JP2009077540A - モータの駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成により、転流角の脱調の危険を事前に検出することができるモータの駆動装置を実現する。
【解決手段】位置制御される負荷の位置指令値と位置フィードバック値との偏差を演算して速度指令値を出力する位置制御手段と、前記速度指令値と前記負荷の速度フィードバック値との偏差を演算して前記負荷を駆動するモータに対して転流角に基づく推力指令値を出力する速度制御手段と、を具備するモータの駆動装置において、前記推力指令値と前記負荷に発生している負荷推力値とを比較し、その差に基づいて前記転流角の脱調を検出する脱調監視部を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、転流制御される交流励磁電流により推力を発生するモータの駆動装置に関するものである。
面モータを搭載したスライダを、プラテン上でXY方向に位置制御するXYステージについては特許文献1に詳細な技術開示がある。また、転流角制御される面モータを備える位置決め装置については特許文献2に技術開示がある。
図6は、特許文献2に記載されている位置決め装置の構成例を示す機能ブロック図である。上位装置1から与えられる負荷(スライダ4)の位置指令値Piを入力する位置制御部2は、位置指令値Piと位置フィードバック値Pfとの偏差を演算して速度指令値Viを出力する位置制御手段と、速度指令値Viとスライダ4の速度フィードバック値Vfとの偏差を演算して推力指令値Fa出力する速度制御手段を備える。
推力指令Faを入力するドライバ3は、スライダ4の3相の面モータに対してインバータ手段を介して転流制御される交流励磁電流を供給して推力を発生させている。スライダの現在位置は位置検出手段5で検出され、ドライバ3で転流角のタイミング信号が抽出されると共に、位制御部2で位置変換及び速度変換処理される。
特開2000−65970号公報 特開2006−101570号公報
転流制御される交流励磁電流により推力を発生するモータでは、脱調により転流位相が反転した場合は、意図した方向と逆向きの推力が発生してしまい暴走する可能性があるが、従来技術では脱調を検出する有効な手法が提供されていないため、脱調に起因する暴走を未然に防ぐことができない、という問題があった。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、簡単な構成により、転流角の脱調の危険を事前に検出することができるモータの駆動装置の実現を目的としている。
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)位置制御される負荷の位置指令値と位置フィードバック値との偏差を演算して速度指令値を出力する位置制御手段と、前記速度指令値と前記負荷の速度フィードバック値との偏差を演算して前記負荷を駆動するモータに対して転流角に基づく推力指令値を出力する速度制御手段と、を具備するモータの駆動装置において、
前記推力指令値と前記負荷に発生している負荷推力値とを比較し、その差に基づいて前記転流角の脱調を検出する脱調監視部を備えることを特徴とするモータの駆動装置。
(2)前記脱調監視部は、前記負荷推力値が前記推力指令値に対して所定の割合以下に低下した時に脱調を示す信号を出力することを特徴とする(1)に記載のモータの駆動装置。
(3)前記負荷推力値及び前記推力指令値が夫々入力されるローパスフィルタ手段を備え、前記脱調監視部はこれらローパスフィルタ手段の出力を比較することを特徴とする(1)または(2)に記載のモータの駆動装置。
(4)前記脱調監視部は、前記ローパスフィルタ手段の出力で与えられる前記推力指令値が、最大推力値に対して所定の割合以上の条件を満たす場合に前記各ローパスフィルタ手段の出力を比較することを特徴とする(3)に記載のモータの駆動装置。
(5)前記速度指令値に対して、前記負荷に働く外乱並びに推力損失を補償するための補正信号を重畳させたことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のモータの駆動装置。
(6)前記脱調監視部は、脱調を検出した時に前記モータの励磁電流を遮断するインターロック機構を備えることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のモータの駆動装置。
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)推力指令値と負荷に発生している負荷推力値とを比較し、その差に基づいて転流角の脱調を検出することができる。その結果、スライダの暴走を未然に防ぐことができる。
(2)外乱や推力の損失が大きい場合でも、推力指令値として外乱や損失を考慮した値を用いることで高い精度で脱調を検出することができる。
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は、本発明を適用したモータの一実施形態を示す機能ブロック図である。本図は、速度フィードバック制御系を内在した位置フィードバック制御系を示しており、点線で示すブロック100が本発明で追加された脱調警報部である。
位置制御手段10は、位置指令値Piと位置フィードバック値Pfの偏差を演算して速度指定値Viを出力する。速度制御手段20は、速度指定値Viと速度フィードバック値Vfの偏差を演算して推力指令値Faを推力発生手段12に出力し、スライダを移動制御する。
要素13,14、15は、フィードバック制御系において見かけ上存在するものとして表記されている。除算器13は、発生推力をスライダの質量Mで除算することで加速度Accを出力する。積分器14は加速度Accを積分することで速度Vfを出力する。積分器15は速度Vfを積分することで現在位置(位置フィードバック値)Pfを出力する。
微分器16は、位置指令値Piを2回微分演算した加速度値Pi″をフィードフォワード値として出力する。初期推力付与手段17は、この加速度値に基づく初期推力Fa´を推力指令Faに加算する。
同様に、推力ff補正手段18は、この加速度値に基づくフィードフォワード補正値Fcomp_ffを推力指令Faに加算する。コギングリップル補償手段19は、スライダの転流角制御に伴って発生するコギング信号を取得し、コギング補償値Fcomp_cogを推力指令Faに加算する。
図1に示す脱調警報部100は、外乱推力を考慮しない基本構成を示している。推力指令Faは、ローパスフィルタ手段101を介して比較手段104の一方に入力される。除算器13の出力で表される加速度Accは、乗算器102で質量Mが乗算され、スライダに発生している負荷推力値M・Accに変換され、ローパスフィルタ手段103を介して比較手段104の他方に入力される。
外乱推力がなく、推力指令Faと実際に発生する負荷推力値M・Acc間で乖離がない状態では、式(1)を満たす。
Figure 2009077540
これに対して指令電気角と実際の電気角でずれが生じると、推力指令に対する実際の推力は小さくなり、式(2)の状態になる。
Figure 2009077540
脱調した時も式(2)の状態になるので、式(3)の条件、即ち負荷推力値が前記推力指令値に対して所定の割合(n%)以下に低下した時に脱調を検出することができる。
Figure 2009077540
実際には、スライダ停止時や一定速度時は推力と加速度が共に小さいため、式(3)の評価結果が安定しない場合がある。また推力、加速度共にコギング等により高周波で変動するので、フィルタリングの必要がある。そこで、推力指令値と負荷推力値をそのまま脱調検出に用いるのではなく、ローパスフィルタ101,103を挿入する。この結果、推力指令値Fa´及び負荷推力値M・Acc´は式(4)のように表記される。
Figure 2009077540
さらに式(5)のように、推力指令Fa´が最大推力値Fmaxに対して一定の割合を満たす場合のみ式(6)で評価し脱調を検出することで、安定な脱調検出効果を得ることが可能である。
Figure 2009077540
Figure 2009077540
脱調が検出された場合は、検出信号Cが警報手段105に渡されてアラームALを発生させ、必要に応じてインターロック機構106を起動し、面モータへの励磁電流を遮断して暴走を未然に防止する。
図2は、式(6)による脱調検出の信号処理手順を示すフローチャートである。ステップS1で脱調検出が開始されると、ステップS2で推力指令値Fa及び負荷推力値M・Accにフィルタ処理をする。
ステップS3で、フィルタリング結果の推力指令値Fa´と負荷推力値M・Acc´の割合を算出し、ステップS4でその割合がn%以下であるかがチェックされ、n%以下であればステップS5でインターロック機構を起動し、ステップS6で脱調検出を終了する。
図3は、本発明を適用したモータの他の実施形態を示す機能ブロック図であり、外乱や損失を考慮した構成を示している。推力指令Faに推力フィードフォワード補正分Fcomp_ffを加算した値Fbに対し、さらにコギングリップル補償推力Fcomp_cogを加算した推力指令Fcを脱調警報部100のローパスフィルタ手段101に入力する。
図1に示した基本構成では、推力指令の内の外乱推力や推力の損失に抗する分を考慮していないため、外乱推力が発生する実機では、式(6)の評価結果が不当に低い値となり、過敏に脱調を誤検出してしまう可能性がある。
そこで実機の特性を考慮し、推力指令値Faをそのまま入力するのではなく、外乱分や損失分を考慮したFcを用いる。Faのうち外乱推力や推力の損失に抗する主たる成分はコギングリップル補償推力Fcomp_cogと推力フィードフォワード補正分Fcomp_ffなので、Fcは式(7)で定まる。
Figure 2009077540
図1の基本構成と同様に、式(8)のようにフィルタ処理をし、式(9)を満たす時に式(10)によって脱調を検出することができる。警報手段105とインターロック機構106の動作は基本構成と同一である。
Figure 2009077540
Figure 2009077540
Figure 2009077540
図4は、式(10)による脱調検出の信号処理手順を示すフローチャートである。ステップS1で脱調検出が開始されると、ステップS2で推力指令値から外乱や損失分を考慮した推力指令Fcを算出し、ステップS3でこの推力指令値Fc及び負荷推力値M・Accにフィルタ処理をする。
ステップS4で、フィルタリング結果の推力指令値Fc´と負荷推力値M・Acc´の割合を算出し、ステップS5でその割合がn%以下であるかがチェックされ、n%以下であればステップS6でインターロック機構を起動し、ステップS7で脱調検出を終了する。
図5は、脱調監視部の動作を説明する波形図である。M・Acc´、Fa´、Fc´の推力値を左軸に、推力指令値に対する負荷推力値の比率を右軸に示す。脱調検出の閾値を50%とすると、図1の基本構成の場合には検出ミスが発生する可能性があるが、外乱や損失を考慮した図3の実施形態では脱調を確実に検出することができる。
以上説明した実施形態では、本発明を転流角により推力制御されるモータに適用した場合を説明したが、特許文献1記載のXYステージ、特許文献2記載の位置決め装置や、リニアモータ、回転する丸モータ等にも有効に適用することができる。
本発明を適用したモータの一実施形態を示す機能ブロック図である。 図1の脱調監視部の信号処理手順を示すフローチャートである。 本発明を適用したモータの他の実施形態を示す機能ブロック図である。 図2の脱調監視部の信号処理手順を示すフローチャートである。 脱調監視部の動作を説明する波形図である。 転流角制御される面モータを備える位置決め装置の構成例を示す機能ブロック図である。
符号の説明
10 位置制御手段
11 速度制御手段
12 推力発生手段
13 除算手段
14、15 積分手段
16 微分手段
17 初期推力付与手段
18 推力リップル補正手段
19 コギングリップル補償手段
100 脱調監視部
101 乗算手段
102、103 ローパスフィルタ手段
104 比較手段
105 警報手段
106 インターロック機構

Claims (6)

  1. 位置制御される負荷の位置指令値と位置フィードバック値との偏差を演算して速度指令値を出力する位置制御手段と、前記速度指令値と前記負荷の速度フィードバック値との偏差を演算して前記負荷を駆動するモータに対して転流角に基づく推力指令値を出力する速度制御手段と、を具備するモータの駆動装置において、
    前記推力指令値と前記負荷に発生している負荷推力値とを比較し、その差に基づいて前記転流角の脱調を検出する脱調監視部を備えることを特徴とするモータの駆動装置。
  2. 前記脱調監視部は、前記負荷推力値が前記推力指令値に対して所定の割合以下に低下した時に脱調を示す信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のモータの駆動装置。
  3. 前記負荷推力値及び前記推力指令値が夫々入力されるローパスフィルタ手段を備え、前記脱調監視部はこれらローパスフィルタ手段の出力を比較することを特徴とする請求項1または2に記載のモータの駆動装置。
  4. 前記脱調監視部は、前記ローパスフィルタ手段の出力で与えられる前記推力指令値が、最大推力値に対して所定の割合以上の条件を満たす場合に前記各ローパスフィルタ手段の出力を比較することを特徴とする請求項3に記載のモータの駆動装置。
  5. 前記速度指令値に対して、前記負荷に働く外乱並びに推力損失を補償するための補正信号を重畳させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のモータの駆動装置。
  6. 前記脱調監視部は、脱調を検出した時に前記モータの励磁電流を遮断するインターロック機構を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のモータの駆動装置。
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