JP2009084453A - ガスケット用素材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の有機溶剤を用いた場合と同等もしくはそれ以上の耐不凍液性、耐熱性、機械的強度等を有するゴム層を、有機溶剤、更には界面活性剤を用いること無く形成し、シール性能に優れるガスケット用素材を提供する。
【解決手段】鋼板の片面または両面に、接着剤層を介して、自己分散型水系カーボンブラック及び自己分散型水系シリカの少なくとも一方を含有するラテックスからなるゴム層が形成されていることを特徴とするガスケット用素材。
【選択図】なし

Description

本発明は、車両等に装着されるカスケット用素材及びその製造方法に関する。
例えば車両のエンジンのヘッドガスケット用として、ステンレス鋼板にゴム層を積層したゴムコーティングステンレス鋼板が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
ガスケットでは、(1)不凍液やオイルのゴム層への浸透や、燃焼熱によるゴム層の圧縮低下、(2)フランジの振動によるゴム層の摩耗、(3)不凍液やオイルのゴム層への浸透によるゴム層/鋼板間の密着破壊等により燃焼ガスや不凍液、オイルが漏れることがあり、このようなシール性能の低下を防ぐことが重要である。そのため、従来では、ゴム層にカーボンブラックやシリカ等の補強性充填材が配合されることが多く、有機溶剤で膨潤させたラテックスに補強性充填材を配合した塗工液や、ドライゴムに補強性充填材を練り込んだゴムコンパウンドを有機溶剤に溶解した塗工液を、ステンレス鋼版に塗布し、乾燥・加硫してゴム層を形成している。
特開2003−287135号公報
今日、環境問題から有機溶剤の使用を控えることが求められており、有機溶剤に代えて水を用いることが検討されているが、補強性充填材は水中での分散性が悪いことから、界面活性剤を添加して分散性を高める必要がある。しかし、界面活性剤は、ゴム層を膨潤させる作用があり、シール性を低下させるという問題がある。
そこで本発明は、従来の有機溶剤を用いた場合と同等もしくはそれ以上の耐不凍液性、耐熱性、機械的強度等を有するゴム層を、有機溶剤、更には界面活性剤を用いること無く形成し、シール性能に優れるガスケット用素材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は下記のガスケット用素材及びその製造方法を提供する。
(1)鋼板の片面または両面に、接着剤層を介して、自己分散型水系カーボンブラック及び自己分散型水系シリカの少なくとも一方を含有するラテックスからなるゴム層が形成されていることを特徴とするガスケット用素材。
(2)自己分散型水系カーボンブラックがSAF、ISAF、HAF、EFE、SRFまたはMTグレードであることを特著とする上記(1)記載のガスケット用素材。
(3)自己分散型水系シリカが液相シリカ系または気相シリカ系であることを特著とする上記(1)記載のガスケット用素材。
(4)接着剤層が溶剤系フェノール樹脂、溶剤系エポキシ樹脂、水系フェノール樹脂及び水系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載のガスケット用素材。
(5)ラテックスに、自己分散型水系カーボンブラック及び自己分散型水系シリカの少なくとも一方を分散させてなる塗工液を、接着剤層を形成してなる鋼板の片面または両面に塗布し、加熱乾燥させることを特徴とするガスケット用素材の製造方法。
本発明によれば、環境や人体に有害な有機溶剤を用いることなく、更には界面活性剤を添加することなく、ラテックスに補強性充填材を均一に分散させたゴム層を形成でき、従来の有機溶剤や界面活性剤を用いたゴム層と同等もしくはそれ以上の耐不凍液性、耐熱性、機械的強度等を有し、シール性能に優れたガスケット用素材が得られる。
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明において鋼板は特定されず、ステンレス鋼板(フェライト系/マルテンサイト系/オーステナイト系ステンレス)、SPCC鋼板、アルミニウム鋼板等の従来よりガスケットに使用されている鋼板を使用することができる。通常、これらの鋼板は、アルカリ脱脂した後、クロメート処理剤または、ノンクロメート処理剤等の防錆皮膜を形成させる化成処理を施した上で用いられるが、本発明においても同様の処理が施されてもよい。また、SPCC鋼板ではリン酸亜鉛、リン酸鉄皮膜を形成させる場合もあるが、本発明においても同様の皮膜が形成されていてもよい。また、表面をショットブラスト、スコッチブラスト等で粗面化した鋼板も用いることができる。
上記の鋼板は所定形状に加工され、その片面または両面の全面あるいはシール面に、接着剤層を介してゴム層が形成される。
接着剤層を形成する接着剤としては、フェノール系接着剤及びエポキシ系接着剤が好適である。フェノール系接着剤としては、ノボラック型、レゾール型の何れを用いてもよいが、特にレゾール型が好ましい。エポキシ系接着剤としては、ビスフェノールA型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型の何れを用いてもよいが、特にビスフェノールA型が好ましい。また、これらを水に分散もしくは溶解させたものであってもよく、有機溶剤に溶解させたものであってもよい。更に、これらを主成分とし、ゴムや無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤等を適量添加してもよい。
ゴム層は、自己分散型水系カーボンブラック及び分散型水系シリカの少なくとも一方を含有するラテックスからなる。
ラテックスとしては、特に制限はないが、耐熱性や耐薬品性等に優れることから、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、フッ素ゴム(FKM)、シリコンゴム、アクリロブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等が好適である。また、ラテックスは水分を含んでいてもよい分散型水系カーボンブラックや自己分散型水系シリカを含有する塗工液の塗布性等を考慮して、適量の水を加えてもよい。
自己分散型水系カーボンブラック及び自己分散型水系シリカは、優れた水中分散性を有しており、上記のラテックスにも界面活性剤を用いることなく均一に分散させることができる。そのため、ゴム層の膨潤も無く、機械的特性に優れ、シール性能も高まる。
自己分散型水系カーボンブラックは、カルボン酸基や水酸基等の親水性基で表面改質したものであり、電気2重層の働きに基づく静電的反発で水中に自己分散する。自己分散型水系カーボンブラックとしてはSAF、ISAF、HAF、EFE、SRFまたはMTグレードが好ましく、このような自己分散型水系カーボンブラックは、例えば東海カーボン(株)製「アクアブラック001」、「アクアブラック162」等として市場からも入手することができる。
自己分散型水系シリカは、同じく表面改質したシリカであり、液相シリカ系及び気相シリカ系が好ましい。このような液相シリカ系の自己分散型水系シリカとして、例えば日産化学(株)製「スノーテックスC」、「スノーテックスN」、「スノーテックスS」、「スノーテックスUP」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」、「スノーテックス20」、「スノーテックス30」、「スノーテックス40」等を市場から入手することができる。また、気相シリカ系の自己分散型水系シリカとして、例えば日本アエロジル(株)製「アエロジル50」、「アエロジル130」、「アエロジル200」、「アエロジル300」、「アエロジル380」、「アエロジルTT600」、「アエロジルMOX80」、「アエロジルMOX170」等を市場から入手することができる。
自己分散型水系カーボンブラック及び自己分散型水系シリカは、それぞれ単独でも、2種以上を組み合わせて使用することができる。また、自己分散型水系カーボンブラックと自己分散型水系シリカとを組み合わせてもよい。その際の自己分散型水系カーボンブラックと自己分散型水系シリカとの比率には制限はない。
ゴム層における自己分散型水系カーボンブラックまたは自己分散型水系シリカの含有量は、何れも5〜95質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。自己分散型水系カーボンブラッと自己分散型水系シリカとを併用する場合は、両者の合計でこのような含有量とする。ゴム層における自己分散型水系カーボンブラック、自己分散型水系シリカの含有量が前記下限値を下回るとゴム層の機械的強度が低くなりすぎ、前記上限値を上回るとゴム層の弾性が小さくなりすぎてシール性に劣るようになる。
ゴム層を形成するには、ラテックスに、自己分散型水系カーボンブラックや自己分散型水系シリカを所定量添加し、十分に混練して塗工液を調製し、接着剤層を形成した鋼材にこの塗工液を塗布し、加熱して乾燥すればよい。塗工液の塗布方法には制限がないが、塗布厚を制御できる方法が好ましく、スキマコーターやロールコーター等が好適である。また、乾燥温度はラテックスの種類に応じて適宜選択される。
尚、接着剤層及びゴム層の厚さには制限が無く、従来と同様で構わない。
以下に本発明を、実施例および比較例を挙げて更に詳しく説明する。但し、これらの実施例は本発明の説明のために記載するものであり、本発明を限定するものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜4)
冷延鉄鋼板の両面にフェノール系接着剤をロールコーターで塗布し、150℃で乾燥させて接着剤層を形成した。次いで、接着剤層の上に、表1に示す配合で構成されたゴム層形成用塗工液を、乾燥後の片面の膜厚が50μmとなるようにロールコーターで塗布し、150℃で10分間熱処理を行ってゴム層を形成し、試料とした。
尚、表1におけるラテックスの含有率は固形分で換算した値である。従って、実施例1〜5における塗工液は、ラテックス水溶液に自己分散型水系カーボンブラック、自己分散型水系シリカを表記の量添加したものである。また、比較例1〜3における塗工液は、ラテックス水溶液に通常のカーボンブラック、シリカを表記の量添加し、更に界面活性剤を添加して分散させたものである。また、比較例4では、有機溶剤に通常のカーボンブラックを配合した塗工液(市販品)を用いた。
そして、各試料について下記の評価を行った。
1.不凍液に対する耐久性
自動車ラジエター用クーラント液(トヨタ純正ロングライフクーラント)の液面に対して垂直となるように、上記で作製した試料を浸漬し、液温120℃で500時間放置した。そして、クーラント液から試料を取り出し、下記の試験を行った、
1−1.碁盤目剥離試験
JIS−K5400に準拠し、下記に示す手順にて行った。
(1)料表面に隙間間隔2mmの碁盤目状の切り傷を付け、碁盤目が100個にできるようにする。
(2)碁盤目の上に粘着テープを張り付け、消しゴムで擦って粘着テープを完全に付着させる。
(3)テープ付着1〜2分後に、粘着テープの一方の端を持ち、試料表面に対して垂直方向に瞬間的に引き剥がす。
(4)引き剥がした後の試料表面を観察し、残存する碁盤目の数を数える。結果を、表2の「不凍液に対する耐久性」の「全浸漬」の欄に示す。
1−2.膨潤率測定
下記の(1)式に従い厚さ変化率を、(2)式に従い重量変化率を求めた。結果を、表2の「不凍液に対する耐久性」の「膨張率」の欄に示す。
Figure 2009084453
2. 熱圧縮特性
JIS−6263に準拠し下記手順で実施した。
作製した試料を応力緩和治具で面圧140MPaになるよう締め込み、150℃で24時間加熱処理した後、常温まで冷却し、応力緩和率とゴム層表面の流動性を確認した。結果を、表2の「熱圧縮特性」の欄に示す。
3.摩耗特性
JIS−K6264に準拠し、下記の手順で実施した
(1)作製した試料の重量を試験前に測定。
(2)テーバー型摩耗試験器に試料を設置し、重り550gを試験器の両側に取り付け、摩耗輪CF−10番を設置し、回転数の下、3000回転まで摩耗試験を実施した。
(3)試験後に摩耗後の試料のゴム厚さを測定し、以下の(3)式から摩耗量を算出した。
摩耗量(μm) =(試験前のゴム層の厚さ)−(試験後のゴム層の厚さ) ・・・(3)
Figure 2009084453
Figure 2009084453
表2に示すように、本発明に従い水分散型水系カーボンブラック、水分散型水系シリカをラッテクスに配合した塗工液から形成されたゴム層を設けた実施例1〜5の試料は、何れも溶剤溶解型ゴム層を設けた比較例4の試料と同等の良好な評価結果が得られている。しかし、ラテックスに界面活性剤を用いてカー分ブラックやシリカを分散させた塗工液から形成されたゴム層を設けた比較例1〜3の試料は、著しく性能が劣っている。

Claims (5)

  1. 鋼板の片面または両面に、接着剤層を介して、自己分散型水系カーボンブラック及び自己分散型水系シリカの少なくとも一方を含有するラテックスからなるゴム層が形成されていることを特徴とするガスケット用素材。
  2. 自己分散型水系カーボンブラックがSAF、ISAF、HAF、EFE、SRFまたはMTグレードであることを特著とする請求項1記載のガスケット用素材。
  3. 自己分散型水系シリカが液相シリカ系または気相シリカ系であることを特著とする請求項1記載のガスケット用素材。
  4. 接着剤層が溶剤系フェノール樹脂、溶剤系エポキシ樹脂、水系フェノール樹脂及び水系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のガスケット用素材。
  5. ラテックスに、自己分散型水系カーボンブラック及び自己分散型水系シリカの少なくとも一方を分散させてなる塗工液を、接着剤層を形成してなる鋼板の片面または両面に塗布し、加熱乾燥させることを特徴とするガスケット用素材の製造方法。
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