JP2009075539A - 反射防止構造及び反射防止成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】入射する電磁波の波長λよりも小さい底面サイズDを有する微細凸部2が当該波長λよりも短いピッチPで配置されてなる反射防止構造1を構成する個々の微細凸部2の先端部分をあえて平滑にし、当該微細凸部2を錐台状にすることによって、微細凸部2の先端部と基端部に2つの反射面、先端反射面2t及び微細凸部間反射面2bを形成する。
【選択図】図3
Description
例えば、自動車の運転席には、スピードメータや燃料計などの各種計器類をまとめて収納したディスプレイ部の前面にメーターフロントカバーが嵌め込まれている。しかし、これにフロントウインドウやサイドウインドウを通して車外の景色が映り込むことによって、ディスプレイ部の各種表示が見づらくなることがあるため、その上方にメーターフードを配置して、メーターディスプレイへの外光の入射を遮るようにしている。
すなわち、例えば波形あるいは三角形をなす無数の微細凹凸が表面に形成されていることによって、凹凸の最表面では透明性素材の存在割合が限りなく0%に近いものとなって、実質的に空気の屈折率に等しくなる。一方、凹凸の底部では逆に空気の存在割合が限りなく0%に近いものとなって透明性素材の屈折率と等しくなり、中間部ではその断面における透明性素材の占める断面積に応じた屈折率となる。これによって、光の屈折率が当該反射防止構造の厚み方向に、空気の屈折率から透明性素材の屈折率の間で連続的に変化するようになる。この結果、屈折率の異なる複数の薄膜から成る多層反射防止膜(この場合の屈折率は段階的に変化する)と同様の原理によって、当該反射防止膜よりも優れた反射防止性能を発揮させることができる。
また、先端が平滑であるため、他の部材と擦れ合ったり、ぶつかったりしても損傷を受け難く、反射防止性能に対する影響を最小限のものとして、電磁波の反射防止機能を耐傷付き性とを両立させることができる。
なお、微細凸部2の形状が図2(b)〜(d)に示すように、角錐台状の場合(図においては、その典型例として四角錘台、六角錐台及び三角錐台をそれぞれ示す)には、底面を形成する多角形に外接する円の径Dをもって底面サイズとする。
先端反射面占有率Rtと微細凸部間反射面占有率Rbとは、当該反射防止構造1の繰り返しの1単位を抜き出したときの先端部反射面と微細凸部間反射面の占有率である。
本発明の反射防止構造1においては、先端部と微細凸部間の反射面占有率の比、Rt/Rbが0.2〜2.0のときに電磁波の反射防止性が向上する。さらには、このRt/Rb比が0.5〜1.6であることが好ましい。
Aの値が0.6より小さい場合には、微細凸部2の高さHが低くなり2つの反射面からの反射電磁波が、目的とする波長範囲で低反射にできなくなる。また、Aの値が1.4を超えた場合、微細凸部2の高さHが高くなり、屈折率変化が緩やかになるため、ある程度の反射防止性は確保できるものの、耐傷付性が悪化する傾向がある。
電磁波の種類による微細凸部2の高さHの範囲については、上記式で導出される範囲であればよいが、特に好ましくは、紫外線領域で80〜160nm、可視光線領域で160〜350nm、さらに好ましくは160〜240nm、赤外線領域では350nm〜45μm程度である。
さらに、微細凸部2の底面の中心と上面の中心点を結ぶ直線は、必ずしも底面に対して垂直である必要はなく、傾いていてもよい。
すなわち、微細凸部2の中心を通る垂直断面における底辺をX軸上に、稜線を延長したときの交点として現れる頂点までの高さをhとし、この頂点をZ軸上にとると、稜線上のX座標値は、次式(2)に基づいて、図4に示すように表わすことができる。このとき、頂点の位置によって定数項を加えて補正することもできる。
X=(D/2)×{1−(Z/h)m}・・・(2)
なお、このような微細凸部2については、底面を形成する形状に外接する円の径Dを底面サイズとする。すなわち、円形底面の場合はその径、楕円や卵形の場合はその長軸径、多角形の場合は、これに外接する円の径がDに相当する。
これに対して、微細凸部2の底面形状が平面上に隙間なく敷き詰めることができる正三角形、正方形、正六角形などの場合は、微細凸部2同士の間に、あえて隙間を空けて配列する必要がある。
このような粒子としては、特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレートやポリスチレン、アミド、イミド、ポリエステルなどの有機系粒子、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムなどの無機酸化物系粒子、金、銀、プラチナ、鉄などの金属コロイド粒子、チタン酸バリウムなどのセラミック系粒子を用いることができ、特に耐久性を向上させるためには、圧縮強度が高く、表面改質などにより樹脂との密着性が良くなる無機酸化物系が好ましい。これら粒子の形状についても、特に限定はなく、真球状、ラグビーボール状、こんぺいとう状、不定形、多孔状などが挙げられる。
粒子強度としては、圧縮強度が500MPa以上のものが望ましく、これよりも低い場合には、粒子部分が磨り減っていく可能性がないとは言えず、耐久性が確保できないことがある。
また、自動車を始めとする各種の部品、例えば、ウインドウやルーフのガラス、メーターフロントカバー、ヘッドランプ、リヤフィニッシャー、液晶などの表示装置の最前面に用いるフィルムなど適用することによって、同様の反射防止効果を得ることができる。
また、上記成形型と基材の間に、活性エネルギー線硬化性樹脂を介在させた状態で活性エネルギー線を照射し、当該樹脂を硬化させることによって、当該基材の表面に上記のような反射防止構造1を成形し、反射防止成形体とすることができる。
なお、ここで用いられる活性エネルギー線としては、代表的には、紫外線やX線、その他電子線、電磁波などが挙げられるが特に限定されるものではない。
市販の電子線描画装置で作成した金型を使用して、この金型を170℃に加熱したのち、ポリカーボネート基材の両面に10MPaの圧力で1時間押し当てた後、70℃以下まで冷却した。これによって、表1に示すように、底面の直径Dが1000nm、先端面の直径が250nm、高さHが750nmの円錘台状をなす微細凸部2が六方細密状態(ピッチ:1000nm)に配列された反射防止構造1を両面に備えた反射防止成形体を作製した。
また、当該成形体の表面を、面圧392Paで5000回往復払拭した後における傷の発生具合を目視により観察し、傷の発生が確認できたものを「×」、発生が認められなかったものを「○」として、耐傷付き性を評価した。これらの結果を表2に示す。
同様の電子線描画装置で作成した金型を使用し、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって、ポリメチルメタクリレート基材の両面に、表1に示すように、底面の直径Dが300nm、先端面の直径が45nm、高さHが220nmの円錘台形をなす微細凸部2が六方細密状態(ピッチ:300nm)に配列された反射防止構造1を備えた反射防止成形体を作製した。
上記実施例2と同様の操作を繰り返すことによって、ポリメチルメタクリレート基材の両面に、それぞれ表1に示す寸法を備えた円錘台形をなす微細凸部2が六方細密状態に配列された反射防止構造1を備えた反射防止成形体をそれぞれ作製した。
そして、得られた各成形体について、反射率及び耐傷付き性を実施例2と同様の要領によりそれぞれ評価した。これらの結果を表2に併せて示す。
実施例2と同様の操作を繰り返すことによって、ポリメチルメタクリレート基材の両面に、それぞれ表1に示す寸法を備え、先端面外周部分から底面外周部分に至る稜線が、次数m=1.2及び1.5の線形式(1)で表される円錐台状の微細凸部2が六方細密状態に配列された反射防止構造1を備えた反射防止成形体をそれぞれ作成した。
そして、得られた各成形体について、反射率及び耐傷付き性を実施例2と同様の要領によりそれぞれ評価した。これらの結果を表2に併せて示す。
UV硬化アクリル樹脂(メタクリル酸エチル)70質量%及びγメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10質量%中に、トルエン分散シリカゾル(球換算粒子径:20nm、粒子の圧縮強度:6.2GPa、濃度:20%溶液)を固形分が20重量%となるように混合し、ポリメチルメタクリレート基材上に膜厚50μmとなるように塗布した。
そして、得られた成形体について、反射率及び耐傷付き性を実施例1と同様の要領により評価した。これらの結果を表2に併せて示す。
トルエン分散シリカゾルを球換算粒子径が10nm、濃度が30%のものに替え、実施例3で用いたものと同じ金型を使用したこと以外は、上記実施例10と同様の操作を繰り返すことによって、同様の反射防止成形体を作製した。
そして、得られた各成形体について、反射率及び耐傷付き性を実施例2と同様の要領により評価した。これらの結果を表2に併せて示す。
同様の電子線描画装置で作成した金型を使用して、上記実施例2と同様の操作を繰り返し、ポリメチルメタクリレート基材の両面に、表1に示すように、底面の直径Dが200nm、高さHが200nmの円錘形をなす微細凸部が六方細密状態(ピッチ:200nm)に配列された反射防止構造を備えた反射防止成形体を作製した。
そして、得られた各成形体について、反射率及び耐傷付き性を実施例2と同様の要領によりそれぞれ評価した。これらの結果を表2に併せて示す。
これに対し、比較例1の反射防止成形体においては、微細凸部が円錐形をなし、先端部に入射電磁波の反射面を有していないため、反射防止機能に劣ると共に、耐傷付き性にも劣る結果となった。
なお、上記実施例10及び11の耐傷付き性については、上記した評価方法では、他の実施例との差が確認できなかったが、より厳しい条件の試験によって評価した場合には、実施例1〜9よりも優れた耐傷付き性を示すものと予測される。
2 微細凸部
Rt 先端反射面占有率
Rb 微細凸部間反射面占有率
Claims (11)
- 平面層と、
略円形又は多角形底面を備え、該底面形状に外接する円の径がDである円錐台状又は角錐台状をなす無数の微細凸部が上記平面層上にピッチPで配列された微細構造層から成り、
上記錐台状微細凸部の先端部と該錐台状微細凸部間の平面層表面とに反射面を有すると共に、上記底面の外接円径D及びピッチPが入射する電磁波の波長λよりも小さいことを特徴とする反射防止構造。 - 略円形又は多角形底面を備え、該底面形状に外接する円の径がDである円錐台状又は角錐台状をなす無数の微細凸部がピッチPで表面上に配列された反射防止構造であって、
上記錐台状微細凸部の先端部と、当該微細凸部の基端側における錐台状微細凸部間とに反射面を有すると共に、上記底面の外接円径D及びピッチPが入射する電磁波の波長λよりも小さいことを特徴とする反射防止構造。 - 上記錐台状微細凸部の先端反射面占有率Rtと微細凸部間反射面占有率Rbの比Rt/Rbが0.2〜2であると共に、微細凸部の高さHが次式(1)により算出される値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止構造。
H=A(λ/2n) ・・・(1)
(式中のnは微細凸部形成部分の平均屈折率、Aは0.6〜1.4の範囲の任意の値を示す) - 上記比Rt/Rbが0.5〜1.6であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止構造。
- 上記錐台状微細凸部の稜線形状が次式(2)で表わされる曲線であって、次数mが1を超え、1.5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の反射防止構造。
X=(D/2)×{1−(Z/h)m}・・・(2)
(式中のhは錐台状微細凸部の稜線の延長線の交点として現れる頂点までの高さを示す) - 上記錐台状微細凸部の底面の外接円径D及びピッチPが380nm以下であり、当該微細凸部の高さHが160〜350nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の反射防止構造。
- 上記錐台状微細凸部の底面の外接円径D及びピッチPが250nm以下であることを特徴とする請求項6に記載の反射防止構造。
- 上記錐台状微細凸部が球換算直径で10〜50nmの粒子と樹脂とから成ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の反射防止構造。
- 請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の反射防止構造を基材の少なくとも一方の面に備えていることを特徴とする反射防止成形体。
- 上記基材が透明であることを特徴とする請求項9に記載の反射防止成形体。
- 請求項9又は10に記載の反射防止成形体を用いたことを特徴とする自動車部品。
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