレン(M3)30.0重量%をペレット混合したものを285℃に温調した二軸押出機(東芝製TEM−37BS)に供給し、毎分50回転、吐出量毎時約7.5kg、押出機内滞留時間約6分で混練りして押出し、得られたストランドを冷却、切断して非相溶性添加剤予備混練マスターペレット(MB1)を調製した。
(5)塗布液(M4)の調製
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4重量部、イソプロピルアルコール38重量部、n−ブチルセルソルブ5重量部、ノニオン系界面活性剤0.06重量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5重量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0重量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3重量部を水50重量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46重量部にサイリシア310の水分散液0.54重量部を加えて、撹拌しながら水20重量部を加えて、塗布液(M4)を得た。
(6)表面光拡散性ポリエステルフィルムの製造
光拡散層(B)の原料として、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した結晶性ホモポリエステル(M1)33.4質量%と、70℃で12時間減圧乾燥(1Torr)した共重合ポリエステル(M2)33.3質量%と、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)したポリスチレン予備混練マスターペレット(MB1)33.3質量%とを混合し、押出機2に供給した。また、支持層(A)の原料として135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した結晶性ホモポリエステル(M1)を押出機1に供給した。
各押出機の溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの設定温度を275℃、フィルターの後のポリマー管の設定温度を270℃とし、押出機2、及び押出機1から供給された各原料を、2層合流ブロックを用いて積層し、口金よりシート状に溶融押し出した。
なお、(A)層と(B)層との厚み比率は、80対20となるように、各層のギアポンプを用いて制御した。また、上記のフィルターには、いずれもステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm粒子を95%カット)を用いた。また、口金の温度は、押出された樹脂温度が275℃になるように制御した。
押し出した樹脂を、表面温度30℃の冷却ドラムに静電印加法を用いて密着させて冷却固化し、未延伸フィルムを作成した。このとき、(A)層面を冷却ドラムに接する面とした。また、冷却ドラムによる未延伸フィルムの引き取り速度は、12m/分とした。
得られた未延伸フィルムを、予熱ロールを用いて77℃に加熱し、周速が異なるロール間で、流れ方向に3.4倍に延伸した。このとき、フィルムの最高温度が100℃になるように、ヒーター温度を制御した。
一軸延伸フィルムの両面に塗布液(M4)を最終被覆層膜厚が0.08g/mとなるように塗布した後、135℃で乾燥させた。
塗布層を有する一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持して、テンターに導き、110℃の予熱ゾーンを通過させた後、1ゾーン目を140℃で幅方向に2.0倍延伸し、2ゾーン目を155℃で3.0倍まで延伸し、3ゾーン目を180℃で4.0倍まで延伸し、その後、後述する方法により240℃で熱固定処理を行った後、225℃で幅方向に3.3%の緩和処理を行い、両端部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって表面光拡散性ポリエステルフィルムロール(ミルロール)を作製した。なお、上記延伸条件を「a条件」として表1に示す。
〔熱固定処理〕
上記熱固定処理は、図3に示す構造を有する熱固定装置で行った。熱固定装置は第1〜4ゾーンという4個の熱固定ゾーンに区切られている。第1〜3ゾーンには、それぞれ、8個ずつのプレナムダクトa〜xが設けられている。第4ゾーンにも、8個のプレナムダクトが設けられている。各プレナムダクトは、フィルムの進行方向に対して垂直となるように、フィルムの進行方向に対して400mm間隔で上下に設置されている。プレナムダクトの熱風吹き出し口(ノズル)から、延伸されたフィルムに熱風が吹き付けられるようになっている。
実施例1においては、a〜oの15本のプレナムダクトの熱風吹き出し口に、不連続な棒状の遮蔽板S,S・・を、図2に示す態様で取り付けた。プレナムダクトa〜oの熱風吹き出し口に遮蔽板S,S・・を取り付けた熱固定装置を上から見た様子を図4に示す。取り付けられた各遮蔽板S,S・・の長手方向の中心は、熱固定装置を通過するフィルムの幅の中心と略一致するように設定されている。また、各遮蔽板S,S・・の長さ(製造されるフィルムの幅方向における寸法)は、熱固定装置の入口から出口にかけて次第に幅広になるように設定した。a〜oの各プレナムダクトの熱風吹き出し口の遮蔽率(遮蔽板による熱風吹き出し口の遮蔽面積/熱風吹き出し口の面積)を「A態様」とし、表2に示す。
また、実施例1における、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速の各調整値を「I条件」とし、表3に示す。なお、実施例1の熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度条件、風速条件は、隣接する熱固定ゾーン間の温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下に設定した。
なお、上記に加えて、各層のポリエステルの融点および固有粘度を測定するため、(B)層の吐出を一時的に停止して(A)層単独の未延伸フィルムを採取した。同様に、(A)層の吐出を一時的に停止し、(B)層単独の未延伸フィルムを採取した。
(7)フィルムの特性
本実施例1で得られた表面光拡散性フィルムの特性を表4および表5に示す。また、本実施例1で得られたフィルムの配光ムラの観察像を図5に示す。表4から分かる通り、本発明で得られる表面光拡散性ポリエステルフィルムは、二軸延伸フィルム本来の優れた耐熱性と機械的強度、厚み精度を有している。また、内部ヘーズが小さく、高い光線透過率を有している。さらに、全ヘーズの大半が表面ヘーズによって付与されており、像鮮明度が小さく、S(1)が大きいことから隠蔽性に優れていることが分かる。さらに図5から分かる通り配光ムラもなく、かつS(3)が大きいことから、モアレやシンチレーションの発生が抑制されることがわかる。また、表5から分かる通り本発明で得られる表面光拡散性ポリエステルフィルムは熱寸法安定性に優れ、また、そのバラツキも小さく、さらに、各方向のTS/TE比も0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下の範囲であり、後加工性に優れるフィルムであることが分かる。
実施例2
押出機の押出量を増加させて、未延伸シートの幅を増加させるとともに、テンターの横延伸条件を表1の「b条件」に示す各調整値に変更し、熱固定装置の各プレナムダクトの熱風吹き出し口に取り付ける遮蔽板を表2の「B態様」に示す遮蔽率となるように変更し、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3の「II条件」に示す各調整値に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た実施例2の表面光拡散性フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
実施例3
熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3の「III条件」に示す各調整値に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た実施例3の表面光拡散性フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
実施例4
熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3の「IV条件」に示す各調整値に変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例4の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た実施例4の表面光拡散性フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
実施例5
熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3の「V条件」に示す各調整値に変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例5の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た実施例5の表面光拡散性フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
実施例6
光拡散層(B)の原料として、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した結晶性ホモポリエステル(M1)30.2質量%と、70℃で12時間減圧乾燥(1Torr)した共重合ポリエステル(M2)19.8質量%と、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)したポリスチレン予備混練マスターペレット(MB1)50質量%とを混合し、押出機2に供給したこと、支持層(A)の原料として135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した結晶性ホモポリエステル(M1)76.7質量部と、70℃で12時間減圧乾燥(1Torr)した共重合ポリエステル(M2)23.3質量部を混合し、押出機1に供給したこと、(A)層と(B)層との厚み比率を90対10となるように制御したこと、流れ方向の延伸時の予熱ロールによる加熱の温度を79℃としたこと、また塗布液(M4)を支持層(A)側の表面片側のみに塗布したことを除いては実施例1に示したのと同じ方法にて実施例6の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例1
テンターの横延伸条件を表1の「c条件」に示す各調整値に変更した他は、実施例1と同様にして比較例1の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例2
テンターの横延伸条件を表1の「d条件」に示す各調整値に変更した他は、実施例2と同様にして比較例2の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例3
テンターの横延伸条件を表1の「c条件」に示す各調整値に変更した他は、実施例3と同様にして比較例3の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例4
テンターの横延伸条件を表1の「d条件」に示す各調整値に変更した他は、実施例4と同様にして比較例4の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例5
テンターの横延伸条件を表1の「d条件」に示す各調整値に変更した他は、実施例5と同様にして比較例5の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例6
テンターの横延伸条件を表1の「c条件」に示す各調整値に変更した他は、実施例6と同様にして比較例6の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例7
テンターの横延伸条件を表1の「e条件」に示す各調整値に変更した他は、実施例2と同様にして比較例7の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例8
熱固定装置のa〜oの各プレナムダクトの熱風吹き出し口に、一体となった大型の遮蔽板を取り付けた以外は、実施例1と同様にして、比較例8の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。大型の遮蔽板の形状は各遮蔽率が実施例1と同じになるように調整した。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例9
熱固定装置のa〜oの各プレナムダクトの熱風吹き出し口に、一体となった大型の遮蔽板を取り付けた以外は、実施例2と同様にして、比較例9の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。大型の遮蔽板の形状は各遮蔽率が実施例2と同じになるように調整した。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例10
熱固定装置のa〜oの各プレナムダクトの熱風吹き出し口に、一体となった大型の遮蔽板を取り付けた以外は、実施例3と同様にして、比較例10の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。大型の遮蔽板の形状は各遮蔽率が実施例1と同じになるように調整した。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例11
熱固定装置のa〜oの各プレナムダクトの熱風吹き出し口に、一体となった大型の遮蔽板を取り付けた以外は、実施例4と同様にして、比較例11の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。大型の遮蔽板の形状は各遮蔽率が実施例2と同じになるように調整した。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例12
熱固定装置のa〜oの各プレナムダクトの熱風吹き出し口に、一体となった大型の遮蔽板を取り付けた以外は、実施例5と同様にして、比較例12の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。大型の遮蔽板の形状は各遮蔽率が実施例2と同じになるように調整した。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例13
熱固定装置のa〜oの各プレナムダクトの熱風吹き出し口に、一体となった大型の遮蔽板を取り付けた以外は、実施例6と同様にして、比較例13の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。大型の遮蔽板の形状は各遮蔽率が実施例1と同じになるように調整した。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例14
熱固定装置の各プレナムダクトの熱風吹き出し口に取り付ける遮蔽板を表2の「C態様」に示す遮蔽率となるように変更し、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3の「VI条件」に示す各調整値に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例15
各プレナムダクトの熱風吹き出し口に遮蔽板を取り付けることなく熱固定を実施するとともに、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3の「VII条件」に示す各調整値に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例15の表面光拡散性ポリエステルフィルムを得た。このようにして得た表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
比較例16
光拡散層(B)の原料として、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した結晶性ホモポリエステル(M1)60質量部と、70℃で12時間減圧乾燥(1Torr)した共重合ポリエステル(M2)30質量部と、ポリスチレン(M3)10質量部とを混合し、押出機2に供給したこと、また、支持層(A)の原料として135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した結晶性ホモポリエステル(M1)100質量部を押出機1に供給したことを除いては実施例1に示したのと同じ方法で比較例16の表面光拡散性ポリエステルフィルムを作成した。
本比較例16で得られた表面光拡散性ポリエステルフィルムの特性を表4および表5に示す。また、本比較例16で得られたフィルムの配光ムラの観察像を図6に示す。図6から分かる通り、本比較例16のフィルムはフルHD表示の液晶パネルの画素ピッチ(およそ400μm)に近い大きさの配光ムラが見られるため、モアレやシンチレーションといった表示品質の低下を生じやすい。
比較例17
光拡散層(B)の原料として、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した結晶性ホモポリエステル(M1)65.2質量部と、70℃で12時間減圧乾燥(1Torr)した共重合ポリエステル(M2)19.8質量部と、ポリスチレン(M3)15質量部とを混合し、押出機2に供給したことを除いては実施例6に示したのと同じ方法にて比較例17の表面光拡散ポリエステルフィルムを作成した。評価結果を表4および表5に示す。
なお、本願発明と関連する先願発明との関係の参考のために上記実施例ならびに比較例で示した以外のフィルムの構成と光拡散性との関係について参考例、および比較参考例として表6に示す。
本発明の表面光拡散性ポリエステルフィルムは、液晶ディスプレイのバックライトユニット、照明装置等に用いられる光拡散性フィルムとして用いることができる。また、プリズムシート用基材フィルムとして用いることができる。したがって、産業界に寄与することが大である。
従来の遮蔽板による遮蔽態様を示す説明図(aは、熱固定装置の一部の鉛直断面を示したものであり、bは、プレナムダクトの熱風吹き出し口に遮蔽板を取り付けた状態を上から見た状態を示したものである)。 本発明における遮蔽板による遮蔽態様を示す説明図である(aは、熱固定装置の一部の鉛直断面を示したものであり、bは、プレナムダクトの熱風吹き出し口に遮蔽板を取り付けた状態を上から見た状態を示したものである)。 実施例・比較例で用いた熱固定装置を上から透視した状態を示す説明図である。 実施例1における遮蔽板による遮蔽態様を示す説明図である。 実施例1の表面光拡散性ポリエステルフィルムの配光ムラ観察像 比較例17の表面光拡散性ポリエステルフィルムの配光ムラ観察像
符号の説明
1:熱固定装置
2:熱風吹き出し口
3,a〜x:プレナムダクト
F:フィルム
S:遮蔽板
A:フィルムの巻き取り方向
Z1:第1ゾーン
Z2:第2ゾーン
Z3:第3ゾーン
Z4:第4ゾーン

Claims (8)

  1. フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率とフィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の屈折率との差異であるΔnabが0.015以上0.060以下である、二軸配向ポリエステルフィルムよりなり、下記要件(1)〜(9)を満たすことを特徴とする表面光拡散性ポリエステルフィルム。
    (1)結晶性ホモポリエステル、または共重合成分を含む結晶性ポリエステルからなる支持層と、該支持層の少なくとも片面に共押出法で積層された、融点が235〜255℃である共重合成分を含む結晶性ポリエステル50〜99質量部と該ポリエステルに非相溶性の添加剤1〜50質量部との配合組成物からなる光拡散層とを有すること
    (2)下記式で定義されるフィルムの面配向係数ΔPが0.08〜0.16であること
    ΔP=(nx+ny)/2 − nz
    ここで、nx、ny、nzは夫々、長手方向の屈折率、幅方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表す。
    (3)表面ヘーズが15%以上であること
    (4)内部ヘーズが表面ヘーズ未満であること
    (5)引張強さが縦方向及び横方向とも100MPa以上であること
    (6)下記式で定義され、フィルムの光拡散性を示すS(3)が30%以上50%未満であること。
    S(3)=I(3)/I(0)×100
    ここで、I(3)、I(0)は夫々、透過光強度のうち拡散角度が3度の値と0度の値を表す。
    (7)フィルムの巻取方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの幅方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、いずれも0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であること。
    (8)フィルムの幅方向の長さが70cm以上のフィルムについて、フィルム幅方向に均等に5分割し、各5分割したフィルムの幅方向における中央部より切り出した5つの試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求めたときに、それらのHS150の最大値と最小値の差が0.1%以下であること。
    (9)前記5つの試料のHS150がいずれも0.7%以上2.0%以下であること。
  2. 全光線透過率が86%以上で、かつ、くし幅2mmにおける像鮮明度が40%以下であることを特徴とする請求項1記載の表面光拡散性ポリエステルフィルム。
  3. 前記光拡散性ポリエステルフィルムの光拡散層側と支持層側の両方の面に、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、またはアクリル樹脂を少なくとも1種以上を主成分とする塗布層を有することを特徴とする請求項1記載の表面光拡散性ポリエステルフィルム。
  4. 請求項1および請求項2に記載の表面光拡散性ポリエステルフィルムの光拡散層とは反対面に、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、またはアクリル樹脂を少なくとも1種以上を主成分とする塗布層を有することを特徴とするプリズムシート用表面光拡散性ポリエステルフィルム。
  5. 表面光拡散性ポリエステルフィルムの厚みが70μm以上400μm以下であることを特徴とする請求項1から4に記載の表面光拡散性ポリエステルフィルム。
  6. 請求項1から5に記載された表面光拡散性ポリエステルフィルムを製造するための製造方法であって、押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸シートを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸シートを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程とを含んでおり、その横延伸工程が、下記要件(10)〜(14)を満たし、その熱固定工程が、下記要件(15)〜(17)を満たす熱固定装置において行われることを特徴とする表面光拡散性ポリエステルフィルムの製造方法。
    (10)横延伸工程において、連続する温度区分域の設定温度の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)では5℃以上20℃以下であること
    (11)横延伸工程における延伸において1.8倍を通過する温度域が100℃以上160℃未満であること
    (12)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)と次の後半部分の最初の温度区分領域の間では5℃以上40℃以下であること
    (13)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)では5℃以上30℃以下であること
    (14)横延伸工程における延伸において最終延伸倍率に到達する温度域が160℃以上220℃未満であること
    (15)熱風を吹き出す幅広な複数のプレナムダクトが、フィルムの進行方向に対して上下に対向して配置されていること
    (16)前記複数のプレナムダクトに熱風の吹き出し口を遮蔽するための遮蔽板が取り付けられていること
    (17)前記各遮蔽板のフィルムの進行方向における寸法が、フィルムの進行方向における各プレナムダクトの吹き出し口の寸法と略同一に調整されており、前記各遮蔽板のフィルムの幅方向における寸法が、フィルムの進行方向に対して次第に長くなるように調整されていること
  7. 二軸延伸工程がフィルムを縦方向に延伸した後に横方向に延伸するものであるとともに、その横延伸を行うゾーンと熱固定装置との間に、風の吹き付けを実行しない中間ゾーンを設けたことを特徴とする請求項6に記載の表面光拡散性ポリエステルフィルムの製造方法。
  8. 熱固定装置が、複数の熱固定ゾーンに分割されているとともに、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下となるように設定されていることを特徴とする請求項6、または請求項7に記載の表面光拡散性ポリエステルフィルムの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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