JP2009084116A - ガラス繊維用集束剤、ガラス繊維、ガラス繊維の製造方法及びガラス繊維強化熱可塑性樹脂材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラス繊維ストランドとマトリックス樹脂との界面結合を強固にすることで、熱水中への浸漬処理等、湿熱の苛酷な環境下でも、耐え得るガラス繊維強化樹脂材料を構成できるガラス繊維用集束剤と、それにより表面処理されてなるガラス繊維、さらにこのガラス繊維を使用するガラス繊維強化樹脂材料を提供する。
【解決手段】本発明のガラス繊維用集束剤は、アセチレングリコール系界面活性剤、被膜形成剤及びシランカップリング剤を含有する。また本発明のガラス繊維は、表面が、0.1質量%から5.0質量%の範囲内の付着率で本発明のガラス繊維用集束剤により被覆されている。さらに本発明のガラス繊維強化材料は、本発明のガラス繊維が、熱可塑性樹脂中に含有されている。
【選択図】なし
【解決手段】本発明のガラス繊維用集束剤は、アセチレングリコール系界面活性剤、被膜形成剤及びシランカップリング剤を含有する。また本発明のガラス繊維は、表面が、0.1質量%から5.0質量%の範囲内の付着率で本発明のガラス繊維用集束剤により被覆されている。さらに本発明のガラス繊維強化材料は、本発明のガラス繊維が、熱可塑性樹脂中に含有されている。
【選択図】なし
Description
本発明は、ガラス繊維用集束剤と、このガラス繊維用集束剤によって表面処理されたガラス繊維、このガラス繊維用集束剤をガラスフィラメント表面に塗布するガラス繊維の製造方法、さらに前記ガラス繊維を含有するガラス繊維強化樹脂材料に関する。
様々な用途で使用されているガラス繊維は、一般に次のような工程を経て製造されている。まず、予めガラス繊維として利用するに相応しいガラス組成となるように調合されたガラス原料を熔解し、均質な状態とした後に白金製のブッシングの底部に設けられた多数のノズルから熔融ガラスを引き出すことによってガラスフィラメントが形成される。そして、この各ガラスフィラメントの表面には、ガラス繊維用集束剤を塗布した後に、数十から数千本束ねて1本のガラス繊維ストランドとし、紙管等の芯材に巻き取ってケーキと呼ばれる回巻体となる。次いで、ケーキに巻き取られたガラス繊維ストランドは、種々の利用目的に応じ、さらなる加工が施される。例えばケーキから解舒されたガラス繊維ストランドは、所定の長さに切断してガラスチョップドストランドとし、それを熱可塑性樹脂と混練してガラス繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)が作製される。あるいは複数本のガラス繊維ストランドを合糸してガラス繊維ロービングとし、それに未硬化の熱硬化性樹脂を含浸後、硬化させてガラス繊維強化熱硬化性樹脂(FRP)が作製される場合もある。このような工程で使用されているガラス繊維用集束剤は、ガラス繊維表面とマトリックス樹脂との接着性や、ガラス繊維に樹脂を含浸する工程等での作業性などを考慮し、各種の機能を付与するための薬剤を併用することが行われている。またガラス繊維強化熱可塑性樹脂は、成型性が高く軽量化が可能であること等から、金属部品の代替材料としても注目され、多くの用途で用いられている。
その1つとしてガラス繊維強化熱可塑性樹脂は、バランスの取れた機械特性を有するエンジニアリングプラスチックの分野において、自動車やOA機器等多方面で使用されるものも多い。そのため、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂に関わる多くの発明が行われており、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂を構成するガラス繊維やガラス繊維の表面を被覆するガラス繊維用の集束剤についても様々な発明が行われてきている。例えば、特許文献1は、集束性に優れ、機械的強度が高く、かつ良好な色相を繊維強化樹脂に付与することのできるガラス繊維用集束剤として、水酸基及び/またはカルボキシル基を有するアクリル系共重合体又はメタクリル系共重合体、シランカップリング剤、および潤滑剤のそれぞれを所定範囲だけ含有するという発明が行われている。また特許文献2には、焼却脱油処理を早期に完了させる脱油性と糸切れや毛羽発生を抑制する被膜性とエアージェット製織に適した飛走性などを実現することのできるガラス繊維用集束剤として、澱粉と、アルキルポリオキシエチレンエーテルまたはアルキルフェニルポリオキシエチレンエーテルを含むものが開示されている。さらに特許文献3では、着色などに対する保存安定性や機械的強度及び耐湿熱水性に優れたガラス繊維集束剤として、ポリイソシアネートとポリオキシエチレン構造を有するポリオールを3〜50重量%含有するポリオール成分とから得られる水性カチオン系ポリウレタンを含有するものが開示されている。また特許文献4では、ガラス繊維取り扱い時に毛羽立ちが少なく、かつ成形品の外観不良をおこさず、耐候性に優れたFRPを作成可能となるガラス繊維集束剤として、架橋構造をもつ(メタ)アクリル系重合体及び架橋構造をもたない(メタ)アクリル系重合体を含むエマルジョンによるガラス繊維集束剤が開示されている。
特開平7−223846号公報
特開2001−191341号公報
特開2000−247687号公報
特開2005−15953号公報
しかしながら、従来の技術では、ガラス繊維に対し、より多様な性能を付与し、より高度な性能を実現するガラス繊維集束剤、あるいはこれを使用するガラス繊維を実現するには十分とはいえない。ガラス繊維用集束剤に使用されている一般的な界面活性剤は、主に結束剤や潤滑剤など疎水的な成分に水溶性を付与し、ガラス繊維用集束剤中に均一に分散させるために使用されるものであり、静的な表面張力を下げる作用は高いものの動的な表面張力を下げる作用は高くなく、ガラス繊維とマトリックス樹脂との接着を阻害してしまう。特許文献1に開示された発明は、提示された集束剤の構成は、それなりの性能を発揮するが、含有されている界面活性剤がガラス繊維とマトリックス樹脂との接着性を十分に高い状態にできなくなる場合があるという問題を有している。またこのような接着性の低下をもたらさない方法として、複数個のグリシジル基を有する界面活性剤を含有してなるガラス繊維用集束剤を使用することで、ガラス繊維とマトリックス樹脂との接着を阻害することなくガラス繊維強化樹脂の機械強度を向上させ、耐熱性や耐湿潤性をも向上させるといったことも考えられるが、それだけマトリックス樹脂に強固な結合を作る官能基が少なくなってしまうので、グリシジル基とマトリックス樹脂との反応が期待されるほど十分に起こらない問題が生じることになる。
本発明は、かかる状況に鑑み、ガラス繊維ストランドとマトリックス樹脂との界面の結合をより強固にすることで、種々の樹脂材に加えて、例えば表面エネルギーが低く、ガラス繊維表面に塗布されたガラス繊維用集束剤と濡れにくいポリアセタール樹脂などとガラス繊維とを複合化したガラス繊維強化ポリアセタール樹脂などのガラス繊維強化樹脂材料等への適用に優れたガラス繊維用集束剤であって、かつ、これらのガラス繊維強化樹脂材料を熱水中への浸漬処理等、湿熱の苛酷な環境下に晒す場合であっても高い機械強度を保持し続けることができる集束剤、すなわち耐湿潤性に優れる複合材料を構成し得るガラス繊維用集束剤と、この集束剤により表面処理されてなるガラス繊維、さらにこのガラス繊維を使用するガラス繊維強化樹脂材料の提供を課題とするものである。
すなわち、本発明のガラス繊維用集束剤は、アセチレングリコール系界面活性剤、被膜形成剤及びシランカップリング剤を含有することを特徴とする。
アセチレングリコール系界面活性剤、被膜形成剤及びシランカップリング剤を含有するとは、次のようなものである。すなわち、集束剤の含有成分として水に溶けたときにイオン化しない親水基を有するノニオン系界面活性剤であるアセチレングリコール系の界面活性剤、ガラス繊維表面の毛羽立ちや切断等の繊維表面の損傷による欠陥の発生を抑制する被膜の形成に寄与する被膜形成剤、及びガラス繊維表面の結合性能を十分に高い状態にするシランカップリング剤、計3種類の成分を含有するものであるということを表している。
ここで、アセチレングリコール系界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール等を使用することができ、これらは単独または2種類以上を併用してもよく、特に水に易溶なものであるなら好ましい。
また被膜形成剤としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、あるいはポリエステル樹脂等を単独または2種類以上を併用して使用することができる。さらに本発明では、被膜形成能に加え、ガラス繊維に塗布後のガラス繊維の集束性に関して高い性能を発揮するという観点から、より好ましくは被膜形成剤としてウレタン樹脂を含むことが好ましい。
また、本発明のガラス繊維用集束剤に用いるシランカップリング剤は、アミノ基、エポキシ基、ウレイド基、メタクリル基、ビニル基、あるいはスチリル基等の官能基を有するものを単独または2種類以上を併用して使用することができる。
また本発明のガラス繊維用集束剤は、上述に加えて、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、動植物油、あるいはパラフィンワックス等を水溶化した潤滑剤や、帯電防止剤、乳化剤、レベリング剤、架橋剤、乳化安定剤、pH調整剤、消泡剤、着色剤、防黴剤及び酸化防止剤の何れかを必要に応じて適量添加することが可能である。
また本発明のガラス繊維用集束剤は、上述に加え被膜形成剤の質量に対するアセチレングリコール系界面活性剤の質量が、固形分換算で0.002%から1.0%であるならば、本ガラス繊維用集束剤をガラス繊維表面に塗布した状態で使用することによって、ガラス繊維強化樹脂材を形成する際に、より安定した強度を発揮する補強材とすることができるようになるので好ましい。
被膜形成剤の質量に対するアセチレングリコール系界面活性剤の質量が、固形分換算で0.002%から1.0%であるとは、本発明のガラス繊維用集束剤に含まれる被膜形成剤の全量に対するアセチレングリコール系界面活性剤の含有比率が、固形分換算の質量%表示で、0.002%から1.0%の範囲内にあることを意味している。
被膜形成剤の質量に対するアセチレングリコール系界面活性剤の質量が、固形分換算で0.002%より少ないと、ポリアセタール樹脂などのガラス繊維強化樹脂材料を構成する樹脂材に対する集束剤成分の濡れ性の改善効果が少なく、このためガラス繊維強化樹脂材料が十分に高い強度とならないため好ましくない。一方、被膜形成剤の質量に対するアセチレングリコール系界面活性剤の質量が、固形分換算で1.0%を超えると、集束剤を調整するに要する費用が嵩み経済性や省資源の観点から好ましくなく、一方毛羽発生を抑制する効果や強度を向上させる効果についても添加量に応じた改善が見込めなくなる。
このような観点から発明のガラス繊維用集束剤は、上述に加え被膜形成剤のアセチレングリコール系界面活性剤の質量が、固形分換算でより好ましくは、0.006〜0.9%の範囲とするほうがよく、さらに好ましくは0.01〜0.8%とすることである。
固形分換算の値を得る方法については、液状物であれば各種のガラス繊維集束剤の構成成分の液体クロマトグラフ法等の定量分析を行うか、あるいはガラス繊維に付着したものであればガラス繊維表面から溶出させる方法などによって固形分を算出すればよい。
また本発明のガラス繊維用集束剤は、上述に加えアセチレングリコール系界面活性剤の含有率が、固形分換算で0.01質量%から5.0質量%の範囲内であるならば、ガラス繊維に塗布した後にガラス繊維同士の結束力が高くなり、ガラス繊維に対して施される解繊や巻き取り等の各種操作において毛羽の発生が少なく、安定した品位のガラス繊維を得ることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤のガラス繊維用集束剤に対する含有率が、固形分換算で0.01質量%に満たないとガラス繊維表面に形成された被膜の膜厚が薄いものとなり、ガラス繊維の表面に部分的にしか被膜が形成されない状態となるため、ガラス繊維同士の結束力が弱くなって毛羽が発生しやすくなり、そのためガラス繊維自体の機械的強度の向上効果が小さいものとなってしまう。一方アセチレングリコール系界面活性剤の集束剤に対する含有率が、固形分換算で5.0質量%を超えても、毛羽の発生を抑止する効果やガラス繊維の強化については、添加量の増加に対応するだけの向上が認められなくなり、経済性や省資源の観点から好ましいものとは言えない。
以上のような観点から、アセチレングリコール系界面活性剤の含有率が、固形分換算で0.01〜5.0質量%の範囲内であると好ましく、さらに好ましくは0.1〜2質量%の範囲であることである。
本発明のガラス繊維集束剤は、それぞれの含有成分を所定量だけ計測し、それぞれを均質となるように混合することによって得られるものであり、ガラス繊維の種類や用途に応じてその含有成分や添加剤の成分配合を変更してもよい。
また本発明のガラス繊維用集束剤の作製方法としては、含有成分となるように種々の薬剤を適量だけ計量して均質に混合することによって得る方法を採用できるならば、様々な方法を採用してよい。薬剤についてもエマルジョンとして添加してもよく、粉末状や繊維状、顆粒状の薬剤を溶解混合してもよい。
本発明のガラス繊維は、表面が、本発明のガラス繊維用集束剤により0.1質量%から5.0質量%の範囲内の付着率で被覆されていることを特徴とする。
表面が、本発明のガラス繊維用集束剤により0.1質量%から5.0質量%の範囲内の付着率で被覆されているとは次のようなものである。すなわち、本発明のガラス繊維用集束剤、すなわちアセチレングリコール系界面活性剤、被膜形成剤及びシランカップリング剤を含有するガラス繊維用集束剤、あるいはそれに加えて被膜形成剤の質量に対するアセチレングリコール系界面活性剤の質量が、固形分換算で0.002%から1.0%であるガラス繊維用集束剤、あるいはそれに加えてアセチレングリコール系界面活性剤の含有率が、固形分換算で0.01質量%から5.0質量%の範囲内であるガラス繊維用集束剤を塗布して乾燥した後のガラス繊維の質量を100とし、それに対してガラス繊維の表面に塗布されたガラス繊維集束剤量を、JIS R3420(2006)「ガラス繊維一般試験方法」に記戴の強熱減量の計測方法に従って計測することにより測定して、その測定値が0.1質量%から5.0質量%の範囲内になることを意味している。
ガラス繊維用集束剤を塗布後のガラス繊維の質量に対して、その付着率が0.1質量%に満たないと本発明のガラス繊維集束剤の塗布効果が十分に発揮されず、その結果ガラス繊維に毛羽や糸切れが発生しやすくなり、ガラス繊維の外観品位が損なわれるばかりでなく、ガラス繊維の機械的な強度などの物理的な性能にも悪影響が生じることになるので好ましくない。
一方、ガラス繊維用集束剤を塗布後のガラス繊維の質量に対して、その付着率が5.0質量%を超えたものとなると、ガラス繊維表面に多量の集束剤が付着していることとなって、保管時や搬送時に周囲環境の影響を著しく受けやすくなり、安定した付着状態を維持管理するための保管条件が厳しくなる。また付着量を5.0質量%よりも増加させてもそれに見合う効果が得がたいため、付着量を5質量%以上とするのは経費的にも好ましくない。
本発明のガラス繊維の製造方法は、複数本のガラスフィラメントをブッシングから引き出す紡糸工程と、引き出されたガラスフィラメントの表面に請求項1から請求項3の何れかのガラス繊維用集束剤を塗布する塗布工程と、ガラス繊維用集束剤を塗布した後の複数本のガラスフィラメントを1以上のストランドにギャザリングする集束工程とを有することを特徴とする。
複数本のガラスフィラメントをブッシングから引き出す紡糸工程と、引き出されたガラスフィラメントの表面に本発明の何れかのガラス繊維用集束剤を塗布する塗布工程と、ガラス繊維用集束剤を塗布した後の複数本のガラスフィラメントを1以上のストランドにギャザリングする集束工程とを有するとは、高温状態の溶融ガラスを耐火金属製のノズルより連続的に引き出して冷却されたガラスフィラメントの状態とし、次いでガラスフィラメントの表面に液体状の本発明のガラス繊維用集束剤、すなわちアセチレングリコール系界面活性剤、被膜形成剤及びシランカップリング剤を含有するガラス繊維用集束剤、あるいはそれに加えて被膜形成剤の質量に対するアセチレングリコール系界面活性剤の質量が、固形分換算で0.002%から1.0%であるガラス繊維用集束剤、あるいはそれに加えてアセチレングリコール系界面活性剤の含有率が、固形分換算で0.01質量%から5.0質量%の範囲内であるガラス繊維用集束剤を一定の塗布効率となるように調整された塗布装置を使用して塗布し、次いで本発明のガラス繊維用集束剤が塗布されたガラスフィラメントを複数のストランドとなるようにギャザリング装置を使用して纏め上げるという集束工程を経ることによって本発明のガラス繊維とすることを表している。
高温状態の溶融ガラスを耐火金属製のノズルより連続的に引き出す紡糸工程の際の引き出し速度やノズルの孔径等の成形条件については、用途や製造効率等に応じて最適な条件を選定して採用することができる。またガラス繊維用集束剤を塗布する塗布装置についても、アプリケータ等の装置を使用して塗布することができる。さらにギャザリング装置に関しても、所望の効率で毛羽などを生じることなくギャザリングが行えるものであればよい。ギャザリングを受けた後のガラス繊維は、この後さらにコレットあるいは紙管上などに巻き取って回巻体形状としてもよいし、そのまま切断装置を使用することによってチョップ状に加工してもよい。
本発明のガラス繊維強化樹脂材料は、本発明のガラス繊維により熱可塑性樹脂を強化してなることを特徴とする。
本発明のガラス繊維により熱可塑性樹脂を強化してなるとは、アセチレングリコール系界面活性剤、被膜形成剤及びシランカップリング剤を含有するガラス繊維用集束剤により表面が、0.1質量%から5.0質量%の範囲内の付着率で被覆されていることを特徴とするガラス繊維により強化してなるものである。
熱可塑性樹脂としては、用途に応じて種々の材質の樹脂材を使用してよい。例えば、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル樹脂や、6−ナイロン樹脂、6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂や、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として使用してもよい。この中でも本発明を適用する場合に最も好ましいものは、ポリアセタール樹脂である。
ポリアセタール樹脂としては、例えばホルムアルデヒド、またはその3量体であるトリオキサンや4量体であるテトラオキサンなどの環状オリゴマーを重合したホモポリマー、ホルムアルデヒドまたはその3量体であるトリオキサンや4量体であるテトラオキサンと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,3−ジオキソラン等とを共重合させて得られたコポリマーや、さらに分岐状分子鎖を有するもの、オキシメチレン単位からなるセグメント50重量%以上と異種セグメント50重量%以下とを含有するオキシメチレンブロックポリマー等を用いることができる。
また本発明のガラス繊維強化樹脂材料は、上述に加えてガラス繊維強化樹脂材料中におけるガラス繊維の含有率が質量%表示で5〜75%の範囲内であれば、ガラス繊維の補強効果が十分に発揮された強固な構造の補強材となる。
ガラス繊維強化樹脂材料におけるガラス繊維の含有量が5質量%に満たないと、ガラス繊維の補強効果が乏しく機械強度が向上しにくく、逆に75質量%よりも多いとガラス繊維の間に十分に樹脂が含浸しないため機械強度を向上させにくい。このような観点からガラス繊維強化樹脂材料中におけるガラス繊維の含有率が質量%表示で10〜70%の範囲内とするのが、より好ましい。
本発明のガラス繊維強化樹脂材料は、必要に応じて種々の用途に使用してよい。例えば電子機器関連用途では、電子機器ハウジング材、ギアテープリール、各種収納ケース、光部品用パッケージ、電子部品用パッケージ、スイッチボックス、絶縁支持体などがあり、車載関連用途では、車体屋根材(ルーフ材)、窓枠材、車体フロント、カーボディ、ランプハウス、エアスポイラー、フェンダーグリル、タンクトロリー、ベンチレーター、水タンク、汚物タンク、座席、ノーズコーン、フェンダーグリル、カーテン、フィルター、エアコンダクト、マフラーフィルター、ダッシュパネル、ファンブレード、ラジエータータイヤ、タイミングベルトなどがあり、航空機関連用途ではエンジンカバー、エアダクト、シートフレーム、コンテナ、カーテン、内装材、サービストレイ、タイヤ、防振材、タイミングベルトなどがあり、造船、陸運海運関連用途ではモーターボート、ヨット、漁船、ドーム、ブイ、海上コンテナ、フローター、タンク、信号機、道路標識、カーブミラー、コンテナ、パレット、ガードレール、照明灯カバー、火花保護シートなどがあり、農業関連用途ではビニールハウス、サイロタンク、スプレーノズル、支柱、ライニング、土壌改良剤などがあり、建設・土木・建材関連ではバスタブ、バストイレユニット、便槽、浄化槽、水タンク、内装パネル、カプセル、バルブ、ノブ、壁補強材、プレキャストコンクリートボード、平板、波板、テント、シャッター、外装パネル、サッシ、配管パイプ、貯水池、プール、道路、構造物側壁、コンクリート型枠、ターポリン、防水ライニング、養生シート、防虫網などがあり、工業施設関連用途では、バグフィルター、下水道パイプ、浄水関連装置、防振コンクリート補強材(GRC)、貯水槽、ベルト、薬品槽、反応槽、容器、ファン、ダクト、耐蝕ライニング、バルブ、冷蔵庫、トレー、冷凍庫、トラフ、機器部品、電動機カバー、絶縁ワイヤ、変圧器絶縁、ケーブルコード、作業服、カーテン、蒸発パネル、機器ハウジングなどがあり、レジャースポーツ関連用途では、釣竿、スキー、アーチェリー、ゴルフクラブ、プール、カヌー、サーフボード、カメラ筐体、ヘルメット、衝撃保護防具、植木鉢、表示ボードなどがあり、日用品関連用途では、テーブル、椅子、ベッド、ベンチ、マネキン、ゴミ箱、携帯端末保護材などがある。また上述した以外の用途であっても、その使用を妨げることはない。
また本発明のガラス繊維強化樹脂材料は、上述に加えてASTM D638に基づく引張強度試験によって、常態での引張強度に対する48時間水中に浸漬された後の引張強度の割合が、100%から50%の範囲内となるものであるため、高い耐湿潤性を有するものであって、過酷な環境下に晒される場合にも高い耐性を発揮するものである。
(1)以上のように、本発明のガラス繊維用集束剤は、アセチレングリコール系界面活性剤、被膜形成剤及びシランカップリング剤を含有するものであるため、ガラス繊維に本発明のガラス繊維用集束剤を塗布することでガラス繊維ストランドとマトリックス樹脂との界面の結合をより強固な状態にすることができ、種々の樹脂材に加えて、表面エネルギーが低く、ガラス繊維表面に塗布されたガラス繊維用集束剤と濡れにくい樹脂、例えばポリアセタール樹脂などとガラス繊維とを複合化したガラス繊維強化ポリアセタール樹脂などのガラス繊維強化樹脂材料等への適用にも優れ、ガラス繊維強化樹脂材料を熱水中への浸漬するような苛酷な環境下に晒す場合でも高い機械強度を保持し続けることができるものとなる。
(2)また本発明のガラス繊維用集束剤は、被膜形成剤の質量に対するアセチレングリコール系界面活性剤の質量が、固形分換算で0.002%から1.0%であれば、ガラス繊維の集束性が向上し、毛羽や糸切れなどの欠陥が生じにくいものとなるので好ましい。
(3)さらに本発明のガラス繊維用集束剤は、アセチレングリコール系界面活性剤の含有率が、固形分換算で0.01質量%から5.0質量%の範囲内であるならば、ガラス繊維の品位を効率よく向上させることができ、品質の整った欠陥の少ないガラス繊維を製造することが容易となる。
(4)また本発明のガラス繊維用は、表面が、本発明のガラス繊維用集束剤により0.1質量%から5.0質量%の範囲内の付着率で被覆されているならば、ガラス繊維の毛羽や糸切れが発生しがたいガラス繊維を使用することによって、ガラス繊維強化樹脂材料の強度が、ガラス繊維の欠陥に起因して低下する危険性も低くなる。
(5)本発明のガラス繊維の製造方法は、複数本のガラスフィラメントをブッシングから引き出す紡糸工程と、引き出されたガラスフィラメントの表面に請求項1から請求項3の何れかのガラス繊維用集束剤を塗布する塗布工程と、ガラス繊維用集束剤を塗布した後の複数本のガラスフィラメントを1以上のストランドにギャザリングする集束工程とを有するものであるため、様々な表面欠陥の少ない、高い品位を有するガラス繊維を多大な費用を要することなく効率よく製造することができ、ガラス繊維を潤沢に市場へ供給することが可能となる。
(6)本発明のガラス繊維強化樹脂材料は、本発明のガラス繊維により熱可塑性樹脂を強化してなるものであるため、多くの熱可塑性樹脂と併用することによって多彩な物理的な性能を実現することができ、ガラス繊維強化樹脂材料の性能を一層高めることが可能となる。
以下、実施例に基づき、本発明のガラス繊維用集束剤とガラス繊維、及び本発明のガラス繊維を使用したガラス繊維強化樹脂材料について詳細に説明する。
本発明の実施例である試料No.1及び試料No.2、さらに比較例であるNo.11から試料No.13のそれぞれについて、ガラス繊維集束剤及びガラス繊維強化樹脂材料の性能について、表1にその評価結果をまとめ、以下その詳細を説明する。
まず表1に基づき本発明のガラス繊維用集束剤と、このガラス繊維用集束剤を塗布したガラス繊維に関して説明する。
試料No.1は、ガラス繊維強化樹脂材の補強繊維として使用される直径13μmのEガラス材質のガラス繊維とその表面に塗布されるガラス繊維用集束剤を表している。このガラス繊維は紡糸工程として、ガラス溶融炉に配設した耐熱性金属よりなるブッシングのノズルより引き出される。この際に塗布工程としてガラス繊維表面に塗布装置のアプリケータを使用し、本発明のガラス繊維用集束剤を連続的にガラス表面に塗布して、ガラス繊維表面がガラス繊維用集束材で被覆する。この時に使用されるガラス繊維用集束剤は、予め次のようにして調整されたものである。すなわちポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョンが5.2質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが0.6質量%、アセチレングリコール系界面活性剤が0.1質量%、となるようにそれぞれの化成品を計量した後に、ウレタンエマルジョン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アセチレングリコール系界面活性剤を含む水溶液として混合し、脱イオン水を加えてガラス繊維用集束剤を調製したものである。
そして、集束工程として、このガラス繊維用集束剤をその表面に塗布した直径13μmのEガラスフィラメントを2000本束ねてガラス繊維ストランドとし、紙管に巻き取っていわゆるケーキを形成する。次に、このケーキからガラス繊維ストランドを連続的に解舒しながらガラス切断装置を使用して3mm長の長さとなるように切断し、その後に加熱して乾燥することによってガラスチョップドストランドを得たものである。このガラス繊維に対するガラス繊維用集束剤の付着量は0.6質量%であることが判明した。なお、ガラス繊維に対するガラス繊維用集束剤の付着量は2006年発行の日本工業規格JIS R3420「ガラス繊維一般試験方法」に記戴の強熱減量の計測方法に従う計測により算出した。
こうして作製されたガラスチョップドストランドとポリアセタール樹脂(ポリプラスチックス株式会社製 ジュラコンM90−44)とを210℃に加熱しながら混練し、ペレタイザーによりペレット化した後、このペレットを210℃で射出成形することによってガラス繊維強化熱可塑性樹脂からなる略板状のFRTP成形品を作製した。なお、このFRTP成形品におけるガラス繊維含有量は、30質量%であった。
次いで試料No.2については、試料No.1と同様にガラス熔融炉の成形域に配設された耐熱性金属よりなるブッシングからEガラス製の13μmのガラスフィラメントを連続的に引き出し、そこにアプリケータでガラス繊維用集束剤を塗布したものであるが、このガラス繊維用集束剤の構成が試料No.1とは異なる。試料No.2で使用したガラス繊維用集束剤の構成は、固形分換算で、ウレタン樹脂が5.2質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが0.6質量%、アセチレングリコール系界面活性剤が1.0質量%となるようにそれぞれの化成品を計量した後に、ウレタン樹脂、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アセチレングリコール系界面活性剤を含む水溶液として混合し、脱イオン水を加えてガラス繊維用集束剤を作製したものである。
そして試料No.1と同様にこのガラス繊維用集束剤をその表面に塗布した直径13μmのEガラスフィラメントを2000本束ねてガラス繊維ストランドとし、紙管に巻き取っていわゆるケーキを形成する。次に、このケーキからガラス繊維ストランドを連続的に解舒しながらガラス切断装置を使用して3mm長の長さとなるように切断し、その後に加熱して乾燥することによってガラスチョップドストランドを得た。ガラス繊維に対するガラス繊維用集束剤の付着量は、0.6質量%であった。
こうして作製されたガラスチョップドストランドとポリアセタール樹脂(ポリプラスチックス株式会社製 ジュラコンM90−44)とを210℃に加熱しながら混練し、ペレタイザーによりペレット化した後、このペレットを210℃で射出成形することによってガラス繊維強化熱可塑性樹脂からなる略板状のFRTP成形品を作製した。なお、このFRTP成形品におけるガラス繊維含有量は、30質量%であった。
以上のように作製された試料No.1と試料No.2について、そのFRTP成形品の機械的強度は、いずれも常態のFRTP成形品についての引張強度、および、80℃に保たれた浸漬容器内で24時間または48時間水中に浸漬されたFRTP成形品の引張強度を測定することによって評価した。なお、このFRTP成形品の引張強度の計測は、ASTM D638に基づいて測定したものである。
得られた各試料の引張強度についての計測結果は、表1からも明らかな様に、まず試料No.1については、常態での引張強度が、140MPaであり、24時間、及び48時間水中に浸漬された後の引張強度が、92MPa、78MPaであって十分に高い値となり、常態での引張強度に対する48時間水中に浸漬された後の引張強度の割合が、約56%と50%を越える値となっている。よって、このように過酷な条件に晒された後であっても引張強度が極端に低下することはないものとなっていることが判明した。
また試料No.2についても、常態での引張強度が、139MPaであり、24時間、及び48時間水中に浸漬された後の引張強度が、96MPa、81MPaであって、常態での引張強度に対する48時間水中に浸漬された後の引張強度の割合が、約58%と50%を越える値となっている。よってこれも試料No.1と同様に引張強度の著しい低下は認めがたく、苛酷な環境下にFRTP成形品を晒す場合でも高い機械的耐久性を実現しうるものとなっていることが判明した。
次いで、本発明の比較例として、表2に示す試料No.11、試料No.12、及び試料No13の3つの試料を準備し、本発明の実施例との比較を行った。
まず、比較例である試料No.11は、実施例である試料No.1と同様に直径13μmのEガラス材質のガラス繊維を使用し、ガラス溶融炉に配設した耐熱性金属よりなるブッシングのノズルより引き出したガラスフィラメントに塗布装置としてアプリケータを使用し、ガラス繊維用集束剤を塗布したものである。ただここで使用したガラス繊維用集束剤は、試料No.1とは異なり、アセチレングリコール系界面活性剤を一切使用せず、他の成分、すなわちポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョンが5.2質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが0.6質量%という点については、試料No.1と同じ配合量としてそれぞれの化成品を計量した後に、これらを含む水溶液として混合し、脱イオン水を加えてガラス繊維用集束剤を作製したものである。
またその後のチョップドストランドを加工する工程やFRTP成型品を得るまでの工程についても、実施例と同様の手順によっておこなった。すなわち最終的にガラスチョップドストランドとポリアセタール樹脂(ポリプラスチックス株式会社製 ジュラコンM90−44)とを210℃に加熱しながら混練し、ペレタイザーによりペレット化した後、このペレットを210℃で射出成形することによってガラス繊維強化熱可塑性樹脂からなる略板状のFRTP成形品を作製した。なお、試料No.11についてもFRTP成形品におけるガラス繊維含有量は、30質量%であった。
また、比較例である試料No.12は、ガラス繊維を得る手順やガラスチョップドストランドを得る手順、さらにFRTP成型品を得る手順は、実施例と同様であるが、ただ使用したガラス繊維集束剤の構成のみが異なるものである。すなわち試料No.12のガラス繊維用集束剤の構成は、アセチレングリコール系界面活性剤の換わりに、脂肪酸エーテル系界面活性剤が0.1質量%用いたものである。なお、ガラス繊維に対するガラス繊維用集束剤の付着量も0.6質量%である。
さらに試料No.13については、他の比較例同様にガラス繊維用集束剤の構成以外は、実施例と同様の工程によって試料を調製したものである。この試料No.13のガラス繊維用集束剤は、アセチレングリコール系界面活性剤の換わりにグリシジル基を有する界面活性剤を0.1質量%用いたものである。
以上のように作製された試料No.11から試料No.13についてのFRTP成形品の引張強度の計測についても、実施例同様の仕様で計測をおこなった。その結果、試料No.11は、常態の引張強度が140MPaと高いものの、24時間水中浸漬後、及び48時間水中浸漬後については引張強度は70MPa、62MPaとなり、いずれも常態の引張強度の半分以下の強度まで低下しており、耐久性に問題の生じることが懸念されるものとなった。
また試料No.12についても、常態の引張強度が138MPaと高い値であったものの、24時間水中浸漬後、及び48時間水中浸漬後については、引張強度が68MPa、58MPaとなり、試料No.11と同様に常態の引張強度の半分以下となり、耐久性に関して問題のある水準であった。
さらに試料No.13については、常態の引張強度が139MPaと高い値であったが、24時間水中浸漬後、及び48時間水中浸漬後については、引張強度が74MPa、64MPaとなり、やはり低い水準であって機械的な耐久性に関して不安の残る結果であった。
以上の一連の評価結果から、本発明のガラス繊維用集束剤を使用することによって、安定した品位のガラス繊維製品を得ることができ、このようなガラス繊維を使用することによって長時間に亘り水中に浸漬するような過酷な環境であっても、耐湿潤性に優れたガラス繊維強化樹脂材料を得ることができることが明瞭となった。
Claims (6)
- アセチレングリコール系界面活性剤、被膜形成剤及びシランカップリング剤を含有することを特徴とするガラス繊維用集束剤。
- 被膜形成剤の質量に対するアセチレングリコール系界面活性剤の質量が、固形分換算で0.002%から1.0%であることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維用集束剤。
- アセチレングリコール系界面活性剤の含有率が、固形分換算で0.01質量%から5.0質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラス繊維用集束剤。
- 表面が、請求項1から請求項3の何れかに記載のガラス繊維用集束剤により0.1質量%から5.0質量%の範囲内の付着率で被覆されていることを特徴とするガラス繊維。
- 複数本のガラスフィラメントをブッシングから引き出す紡糸工程と、引き出されたガラスフィラメントの表面に請求項1から請求項3の何れかのガラス繊維用集束剤を塗布する塗布工程と、ガラス繊維用集束剤を塗布した後の複数本のガラスフィラメントを1以上のストランドにギャザリングする集束工程とを有することを特徴とするガラス繊維の製造方法。
- 請求項4に記載のガラス繊維により熱可塑性樹脂を強化してなることを特徴とするガラス繊維強化樹脂材料。
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